(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 5/06 20060101AFI20231016BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F16K5/06 L
F16K51/00 A
(21)【出願番号】P 2019153019
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】塙 久季
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-163378(JP,U)
【文献】特開平10-267139(JP,A)
【文献】特開平8-219312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0312832(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103711926(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00-5/22
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通する連通路を有する弁体と、
前記弁体を流通対象物の前記連通路の通過を許容する開位置と流通対象物の前記連通路の通過を阻止する閉位置との間で回動可能に収容する弁体収容室、及び前記弁体が前記開位置のときに前記連通路を介して互いに連通する少なくとも二つの流通路を有するハウジングと、
前記弁体に圧接された状態で前記ハウジング内における前記流通路の開口端周りに配置される環状のシート部材と、
外部から供給される流体を前記弁体収容室に噴射可能な噴射孔を有する流体噴射部と、を備え、
前記弁体と前記シート部材との境界
では該シート部材に沿って環状方向に延び且つ前記噴射孔の配置されている区間と、該環状方向に延び且つ前記噴射孔の配置されていない区間とがあり、
前記噴射孔の少なくとも一部は、前記弁体が前記開位置から前記閉位置に回動するときに該弁体の外面がシート部材側に入り込む領域を臨む位置に配置されている、バルブ装置。
【請求項2】
前記噴射孔は、前記境界に沿って延びている、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記流体噴射部は、前記流体の流通経路の途中に流体溜まり部を有し、
前記流体溜まり部は、前記噴射孔と連通すると共に、該噴射孔に沿って延び且つ直上流側の領域より流路断面積の小さな絞り部を有する、請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記流通路の開口方向における前記シート部材の弁体側において該シート部材と隣り合う環状部材を備え、
前記噴射孔は、前記シート部材と前記環状部材との隙間によって形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
貫通する連通路を有する弁体と、
前記弁体を流通対象物の前記連通路の通過を許容する開位置と流通対象物の前記連通路の通過を阻止する閉位置との間で回動可能に収容する弁体収容室、及び前記弁体が前記開位置のときに前記連通路を介して互いに連通する少なくとも二つの流通路を有するハウジングと、
前記弁体に圧接された状態で前記ハウジング内における前記流通路の開口端周りに配置される環状のシート部材と、
前記流通路の開口方向における前記シート部材の弁体側において該シート部材と隣り合う環状部材
と、
外部から供給される流体を前記弁体収容室に噴射可能な噴射孔を有する流体噴射部と、を備え、
前記噴射孔は、前記シート部材と前記環状部材との隙間によって形成されて
おり、前記弁体と前記シート部材との境界において前記弁体が前記開位置から前記閉位置に回動するときに該弁体の外面がシート部材側に入り込む領域を臨む位置に配置されている、バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体と該弁体を所定の軸周りに回動可能に収容したハウジングとを備えるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弁体と、該弁体を所定の軸周りに回動可能に収容したハウジングと、を備えるバルブ装置が知られている(特許文献1参照)。具体的に、このバルブ装置は、
