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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】積層体、及び被覆構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20231016BHJP
   B32B 15/18 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20231016BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B32B15/08 H
B32B15/18
B32B5/24 101
B32B5/02 B
B32B5/18
B32B5/26
E04B1/94 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019128510
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021014032
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
(72)【発明者】
【氏名】軽賀 英人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理人
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 幸矢
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-134498(JP,A)
【文献】特開2000-230287(JP,A)
【文献】特開2006-231234(JP,A)
【文献】特開平07-276552(JP,A)
【文献】特開2007-132165(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨に対し、熱発泡層、及びその表面側に化粧層を積層した被覆構造体であり、
上記化粧層は、その内部ないし裏面側に補強層を有し、
上記補強層が、坪量5~150g/mの繊維層であることを特徴とする被覆構造体
【請求項2】
上記補強層が、組布及び/または織物であることを特徴とする請求項1に記載の被覆構造体。
【請求項3】
上記補強層が、無機繊維を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆構造体。
【請求項4】
上記熱発泡層は、裏面側に無機繊維不織布を有し、
上記無機繊維不織布が、上記熱発泡層に半埋設または全埋設するように積層されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の被覆構造体。
【請求項5】
上記化粧層は、樹脂成分及び有色粉粒体を含み、
上記有色粉粒体として無機質粒子を含むことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の被覆構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体、及び被覆構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構築物等の構造物が火災等によって高温に晒された場合には、柱、梁等を構成する鉄骨の物理的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、鉄骨に耐熱保護性を有する被覆材を被覆し、火災時の鉄骨の温度上昇を遅延させて、鉄骨の物理的強度の低下を抑制する被覆構造が知られている。
【0003】
このような被覆構造として、鉄骨に熱発泡性シートを接着材を介して貼着する方法がある。熱発泡性シートは、合成樹脂、難燃性発泡剤、及び多価アルコール等の混合物をシート状に成形したものであり、平常時は薄くて軽量であり、火災等による温度上昇には、発泡・炭化して炭化断熱層を形成し、耐熱保護性を発揮する効果を有するものである(例えば、特許文献1等)。このような熱発泡性シートは、通常接着材等で貼着するだけで、比較的簡単に施工でき、余分なスペースを必要とせず、厚みを均一にできるといった特徴を有する。また、表面側に着色又は意匠性を向上させるために塗装することもできるため、美観性や意匠性を付与するような部位への施工要望が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-201733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の熱発泡性シートは、火災時等の熱風や、物理的衝撃等により、形成された炭化断熱層に亀裂や欠落等の損傷を生じるおそれがある。このような炭化断熱層の損傷箇所では鉄骨表面が露出しやすく、所望の耐熱保護性能が維持しにくい場合がある。さらに、熱発泡性シートに美観性ないし意匠性を付与するためには、化粧層等を設ける必要があるが、化粧層の種類によっては、熱発泡性シートの炭化断熱層の形成を阻害するおそれがあり、所望の耐熱保護性能を低下させる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、熱発泡層、及びその表面に化粧層を有する積層体、及び被覆構造体に想到し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.鉄骨に対し、熱発泡層、及びその表面側に化粧層を積層した被覆構造体であり、
上記化粧層は、その内部ないし裏面側に補強層を有し、
上記補強層が、坪量5~150g/mの繊維層であることを特徴とする被覆構造体
2.上記補強層が、組布及び/または織物であることを特徴とする1.に記載の被覆構造体。
3.上記補強層が、無機繊維を含むことを特徴とする1.または2.に記載の被覆構造体。
