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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/52 20060101AFI20231016BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B65H3/52 310E
B65H3/52 330E
B65H3/06 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019130024
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2020015623
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2018133783
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅史
(72)【発明者】
【氏名】谷池 芳寛
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-058541(JP,U)
【文献】特開2004-359408(JP,A)
【文献】実開平01-129146(JP,U)
【文献】特開2000-203738(JP,A)
【文献】特開2007-001684(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1702026(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートが積載されるシート積載台と、
前記シート積載台から取り込まれたシートを搬送路に沿って装置本体内に給送する給送ローラと、
前記給送ローラと対向して配置され、前記給送ローラとの間にニップを形成する分離ローラと、
前記分離ローラの上流側で前記搬送路内に突出して設けられ、給送される前記シートに当接する分離パッドと
を備え、
前記分離パッドは、前記シートの搬送方向の上流側に設けられた当接面と、前記当接面から下流側に向けて延在する傾斜面とを有し、
前記傾斜面は、前記搬送方向に対する傾斜角度が前記当接面の傾斜角度より小さく、
前記分離パッドの先端は、前記給送ローラに向けて延在し、前記給送ローラとの間に間隙を有して配置されることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記分離パッドは、前記分離ローラの周囲を覆い前記シートの搬送面を形成するカバー部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記分離パッドは、弾性変形をし、コシの弱いシートに対しては変形の度合いが小さく、コシの強いシートに対しては前記搬送路から退避するまで変形するように、前記シートの剛性によって前記弾性変形の程度が変わることを特徴とする請求項1または2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記シート積載台に積載されたシートを前記給送ローラに向けて取り込むピックアップローラを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
記当接面と前記傾斜面との境界部は、前記ニップにおける搬送方向の上流端よりも、前記搬送方向とシートの幅方向との両方に直交する方向において前記給送ローラ側に突出して設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記分離ローラは、前記給送ローラの回転中心から前記シートの搬送面に下ろした垂線よりも搬送方向の下流側に前記分離ローラの回転中心が位置するように設けられ、
前記分離パッドは、前記垂線よりも搬送方向の上流側にその先端が位置するように設けられたことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積載台に積載されたシート(原稿)を搬送する原稿搬送装置において、積載台に積載されたシートを分離する手段として給送ローラと対向してニップを形成する分離ローラを設け、さらに、給送ローラに向けてシートを当接させる中板を設けた原稿搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-179271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先行するシートが給送ローラによって給送されている間は、後続のシートの先端は分離ローラによって分離されて静止しているが、先行するシートの後端が中板を抜けた時点で、中板によって後続のシートが給送ローラに押し付けられ、そのまま前方に向けて搬送されてしまうことでシートにループが発生し、そのままジャムが発生してしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を鑑み、本発明に係るシート搬送装置は、
複数のシートが積載されるシート積載台と、
前記シート積載台から取り込まれたシートを搬送路に沿って装置本体内に給送する給送ローラと、
前記給送ローラと対向して配置され、前記給送ローラとの間にニップを形成する分離ローラと、
前記分離ローラの上流側で前記搬送路内に突出して設けられ、給送される前記シートに当接する分離パッドと
を備え、
前記分離パッドは、前記シートの搬送方向の上流側に設けられた当接面と、前記当接面から下流側に向けて延在する傾斜面とを有し、
前記傾斜面は、前記搬送方向に対する傾斜角度が前記当接面の傾斜角度より小さく、
