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特許7366571寿命予測装置、空調システム、寿命予測方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】寿命予測装置、空調システム、寿命予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231016BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20231016BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
F24F11/88
G01R31/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019070436
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020171100
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純一
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】清水 健志
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-69834(JP,A)
【文献】特開2007-60866(JP,A)
【文献】特開2014-50303(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183118(WO,A1)
【文献】特開2006-166569(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143100(WO,A1)
【文献】特開2012-235594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00-7/98
G01R 31/00
F24F 11/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、前記直流電力を平滑化する電解コンデンサの寿命を予測する装置であって、
前記整流器側から前記電解コンデンサに入力される第1のリプル電流を計測する第1リプル電流計測部と、
前記インバータ側から前記電解コンデンサに入力される第2のリプル電流を計測する第2リプル電流計測部と、
前記第1のリプル電流の計測値及び前記第2のリプル電流の計測値に基づいて前記電解コンデンサに入力される総リプル電流を演算する総リプル電流演算部と、
前記総リプル電流の演算結果を所定の寿命演算式に代入して前記電解コンデンサの寿命を演算する寿命演算部と、
を備え、
前記第1リプル電流計測部は、前記整流器と、前記電解コンデンサの上流側に接続されたリアクタとの間に設けられた第1の電流センサを通じて前記第1のリプル電流を取得する、
寿命予測装置。
【請求項2】
前記第1リプル電流計測部は、前記第1の電流センサを通じて前記整流器から前記インバータに流れる直流電流値を取得し、
取得した前記直流電流値から当該直流電流値の時間平均値を差し引くことで、前記第1のリプル電流の計測値を演算する
請求項1に記載の寿命予測装置。
【請求項3】
前記第2リプル電流計測部は、モータに流れるモータ電流を検出可能な第2の電流センサを通じてモータ電流値を取得し、
前記インバータの動作で適用されている変調率と、前記モータ電流値と、前記第2のリプル電流の値との関係が規定されてなるリプル電流テーブルを参照して、前記第2のリプル電流の計測値を特定する
請求項1または請求項2に記載の寿命予測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の寿命予測装置を備える
空調システム。
【請求項5】
商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、前記直流電力を平滑化する電解コンデンサの寿命を推定する方法であって、
前記整流器側から前記電解コンデンサに入力される第1のリプル電流を計測するステップと、
前記インバータ側から前記電解コンデンサに入力される第2のリプル電流を計測するステップと、
前記第1のリプル電流の計測値及び前記第2のリプル電流の計測値に基づいて前記電解コンデンサに入力される総リプル電流を演算するステップと、
前記総リプル電流の演算値を所定の寿命演算式に代入して前記電解コンデンサの寿命を演算するステップと、
を有し、
前記第1のリプル電流を計測するステップでは、前記整流器と、前記電解コンデンサの上流側に接続されたリアクタとの間に設けられた第1の電流センサを通じて前記第1のリプル電流を取得する、
寿命予測方法。
【請求項6】
商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、前記直流電力を平滑化する電解コンデンサの寿命を推定するコンピュータに、
前記整流器側から前記電解コンデンサに入力される第1のリプル電流を計測するステップと、
前記インバータ側から前記電解コンデンサに入力される第2のリプル電流を計測するステップと、
