(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】熱蛍光シート読み取り方法、及び、熱蛍光シート読み取り装置
(51)【国際特許分類】
G03B 42/02 20210101AFI20231016BHJP
G21K 4/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G03B42/02 B
G21K4/00 K
(21)【出願番号】P 2019083192
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】597162329
【氏名又は名称】東洋メディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】嶋佐 親記
(72)【発明者】
【氏名】竹内 靖治郎
(72)【発明者】
【氏名】金井 幸三
(72)【発明者】
【氏名】前田 弘康
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040591(JP,A)
【文献】特開2018-136317(JP,A)
【文献】特開2016-050859(JP,A)
【文献】実開平06-051899(JP,U)
【文献】特開2010-245407(JP,A)
【文献】特開2010-137562(JP,A)
【文献】特開2014-028913(JP,A)
【文献】特開平04-238300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 42/02
G21K 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱蛍光シートから発せられる蛍光の二次元分布を読み取る熱蛍光シート読み取り方法であって、
前記熱蛍光シート上に熱伝導シートを載置する載置ステップと、
15℃/分以下の温度上昇率で前記熱蛍光シートを加熱する加熱ステップと、
前記加熱ステップで加熱された前記熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取る撮像ステップと、を含み、
前記加熱ステップでは、加熱部を前記熱伝導シートと接触させて、前記熱伝導シートを介して前記熱蛍光シートを前記加熱部によって加熱し、
前記熱伝導シートの材料は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素ゴムであ
り、
前記加熱ステップは、
100℃まで前記熱蛍光シートを温度上昇させる第1加熱ステップと、
前記第1加熱ステップの後に、15℃/分以下の温度上昇率で前記熱蛍光シートを200℃以上まで温度上昇させる第2加熱ステップと、を含み、
前記第1加熱ステップでは、15℃/分より高い温度上昇率で100℃まで前記熱蛍光シートを温度上昇させる
熱蛍光シート読み取り方法。
【請求項2】
前記第2加熱ステップでは、8分以上かけて前記熱蛍光シートが200℃以上となるように、前記熱蛍光シートを温度上昇させる
請求項
1に記載の熱蛍光シート読み取り方法。
【請求項3】
前記熱伝導シートの厚みは、0.5mm以上である
請求項
1又は2に記載の熱蛍光シート読み取り方法。
【請求項4】
前記熱伝導シートは、黒色である
請求項
1~3のいずれか1項に記載の熱蛍光シート読み取り方法。
【請求項5】
熱蛍光シートから発せられる蛍光を透過する透光性を有するガラス板と、厚みが0.5mm以上である熱伝導シートと、前記ガラス板及び前記熱伝導シートで前記熱蛍光シートを挟んだ状態と挟んでいない状態とに切替可能に前記ガラス板及び前記熱伝導シートを支持する枠体と、を備え、前記熱伝導シートの材料は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素ゴムであるカセットと、
前記熱伝導シートと接触し、前記熱伝導シートを介して前記熱蛍光シートを加熱する加熱部と、
前記熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取る撮像部と、を備え
、
前記加熱部は、
100℃まで前記熱蛍光シートを温度上昇させる第1加熱ステップと、
前記第1加熱ステップの後に、15℃/分以下の温度上昇率で前記熱蛍光シートを200℃以上まで温度上昇させる第2加熱ステップと、を行い、
前記第1加熱ステップでは、15℃/分より高い温度上昇率で100℃まで前記熱蛍光シートを温度上昇させる
熱蛍光シート読み取り装置。
【請求項6】
前記熱伝導シートは、黒色である
請求項
5に記載の
熱蛍光シート読み取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線が照射された熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取る熱蛍光シート読み取り方法、当該熱蛍光シートを保持するカセット、及び、当該カセットを備える熱蛍光シート読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線の被ばく箇所、被ばく量等を検出する放射線線量計がある。放射線線量計として、例えば、放射線が暴露された箇所が加熱されることで蛍光を発するTLD(Thermoluminescent Dosimeter)がある。また、従来、TLDの一例である熱蛍光シートから発せられる蛍光を測定する(言い換えると、読み取る)読み取り装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で開示されている熱蛍光の画像読み取り装置は、熱蛍光体と硝子や合成樹脂等とからなる混合物から作製されたサンプルシート(熱蛍光シート)と、熱蛍光シートを加熱する加熱部と、熱蛍光シートが設置される設置部と、熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取る撮像部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱蛍光シートは、加熱された際に熱によって変形することがある。熱蛍光シートが変形すると、撮像部は、熱蛍光シートから発せられる蛍光の二次元分布を精度よく読み取れない。
【0006】
本発明は、熱蛍光シートの変形を抑制できる熱蛍光シート読み取り方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る熱蛍光シート読み取り方法は、熱蛍光シートから発せられる蛍光の二次元分布を読み取る熱蛍光シート読み取り方法であって、15℃/分以下の温度上昇率で前記熱蛍光シートを加熱する加熱ステップと、前記加熱ステップで加熱された前記熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取る撮像ステップと、を含む。
【0008】
これによれば、熱蛍光シートが急激に加熱されることが抑制される。特に、熱蛍光シートがトルエン等の揮発性の物質を含む場合、急激な温度上昇によって気化してしまう可能性がある。このような物質が気化した場合、熱蛍光シートには気泡が発生し、変形することとなる。そこで、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シートを温度上昇させることで、このような物質が急激に気化することを抑制する。これにより、熱蛍光シートの変形は、抑制される。
【0009】
また、例えば、前記加熱ステップでは、15℃/分以下の温度上昇率で前記熱蛍光シートを100℃以下から200℃以上まで温度上昇させる。
【0010】
これによれば、高温の状態において、熱蛍光シートの急激な温度上昇が抑制される。そのため、熱蛍光シートの変形は、さらに抑制される。
【0011】
また、例えば、前記加熱ステップは、100℃まで前記熱蛍光シートを温度上昇させる第1加熱ステップと、前記第1加熱ステップの後に、15℃/分以下の温度上昇率で前記熱蛍光シートを200℃以上まで温度上昇させる第2加熱ステップと、を含む。
【0012】
熱蛍光シートの温度上昇速度を下げる程、熱蛍光シートは変形しにくくなると考えられる。しかしながら、熱蛍光シートの温度上昇速度を下げる程、熱蛍光シートから発せられる蛍光の読み取りに、多くの時間が必要となる。そこで、特に、トルエン等の揮発性の物質が気化しやすくなる100℃から200℃程度の高温の状態において、15℃/分以下の温度上昇率で加熱する。これにより、熱蛍光シートの変形は抑制され、且つ、蛍光の読み取りにかかる時間が長くなることが抑制され得る。