図14に示すように、貫通した連通穴501を有する弁体502と、該弁体502を所定の回動軸Ax周りに回動可能に収容すると共に、弁体502の連通穴501を介して互いに連通可能な二つの流通路503、504を有するハウジング505と、ハウジング505における一方の流通路503の内部側の開口端周りに配置される環状のシート部材506と、を備えている。このシート部材506は、弁体502に圧接されており、流通路503と弁体502との間の密閉性を確保している。このバルブ装置500では、弁体502が回動軸Ax周りに回動することにより、バルブ装置500の開閉が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のバルブ装置500を、粉粒体の移動遮断弁等に使用した場合、バルブ装置500を閉じるために弁体502を回動させたときに、弁体502の表面に付着した粉粒体(流通対象物)が弁体502とシート部材506との間に噛み込む場合がある。このような噛み込みが発生すると、弁体502と流通路503との間の密閉性が低下したり、弁体502表面やシート部材506表面が傷ついたりする。
【0005】
そこで、本発明は、弁体とシート部材との間への流通対象物の噛み込みを抑えたバルブ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバルブ装置は、
貫通する連通路を有する弁体と、
前記弁体を流通対象物の前記連通路の通過を許容する開位置と流通対象物の前記連通路の通過を阻止する閉位置との間で回動可能に収容する弁体収容室、及び前記弁体が前記開位置のときに前記連通路を介して互いに連通する少なくとも二つの流通路を有するハウジングと、
前記弁体に圧接された状態で前記ハウジング内における前記流通路の開口端周りに配置される環状のシート部材と、
外部から供給される流体を前記弁体収容室に噴射可能な噴射孔を有する流体噴射部と、を備え、
前記噴射孔は、前記弁体と前記シート部材との境界において前記弁体が前記開位置から前記閉位置に回動するときに該弁体の外面がシート部材側に入り込む領域を臨む位置に配置されている。
【0007】
かかる構成によれば、弁体を開位置から閉位置に回動させるときに流体噴射部に外部から流体(例えば、窒素ガスや空気)を供給することで、弁体の外面における該弁体とシート部材との境界近傍に付着している流通対象物を吹き飛ばすことができ、これにより、弁体とシート部材との間への流通対象物の噛み込みを効果的に抑えることができる。
【0008】
前記バルブ装置では、
前記噴射孔は、前記境界に沿って延びていてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、弁体とシート部材との境界に沿った広い範囲において弁体の外面に付着した流通対象物を吹き飛ばすことができるため、弁体とシート部材との間への流通対象物の噛み込みをより効果的に抑えることができる。
【0010】
この場合、
前記流体噴射部は、前記流体の流通経路の途中に流体溜まり部を有し、
前記流体溜まり部は、前記噴射孔と連通すると共に、該噴射孔に沿って延び且つ直上流側の領域より流路断面積の小さな絞り部を有することが好ましい。
【0011】
このように、噴射孔と連通する位置に該噴射孔に沿って延びる絞り部を設けることで、該絞り部の上流側と下流側との間に生じる差圧によって、噴射孔の各位置(噴射孔の延びる方向における各位置)から噴射される流体の流量の偏りが抑えられる。
【0012】
また、前記バルブ装置は、
前記流通路の開口方向における前記シート部材の弁体側において該シート部材と隣り合う環状部材を備え、
前記噴射孔は、前記シート部材と前記環状部材との隙間によって形成されていてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、流体がシート部材に沿って噴射されるため、弁体とシート部材との境界に向けてより確実に流体が噴射され、これにより、弁体の外面における前記境界近傍に付着している流通対象部をより確実に吹き飛ばすことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、弁体とシート部材との間に流通対象物を噛み込み難いバルブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るバルブ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記バルブ装置の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、前記バルブ装置の中央縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V位置における断面図であって弁体が開位置の状態の断面図である。
