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特許7366636電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20231016BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231016BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231016BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/249
H01M50/209
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019145725
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021026956
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130936(WO,A1)
【文献】特表2017-526130(JP,A)
【文献】特開2014-220131(JP,A)
【文献】国際公開第2012/057322(WO,A1)
【文献】特開2015-207341(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043593(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/043594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数のバインドバーとを備える電源装置であって、
前記バインドバーは、
前記電池積層体の積層方向に伸びる板状バーと、
前記板状バーの長手方向の両端部に固定されて、前記エンドプレートに向かって突出してなる係止ブロックとを備えると共に、
一対の前記エンドプレートの対向面とは反対側の外側の主面に固定される固定片を両端部に有しており、
前記エンドプレートは、
前記係止ブロックが案内される嵌合部を両側面に有すると共に、前記嵌合部の電池積層体側には、前記係止ブロックのストッパ部を設けており、さらに、
外側の前記主面であって、前記固定片と対向する位置には、該主面から突出する複数の連結凸部を備えており、
前記固定片は、前記連結凸部を貫通させる貫通孔を有しており、さらに、
前記固定片を貫通する前記連結凸部に固定される係止具を備えており、
前記係止ブロックが前記嵌合部に案内され、かつ前記固定片の前記貫通孔に、前記連結凸部を挿入した状態で、該連結凸部に前記係止具が連結されて前記バインドバーが前記エンドプレートに固定されるようにしてなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記連結凸部が、前記エンドプレートに一体成型されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記連結凸部が、前記エンドプレートに固定された固定ピンで構成されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置であって、
前記連結凸部が、円柱状に形成されると共に、該円柱状の外周面に前記係止具を案内する外周溝を形成してなる電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記係止具が、一部を開口した環状に形成されており、
前記貫通孔に前記連結凸部を挿入した状態で、前記係止具の開口を前記連結凸部に圧入して、前記バインドバーを前記エンドプレートに固定してなる電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載される電源装置であって、
前記係止具が、前記連結凸部に圧入されるスナップリングまたはEリングである電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記係止具が、前記連結凸部を圧入する開口を形成したスピードナットである電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電源装置であって、
前記連結凸部が、円柱状に形成されると共に、円柱状の外周面に凸部貫通孔を形成しており、
前記係止具が、前記凸部貫通孔に圧入されるスナップピンである電源装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載される電源装置であって、
前記連結凸部が前記エンドプレートの前記主面から突出する突出高さ(H)が5mm以下であり、前記連結凸部は中実構造を有する電源装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載される電源装置であって、
前記固定片が前記板状バーの折曲片であることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを積層して電池積層体とし、この電池積層体の両端をエンドプレートで押圧して固定している電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、電動車両の駆動用の電源装置や蓄電用の電源装置等に利用されている。このような電源装置は、充放電可能な複数の二次電池セルを複数枚積層している。一般的には、図13の分解斜視図に示すように、電源装置900は角型の外装缶の電池セル901を、絶縁性のスペーサ902と交互に積層した電池積層体910の両側の端面に、それぞれエンドプレート903を配置し、エンドプレート903同士を金属製のバインドバー904で締結している。図に示すバインドバー904は、電池セル901の積層方向に延長して設けられた金属板からなり、この金属板の両端部を折曲加工して設けた固定片907をエンドプレート903の外側の主面903Aに固定して、一対のエンドプレート903を左右のバインドバー904で締結している。バインドバーの固定片907は、ボルト908を介してエンドプレート903に固定されている。