【0013】
また、例えば、前記第2加熱ステップでは、8分以上かけて前記熱蛍光シートが200℃以上となるように、前記熱蛍光シートを温度上昇させる。
【0014】
これによれば、高温の状態において、熱蛍光シートの急激な温度上昇がさらに抑制される。そのため、熱蛍光シートの変形は、さらに抑制される。
【0015】
また、例えば、本発明の一態様に係る熱蛍光シート読み取り方法は、さらに、前記熱蛍光シート上に熱伝導シートを載置する載置ステップを含み、前記加熱ステップでは、加熱部を前記熱伝導シートと接触させて、前記熱伝導シートを介して前記熱蛍光シートを前記加熱部によって加熱する。
【0016】
これによれば、熱伝導シートを介して熱蛍光シートが加熱部によって加熱されるために、熱伝導シートの厚み、材料等を好適に選択することにより、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シートを加熱できる。そのため、熱蛍光シートの変形は、さらに抑制される。
【0017】
また、例えば、前記熱伝導シートの厚みは、0.5mm以上である。
【0018】
これによれば、熱伝導シートによって熱蛍光シートの急激な温度上昇をさらに抑制しやすくなるため、さらに時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シートを加熱しやすくできる。そのため、熱蛍光シートの変形は、さらに抑制される。
【0019】
また、例えば、前記熱伝導シートの材料は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素ゴムである。
【0020】
これらの材料は、例えば、熱伝導シートに広く用いられるアルミニウム等の材料と比較して、熱伝導率が低く、且つ、熱によって変形しにくい。そのため、熱伝導シートにこれらの材料を用いることで、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シートを加熱でき、且つ、熱伝導シートを熱により変形しにくくできる。
【0021】
また、例えば、前記熱伝導シートは、黒色である。
【0022】
例えば、本発明に係る熱蛍光シート読み取り方法を実行する装置においては、熱蛍光シートから出た光が乱反射する場合がある。そこで、熱伝導シートが黒色であることで、このような乱反射された光は、熱伝導シートに吸収される。これにより、熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取るカメラに乱反射された光が入りにくくなるため、カメラにおける蛍光の読み取り精度は、向上される。
【0023】
また、本発明の一態様に係るカセットは、熱蛍光シートから発せられる蛍光を透過する透光性を有するガラス板と、厚みが0.5mm以上である熱伝導シートと、前記ガラス板及び前記熱伝導シートで前記熱蛍光シートを挟んだ状態と挟んでいない状態とに切替可能に前記ガラス板及び前記熱伝導シートを支持する枠体と、を備える。
【0024】
このような構成によれば、本発明に係るカセットを用いて熱蛍光シートを加熱する場合に、熱伝導シートを介して熱蛍光シートを加熱できる。特に、熱伝導シートの厚さを0.5mm以上とすることによりに、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シートを加熱できる。そのため、熱蛍光シートの変形は、抑制される。
【0025】
また、例えば、前記熱伝導シートの材料は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素ゴムである。
【0026】
これらの材料は、熱伝導率が低く、且つ、熱によって変形しにくい。そのため、熱伝導シートにこれらの材料を用いることで、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シートを加熱でき、且つ、熱伝導シートを熱により変形しにくくできる。
【0027】
また、例えば、前記熱伝導シートは、黒色である。
【0028】
これによれば、本発明に係るカセットが用いられる装置においては、熱蛍光シートから出た光が熱蛍光シートと熱伝導シートとの間で乱反射する場合がある。そこで、熱伝導シートが黒色であることで、このような乱反射された光は、熱伝導シートに吸収される。これにより、熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取るカメラに乱反射された光が入りにくくなるため、カメラにおける蛍光の読み取り精度は、向上される。
【0029】
また、本発明の一態様に係る熱蛍光シート読み取り装置は、上記カセットと、前記熱伝導シートと接触し、前記熱伝導シートを介して前記熱蛍光シートを加熱する加熱部と、前記熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取る撮像部と、を備える。
【0030】
これによれば、カセットが備える熱伝導シートを介して熱蛍光シートを加熱できる。特に、熱伝導シートの厚さが0.5mm以上であることにより、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シートを加熱できる。そのため、熱蛍光シートの変形は、抑制される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様に係る熱蛍光シート読み取り方法によれば、熱蛍光シートの変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置の正面側の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置の背面側の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置の正面側の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るカセットの外観を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るカセットにおいて熱伝導シートを開いた状態の外観を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5のVII-VII線における、実施の形態に係るカセットを示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係るカセットを用いた場合における熱蛍光シートの温度変化を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置の動作手順を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置が熱蛍光シートを加熱する動作手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0034】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0035】
また、以下の実施の形態において、略一致の「略」を用いた表現を用いている。例えば、略一致は、完全に一致であることを意味するだけでなく、実質的に一致する、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。他の「略」を用いた表現、又は、「程度」を用いた表現についても同様である。
【0036】
また、本明細書及び図面において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、Z軸方向を鉛直方向とし、Z軸に垂直な方向(XY平面に平行な方向)を水平方向としている。なお、Z軸の正方向を鉛直上方としている。
【0037】
(実施の形態)
[全体構成]
まず、
図1~
図4を参照しながら、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置の全体構成について説明する。
【0038】