前記分離パッドの先端は、前記給送ローラに向けて延在し、前記給送ローラとの間に間隙を有して配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、分離パッドを設けることで分離性能を向上させつつ、先行するシートの後端が分離パッドを抜けた際に後続のシートが給送ローラに当接してジャムが発生するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置の概略構成断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置の構成を示す概念図。
図3】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置における画像読取ユニットを示す断面図。
図4】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置における分離給送部を示す断面図。
図5】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置における分離給送部の拡大図。
図6】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置における分離給送部の拡大斜視図。
図7】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置における要部を示す拡大断面図。
図8】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置における要部を示す他の拡大断面図。
図9】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置における要部を示す他の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態について、図面を用いて説明する。まず、図1図2を用いて本実施形態の原稿搬送装置の概略構成について説明する。
【0009】
<原稿搬送装置の概略構成>
原稿搬送装置200は、原稿としてのシートを搬送し、画像読取ユニットによってシートの両面又は片面の画像を読み取ることができるシート搬送装置である。このために、原稿搬送装置200は、シート取込装置101を備える。シート取込装置101は、シート積載台1を有し、シート積載台1には、シートを複数枚積載可能である。このシート積載台1は昇降自在に構成されており、後述の制御手段によってシート積載台駆動モータ2を駆動制御することによって昇降制御される。シート検知センサ3は、シート積載台1に積載されたシートがシート取込位置にあることを検知する。シート積載検知センサ12は、シート積載台1のシート積載面1aにシートが積載されていることを検知する。シート積載台1は、シートの搬送方向に交差(本実施形態では、直交)するシートの幅方向両端に当接して、シートの幅方向位置を規制する規制板1bを有する。
【0010】
原稿ピックアップ部の一例としてのピックアップローラ4(取り込み手段)は、シート積載台1のシートをシート積載台1から送り出す。不図示のピックアップローラ駆動モータは、ピックアップローラ4を回転させる。また、ピックアップローラ4は、取込位置と取込位置よりも上方の退避位置とに、不図示の駆動手段によって移動される。ピックアップローラ4はシートを取り込むときは取込位置に移動され、シートの取り込みが終わったら退避位置に移動される。
【0011】
給送ローラ6は、シートを搬送方向下流側に給送する方向に回転駆動されている。これによってシートを原稿搬送装置200の装置本体内に給送する。分離ローラ7は、シートを搬送方向上流側に押し戻す方向に回転する回転力を、不図示のトルクリミッタ(スリップクラッチ)を介して分離モータから常時受けている。給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートが1枚存在するときは、上記トルクリミッタが伝達する分離ローラ7がシートを上流側に押し戻す方向の回転力の上限値より、給送ローラ6によって下流側に送られるシートと分離ローラ7との間の摩擦力によってシートが下流側に給送される方向への回転力が上回り、分離ローラ7は給送ローラ6に追従して回転する(連れ回りする)。
【0012】
一方、給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートが複数枚存在するときは、分離ローラ7はシートを上流側に押し戻す方向の回転をローラ軸から受け、最も上位のシート以外が下流側に搬送されないようにする。このように給送ローラ6がシートを下流側に給送する作用と、分離ローラ7のシートを下流側に搬送されないようにする作用とによって、シートが重なって給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部に送り込まれたとき、最も上のシートのみが下流側に給送され、それ以外のシートは下流側に搬送されないようにされることで、重なったシートが分離給送される。このようにして、給送ローラ6と分離ローラ7とは、一対の分離ローラ対42(原稿分離部)を構成する。なお、本実施形態では、分離ローラ対42を使用しているが、分離ローラ対42の代わりに分離ローラと給送ローラのどちらか一方をベルトにした、分離ベルトローラ対を使用してもよい。
【0013】
また、本実施形態においては、シートの分離性能をさらに向上するために、分離ローラ7の上流側に分離パッド37を設けている。分離ローラ7によってシートが分離される前に分離パッド37がシートに当接するようにすることによってシートが分離されるようにして、より確実にシートが重送して搬送されることを防ぐことができる。本実施形態においては、原稿分離部と分離パッド37とによって分離給送部を構成している。分離パッド37の詳細な構成などについては後述する。
