(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ドライルーム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20231016BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20231016BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20231016BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20231016BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F11/89
F24F11/77
F24F110:20
(21)【出願番号】P 2019069459
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】増田 克洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅文
(72)【発明者】
【氏名】上田 晃
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-169815(JP,A)
【文献】特開2004-116854(JP,A)
【文献】特開2014-047990(JP,A)
【文献】特開2011-190989(JP,A)
【文献】特開2013-081900(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138356(WO,A1)
【文献】特開2009-174828(JP,A)
【文献】特開2007-132602(JP,A)
【文献】特開2008-076032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 3/14-3/153
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理空間内の露点温度を制御するドライルームであって、
管理空間内の空気の排気を行う複数の排気部
と、
複数の支柱と、を備え、
前記複数の排気部は、管理空間内の異なる領域に配置され、各領域から排気する空気の排気量を個別に調整
され、
前記排気部は、前記支柱の内部にそれぞれ設けられることを特徴とする、ドライルーム。
【請求項2】
前記ドライルーム内における空気の露点温度の上昇を引き起こす物質を検出する第1検出部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のドライルーム。
【請求項3】
露点温度の上昇を引き起こす物質の前記領域への侵入を事前に検出する第2検出部を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のドライルーム。
【請求項4】
前記領域の空気の露点温度を制御する制御部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のドライルーム。
【請求項5】
管理空間内の露点温度を制御するドライルームの制御方法であって、
管理空間内の空気を、管理空間内の異なる領域から排気する排気ステップと、
前記領域から排気する空気の排気量を個別に調整する排気量調整ステップと、
を備え
、
前記排気ステップは、複数の支柱の内部に設けられた排気部により排気することを特徴とする、ドライルームの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理された湿度環境が求められる二次電池の製造などに使用するドライルームに関するものである。また、本発明は、ドライルームの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池の電極用スラリーの製造ラインなどにおいては、極めて低湿度に環境条件を管理したドライルームが用いられる。例えば、特許文献1には、限られた必要箇所の雰囲気のみを所定の低湿度状態に保持するために用いられるドライルームが記載されている。このドライルームは、ドライルーム本体の周壁を構成するカーテンを2重構造とし、その2重構造のカーテン間に形成された空間から強制的に空気を排気する。そして、排気された空気を除湿ユニットで処理して、2重構造のカーテンにおける内側カーテンで仕切られた空間と、2重構造のカーテン間に形成された空間とに供給することを特徴とするものである。これにより、ドライルーム内に供給する空調した空気量を低減するとともに、ドライルーム内の物質が外部空間に流出することを抑制しながら、人の出入りの影響を極力排除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の製造工程等は、作業空間に対する極めて低い湿度管理が重要となる。しかしながら、作業者の入退室や、作業者から発せられる水分などにより、作業空間の湿度が一時的に高くなるという問題がある。