図1は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置1の正面側の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置1の背面側の外観を示す斜視図である。
図3は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置1の内部構造を示す斜視図である。
図4は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置1の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【0039】
なお、
図4においては、空気の流路を白抜きの矢印で示し、カセット31の動きを一点鎖線の矢印で示している。
【0040】
熱蛍光シート読み取り装置1は、実施の形態に係るカセット31が用いられる熱蛍光シート読み取り装置の一例である。熱蛍光シート読み取り装置1は、放射線等が照射された熱蛍光体を含む熱蛍光シート60を加熱し、熱蛍光シートから発せられる蛍光(熱蛍光)の二次元分布を読み取る(測定する)装置である。
【0041】
例えば、作業者は、放射線の分布を確認したい平面に、上述した熱蛍光シート60を設置する。作業者は、熱蛍光シート60に放射線を照射した後に熱蛍光シート読み取り装置1で蛍光を読み取る。
【0042】
これにより、作業者は、蛍光の二次元分布及び各々の位置での光強度が確認できる。そのため、作業者は、放射線が照射された分布を蛍光の二次元分布から確認できる。
【0043】
また、熱蛍光体が照射された放射線量と熱蛍光体から発せられる蛍光の光量との対応関係が分かっていれば、蛍光の光強度から照射された放射線量が間接的に確認できる。
【0044】
熱蛍光体は、放射線が照射された際に、その放射線のエネルギーにより一部の電子が励起され、その状態が保持される。そして、熱蛍光体は、電子が励起された状態で外部から熱的なエネルギーが与えられた際(具体的には、加熱された時)に、電子が基底状態に戻り、蛍光が発せられる。熱蛍光シート60は、熱蛍光体がシート状の平面に均一に形成されたものである。
【0045】
熱蛍光シート読み取り装置1は、操作部5と、制御部29と、記憶部30と、加熱部19と、加熱室27と、撮像部15と、第1冷却ファン14と、第2冷却ファン24と、冷却室22と、搬送部36と、筐体2と、カセット31と、を備える。
【0046】
操作部5は、作業者の指示を受け付けるユーザインターフェースである。具体的には、操作部5は、作業者が熱蛍光シート読み取り装置1の操作を指示するための装置である。操作部5は、熱蛍光を撮像部15が読み取る際に加熱部19の温度の設定、測定時間等の指示を受け付けるデバイスである。
【0047】
操作部5は、例えば、タッチパネル等、キーボード、ボタン等である。
【0048】
制御部29は、加熱部19、撮像部15、搬送部36、第1冷却ファン14、第2冷却ファン24等の熱蛍光シート読み取り装置1が備える各構成要素の動作を制御する処理部である。
【0049】
制御部29は、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させる。制御部29は、例えば、加熱部19を制御することで、15℃/分以下で加熱部19を温度上昇させることで、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させるように、加熱部19に熱蛍光シート60を加熱させる。
【0050】
15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させることができればよく、制御部29が加熱部19を15℃/分以下の温度上昇率で温度上昇させることで、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させてもよい。或いは、熱蛍光シート60と加熱部19との距離が制御部29に制御されることにより、制御部29が15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させてもよい。
【0051】
本実施の形態では、制御部29は、所定の温度まで加熱部19を加熱させた後で、カセット31に加熱部19を接触させて、カセット31に保持された熱蛍光シート60を15℃/分以下の温度上昇率で温度上昇させる。
【0052】
なお、15℃/分とは、例えば、単位時間当たりの平均値、中央値、及び、最大値のいずれかである。また、瞬間的に15℃/分を超える様な温度変化が含まれてもよく、この場合、15℃/分とは、例えば、単位時間当たりの平均値である。
【0053】
また、制御部29は、例えば、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を100℃以下から200℃以上まで温度上昇させる。
【0054】
また、例えば、制御部29は、100℃まで熱蛍光シート60を温度上昇させ、さらに、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を200℃以上まで温度上昇させる。制御部29は、例えば、8分以上かけて15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60が100℃から200℃以上となるように、熱蛍光シート60を温度上昇させる。
【0055】
なお、制御部29は、熱蛍光シート60が100℃から200℃以上になるまでの間、平均して15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させるように加熱部19を制御してもよい。制御部29が、熱蛍光シート60が100℃から200℃以上になるまでの間、常に15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させるように加熱部19を制御するとよりよい。また、制御部29は、加熱部19の熱容量を変化させながら熱蛍光シート60を15℃/分の温度上昇率で100℃から200℃以上になるまで加熱してもよい。具体的には例えば、制御部29は、加熱部19を加熱させた後で加熱されていないカセット31と接触させてカセット31を加熱する。このようにして、制御部29は、加熱させた加熱部19を加熱されていないカセット31と接触させることで加熱部19の温度を少し下げつつ、つまり、加熱部19の熱容量を意図的に一度下げる。制御部29は、さらに、加熱部19を温度上昇させることで、結果的に15℃/分の温度上昇率で熱蛍光シート60を加熱してもよい。
【0056】
また、制御部29は、撮像部15を制御することで、加熱された熱蛍光シート60から発せられる蛍光の二次元分布を撮像部15に読み取らせる。
【0057】
また、制御部29は、例えば、加熱部19を加熱させている間、及び、加熱することを停止させてから任意に定められた時間、第1冷却ファン14、第2冷却ファン24等の熱蛍光シート読み取り装置1が備えるファンを駆動させて、筐体2内を冷却させる。
【0058】
また、制御部29は、例えば、加熱室27に配置されているカセット31を、搬送部36を制御することで、搬送部36に冷却室22へ移動させる。
【0059】
制御部29は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と当該CPUが実行する制御プログラムとによって実現される。
【0060】
記憶部30は、制御部29が実行する制御プログラム、データ等を記憶する記憶装置である。
【0061】
記憶部30は、例えば、加熱部19の温度制御条件、撮像部15で取得した画像データ等を記憶する。ここで、温度制御条件とは、加熱部19の温度を所定の温度で、所定の時間保持する条件等が設定されたプログラム(ソフトウェア)であり、制御部29が加熱部19に実行させる、例えば、上記した15℃/分以下の温度上昇率で加熱部19を温度上昇させる等の温度制御条件である。
【0062】
記憶部30は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって実現される。
【0063】
加熱部19は、熱蛍光シート60が保持されたカセット31が搬入される加熱室27で熱蛍光シート60を加熱する加熱装置である。具体的には、加熱部19は、加熱室27に設置されたカセット31を上部から加熱する。より具体的には、加熱部19は、熱蛍光シート60を加熱する際に、熱蛍光シート60が設置されたカセット31と接触してカセット31を加熱する。加熱部19は、カセット31の上面全体に均一に力が加わるようにカセット31と接触する。