【
図6】
図6は、
図3のV-V位置における断面図であって弁体が閉位置の状態の断面図である。
【
図10】
図10は、弁体の外面において流体噴射部により流体が噴射される範囲を示す図である。
【
図11】
図11は、他実施形態に係るバルブ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図10を参照しつつ説明する。
【0017】
本実施形態に係るバルブ装置は、流通対象物を流通させる流路上に配設され、該流路の開(開放)と閉(遮断)とを行う。具体的に、本実施形態のバルブ装置は、いわゆる二方弁であり、流路を構成する配管間に配置される。そして、このバルブ装置は、配管間において、流通対象物の通過を許容する状態(開状態)と通過を阻止する状態(閉状態)との切り換えを行う。尚、流通対象物は、流路が設置される設備やプラント等に応じて適宜選択される。本実施形態の流通対象物は、例えば、粉粒体である。
【0018】
本実施形態のバルブ装置は、
図1~
図6に示す如く、所定方向(
図1における上下方向)に延びる回動軸Axと直交する方向に貫通する連通路R1を有する弁体2と、弁体2を収容する弁体収容室30及び弁体収容室30に連通する二つの流通路(第一流通路R2、第二流通路R3)を有するハウジング3と、ハウジング3内における第一流通路R2の開口周りに配置される環状のシート部材4と、外部から供給される流体fを弁体収容室30に噴射可能な噴射孔54を有する流体噴射部5と、を備える。また、本実施形態のバルブ装置1は、第一流通路R2の中心線C2方向(
図4の左右方向)におけるシート部材4の弁体2側において該シート部材4と隣り合う環状部材6を備える。また、本実施形態のバルブ装置1は、弁体2から回動軸Axを通るように延びるステム7と、弁体2におけるステム7と反対側の位置から回動軸Axを通るように延びるトラニオン8と、を備える。尚、以下では、第一流通路R2の中心線C2方向をX軸方向とし、回動軸Axの延びる方向をZ軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向と直交する方向をY軸方向とする。
【0019】
弁体2は、シート部材4に圧接した状態で回動軸Axを回動中心にして回動可能である。この弁体2は、略球状であり、該弁体2の中心を通るように真っ直ぐに貫通する連通路R1を有する。本実施形態の連通路R1は、断面が円形状であり、回動軸Axと直交する方向に延びている。
【0020】
ハウジング3は、弁体2を少なくとも開位置P1(
図5参照)と閉位置P2(
図6参照)との間で回動可能に収容する弁体収容室30と、弁体2が開位置P1のときに該弁体2の連通路R1を介して互いに導通する二つの流通路(第一流通路R2、第二流通路R3)と、を有する。これら二つの流通路R2、R3は、弁体収容室30を挟んで互いに対向している。即ち、第一流通路R2と第二流通路R3とは、互いの中心線C2、C3が一致するように弁体収容室30の対向する位置から互いに離間する方向(本実施形態では、X軸方向の一方側(
図4における左側)と他方側(
図4における右側)と)に真っ直ぐに延びている。これら第一流通路R2と第二流通路R3との各内径は、連通路R1の内径と同じである(
図4参照)。
【0021】
尚、本実施形態のバルブ装置1において、弁体2の開位置P1とは、連通路R1の中心線C1が、第一流通路R2の中心線C2と第二流通路R3の中心線C3と一致した状態の弁体2の位置である。このとき、中心線C1、C2、C3は、バルブ装置1の流通路(第一流通路R2、連通路R1、第二流通路R3が連なったもの)の中心線Cと一致する(
図5参照)。また、弁体2の閉位置P2とは、連通路R1の中心線C1が、第一流通路R2の中心線C2と第二流通路R3の中心線C3とに対して回動軸Ax周りに90°回転した状態の弁体2の位置である(
図6参照)。
【0022】
具体的に、ハウジング3は、メインフレーム31と、該メインフレーム31に取り付けられるサブフレーム32と、を有する。
【0023】