そこで、本発明の課題は、ドライルーム内の所定の空間の湿度が上昇した際に、あるいは上昇することが予測される際に、効率的に室内の湿度を調節し、素早く湿度管理を行うことが可能なドライルームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、ドライルームにおいて、露点温度が上昇した(上昇する)エリア近傍の空気を排気部から優先的に排気することによって、管理空間内の露点温度上昇を速やかに正常化できるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のドライルームである。
【0006】
上記課題を解決するための本発明のドライルームは、管理空間内の露点温度を制御するドライルームであって、管理空間内の空気の排気を行う複数の排気部を備え、前記複数の排気部は、管理空間内の異なる領域に配置され、各領域から排気する空気の排気量を個別に調整することを特徴とするものである。
このドライルームによれば、管理空間内の異なる領域に配置された排気部が、各領域から排気する空気の排気量を個別に調整することから、管理空間内の各領域の露点温度の変化に応じて領域ごとに露点温度を制御することができる。そのため、このドライルームによれば、露点温度が上昇した空気を優先的に排出し、管理空間内の露点温度上昇を速やかに正常化できるという効果を奏する。
【0007】
さらに、本発明のドライルームの一実施態様としては、ドライルーム内における空気の露点温度の上昇を引き起こす物質を検出する第1検出部を備えることを特徴とする。
このドライルームによれば、空気の露点温度の上昇を引き起こす物質を検出して、当該領域の空気の排気量を制御する。そのため、管理空間内において、空気の露点温度が変化する領域を正確に判断し、適切な排気量の制御を行うことができるという効果を奏する。
【0008】
さらに、本発明のドライルームの一実施態様としては、露点温度の上昇を引き起こす物質の領域への侵入を事前に検出する第2検出部を備えることを特徴とする。
このドライルームによれば、作業者や水などの室内の露点温度を上昇させる物質の入出を事前に検出するため、例えば、出入口付近の排気部の排気量を増加する等、当該物質の入出に対して迅速に露点温度の制御を行うことができるという効果を奏する。
【0009】
さらに、本発明のドライルームの一実施態様としては、領域の空気の露点温度を制御する制御部を備えることを特徴とする。
このドライルームによれば、各領域の空気の露点温度を検出し、その測定値の変化などに応じて、当該領域の空気の排気量を制御する。そのため、管理空間内において、どの領域の空気の露点温度が変化しているのかを正確に判断し、適切な排気量の制御を行うことができるという効果を奏する。
【0010】
上記課題を解決するための本発明のドライルームの制御方法は、管理空間内の空気を、管理空間内の異なる領域から排気する排気ステップと、前記領域から排気する空気の排気量を個別に調整する排気量調整ステップと、を備えることを特徴とするものである。
このドライルームの制御方法によれば、管理空間内の異なる領域から排気する空気の排気量を個別に調整することから、管理空間内の各領域の露点温度の変化に応じて領域ごとに露点温度を制御することができる。そのため、このドライルームの制御方法によれば、露点温度が上昇した空気を優先的に排出し、管理空間内の露点温度上昇を速やかに正常化できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トライブース内の所定の空間の湿度が上昇した際に、あるいは上昇することが予測される際に、効率的に室内の湿度を調節し、素早く湿度管理を行うことが可能なドライルームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施態様のドライルームの構造を示す概略説明図である。(A)ドライルームの正面図である。(B)ドライルームの背面図である。(C)ドライルームの左側面図である。