前記第1のリプル電流の計測値及び前記第2のリプル電流の計測値に基づいて前記電解コンデンサに入力される総リプル電流を演算するステップと、
前記総リプル電流の演算値を所定の寿命演算式に代入して前記電解コンデンサの寿命を演算するステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記第1のリプル電流を計測するステップでは、前記整流器と、前記電解コンデンサの上流側に接続されたリアクタとの間に設けられた第1の電流センサを通じて前記第1のリプル電流を取得する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命予測装置、空調システム、寿命予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和システム(空調システム)は、入力電源(商用電源)から入力される三相交流電力をモータ駆動用の交流電力に変換する電力変換回路を備えている。この電力変換回路は、リアクタ(リアクトル)や電解コンデンサなどの受動素子の重量比が大きく、これら電装部品の小型化、軽量化が求められている。しかし、リアクタ、電解コンデンサの小型化を図ると、電解コンデンサの寿命低下につながる可能性がある。
【0003】
電解コンデンサの寿命は、電解コンデンサの周囲温度と、当該電解コンデンサに入力されるリプル電流に大きく依存することが知られている。このリプル電流は、特に、入力電源からの三相交流電力の電圧不平衡が発生した場合に大幅に増加する。
【0004】
特許文献1には、電源回路の出力電圧の降下量を用いることにより、コンデンサに対する延命措置が必要か否かを精度よく判定することができる延命装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-217986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の空調システムにおいて、電力変換回路に実装される電解コンデンサの寿命を把握できる機能が求められている。
【0007】
本発明の目的は、電力変換回路に実装される電解コンデンサの寿命を把握可能な寿命予測装置、空調システム、寿命予測方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、寿命予測装置は、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、前記直流電力を平滑化する電解コンデンサの寿命を予測する装置であって、前記整流器側から前記電解コンデンサに入力される第1のリプル電流を計測する第1リプル電流計測部と、前記インバータ側から前記電解コンデンサに入力される第2のリプル電流を計測する第2リプル電流計測部と、前記第1のリプル電流の計測値及び前記第2のリプル電流の計測値に基づいて前記電解コンデンサに入力される総リプル電流を演算する総リプル電流演算部と、前記総リプル電流の演算結果を所定の寿命演算式に代入して前記電解コンデンサの寿命を演算する寿命演算部と、を備える。
【0009】
また、本発明の第2の態様によれば、前記第1リプル電流計測部は、前記整流器から前記インバータに流れる直流電流を検出可能な第1の電流センサを通じて直流電流値を取得し、取得した前記直流電流値から当該直流電流値の時間平均値を差し引くことで、前記第1のリプル電流の計測値を演算する。
【0010】
また、本発明の第3の態様によれば、前記第2リプル電流計測部は、前記モータに流れるモータ電流を検出可能な第2の電流センサを通じてモータ電流値を取得し、前記インバータの動作で適用されている変調率と、前記モータ電流値と、前記第2のリプル電流の値との関係が規定されてなるリプル電流テーブルを参照して、前記第2のリプル電流の計測値を特定する。
【0011】
また、本発明の第4の態様によれば、空調システムは、上述の寿命予測装置を備える。
【0012】
また、本発明の第5の態様によれば、寿命予測方法は、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、前記直流電力を平滑化する電解コンデンサの寿命を推定する方法であって、前記整流器側から前記電解コンデンサに入力される第1のリプル電流を計測するステップと、前記インバータ側から前記電解コンデンサに入力される第2のリプル電流を計測するステップと、前記第1のリプル電流の計測値及び前記第2のリプル電流の計測値に基づいて前記電解コンデンサに入力される総リプル電流を演算するステップと、前記総リプル電流の演算値を所定の寿命演算式に代入して前記電解コンデンサの寿命を演算するステップと、を有する。
【0013】
