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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ホットメルト接着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20231016BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20231016BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J153/02
C09J11/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019156834
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021031654
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤井 貴彰
(72)【発明者】
【氏名】平田 駿
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚明
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-249433(JP,A)
【文献】特開平11-198288(JP,A)
【文献】特開平03-160083(JP,A)
【文献】特開2018-053077(JP,A)
【文献】特表2010-530905(JP,A)
【文献】特開2017-066303(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026891(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤を含む接着層を有するホットメルト接着シートであって、
前記ホットメルト接着剤は、
スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体のいずれか一方と、
水添脂環族炭化水素系石油樹脂と
テルペン変性フェノール樹脂と、を含み、
前記水添脂環族炭化水素系石油樹脂は、前記スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体または前記スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体のいずれか一方の100質量部に対して、20質量部以上80質量部以下含まれ、
前記テルペン変性フェノール樹脂は、前記スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体または前記スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重体のいずれか一方の100質量部に対して、3質量部以上15質量部以下含まれており、
ガラス転移温度が-10℃以上10℃以下の範囲内にある
ホットメルト接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホットメルト接着シートは、自動車部品どうしを接着させたり、電子部品どうしを接着させたりするために使用されている。例えば、ホットメルト接着シートは、自動車のドアにドアモールを接着するために用いられている。
【0003】
このようなホットメルト接着シートは、ホットメルト接着剤を含む接着層を有しており、該接着剤層が、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、スチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-(エチレン/ブタジエン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)の少なくともいずれか一つを含むものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、近年、自動車分野では、車両重量の軽量化のために、車体やドア等の材料として、アルミニウム合金を使用することが多くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-190287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホットメルト接着シートは、接着層に熱(例えば、80~100℃)をかけて融かした後、常温(例えば、23℃)まで冷却して固化させることにより、接着層によって部品どうしを接着させるものであるが、特許文献1に記載されたようなスチレン系熱可塑性エラストマーを含む接着層を用いて、アルミニウム合金で製造されたドアにドアモールを接着すると、常温まで冷却されて固化された場合でも、ドアとドアモールとを十分に接着できないことがある。
そのため、アルミニウムを含む被着体に対して、比較的高い接着性を示すホットメルト接着シートが要望されているものの、これに関する検討はほとんどされていない。
【0007】
そこで、本発明は、アルミニウムを含む被着体に対して比較的高い接着性を示すホットメルト接着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意研究したところ、ホットメルト接着シートのホットメルト接着剤に、スチレン系ブロック共重合体としてのスチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)のいずれか一方と、タッキファイヤとしての水添脂環族炭化水素系石油樹脂とを含ませ、かつ、ホットメルト接着シートのガラス転移温度を-10℃以上10℃以下の範囲内とすることにより、アルミニウムを含む被着体に対して比較的高い接着性が示されることを見出した。
そして、上記知見を基に、本発明を想到するに至った。
【0009】
即ち、本発明に係るホットメルト接着シートは、
ホットメルト接着剤を含む接着層を有するホットメルト接着シートであって、
前記ホットメルト接着剤は、
スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体のいずれか一方と、
水添脂環族炭化水素系石油樹脂とを含み、
ガラス転移温度が-10℃以上10℃以下の範囲内にある。
【0010】
斯かる構成によれば、アルミニウムを含む被着体に対して比較的高い接着性を示すことができる。
【0011】
前記ホットメルト接着シートにおいて、
前記ホットメルト接着剤は、テルペン変性フェノール樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0012】
斯かる構成によれば、アルミニウムを含む被着体に対してより高い接着性を示すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミニウムを含む被着体に対して比較的高い接着性を示すホットメルト接着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態に係るホットメルト接着シートは、ポリマーシートで形成された基材層と、該基材層の一方面に設けられ、かつ、被着体に接着される接着層とを有する2層構造となっている。
