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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】爪用コート剤および爪コート用装置
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20231016BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20231016BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A61K8/98
A45D29/00
A61Q3/02
A61K8/41
A61K8/19
A61K8/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019155975
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021031473
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】516137753
【氏名又は名称】ベルジュラックジャポン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】立山 洋
(72)【発明者】
【氏名】大森 徹
(72)【発明者】
【氏名】川合 誠司
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-050908(JP,A)
【文献】特開2013-081749(JP,A)
【文献】特開昭60-208904(JP,A)
【文献】Fresh & Fruity Nail Lacquer, MINTEL GNPD [ONLINE], 2013.06,[検索日 2023.05.17],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.2097605)
【文献】Shine Top Coat, MINTEL GNPD [ONLINE], 2013.10,[検索日 2023.05.17],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.2174659)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/98
A45D 29/00
A61Q 3/02
A61K 8/41
A61K 8/19
A61K 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラック樹脂と、
前記セラック樹脂を溶解可能な溶媒と、
塩基性のpH調整剤を含み、
前記溶媒中、水の割合が10質量%以下であり、
前記塩基性のpH調整剤の含有量が、前記セラック樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下であり、
前記溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールの少なくとも1種を含み、
前記塩基性のpH調整剤が、アミン化合物またはアルカリ金属の水酸化物を含む、爪用コート剤。
【請求項2】
前記塩基性のpH調整剤がアミノメチルプロパノールおよび/またはトリエタノールアミンを含む、請求項1に記載の爪用コート剤。
【請求項3】
さらに、クエン酸および/またはリン酸を含む、請求項1または2に記載の爪用コート剤。
【請求項4】
容器と、前記容器に内包した請求項1~のいずれか1項に記載の爪用コート剤を有する爪コート用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪用コート剤および爪コート用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マニキュアやエナメル剤と呼ばれる爪に塗布する化粧料は、皮膜剤にニトロセルロースを用いたものが主流である。一方、ニトロセルロールに代わり、天然樹脂であるセラック樹脂をその用途に用いることが検討されている。セラック樹脂はアルコールに対し高い溶解性をもち、塗布性に優れる。塗膜としたときには強度および耐水性を付与することができる。それらの特性を活かし、セラック樹脂を配合した爪に塗布する化粧料が提案されている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-081749号公報
【文献】特開2016ー121087号公報
【文献】特開昭57ー050908号公報
【文献】特開平07-291826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラック樹脂をエタノールに溶解させた爪用コート剤はそれだけでは経時的に不安定になり、所定期間保存した後に爪に塗布し自然乾燥にて硬化させる場合において、良好な塗布膜が形成されない場合がある。また、爪用コート剤の保存時に安定性に欠ける場合もある。
本発明の目的は、上記の課題を解決することを目的とするものであって、塗布性が良好であり、かつ保存安定性の高い爪用のコート剤およびこれを用いた爪コート用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1>セラック樹脂と、前記セラック樹脂を溶解可能な溶媒と、塩基性のpH調整剤を含み、前記溶媒中、水の割合が10質量%以下である、爪用コート剤。
<2>前記塩基性のpH調整剤がアミン化合物またはアルカリ金属の水酸化物を含む、<1>に記載の爪用コート剤。