【0064】
本実施の形態では、熱蛍光シート読み取り装置1は、加熱部19を移動させるためのモータ28を備える。
【0065】
モータ28は、加熱部19を移動させるためのモータである。制御部29は、モータ28を駆動することで、加熱部19で熱蛍光シート60の加熱を行う場合には、加熱部19を加熱室27に設置されたカセット31へ近づけるように移動させる。具体的には、制御部29は、加熱部19が加熱を行う場合には、加熱室27に設置されたカセット31を加熱部19で押さえつけるように、モータ28を駆動して加熱部19を移動させる。一方、制御部29は、加熱部19で熱蛍光シート60の加熱を行わない場合には、加熱部19を加熱室27に設置されたカセット31から遠ざけるように、モータ28を駆動して加熱部19を移動させる。
【0066】
加熱室27は、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を撮像部15が読み取るために、加熱部19により加熱される熱蛍光シート60(より具体的には、カセット31に設置された熱蛍光シート60)が設置される部屋(空間)である。加熱室27に設置された熱蛍光シート60は、加熱部19により加熱され、蛍光が発せられる。
【0067】
加熱部19は、例えば、電気ヒータ等のヒータユニットである。
【0068】
撮像部15は、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を読み取る撮像装置である。撮像部15は、例えば、蛍光を読み取る撮像素子を有するカメラ15bと、蛍光を集光するレンズ16と、所定の波長(より具体的には、熱蛍光シート60が発する蛍光の波長)のみを透過するフィルタ17を備えたフィルタ板17aと、を備える。
【0069】
撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等である。
【0070】
フィルタ17は、特定波長の光のみを透過する光フィルタである。具体的には、フィルタ17は、熱蛍光シート60が発する蛍光を透過し、それ以外の光を透過させない。
【0071】
これにより、カメラ15bには、熱蛍光シート60が発する蛍光以外の光が入射しにくくなる。そのため、撮像部15は、熱蛍光シート60が発する蛍光を精度よく撮像(つまり、読み取り)できる。
【0072】
なお、撮像部15は、蛍光を測定するタイミングを制御するためにシャッタを備えてもよい。また、撮像部15は、撮像部15の構成要素(例えば、カメラ15b)の温度を効率よく下げるために、ヒートシンク、ペルチェ素子等を備えてもよい。
【0073】
撮像部15は、例えば、加熱部19の下方に、保持板15aに支持されて筐体2内に設置される。
【0074】
保持板15aには、鉛直方向(本実施の形態では、Z軸方向)に貫通する貫通孔21が形成されている。
【0075】
これにより、第1冷却ファン14によって撮像部15に向けて送風された空気は、貫通孔21を経由して加熱室27へ向かうことができる。
【0076】
また、フィルタ板17aとカメラ15bとは、レンズ16を挟むように保持板15aに固定されている。また、2つの保持板15aで挟まれた空間は、点検窓4と連通している。これにより、作業者は、点検窓4を開けてレンズ16の絞りを調整できる。
【0077】
また、保持板15aには、貫通孔21の空気が排出される側に屈曲部37が設けられる。
【0078】
屈曲部37は、ある貫通孔21から別の貫通孔21へ直接空気が流れ込むことを防ぐための機構である。貫通孔21を通過した空気は、屈曲部37にぶつかる。これにより、筐体2内の空気は、より多く動かされ得る。
【0079】
また、屈曲部37は、貫通孔21の上部に配置される。
【0080】
これにより、筐体2の外部の光が、例えば、第1冷却ファン14から迷光となって筐体2内に入り込んだ場合においても、カメラ15bへ侵入する迷光の量を低減することができる。
【0081】
なお、貫通孔21の各々は、可能な限り距離をおいて配置されてもよい。これにより、筐体2内の空気は、さらに多く動かされ得る。
【0082】
第1冷却ファン14は、熱蛍光シート読み取り装置1の外部から内部へ空気を送入することで、筐体2内を冷却するための送風器である。第1冷却ファン14は、制御部29に動作が制御される。本実施の形態では、第1冷却ファン14は、撮像部15に隣接して筐体2に設置され、筐体2の外部から空気を筐体2内に取り込んで撮像部15に向けて送風する。
【0083】
第2冷却ファン24は、熱蛍光シート読み取り装置1の内部から外部へ空気を排出する送風器である。第2冷却ファン24は、制御部29に動作が制御される。本実施の形態では、第2冷却ファン24は、冷却室22に隣接して設置され、冷却室22の空気を筐体2の外部に排出する。
【0084】
これにより、第2冷却ファン24は、冷却室22に設置された熱蛍光シート60及びカセット31の冷却を行う。また、第1冷却ファン14と第2冷却ファン24とは、筐体2内に特定の方向に流れる気流を生成して効率よく筐体2内の排熱を行う。
【0085】
冷却室22は、蛍光の読み取りが終了した熱蛍光シート60及びカセット31を、筐体2の外部へ搬出する前に、熱蛍光シート60及びカセット31を冷却するために熱蛍光シート60が設置される部屋(空間)である。
【0086】
また、加熱室27と冷却室22とは、カセット31が移動可能に連通している。もちろん、加熱室27と冷却室22とは、空気もまた移動可能に連通している。また、加熱室27と冷却室22とは、同じ高さに配置されている。
【0087】
以上のような構成にすることで、熱蛍光シート読み取り装置1内には、
図4に示される白抜きの矢印の向きに空気の流路が形成される。つまり、空気は、第1冷却ファン14によって筐体2内に取り込まれ、撮像部15近傍を通過し、さらに、加熱部19の近傍を通過する。加熱部19の近傍を通過した空気は、冷却室22を通過し、第2冷却ファン24によって筐体2の外へ排出される。
【0088】
これにより、加熱部19で発生した熱が撮像部15へ伝達されることは、抑制される。
【0089】
なお、加熱室27及び冷却室22は、いずれも筐体2内でカセット31が設置される空間であればよく、これら空間の構造は、特に限定されない。例えば、これら空間を仕切るために壁が設けられてもよいし、これら空間の間に開閉可能な扉が設けられてもよい。
【0090】
搬送部36は、カセット31を加熱室27から冷却室22へ移動させる機構である。搬送部36は、筐体2内を移動できるように筐体2内に配置されている。搬送部36は、制御部29に制御されることで、カセット31を加熱室27から冷却室22へ移動させるように駆動する。
【0091】
搬送部36は、例えば、駆動可能なカセット係止部36a(
図10参照)と、カセット係止部36aを駆動可能とするためのモータ(不図示)と、を備える。
【0092】
筐体2は、熱蛍光シートを加熱する加熱部19、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を撮像する撮像部15等を覆う箱体である。
【0093】
筐体2は、例えば、金属材料等によって形成されている。
【0094】
なお、筐体2外部から筐体2内に入り込む迷光を低減するために、筐体2の内側の壁面等は、光反射率を低くすることが好ましい。例えば、筐体2内に配置されている壁面等には、光吸収材が用いられてもよい。或いは、光吸収材で壁面が塗装されていてもよい。
【0095】
筐体2は、扉部3、3aと、点検窓4と、空気送入口6と、空気排出口12と、を備える。
【0096】
扉部3は、熱蛍光シート60が設置されたカセット31を筐体2内の加熱室27を作業者が搬入するための開閉自在な扉である。
【0097】
空気送入口6は、筐体2の外部から内部に空気を送入するために筐体2に設けられた貫通孔である。本実施の形態では、空気送入口6は、筐体2の側面(例えば、
図1に示す筐体2のY軸方向側の面)の下側に設けられている。
【0098】
これにより、加熱部19より温度の低い筐体2の外側の空気は、熱蛍光シート読み取り装置1の下方から筐体2内に取り込まれる。そのため、相対的に温度の高い空気は上方へ動くために、筐体2内の排気は、効率よく行なわれ得る。
【0099】