また、本発明の第6の態様によれば、プログラムは、商用電源からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータとの間に設けられ、前記直流電力を平滑化する電解コンデンサの寿命を推定するコンピュータに、前記整流器側から前記電解コンデンサに入力される第1のリプル電流を計測するステップと、前記インバータ側から前記電解コンデンサに入力される第2のリプル電流を計測するステップと、前記第1のリプル電流の計測値及び前記第2のリプル電流の計測値に基づいて前記電解コンデンサに入力される総リプル電流を演算するステップと、前記総リプル電流の演算値を所定の寿命演算式に代入して前記電解コンデンサの寿命を演算するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、電力変換回路に実装される電解コンデンサの寿命を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る空調システムの全体構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るシステム制御部の機能構成を示す図である。
図3】第1の実施形態に係るモータ制御部の機能構成を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る低周波リプル電流計測部の機能を説明する図である。
図5】第1の実施形態に係る高周波リプル電流計測部の機能を説明する図である。
図6】第1の実施形態に係る累積寿命消費率演算部の機能を説明するための図である。
図7】第1の実施形態に係る累積寿命消費率演算部の機能を説明するための図である。
図8】第1の実施形態に係る回転数指令出力部の機能を説明するための図である。
図9】第1の実施形態の変形例に係る回転数指令出力部の機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る寿命予測装置、及び、これを備える空調システムについて、図1図7を参照しながら説明する。
【0017】
(空調システムの全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る空調システムの全体構成を示す図である。
図1に示す空調システム1は、室外機に搭載されて、圧縮機を回転駆動させるシステムである。なお、図1においては、圧縮機等の図示を省略している。
【0018】
本実施形態に係る空調システム1は、電力変換回路10と、制御装置11とを具備する。電力変換回路10は、交流電源PSに接続され、当該交流電源PSから入力される三相交流電力を、モータ102の駆動用の交流電力に変換する回路である。交流電源PSは、三相交流電力を出力する一般的な商用電力系統である。モータ102は、例えば、圧縮機を回転駆動させる三相交流モータである。
なお、以下の説明では、電力変換回路10が具備する各構成において、交流電源PSに近い側を「上流側」とも表記し、モータ102に近い側を「下流側」とも表記する。
【0019】
電力変換回路10の構成について説明する。
図1に示すように、電力変換回路10は、整流器100と、インバータ101と、モータ102とを備えている。
【0020】
整流器100は、例えばダイオードモジュールであって、交流電源PSから入力された三相交流電力を直流電力に変換する。
【0021】
インバータ101は、例えばIPM(Intelligent Power Module)であって、内部のパワートランジスタのスイッチング(ON/OFF)動作により、直流電力からモータ駆動用の三相交流電力を生成する。インバータ101は、制御装置11(後述するモータ制御部111)からの駆動指令(PWM(Pulse Width Modulation)信号)に従ってスイッチング動作する。
【0022】
図1に示すように、整流器100の高電位側出力は、高電圧線Pを通じてインバータ101の高電位端子Tpに接続される。また、整流器100の低電位側出力は、低電圧線Nを通じてインバータ101の低電位端子Tnに接続される。高電圧線P及び低電圧線Nには、整流器100が出力する直流電力を平滑化するためのリアクタLと平滑コンデンサFCとが接続されている。
リアクタLは、整流器100から出力される直流電力を平滑するための受動素子であって、高電圧線P上において、整流器100の下流側、かつ、平滑コンデンサFCの上流側に接続される。
平滑コンデンサFCは、整流器100から出力される直流電力を平滑するための受動素子であって、リアクタLの下流側、かつ、インバータ101の上流側において、高電圧線Pと低電圧線Nとの間に接続される。平滑コンデンサFCは、電解コンデンサである。平滑コンデンサFCには、リプル電流が入力される。このリプル電流の大きさは、平滑コンデンサFCの寿命に大きな影響を与えることが知られている。平滑コンデンサFCに入力されるリプル電流には、整流器100側から入力される低周波リプル電流IL(第1のリプル電流)と、インバータ101側から入力される高周波リプル電流IH(第2のリプル電流)とがある。低周波リプル電流ILの周波数は、交流電源PSの電源周波数に依存する周波数であって、例えば、300Hz程度の周波数で変動する。高周波リプル電流IHは、インバータ101のスイッチング動作の周波数に依存する周波数であって、例えば、数kHz~数十kHzの周波数を有する。
【0023】
また、インバータ101の高電位端子Tpと低電位端子Tnとの間にはスナバコンデンサSCが接続される。スナバコンデンサSCは、インバータ101のスイッチング動作に起因して発生するスパイク電流を緩和する。
【0024】
電力変換回路10は、更に、電流センサSE1(第1の電流センサ)と、電流センサSE2-1、SE2-2(第2の電流センサ)とを有している。