<3>前記塩基性のpH調整剤がアミノメチルプロパノールおよび/またはトリエタノールアミンを含む、<1>に記載の爪用コート剤。
<4>前記セラック樹脂を溶解可能な溶媒が1価アルコールである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の爪用コート剤。
<5>前記セラック樹脂を溶解可能な溶媒がエタノールである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の爪用コート剤。
<6>さらに、クエン酸および/またはリン酸を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の爪用コート剤。
<7>容器と、前記容器に内包した<1>~<6>のいずれか1つに記載の爪用コート剤を有する爪コート用装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上述したセラック樹脂を爪用コート剤として用いたときの問題点を克服し、塗布性が良好であり、かつ保存安定性の高い爪用のコート剤およびこれを用いた爪コート用装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る爪用コート剤は、セラック樹脂と、前記セラック樹脂を溶解可能な溶媒と、塩基性のpH調整剤を含み、前記溶媒中、水の割合が10質量%以下であることを特徴とする。水の量を規制し、塩基性のpH調整剤を採用したことにより、上記の発明の効果を達成する。以下、これらの必須成分を中心に、本発明の爪用コート剤について詳細に説明する。
【0008】
<セラック樹脂>
セラック(shellac)樹脂は、ラックカイガラムシおよびその近縁の数種のカイガラムシの分泌する虫体被覆物を精製して得られる樹脂状の物質である。シェラックとも称される。セラック樹脂の性質は、常温では黄色から褐色の透明性のある固体であり、精製すると白色、透明となる。セラック樹脂は、無味無臭であり、人体に無害である。また、セラック樹脂は、アルコール系溶媒に溶解し、他の有機溶媒には耐性を示す。セラック樹脂のアルコール溶液、水溶液を蒸発させると、セラック樹脂からなる透明被膜を形成させることができる。
【0009】
さらに、セラック樹脂について詳細に説明する。セラック樹脂は1950年ごろからすでにワニスとして用いられていた。セラック樹脂の生産地はインド・タイ・ビルマ・インドシナ等である。樹木から採取したままのものをスチックラックと呼ぶ。多くの場合、そのスチックラック樹脂の状態で消費地に輸送され、当該消費地で精製して商品化される。
【0010】
セラック樹脂の主な特性とその利点についてみると、下記のとおりに例示列挙できる。
(1)天然樹脂としては唯一の熱硬化性樹脂である。
(2)常温でアルコールに簡単に溶解し、熱によって容易に熔融するが、一度硬化すると熱にも溶媒にも浸されなくなる。
(3)耐油性が著しく高い。
(4)電気的に不導体である。
(5)耐摩耗性に優れる
(6)溶媒が揮発したあとには、常温で光沢に優れた、滑らかで、透明性・耐摩耗性・密着性・耐久性に富んだ薄い被膜を形成する。
(7)アルコール以外の有機溶媒にはほとんど不溶または膨潤するだけである。
【0011】
セラック樹脂は樹脂成分95質量%とワックス約5質量%からなる。ワックス分を除いた脱蝋セラックも市販されている。セラック樹脂はオキシカルボン酸が化学的にラクトンと結合して生じた天然縮合生成物と解されている。その化学式や組成はいまだ完全には解明されておらず推定の域を出ていない。推定を含めて言うと、下記の構造が提案されている。
【0012】
・アリュリチン酸(Aleuric Acid)(C16H32O5) セラック樹脂の約40%
【化1】
1927年 W.Nagelの推定式。
・シェロール酸(Shellolic Acid)(C15H206)およびその誘導体(樹脂分の約40%)
【化2】
R:COOH Shellolic酸 1960年 P.Yates,G.F.Field
R:CHO Jalaric酸 1963年 M.S.Wadia,V.V.Mhasker
1962年 A.Morrison
R:CH2OH Laksholic酸 1964年 M.S.Wadia
【0013】
この他に、2%以下のブトール酸、少量のパルミチン酸、ミリスチン酸、その他が含まれていると考えらえている。
【0014】
セラックワックスはSchaeferの研究によると、温アルコール可溶のワックス(全ワックス中の85%)ラクシャジアセロール(C25H51OH)とラクシャジアセリン酸(C25H51COOH)のエステルで融点80~81℃、温アルコール不溶ワックス(全ワックス中の15%)らっけロール(C32H65OH)とラッケル酸(C31H63COOH)のエステルで融点93~94℃、他に少量の不齢化ろうを含有しているとされる。
【0015】
爪用コート剤において、セラック樹脂の含有量は特に限定されないが、爪用コート剤(組成物)の全量を100質量%とするとき、セラック樹脂の含有量は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特にないが、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
<溶媒>
セラック樹脂を溶解可能な溶媒としては、常用されているものを本発明においても用いることができる。例えば、1価のアルコールが挙げられ、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを用いることができる。ここで、溶解可能とは、23℃の溶媒100gにセラック樹脂を溶解したとき、液が透明になることをいう。