メインフレーム31は、弁体2を収容する弁体収容室30の一部を画定するメインフレーム本体311と、ステム7が挿通されるステム挿通部312と、トラニオン8が挿入されるトラニオン挿入部313と、第二流通路R3を画定する配管接続部314と、を有する。
【0024】
メインフレーム本体311は、弁体2が通過可能な大きさの開口3111を有し且つ内部に該弁体2を非接触状態で収容する収容凹部3112を有する。このメインフレーム本体311の開口3111は、弁体収容室30の略中心において弁体2の回動軸Axと直交し且つX軸方向に延びる中心線Cを中心にして略円形に形成されている。
【0025】
ステム挿通部312は、弁体2の回動軸Axを通って収容凹部3112内と外部とを連通し且つステム7が挿通されるステム挿通穴H1を有する。このステム挿通穴H1内には、複数のガスケットが配置され、ステム7の回動軸Ax周りの回動(回転)を許容しつつも該ステム7とステム挿通部312(ハウジング3)との間のシール性を確保している。
【0026】
トラニオン挿入部313は、弁体収容室30を挟んでステム挿通部312の反対側の位置に設けられている。このトラニオン挿入部313は、収容凹部3112内から弁体2の回動軸Axを通って延び且つトラニオン8が挿入されるトラニオン挿入穴H2を有する。このトラニオン挿入部313は、外部と連通していない。このトラニオン挿入穴H2内にも、複数のガスケットが配置され、トラニオン8の回動軸Ax周りの回動(回転)を許容しつつも該トラニオン8とトラニオン挿入部313(ハウジング3)との間のシール性を確保している。
【0027】
配管接続部314は、筒状の部位である。この配管接続部314の内周面314aは、第二流通路R3を構成する。この第二流通路R3は、X軸方向に延び且つ収容凹部3112内と外部とを連通する。具体的に、配管接続部314は、第二流通路R3の中心線C3が回動軸Axと直交し且つ収容凹部3112の開口3111の中心線Cと一致するように、メインフレーム本体311に接続されている。この配管接続部314は、外側端部(X軸方向の他方側の端部)に、他の配管が接続可能なフランジ3140を有する。
【0028】
サブフレーム32は、メインフレーム31に取り付けられることにより、該メインフレーム31と共同して内部に弁体収容室30を画定する。このサブフレーム32は、メインフレーム本体311における開口3111の周縁部に連結される接続用フランジ321と、第一流通路R2の一部を画定する配管接続部322と、を備える。また、このサブフレーム32は、外部から供給される流体fを弁体収容室30に流入させる流体流入部51を有する。
【0029】
配管接続部322は、筒状の部位である。配管接続部322の内周面322aは、弁体収容室30と外部とを連通させる。具体的に、内周面322aは、第一流通路R2の一部を構成する流路構成部3221aと、シート部材4と環状部材6とを収容する収容部3222aと、を含む。収容部3222aは、流路構成部3221aのX軸方向の他方側に隣接し、流路構成部3221aより拡径された部位である。即ち、収容部3222aは、内周面322aにおいて、第一流通路R2を囲む位置に設けられ且つ径方向の外側に向けて凹んだ凹部(拡径した部位)である。この収容部3222aは、シート部材4と環状部材6とに対応した形状である。また、配管接続部322は、X軸方向の一方側の端部に、他の配管が接続可能なフランジ3220を有する。
【0030】
流体流入部51は、サブフレーム32の外面から突出する筒状の部位である。本実施形態の流体流入部51は、流体噴射部5の一部を構成し、具体的な構成は、流体噴射部5の説明において詳述する。
【0031】
シート部材4は、
図7にも示すように、弁体2と圧接する環状のシート部材本体41と、シート部材本体41から延びる短筒部42と、を有する。本実施形態のシート部材4は、メタル(主にステンレス鋼)、フッ素樹脂(PTFE)、エンジニアリングプラスチック(PEEK)等によって形成されている。尚、シート部材4にフッ素樹脂やエンジニアリングプラスチックが用いられる場合には、弁体2と圧接する部位(後述する圧接面412を含む部位)がフッ素樹脂やエンジニアリングプラスチックによって形成され、その他の部位が金属によって形成される。また、シート部材4がメタルによって形成される場合は、焼付き(いわゆるカジリ)防止の為、弁体2とシート部材4とに硬度差が生じるよう、シート部材4に硬化処理(溶射、溶接肉盛、メッキ、窒化処理等)が施される。
【0032】