4.上記熱発泡層は、裏面側に無機繊維不織布を有し、
上記無機繊維不織布が、上記熱発泡層に半埋設または全埋設するように積層されていることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の被覆構造体。
5.上記化粧層は、樹脂成分及び有色粉粒体を含み、
上記有色粉粒体として無機質粒子を含むことを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の被覆構造体。

【発明の効果】
【0008】
本発明は、意匠性に優れるとともに、鉄骨が火災等によって高温に晒された際に、安定した耐熱保護性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明積層体の一例を示す断面図である。
図2】本発明で用いる熱発泡層の一例を示す断面図である。
図3】本発明で用いる熱発泡層の一例を示す断面図である。
図4】本発明で用いる化粧層の一例を示す断面図である。
図5】本発明化粧層の一例を示す断面図である。
図6】本発明積層体の一例を示す断面図である。
図7】本発明被覆構造体の一例を示す断面図である。
図8】本発明被覆構造体の一例を示す断面図である。
図9】本発明被覆構造体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0010】
A:積層体
1、11、11a:熱発泡層(熱発泡性シート)
1a:無機繊維不織布
1b:接着材層
1c:離型性シート
2:化粧層(化粧シート)
2a: 補強層
2b:接着材層
2c:離型性シート
2d:表面保護層
13:熱発泡層(熱発泡性シート)
23:化粧層(化粧シート)
B:鉄骨
X:目地部
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
図1に本発明の積層体Aの断面図を示す。本発明の積層体Aは、耐熱保護性、意匠性等を有するものであり、図1に示すように、熱発泡層1、及びその表面に化粧層2が積層された積層体であり、化粧層2が視認できるように熱発泡層1の表面側に積層されている。
【0013】
(熱発泡層)
本発明の熱発泡層1は、火災等により周囲温度が上昇して層の温度が所定の発泡温度(好ましくは180℃以上、より好ましくは200~400℃)に達すると発泡し、その温度領域において炭化断熱層を形成するものである。
【0014】
熱発泡層1としては、構成成分として樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤を含む混合組成物により形成されるものであることが好適である。これらの各成分は、火災発生時において、相互の複合作用により層の膨張、炭化断熱層形成、不燃性ガスの発生等の機能を発現することにより、優れた断熱性、耐熱保護性を発揮することができる。
【0015】
樹脂成分としては、例えば、ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が使用できる。また、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質も使用することができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中で、アクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が好適に使用される。
【0016】
難燃剤としては、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、熱可塑性樹脂の炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、樹脂成分の燃焼を抑制する作用を有するものである。本発明で用いる難燃剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の難燃剤が使用できる。例えば、塩素化合物、アンチモン化合物、リン化合物、ホウ素化合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらは、未被覆品、被覆処理品のいずれであってもよい。これらの中でも、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物が好適に使用される。
【0017】
難燃剤の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは50~1000重量部、より好ましくは100~800重量部、さらに好ましくは200~600重量部である。本発明では、このように難燃剤が比較的高比率で含まれることにより、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0018】
発泡剤としては、一般に、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していく樹脂成分及び炭化剤を発泡させ、気孔を有する炭化断熱層を形成させる作用を有するものである。発泡剤は、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡剤が使用できる。例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。これらの中でも、メラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等が好適に使用される。
【0019】
発泡剤の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは5~500重量部、より好ましくは30~200重量部、さらに好ましくは40~150重量部である。このような範囲であることにより、優れた発泡性を発揮し、断熱性、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0020】