(D)ドライルームの平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様における排気の制御方法を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様のドライルームと除湿装置の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様のドライルームの排気部の構造を示す概略説明図である。(A)排気部の正面図である。(B)排気部の斜視図である。(C)排気部のA-A’断面図である。(D)排気部のA-A’断面の斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様のドライルームの排気部の制御について説明する概略説明図である。(A)ドライルームの異なる領域にそれぞれ配置した排気部を示す。(B)異なる領域にそれぞれ配置した排気部の空気の排気量を個別に制御することを示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施態様のドライルームの検出部による制御について説明する概略説明図である。(A)検出部による排気部の空気の排気量を個別に制御することを示す概略説明図である。(B)作業者が管理空間内を移動した際に、検出部による排気部の空気の排気量を個別に制御することを示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施態様のドライルームの構造を示す概略説明図である。(A)ドライルームの正面図である。(B)露点温度の上昇を引き起こす物質の入室を検出する第2検出部による制御について説明する概略説明図である。
【
図8】本発明の第3の実施態様のドライルームと除湿装置の構造を示す概略説明図である。
【
図9】本発明の第4の実施態様のドライルームの構造を示す概略説明図である。(A)ドライルームの正面図である。(B)ドライルームの背面図である。(C)ドライルームの左側面図である。(D)ドライルームの平面図である。
【
図10】本発明の第4の実施態様のドライルームの所定の領域の空気の排気量を個別に制御することを示す概略説明図である。
【
図11】本発明の第5の実施態様のドライルームの構造を示す概略説明図である。(A)ドライルームの正面図である。(B)所定の領域の空気の排気量を個別に制御することを示す概略説明図である。
【
図12】本発明の第6の実施態様のドライルームの第1検出部の物体の重量を検出してダンパが機械的に開口する構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るドライルームの実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載するドライルームについては、本発明に係るドライルームを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
また、ドライルームの制御方法における各ステップの説明は、各ステップに対応するドライルームの各構成の作動により説明する。
【0014】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様におけるドライルーム1Aの構造を示す概略説明図である。(A)はドライルーム1Aの正面図であり、(B)はドライルーム1Aの背面図であり、(C)はドライルーム1Aの左側面図であり、(D)はドライルーム1Aの平面図である。なお、ドライルーム1Aの右側面図は、(C)のドライルーム1Aの左側面図と同一であるので省略した。また、ドライルーム1Aは、床面を備えていないため、底面図についても省略した。
【0015】
本発明のドライルーム1Aは、工場や建屋内に配置されるものであり、内部の空間の露点温度を外部の空間より低く調節することにより、製造工程等の低湿度環境下で行う作業の作業空間を提供するものである。
図1に示すように、本発明のドライルーム1Aは、排気部2a~2dを有する4本の支柱3a~3dと天井4を備え、周囲をビニールカーテン5で囲うことにより、内部に、外部の空間より露点温度が低い管理空間15を形成している。なお、本発明において、「露点温度」とは、実質的には空間の乾燥の程度を示すものであり、実際に露点温度により管理しても、湿度など空間の乾燥状態を示す他の指標で管理してもよい。
【0016】
本発明のドライルーム1Aは、露点温度が調節された空気を供給する供給部6と、管理空間15の空気を排気する排気部2を備え、管理空間15の露点温度を外部の空間より低く調節するものである。さらには、本発明のドライルーム1Aは、管理空間15内の露点温度を制御するドライルームであって、管理空間15内の空気の排気を行う複数の排気部2a~2dを備え、前記複数の排気部2a~2dは、管理空間15内の異なる領域(