電流センサSE1は、整流器100とリアクタLとを接続する高電圧線P上に設けられ、整流器100からインバータ101に流れるリアクタ電流IDC(直流電流)を検出する。
電流センサSE2-1、SE2-2は、インバータ101とモータ102とを接続する配線のうちの2相(図1の例ではU相、W相)に設けられ、モータ電流IMを検出する。
電流センサSE1及び電流センサSE2-1、SE2-2は、例えばクランプ式の電流センサであってもよい。電流センサSE1及び電流センサSE2-1、SE2-2から出力される各電流の検出信号は、制御装置11(モータ制御部)に入力される。制御装置11は、各電流センサから入力される検出信号に基づいて、リアクタ電流IDCの計測値であるリアクタ電流値、及び、モータ電流IMの計測値であるモータ電流値を逐次サンプリングして取得する。
【0025】
制御装置11の構成について説明する。
図1に示すように、制御装置11は、システム制御部110と、インバータ101に駆動指令を出力しモータ102の駆動を制御するモータ制御部111とを有してなる。システム制御部110、モータ制御部111は、それぞれ、マイクロコントローラ等のプロセッサ等であってよい。
本実施形態に係る制御装置11は、後述するように、平滑コンデンサFCの寿命を予測する寿命予測装置として機能する。
【0026】
システム制御部110は、空調システム1としての動作全体を制御する。システム制御部110は、外部(室内機コントローラ)から、空調システム1の利用者が設定した設定温度T*と、温度センサを通じて取得される現在の観測温度Tとを入力し、これらの値に応じた回転数指令RPS*をモータ制御部111に出力する。
【0027】
モータ制御部111は、システム制御部110から入力する回転数指令RPS*に応じた回転数となるような駆動指令を、インバータ101に向けて出力する。モータ制御部111は、駆動指令を出力するにあたり、電流センサSE2-1、SE2-2を通じて取得するモータ電流値も参照する。
【0028】
モータ制御部111は、電流センサSE1を通じて取得されたリアクタ電流値、及び、電流センサSE2-1、SE2-2を通じて取得されたモータ電流値をシステム制御部110に出力する。そして、システム制御部110は、モータ制御部111から入力されたこれらの電流値に基づいて保護動作を行う。「保護動作」とは、大電流に伴う発熱による回路部品の劣化や損傷を防止するための機能である。システム制御部110は、モータ制御部111から入力されたリアクタ電流値又はモータ電流値が、それぞれについて予め規定された閾値を上回った場合に、電力変換回路10への負荷を低減させるべく、回転数指令RPS*を低減させる保護動作を実行する。
【0029】
また、第1の実施形態に係るモータ制御部111は、平滑コンデンサFCに入力される低周波リプル電流ILと、インバータ101側から入力される高周波リプル電流IHとをそれぞれ計測し、各計測値をシステム制御部110に出力する。低周波リプル電流IL、高周波リプル電流IHの計測値を入力したシステム制御部110は、これらの計測値を用いて平滑コンデンサFCの寿命予測を行う。
以下、システム制御部110及びモータ制御部111が有する上記の機能について詳しく説明する。
【0030】
(制御装置の機能構成)
図2は、第1の実施形態に係るシステム制御部の機能構成を示す図である。
【0031】
システム制御部110の機能構成について、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、システム制御部110は、所定のプログラムに従って動作することで、回転数指令出力部1100、寿命演算部1101、及び、累積寿命消費率演算部1102としての機能を発揮する。
【0032】
回転数指令出力部1100は、設定温度T*及び観測温度Tに基づく回転数指令RPS*を出力する。また、回転数指令出力部1100は、寿命消費抑制動作に基づいて、回転数指令RPS*を低減させる機能を有する。ここで、「寿命消費抑制動作」とは、上述の保護動作とは別の動作であって、平滑コンデンサFCの寿命の過度の消費を抑えるための動作である。具体的には、累積寿命消費率が、累積運転時間ごとに事前に規定された上限値(累積寿命消費率上限値)を超過しないように、回転数指令RPS*に制限をかける動作のことを指す。この寿命消費抑制動作の詳細については後述する。
寿命演算部1101は、モータ制御部111から入力される総リプル電流値(総リプル電流の計測値)を所定の寿命演算式に代入して、平滑コンデンサFCの寿命を演算する。
累積寿命消費率演算部1102は、運転中において、寿命演算部1101によって逐次算出された寿命の演算結果(瞬時推定寿命)に基づいて、平滑コンデンサFCの累積寿命消費率を演算する。
【0033】
図3は、第1の実施形態に係るモータ制御部の機能構成を示す図である。
モータ制御部111の機能構成について、図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、モータ制御部111は、所定のプログラムに従って動作することで、駆動指令出力部1110、低周波リプル電流計測部1111、高周波リプル電流計測部1112、及び、総リプル電流演算部1113としての機能を発揮する。
【0034】