具体的に、シート部材本体41は、中心線Cを中心とする円環状であり、X軸方向の他方端においてX軸方向と直交する面方向に広がる環状部材側端面411と、該環状部材側端面411の内周縁から中心線Cに向かうに連れてX軸方向の一方側に位置する方向(傾斜方向)に延びる圧接面412と、を有する。また、シート部材本体41は、第一流通路R2の一部を構成する本体内周面413と、シート部材本体41の外周面414におけるX軸方向の他方側端部が縮径することによって構成される凹部415と、を有する。
【0033】
圧接面412は、弁体2が開位置P1のときに弁体2の外面2aにおける連通路R1の開口周縁部と接し、該弁体2が開位置P1から閉位置P2に回動するときに弁体2の外面2aと摺接する(
図10のドットで示す領域と摺接する)。
【0034】
この凹部415は、シート部材本体41の周方向の全域に設けられており、配管接続部322の収容部3222a及び環状部材6と共同して流体溜まり部52を構成する。本実施形態の流体溜まり部52は、流体噴射部5の一部を構成し、具体的な構成は、流体噴射部5の説明において詳述する。
【0035】
外周面414は、配管接続部322の収容部3222aに沿った面であり、周方向に延びる溝414aを有する(
図9参照)。この溝414a内には、OリングO1が配置(圧入)されており、該OリングO1は、配管接続部322の収容部3222a(内周面322a)に圧接している。
【0036】
短筒部42は、シート部材本体41のX軸方向の一方側の端面416における内周側端部からX軸方向の一方側へ向けて延びる筒状の部位である。短筒部42は、第一流通路R2の一部を構成する短筒部内周面421を有する。短筒部内周面421は、本体内周面413と同径であり(即ち、X軸方向に連接し)、本体内周面413と共にシート部材4の内周面43を構成する。このシート部材4の内周面43は、配管接続部322の内周面322aにおける流路構成部3221aと同径であり、該流路構成部3221aとX軸方向に連なることで、第一流通路R2を構成する。即ち、第一流通路R2は、配管接続部322とシート部材4とによって画定されている。この第一流通路R2の中心線C2は、回動軸Axと直交し且つ収容凹部3112の開口3111の中心線Cと一致する。
【0037】
環状部材6は、
図2、
図4~
図6、及び
図8に示すように、中心線C2を中心とする円環状である。具体的に、環状部材6は、X軸方向の一方側の端においてX軸方向と直交する面方向に広がるシート部材側端面61と、X軸方向の他方側の端においてX軸方向と直交する面方向に広がる弁体側端面62と、シート部材側端面61の外周縁と弁体側端面62の外周縁とを接続する外周面63と、弁体側端面62の内周縁から延び且つ中心線Cに向かうに連れてシート部材側端面61に近付く傾斜内周面64と、を有する。
【0038】
シート部材側端面61は、周方向の一部がX軸方向の他方側に凹む凹部611を有する。本実施形態の環状部材6では、凹部611は、Y軸方向の一方側(
図8における右側)に配置され、該凹部611の周方向の範囲は、Z軸方向における連通路R1の大きさ(直径)と対応する範囲(
図10のドットで示す範囲)である。換言すると、凹部611は、噴射孔54と対応する範囲に形成されている。この凹部611の各位置における厚さは、一定である。
【0039】
外周面63は、配管接続部322の収容部3222aに沿った面であり、周方向に延びる溝63aを有する(
図9参照)。この溝63a内には、OリングO2が配置(圧入)されており、該OリングO2は、配管接続部322の収容部3222a(内周面322a)に圧接している。
【0040】
この環状部材6がシート部材側端面61をシート部材4の環状部材側端面411に当接させた状態で該シート部材4に固定されることで、
図9に示すように、凹部611と環状部材側端面411との間に隙間(接続流路)53が生じる。この隙間53は、流体溜まり部52と連通すると共に、中心線C側において開口している。この開口は、流体噴射部5の噴射孔54を構成する。
【0041】
流体噴射部5は、外部から供給される流体fを弁体2の外面2aに噴射することで、該外面2aに付着した流通対象物(本実施形態の例では、粉粒体)を吹き飛ばす。具体的に、流体噴射部5は、外部から供給される流体fが流入する流体流入部51と、流体流入部51から流入した流体fが流入する流体溜まり部52と、流体溜まり部52から流出した流体fが流れる接続流路53と、接続流路53を流れた流体fを弁体2に向けて噴射する噴射孔54と、を有する。