図5(A)の「領域Ra」~「領域Rd」参照。)に配置され、各領域から排気する空気の排気量を個別に調整することを特徴とするものである。
なお、本発明における「制御」とは、ドライルーム1A内の管理空間15内の露点温度を調節することを意味し、例えば、管理空間内の露点温度を所定の温度に調節するだけでなく、管理空間外の露点温度よりも低下させる操作なども含む。
以下に、各部について詳細に説明する。
【0017】
(管理空間)
管理空間15は、
図1(A)~
図1(D)に示すように、支柱3a~3d、天井4、正面、背面及び両側面を覆うビニールカーテン5から構成される。天井4には、露点温度が調節された空気を供給する供給部6、正面のビニールカーテン5には、作業者等が入出するための出入口7を備える。支柱3a~3dの内部には、空気が通気する通気路(不図示)があり、管理空間15の空気を排気するための排気部2a~2dを構成する。また、支柱3a~3dの底部には、アジャスタ8及びキャスタ9を備える。
【0018】
支柱3a~3dに取り付けられたアジャスタ8は、ドライルーム1Aの位置を固定し、各支柱の高さを個別に調整するものである。また、キャスタ9は、ドライルーム1Aの移動時に資するものである。これにより、ドライルーム1Aの移動と固定を簡便且つ自由自在とすることが可能となる。
【0019】
支柱3a~3dと天井4、ビニールカーテン5は、外部と隔離した閉鎖空間を形成する。これにより、湿度を管理することができる管理空間15を提供することが可能となる。
また、ドライルーム1Aの正面に設置された出入口7は、管理空間15に作業者の出入りや製品の搬入出を可能とする。なお、管理空間15は、作業者が作業等を行う空間であってもよく、機械等のみの無人空間であってもよい。
【0020】
ドライルーム1Aの大きさや形、出入口7の設置場所や数は、管理空間15の用途に適した任意のものでよい。例えば、
図1に示したドライルーム1Aの背面に出入口7を設け、別の同様のドライルーム1Aの全面の出入口7と一体とすることで、複数のドライルームを連結してもよい。
【0021】
また、ドライルーム1A内の作業環境を向上させるために、ドライルーム1A内に照明器具を設置してもよい。例えば、照明器具の設置場所は、柱部3や天井4の表面や内部が挙げられる。好ましくは、天井4の内部である。
【0022】
また、ビニールカーテン5の素材は、管理空間15内の空気を通さないものであれば特に限定されない。例えば、透明や遮光の素材や帯電を防止する高分子素材が挙げられる。管理空間15で人が作業を行う場合では、安全性等の点から透明で帯電を防ぐものが好ましい。
さらに、ビニールカーテン5の裾部から、管理空間15内の空気が過剰に漏れ出ないように重りを配置してもよい。また、入出口7においては、管理空間15内の空気が必要以上に漏れ出ないようにビニールカーテン5に重りを持たすことが望ましい。
【0023】
なお、第1の実施態様のドライルーム1Aでは、管理空間15を形成するための囲いとしてビニールカーテン5を使用しているが、本発明のドライルームにおいては、ビニールカーテン5以外の管理空間15を形成するための囲いを用いてもよい。例えば、ビニールカーテン5に変えて、木材、鉄鋼、石材、硬質プラスチック等の板材を使用してもよい。ビニールカーテン5は、空気を通さず、軽く移動しやすいという点で好ましい。また、透明のビニールカーテンを使用することにより、内部の作業者の安全状況を外部から確認することができるという利点もある。
【0024】
管理空間15には、供給部6から露点温度が調節された空気が供給され、排気部2a~2dから内部の空気が排出される。その際、供給部6からの空気の供給量は、排気部2a~2dの総排気量よりも大きくなるように設定する。これにより、管理空間15の内部が陽圧になるため、作業者の入出等の際に、出入口7が一時的に開放された場合でも、外部の空気が管理空間15の内部に流入しにくいという効果がある。
【0025】
(供給部)
図1(D)は、ドライルームの平面図である。ドライルーム1Aは、
図1(D)に示すように、天井4の上部の中央に供給部6が配置されている。供給部6は、
図3に示すとおり、給気ホース21を介して除湿装置16に連結されている。除湿装置16で処理され、露点温度の調節された空気は、供給部6から給気ホース21を通ってドライルーム1Aに供給される。なお、天井4は、水平方向に広がる空間(不図示)を有しており、さらに、天井4の管理空間15側には、複数の供給孔41が形成されている。供給部6から供給された空気は、天井4の内部の空間を流通することにより、水平方向に拡散し、各供給孔41から管理空間15の内部に流入する(なお、空気の流れは、