溶媒の使用量は上記セラック樹脂の濃度を考慮して定められればよいが、爪用コート剤100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特にないが、他の成分との関係で、98質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
溶媒の使用量をセラック樹脂との対比で示すと、セラック樹脂100質量部に対して、200質量部以上であることが好ましく、250質量部以上であることがより好ましく、300質量部以上であることがさらに好ましい。上限としては、900質量部以下であることが好ましく、800質量部以下であることがより好ましく、700質量部以下であることがさらに好ましい。
【0016】
<塩基性のpH調整剤>
本発明に用いられる塩基性のpH調整剤は、セラック樹脂がもつ酸性を好適に中和し、塗布性および温度に対する経時の安定性の向上に寄与する。具体的には、この種の製品に適用されるものを適宜採用することができる。本発明においては、塩基性のpH調整剤がアミン化合物およびアルカリ金属の水酸化物であることが好ましく、アミン化合物であることがより好ましく、アルカノールアミン化合物であることがさらに好ましい。アミン部位は第一級、二級、第三級のいずれであってもよい。pH調整剤がアルカノールアミンである場合、その炭素原子数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、3~10が特に好ましい。本発明に用いられる塩基性のpH調整剤を構成するアルカノールアミンとしては、分子内のアミン部位の個数が1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることが好ましい。分子内のOH基の個数は1以上6以下であることが好ましく、1以上4以下であることが好ましく、より具体的には、分子内にOH基を1つ有するモノオール化合物または分子内にOH基を3つ有するトリオール化合物であることが好ましい。また、本発明では、塩基性のpH調整剤が、OH基を2つ有するジオール化合物(例えば、N-メチルジエタノール)を含まない構成とすることもできる。
【0017】
具体的に、塩基性のpH調整剤は、下記式A-1またはA-2で表されるアルカノールアミン化合物であることが好ましい。
【0018】
【化3】
【0019】
1~R4はそれぞれ独立に炭素数1~12のアルキレン基であり、炭素数1~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることがより好ましい。アルキレン基は環状であっても鎖状であってもよい。鎖状であるとき、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0020】
本発明に用いられる塩基性のpH調整剤を構成するアルカノールアミンは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールおよび/またはトリエタノールアミンであることが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる塩基性のpH調整剤は、また、無機材料であってもよく、アルカリ金属またはその塩、アルカリ土類金属またはその塩(特に水酸化物)であってもよい。本発明においては、なかでもアルカリ金属またはその塩(特に水酸化物)が好ましく、具体的には、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0022】
塩基性のpH調整剤の量は特に限定されないが、爪用コート剤を100質量%としたときに、0.01質量%以上であることが好ましく、0.06質量%以上であることがより好ましく、0.08質量%以上であることがさらに好ましい。保存時のpHの変化を抑える観点からは、塩基性のpH調整剤がさらに多く配合されることが好ましく、例えば、0.1質量%以上であることが好ましい。上限としては、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
塩基性のpH調整剤のセラック樹脂に対する量としては、セラック樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.25質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。保存時のpHの上昇を抑える観点からは、1.0質量部以上であることが好ましい。
塩基性のpH調整剤を上記範囲以上とすることにより、高温保存時の安定性がより効果的に発揮される。一方、上記上限値以下とすることにより、コート剤の変色を防ぐという効果がより効果的に発揮される。
【0023】
本発明の爪用コート剤(組成物)において、塩基性のpH調整剤が作用するメカニズムについては未解明の点を含むが、以下のように推定される。すなわち、セラック構造中のカルボキシル基と溶剤として用いられるアルコール類が、高温保存において徐々にエステル化反応を起こすことで、良好な塗膜の形成を妨げていると考えられる。pH調整剤を配合することで、カルボキシル基を中和することで、エステル化を抑制し、高温保存においても良好な塗膜を形成することができると推測する。
【0024】
<水>
本発明の爪用コート剤においては、含水率が抑えられることが好ましい。具体的には、10質量%以下に規制され、好ましくは8質量%以下に規制され、より好ましくは6質量%以下に規制され、より好ましくは3質量%以下に規制され、さらに好ましくは2質量%以下に規制され、一層好ましくは1質量%以下に制限される。