【0003】
しかしながら、この構成においては図14の正面図に示すように、バインドバー904を締結する際に、ボルト908を強い回転トルクでねじ込んで固定すると、バインドバー904と電池積層体910の相対的な姿勢が変化して、バインドバー904や電池積層体910に捻れが生じて、電源装置の体格が規格を超える可能性があった。
【0004】
一方で、このようなボルトによる螺合に代えて、リベットを用いて固定することも考えられる。この固定構造によると、図15に示すように、かしめる前のリベット809の筒部809aを、固定片807とエンドプレート803とを貫通する状態で挿通し、筒部809aを貫通する中心ロッド809bを引くことで筒部809aをかしめて固定片807の外側に配置されるフランジ部809cとかしめて形成される形成フランジ部809dとでエンドプレート803と固定片807とを挟着して固定する構造としている。しかしながら、この場合、図15に示すように、固定片807とエンドプレート803とをリベット809で挟着するために、エンドプレート803の形状を部分的に薄くする必要があり、内側の主面803Aに、かしめる前の筒部809aを挿通するための凹部803aを設ける必要があったため、この部分で強度が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-120808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一は、バインドバーをエンドプレートの所定の位置に正しい姿勢で固定して、バインドバーや電池積層体のゆがみや捻れを防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の電源装置は、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体10と、電池積層体10の積層方向の両端面に配置してなる一対のエンドプレート3と、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート3同士を締結する複数のバインドバー4とを備えている。バインドバー4は、電池積層体10の積層方向に伸びる板状バー6と、板状バー6の長手方向の両端部に固定されて、エンドプレート3に向かって突出してなる係止ブロック5とを備えると共に、一対のエンドプレート3の対向面とは反対側の外側の主面3Aに固定される固定片7を両端部に有している。エンドプレート3は、係止ブロック5が案内される嵌合部3aを両側面に有すると共に、嵌合部3aの電池積層体10側には、係止ブロック5のストッパ部5bを設けており、さらに、外側の主面3Aには、固定片7と対向する位置に、主面3Aから突出する複数の連結凸部8を備えている。固定片7は、連結凸部8を貫通させる貫通孔7aを有しており、さらに、固定片7を貫通する連結凸部8に固定される係止具9を備えている。電源装置は、係止ブロック5が嵌合部3aに案内され、かつ固定片7の貫通孔7aに、連結凸部8を挿入した状態で、連結凸部8に係止具9が連結されてバインドバー4がエンドプレート3に固定されている。
【0008】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置100と、電源装置100から電力供給される走行用のモータ93と、電源装置100及びモータ93を搭載してなる車両本体91と、モータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。
【0009】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置100と、電源装置100への充放電を制御する電源コントローラ88と備えて、電源コントローラ88でもって、外部からの電力により電池セル1への充電を可能とすると共に、電池セル1に対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0010】
以上の電源装置によれば、簡単な構造としながら、バインドバーをエンドプレートの所定の位置に正しい姿勢で固定して、バインドバーや電池積層体のゆがみや捻れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置の斜視図である。
図2図1に示す電源装置の分解斜視図である。
図3図1に示す電源装置のIII-III線断面図である。
図4図3に示す電源装置の要部拡大断面図である。
図5】エンドプレートの他の一例を示す拡大断面図である。
図6】固定片をエンドプレートに連結する連結構造であって、係止具の一例を示す斜視図である。
図7】固定片をエンドプレートに連結する連結構造であって、係止具の他の一例を示す斜視図である。
図8】固定片をエンドプレートに連結する連結構造であって、係止具の他の一例を示す斜視図である。
図9】固定片をエンドプレートに連結する連結構造であって、係止具の他の一例を示す断面図である。
図10】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図11】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図12】蓄電装置に電源装置を使用する例を示すブロック図である。
図13】従来の電源装置の分解斜視図である。
図14】従来の電源装置の正面図であって、固定片をエンドプレートにボルトで固定する状態を示す図である。