図3中の一点鎖線により示す。)。これにより、管理空間15の広範囲にわたって除湿装置16で処理された空気を供給することが可能となる。
【0026】
なお、供給部6の配置される場所や数は、ドライルーム1A内の湿度管理を迅速に行えるものであれば任意のものでよい。
天井4から供給される露点温度の調節された空気の流れは、管理空間15に空気を速やかに行き渡らせることが可能であれば特に限定されるものではない。例えば、平行な流線で一定の流速で一方向に進む一方向流であっても、方向が定まっていない非一方向流であってもよい。なお、一方向流は、乱れのない押し出し流れにより汚染の拡散を抑えて管理空間を清浄な気体で置換できるので、管理空間15の湿度管理だけでなく清浄度も維持できることから好ましい。
【0027】
また、供給部6より流入する空気を、任意のエアフィルターで処理してもよい。これにより、除湿装置16で除去しきれなかった浮遊微粒子や浮遊微生物等を除去することができる。
除湿装置16は、管理空間15の湿度管理を行えるものであれば任意のものでよい。例えば、除湿性能が高いデシカント式除湿装置が好ましい。
【0028】
(排気部)
支柱3a~3dの内部には、空気が通気する通気路(不図示)があり、管理空間15の空気を排気するための排気部2a~2dを構成する。
図4に、排気部2aの構造を示す。
図4(A)は正面図であり、
図4(B)は斜視図である。なお、排気部2a~2dは同様の構造であるため、排気部2b~2dについては省略する。支柱3aの底部には、管理空間15の空気を支柱3aに吸い込むための吸い込み口12aが形成され、上部には、支柱3a内の空気を外部に排気する排気ダクト13が形成されている。なお、各排気ダクト13は、図示しない排気ホースにより除湿装置16と連結されている。
【0029】
また、支柱3aの内部の通気路には、支柱3aの内部の空気を吸い込み口12aから排気ダクト13へ送風する吸い込みファン17が設置されている。
図4(C)及び
図4(D)に、支柱3aの内部構造を示す。
図4(C)は、
図4(A)のA-A’で切断した断面図であり、
図4(D)は、その斜視図である。なお、各支柱3a~3dにそれぞれ設置された吸い込みファン17は、個別に送風量を調整することが可能である。
【0030】
また、排気部2a~2dにおける排気量の調整は、どのような手段であってもよい。例えば、吸い込み口12に開度を調整できるダンパを設け、ダンパの開度で排気量を調整する手段や、複数のダンパを設けて、開くダンパの数で排気量を調整する手段などが挙げられる。また、排気部2a~2dは、作業者等を検出する検出部10a~10dを備えている。
【0031】
次に、排気部の制御について説明する。
図5(A)には、ドライルーム1Aの異なる領域(Ra~Rd)にそれぞれ配置した排気部2a~2dを示す。ここで、領域Ra~Rdは、仕切りを有するものではなく、各排気部2a~2dに最も近い位置をそれぞれ領域Ra~Rdと設定し、各排気部2a~2dから空気が排気される領域を示している。なお、各領域の空間が連通する所定の仕切りを設けて、各排気部2a~2dから空気が排気される領域を形成してもよい。
【0032】
本発明のドライルーム1Aは、領域Ra~Rdの空気の排気に対応する各排気部2a~2dの排気量を個別に調整するものである。例えば、
図5(B)に示すように、作業者Wが領域Raで作業を行う際に、領域Raの空気の排気を行う排気部2aの排気量を高めるという制御である。即ち、検出部10aで作業者の存在を検出すると、吸い込みファン17の回転を早くしたり、ダンパの開度を高くしたりすることで領域Raの排気量を大きくするように制御する。なお、供給部6から流入した空気の流れを矢印で示し、排気量の大きさは矢印の太さで示した。
【0033】
第1の実施態様のドライルーム1Aでは、各排気部2a~2dの排気量の調整は、支柱3bに設置された操作パネル14により行うこともできる。例えば、作業者Wは、領域Raで作業を予定している場合には、ドライルーム1Aの内部に入室する前に、操作パネル14により予め排気部2aにおける排気量を高くする。これにより、作業者Wの作業中に領域Raの露点温度が上昇しても、露点温度が上昇した空気を優先的に排出し、管理空間内の露点温度上昇を速やかに正常化できるという効果を奏する。
【0034】
(第1検出部)