点検窓4は、筐体2内にあるレンズ16が設置してある部分に連通するように設けられた、可視光を透過する透光性を有する窓である。点検窓4が筐体2に設けられていることで、蛍光を測定する際の撮像部15(より具体的には、レンズ16)の絞りの調整、撮像部15のメンテナンス等が容易になる。
【0100】
空気排出口12は、筐体2の内部の空気を外部へ排出するために筐体2に設けられた貫通孔である。空気排出口12は、空気送入口6よりも上部(例えば、
図2のZ軸正方向側)に配置される。
【0101】
これにより、相対的に温度の高い空気は、上方へ動くので、筐体2内の排気が効率よく行なわれ得る。
【0102】
なお、筐体2内の排気をしやすくするために、筐体2は、さらに、上部通風口11を備えてもよい。
【0103】
上部通風口11は、加熱室27内の空気を、冷却室22を介さずに筐体2の外部に排出するために筐体2に形成された貫通孔である。
【0104】
また、熱蛍光シート読み取り装置1は、使用していない熱蛍光シート60を保持するためのカセット31を保管しておくためのカセット保管部7を備える。カセット保管部7は、筐体2に設けられている。
【0105】
カセット31は、熱蛍光シート60を保持する箱体である。作業者は、カセット31に熱蛍光シート60を保持させて、カセット31を扉部3から筐体2内に配置する。カセット31の具体的な構成については、後述する。
【0106】
また、本実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置1は、さらに、非常停止スイッチ8と、カセット搬入ランプ9a及びカセット搬出ランプ9bと、ヒータ通電ランプ10と、電源・コネクタ部13と、光源18と、電源ユニット23と、上部冷却ファン20と、電源ユニット用ファン25と、を備える。
【0107】
非常停止スイッチ8は、緊急時に熱蛍光シート読み取り装置1の動作を停止するためのボタンである。例えば、制御部29は、非常停止スイッチ8が作業者によって押された場合、熱蛍光シート読み取り装置1の各構成要素の動作を強制的に停止させる。
【0108】
カセット搬入ランプ9a及びカセット搬出ランプ9bは、筐体2内へのカセット31の搬入、及び、筐体2からのカセット31の搬出が可能かどうかを点灯又は消灯によって作業者へ視覚的に通知するためのランプである。
【0109】
ヒータ通電ランプ10は、加熱部19に通電している状態、つまり、加熱部19が加熱している状態であるか否かを点灯又は消灯によって作業者へ視覚的に通知するためのランプである。
【0110】
電源・コネクタ部13は、電源スイッチ、ヒューズ等で構成される回路である。電源・コネクタ部13は、例えば、図示しない商用交流電源と接続される。
【0111】
また、電源・コネクタ部13は、例えば、外部とネットワーク等を介して通信を行う場合に通信ケーブル等が接続される接続端子を備える。これにより、作業者は、例えば、通信ケーブル等を介して熱蛍光シート読み取り装置1と通信可能に接続されたPC(Personal Computer)等を操作して、記憶部30に記憶された制御プログラム等を変更したり、記憶部30に記憶されたデータを取り出したりする。
【0112】
光源18は、加熱室27に熱蛍光シート60(より具体的には、熱蛍光シート60が設置されたカセット31)が設置されたとき、熱蛍光シート60に光を照射するための照明光源である。
【0113】
光源18は、例えば、熱蛍光シート60に位置確認用のマークが備えられている場合、当該マークを撮像部15で撮像する際に光を発する。より具体的には、制御部29は、位置確認用のマークを撮像する際に、光源18に光を発せさせながら、撮像部15を制御して撮像させる。
【0114】
光源18は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等が用いられる。光源18に用いられる光の波長は、フィルタ17を透過する波長であればよく、特に限定されない。
【0115】
電源ユニット23は、電源・コネクタ部13から供給される電力を制御する装置である。電源ユニット23は、熱蛍光シート読み取り装置1の各構成要素、例えば、加熱部19の一例である電気ヒータ等へ電力を供給する装置である。
【0116】
上部冷却ファン20は、筐体2内に空気の流路を形成するためのファンである。上部冷却ファン20は、加熱部19の近傍の熱を取り除くために、筐体2内の空気を外部へ排出する、又は、筐体2の外部の空気を内部へ送入する。上部冷却ファン20は、例えば、加熱部19の上部(
図3のZ軸の正方向側)に配置される。
【0117】
電源ユニット用ファン25は、電源ユニット23を冷却するためのファンである。電源ユニット用ファン25は、電源ユニット23の近傍に位置する。本実施の形態では、電源ユニット用ファン25は、電源ユニット23と撮像部15との間に設けられている。
【0118】
これにより、電源ユニット用ファン25は、加熱部19によって加熱されていない空気を電源ユニット23に送風できる。そのため、電源ユニット23は、効果的に冷却され得る。
【0119】
[カセット]
続いて、
図5~
図8を参照しながら、実施の形態に係るカセット31の詳細について説明する。
【0120】
図5は、実施の形態に係るカセット31の外観を示す斜視図である。具体的には、
図5は、実施の形態に係るカセット31において熱伝導シート40を閉じた状態の外観を示す斜視図である。
図6は、実施の形態に係るカセット31において熱伝導シート40を開いた状態の外観を示す斜視図である。
図7は、
図5のVII-VII線における、実施の形態に係るカセット31を示す断面図である。
【0121】
なお、
図6は、カセット31に保護シート61及び熱蛍光シート60を配置していない場合を示している。
【0122】
カセット31は、熱蛍光シート読み取り装置1へ熱蛍光シート60を搬入する際に熱蛍光シート60を保持するための箱体である。カセット31は、枠体34と、ガラス板35と、熱伝導シート40と、スペーサ43と、保護シート61と、を備える。
【0123】
枠体34は、ガラス板35、熱伝導シート40等を支持する枠である。枠体34は、ガラス板35及び熱伝導シート40で熱蛍光シート60を挟んだ状態(閉状態)と挟んでいない状態(開状態)とに切替可能にガラス板35及び熱伝導シート40を支持する。本実施の形態では、熱蛍光シート60とガラス板35との間には、保護シート61が配置されている。
【0124】
カセット31は、ガラス板35、スペーサ43及び熱伝導シート40を枠体34で支持することで一体に形成されている。熱伝導シート40は、ガラス板35とともに熱蛍光シート60を挟んだ状態と挟んでいない状態とに切替できるようにヒンジ等を介して枠体34に取り付けられている。
【0125】
枠体34の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂又は金属等である。
【0126】
また、スペーサ43の上面と熱蛍光シート60の上面とは面一となるようにガラス板35上に配置される。これにより、熱伝導シート40の下面は、熱蛍光シート60の面全体に一様な力を加えて熱蛍光シート60と接触する。
【0127】
また、枠体34の上面50と熱伝導シート40の上面50aとは、面一になるように形成される。
【0128】
これにより、加熱部19の熱を、熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60に伝える際に、熱蛍光シート60全体に一様に熱を伝導しやすくなる。そのため、熱蛍光シート60は反り返り等の変形を起こしにくくなる。
【0129】
また、枠体34は、上面50に複数の溝部32を備える。
【0130】
溝部32は、カセット31を加熱室27から冷却室22へ搬送する際に、搬送部36が備えたカセット係止部36a(
図10参照)に係止される部分であり、複数箇所に形成されている。
【0131】
なお、溝部32は、搬送部36が備えるカセット係止部36aに係止される構造であればよく、例えば、窪み、貫通孔等、特に限定されない。
【0132】
また、カセット31は、作業者が取り扱いをしやすいように、カセット31に作業者がつかむための窪み、孔等が形成されてもよい。
【0133】