図15】従来の他の電源装置の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施態様の電源装置は、複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、電池積層体の積層方向の両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート同士を締結する複数のバインドバーとを備えている。バインドバーは、電池積層体の積層方向に伸びる板状バーと、板状バーの長手方向の両端部に固定されて、エンドプレートに向かって突出してなる係止ブロックとを備えると共に、エンドプレートの外側の主面に固定される固定片を両端部に有している。エンドプレートは、係止ブロックが案内される嵌合部を両側面に有すると共に、嵌合部の電池積層体側には、係止ブロックのストッパ部を設けており、さらに、外側の主面には、固定片と対向する位置に、主面から突出する複数の連結凸部を備えている。固定片は、連結凸部を貫通させる貫通孔を有しており、さらに、固定片を貫通する連結凸部に固定される係止具を備えている。電源装置は、係止ブロックが嵌合部に案内され、かつ固定片の貫通孔に、連結凸部を挿入した状態で、連結凸部に係止具が連結されてバインドバーがエンドプレートに固定されている。
【0013】
上記構成により、エンドプレートとバインドバーの固定に、従来のようなボルトの螺合を使用しないことで、回転トルクによって固定片等に歪みや捻れが生じることを避け、体格に変化を生じさせることなく、安定した固定を図ることができる。とくに、以上の電源装置は、電池積層体の膨化力をバインドバーの両端部に設けた固定片で受けるのではなく、バインドバーの両端部に固定した係止ブロックをストッパ部に係止させて受けるので、エンドプレートの外側の主面に固定される固定片には強い連結強度は要求されず、簡単かつ容易に係止可能な係止具により保持される。したがって、係止具を連結凸部に連結するという簡単な作業で固定片をエンドプレートに固定でき、組立作業の効率化も図られる。
【0014】
本発明の第2の実施態様の電源装置は、連結凸部を、エンドプレートに一体成型して設けている。
【0015】
本発明の第3の実施態様の電源装置は、連結凸部を、エンドプレートに固定された固定ピンで構成している。
【0016】
本発明の第4の実施態様の電源装置は、連結凸部が、円柱状に形成されており、円柱状の外周面に係止具を案内する外周溝を形成している。
【0017】
上記構成により、係止具を外周溝に案内して係止することで、係止具を連結凸部の定位置に連結しながら、外周溝に固定される係止具が軸方向に移動するのを防止して、固定片を定位置に安定して保持できる。
【0018】
本発明の第5の実施態様の電源装置は、係止具が、一部を開口した環状に形成されており、貫通孔に連結凸部を挿入した状態で、係止具の開口を連結凸部に圧入して、バインドバーをエンドプレートに固定している。
【0019】
本発明の第6の実施態様の電源装置は、係止具を、連結凸部に圧入されるスナップリングまたはEリングとしている。
【0020】
以上の電源装置は、従来のように、大きなねじ頭を備えるボルト等を使用することなく薄い板状の係止具を介して固定片を連結凸部から抜けないように固定できるので、電源装置の外形をさらにコンパクトにできる。また、ボルトに代わって薄い金属板からなる係止具を使用することで、軽量化を図ることもできる。
【0021】
本発明の第7の実施態様の電源装置は、係止具を、連結凸部を圧入する開口を形成したスピードナットとしている。
【0022】
以上の電源装置は、従来のように、大きなねじ頭を備えるボルト等を使用することなく薄い板状の係止具を介して固定片を連結凸部から抜けないように固定できるので、電源装置の外形をさらにコンパクトにできる。また、ボルトに代わって薄い金属板からなる係止具を使用することで、軽量化を図ることもできる。
【0023】
本発明の第8の実施態様の電源装置は、連結凸部が、円柱状に形成されると共に、円柱状の外周面に凸部貫通孔を形成しており、係止具を、凸部貫通孔に圧入されるスナップピンとしている。
【0024】
上記構成により、凸部貫通孔にスナップピンを圧入するという簡単な作業により、バインドバーをエンドプレートに固定でき、電源装置の組立作業の効率化が図られる。
【0025】
本発明の第9の実施態様の電源装置は、連結凸部がエンドプレートの主面から突出する突出高さ(H)を5mm以下としている。
【0026】
上記構成によると、エンドプレートの外側に突出する連結凸部の高さを5mm以下と低くするので、全体の外形を小さくしながら省スペースに設置できる。また、連結凸部の高さを低くすることで、固定片の貫通孔をスムーズに案内して簡単に組立できる。
【0027】
本発明の第10の実施態様の電源装置は、固定片を板状バーの折曲片としている。
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0029】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
【0030】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る電源装置100の斜視図を図1に、その分解斜視図を図2に、図1の電源装置100のIII-III線における水平断面図を図3に、図3の要部拡大図を図4にそれぞれ示す。これらの図に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層している電池積層体10と、この電池積層体10の積層方向の両端面を配置している一対のエンドプレート3と、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート3同士を締結する複数のバインドバーとを備えている。
【0031】
(電池セル1)
電池セル1は、幅広面である主面の外形を四角形とする角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。さらに、電池セル1は、充放電できる二次電池であって、リチウムイオン二次電池としている。ただ、本発明は、電池セルを角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。電池セルには、充電できる全ての電池、たとえばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池やニッケル水素電池セルなども使用できる。