炭化剤としては、一般に、火災時に熱可塑性樹脂の炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性に優れた厚みのある炭化断熱層を形成する作用を有するものである。本発明で用いる炭化剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の炭化剤が使用できる。例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。炭化剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が好適に使用される。
【0021】
炭化剤の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは5~600重量部、より好ましくは20~300重量部、さらに好ましくは40~150重量部である。このような範囲であることにより、脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用を発揮し、断熱性、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0022】
充填剤としては、一般に炭化断熱層の強度を維持する作用を有するものである。充填剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の充填剤が使用できる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等の炭酸塩;二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;シリカ、粘土、タルク、クレー、カオリン、ケイソウ土、シラス、マイカ、ワラストナイト、珪砂、珪石、石英、ヒル石、アルミナ、フライアッシュ等の無機粉末等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することもできる。また、上記充填剤の形状としては、特に限定されないが、例えば、球状、粒状、板状、棒状、リン片状、針状等が挙げられる。
【0023】
充填剤の配合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対し、好ましくは10~300重量部、より好ましくは20~250重量部、さらに好ましくは50~160重量部である。このような範囲であることにより、炭化断熱層の強度を維持することができ、耐熱保護性において良好な性能を得ることができる。
【0024】
本発明の熱発泡層1は、上記成分に加えて更に繊維物質を含むものが好適である。繊維物質が含まれることにより、炭化断熱層の脱落等を防止し、炭化断熱層の形状を保持する効果等が高まる。この作用機構は、以下に限定されるものではないが、繊維物質が熱発泡層1の裏面側に積層された無機繊維不織布1aに絡みながら炭化断熱層が形成されるため、炭化断熱層の脱落等を防止し、無機繊維不織布1a表面に均一な炭化断熱層が形成すると考えられる。その結果、安定した耐熱保護性を得ることができる。
【0025】
繊維物質としては、例えば、ロックウール、ガラス繊維、シリカ-アルミナ繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維等の無機繊維、パルプ繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することもできる。この中でも、耐熱性を有する無機繊維やカーボン繊維が好ましく、特に、ロックウール、ガラス繊維等が好適に使用される。また、繊維長は、好ましくは1~30mm、より好ましくは2~20mm、繊維径は、好ましくは1~20μm、より好ましくは2~15μmである。
【0026】
繊維物質の混合比率は、樹脂成分100重量部(固形分)に対して、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは0.5~30重量部である。
【0027】
また、熱発泡層1には、上記構成成分に加え、必要に応じ、各種添加剤を含むこともできる。添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、希釈溶媒等が挙げられる。
【0028】
熱発泡層1の厚みは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2~10mm程度、より好ましく0.3~6mm程度である。
【0029】
本発明は、図2に示すように、熱発泡層1の裏面側に無機繊維不織布1aが積層されていることが好ましい。この無機繊維不織布1aが積層されている面側が積層体Aの裏面となる。熱発泡層1と無機繊維不織布1aとの積層の態様としては、例えば、
(I)半埋設[図2(I)]:無機繊維不織布1aの熱発泡層1側の面は埋設、反対側の面は露出した態様、
(II)全埋設[図2(II)]:無機繊維不織布1a全体が熱発泡層1に埋設した態様、
等が挙げられる。なお、上記(II)の態様において、全埋設される無機繊維不織布1aは、熱発泡層1の厚みの中央部に対して裏面側に位置するものであり、当該無機繊維不織布1aが埋設された面側が裏面となり鉄骨側に向いて設置される。(以下、無機繊維不織布1aが半埋設または全埋設した部分(無機繊維不織布1aに食い込んだ部分)の熱発泡層1を「熱発泡層11a」、それ以外の部分を「熱発泡層11」ともいう。)
【0030】
本発明では、上記(I)[図2(I)]または(II)[図2(II)]のような態様であることにより、炭化断熱層の脱落防止効果が高まり、本発明の効果をよりいっそう高めることができる。また、上記(I)の態様の場合、鉄骨に対して、後述の接着材を介して設置された場合に、鉄骨表面への密着性を高めることができ、炭化断熱層の脱落防止効果をいっそう高めることができる。
【0031】