【0014】
このように構成されたピックアップローラ4などからなる原稿ピックアップ部および給送ローラ6、分離ローラ7、分離パッド37などからなる分離給送部によって、シート積載台1に積載されたシートが1枚ずつに分離されて、原稿搬送装置200内部の搬送路に取り込まれる。取り込まれたシートは、読取ユニット14、15によって画像を読み取られたのちに、U字状に形成された搬送路内を搬送されて、装置本体上部に設けられた排出口から排出される。
【0015】
なお、本実施形態における原稿搬送装置200の装置本体は、上部ユニット200aと下部ユニット200bとで構成されており、上部ユニット200aを下部ユニット200bに対し、排出口付近に設けられたヒンジを中心として回動させることで開閉可能である。搬送路は、その上部ユニット200aと下部ユニット200bとの間に形成されており、上部ユニット200aを上方に回動させることで、搬送路を開放可能となっている。
【0016】
また、分離された原稿が通過する位置に重送検知センサ30を備えることで、原稿分離部によって原稿が一枚ずつに分離できているかどうかを検知することができる。本実施形態においては重送検知センサ30として超音波の送受信部を用いた検出装置を用いており、搬送路を跨いで配置された送受信部間における超音波の減衰量によって重送を検知することができる。
【0017】
原稿分離後のシートは、搬送モータ10によって駆動される搬送ローラ17、18、20、21により原稿の画像の読み取りが行われる原稿読取位置Pまで搬送され、更にその他のローラ(原稿搬送部)によって排出口まで搬送される。また、搬送モータ10は、シートの読み取りに最適な速度や、シートの解像度等の設定に応じてシートの搬送速度を変更できるよう各ローラを駆動する。
【0018】
搬送ローラ17、18で構成される搬送ローラ対、搬送ローラ20、21で構成される搬送ローラ対、搬送ローラ22、23で構成される搬送ローラ対、搬送ローラ24、25で構成される搬送ローラ対及び図1に示すさらに下流側のローラ対によって、シートが排出積載部44に搬送される。上ガイド板40と下ガイド板41との2つのガイド板は、分離ローラ対、搬送ローラ対、各搬送ローラ対及び下流側のローラ対により搬送されるシートを案内する。
【0019】
レジスト前センサ32は、搬送ローラ17、18で構成される搬送ローラの上流側に配設され、搬送されるシートを検知する。レジスト後センサ34は、搬送ローラ20、21で構成される搬送ローラ対の下流側に配設され、搬送されるシートを検知する。本実施形態においては更に、搬送ローラ17、18で構成される搬送ローラ対と搬送ローラ20、21で構成される搬送ローラ対との間にレジスト中センサ33を設け、搬送ローラ17、18にシートが挟持されて搬送されていることを検知するようにしている。
【0020】
レジスト後センサ34によって原稿が検知されると、制御手段としての制御装置45によって読取ユニット14、15に対し画像の読み取り指示が出され、搬送されるシートの画像が読み取られる。制御装置45は、原稿搬送装置200全体の制御を行う。このような制御装置45は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。読取ユニット14、15によって読み取られたシートの画像は、不図示のインターフェース部を介して情報処理装置などの外部装置に対して送信される。
【0021】
<読取ユニット>
次に、読取ユニット14、15の構成について説明する。読取ユニット14、15は、図1に示すようにシートが搬送される搬送路を挟むように配置され、図2に示すように、読取ユニット14の搬送路を挟んだ対向側には押圧部材としてのプラテンローラー14aが配され、読取ユニット15の搬送路を挟んだ対向側には押圧部材としてのプラテンローラー15aが配されており、各読取ユニットのコンタクトガラス54(図3参照)に対して搬送路側からシートを付勢しつつシートの両面又は片面の画像を読み取る。読取ユニット14、15は搬送路を搬送されるシートにおける互いに異なる面を読み取り可能に配置されていれば良く、すなわち、読取ユニット14、15は、原稿搬送装置200の上部ユニット200aと下部ユニット200bの一方にそれぞれ設けられ、それぞれの読取ユニットに対応するプラテンローラー14a、15a(押圧部材)が、上部ユニット200aと下部ユニット200bの他方に設けられる。
【0022】
なお、以下の説明においては、読取ユニット15は、基本的に読取ユニット14と同様の構造を有する。従って、読取ユニット15については、読取ユニット14と異なる点についてのみ説明し、重複した説明は省略する。
【0023】
図3は、読取ユニット14の長手方向と垂直な平面における断面図である。図3(a)は、原稿読取時の状態(原稿読取位置)を示し、図3(b)は、色基準部材読取時の状態(シェーディング位置)を示している。
【0024】
読取ユニット14は、搬送ローラ20、21によって搬送されるシート(原稿)の画像を読み取り可能な読取部としてのラインイメージセンサー50と、ラインイメージセンサー50を移動可能に収容する収容部としてのセンサ箱51と、コンタクトガラス54、ガラス保持部材55、色基準部材56、保護部材57からなるガラス保持ユニット52と、ラインイメージセンサー50を移動可能する移動機構58とを備える。ラインイメージセンサー50はコンタクトガラス54を介してシートを読み取るため、コンタクトガラス54に傷がついた場合、画像不良が起こる可能性がある。よって、コンタクトガラス54、ガラス保持部材55、色基準部材56、保護部材57は一体化することが望ましい。このため、原稿搬送装置200の設置後にコンタクトガラス54を交換する必要がある。本発明では、コンタクトガラス54はガラス保持ユニット52ごと交換可能になっている。なお、ガラス保持部材55は、概略枠形状であって、コンタクトガラス54の周囲を覆いつつ、その一部における上部には保護部材57が取り付けられる。