なお、上記のごとく2層構造を有するホットメルト接着シートを用いて2つの被着体を接着する場合には、例えば、接着層が外側を向くようにホットメルト接着シートを折り畳んで、ホットメルト接着シートに外側を向く2面の接着面を形成させて使用することができる。
【0016】
本実施形態に係るホットメルト接着シートでは、前記接着層は、ホットメルト接着剤で形成されている。
本実施形態に係るホットメルト接着シートでは、前記ホットメルト接着剤は、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)のいずれか一方と、タッキファイヤとしての水添脂環族炭化水素系石油樹脂とを含み、かつ、ホットメルト接着シートのガラス転移温度が-10℃以上10℃以下の範囲内にあることが重要である。
このように構成されることにより、アルミニウムを含む被着体に対して比較的高い接着性を示すことができる。
【0017】
アルミニウムを含む被着体に対して、本実施形態に係るホットメルト接着シートの接着層が比較的高い接着性を示す理由については定かではないが、本発明者らは、前記接着層に含まれるホットメルト接着剤が、SEEPSまたはSEPSのいずれか一方と水添脂環族炭化水素系石油樹脂とを含んでおり、かつ、ホットメルト接着シートのガラス転移温度が-10℃以上10℃以下の範囲内にあることにより、このような構成を備えないホットメルト接着シートと比べて、アルミニウムを含む被着体に対する融かした状態における前記接着層の濡れ性が向上したことが一因であると推察している。
【0018】
上記のスチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)は、ポリスチレンブロックで構成されたハードセグメントと、プロピレンを構成単位に含むソフトセグメントとを有している。
より具体的には、前記SEEPSは、基本構造の両末端にハードセグメントを有し、この2つのハードセグメントの間にソフトセグメントを有している。
これにより、前記接着剤層は、ポリマーシートの材料として用いられるポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン)に対して優れた接着性を示すものとなる。
【0019】
前記SEEPSは、前記接着層に高い凝集力を発揮させ得る点において、一定以上の割合で前記ハードセグメントを含有していることが好ましい。
一方で、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂に対する親和性は、主としてソフトセグメントによって発揮されることから、前記SEEPSにおけるハードセグメントの含有割合は、一定以下であることが好ましい。
より具体的には、前記SEEPSにおけるスチレンの含有割合は、15質量%以上であることが好ましく、18質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
また、前記SEEPSにおけるスチレンの含有割合は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、32質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
前記SEEPSの質量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましい。
前記SEEPSの質量平均分子量は、40万以下であることが好ましく、38万以下であることがより好ましい。
なお、前記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(GPC)によって求められるスチレン換算での質量平均分子量を意味する。
【0021】
上記のスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)は、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)と同様に、基本構造の両末端にハードセグメントを有し、この2つのハードセグメントの間にソフトセグメントを有している。
【0022】
前記SEPSにおけるスチレンの含有割合は、15質量%以上であることが好ましく、18質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
また、前記SEPSにおけるスチレンの含有割合は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、32質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
前記SEPSの質量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましい。
前記SEPSの質量平均分子量は、40万以下であることが好ましく、38万以下であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態に係るホットメルト接着シートは、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)のいずれか一方を総量で、30質量%以上80質量%以下含むことが好ましく、50質量%以上70質量%以下含むことがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係るホットメルト接着シートのガラス転移温度(Tg)は、例えば、粘弾性測定装置(株式会社アントンパール・ジャパン(Anton Paar Japan)製、型番MCR 302)を用いて測定することができる。
より具体的には、上記粘弾性測定装置を用いて、空気雰囲気下にて、試験体に10Nの荷重をかけて、周波数1Hz、ひずみ0.1%、-70℃から200℃の温度範囲を昇温速度5℃/minで昇温するという条件で測定し、tanδのピーク位置よりガラス転移温度(Tg)を得ることができる。
なお、tanδのピーク位置が複数認められる場合には、最も高いピークのピーク位置よりガラス転移温度(Tg)を得る。
【0026】
前記水添脂環族炭化水素系石油樹脂は、水素化されて不飽和結合が十分に消失されていることが好ましく、脂環族飽和炭化水素樹脂と呼べる状態になっていることが好ましい。
具体的には、前記水添脂環族炭化水素系石油樹脂は、JIS K 0070-1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に従って測定されるよう素価が15g/100g以下であることが好ましく、10g/100g以下であることがより好ましい。
【0027】
前記水添脂環族炭化水素系石油樹脂の軟化点は、140℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましく、95℃以上120℃以下であることが特に好ましい。
なお、本実施形態において、軟化点は、JIS K 2207-1996「石油アスファルト」などに記載の「軟化点試験方法(環球法)」によって測定することができる。
【0028】