【0042】
流体流入部51は、外部と収容部323と連通する中空部51aを有する筒状の部位であり(
図5及び
図6参照)、他の配管が接続されて該配管を通じて流体fを供給される。本実施形態の流体流入部51は、ハウジング3(詳しくは、サブフレーム32)に設けられている。
【0043】
流体溜まり部52は、流体噴射部5において、流体流入部51から噴射孔54までの流体fの流通経路の途中に配置されている。この流体溜まり部52は、接続流路53を通じて噴射孔54と連通している。また、流体溜まり部52は、接続流路53との境界位置に直上流側の領域より流路断面積の小さな絞り部521を有する。この絞り部521は、中心線Cを中心にした円弧方向(流体溜まり部52の周方向)に延びている。
【0044】
本実施形態の流体溜まり部52は、配管接続部322の内周面322a(収容部3222a)と、シート部材本体41の凹部415と、環状部材6のシート部材側端面61と、によって構成されている。このため、流体溜まり部52は、配管接続部322の内周面322a(収容部3222a)に沿って円環状に延びている。この流体溜まり部52は、流体流入部51の中空部51aとも連通している。
【0045】
また、絞り部521は、環状部材6のシート部材側端面61の凹部611と、シート部材4の凹部415と、によって構成されている。より詳しくは、絞り部521は、シート部材4における凹部415と環状部材側端面411との境界部(角部)と、環状部材6の凹部611と、に囲まれたスリット状の開口部である。この絞り部521は、環状部材6の凹部611と対応する位置(範囲)においてシート部材4の周方向に沿って延びている。即ち、絞り部521の開口幅は、凹部611の凹み量に相当し、絞り部521の長さは、凹部611の周方向の長さに相当する。
【0046】
接続流路53は、シート部材4の環状部材側端面411と、環状部材6の凹部611とによって構成されている。この接続流路53の弁体2側の開口が噴射孔54を構成し、流体流入部51側の開口が絞り部521を構成している。即ち、本実施形態の噴射孔54と絞り部521とのそれぞれは、シート部材4と環状部材6との隙間によって形成されている。
【0047】
噴射孔54は、弁体2とシート部材4(圧接面412)との境界Bにおいて弁体2が開位置P1から閉位置P2に回動するときに該弁体2の外面2aがシート部材4(圧接面412)側に入り込む領域を臨む位置に配置されている。この噴射孔54は、境界Bに沿って延びている。本実施形態の噴射孔54の長さは、環状部材6の凹部611の周方向の長さと対応している。
【0048】
図1~
図4に戻り、ステム7は、ハウジング3(ステム挿通部312)を挿通し且つ弁体2に対して回動軸Ax周りの回転力を該弁体2に伝達する。具体的に、ステム7は、Z軸方向に延びる軸部材であり、ステム挿通部312に挿通されている。ステム7のZ軸方向の一方の端部(
図4における下端部)には、弁体2が接続されている。このステム7は、ハンドル等を取り付けることによって手動で回動させることも可能であるが、本実施形態のバルブ装置1では、ステム7の回転角度を任意に設定できるパルスモータ等の駆動モータ(図示しない)がZ軸方向の他方の端部に接続され、該駆動モータによって弁体2が回動軸Ax周りに回動する。
【0049】
トラニオン8は、ステム7と共同して、弁体収容室30内において弁体2がハウジング3と非接触状態で回動軸Ax周りに回動可能に該弁体2を支持する。具体的に、トラニオン8は、Z軸方向に延びる軸部材であり、トラニオン挿入部313に挿入されている。トラニオン8のZ軸方向の他方の端部(
図4における上端部)には、弁体2が接続されている。
【0050】
以上のように構成されるバルブ装置1では、駆動モータによってステム7を介して弁体2が開位置P1と閉位置P2との間で回動軸Ax周りに回動させられることで、バルブ装置1の開状態と閉状態とが切り替わる。
【0051】
具体的には、バルブ装置1を開状態から閉状態に切り替えるときには、弁体2を開位置P1から閉位置P2に回動させつつ、流体噴射部5の流体流入部51に流体f(本実施形態の例では、窒素ガスや空気)を供給する。この供給された流体fは、流体溜まり部52に流入した後、絞り部521を通じて接続流路53に流出する。そして、接続流路53を流れた流体fは、噴射孔54からシート部材4の圧接面412と弁体2の外面2aとの境界Bに向けて噴射される。
【0052】