【0025】
また、ラインイメージセンサー50は、詳しくは後述するように、センサ箱51内で移動可能であり、このために、センサ箱51と相対移動可能にケーブル53により繋がれている。ラインイメージセンサー50の入出力信号は、ケーブル53を介して制御装置45と送受信される。
【0026】
前述の通り、読取ユニット14のガラス保持ユニット52は、搬送ローラ20、21によって搬送されるシートを第1位置としての原稿読取位置Pにガイドするコンタクトガラス54と、コンタクトガラス54を保持するガラス保持部材55とを備える。コンタクトガラス54は、ラインイメージセンサー50に対してシートが搬送される側に、ガラス保持部材55により保持された状態でセンサ箱51に対して固定されている。したがって、ラインイメージセンサー50は、原稿読取位置Pに搬送されたシートの画像を、コンタクトガラス54を介して読み取る。
【0027】
また、読取ユニット14は、コンタクトガラス54上に白色基準となる色基準部材56と、色基準部材56が通紙によって削れるのを防止する覆い部材である保護部材57を有する。色基準部材56は、コンタクトガラス54を挟んでラインイメージセンサー50と反対側に配置されており、原稿読取位置P(図3(a))とは異なる第2位置としての色基準読取位置Q(図3(b))に設けられている。本実施形態においては、色基準部材56はコンタクトガラス54上に接着によって貼り付けられている。
【0028】
保護部材57は、色基準部材56に対し、シートが搬送される側を覆う。保護部材57はシートと接触するため搬送方向上流にはシートを掬い上げる傾斜が設けられており、薄紙などにおける通紙ジャムが起きにくい形状となっている。
【0029】
更に、図3に示すように、読取ユニット14は、ラインイメージセンサー50を移動させる移動機構としての移動機構58を備え、原稿読取位置Pと色基準読取位置Qとの間でラインイメージセンサー50とを移動させることができる。なお、その制御は制御装置45によって行えばよい。
【0030】
このような読取ユニット14、15を有する原稿搬送装置200は、搬送ローラ20、21などによってシート(原稿)を搬送し、画像の読み取りを行う。具体的には、搬送されてくるシートを、読取ユニット14、15が有する光源により照射し、ロッドレンズアレイ等により原稿からの反射光をラインイメージセンサー50のセンサ面に集光する。その後、ラインイメージセンサー50により集光した反射光を光電変換して制御装置45に出力し、制御装置45がラインイメージセンサー50の出力信号を基に原稿画像データを生成する。なお、光電変換された画像データに対し画像処理や種々の変換を行ってから制御装置45に出力しても良い。
【0031】
読取ユニット14においては、光源及びロッドレンズアレイには光量むらがあり、またラインイメージセンサー50の感度むらがあるため、そのままでは一様な画像読取を行うことができない。したがって、一様な画像読取を可能にするために、色基準部材56をラインイメージセンサー50で読み取ったときの出力値(データ)を用いて、原稿読取時にラインイメージセンサー50の出力値から得られる画像データの補正が行われている。この補正は、原稿を照射する光源の発光量を適正化し、ラインイメージセンサー50の画像信号出力を増幅する際の増幅率(ゲイン)を最適化した後に行われるのが一般的である。以下、上述の発光量やゲインの調整を含む、ラインイメージセンサー50が原稿の画像情報を一様に読み取るための一連の補正をシェーディング補正という。
【0032】
シェーディング補正用のデータを取得するための色基準部材56は、印刷、塗装又は接着、テープによる貼付け等の方法で、コンタクトガラス54の表面(シートが搬送される側の面)において原稿の搬送方向で原稿読取位置Pからずれた位置に設けられる。本実施形態においては、色基準部材56は白色基準部材であり、その白色基準となる白色基準面は、色基準部材56とコンタクトガラス54との密着面である。色基準部材56を原稿読取位置Pにおけるラインイメージセンサー50からの原稿までの距離と同じ距離となるコンタクトガラス54における搬送路側の面としているため、適切なシェーディング補正を行い、良好な画質を得ることが出来る。
【0033】
なお、色基準部材56は、コンタクトガラス54に固定されていなくても良い。例えば、ラインイメージセンサー50が内部を移動するセンサ箱51に対して、色基準部材56が固定されていても良い。この場合、コンタクトガラス54はセンサ箱51に固定されており、色基準部材56に対して相対移動しない。
【0034】
また、ラインイメージセンサー50は、図3に示す移動機構58により、ラインイメージセンサー50の読取位置が、原稿読取時には原稿読取位置P(第1位置)となり、シェーディング補正用のデータ取得時には色基準読取位置Q(第2位置)となるように、センサ箱51の内部で移動させられる。このようにして、ラインイメージセンサー50は、シートの搬送方向に沿った副走査方向に移動する(図3参照)。
【0035】
本実施形態においては、ユーザが原稿搬送装置200の電源を入れ、画像の読取開始指示を行うと、制御装置45により、シェーディング補正を行うよう指示が出て、制御装置45が、ラインイメージセンサー50を原稿読取位置Pから色基準読取位置Qへ読取位置が移動するように移動機構58が制御される。