上記(I)または(II)の態様を有する熱発泡層1は、熱発泡層11と熱発泡層11aの少なくとも2層を有する構造を形成しており、火災等によって高温に晒された場合、熱発泡層11及び熱発泡層11aがそれぞれ炭化断熱層を形成する。特に、熱発泡層11aが形成する炭化断熱層では、無機繊維不織布1aに含まれる無機繊維が炭化層補強成分として作用し、強固な炭化断熱層を形成することができると推察される。仮に、熱発泡層11が損傷したとしても、熱発泡層11aが形成する炭化断熱層によって、鉄骨の露出を防ぎ、その結果、鉄骨が露出するおそれがなく、安定した耐熱保護性を維持することができる。
【0032】
このような無機繊維不織布1aとしては、坪量が好ましくは10~150g/m(より好ましくは15~100g/m)である。このような場合、無機繊維不織布1aの無機繊維間の空隙に熱発泡層1が充填されやすく、上記(I)または(II)の態様の熱発泡性シートが得られやすく、上記坪量を満たすことにより、鉄骨付近において強固な炭化断熱層を形成することができ、その結果、鉄骨1が露出するおそれがなく、安定した耐熱保護性を維持することができる。
【0033】
また、無機繊維不織布1aとしては、1本ずつ独立した無機繊維を、布状(シート状)にしたもの(織らずに形成されたもの)であり、例えば、無機繊維を一方方向に配列したもの、無機繊維の配列をクロスさせたもの、無機繊維をランダムに配列したもの等が挙げられる。本発明では、無機繊維をランダムに配列させたものが好適である。さらに、無機繊維間の結合方法としては、例えば、樹脂成分による化学的接着(ケミカルボンド)、加熱による融着(サーマルボンド)、機械的な絡み合わせ(ニードルパンチ)、縫い合わせ(ステッチボンド)等が挙げられ、本発明では、無機繊維の繊維間を樹脂成分により接着した(ケミカルボンド)無機繊維不織布が好適である。
【0034】
このように、ランダムに配列した無機繊維の繊維間を樹脂成分により接着した無機繊維不織布1aを使用することによって、火災等によって高温に晒された場合に、熱発泡層11aが形成する炭化断熱層では、無機繊維不織布1aに含まれる無機繊維が炭化断熱層の補強成分として作用し、さらには樹脂成分が炭化剤のような効果を有するため、よりいっそう強固な炭化断熱層を形成することができると推察される。その結果、鉄骨が露出するおそれがなく、よりいっそう安定した耐熱保護性を維持することができる。
【0035】
無機繊維不織布1aを構成する無機繊維としては、特に限定されないが、例えば、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等、また鉄、銅等の金属細線が挙げられる。本発明では、ガラス繊維が好適である。また、無機繊維は、何らかの表面処理が施されたものであっても良い。さらに、繊維の断面形状は、特に限定されず、円形、多角形、扁平形状等いずれのものも使用できる。また、上記無機繊維を接着する樹脂成分としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、SBR樹脂、NBR樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。このような無機繊維不織布1aの厚みは、適宜設定すれば良いが、好ましくは0.1~2mm程度、より好ましくは0.15~1mm程度である。
【0036】
また、本発明において、無機繊維不織布1aは、無機繊維に加えて、本発明の効果を阻害しない限り、有機繊維を含むものであってもよい。有機繊維としては、例えば、パルプ繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、セルロース繊維等が挙げられる。有機繊維は、150℃程度の温度領域で溶融して液体状態になるようなものであってもよいが、かかる温度領域で溶融しないものの方が好ましい。これらは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0037】
熱発泡層1は、上記熱発泡層1の構成成分の混合物により形成されるものであればよく、その製造方法としては、例えば、熱発泡層1の構成成分を含む混合物を塗付する方法、あるいは熱発泡層1の構成成分を含む混合物をシート状に成型する方法等が挙げられる。また、上記無機繊維不織布1aが、上記熱発泡層1に半埋設または全埋設するように積層する場合は、例えば、以下の方法等が挙げられる。
・熱発泡層1の構成成分を含む混合物を無機繊維不織布1aに塗付して積層する方法。
・型枠内に、熱発泡層1の構成成分の混合物を流し込み、さらに無機繊維不織布1aを積層し、乾燥後に脱型する方法。
・熱発泡層1の構成成分をニーダー等によって混練した混練物(以下「熱発泡層用混練物」ともいう。)を調製後、当該混練物を、無機繊維不織布1aに積層し、圧延ローラー等によってシート状に加工する方法。
本発明の熱発泡層1は、上記方法等によって得られるシート状の熱発泡層(以下「熱発泡性シート」ともいう。)であることが好適である。
【0038】
図3に示すように、本発明の熱発泡層1(特に、熱発泡性シート)は、無機繊維不織布1aの外側(裏面側)に接着材層1bを積層することができる[図3(I)]。この場合、無機繊維不織布1aは熱発泡層1に半埋設するように積層された態様(上記(I)の態様)であり、かつ露出した無機繊維不織布1aが接着材層1bに半埋設している態様が好適である。これにより、本発明の効果をよりいっそう高めることができる。さらに、接着材層1bの表面を離型性シート1cで覆うことができる[図3(II)]。このような熱発泡層1を用いることで、作業効率を高めることができる。
【0039】
接着材層1b、離型性シート1cを積層する方法は、特に限定されないが、例えば、熱発泡層1の無機繊維不織布1a側に接着材を塗付け、その上に離型性シート1cを積層する方法、あるいは、予め離型性シート1cの上に接着材を塗付して接着材層1bを形成し、当該接着材層1bを熱発泡層1の無機繊維不織布1a側に積層する方法等が挙げられる。