【0032】
電池セル1は、図2に示すように、正負の電極板を積層した電極体を外装缶1aに収納して、電解液を充填して気密に密閉している。外装缶1aは、底を閉塞する四角い筒状に成形しており、この上方の開口部を金属板の封口板1bで気密に閉塞している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板1bは、外装缶1aと同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板1bは、外装缶1aの開口部に挿入され、封口板1bの外周と外装缶1aの内周との境界にレーザ光を照射して、封口板1bを外装缶1aにレーザ溶接して気密に固定している。外装缶1aに固定される封口板1bは、その両端部に正負の電極端子13を固定している。
【0033】
電極端子13は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子13の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子13をバスバー(図示せず)で接続することで、隣接する電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。
【0034】
(電池積層体10)
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子13を設けている端子面、図2においては封口板1bが同一平面となるように、複数の電池セル1を積層している。互いに積層される複数の電池セル1は、正負の電極端子13を接続して互いに直列及び/又は並列に接続される。電源装置100は、隣接する電池セル1の正負の電極端子13を、バスバー(図示せず)を介して互いに直列及び/又は並列に接続する。隣接する電池セルを互いに直列に接続する電源装置は、出力電圧を高くして出力を大きくでき、隣接する電池セルを並列に接続して、充放電の電流を大きくできる。
【0035】
図2に示す電池積層体10は、複数の電池セル1を、スペーサ12を介して互いに積層しており、これらの電池セル1を直列に接続している。図の電池積層体10は、互いに隣接する電池セル1同士を逆向きに並べており、その両側において隣接する電極端子13同士をバスバーで連結して、隣り合う2個の電池セル1を直列に接続して、すべての電池セル1を直列に接続している。ただ、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。
【0036】
電池積層体10は、図2図3に示すように、積層している電池セル1の間にスペーサ12を挟着している。スペーサ12は、隣接する電池セル1を絶縁する。図に示すスペーサ12は、プラスチックを板状に成形した絶縁プレートである。とくに、熱伝導率の小さい材質のプラスチックで成形されるスペーサ12は、隣接する電池セル1の熱暴走を効果的に防止できる効果もある。このスペーサ12は、電池セル1を嵌着して定位置に配置する形状として、隣接する電池セル1を位置ずれしないように積層できる。
【0037】
以上のように、スペーサ12で絶縁して積層される電池セル1は、外装缶をアルミニウムなどの金属製にできる。ただ、電池積層体は、必ずしも電池セルの間にスペーサを介在させる必要はない。例えば、電池セルの外装缶を絶縁材で成形し、あるいは電池セルの外装缶の外周を絶縁シートや絶縁塗料等で被覆する等の方法で、互いに隣接する電池セル同士を絶縁することによって、スペーサを不要とできるからである。さらに、電池セルの間にスペーサを介在させない電池積層体は、電池セルの間に冷却風を強制送風して電池セルを冷却する空冷式を採用することなく、冷媒等を用いて直接冷却する方式を採用して電池セルを冷却できる。
【0038】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、図1図3に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対のバインドバー4を介して締結される。エンドプレート3の外形は、電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいはこれよりもわずかに大きく、両側の外周面にバインドバー4を固定して、電池積層体10の膨化を抑制する四角形の板材である。このエンドプレート3は、全体をアルミニウムやアルミニウム合金、SUS、鉄等の金属製としている。ただし、エンドプレートは、図示しないが、プラスチックに金属板を積層する構造とし、あるいはまた、全体に補強繊維を埋設している繊維強化樹脂成形板としてもよい。
【0039】
エンドプレート3は、電池セル1の表面に、直接にあるいはスペーサ12を介して面接触状態に密着して、電池セル1を均一な圧力で加圧状態に固定する。電源装置100は、組み立て工程において、電池積層体10の両端部にエンドプレート3を配置し、両端のエンドプレート3をプレス機(図示せず)で加圧して、電池セル1を積層方向に加圧する状態に保持し、この状態でエンドプレート3にバインドバー4を固定して、電池積層体10を所定の締め付け圧に保持して固定する。エンドプレート3がバインドバー4に固定された後、プレス機の加圧状態は解除される。
【0040】
エンドプレート3は、バインドバー4に固定されて電池積層体10の膨化力Pを受け止めて電池セル1を保持する。エンドプレート3は、図4の拡大断面図に示すように、固定されるバインドバー4に設けている係止ブロック5を確実に連結するために、バインドバー4に設けた係止ブロック5を案内する嵌合部3aを両側の外周面に設けている。さらに、エンドプレート3は、嵌合部3aの電池積層体10側に、係止ブロック5と当接するストッパ部3bを設けている。言い換えると、エンドプレート3の両側面には、それぞれ、電池積層体10側の端部からバインドバー4に向けて突出するストッパ部3bを設けて、段差形状の嵌合部3aを設けている。