【0036】
<プラテンローラー>
次に、読取ユニット14、15の保護部材について説明する。図3に示すように原稿読取位置Pの対向側にはプラテンローラー14a、15aが配されている。プラテンローラー14aは搬送ローラ25から、プラテンローラー15aは搬送ローラ24からそれぞれ駆動を伝達され回転する。そのため搬送するシートとして薄紙などを通紙してもスムーズに原稿読取位置Pにガイドされ、ジャムを起こしにくい。
【0037】
本実施形態では、図2における搬送路の上側のユニット(読取ユニット14とプラテンローラー15a)が搬送路下側のユニット(プラテンローラー14a、読取ユニット15)に向けて付勢されている。具体的には、プラテンローラー14aは、そのベアリングホルダが原稿搬送装置200の搬送路などを形成する金属製のメインシャーシなどに嵌合して固定されており、その上部に位置する読取ユニット14がプラテンローラー14a側に向けて移動可能に設けられている。読取ユニット14は、ばねなどの付勢部材によって押圧されており、シートの厚みに応じてプラテンローラー14a側に接離可能となっている。
【0038】
また、読取ユニット15が原稿搬送装置200の搬送路などを形成する金属製のメインシャーシなどに嵌合して固定されており、その上部に位置するプラテンローラー15aが読取ユニット15側に向けて移動可能に設けられている。本実施形態は一例であり、同様の効果を得るためには下側のユニットが上側のユニットに付勢されていても良い。
【0039】
<分離給送部>
上述したように、本実施形態においては、分離パッド37と原稿分離部によって分離給送部を構成している。図4には、分離給送部、シート積載台1および原稿ピックアップ部の断面図を示している。シート積載台1に積載されたシートは、ピックアップローラ4によって給送ローラ6に向けて取り込まれ、給送ローラ6と分離ローラ7との間のニップ部において1枚に分離されたシートがさらに下流側に向けて搬送されて装置本体内に給紙される。このとき、分離パッド37が給送ローラ6と分離ローラ7との間のニップよりも上流側においてシートに当接することで、ニップに進入する前のシートを分離することができる。本実施形態においては、給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部の搬送方向における中央部分が、給送ローラ6のローラ軸の中心よりもやや搬送方向の下流側に位置するように、分離ローラ7が若干下流側に配置されている。そして、分離パッド37は、給送ローラ6のローラ軸の中心よりも上流側から給送ローラ6の中心側に向けて延在するように配置されている。詳しくは後述する。
【0040】
なお、以下の説明においては、給送ローラ6や分離ローラ7の回転中心となるローラ軸が延びる方向を搬送されるシートの幅方向(左右方向)として説明する。
【0041】
図5には、給送ローラ6と分離ローラ7とで構成される原稿分離部と分離パッド37の拡大図を示している。なお、図4図5ともに、主要な構成以外は省略して図示している。分離パッド37は、本実施形態においてはウレタンで形成されているが、搬送されるシートに対する所定の摩擦抵抗を有し弾性を持つ材料であれば好適に用いることができ、ゴムなどであっても良い。本実施形態における分離パッド37は、後述するように上流端側が下部ユニット200bにおいて搬送路を構成する前カバー部材41aに固定されており、下流側にいくにつれて搬送路内への進入量が増えるように斜めに設けられた平板状の部材を用いている。従ってその下流側においては分離ローラ7側に空間があり、分離パッド37上をシートが搬送された際に、そのシートと当接することによって、分離ローラ7側に弾性変形することができる。
【0042】
弾性変形した分離パッド37の復元力により、シートは分離パッド37から離れる方向に向けて付勢されることになるが、シート自身の剛性(コシ)によってその変形の程度は異なる。例えば坪量が127.9g/m以上の厚紙などでは、コシが強いため図7に示すようにシートの変形がほとんどなく、分離パッド37が弾性変形する。坪量が52g/m未満の薄紙などでは、コシが弱いため図8に示すようにシートが変形し、分離パッド37の弾性変形の度合いが小さくなりやすい。但し、分離パッド37に当接するシートの枚数などによってはこれに限られず、特にこれらの厚紙や薄紙以外のシートの場合には、分離パッド37と当接するシートの枚数などによってその変形の程度などが変化しやすい。
【0043】
分離パッド37は、図6に示すように、分離ローラ7の上流側において、その先端37aが給送ローラ6に向けて延在するように、下ガイド板41に取り付けられた前カバー部材41aにその基端部が固定されている。本実施形態においては、搬送方向に対してシートの幅方向で左右に分割して設けられた分離ローラ7と対向するようにそれぞれ分離ローラ7と同じ幅で左右に分割して設けられている。給送ローラ6も分離ローラ7と同様に左右に分割して設けられており、従って、給送ローラ6と分離ローラ7とで形成される左右のニップ部に対応して、それぞれの上流に分離パッド37が設けられている。
【0044】
また、分離パッド37は、その上流側で前カバー部材41aに対して取り付けられており、そこから下流側に向かって当接面37bが延在している。この当接面37bが、ピックアップローラ4によって給送されたシートに当接することで複数のシートが分離される。この当接面37bから、下流側に延在するように傾斜面37cが設けられている。この傾斜面37cによって、図8を用いて後述するように、シート先端側に発生するループの高さを低減することができ、ジャムの発生を抑制することができる。なお、当然ながら傾斜面37cに当接したシートに対しても当接面37b同様に分離作用が及ぶ。