ガラス板35は、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を透過する透光性を有する耐熱ガラスである。熱蛍光シート60から発せられる蛍光を撮像部15で読み取る際には、熱蛍光シート60は、加熱される。その際に、ガラス板35も共に加熱されることになるため、ガラス板35は、熱膨張率が低く、温度変化に対して割れないように強化されたガラスであるとよい。
【0134】
ガラス板35は、例えば、二酸化ケイ素と酸化ホウ素とで形成される。ガラス板35は、カセット31が加熱室27に配置された際には、熱蛍光シート60と撮像部15との間に位置する。
【0135】
熱伝導シート40は、熱蛍光シート60をガラス板35に上から押さえつけるための板体である。具体的には、熱伝導シート40は、カセット31を加熱する際に、加熱部19と熱蛍光シート60の間に位置し、加熱部19に直接押さえつけられる部材である。制御部29は、例えば、モータ28を駆動して加熱部19を熱伝導シート40と接触させて、熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60を加熱する。
【0136】
熱伝導シート40は、加熱によって熱蛍光シート60が反り返るのを抑制し、且つ、加熱部19と接触して熱蛍光シート60が溶着することを抑制する。
【0137】
また、熱伝導シート40には、加熱部19の熱を熱蛍光シート60に伝導する熱伝導性が低い材料が採用されるとよい。また、熱伝導シート40には、熱により変形しにくい材料が採用されるとよい。
【0138】
例えば、熱伝導シート40に用いられる材料は、ガラス繊維とポリテトラフルオロエチレン(いわゆる、テフロン(登録商標))とで構成される材料(いわゆるテフロンメッシュ)、テフロン、又は、フッ素ゴムである。特に、熱伝導シート40に用いられる材料は、熱伝導性の観点から、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、又は、フッ素ゴムであるとよい。
【0139】
また、熱伝導シート40の厚みは、例えば、0.5mm以上に形成されているとよい。
【0140】
図8は、実施の形態に係るカセット31を用いた場合における熱蛍光シート60の温度変化を示すグラフである。なお、
図8に示すグラフは、経過時間に対する熱蛍光シート60の温度変化を示しており、実施例に係るカセット31に保持した熱蛍光シート60の温度変化を実線で示し、比較例に係るカセットに保持した熱蛍光シート60の温度変化を破線で示している。
【0141】
実施例に係るカセット31には、テフロンを用いた、厚みが1mmの熱伝導シート40を採用している。また、比較例に係るカセットには、ガラス繊維とポリテトラフルオロエチレン(いわゆる、テフロン(登録商標))とで構成される材料(いわゆるテフロンメッシュ)、を用いた、厚みが0.08mmの熱伝導シート40を採用している。実施例に係るカセット31と比較例に係るカセットとは、熱伝導シート40の構成のみが異なる。
【0142】
また、
図8に示す温度変化は、実施例においては、加熱部19を225℃にして熱伝導シート40に接触させた場合を例示しており、比較例においては、加熱部19を200℃にして熱伝導シート40に接触させた場合を例示している。また、測定開始から40秒程でいずれも急激な温度上昇が見られる。このタイミングが、加熱部19がカセット31に接触したタイミングである。
【0143】
実施例に係るカセット31に保持された熱蛍光シート60は、100℃程度まで温度が急激に上昇する。また、実施例に係るカセット31に保持された熱蛍光シート60は、測定を開始してから600秒程度後に200℃程度まで温度が上昇する。このように、実施例に係るカセット31に保持された熱蛍光シート60は、100℃から200℃まで、9分程度をかけて、平均して10℃/分程度で温度上昇する。
【0144】
一方、比較例に係るカセットに保持された熱蛍光シート60は、160℃程度まで温度が急激に上昇する。また、比較例に係るカセットに保持された熱蛍光シート60は、測定を開始してから300秒程度後に200℃程度まで温度が上昇する。このように、比較例に係るカセットに保持された熱蛍光シート60は、100℃から200℃まで、4分程度をかけて、平均して23℃/分程度で温度上昇する。
【0145】
ここで、実施例に係るカセット31に保持された熱蛍光シート60からは、気泡が発生しなかった。一方、比較例に係るカセットに保持された熱蛍光シート60からは、気泡が発生した。
【0146】
これは、熱蛍光シート60の急激な温度上昇によって熱蛍光シート60に含まれるトルエン等の熱蛍光体を保持するための成分が急激に気化したためと考えられる。
【0147】
このように、本願発明者らは、熱蛍光シート60の温度上昇を適切に制御することで、熱蛍光シート60における気泡の発生を抑制できる、つまり、熱蛍光シート60の変形を抑制できることを見出した。
【0148】
なお、実施例に係るカセット31では、厚みが1mmの熱伝導シート40を用いたが、熱伝導シート40の厚みは、熱蛍光シート60の変形(気泡の発生)を抑制する厚みであればよい。例えば、熱伝導シート40の厚みは、例えば、0.5mm以上に形成されているとよい。また、例えば、熱伝導シート40の厚みは、0.9mm以上に形成されているとよりよい。また、例えば、熱伝導シート40の厚みは、1mm以上に形成されているとよりよい。このように、熱伝導シート40の厚みは、熱蛍光シート60の変形を抑制する観点から、より厚い方がよい。
【0149】
また、例えば、熱伝導シート40には、熱蛍光シート60から発せられた蛍光が熱蛍光シート60と熱伝導シート40との間で乱反射した光を吸収するために、光を吸収できる光吸収剤が含まれているとよい。乱反射された蛍光は、撮像部15(より具体的には、カメラ15b)に入り込むと熱蛍光シート60から発せられた蛍光を熱蛍光シート読み取り装置1が読み取る際のノイズとなる。そのため、熱伝導シート40は、例えば、黒色であるとよい。熱伝導シート40は、例えば、カーボンが含まれることで黒色化される。
【0150】
スペーサ43は、熱蛍光シート60とともにガラス板35上に配置される部材である。スペーサ43は、ガラス板35上に配置された際に、熱蛍光シート60の周囲を囲むように配置される。熱蛍光シート60は、ガラス板35と熱伝導シート40との間に配置される。
【0151】
スペーサ43は、スペーサ係止部44によって枠体34に固定される。ここで、スペーサ係止部44は、例えば、枠体34から取り外し可能なビス等の部材により構成される。つまり、スペーサ43は、枠体34と着脱可能となるように枠体34に固定される。
【0152】
こうすることで、作業者は、熱蛍光シート60の厚さに応じて最適な厚さのスペーサ43に適宜選択しながらカセット31を利用できる。
【0153】
スペーサ43の材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウムである。
【0154】
保護シート61は、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を透過する透光性を有するシートである。また、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を測定する際に、当該熱蛍光シート60を加熱する必要があり、その際に保護シート61も共に加熱されることになるため、保護シート61は、熱膨張率が低く、耐熱性があるとよい。
【0155】
保護シート61は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等で形成される。保護シート61は、熱蛍光シート60とガラス板35との間に配置される。
【0156】
ここで、スペーサ43の厚みと、熱蛍光シート60の厚みと保護シート61の厚みとの合計の厚みとは、略一致する。言い換えると、スペーサ43の上面は、熱蛍光シート60の上面と略面一となる。つまり、スペーサ43及び熱蛍光シート60は、スペーサ43の上面と熱蛍光シート60の上面とは面一となるようにガラス板35上に配置される。
【0157】
これにより、熱伝導シート40が熱蛍光シート60全体に一様な力を加えやすくなる。さらには、熱伝導シート40が熱蛍光シート60に熱を伝導する際に、熱蛍光シート60全体に一様に熱が加わりやすくなる。そのため、熱蛍光シート60の変形は、さらに抑制される。
【0158】
[動作手順]
続いて、
図9及び
図10を参照しながら、熱蛍光シート読み取り装置1の動作手順について説明する。
【0159】