駆動指令出力部1110は、システム制御部110から入力される回転数指令RPS*、及び、電流センサSE2-1、SE2-2(図1)を通じて取得されるモータ電流IMの計測値(モータ電流値)に基づいて、インバータ101に向けて駆動指令を出力する。本実施形態に係る駆動指令出力部1110は、インバータ101に向けて出力した駆動指令の結果、適用される変調率を高周波リプル電流計測部1112に出力する。ここで、「変調率」とは、高電圧線Pと低電圧線Nとの間に印加される直流電圧VDC[V](図1)に対する、インバータ101がモータ102の各相に印加させるモータ線間電圧VM[Vrms](図1)のピーク値(√2・VM)の比を意味する。例えば、モータ線間電圧VMのピーク値(√2・VM)が直流電圧VDCと一致する場合、変調率は100%となる。駆動指令出力部1110は、現在出力している駆動指令でインバータ101を駆動させた場合に達成される変調率を演算し、高周波リプル電流計測部1112に向けて出力する。
【0035】
低周波リプル電流計測部1111は、整流器100側から平滑コンデンサFCに入力される低周波リプル電流ILを計測する。
【0036】
高周波リプル電流計測部1112は、インバータ101側から平滑コンデンサFCに入力される高周波リプル電流IHを計測する。具体的には、高周波リプル電流計測部1112は、電流センサSE2-1、SE2-2を通じてモータ電流IMの計測値であるモータ電流値を取得する。そして、高周波リプル電流計測部1112は、事前に用意されたリプル電流テーブルtbを参照して、高周波リプル電流IHの計測値を特定する。ここで、リプル電流テーブルtbとは、駆動指令に基づくインバータ101の動作で適用されている変調率と、モータ電流値と、高周波リプル電流IHの値との関係が規定されてなる情報テーブルである。
【0037】
総リプル電流演算部1113は、低周波リプル電流ILの計測値及び高周波リプル電流IHの計測値に基づいて平滑コンデンサFCに入力される総リプル電流を演算する。総リプル電流の具体的な演算方法については後述する。
【0038】
(低周波リプル電流計測部の機能)
図4は、第1の実施形態に係る低周波リプル電流計測部の機能を説明する図である。
図4を参照しながら、モータ制御部111の低周波リプル電流計測部1111の機能について詳しく説明する。
【0039】
図4は、交流電源PSから入力される交流電力が平衡である場合(電源平衡時)、及び、交流電源PSから入力される交流電力が不平衡である場合(電源不平衡時)のそれぞれの場合におけるリアクタ電流IDC、リアクタ電流IDCの時間平均値IDC_avg、及び、低周波リプル電流ILの波形を示している。
【0040】
低周波リプル電流計測部1111の処理の手順について説明する。
まず、低周波リプル電流計測部1111は、電流センサSE1を通じてリアクタ電流IDCの計測値[A](リアクタ電流値)を逐次サンプリングして取得、蓄積する(ステップS1)。このリアクタ電流IDCは、交流電源PSからの三相交流電力が整流器100によって整流された直後の電流である。したがって、リアクタ電流IDCの波形は、図4に示すとおり、AC成分とDC成分の両方を含む。
【0041】
次に、低周波リプル電流計測部1111は、ステップS1で取得、蓄積したリアクタ電流IDCの計測値のうちの直近の所定時間分の平均値である時間平均値IDC_avg[A]を演算する(ステップS2)。平均値を演算するための上記所定時間は、例えば、図4右側に示すような電源不平衡時(AC成分が大きく増加する場合)においても、リアクタ電流の時間平均値IDC_avgが時間に対してほぼ一定となる時間(例えば、100msec以上)であることが好ましい。このように算出された時間平均値IDC_avg[A]は、リアクタ電流IDCのDC成分とほぼ同等の波形となる。即ち、演算によって得られた時間平均値IDC_avgを、リアクタ電流IDCのDC成分とみなすことができる。
【0042】
次に、低周波リプル電流計測部1111は、ステップS1で取得、蓄積したリアクタ電流IDCの計測値[A]から、ステップS2で算出した時間平均値IDC_avg[A]を逐次差し引く演算を行う(ステップS3)。このようにして算出された値は、図4に示すように、リアクタ電流IDCのAC成分と同等となり、低周波リプル電流ILとみなすことができる。したがって、低周波リプル電流計測部1111は、リアクタ電流IDCの計測値から時間平均値IDC_avgを差し引いて得られた電流値[Arms]を、低周波リプル電流ILの計測値として出力する。
【0043】
低周波リプル電流計測部1111は、以上のステップS1~ステップS3の処理を繰り返しながら、逐次、低周波リプル電流ILの計測値を出力する。
【0044】
(高周波リプル電流計測部の機能)
図5は、第1の実施形態に係る高周波リプル電流計測部の機能を説明する図である。
図5を参照しながら、モータ制御部111の高周波リプル電流計測部1112の機能について詳しく説明する。
【0045】
図5は、リプル電流テーブルtbの一例を示す図である。
リプル電流テーブルtbは、インバータ101の動作に適用されている変調率(横軸)と、高周波リプル電流[Arms](縦軸)と、モータ電流IM[Arms](グラフの各系列)との関係を示す図である。このようなリプル電流テーブルtbは、実測や回路シミュレーション等によって事前に作成される。