【0025】
<pH>
本発明の爪用コート剤はセラック樹脂が酸性部位(カルボン酸部位)を有しており、長期の保存期間となるような場合は、経時でのpH(pH[2])が小さくなる(酸性側になる)。場合によっては、pHが1~2にまで下降する。
本発明の爪用コート剤のpHの範囲は、調製直後(pH[1])で、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、3.8以上であることが一層好ましく、4.5以上であることがさらに一層好ましい。上限値としては、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6.6以下であることがさらに好ましい。本明細書においてpHの測定温度は23℃である。
経時によるpHの変化の程度は小さい方が好ましいが、爪につけることを考慮すると、中性または弱酸性の領域であることが好ましい。具体的には、この種の製品の一般的な使用期間(例えば、25℃で3年)による経時でのpH[2]が0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが一層好ましく、3.0以上であることがより一層好ましく、3.5以上であることがさらに一層好ましく、3.8以上であることが一層好ましく、4.5以上であることが特に好ましい。上限としては、7以下であることが実際的である。なお、上記の経時でのpH[2]は劣化促進試験によるならば、後記実施例で採用されたような、50℃で3か月間静置する条件が挙げられる。
【0026】
初期のpH[1]と経時(促進試験によるなら高温で保持した後)のpH[2]との変化率(下記実施例で示す式(1))λpHは、-100%以上であることが好ましく、-70%以上であることがより好ましく、-50%以上であることがさらに好ましく、-40%以上であることが一層好ましく、-35%以上であることがさらに一層好ましい。上限は特にないが、0%以下が実際的である。
【0027】
<酸>
本発明の爪用コート剤においては、酸を添加してもよい。酸としては、クエン酸のような有機酸であっても、塩酸やリン酸のような無機酸であってもよい。酸の添加量は、爪用コート剤全量を100質量%として、酸が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.08質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。酸の添加により、pH調整剤となる塩基が過剰気味な場合には、pHの過度の上昇を緩和させるよう機能する。
【0028】
<他の成分>
本発明の爪用コート剤は、上記のほか、本発明の技術分野において通常添加される添加剤が配合されていてもよい。
具体的には、本発明の爪用の化粧料は、上記必須成分の他、通常、爪用コート剤で使用される任意の成分を含有することができる。この様な任意の成分としては、上記必須成分に配合するもののほか、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アルキル共重合体等のエマルション樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の皮膜形成剤、ヒドロキシメチルセルロース、ヒロドキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性・アルコール溶解性高分子増粘剤やベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の粘土鉱物、赤色202号、黄色401号、黄色4号、青色1号等の有機色素や酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄、黄酸化鉄等の酸化鉄、群青、紺青などの色剤、雲母チタンや酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)、PET末等の光輝性粉体、ブチレングリコール、グリセリン、ペンタンジオール、ポリエチレングリコール等のグリコール類及び多価アルコール類、ベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス,オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、酸化防止剤が挙げられる。また、本発明の爪用コート剤の特性としては、その粘度が1~1500mPa・sec、更に好ましくは、5~1000mPa・sec程度に粘度がなるように皮膜成分の構成を調整することが好ましい。粘度は、30℃にて、B型粘度計を用い、ローターNo.3、回転数60rpm×1分間にて測定される。
また、マニキュアにも好適であり、この様な製品の場合、粉体、好ましくは表面処理粉体、これらの処理粉体の基体粉体としては、酸化亜鉛、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄などの酸化鉄、群青、紺青、タルク、セリサイト、マイカ、チタンマイカ、チタンセリサイト、シリカ等が好適に例示できる。
【0029】
本発明の爪用コート剤には、光重合に関連する成分を含まないことが好ましい。具体的には、重合性化合物、光重合開始剤、光重合促進剤を含まないことが好ましい。
【0030】
<爪コート用装置>