図9は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置1の動作手順を説明するためのフローチャートである。
図10は、実施の形態に係る熱蛍光シート読み取り装置1が熱蛍光シート60を加熱する動作手順を説明するための図である。
【0160】
まず、作業者は、カセット31に熱蛍光シート60を載置する(ステップS101)。具体的には、作業者は、カセット31のガラス板35上に載置されている保護シート61上に、熱蛍光シート60を載置する。
【0161】
次に、作業者は、熱蛍光シート60上に熱伝導シート40を載置する(ステップS102)。具体的には、作業者は、熱蛍光シート60上に熱伝導シート40を載置することで、カセット31を開状態から閉状態にして熱蛍光シート60をカセット31に保持させる。
【0162】
次に、作業者は、扉部3を開けてステップS101及びステップS102で熱蛍光シート60を保持したカセット31を加熱室27に配置して扉部3を閉じる(ステップS103)。
【0163】
例えば、作業者は、ステップS101~ステップS103を実行することで、
図10の(a)に示す加熱室27にカセット31が設置されていない状態から、
図10の(b)に示す熱蛍光シート60が保持されたカセット31を搬入口38から加熱室27へ搬入させて加熱室27に設置させた状態にする。
【0164】
次に、制御部29は、加熱部19を制御することで、加熱部19の加熱を開始させる(ステップS104)。
【0165】
なお、例えば、このときに、制御部29は、第1冷却ファン14及び第2冷却ファン24等の熱蛍光シート読み取り装置1が備えるファンを駆動させて、筐体2内に気流を生成する。
【0166】
これにより、熱蛍光シート読み取り装置1の内部には空気の流路が形成される。
【0167】
次に、制御部29は、加熱室27に配置されたカセット31の上部に加熱部19が接触するように、モータ28を駆動させることで、加熱部19を熱伝導シート40に接触させる(ステップS105)。ステップS105では、
図10の(c)に示すように、制御部29は、カセット31(より具体的には、熱伝導シート40)の上面に加熱部19が接触するように、モータ28を駆動させる。このように、制御部29は、加熱部19を熱伝導シート40と接触させることで、熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60を加熱させる。
【0168】
次に、制御部29は、撮像部15(具体的には、カメラ15b)の露光を開始させることで撮像部15(具体的には、カメラ15b)に熱蛍光シート60から発せられる蛍光の読み取りを開始させる(ステップS106)。
【0169】
なお、制御部29がステップS104及びステップS106を実行するタイミングは、任意に定められていればよい。制御部29は、例えば、操作部5で作業者の指示を受け付けた場合にステップS104を実行してもよい。或いは、制御部29は、例えば、扉部3の開閉状態を検出する図示しないセンサと加熱室27にカセット31が配置されていることを検出する図示しないセンサとによって、扉部3が閉状態であり且つ加熱室27にカセット31が配置されていることが検出された場合に、ステップS104を実行してもよい。或いは、制御部29は、ステップS105の後で、ステップS104を実行してもよい。また、制御部29は、ステップS104を実行すると同時にステップS106を実行してもよい。或いは、制御部29は、ステップS104の次にステップS106を実行し、その後で、ステップS105を実行してもよい。
【0170】
このように、制御部29が実行するステップの順序は、適宜変更されてもよい。
【0171】
次に、制御部29は、加熱部19を制御することで、熱蛍光シート60を100℃まで温度上昇させる(ステップS107)。ステップS107では、温度上昇率は、任意に設定されてよく、特に限定されない。本実施の形態では、ステップS107では、温度上昇率は、15℃/分よりも高くなっている。これにより、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を読み取る時間を、熱蛍光シート60を変形させずに短縮できる。
【0172】
次に、制御部29は、15℃/分以下の温度上昇率で8分以上かけて加熱部19を200℃まで温度上昇させる(ステップS108)。
【0173】
次に、制御部29は、所定の時間だけ温度を200℃で維持する(ステップS109)。所定の時間は、予め任意に定められればよく、特に限定されない。所定の時間は、例えば、15分でもよいし、30分でもよいし、1時間でもよい。
【0174】
ステップS107~ステップS109を制御部29が実行することで、熱蛍光シート60は、徐々に温度が上昇する。これとともに、熱蛍光シート60からは、蛍光が発せられ、撮像部15は、当該蛍光を読み取る。本実施の形態では、制御部29は、加熱部19を制御することで225℃まで加熱部19を加熱し、さらに、モータ28を制御して熱伝導シート40に加熱部19を所定の時間だけ接触させることで、ステップS107~ステップS109を実現している。
【0175】
なお、本実施の形態では、撮像部15は、熱蛍光シート60から発せられる蛍光の積算値を読み取る。例えば、制御部29は、ステップS104からステップS109までの間の任意のタイミングで撮像部15を露光させることで、任意の温度における蛍光を撮像部15に読み取らせてもよい。
【0176】
次に、制御部29は、所定の時間が経過した後で、撮像部15に蛍光の読み取りを停止させ、搬送部36を制御することで、搬送部36にカセット31を加熱室27から冷却室22へ搬送させる(ステップS110)。
【0177】
ステップS109では、
図10の(d)に示すように、まず、制御部29は、加熱部19を例えば
図10の(a)の状態に戻すようにモータ28によって上方に移動させる。その後で、制御部29は、搬送部36によってカセット31を加熱室27から冷却室22へ搬送させる。例えば、制御部29は、搬送部36を加熱室27へ近づくように移動させ、加熱室27に設置されているカセット31に近づいたところで一旦停止させる。さらに、制御部29は、カセット係止部36aを駆動してカセット31の例えば
図5に示す溝部32に係止させ、搬送部36を冷却室22へ移動させる。
【0178】
なお、ステップS110では、制御部29は、加熱部19の加熱を停止させてもよいし、させなくてもよい。加熱部19を加熱させ続けることで、作業者が続けて別の熱蛍光シート60の蛍光の読み取りをすぐに行う事ができる。
【0179】
次に、作業者は、任意のタイミングで扉部3aを開けて冷却室22からカセット31を取り出す(ステップS111)。
【0180】
(効果等)
以上説明したように、本発明の一態様に係る熱蛍光シート読み取り方法は、熱蛍光シート60から発せられる蛍光の二次元分布を読み取る熱蛍光シート読み取り方法であって、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を加熱する加熱ステップと、加熱ステップで加熱された熱蛍光シート60から発せられる蛍光を読み取る撮像ステップと、を含む。
【0181】
これによれば、熱蛍光シート60が急激に加熱されることが抑制される。特に、熱蛍光シート60がトルエン等の揮発性の物質を含む場合、急激な温度上昇によって急激に気化してしまう可能性がある。このような物質が急激に気化した場合、熱蛍光シート60には気泡が発生し、変形することとなる。そこで、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を温度上昇させることで、このような物質が急激に気化することを抑制する。これにより、熱蛍光シート60の変形は、抑制される。
【0182】
また、例えば、加熱ステップでは、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を100℃以下から200℃以上まで温度上昇させる。
【0183】
これによれば、高温の状態において、熱蛍光シート60の急激な温度上昇が抑制される。そのため、熱蛍光シート60の変形は、さらに抑制される。
【0184】
また、例えば、加熱ステップは、100℃まで熱蛍光シート60を温度上昇させる第1加熱ステップと、第1加熱ステップの後に、15℃/分以下の温度上昇率で熱蛍光シート60を200℃以上まで温度上昇させる第2加熱ステップと、を含む。