【0045】
図5に示すように、分離パッド37の先端37aは、給送ローラ6と所定の間隙を有するように固定されており、シートが間に介在しない状態においては、給送ローラ6と分離パッド37の先端37aとの間にはわずかな隙間が空いている。分離パッド37は、従来のような給送ローラ6と当接してニップを形成するように設けられたものとは異なり、給送ローラ6の上流側において給送ローラ6と当接せずに所定の間隙を有するように設けられている。つまり、本実施形態の分離パッド37は、給送ローラ6との間のニップでシートを保持して分離するのではなく、シートに対して摩擦抵抗を付与することによって分離ローラ7による分離を補助するものである。
【0046】
この分離パッド37においては、当接するシートとの間に摩擦を生じることによって、シートの分離作用を発生し、先行するシートS1と後続のシートS2との摩擦が分離パッド37と後続のシートS2との摩擦よりも小さい場合には、後続のシートS2を分離パッド37の位置に保持して分離することができる。
【0047】
一方で、先行するシートS1が給送ローラ6と分離ローラ7との間に挟持されて搬送されている状態において、先行するシートS1と後続のシートS2との間の摩擦力が十分大きい場合などには、後続のシートS2がシート間の摩擦力によって分離パッド37を超えて搬送され、例えば図7に示すように後続のシートS2の先端が分離ローラ7に到達する。この場合、後続のシートS2は、その先端が給送ローラ6と分離ローラ7との間のニップにおいて保持されており、分離パッド37はその後続のシートS2や先行するシートS1によって弾性変形して、先端37aが給送ローラ6側から分離ローラ7側に移動している。なお、図7においては説明のために分離パッド37の弾性変形を誇張して表現している。
【0048】
この状態で、先行するシートS1が分離パッド37の位置を抜けると、分離パッド37の弾性変形による復元力によって後続のシートS2が持ち上がり、場合によっては先端がニップに保持された後続のシートS2が給送ローラ6に触れて給送されることによって、図8のような状態となることがある。図8に示す状態においては、分離パッド37によって後続のシートS2を持ち上げた状態となっているため、分離パッド37の先端37aは、シートと当接していないときの基準状態と比べて、少し分離ローラ7側へと下がっている。この状態においても、給送ローラ6と分離ローラ7との間のニップに先端が挟持された後続のシートS2に対して分離作用を好適に及ぼすべく、分離パッド37の先端37aは、ニップの入り口よりも給送ローラ6側に突出するようになっている。
【0049】
詳細に説明すれば、給送ローラ6と分離ローラ7とのニップの上流端に対してシートが進入する方向をニップ位置における搬送方向とすると、搬送方向とシートの幅方向との両方と直交する方向において、分離パッド37の先端37aが、ニップの上流端よりも給送ローラ6側に突出して設けられている。特に薄紙の場合に、分離パッド37によって図8のようにシートが持ち上げられた状態となることが好ましい。
【0050】
より分離性能を向上するために、当接面37bとそこから下流側に延在するように延びる傾斜面37cとの境界となる境界部37d(図6参照)が、搬送方向とシートの幅方向との両方と直交する方向においてニップの上流端よりも給送ローラ6側に突出して設けられていることが好ましい。本実施形態においては、傾斜面37cは下流側にいくにつれて厚みが薄くなっており、境界部37dには山なりの角部が形成されている。
【0051】
ここで、従来の原稿搬送装置におけるシートの挙動について説明する。背景技術において説明したように、給送ローラ6に対して当接するように設けられた中板や分離パッドを用いると、図8のような状態となった後続のシートS2が給送ローラ6にほぼ確実に当接することになる。この時点では、給送ローラ6の駆動を切っていたとしても、先行するシートS1がまだ給送ローラ6に当接しているため、給送ローラ6はシートS1に連れ回りして回転している。そのため、給送ローラ6に対して当接するような中板や分離パッドによってシートS2が給送ローラ6に当接していると、給送ローラ6によってシートS2が給送されようとするが、その先端は、分離ローラ7によってニップ部に保持されている。先端がニップに保持された後続のシートS2が、連れ回りする給送ローラ6によって給送されてしまうと、分離パッド37の下流側にできるループがより顕著となり、場合によってはさらにその下流側で分離ローラ7側へのループが形成されてしまうなどの状態に至る。この状態で後続のシートS2が給送ローラ6によって給送されることで、ジャムが発生することがあった。
【0052】
本実施形態においては、図8に示すように、先行するシートS1が分離パッド37を抜けることによって後続のシートS2にはループが発生するものの、そのループが給送ローラ6に当接しない程度の間隙を空けて分離パッド37の先端37aが位置するように分離パッド37が設けられているため、後続のシートS2におけるジャムの発生を防ぐことができる。上述したように、シートに対する分離作用を好適に及ぼすべく、分離パッド37の先端37aは、ニップよりも給送ローラ6側に突出するようになっているが、その基準状態(シートが当接していない状態)においても、給送ローラ6の表面との間に間隙を有するように配置されている。好ましくは、先行するシートS1が分離パッド37の先端37a位置を抜けた瞬間に先端37aが持ち上がる勢いで給送ローラ6側に移動した際に、後続のシートS2が給送ローラ6に当接しない程度の間隙を設けてあることが好ましい。
【0053】