本発明の爪コート用装置は、爪用コート剤として広く一般に市販されている製品形態の装置を用いることができる。例えば、爪コート用装置が蓋体と瓶体の2つの部材から構成される形態が挙げられる。瓶体の内部には上記で詳しく示した本発明に係る爪用コート剤が充填され、瓶体(容器)に内包されている。蓋体にはその内側の中心に支持棒が設けられ、瓶側に向けて張り出し、その先端に刷毛が設けられている。本実施形態の爪コート用装置においては、蓋体が瓶体と一体になって閉じられた状態で爪用コート剤に刷毛を侵入させ、十分に刷毛に爪用コート剤が含まれるようにされている。
本発明の爪用コート剤は、マニキュアやペディキュアなどのネイルカラーやネイルエナメル、ネイルコート、アンダーネイル、ネイルトップコートとして使用することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態に係る爪コート用装置の蓋体を用いて、指先の爪に爪用コート剤を適用することができる。本発明の爪用コート剤によれば、セラック樹脂を適用した利点が発揮され、塗膜の装飾性とともに、保存安定性が付与されている。さらに必要な場合には、pHの経時的な変化を抑えたものとすることもできる。したがって、爪コート用装置を保管し長期にわたって使用する際にも、爪用コート剤としての好適な性能が維持されている。
【実施例
【0032】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら制限を受けるものではない。
【0033】
<実施例1>
下記表1および表2に記載の組成で配合して各爪用コート剤を調製した。このとき、エタノールには無水エタノール(水分含有率:0.04質量%)を用いた。
【0034】
<<pH[1]>>
ガラス瓶に充填した組成物(爪用コート剤)のpHを測定した。結果を表中に示している。測定温度は23℃とした。比較例7、8については、RT析出(製造後、室温放置にて析出)の結果であり、pHの測定が不可能であった。
【0035】
<<塗布性>>
ガラス瓶に充填した組成物を爪に塗布し、その塗りやすさや塗膜の状態を評価した。評価はこの種の製品評価に精通した技術者5人で構成されたパネルで行い、最も多い判定結果を採用した。(2人・2人で同数の場合は、残りの1人が2択の再投票をして決定した)。Bは市場で問題化はしないがやや劣るレベルである。Cは市場で問題化するレベルである。なお、その他の評価項目も含め、比較例1のサンプルの結果をパネリスト間で共有し評価を標準化した。
A:均一に塗布しやすく、良好な塗膜を形成できる
B:塗布できるが均一になりにくい、塗膜の固化が遅い、
塗膜に僅かな濁りがみられる
C:塗布しにくい、塗膜が固化しない、塗膜に濁りがみられる、塗膜が脆い
【0036】
<<温度安定性:外観>>
爪用コート剤をガラス瓶に充填した後、50℃の恒温槽に静置した。3か月経過後、恒温槽より取り出し、室温で2時間以上静置した。組成物に濁りや沈降物がないかを評価した。評価数は、1水準で3つの試料を作成して行った。得られた結果を表1、表2で示した。
A:異常無し
B:僅かな濁り、沈降物の僅かな発生
C:濁り、沈降物の発生
【0037】
<<温度安定性:塗膜>>
爪用コート剤をガラス瓶に充填した後、50℃の恒温槽に静置した。3か月経過後、恒温槽より取り出し、室温で2時間以上静置した。組成物をプラスチック板に塗布し、乾燥後の塗膜の状態を評価した。評価数は1水準で3つの試料を作成して行った。そのうち2以上が該当したものを、試験結果とした。得られた結果を表1、表2で示した。
A:良好な塗膜を形成
B:塗膜の固化が遅い、塗膜に僅かな濁りがみられる
C:塗膜が固化しない、塗膜に濁りがみられる、塗膜が脆い
【0038】
<<pH変化率>>
爪用コート剤をガラス瓶に充填した後、50℃の恒温槽に静置した。3か月経過後、恒温槽より取り出し、室温で2時間以上静置した。その後の爪用コート剤のpHを測定した。測定温度は23℃とした。先に組成物を調製した直後に測定した初期のpHをpH[1]とし、上記条件で高温処理した後のpHを経時でのpH[2]とした。それぞれの値を下記の式(1)に代入しpH変化率(λpH)[単位%]を算出した。
(λpH)=(pH[2]-pH[1])/pH[1]×100・・・(1)
【0039】
なお、表1および表2の「-」はその項目の測定を実施しなかったことを意味する。
【表1】
【表2】
【0040】
上記の結果から分かるとおり、実施例1~13のものは、セラック樹脂をアルコール系溶媒に溶解し特定量の水に規制した系において、塩基性のpH調整剤を添加することで、良好な塗布性(評価A,B)が得られた。また、実施例1~13の試料を用いた塗膜においては、50℃、3か月間という劣化促進試験においても濁り等がなく、良好な保存安定性を示していた(評価A,B)。なかでも、実施例3,4,5,8,10については、高温処理後のpHが維持され低い変化率を達成している。
これに対して、セラック樹脂にエタノールのみを配合し、水を用いなかったものでは(比較例1)、塗布性は良好であったが、温度安定性試験における塗膜の性状について劣っていた。
また、セラック樹脂をエタノールに溶解し、さらに水を加えているが、塩基性のpH調整剤を用いなかったものでは、水が多すぎるとき塗布性が劣り(比較例2)、その他のものでは塗膜の温度安定性に劣る(比較例3,4)結果であった。
さらに、セラック樹脂をエタノールに溶解し、水を加えたものに、塩基性のpH調整剤を用いず、特定の酸または塩(クエン酸、塩酸)を加えたものでは(比較例5,6)、温度安定性における塗膜の性状について劣っていた。また、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムを加えたものでは(比較例7,8)、RT(製造後、室温放置にて)析出してしまい、塗布による評価ができなかった。