第1の実施態様のドライルーム1Aは、各支柱3a~3dに対応する各領域Ra~Rdを移動する露点温度の上昇を引き起こす物質や、各支柱3a~3dの近傍の露点温度を検出する第1検出部10a~10dを備える。特に、移動する露点温度の上昇を引き起こす物質を検出する第1検出部を物体検出部、露点温度を検出する第1検出部を領域湿度検出部とする。例えば、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、作業者Wが領域Raから領域Rbに移動する際に、操作パネル14により排気部の排気量を変更する必要がなくなる。即ち、第1検出部10a(物体検出部)が作業者等を検出しなくなることで自動的に排気部2aの排気量を低下し、第1検出部10bが作業者等を検出することで排気量2bの排気量を増加する制御を行うことができる。
また、第1検出部10(領域湿度検出部)が、各支柱3a~3dの近傍の露点温度の上昇を検出すると、自動的に排気部2の排気量を増加する制御を行うことができる。
【0035】
第1検出部(物体検出部)は、露点温度の上昇を引き起こす物質を検出するものが使用できる。露点温度の上昇を引き起こす物質とは、例えば、作業者(人間)、水分を含む物体などが挙げられ、これを検出するものとしては、例えば、監視カメラや赤外線センサや局所的な重量変化を検出する重量測定器のように、露点温度の上昇を引き起こす物質の位置を検出するものである。また、物体の重量を検出する第1検出部は、物体の重量に応じて近傍のダンパが機械的に開口する構造を有していてもよい。
検出部として、露点温度の上昇を引き起こす物質を検出する場合には、各領域Ra~Rdの空間の水分量が変化する前に排気量の調整をすることができるため、素早い露点温度の調整が可能である。
【0036】
また、第1検出部(領域湿度検出部)は、空気の露点温度を検出するものが使用できる。例えば、湿度計や露点計のように直接的に空気中の水分量を検出するものが挙げられる。検出部11として、湿度計や露点計のように直接的に空気中の水分量を検出するものを使用する場合には、各領域Ra~Rdの空間の水分量の変化を正確に確認できるため、高精度な露点温度の調整をすることができる。
【0037】
(制御部)
制御部11は、ドライルーム1A内の任意の箇所に設けられてもよいし、ドライルーム1A外に設置されてもよい。
図2に示すように、制御部11は、第1検出部10と排気部2と連絡する。これらの連絡は、ケーブルで直接接続されるものでもよいし、無線等の通信技術を介して間接的に接続されるものであってもよい。
制御部11は、第1検出部10で検出された情報に基づいて、管理空間15の露点温度を維持するために、排気部2の動作を調節する。これにより、領域Ra~Rdの露点温度を自動的に制御することができる。
【0038】
なお、露点温度の上昇を引き起こす物質を検出する場合には、当該物質の種類や状態に応じて排気部の排気量を制御してもよい。例えば、作業者の体重や発熱量を重量測定器や赤外線センサにより計測して、これらの情報により、排気部における排気量を増減する制御などが挙げられる。
【0039】
以上の特徴により、本発明のドライルーム1Aは、管理空間15内の領域Ra~Rdの露点温度の変化に応じて、それに対応する各排気部2a~2dの排気量を調整することにより、露点温度が-40℃以下の低湿雰囲気において、作業者などからの湿度負荷によって上昇した管理空間15内の露点温度を効率的、かつ、適切に管理することができる。
【0040】
〔第2の実施態様〕
本発明の第2の実施態様のドライルーム1Bは、第1の実施態様のドライルーム1Aに、さらに第2検出部18を備えるものである。なお、その他の構成は、第1の実施態様のドライルーム1Aと同様であるため、説明を省略する。
【0041】
(第2検出部)
ドライルーム1Bは、
図7(A)に示すように、管理空間外の支柱3bに第2検出部18を備える。第2検出部18は、例えば、
図7(B)に示すように、作業者等の露点温度の上昇を引き起こす物質の入室を検出して、出入口7付近の排気部(例えば、排気部2aと2b)に対して、事前に排気量を高める指示を送る。これにより、作業者などによる管理空間15に対する湿度負荷を自動的に低減することが可能となる。
【0042】
第2検出部18としては、露点温度の上昇を引き起こす物質を検出するものであり、例えば、監視カメラ、赤外線センサ、重量測定器のように、露点温度の上昇を引き起こす物質を検出するものである。なお、第2検出部18による制御としては、当該物質の種類や状態に応じて排気部の排気量を制御してもよい。例えば、作業者の体重や発熱量を重量測定器や赤外線センサにより計測して、これらの情報により、排気部における排気量を増減する制御などが挙げられる。