なお、先行するシートS1が分離パッド37を抜けた瞬間に分離パッド37によって給送ローラ6側に持ち上げられる後続のシートS2が、給送ローラ6に当接しない程度の間隙が分離パッド37と給送ローラ6との間に設けられていることが好ましいが、これに限られない。すなわち、分離パッド37によって後続のシートS2が持ち上げられて給送ローラ6に当接したとしても、給送ローラ6との間の摩擦が小さければ連れ回りする給送ローラ6によって給送されてしまうことはない。よって、先行するシートS1が分離パッド37を抜けた時点で、後続のシートS2と給送ローラ6との間にシートが給送される摩擦が及ぼされない程度の間隙が分離パッド37の先端37aと給送ローラ6との間に設けられていれば良い。
【0054】
特に、シートのコシによって分離パッド37を分離ローラ7側に押圧する作用が起こりにくい薄紙などのシートを搬送する際にジャムの発生を好適に低減できる。なお、以上の説明では、先端がニップ部に保持されたシートの上流側を給送することでシートに形成される変形をループと表現しているが、その変形の程度は、周辺構造などとの干渉によって小さく抑えられる可能性がある。
【0055】
また、図5に示すように、本実施形態においては、分離ローラ7を、給送ローラ6の回転中心6aから搬送面Lに下ろした垂線Hに対し、搬送方向における下流側に分離ローラ7の回転中心7aが位置するように配置している。その分離ローラ7に対し、分離パッド37が搬送方向の上流側に配置されており、その先端37aが、垂線Hよりも搬送方向における上流側に配置されている。この状態を換言すると、給送ローラ6の回転中心6aに対し、搬送面Lに対する垂線Hよりも上流側に分離パッド37(特にその先端37a)が設けられ、垂線Hよりも下流側に分離ローラ7の回転中心7aが設けられていると言える。この配置によって、分離ローラ7と分離パッド37とによる分離作用を、それぞれ給送ローラ6の異なる部分との間によって及ぼすことができる。ここで、搬送面Lとは、各ローラなどによって搬送されるシートが通過する部分であり、概ねシート積載台1と下部ユニット200bによって構成される面で、平面とは限らない。本実施形態においては、シート積載台1から前カバー部材41a、下ガイド板41の連続した面であり、部分的な凹凸は無視してシートが通過する部分に近似して良い。
【0056】
なお、分離パッド37は、搬送方向において給送ローラ6の外形よりも内側に固定されていて、所定の取り付け角度で下流側に向けて延在することが好ましい。分離パッド37の取り付け角度については、分離パッド37の延在方向が給送ローラ6の回転中心6aよりも下流側を向いていることが好ましい。分離パッド37を給送ローラ6の回転中心6aよりも上流側を向くように配置してしまうと、分離パッド37がシートに及ぼす抵抗が大きくなり過ぎることで、不送りなどの搬送異常が発生する虞がある。
【0057】
また、上述したように、分離ローラ7はローラ軸との間にトルクリミッタを介して取り付けられている。このトルクリミッタは、分離ローラのローラ軸から駆動力を受け取る内輪と、内輪に対して一定の束縛力を持ち一定以上の回転力が加わると滑るよう束縛しているコイルばねと、コイルばねと連結されてトルクリミッタの周囲を覆うよう構成される外輪の3つの部材から構成される。分離ローラのローラ軸と分離ローラ表面との負荷の差が一定以上となるとトルクリミッタの内輪とコイルばねとが滑ることで分離ローラ表面への負荷が制限される。静止状態から負荷をかけたとき、コイルばねと内輪とが滑るまでに、コイルばねの伸縮により内輪と外輪との間に一定量の回転差が生じ、負荷から解放されるとこの回転差の分だけコイルばねの反発力によって負荷方向と反対側に外輪が戻ろうとする戻り作用を生じる。
【0058】
この戻ろうとする負荷を、分離ローラ7と接圧する給送ローラ6が受けることとなり、給送ローラ6の駆動力を伝達するギアのバックラッシの分だけ給送ローラ6は逆回転する。このとき、給送ローラ6にシートが当接していて、シートに摩擦が及ぼされる状態であると、シートへのジャムの発生の要因となり得る。それに対し本実施形態においては、上述したように、分離パッド37と給送ローラ6との間には、間隙が設けられており、分離パッド37によって持ち上げられたシートと給送ローラ6との間の摩擦を低減するようになっている。この構成によれば、上述したバックラッシの分だけシートが戻される状況であっても、シートが分離パッド37よりも上流側に滑りやすくすることができ、トルクリミッタによる上記の戻り作用によるジャムの発生も低減できる。
【0059】
また、以上説明した実施形態においては、分離パッドとして平板上のものを用いているが、形状はこれに限られない。例えば、その一部に給送ローラ6側へ突出する突出部を有することで分離作用を向上しても良い。
【0060】
また、以上説明した実施形態においては、搬送方向に対してシートの幅方向において左右に分割して設けられた給送ローラ6のそれぞれに対向するように左右に独立して分離パッドを設けている例について説明したが、本発明はこれに限られず、単一の分離パッドを左右の給送ローラ6の両方と対向するように配置しても良い。
【0061】
以上、本発明のシート搬送装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、以上説明した各実施形態を適宜変更したり、組み合わせて適用したりすることが可能である。
【0062】
以下、図9を用いて、本実施形態の構成について詳細に説明する。図9には、図5と同じ、分離給送部、シート積載台1および原稿ピックアップ部の断面図を示しており、各部の構成を説明するための補助線を付している。
【0063】