【0041】
エンドプレート3は、電池セル1の膨張によって生じる電池積層方向に拡がろうとする膨化力Pを電池積層体10から受ける。このとき、エンドプレート3に連結されるバインドバー4の係止ブロック5は、ストッパ部3bとの接触部分において電池積層方向の外側方向に押圧する押圧力Rを受ける。これにより、バインドバー4には、係止ブロック5に作用する押圧力Rの反作用として強い引張力Fが作用する。エンドプレート3は、ストッパ部3bと係止ブロック5が接触することにより、バインドバー4の引張力Fで係止ブロック5が移動するのを抑制して、電池セル1の膨化力Pに耐えながら、締結された状態に保持されている。ストッパ部3bは、係止ブロック5との接触部に作用するバインドバー4の引張力Fで変形しない横幅としている。ストッパ部3bの横幅(d)は、バインドバー4の引張力Fを考慮して最適値に設定されるが、たとえば、エンドプレート3全体をアルミニウム製として、3mm以上、好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上、最適には8mm以上とする。材料が耐える最大剪断力は最大曲げ力に比較して相当に強く、ストッパ部3bの横幅(d)を以上の範囲とすることで、バインドバー4の引張力Fをストッパ部3bの剪断応力で支持して、ストッパ部3bの変形を防止する。
【0042】
さらに、図4に示すエンドプレート3は、嵌合部3aとストッパ部3bとの隅部内側に隙間18を設けている。ここに隙間18を設けているエンドプレート3は、ストッパ部3bの横幅(d)を隙間18の幅(s)に対して十分に大きく、たとえば6倍よりも大きくする。隙間18の幅(s)に対して十分に横幅(d)の広いストッパ部3bは、バインドバー4の引張力Fを曲げ応力によらず剪断応力で支持する。材料が耐える最大剪断力は最大曲げ力に比較して相当に強く、ストッパ部3bの横幅(d)を隙間18の幅(s)に比べて大きくして、ストッパ部3bの変形は確実に阻止できる。したがって、嵌合部3aとストッパ部3bとの隅部内側に隙間18を設けるエンドプレート3においては、ストッパ部3bの横幅(d)を隙間18の幅(s)の6倍よりも大きくして、バインドバー4の引張力をストッパ部3bの剪断応力で支持できる。
【0043】
さらに、ストッパ部3bの高さ(h)は、好ましくは、係止ブロック5の厚さ(t)よりも大きくして、ストッパ部3bの先端面とバインドバー4の内面との間にできる隙間を小さくすることが好ましい。ただ、ストッパ部3bの高さ(h)は、係止ブロックの厚さ(t)よりも小さくして、ストッパ部3bの先端面とバインドバー4の内面との間に隙間を設ける構成としてもよい。したがって、ストッパ部3bの高さ(h)は、係止ブロック5の厚さ(t)と、ストッパ部3bの先端面とバインドバー4の内面との間にできる隙間の間隔や、嵌合部3aとストッパ部3bとの隅部内側にできる隙間18の幅(s)を考慮して特定される。ストッパ部3bの高さ(h)は、例えば、係止ブロック5の厚さ(t[mm])に対して、(t-1)~(t+1)mmとすることができる。
【0044】
(バインドバー4)
バインドバー4は、電池積層体10の積層方向に伸びる板状バー6と、この板状バー6に固定されてエンドプレート3の外周面との対向面に突出している係止ブロック5とを備え、両端部にはエンドプレート3に固定される固定片7を設けている。板状バー6は電池積層体10との対向面に配置され、係止ブロック5はエンドプレート3の嵌合部3aに案内され、固定片7はエンドプレート3の外側の主面3Aに固定される。
【0045】
(板状バー6)
板状バー6は、強い引張力に耐える金属板、たとえば引張強度を400MPa以上とする高張力鋼などの金属板が使用される。高張力鋼の板状バー6は、例えば、厚さを1mm~2mmとして、バインドバー4に作用する引張力Fに耐える強度を実現できる。図2のバインドバー4は、電池積層体10の片側に配置される板状バー6を、電池積層体10の側面を被覆する上下幅の金属板としている。金属板からなる板状バー6は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。図に示す板状バー6は、上下の端縁部を折曲加工して、折曲片4aを形成している。上下の折曲片4aは、電池積層体10の左右の両側面において、電池積層体10の上下面を隅部から覆う形状としている。図の電源装置100は、電池積層体10の片側面に1枚の金属板からなる板状バー6を配置している。ただ、図示しないが、電源装置は、電池積層体の片側面に、上下に分割する2枚の金属板からなる板状バーを配置することもできる。
【0046】
(係止ブロック5)
図1図3のバインドバー4は、板状バー6の両端部に係止ブロック5を固定している。このバインドバー4は、板状バー6の長手方向の両端部の内側面であって、エンドプレート3の側面に設けた嵌合部3aと対向する領域に係止ブロック5を固定している。図に示す係止ブロック5は、エンドプレート3の側面に沿って伸びる板状ないし角柱状に形成されており、エンドプレート3に設けた嵌合部3aに向かって突出する姿勢で固定されている。板状バー6の両端部に固定される一対の係止ブロック5は、エンドプレート3の側面に設けた嵌合部3aに案内されて、ストッパ部3bに係止される大きさと形状としている。この係止ブロック5は、バインドバー4をエンドプレート3に連結する状態では、嵌合部3aに案内されてストッパ部3bに係止され、バインドバー4を電池積層体10の両側の定位置に配置する。バインドバー4は、係止ブロック5をエンドプレート3の嵌合部3aに案内して、ストッパ部3bに係止させて剪断応力に対する耐性を高めている。
【0047】