【0040】
接着材層1bを形成する接着材としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、パラフィン等を主原料とした水分散型、水溶性型、溶剤型の接着材等、公知のものを使用することができる。接着材には、必要に応じて、上述した熱発泡性樹脂シートに配合されるような難燃剤、発泡剤、炭化剤、充填剤、等を添加することもできる。また、本発明において、接着材には粘着剤も包含される。接着材層1bとしては、その厚みが好ましくは25~200μm、あるいは塗付け量が好ましくは0.05~0.5kg/mである。
【0041】
離型性シート1cは、熱発泡層1の保管中もしくは運搬中等において、接着材層1bを保護し、熱発泡性シートを使用する際には接着材層1bから容易に剥離できるものである。このような離型性シートとしては、公知のものを使用することができ、例えば、シリコン、ワックス、弗素樹脂等の離型剤を塗布もしくは含浸した紙あるいはフィルム、または該離型剤を含まずそれ自体離型性を有するポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0042】
(化粧層)
本発明の化粧層2は、意匠性を付与することができるものであれば、特に限定されないが、好ましくは樹脂成分及び有色粉粒体を含む組成物(以下、「化粧層用組成物」ともいう。)により形成されるものであり、その内部ないし裏面側に補強層を有することを特徴とする。
【0043】
上記樹脂成分は、主に有色粉粒体を固定化する役割を担う。このような樹脂成分としては、各種の合成樹脂が使用できる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース及びその誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。このような合成樹脂は、架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。
【0044】
樹脂成分のガラス転移温度は、好ましくは-60℃~60℃、より好ましくは-40℃~30℃、さらに好ましくは-30℃~20℃である。このような範囲の場合、適度な可とう性を付与することが可能となる。なお、ガラス転移温度はFoxの計算式により求められる値である。
【0045】
上記有色粉粒体は、化粧層に色、模様等を付与する役割を担う。このような有色粉粒体としては、例えば、着色顔料、体質顔料及び骨材等の公知のものが使用でき、これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0046】
本発明の化粧層2は、上記有色粉粒体として粒状無機質粒子を含むことが好ましい。これにより、粒状無機質粒子が樹脂成分によって固定化され、粒状無機質粒子にもとづく色調及び粒状無機質粒子の連接(凝集)による意匠性を呈する化粧層2が得られる。すなわち、化粧層2の色調は、粒状無機質粒子の色調にもとづくものとなる。また、化粧層2は、異なる色調を有する複数の着色領域を有するものであってもよい。この場合、異なる色調を有する複数の化粧層用組成物を硬化させることにより化粧層2を形成することができる。このような化粧層2は、粒状無機質粒によって、意匠性を高めるだけではなく、優れた表面強度を有するため、熱発泡層1の凹みや傷を防止することができる。さらには、粒状無機質粒により耐熱保護性を高めることができる。その作用機構は、限定されるものではないが、火災時等の高温下において、熱発泡層1の発泡開始温度に達するまでは、粒状無機質粒子の熱反射性、耐熱性等により鉄骨温度が急激に上昇するのを抑制することができると考えられる。
【0047】
粒状無機質粒子としては、その母体の材質が無機質であれば、天然品、人工品のいずれも使用することができる。この粒状無機質粒子としては、少なくとも粒状着色無機質粒子を含む態様が好適である。このような粒状着色無機質粒子としては、特に、光透過率が3%未満の不透明なものが好適であり、光透過率が2%以下のものがより好適である。このような粒状着色無機質粒子として、具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、砂岩、粘板岩、玄武岩、斑れい岩、閃緑岩、安山岩、石灰岩及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、金属粒等が挙げられる。また、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等を、上記条件を満たすように着色したもの等も使用できる。
【0048】
上記光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、粒状無機質粒子の試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。
【0049】
上記粒状着色無機質粒子に加えて、粒状透明性無機質粒子を含む形態とすることもできる。このような粒状透明性無機質粒子の使用は、美観性向上の点で好適である。粒状透明性無機質粒子としては、光透過率が3%以上(より好ましくは3~50%、さらに好ましくは10~30%)であるものが好適である。粒状透明性無機質粒子としては、例えばシリカ、寒水石、長石、珪石等及びこれらの粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ等が挙げられ、上記光透過率を満たすものであれば、無色、有色のいずれのタイプも使用できる。
【0050】
粒状無機質粒子の粒径は、好ましくは0.01mm~5mm、より好ましくは0.02mm~2mm、さらに好ましくは0.03~0.8mmである。粒径が異なる粒状無機質粒子を種々組み合せることによって、意匠性の幅を広げることもできる。なお、粒状無機質粒子の粒径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いたふるい分けによって測定される。