接続流路53と噴射孔54との一部がシート部材4の環状部材側端面411によって構成されていることで、噴射孔54から噴射された流体fは、環状部材側端面411に沿って境界Bに向かう。そして、境界Bに到達した流体fは、弁体2の外面2aに沿って該外面2aと環状部材6の傾斜内周面64との間を通って第二流通路R3側に流れる。このとき、弁体2の外面2aの境界B及びその近傍に付着していた流通対象物(粉粒体)が吹き飛ばされ、これにより、弁体2が回動して外面2aが境界Bからシート部材4側に入り込むときの、シート部材4(圧接面412)と弁体2(外面2a)との間への流通対象物の噛み込みを防ぐことができる。このとき、弁体2の外面2aにおける流体fが噴射される範囲は、少なくとも図10のドットで示す範囲である。
【0053】
また、このバルブ装置1では、供給された流体fが噴射孔54から環状部材側端面411に沿って境界Bに到達し、該境界Bから弁体2の外面2aと環状部材6の傾斜内周面64との間を通って流れる、即ち、流体fが一方向に流れる経路(流路:
図9における矢印参照)が構成されている。このため、噴射孔54から噴射された流体fがスムーズに流れ、これにより、弁体2の外面2aに付着した流通対象物の除去が効果的に行われる。
【0054】
尚、バルブ装置1において閉状態から開状態に切り替えられるときには、流体噴射部5への流体fの供給は行われない。
【0055】
以上のバルブ装置1によれば、弁体2を開位置P1から閉位置P2に回動させるときに流体噴射部5に外部から流体(例えば、窒素ガスや空気等)が供給されることで、弁体2の外面における該弁体2とシート部材4との境界B近傍に付着している流通対象物が吹き飛ばされる。これにより、バルブ装置1において、弁体2とシート部材4との間への流通対象物の噛み込みが効果的に抑えられる。
【0056】
また、本実施形態のバルブ装置1では、流体噴射部5の噴射孔54は、弁体2とシート部材4との境界Bに沿って延びている。このため、該境界Bに沿った広い範囲において弁体2の外面2aに付着した流通対象物を吹き飛ばすことができ、これにより、弁体2を開位置P1から閉位置P2に回動させる際の弁体2とシート部材4との間への流通対象物の噛み込みがより効果的に抑えられる。
【0057】
また、本実施形態のバルブ装置1では、流体噴射部5が、流体fの流通経路の途中に流体溜まり部52を有している。また、流体溜まり部52が、噴射孔54と連通すると共に、該噴射孔54に沿って延び且つ直上流側の領域より流路断面積の小さな絞り部521を有している。このように、噴射孔54と連通する位置に該噴射孔54に沿って延びる絞り部521を設けることで、該絞り部521の上流側と下流側との間に生じる差圧によって噴射孔54の各位置(噴射孔54の延びる方向における各位置)から噴射される流体の流量の偏りが抑えられる。
【0058】
また、本実施形態のバルブ装置1では、噴射孔54が、シート部材4と環状部材6との隙間によって形成されている。これにより、流体fがシート部材4(詳しくは、環状部材側端面411)に沿って噴射されるため、弁体2とシート部材4との境界に向けてより確実に流体fが噴射される。その結果、弁体2の外面2aにおける前記境界近傍に付着している流通対象部をより確実に吹き飛ばすことができる。
【0059】
尚、本発明のバルブ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0060】
上記実施形態のバルブ装置1において、流体噴射部5の噴射孔54は、シート部材4と弁体2との境界Bに沿って延びているが、この構成に限定されない。噴射孔54は、境界Bに沿って延びていない構成でもよい。例えば、
図11~
図13に示すように、流体噴射部5Aが流体流入部51のみによって構成され、流体流入部51の中空部51aにおけるハウジング3の内部側の端部開口(円形の開口)が噴射孔54Aを構成していてもよい。このような構成によっても、噴射孔54Aが弁体2とシート部材4との境界Bにおいて弁体2が開位置P1から閉位置P2に回動するときに該弁体2の外面2aがシート部材4側に入り込む領域を臨む位置に配置されることで、弁体2を開位置P1から閉位置P2に回動させるときに流体噴射部5Aに流体fを供給すれば、弁体2の外面2aにおける境界B近傍に付着した流通対象物を吹き飛ばすことができる。
【0061】
この構成の場合、流体噴射部5Aを境界Bに沿い且つ該境界の延びる方向に間隔をあけて複数(