係止ブロック5は、金属製であって、好ましくは、鉄または鉄合金で製造される。金属製の係止ブロック5は、溶接構造で板状バー6の内側に固定している。このバインドバー4は、低コストに多量生産できる。係止ブロック5は、例えば、スポット溶接により板状バーに固定することができる。このように係止ブロック5を板状バー6にスポット溶接する構造は、係止ブロック5と板状バー6とを境界面で溶着できるので、境界縁を段差のない状態とすることができ、嵌合部3aに案内される係止ブロック5をストッパ部3bに密着する状態で配置できる特徴がある。ただ、係止ブロックは、リベット等の連結具を介して板状バーに固定し、あるいは連結具と溶接構造とを併用して板状バーに固定することもできる。
【0048】
係止ブロック5の電池積層方向の横幅(w)は、板状バー6に作用する引張力Fで変形しない幅、たとえば、6mm以上、好ましくは10mm以上に設定される。図4は、バインドバー4をエンドプレート5に連結する部分の拡大断面図であって、係止ブロック5の隅部内側に隙間がない状態、言い換えると、係止ブロック5のストッパ部3b側の対向面全体がストッパ部3bに当接して密着し、かつストッパ部3bの先端面が板状バー6の内面に密着する状態を示している。このように、バインドバー4とエンドプレート3との位置関係においては、係止ブロック5の隅部内側に隙間がなく、ストッパ部3bの先端面が板状バー6の内面に密着する状態が好ましい。ただ、ストッパ部3bの先端面と板状バー6の内面との間に多少の隙間があってもよい。この場合、この隙間の間隔に対して、係止ブロック5の横幅(w)を十分大きく、たとえば6倍よりも大きくして、バインドバー4の引張力Fを剪断応力として支持できる。
【0049】
また、係止ブロック5の厚さ(t)は、ストッパ部3b側の対向面を確実にストッパ部3bに当接させて支持できる厚さとする。たとえば、図4に示すように、係止ブロック5の隅部内側に隙間がなく、ストッパ部3bの先端面が板状バー6の内面に密着する構成においては、係止ブロック5の厚さ(t)を3mm以上とすることで、対向面を確実にストッパ部3bに当接させて押圧できる。ただ、前述のように、ストッパ部3bの先端面と板状バー6の内面との間には多少の隙間があってもよく、この場合においては、この隙間の間隔に対して、係止ブロック5の厚さ(t)を十分大きく、たとえば6倍よりも大きくして、バインドバー4の引張力Fを剪断応力として係止ブロック5で支持できる。以上のように、係止ブロック5の厚さ(t)は、ストッパ部3bとの位置関係により、最適な厚さとなるように設計される。
【0050】
(固定片7)
固定片7は、図1図4に示すように、バインドバー4の両端部に設けられており、エンドプレート3の外側の主面3Aに固定される。図のバインドバー4は、板状バー6の両端部を内側に90度折り曲げ加工して折曲片6aを設け、この折曲片6aを固定片7としている。固定片7は、バインドバー4の端部をエンドプレート3の主面3Aの表面に固定するが、固定片7には強い強度は要求されない。バインドバー4に作用する大きな引張力Fが、係止ブロック5とストッパ部3bとで支持されて、固定片7には作用しないからである。したがって、固定片7は、大きな引張力Fや、この引張力Fに起因する大きな曲げ応力に耐えうる強度を必要とせず、バインドバー4の係止ブロック5が嵌合部3aから離れるのを防止できる連結強度でエンドプレート3に固定される。
【0051】
以上のように、エンドプレート3に対して強い連結強度が要求されない固定片7は、図示しないが、先端に向かって実質的な横幅を狭くする形状として、バインドバー4を軽量化することもできる。
【0052】
固定片7は、従来のように、ボルト等の固定具を使用することなくエンドプレート3に固定される。固定片をエンドプレートにボルトで固定する構造によると、図14に示すように、ボルトの締め付けトルクによって、固定片が回転してバインドバーが傾くことで、バインドバーや電池積層体が歪んだり捻れたりするおそれがあった。また、ボルトによる固定では、振動等の外的要因により経時的にボルトが緩むおそれを皆無にできない。このため、本発明の電源装置は、これらの問題点を解消するために、固定片7を独特の連結構造でエンドプレート3に固定する。図2図4に示す電源装置100は、固定片7をエンドプレート3の外側の主面3Aに固定するために、エンドプレート3の主面3Aに複数の連結凸部8を設けると共に、固定片7には、この連結凸部8を案内して貫通させる貫通孔7aを設けており、さらに、固定片7を貫通する連結凸部8の先端部に固定される係止具9を備えている。
【0053】
固定片7は、これを貫通する連結凸部8を介してエンドプレート3に固定される。固定片7は、連結凸部8を挿通する貫通孔7aを先端部に設けている。固定片7は、貫通孔7aに連結凸部8が挿通されると共に、貫通孔7aを貫通する連結凸部8の先端部に係止具9が固定される。固定片7は、連結凸部8を貫通孔7aに挿入する状態でエンドプレート3の主面3Aに配置され、固定片7を貫通する連結凸部8の先端部に係止具9が固定されることにより、連結凸部8から抜けないように保持される。この固定構造の電源装置は、係止ブロック5をエンドプレート3の嵌合部3aに案内して、ストッパ部3bでバインドバー4の引張力を支持すると共に、バインドバー4の両端に設けた固定片7がエンドプレート3に固定されることで、一対のエンドプレート3をバインドバー4で安定して定位置に保持できる。
【0054】
(連結凸部8)
連結凸部8は、エンドプレート3の外側の主面3Aに設けられた柱状の凸部である。図に示すエンドプレート3は、固定片7と対向する位置に、主面3Aから突出する複数の連結凸部8を備えている。図のエンドプレート3は、主面の左右に2個ずつの連結凸部8を上下に離して設けている。ただ、エンドプレート3に設ける連結凸部8の個数や配置は種々に変更することができる。
【0055】
図4に示す連結凸部8は、円柱状であって、主面3Aに対して垂直方向に突出する姿勢で形成されている。横断面形状を円形状とする連結凸部8は、固定片7に設けた貫通孔7aの向きに関係なく挿通できる特徴がある。ただ、連結凸部は、横断面形状を楕円形状や多角形状とすることもできる。横断面形状を非円形とする連結凸部は、固定片の貫通孔に挿入する際には、固定片の向きを特定しながら連結される。