【0051】
上記樹脂成分と有色粉粒体の混合比率は、固形分換算で、有色粉粒体の合計量100重量部に対し、樹脂成分が好ましくは2重量部以上50重量部以下(より好ましくは3重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは4重量部以上20重量部以下、特に好ましくは5重量部以上19重量部以下)である。このような比率であれば、有色粉粒体の連接体(凝集体)からなる化粧層2が得られやすい。その結果、火災時等の高温下において、急激な温度上昇を抑制するとともに、熱発泡層1の発泡に伴い発生するガス等を効率的に透過、発泡を阻害することなく均一な炭化断熱層を形成することができる。
【0052】
化粧層用組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じ、上記以外の成分(添加剤)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、架橋剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0053】
本発明の化粧層2は、その表面に凹凸模様を有することが好ましい。このような化粧層2の模様は、特に限定されず、種々の形状のものが挙げられ、石材調模様、木目調模様、目地模様等が挙げられる。また、化粧層2の厚みは、好ましくは0.2~30mm(より好ましくは0.5~20mm)である。
【0054】
本発明は、図4に示すように、化粧層2の内部ないし裏面側に補強層2aが積層されていることを特徴とするものである。化粧層2と補強層2aとの積層の態様としては、
(I)半埋設[図4(I)]:補強層2aの化粧層2側の面は埋設、反対側の面は露出した態様、
(II)全埋設[図4(II)]:補強層2a全体が化粧層2に埋設した態様、
等が挙げられる。なお、上記図4(II)の態様において、全埋設される補強層2aは、化粧層2の表面に露出しなければよいが、化粧層2の厚み中央部に対して裏面側に位置することが好適である。
【0055】
本発明では、上記(I)[図4(I)]、(II)[図4(II)]のように化粧層2の内部ないし裏面側に補強層2aを有することにより、火災等によって高温に晒された場合、熱発泡層1により形成される炭化断熱層の亀裂、脱落等を防止し、優れた耐熱保護性を発揮することができる。さらには、積層体Aの可とう性、強度等の物性を高めることもできる。
【0056】
このような補強層2aは、その坪量が5~150g/m(好ましくは8~130g/m、より好ましくは10~100g/m)である繊維層であることを特徴とする。このような範囲を満たす場合、熱発泡層1の発泡を阻害することがなく、均一な断熱層を形成することができるとともに、炭化断熱層の亀裂防止効果等を発揮することができる。
【0057】
このような繊維層としては、例えば、不織布、組布、及び織物等が挙げられる。これらは2種以上組み合わせて使用することもできる。また、本発明を阻害しない限り、2層以上積層することもできる。
なお、本発明において、「不織布」とは、上述の通り1本ずつ独立した繊維を、絡ませたり、熱や接着剤を用いて接着したりして布状(シート状)にしたもの(織らずに形成されたもの)である。また、「組布」とは、一向に引き揃えた繊維糸群とそれとは異なる方向に引き揃えた繊維糸群をたて、よこあるいは斜めに組んで、積層接着したものである。組布の構造としては、網目(メッシュ)構造を有しているものであればよく、繊維糸群の軸数に応じて、2軸組布、3軸組布、及び4軸組布等の多軸組布等が挙げられる。「織物」とは、組布と同様に繊維糸群により形成されるものであり、たて糸とよこ糸が上下交錯することにより織られているものである。織物の構造としては、平織り、綾織り、朱子織り、たて二重織り、よこ二重織り、たてよこ二重織り、パイル織り、絡み(からみ)織り、紋織り等が挙げられる。
【0058】
本発明では、補強層2aとして、組布及び/または織物を使用することが好ましい。また、組布及び/または織物としては、たて糸及びよこ糸の密度がいずれも3本/25mm以上20本/25mm以下(より好ましくは5本/25mm以上18本/25mm以下)であることが好ましい。このような範囲を満たす場合、熱発泡層1の発泡を阻害することがなく、よりいっそう均一な断熱層を形成することができる。
【0059】
さらには、補強層2aとして、織物(より好ましくは絡み(からみ)織物)を使用することが好ましい。これにより、火災時等の高温下において、熱発泡層1の発泡により形成した炭化断熱層の亀裂や脱落を防止する効果をよりいっそう高めることができる。この作用機構は、以下に限定されるものではないが、織物は、たて糸とよこ糸が上下交錯することにより織られていることにより、目ずれや変形が少ない。その結果、炭化断熱層を安定に支えることができ、亀裂や脱落を防止することができると考えられる。さらに、絡み(からみ)織物は、たて糸を互いにからみ合せながら、よこ糸を織り込んだ織物(よこ糸をたて糸でしばったような目を有する織物)であり、斜め方向に伸び性を有する。このため、熱発泡層1の発泡を阻害することなく上記効果を発揮できるため、本発明の効果をよりいっそう高めることができると考えられる。
【0060】
補強層2aに使用される繊維としては、特に限定されず、上述の無機繊維不織布1aに使用可能な有機繊維、無機繊維等の各種繊維が使用できる。補強層2aでは、優れた耐熱性を有し、高温下でも溶融しにくい無機繊維(特にガラス繊維)を主成分として含むことが好ましい。
【0061】
補強層2aの厚みは、0.01~3mm(より好ましくは0.05~1mm)であることが好ましい。このような範囲であることにより、本発明の効果がよりいっそう得られやすい。
【0062】