上記の説明によれば、搬送方向とシートの幅方向との両方と直交する方向において、分離パッド37の先端37aが、ニップの上流端よりも給送ローラ6側に突出して設けられ、特に薄紙の場合に、分離パッド37によって図8のようにシートが持ち上げられた状態となることが好ましいと説明した。また、より分離性能を向上するために、当接面37bとそこから下流側に延在するように延びる傾斜面37cとの境界となる境界部37d(図6参照)が、搬送方向とシートの幅方向との両方と直交する方向においてニップの上流端よりも給送ローラ6側に突出して設けられていることが好ましいことを説明した。
【0064】
これを換言すると、分離パッド37の先端37aが、給送ローラ6と分離ローラ7との共通接線L1よりも給送ローラ6側に突出していることが好ましい。ただし、給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部において、それぞれのローラ表面を構成する材料の弾性によって、それぞれのローラは潰れている。従って、給送ローラ6と分離ローラ7との共通接線L1とは、給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部の上流端と下流端と通る直線のことを意味する。
【0065】
また、図7図8を用いて説明したように、本実施形態の分離パッド37aは、厚紙などのコシの強いシートに対しては、自身が弾性変形することによってシートが複数枚進入してきた場合には分離する作用を生じつつ給紙を妨げないように退避し、一方で、薄紙などのコシの弱いシートに対しては、あまり弾性変形しないことで複数枚進入してきたシートの分離作用を向上している。そのため、分離パッド37aは摩擦部材であることが好ましく、本実施形態においては、上述したようにウレタンで形成されているため、複数枚進入してきたシートに対する分離作用を向上している。また、その分離作用を好適に発揮するために、給送ローラ6と分離ローラ7とで形成される分離給送部の上流側をカバーする位置に設けられていることが好ましい。この配置によれば、分離パッド37aによって分離給送部(ニップ)の上流側で予備的に分離作用を及ぼすことができ、シートの分離作用を向上できる。
【0066】
なお、分離パッド37を前カバー部材41aに取り付ける位置は、図9に図示した領域A1に分離パッド37の当接面37bが存在するような位置とすることで、確実に分離作用が生じるようにしている。領域A1は、図9に示す断面において、共通接線L1と、搬送方向上流側における給送ローラ6と分離ローラ7の共通接線L2とで囲まれた領域である。なお、図9においては、分離パッド37を前カバー部材41aに取り付ける位置は領域A1よりも下方に位置しているが、分離パッド37を前カバー部材41aに取り付ける位置を領域A1内にすることによって、分離パッド37による分離作用をより有効に発揮することができる。
【0067】
また、上述したように、特に薄紙である後続のシートS2に対して分離パッド37による分離作用が生じるように、分離パッド37の先端37aがニップの上流端よりも給送ローラ6側に突出しつつ、分離パッド37に対しシートなどによる外力が及ぼされない基準状態において先端37aと給送ローラ6との間には間隙を有するように設けられていることが好ましいことを説明した。具体的には、概ね厚さが普通紙相当の0.1mmよりも薄い薄紙において、上述したようにループが形成されてジャムを発生しやすい。それに対し、本実施形態においては分離パッド37の先端37aと給送ローラ6との間の間隙をそれよりも広げることによって、好適にジャムの発生を抑制できる。特に、0.5mmから1mm程の間隙を設計値とすることで、分離パッド37やその周辺の構成部品の取り付け誤差などを考慮しても、分離パッド37と給送ローラ6との間に確実に間隔を空けることができ、ジャムの発生を抑えつつ、シートの分離作用も確保することができ、好適である。
【0068】
このような分離パッド37によって、分離作用の確保とジャムの発生の抑制を行うことができるが、分離パッド37によってシートに発生するループを小さくすることによって、ジャムの発生をより効果的に抑制することができる。上述したように、本実施形態の分離パッド37には、当接面37bとそこから下流側に延在するように延びる傾斜面37cが設けられている。すなわち、先端がニップに進入した薄紙である後続のシートS2は、分離パッド37の先端37aによってループが作られるが、このとき、先端37aができるだけ薄い方が、給送ローラ6側に凸となるループを小さくすることができる。そのため、本実施形態においては、分離パッド37に傾斜面37cを設けることでそのループを小さくし、シートが給送ローラ6に当接することにより発生するジャムを抑制することができる。本実施形態においては、上述した共通接線L1に対し、当接面37bが約20度、傾斜面37cが約10度となるようにすることで、好適にジャムの発生を抑制している。
【0069】
また、分離パッド37と分離ローラ7との間に設ける隙間を広くすると、分離パッド37によって持ち上げられたシートが分離ローラ7に向かって垂れてしまい、シートの先端が分離ローラ7の表面に沿って上流側に向かって折れてしまうことがある。本実施形態においては、分離パッド37と分離ローラ7との間の距離を約2mm程にすることによって、上述した傾斜面37cと併せて、シートの中腹が給送ローラ6に当接してしまうことを抑制しつつ、シートの先端が分離ローラ7の表面に沿って上流側に向かって折れてしまうことなく、シート先端をニップに進入しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 シート積載台
4 ピックアップローラ
6 給送ローラ
7 分離ローラ
14、15 読取ユニット
37 分離パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9