【0056】
図4に示す連結凸部8は、エンドプレート3に一体成型して設けている。この連結凸部8は、エンドプレート3を金属で鋳造する際に、一体成型して設けられる。この構造は、エンドプレート3の主面3Aに対して、正確な位置に所定の高さ(H)の連結凸部8を形成できる。
【0057】
ただ、連結凸部8は、図5に示すように、エンドプレート3と別部材とすることもできる。図5に示す電源装置は、エンドプレート3に設けた固定穴3cに固定ピン15を圧入して抜けないように固定することにより、主面3Aから突出する連結凸部8を設けている。この構造は、エンドプレート3の加工を簡単にして製造コストを低減できる特長がある。図の固定ピン15は、固定穴3cに圧入して抜けない構造とするが、固定ピンは、先端部に雄ネジを設けると共に、雌ネジを設けた固定穴にねじ込んで固定することもできる。
【0058】
以上の連結凸部8は、突出高さ(H)を高くすると固定片7を外れにくくできるが、固定片7の貫通孔7aに挿入し難くなると共に、電源装置の外形が大きくなる。反対に、連結凸部8は、突出高さ(H)を低くすることで、固定片7の貫通孔7aに挿入し易くできると共に、電源装置の外形を小さくすることができる。以上のことから、連結凸部8は、先端部に係止具9を固定する状態で、固定片7を外れないように保持できる範囲内で、その突出量を極力小さくすることが好ましい。すなわち、連結凸部8は、固定片7との連結状態を考慮して、最適な突出高さ(H)となるように形成される。連結凸部8は、エンドプレート3の主面3Aに対する突出高さ(H)量を5mm以下であって、好ましくは3mm以下とする。
【0059】
さらに、図4図6に示す連結凸部8は、先端部の外周面に、係止具9を案内する外周溝8aを設けている。この外周溝8aは、柱状の凸部の外周面を切削して形成される。外周溝8aは、リング状の係止具9の内側部分を案内することにより、係止具9が軸方向に移動して連結凸部8から抜けるのを防止し、これにより、固定片が連結凸部8から外れるのを防止している。外周溝8aの深さは、係止具9に設けた係止部を案内して外れないように保持できる深さであって、0.4~1mmに形成される。また、連結凸部8の外形(D)は、以上の外周溝8aを形成できる大きさであって、係止具9を確実に連結できるように、3mm~5mmとすることができる。
【0060】
(貫通孔7a)
バインドバー4の固定片7は、エンドプレート3に設けられた連結凸部8と対向する位置に、連結凸部8を案内する貫通孔7aを設けている。すなわち、図2に示す固定片7は、エンドプレート3の片側に設けた上下2個の連結凸部8を案内できるように、上下に離して2個の貫通孔7aを開口して設けている。貫通孔7aは、連結凸部8の外形とほぼ等しい内形を有しており、貫通孔7aに連結凸部8を案内することで、固定片7をエンドプレート3に対して位置決めしながら配置できるようにしている。図に示す連結凸部8は円柱状としているので、貫通孔7aは、その内形を円形状としている。連結凸部8は、円柱状以外の形状とすることもできるので、連結凸部8を案内する貫通孔7aは、連結凸部8を挿通できる形状と大きさにすることができる。
【0061】
(係止具9)
係止具9は、固定片7を貫通して突出する連結凸部8の先端部に連結されて、固定片7が連結凸部8から抜けないように保持する。このような係止具9として抜け止めリングや抜け止めピンが使用できる。抜け止めリングは、弾性を有する金属板や金属ロッドを環状に加工しており、全体もしくは部分的に弾性変形させることで連結凸部8に連結できる構造としている。このような抜け止めリングとして、例えば、一部を開口した環状に形成されたリング材や、環状のリング部の内側に複数の係止片を備えたナット材が使用できる。
【0062】
図6に示す係止具9は、一般にスナップリング9Aと呼ばれるリング材であって、弾性金属からなる金属板を所定の形状に裁断して製造している。図のスナップリング9Aは、全体の形状と環状とするリング部21の一部に開口22を設けると共に、この開口22の両側には、リング部21の両端部に設けたジグ連結部23を配置している。この係止具は、ジグ連結部23にジグの先端部を挿入した状態でリング部21を拡開し、拡開されたリング部21の内側に連結凸部8を案内し、リング部21の内周部を係止部として外周溝8aに嵌入して連結凸部8に連結される。
【0063】
図7に示す係止具9は、一般にEリング9Bと呼ばれるリング材であって、弾性金属からなる金属板を所定の形状に裁断して製造している。図のEリング9Bは、円形の一部を切除して開口22を設けてなる円弧状のリング部21の内側に複数の突出部24を設けて係止部としている。図のEリング9Bは、開口22の対向部と両側にそれぞれ突出部24を設けており、これらの突出部24を外周溝8aに案内して連結凸部8に固定するようにしている。Eリング9Bである係止具9は、図の矢印で示すように、連結凸部8の外周溝8aにリング部21の開口22を対向させた状態で、開口22の両側の突出部24を外周溝8aに圧入して、外れないように連結される。
【0064】
図8に示す係止具9は、一般にスピードナット9Cと呼ばれるナット材であって、弾性金属からなる金属板を所定の形状に裁断して製造している。図のスピードナット9Cは、全体の形状と環状とするリング部21の内周面から内側に向かって突出する複数の係止片25を設けている。このスピードナット9Cは、リング部21の内形を連結凸部8の外径よりも大きくすると共に、複数の係止片25が弾性変形してその先端部が外周溝8aに案内されるように中心穴26に連結凸部8を案内する状態で圧入されて連結凸部8に連結される。
【0065】
以上の係止具9は、環状に形成されたリング部21の内側部分の全体もしくは一部を係止部として外周溝8aに嵌入すると共に、リング部21の外周部分もしくは全体を連結凸部8の外周面よりも外側に突出させて固定片7を抜けないように保持している。このように、リング材やナット材である係止具9は、固定片7の貫通孔7aの周囲部の広い面積を被覆して、固定片7を抜けないように保持できる。