【0046】
高周波リプル電流計測部1112は、駆動指令出力部1110から変調率を取得する。また、高周波リプル電流計測部1112は、電流センサSE2-1、SE2-2を通じてモータ電流値を取得する。そして、高周波リプル電流計測部1112は、得られた変調率及びモータ電流値を用いて、リプル電流テーブルtbから高周波リプル電流値[Arms]を特定する。高周波リプル電流計測部1112は、このようにして特定した高周波リプル電流値をその計測値として出力する。
【0047】
(総リプル電流演算部の機能)
モータ制御部111の総リプル電流演算部1113は、低周波リプル電流計測部1111から入力した低周波リプル電流の計測値[Arms]と、高周波リプル電流計測部1112から入力した高周波リプル電流の計測値[Arms]とを用いて総リプル電流の計測値[Arms](総リプル電流値)を演算する。具体的には、総リプル電流演算部1113は、以下の式(1)を演算する。
【0048】
【数1】
【0049】
式(1)において、符号“In”は、総リプル電流値[Arms]であり、符号“IL”、“IH”は、それぞれ、低周波リプル電流の計測値[Arms]、高周波リプル電流の計測値[Arms]である。
【0050】
(寿命演算部の機能)
次に、システム制御部110の寿命演算部1101の機能について詳しく説明する。
システム制御部110の寿命演算部1101は、モータ制御部111(総リプル電流演算部1113)から入力されたリプル電流の計測値[Arms]に基づいて、平滑コンデンサFCの寿命を演算する。具体的には、寿命演算部1101は、モータ制御部111から入力されたリプル電流の計測値を式(2)、式(3)に代入する。
【0051】
【数2】
【0052】
式(2)は、平滑コンデンサFC(電解コンデンサ)についての寿命演算式の一例である。式(2)における符号“Ln”は、平滑コンデンサFCの寿命[Hour]であり、平滑コンデンサFCの周囲温度である“Tn”と、リプル電流に依存する変数である“Δtn”とに基づいて定まる。なお、“α”は一定値である。周囲温度Tnは、空調システム1が具備する温度センサを通じて取得される。
【0053】
変数“Δtn”は、式(3)で示される。
【0054】
【数3】
【0055】
式(3)において、“In”は総リプル電流値[Arms]であり、モータ制御部111からの計測値が代入される。また、式(3)において、“Δt0”は定格リプル時の温度上昇値、“Im”は定格リプル電流、“K(f)”はリプル電流周波数補正係数、“K(r)”は温度補正係数であり、いずれも定数であってよい。
【0056】
寿命演算部1101は、モータ制御部111から逐次入力される総リプル電流値を式(3)に代入し、その総リプル電流値に基づく寿命Ln[Hour]を逐次算出する。このようにして逐次算出される寿命Lnを瞬時推定寿命とも表記する。
【0057】
(累積寿命消費率演算部の機能)
図6図7は、第1の実施形態に係る累積寿命消費率演算部の機能を説明するための図である。
以下、図6図7を参照しながら、システム制御部110の累積寿命消費率演算部1102の機能について詳しく説明する。
【0058】
図6は、寿命演算部1101が逐次算出する瞬時推定寿命の推移を示すグラフG1を示している。以下、瞬時推定寿命を瞬時推定寿命G1と表記して説明する。
図6に示すように、累積寿命消費率演算部1102は、空調システム1の累積運転時間を所定の単位時間(例えば、1時間)ごとの区間に区切るとともに、当該区間(A区間、B区間、C区間、D区間、・・)ごとの寿命消費率[%]を演算する。累積寿命消費率演算部1102は、当該区間で観測された瞬時推定寿命G1の最小値を当該区間における平滑コンデンサFCの代表寿命とする。図6に示す例の場合、A区間で観測された瞬時推定寿命G1の最小値は3万時間であるから、A区間における平滑コンデンサFCの代表寿命は3万時間となる。同様に、B区間で観測された瞬時推定寿命G1の最小値は6万時間であるから、B区間における平滑コンデンサFCの代表寿命は6万時間となる。同様に、C区間で観測された瞬時推定寿命G1の最小値は2万時間であるから、C区間における平滑コンデンサFCの代表寿命は2万時間となる。同様に、D区間で観測された瞬時推定寿命G1の最小値は7万時間であるから、D区間における平滑コンデンサFCの代表寿命は7万時間となる。
【0059】
次に、累積寿命消費率演算部1102は、各区間(A区間、B区間、C区間、D区間、・・)における寿命消費率[%]を演算する。寿命消費率とは、平滑コンデンサFCが有する総寿命(区間ごとの代表寿命)のうち消費された寿命の比率である。例えば、A区間では、代表寿命3万時間のうちの1時間が使用されたので、平滑コンデンサFCの寿命消費率は、1[Hour]/30000[Hour]×100=0.00333%となる。同様に、B区間では、代表寿命6万時間のうちの1時間が使用されたので、平滑コンデンサFCの寿命消費率は、1[Hour]/60000[Hour]×100=0.00167%となる。同様に、C区間では、代表寿命2万時間のうちの1時間が使用されたので、平滑コンデンサFCの寿命消費率は、1[Hour]/20000[Hour]×100=0.005%となる。同様に、D区間では、代表寿命7万時間のうちの1時間が使用されたので、平滑コンデンサFCの寿命消費率は、1[Hour]/70000[Hour]×100=0.00143%となる。