【0043】
なお、第2検出部18は、管理空間外であれば、支柱3bに設置しなくともよい。例えば、ドライルーム1Bと独立した装置として、製造設備等におけるドライルーム1Bまでの作業者の導線上に設置してもよい。
【0044】
以上の特徴により、本発明のドライルーム1Bは、管理空間15の外側に第2検出部18を設けることにより、人の出入りや製品の搬入出など、露点温度の上昇を引き起こす物質の侵入に先立ち、事前に出入口7近傍の排気部の排気量を高めて、前記侵入による湿度負荷を低減することができる。これにより、人等の出入りなどの湿度負荷があっても、管理空間15の露点温度を効率的、かつ、適切に管理することができる。
【0045】
〔第3の実施態様〕
本発明の第3の実施態様のドライルーム1Cは、第1の実施態様のドライルーム1Aの各排気部2a~2dが除湿装置16と連結しているものである。第3の実施態様のドライルーム1Cは、
図8に示すように、各排気部2a~2dの排気ダクト13が一つの排気ホース19に連結されており、排気ホース19は除湿装置16に連結する。また、排気ホース19は、ドライルーム1Cから排気された空気を除湿装置16に送風する排気ファン20を備えており、排気ファン20によりドライルーム1Cからの総排気量を設定する。
【0046】
また、第3の実施態様のドライルーム1Cでは、第1の実施態様のドライルーム1Aの各支柱3a~3dに設置されていた吸い込みファン17は備えておらず、各排気部2a~2dにおける排気量の個別の調整は、各支柱3a~3dの吸い込み口12のダンパの開度で調整する。その他の構成は、第1の実施態様のドライルーム1Aと同様であるため、説明を省略する。
【0047】
以上の特徴により、本発明のドライルーム1Cは、各排気部2a~2dの総排気量を一つの排気ファン20で制御するため、総排気量を制御しやすく、管理空間の内部を陽圧に調整することが容易であるという効果を奏する。
【0048】
〔第4の実施態様〕
本発明の第4の実施態様のドライルーム1Dは、第1の実施態様のドライルーム1Aの各吸い込み口12a~12dに変えて、複数のダンパ22を有する配管からなる排気部2e、2f及び2gを備えたものである(
図9(D)参照。)。また、第1の実施態様のドライルーム1Aの第1検出部10a~10dに変えて、監視カメラからなる第1検出部10eを備えたものである(
図9(A)参照。)。その他の構成は、第1の実施態様のドライルーム1Aと同様であるため、説明を省略する。
【0049】
排気部2eは、支柱3bの内部に形成された排気部2bと、支柱3cの内部に形成された排気部2cとを連結する配管であり、排気部2eには管理空間15側に向けて複数のダンパ22が設置されている。また、排気部2fは、支柱3cの内部に形成された排気部2cと、支柱3dの内部に形成された排気部2dとを連結する配管であり、排気部3gは、支柱3dの内部に形成された排気部2dと、支柱3aの内部に形成された排気部2aとを連結する配管である。排気部2e、2f及び2gに設置された複数のダンパ22は、開閉動作が個別に制御される。
【0050】
第1検出部10eは、監視カメラからなり、管理空間15内の作業者W等の露点温度の上昇を引き起こす物質を検出する。第4の実施態様のドライルーム1Dの制御では、例えば、
図10に示すように、作業者Wの位置を監視カメラからなる第1検出部10eにより検出すると、作業者Wの近傍のダンパ22を開き(開いたダンパ22を黒色で示す。)、作業者Wの周囲には、露点温度が上昇した空気を優先的に排出する領域Reが形成される。そして、作業者Wが移動すれば、作業者Wの位置に応じて、適切なダンパ22が開閉し、露点温度が上昇した空気を優先的に排出する。なお、ダンパ22の開閉は、全開又は全閉のオンオフ制御でもよいし、複数のダンパ22について、それぞれ開度を制御してもよい。
また、作業者Wなどの露点温度の上昇を引き起こす物質を検出しない場合(作業者Wがドライルーム内にいない場合など)には、所定の位置(例えば、支柱3a~3dの近傍)のダンパ22を開いて、管理空間15内の露点温度を制御すればよい。
【0051】
〔第5の実施態様〕
本発明の第5の実施態様のドライルーム1Eは、第3の実施態様のドライルーム1Cの各排気部2a~2dに変えて、内部に空間を有する床からなる排気部2hを備えたものである(
図10(A)参照。)。また、第3の実施態様のドライルーム1Cの第1検出部10a~10dに変えて、床全域に配置された重量測定器からなる第1検出部10fを備えたものである(
図10(A)参照。)。その他の構成は、第3の実施態様のドライルーム1Cと同様であるため、説明を省略する。