【0185】
熱蛍光シート60の温度上昇速度を下げる程、熱蛍光シート60は変形しにくくなると考えられる。しかしながら、熱蛍光シート60の温度上昇速度を下げる程、熱蛍光シート60から発せられる蛍光の読み取りに、多くの時間が必要となる。そこで、特に、トルエン等の揮発性の物質が急激に気化しやすくなる100℃から200℃程度の高温の状態において、15℃/分以下で加熱する。これにより、熱蛍光シート60の変形は抑制され、且つ、蛍光の読み取りにかかる時間が長くなることが抑制され得る。
【0186】
また、例えば、第2加熱ステップでは、8分以上かけて熱蛍光シート60が200℃以上となるように、熱蛍光シート60を温度上昇させる。
【0187】
これによれば、高温の状態において、熱蛍光シート60の急激な温度上昇がさらに抑制される。そのため、熱蛍光シート60の変形は、さらに抑制される。
【0188】
また、例えば、本発明の一態様に係る熱蛍光シート読み取り方法は、さらに、熱蛍光シート60上に熱伝導シート40を載置する載置ステップを含む。この場合、加熱ステップでは、加熱部19を熱伝導シート40と接触させて、熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60を加熱部19によって加熱する。
【0189】
これによれば、熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60が加熱部19によって加熱されるために、熱伝導シート40の厚み、材料等を好適に選択することにより、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シート60を加熱できる。そのため、熱蛍光シート60の変形は、さらに抑制される。
【0190】
また、例えば、熱伝導シート40の厚みは、0.5mm以上である。
【0191】
これによれば、熱伝導シート40によって熱蛍光シート60の急激な温度上昇をさらに抑制しやすくなるため、さらに時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シート60を加熱しやすくできる。そのため、熱蛍光シート60の変形は、さらに抑制される。
【0192】
また、例えば、熱伝導シート40の材料は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素ゴムである。
【0193】
これらの材料は、例えば、熱伝導シート40に広く用いられるアルミニウム等よりも熱伝導率が低く、且つ、熱によって変形しにくい。そのため、熱伝導シート40にこれらの材料を用いることで、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シート60を加熱でき、且つ、熱伝導シート40を熱により変形しにくくできる。
【0194】
また、例えば、熱伝導シート40は、黒色である。
【0195】
これによれば、熱蛍光シート60で発せられた蛍光が乱反射した光は、熱伝導シート40に吸収される。これにより、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を読み取る撮像部15が備えるカメラ15bにこのような乱反射した光が入りにくくなるため、撮像部15における蛍光の読み取り精度は、向上される。
【0196】
また、本発明の一態様に係るカセット31は、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を透過する透光性を有するガラス板35と、厚みが0.5mm以上である熱伝導シート40と、ガラス板35及び熱伝導シート40で熱蛍光シート60を挟んだ状態と挟んでいない状態とに切替可能にガラス板35及び熱伝導シート40を支持する枠体34と、を備える。
【0197】
このような構成によれば、熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60を加熱できる。特に、熱伝導シート40の厚さを0.5mm以上とすることによりに、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シート60を加熱できる。そのため、熱蛍光シート60の変形は、抑制される。
【0198】
また、本発明の一態様に係る熱蛍光シート読み取り装置1は、カセット31と、熱伝導シート40と接触し、熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60を加熱する加熱部19と、熱蛍光シート60から発せられる蛍光を読み取る撮像部15と、を備える。
【0199】
これによれば、カセット31が備える熱伝導シート40を介して熱蛍光シート60を加熱できる。特に、熱伝導シート40の厚さが0.5mm以上であることにより、時間に対して適切な温度変化になるように熱蛍光シート60を加熱できる。そのため、熱蛍光シート60の変形は、抑制される。
【0200】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る熱蛍光シート読み取り方法等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0201】
例えば、加熱部19は、カセット31の上面を均一に押さえつけることができる形状であればよく、特に限定されない。例えば、加熱部19の下面において、カセット31と接する面以外の部分でカセット31と接する部分を有してもよい。具体的には、加熱部19は、カセット31の上面の端(角)と接する複数の個所を設けてもよい。こうすることで、加熱部19がカセット31を押さえつける際に、接する複数の個所によってカセット31の位置が固定できる。そのため、熱蛍光の読み取りごとに、加熱室27内でのカセット31の位置のばらつきは抑制される。
【0202】
また、例えば、本実施の形態では、カセット31の形状は、上面視で略正方形であるが、これに限定されない。カセット31の上面視形状は、長方形等の矩形でもよいし、円形等他の形状でもよい。
【0203】
また、例えば、制御部29は、専用のハードウェアで構成されてもよく、或いは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。制御部29は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0204】
なお、本発明は、熱蛍光シート読み取り装置1として実現できるだけでなく、熱蛍光シート読み取り装置1の各構成要素が行う処理をステップとして含むプログラム、及び、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なDVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体として実現することもできる。
【0205】
つまり、上述した包括的又は具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0206】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明は、熱蛍光シートから発せられる蛍光を読み取る装置として、例えば、熱蛍光シートの変形を抑制することができる熱蛍光シート読み取り装置に適用可能できる。
【符号の説明】
【0208】
1 熱蛍光シート読み取り装置
2 筐体
3、3a 扉部
4 点検窓
5 操作部
6 空気送入口
7 カセット保管部
8 非常停止スイッチ
9a カセット搬入ランプ
9b カセット搬出ランプ
10 ヒータ通電ランプ
11 上部通風口
12 空気排出口
13 電源・コネクタ部
14 第1冷却ファン
15 撮像部
15a 保持板
15b カメラ
16 レンズ
17 フィルタ
17a フィルタ板
18 光源
19 加熱部
20 上部冷却ファン
21 貫通孔
22 冷却室
23 電源ユニット
24 第2冷却ファン
25 電源ユニット用ファン
27 加熱室
28 モータ
29 制御部
30 記憶部
31 カセット
32 溝部
34 枠体
35 ガラス板
36 搬送部
36a カセット係止部
37 屈曲部
38 搬入口
40 熱伝導シート
43 スペーサ
44 スペーサ係止部
50、50a 上面
60 熱蛍光シート
61 保護シート