【0060】
図7に示すように、累積寿命消費率演算部1102は、区間ごとに算出された寿命消費率を積算していき、累積寿命消費率を演算する。図7に示すグラフG2は、累積寿命消費率の推移を示している。以下、累積寿命消費率を累積寿命消費率G2とも表記する。
【0061】
(回転数指令出力部の機能)
図8は、第1の実施形態に係る回転数指令出力部の機能を説明するための図である。
以下、図8を参照しながら、回転数指令出力部1100による寿命消費抑制動作について詳しく説明する。
【0062】
システム制御部110の回転数指令出力部1100は、寿命消費抑制動作に基づいて、回転数指令RPS*を決定する。ここで、回転数指令出力部1100は、事前に規定された累積寿命消費率上限値Gthを有している。累積寿命消費率上限値Gthは、累積運転時間ごとに定められた累積寿命消費率G2の上限値である。累積寿命消費率上限値Gthは、故障なく運転できる累積運転時間の目標値である目標寿命に基づき、その傾き(即ち、単位運転時間当たりの累積寿命消費率上限値Gthの上昇率)が「100%/目標寿命」となるような直線によって規定される。例えば、目標寿命を「3万時間」と定める場合、累積寿命消費率上限値Gthは、図8に示すような、傾きが「100%/3万時間」の直線で規定される。
【0063】
回転数指令出力部1100は、累積寿命消費率演算部1102から入力される累積寿命消費率G2が累積寿命消費率上限値Gthを上回らないように回転数指令RPS*を抑制(低減)して出力する。回転数指令RPS*が抑制されることで、モータ102の回転数が低減され、これに伴い、リアクタ電流IDC及びモータ電流IMが低減される。更に、リアクタ電流IDC及びモータ電流IMが低減されることで、総リプル電流Inも低減される。これにより、累積寿命消費率の上昇ペースも抑えられる。
【0064】
ただし、空調システム1は、累積寿命消費率G2が累積寿命消費率上限値Gthを上回らない限度において、利用者の要求(設定温度T*)を満たす運転を行うべきである。そこで、回転数指令出力部1100は、現在の区間までに積算された累積寿命消費率G2と、次の区間に適用される累積寿命消費率上限値Gthとを考慮して、次の区間までに許容される累積寿命消費率G2の上昇ペースを上回らない最大の回転数指令RPS*を出力する。
【0065】
また、式(2)によれば、平滑コンデンサFCの瞬時推定寿命は、周囲温度Tnにも依存する。そのため、運転中に周囲温度Tnが下がった場合には、その分だけ総リプル電流を上昇できる余裕が生まれることになる。そこで、この場合、回転数指令出力部1100は、累積寿命消費率G2が累積寿命消費率上限値Gthを上回らない限度で、周囲温度Tnの低下に応じて、回転数指令RPS*の抑制を緩和させる。
【0066】
(作用、効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る制御装置11(寿命予測装置)は、商用電源である交流電源PSからの交流電力を直流電力に変換する整流器100と、当該直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換するインバータ101との間に設けられ、当該直流電力を平滑化する電解コンデンサ(平滑コンデンサFC)の寿命を予測する装置として機能する。
制御装置11は、整流器100側から平滑コンデンサFCに入力される低周波リプル電流ILを計測する低周波リプル電流計測部1111と、インバータ101側から平滑コンデンサFCに入力される高周波リプル電流IHを計測する高周波リプル電流計測部1112と、低周波リプル電流ILの計測値及び高周波リプル電流IHの計測値に基づいて平滑コンデンサFCに入力される総リプル電流Inを演算する総リプル電流演算部1113と、総リプル電流Inの演算値を所定の寿命演算式(式(2)、式(3))に代入して平滑コンデンサFCの寿命を演算する寿命演算部1101と、を備えている。
このようにすることで、整流器100側から入力される低周波リプル電流と、インバータ101側から入力される高周波リプル電流との両方を考慮して平滑コンデンサFCの寿命を予測するので、低周波リプル電流IL及び高周波リプル電流IHのいずれか一方のみを考慮して予測する場合に比べて予測精度を高めることができる。
【0067】
なお、低周波リプル電流と高周波リプル電流との両方を考慮して平滑コンデンサFCの寿命を予測しようとする場合、高電圧線P(又は低電圧線N)と平滑コンデンサFCとを接続する配線上に電流センサを設けて直接的に総リプル電流を計測する方法も考えられる。しかしながら、このようにすると、当該配線上に電流センサを追設する必要が生じ、製造コストが増大する。
これに対し、本実施形態に係る空調システム1では、整流器100とリアクタLとを接続する高電圧線P上に設けられた電流センサSE1を通じて、低周波リプル電流ILを計測する。また、本実施形態に係る空調システム1では、インバータ101とモータ102とを接続する配線のうちの一相(図1の例ではW相)に設けられた電流センサSE2-1、SE2-2を通じて、高周波リプル電流IHを計測する。