化粧層2は、上記化粧層2の裏面に上記補強層2aが積層されたものであればよく、その製造方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
・化粧層用組成物を補強層2aに塗付して積層する方法。
・型枠内に、化粧層用組成物を流し込み、さらに補強層2aを積層し、乾燥後に脱型する方法。
・型枠内に、化粧層用組成物を流し込み、補強層2aを積層し、さらに化粧層用組成物を流しこみ、乾燥後に脱型する方法。
【0063】
図5に示すように、本発明の化粧層2(化粧シート)は、必要に応じて、裏面に接着材層2bを積層することができる[図5(I)]。さらに、接着材層2bの表面を離型性シート2cで覆うことができる[図5(II)]。このような化粧層2を用いることで、作業効率を高めることができる。
【0064】
接着材層2b、離型性シート2cを積層する方法は、特に限定されないが、例えば、化粧層2の裏面に接着材を塗付け、その上に離型性シート2cを積層する方法、あるいは、予め離型性シート2cの上に接着材を塗付して接着材層2bを形成し、当該接着材層2b上に化粧層2の裏面を積層する方法等が挙げられる。なお、接着材層2bを形成する接着材、離型性シート2cは、前述の熱発泡性シート1で使用可能なものと同様のものを使用することができる。
【0065】
さらに、本発明の化粧層2は、表面保護(耐水性、耐候性等)、汚染防止性等を目的として、最表面にクリヤー層2d[図5(III)]を有するものであってもよい。クリヤー層としては、公知のクリヤー塗料を使用することができる。
【0066】
(積層体)
本発明の積層体Aは、図1に示すように、熱発泡層1、及びその表面に化粧層2が積層された積層体であり、図6に示すように、化粧層2の内部ないし裏面側には補強層2aを有し、化粧層2が視認できるように表面側に積層されるものである。このような熱発泡層1と化粧層2を積層する場合、例えば、以下の方法によって積層することができる。
・熱発泡層1の表面に、補強層2aを載置し、化粧層用組成物を塗付し化粧層2を積層する方法。
・熱発泡層1の表面に、予め化粧層2の内部ないし裏面側に、予め補強層2aを半埋設または全埋設するように積層させた化粧層2(化粧シート2)を接着材を介して積層する方法。
なお、積層体Aの厚みは、好ましくは1.2~65mm(より好ましくは1.5~50mm)である。
【0067】
(被覆構造体)
本発明の被覆構造体は、鉄骨表面に上述の積層体Aを有するものである。
図7に、本発明被覆構造体の一例を示す。図7に示すように、本発明の被覆構造体は、鉄骨Bに対し、熱発泡層1、及びその表面側に化粧層2を積層した被覆構造体である。このような被覆構造体は、化粧層2が視認できるように被覆されたものであり、意匠性に優れるとともに、鉄骨が火災等によって高温に晒された際に、安定した耐熱保護性を維持することができる。
【0068】
また、図8に、本発明被覆構造体の別の一例を示す。図8に示すように、本発明の被覆構造体は、鉄骨Bに対し、熱発泡層1、及び化粧層2を積層した被覆構造体であり、上記熱発泡層1の無機繊維不織布1aが鉄骨B側に向いて被覆され、化粧層2が表面側となるように配置されていることを特徴とする。このような被覆構造体は、化粧層2が視認できるように被覆されたものであり、意匠性に優れるとともに、鉄骨が火災等によって高温に晒された際に、よりいっそう安定した耐熱保護性を維持することができる。
【0069】
鉄骨Bとしては、特に限定されず、例えば、角型、丸型、H型、I型等の鉄骨鋼材が挙げられ、これらは構造物を構成する柱、梁、等として使用されるものである。
【0070】
このような被覆構造体の被覆工法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
(1)鉄骨Bに対し、熱発泡層1、化粧層2を順に被覆する方法。
(2)鉄骨Bに対し、予め熱発泡層1、化粧層2が積層された積層体Aを被覆する方法。
上記(1)~(2)方法において、熱発泡層1として裏面側に無機繊維不織布1aを有する熱発泡層1(積層体A)を被覆する場合には、鉄骨Bに対して、無機繊維不織布1aが積層された面(裏面)を鉄骨B側に向けて設置することが好ましい。
【0071】
鉄骨Bに対して、熱発泡層1を被覆する具体的な方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
(イ)鉄骨Bに、熱発泡層1の構成成分を含む混合物を塗付する。
(ロ)鉄骨Bの表面、及び/または無機繊維不織布1aの裏面に接着材を塗付した後、無機繊維不織布1aを貼着し、熱発泡層1の構成成分を含む混合物を塗付する。
(ハ)鉄骨Bに、シート状の熱発泡層1(熱発泡性シート)(または積層体A)を巻き付け、端部を固定部材で固定する。
(ニ)鉄骨Bの表面、及び/またはシート状の熱発泡層1(熱発泡性シート)の裏面に接着材を塗付した後、熱発泡層1(または積層体A)を貼着する。
(ホ)シート状の熱発泡層1(熱発泡性シート)(または積層体A)が接着材層1b及び離型性シート1cを有する場合は、離型性シート1cを剥離し、接着材層1bを露出させて鉄骨B(予め接着材を塗付しておいてもよい)に貼着する。
なお、本発明の被覆構造体は、これら鉄骨Bに直接(密着して)被覆(貼着して被覆)する態様に好適なものである。
【0072】
上記(イ)(ロ)において、熱発泡層1の構成成分を含む混合物を塗付する際には、例えば刷毛、ローラー、コテ、へら、スプレー等の器具を用いることができる。
【0073】
上記(ハ)において、熱発泡層1(または積層体A)の端部を固定する固定部材としては、特に限定されないが、例えば、ワッシャー(ビス)、タッカー、溶接ピン、ボルト、タッピングねじ等の止め具が使用できる。また、これらの材質としては、金属製等の不燃性のものが好ましい。
【0074】
上記(ロ)(ニ)において、鉄骨B、熱発泡層1または無機繊維不織布1a裏面に接着材を塗付する際には、例えば刷毛、ローラー、コテ、へら、スプレー等の器具を用いることができる。接着材の塗付け量は、適宜設定すればよいが、好ましくは0.1~0.5kg/mである。また、鉄骨Bに熱発泡層1(または積層体A)を貼着する際には、圧着することが望ましい。圧着する際には、必要に応じ、ローラー、コテ等の押圧具を用いることができる。