【0066】
さらに、図9は、抜け止めピンである係止具9を示している。図に示す係止具9は、一般にスナップピン9Dと呼ばれるピン材であって、弾性金属からなる金属ロッドまたは金属板を折曲または湾曲して所定の形状に加工している。図のスナップピン9Dは、連結凸部8を貫通して、軸と交差する方向に挿通される挿通部27と、この挿通部27の後端部をU曲してなるU曲部28と、連結凸部8の外周面または外周溝に対向して配置される弾性変形部29とを備えている。このスナップピン9Dは、図9に示すように、連結凸部8に設けた凸部貫通孔8bに挿通部が挿入されると共に、弾性変形部29を弾性変形させながら連結凸部を挿通部と弾性変形部の間に挿入して連結凸部に連結される。図に示す弾性変形部29は、中間部分を連結凸部8の外周面に沿う形状に湾曲している。この係止具9は、挿通部27の先端部とU曲部28を連結凸部8の外周面よりも外側に突出させて固定片7を抜けないように保持している。
【0067】
図9に示す連結凸部は、スナップピン9Dの挿通部27を貫通できるように、凸部貫通孔8bを設けている。凸部貫通孔8bは、連結凸部8の中心軸と交差する方向に延長して設けられている。図に示す凸部貫通孔8bは、連結凸部8の外周面に設けた外周溝8aの対向する底面を貫通する状態で開口されている。このように、外周溝8aに凸部貫通孔8bを設ける連結凸部8は、図9に示すように、凸部貫通孔8bに挿通部27を案内しながら、弾性変形部29を外周溝8aに案内してスナップピン9Dを定位置に配置できる。ただ、凸部貫通孔を備える連結凸部は必ずしも外周溝を設ける必要はない。凸部連結部を貫通する挿通部により、係止具が連結凸部の軸方向に移動するのを阻止できるからである。
【0068】
以上の電源装置100は、以下の工程で組み立てられる。
(1)所定の個数の電池セル1を、間にスペーサ12を介在させる状態で、電池セル1の厚さ方向に積層して電池積層体10とする。
(2)電池積層体10の両端にエンドプレート3を配置し、一対のエンドプレート3を両側からプレス機(図示せず)で押圧して、エンドプレート3でもって、電池積層体10を所定の圧力で加圧し、電池セル1を圧縮して加圧状態に保持する。
(3)電池積層体10をエンドプレート3で加圧する状態で、一対のエンドプレート3にバインドバー4を連結して固定する。バインドバー4は、両端部の係止ブロック5が一対のエンドプレート3の嵌合部3aに案内されるように配置されると共に、両端の固定片7の貫通孔7aにエンドプレート3の主面3Aから突出する連結凸部7を挿入する。固定片7を貫通する連結凸部8の先端部に係止具9を固定し、固定片7をエンドプレート3の外側の主面3Aに固定する。エンドプレート3がバインドバー4に固定された後、プレス機の加圧状態は解除される。
この状態で、電池積層体10は、バインドバー4で所定の間隔に保持される一対のエンドプレート3を介して所定の締め付け圧に保持される。
(4)電池積層体10の両側部において、互いに隣接する電池セル1の対向する電極端子13同士をバスバー(図示せず)で連結する。バスバーは、電極端子13に固定されて、電池セル1を直列に接続し、あるいは直列と並列に接続する。バスバーは、電極端子13に溶接され、あるいはネジ止めされて電極端子13に固定される。
【0069】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築して搭載することもできる。
【0070】
(ハイブリッド車用電源装置)
図10は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0071】
(電気自動車用電源装置)
また、図11は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0072】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図12は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0073】
図12に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0074】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0075】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る電源装置とこの電源装置を備える電動車両並びに蓄電装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0077】
100…電源装置
1…電池セル
1a…外装缶
1b…封口板
3…エンドプレート
3A…主面
3a…嵌合部
3b…ストッパ部
3c…固定穴
4…バインドバー
5…係止ブロック
6…板状バー
6a…折曲片
7…固定片
7a…貫通孔
8…連結凸部
8a…外周溝
8b…突起側貫通孔
9…係止具
9A…スナップリング
9B…Eリング
9C…スピードナット
9D…スナップピン
10…電池積層体
12…スペーサ
13…電極端子
15…固定ピン
18…隙間
21…リング部
22…開口
23…ジグ連結部
24…突出部
25…係止片
26…中心穴
27…挿通部
28…U曲部
29…弾性変形部
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
HV、EV…車両
803…エンドプレート
803A…主面
803a…凹部
807…固定片
809…リベット
809a…筒部
809b…中心ロッド
809c…フランジ部
809d…形成フランジ部
900…電源装置
901…電池セル
902…スペーサ
903…エンドプレート
903A…主面
904…バインドバー
907…固定片
908…ボルト
910…電池積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図15