ここで、電流センサSE1は、もともと、ダイオードモジュールである整流器100やリアクタLを保護するための保護動作用として設けられている電流センサである。また、電流センサSE2-1、SE2-2は、もともと、インバータ101の制御用、及び、保護動作用として設けられている電流センサである。したがって、本実施形態に係る空調システム1によれば、低周波リプル電流ILと高周波リプル電流IHの両方を考慮して平滑コンデンサFCの寿命を予測するに際し、新たな電流センサを追設する必要がない。
【0068】
また、第1の実施形態に係る空調システム1は、平滑コンデンサFCに入力されるリプル電流の計測値に基づいて、運転中における平滑コンデンサFCの瞬時推定寿命を演算する寿命演算部1101と、寿命演算部1101によって算出された瞬時推定寿命に基づいて、平滑コンデンサFCの累積寿命消費率を演算する累積寿命消費率演算部1102と、利用者によって設定される設定温度に応じて回転数指令を出力する回転数指令出力部1100と、を備え、回転数指令出力部1100は、累積寿命消費率が所定の上限値(累積寿命消費率上限値Gth)を上回らないように回転数指令RPS*を制限する。
このようにすることで、平滑コンデンサFCの累積寿命消費率が、事前に規定された上限値を上回らないように回転数指令RPS*が制限されるので、平滑コンデンサFCの寿命が目標寿命よりも短い運転時間で故障することを抑制することができる。
【0069】
また、第1の実施形態に係る空調システム1によれば、累積寿命消費率上限値Gthは、累積運転時間に対して所定の係数(100%/目標寿命)で比例するように定められている。
このようにすることで、累積寿命消費率の上昇ペースを目標寿命までの運転時間全体で均一化することができる。これにより、回転数指令RPS*の抑制の度合いを目標寿命までの運転時間全体で均一化させることができる。
【0070】
以上、第1の実施形態に係る制御装置11(寿命予測装置)及びこれを備える空調システム1について詳細に説明したが、制御装置11及び空調システム1の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0071】
(変形例)
図9は、第1の実施形態の変形例に係る回転数指令出力部の機能を説明するための図である。
第1の実施形態に係る空調システム1によれば、累積寿命消費率上限値Gthは、傾き(単位運転時間当たりの累積寿命消費率上限値Gthの上昇率)が「100%/目標寿命」となる直線で定められているものとして説明した(図8参照)。
しかし、他の実施形態に係る空調システム1においてはこの態様に限定されない。例えば、変形例に係る空調システム1では、図9に示すように、累積寿命消費率上限値Gthは、第1の傾きで規定される範囲と、第2の傾き(≠第1の傾き)で規定される範囲とを有するものであってもよい。図9に示す例では、累積寿命消費率上限値Gthは、累積運転時間が0時間から1万時間までの範囲において「第1の傾き=100%/2万時間」が適用され、累積運転時間が1万時間から3万時間までの範囲において「第2の傾き=100%/4万時間」が適用される。この例では、累積運転時間が1万時間を超えた後、回転数指令RPS*の制限を受ける度合いが大きくなる。
また、他の実施形態に係る空調システム1においては、累積寿命消費率上限値Gthを変更(編集)できる機能を有してもよい。これにより、利用者は、空調システム1の利用形態として、能力を優先するか、寿命を優先するかを、運転時間ごとに自由に定めることができる。
【0072】
また、第1の実施形態に係る制御装置11(寿命予測装置)は、低周波リプル電流ILと高周波リプル電流IHとの両方を考慮して平滑コンデンサFCの寿命を予測するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。即ち、他の実施形態に係る制御装置11は、低周波リプル電流IL及び高周波リプル電流IHのいずれか一方のみを考慮して平滑コンデンサFCの寿命を予測するものであってもよい。
【0073】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。上述の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述の実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 空調システム
10 電力変換回路
100 整流器
101 インバータ
102 モータ
11 制御装置(寿命予測装置)
110 システム制御部
1100 回転数指令出力部
1101 寿命演算部
1102 累積寿命消費率演算部
111 モータ制御部
1110 駆動指令出力部
1111 低周波リプル電流計測部(第1リプル電流計測部)
1112 高周波リプル電流計測部(第2リプル電流計測部)
1113 総リプル電流演算部
SE1 電流センサ(第1の電流センサ)
SE2-1、SE2-2 電流センサ(第2の電流センサ)
L リアクタ
FC 平滑コンデンサ
SC スナバコンデンサ
PS 交流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9