【0075】
本発明の被覆構造体の被覆工法としては、特に上記(1)の方法が好適である。この場合、作業性、仕上がり性に優れる。さらには、図9に示すように、目地部Xを設けることが好ましい。目地部Xを設ける場所は、特に限定されないが、好ましくは、鉄骨Bの角部を除く場所であることが好ましい。目地部Xを設けることにより、熱発泡層1が効率的に発泡することができ、本発明の効果をいっそう高めることができる。
【実施例
【0076】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0077】
<熱発泡層(熱発泡性シート)の製造>
・熱発泡層用混練物1
熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)100重量部、メラミン90重量部、ジペンタエリスリトール90重量部、ポリリン酸アンモニウム320重量部、酸化チタン100重量部を主成分とする混合物を温度120℃に設定した加圧ニーダーで混練して熱発泡性シート用混練物1を調製した。
・熱発泡層用混練物2
熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)100重量部、メラミン90重量部、ジペンタエリスリトール90重量部、ポリリン酸アンモニウム320重量部、酸化チタン100重量部、ガラス繊維(繊維径7μm、繊維長6mm)4重量部を主成分とする混合物を温度120℃に設定した加圧ニーダーで混練して熱発泡性シート用混練物2を調整した。
【0078】
・不織布1:ガラス繊維がランダムに配列し、ポリビニルアルコール樹脂で接着した無機繊維不織布、坪量25g/m、厚み0.2mm
・不織布2:ガラス繊維がランダムに配列し、ポリビニルアルコール樹脂で接着した無機繊維不織布、坪量50g/m、厚み0.4mm
・不織布3:ガラス繊維がランダムに配列し、ポリビニルアルコール樹脂で接着した無機繊維不織布、坪量140g/m、厚み1.0mm
・不織布4:ポリエステル長繊維がランダムに配列し、ポリビニルアルコール樹脂で接着したポリエステル(有機繊維)不織布、坪量60g/m、厚み0.5mm
【0079】
表1に示す組み合わせで、不織布に熱発泡層用混練物を積層し圧延ローラーによって不織布が(I)半埋設または(II)全埋設するようにシート状に加工し、膜厚2mmの熱発泡性シート(450mm×1200mm)8種を作製した。
また、熱発泡層用混練物を圧延ローラーでシート状に成形後、アクリル系接着剤を介して熱発泡層と不織布に積層した態様[(III)埋設なし]の熱発泡性シート(450mm×1200mm)を1種作製した。
【0080】
(補強層)
・無機繊維織物:ガラス繊維、からみ織り、たて糸の密度10×2本/25mm、よこ糸の密度10本/25mm、坪量60g/m、厚み0.2mm
【0081】
(化粧層用組成物1)
アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%)200重量部、平均粒子径150μmの粒状着色無機質粒子(茶色)1000重量部と水、及び添加剤(増粘剤、消泡剤等)を定法により均一に混合し化粧層用組成物1を製造した。
(化粧層用組成物2)
上記化粧層用組成物1の粒状着色無機質粒子を平均粒子径100μmの粒状着色無機質粒子(茶色:黒色=1:4)に替えた以外は、同様にして化粧層用組成物2を製造した。
【0082】
<化粧層(化粧シート)1の製造>
木目調の型枠に、上記化粧層用組成物1、2を流し込み、23℃下で24時間硬化後脱型し木目調シート(600mm×1200mm、厚み3mm)を製造した。次いで、最表面にクリヤー塗料を塗付け量0.3kg/mで塗付した。
【0083】
<化粧層(化粧シート)2の製造>
木目調の型枠に、上記化粧層用組成物1、2を流し込み、上記補強層を半埋設となるように積層し、23℃下で24時間硬化後脱型し木目調シート(600mm×1200mm、厚み3mm)を製造した。次いで、最表面にクリヤー塗料を塗付け量0.3kg/mで塗付した。
【0084】
(試験体の製造)
上記9種の熱発泡性シート、及び上記2種の化粧シートを使用し下記の被覆構造体を製造した。
角型鉄骨(300mm×300mm、厚み9mm、長さ1200mm)に、作製した熱発泡性シート1の無機繊維不織布側が角型鉄骨側となるように接着材を介して貼着し、次いで化粧シートを接着材を介して貼着した被覆構造体を試験体とした。
【0085】
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて1時間加熱試験を行う過程で、試験開始後20分後(約280℃付近)に、形成途中の炭化断熱層の一部に衝撃を与え亀裂を生じさせた後、試験を続行し、このときの鉄骨の温度(鋼材温度)を測定、試験後、亀裂部以外の炭化断熱層の形状、及び亀裂部の炭化断熱層の形状を評価した。各評価基準は以下の通りである。また、結果は表1に示す。
(評価1:鋼材温度)
(鋼材温度)
AA:475℃未満
A:475℃以上500℃未満
B:500℃以上525℃未満
C:525℃以上550℃未満
D:550℃以上
(評価2:炭化断熱層の形状)
亀裂部以外の炭化断熱層の形状を目視にて確認した。評価基準は、炭化断熱層の脱落がなく、均一な炭化断熱層を形成したものを「AA」、炭化断熱層が脱落したものを「D」とする5段階評価(優:AA>A>B>C>D:劣)とした。
(評価3:亀裂部の炭化断熱層)
亀裂部の炭化断熱層の形状を目視にて確認した。評価基準は、炭化断熱層を形成したものを「AA」、鉄骨が露出したものを「D」とする5段階評価(優:AA>A>B>C>D:劣)とした
【0086】
【表1】



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9