【0052】
排気部2hは、内部に空間を有する床からなり、床は管理空間15側の面に、複数の排気孔23を有している。また、床の内部の空間は、支柱3a~3dの内部の通気路と連通しており、排気ダクト13を介して管理空間15内の空気を排気する。排気孔23は、開閉動作が個別に制御され、所定の領域の空気の排気量を選択的に調整することができる。
【0053】
第1検出部10fは、床全域に配置された重量測定器からなり、管理空間15内の作業者W等の露点温度の上昇を引き起こす物質の位置及び重量を検出する。第5の実施態様のドライルーム1Eの制御では、例えば、
図10(B)に示すように、作業者Wの位置を重量測定器からなる第1検出部10fにより検出すると、作業者Wの近傍の排気孔23を開き(開いた排気孔23を灰色で示す。)、作業者Wの周囲には、露点温度が上昇した空気を優先的に排出する領域Rgが形成される。そして、作業者Wが移動すれば、作業者Wの位置に応じて、適切な排気孔23が開閉し、露点温度が上昇した空気を優先的に排出する。なお、排気孔23の開閉は、全開又は全閉のオンオフ制御でもよいし、複数の排気孔23について、それぞれ開度を制御してもよい。また、作業者Wの体重に応じて、排気孔23の開く領域を増減するように制御してもよい。
また、排気孔23の開閉は、上記第4の実施態様のように、監視カメラからなる第1検出部が作業者Wの位置を検出し、その周囲について制御するものとしてもよい。
なお、作業者Wなどの露点温度の上昇を引き起こす物質を検出しない場合には、所定の位置(例えば、全域)の排気孔23を開いて、管理空間15内の露点温度を制御すればよい。
【0054】
〔第6の実施態様〕
図12は、本発明の第6の実施態様のドライルームの第1検出部10gの構造を示す概略説明図である。
図12に示すように、第1の検出部10gは、床から離間して配置された複数のダンパ25と、複数のダンパ25を垂直上方向に付勢する付勢部材24を備えている。複数のダンパ25と床面の間には、空気を排気する排気部2gを形成しており、ダンパ25が下降すると、ダンパ25の隙間からドライルーム内の空気が排気される構造である。一方、ダンパ25が付勢部材24により上方に付勢されると、ダンパ25は閉じるように形成されている。なお、付勢部材24は、特に制限されないが、例えば、コイルばねやスポンジなどが挙げられる。
【0055】
図12に示すように、本発明の第6の実施態様のドライルームの第1検出部10gによれば、作業者Wがドライルーム内で作業すると、ダンパ25を足で押し下げるため、機械的にダンパ25が開口する。よって、作業者Wの存在するエリアのみ局所的に空気の排気量が増加し、速やかに露点温度を低下することができる。
【0056】
なお、作業者等の重量により機械的にダンパを開口する構造としては、物体の重量により押し下げる力を利用してダンパを開口する構造であればよく、上記の第1検出部10gに限るものではない。重量により機械的にダンパを開口する構造を用いることにより、制御部などの電気的な制御が不要であるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のドライルームは、作業エリアの湿度を目的とする任意の露点温度に安定的に調節するために利用することができる。具体的には、効率的、かつ、速やかに目的とする湿度条件を維持することが可能なドライルームを提供することができる。
【0058】
また、本発明のドライルームは、内部の空間の露点温度を外部の空間より低く調節することにより、電子部品や半導体、電池、医薬品、塗料などの製品製造における製造工程や分析工程等の低湿度環境下で行う作業の作業空間を提供するものである。
【符号の説明】
【0059】
1A,1B,1C,1D,1E…ドライルーム、2、2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h,2g…排気部、3a,3b,3c,3d…支柱、4…天井、41…供給孔、5…ビニールカーテン、6…供給部、7…出入口、8…アジャスタ、9…キャスタ、10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g…第1検出部、11…制御部、12、12a,12b,12c,12d…吸い込み口、13…排気ダクト、14…操作パネル、15…管理空間、16…除湿装置、17…吸い込みファン、18…第2検出部、19…排気ホース、20…排気ファン、21…給気ホース、22…ダンパ、23…排気孔、付勢部材…24、ダンパ…25、Ra,Rb,Rc,Rd,Re,Rg…領域、W…作業者