図11に示す例では四つ)配置することが好ましい。かかる構成によれば、弁体2とシート部材4との境界B近傍の広い範囲(周方向の広い範囲)に流体fを噴射させることができ、これにより、弁体2の外面2aに付着した流通対象物をより効果的に吹き飛ばすことができる。
【0062】
また、上記実施形態の噴射孔54では、弁体2の外面2aにおける連通路R1の位置に対応した範囲(
図10においてドットで示す範囲)に流体を噴射しているが、この構成に限定されない。噴射孔54は、前記範囲より境界Bの延びる方向における広い範囲に流体fを噴射する構成でもよく、前記範囲より周方向に狭い範囲に流体fを噴射する構成でもよい。
【0063】
また、上記実施形態の流体噴射部5では、流体溜まり部52を有しているが、この構成に限定されない。流体噴射部5が流体溜まり部52を有しない構成でもよい。この場合、噴射孔54の開口面積、流体流入部51の中空部51aの大きさや流体流入部51の数等を調整することにより、境界B(連通路R1の周方向)に沿って延びる噴射孔54の各位置における流体fの噴射量の偏りを抑える(即ち、均一化を図る)ことができる。
【0064】
また、上記実施形態の流体溜まり部52は、連通路R1を囲む環状に形成されているが、この構成に限定されない。流体溜まり部52は、周方向において、少なくとも噴射孔54と同じ長さを有していれば、境界Bに沿って延びる噴射孔54の各位置における流体fの噴射量の偏りを抑える効果が得られる。
【0065】
流体噴射部5に供給される流体は限定されない。上記実施形態の流体噴射部5には、弁体2の外面2aに付着した粉粒体(流通対象物)を吹き飛ばすためのバージガスとして窒素ガスや空気が供給されるが、プロセスガスがパージガスとして用いられてもよい。また、例えば、弁体2の外面2aに固着した樹脂等の流通対象物又は流通対象物に含まれていた成分等を溶かすために、流体噴射部5に溶剤等の液体が供給されてもよい。
【0066】
また、上記実施形態のバルブ装置1は、二方弁、即ち、ハウジング3が流通路R2、R3を二つ有する構成であるが、この構成に限定されない。バルブ装置1は、三方弁等のように、ハウジング3が三つ以上の流通路を有する構成でもよい。この場合、弁体2の開位置(回動軸Ax周りの位置)は、例えば、第一開位置、第二開位置、…等、複数設定される。
【0067】
また、上記実施形態のバルブ装置1では、シート部材4が一つ配置される構成であるが、この構成に限定されない。シート部材4がハウジング3の設けられた流通路毎に配置される構成でもよい。例えば、二方弁の場合に、シート部材4が第一流通路R2におけるハウジング3の内部側の端部と第二流通路R3におけるハウジング3の内部側の端部とのそれぞれに配置される構成であってもよい。
【0068】
この場合、流体噴射部5は、一方の流通路R2又はR3側のみに配置されてもよく、第一流通路R2側と第二流通路R3側とのそれぞれに配置されてもよい。
【0069】
上記実施形態のバルブ装置1は、いわゆる接触式であるが、この構成に限定されない。バルブ装置1は、いわゆる非接触式であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…バルブ装置、2…弁体、2a…弁体の外面、3…ハウジング、30…弁体収容室、31…メインフレーム、311…メインフレーム本体、3111…開口、3112…収容凹部、312…ステム挿通部、313…トラニオン挿入部、314…配管接続部、314a…内周面、3140…フランジ、32…サブフレーム、321…接続用フランジ、322…配管接続部、322a…内周面、3220…フランジ、3221a…流路構成部、3222a…収容部、323…収容部、4…シート部材、41…シート部材本体、411…環状部材側端面、412…圧接面、413…本体内周面、414…外周面、415…凹部、416…端面、42…短筒部、421…短筒部内周面、43…シート部材の内周面、5…流体噴射部、51…流体流入部、51a…中空部、52…流体溜まり部、53…接続流路、54…噴射孔、6…環状部材、61…シート部材側端面、611…凹部、62…弁体側端面、63…外周面、64…傾斜内周面、7…ステム、8…トラニオン、500…バルブ装置、501…連通穴、502…弁体、503…流通路、505…ハウジング、506…シート部材、Ax…回動軸、C、C1、C2、C3…中心線、f…流体、H1…ステム挿通穴、H2…トラニオン挿入穴、O1、O2…Oリング、P1…開位置、P2…閉位置、R1…連通路、R2…第一流通路、R3…第二流通路、α…弁体が開位置のときに圧接面が圧接する領域