上記ホットメルト接着シートは、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)のいずれか一方の100質量部に対して、前記水添炭化水素系石油樹脂を20質量部以上80質量部以下含むことが好ましく、40質量部以上80質量部以下含むことがより好ましい。
【0029】
前記ホットメルト接着剤は、タッキファイヤとして、テルペン変性フェノール樹脂をさらに含むことが好ましい。
前記ホットメルト接着剤が前記テルペン変性フェノールをさらに含むことにより、本実施形態に係るホットメルト接着シートは、アルミニウムを含む被着体に対して、より高い接着性を示すものとなる。
また、高温接着性に優れるものとなる。
【0030】
前記テルペン変性フェノール樹脂の軟化点は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、120℃以上150℃以下であることがさらに好ましく、120℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
【0031】
上記ホットメルト接着シートは、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)のいずれか一方の100質量部に対して、前記テルペン変性フェノール樹脂を3質量部以上含むことが好ましく、5質量部以上含むことがより好ましい。
上記ホットメルト接着シートは、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)またはスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)のいずれか一方の100質量部に対して、前記テルペン変性フェノール樹脂を15質量部以下含むことが好ましく、12質量部以下含むことがより好ましい。
【0032】
前記ホットメルト接着剤は、一般的な熱可塑性樹脂、一般的な熱硬化性樹脂、無機フィラー、薬剤などを含んでいてもよい。
【0033】
前記無機フィラーとしては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられる。
【0034】
前記薬剤としては、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、着色剤などといった一般的なプラスチック配合薬剤が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係るホットメルト接着シートは、室温(23℃)において、被着体をアルミニウム板としたときのピール強度が、2N/10mm以上であることが好ましく、5N/10mm以上であることがより好ましく、6N/10mm以上であることがさらに好ましい。
なお、室温において、被着体をアルミニウム板としたときのピール強度は、後述の実施例に記載したようにして求めることができる。
【0036】
上記ホットメルト接着シートが、スチレン系ブロック共重合体としてスチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)及びスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)の両方を含む場合、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)とスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)の混合割合は、SEEPS:SEPS=30:70~70:30であることが好ましく、SEEPS:SEPS=40:60~60:40であることがより好ましく、SEEPS:SEPS=45:55~55:45であることがさらに好ましく、SEEPS:SEPS=50:50であることが最適である。
【0037】
前記ホットメルト接着剤は、一般的な熱可塑性樹脂、一般的な熱硬化性樹脂、無機フィラー、薬剤などを含んでいてもよい。
【0038】
本実施形態に係るホットメルト接着シートは、室温(23℃)において、被着体をアルミニウム板としたときのピール強度が、2N/10mm以上であることが好ましく、5N/10mm以上であることがより好ましく、6N/10mm以上であることがさらに好ましい。
【0039】
なお、本発明に係るホットメルト接着シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るホットメルト接着シートは、上記作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係るホットメルト接着シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、ホットメルト接着シートを、ポリマーシートで形成された基材層と、該基材層の一方面に設けられ、かつ、被着体に接着される接着層とを有する2層構造とする例について説明したが、ホットメルト接着シートの構成する例はこれに限られるものではない。
ホットメルト接着シートは、接着層のみを有する単層構造であってもよいし、基材層の両面に接着剤層が積層された3層構造であってもよい。
要すれば、本発明に係るホットメルト接着シートは、単層または多層で形成され、少なくとも、接着層を有していればよい。
なお、接着層のみを有する単層構造のホットメルト接着シートを用いて2つの被着体を接着させる場合には、ホットメルト接着シートの互いに対向する2つの接着面に、各被着体を接着させる。
【実施例
【0041】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1に係るホットメルト接着シートの作製)
スチレン系ブロック共重合体としてのスチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、及び、水添炭化水素系石油樹脂としての脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(a)を下記表1に示す配合で有機溶媒中に含ませたワニスを調製した。
そして、このワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)にコーティングした後に乾燥させて、乾燥厚さ約50μmの接着層を有するホットメルト接着シートを得た。
なお、SEEPSは、質量平均分子量が26万であり、スチレンの含有割合が30質量%であった。
また、脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(a)は、軟化点が100℃であった。
【0043】
(実施例2に係るホットメルト接着シートの作製)
SEEPS及び脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(a)に加えて、テルペン変性フェノール樹脂を下記表1に示す配合で有機溶媒中に含ませたワニスを調製した後、実施例1と同様に、このワニスをポリエチレンテレフタレートフィルムにコーティングして、乾燥厚さ約50μmの接着層を有するホットメルト接着シートを得た。
なお、テルペン変性フェノール樹脂は、軟化点が135℃であった。
【0044】
(実施例3に係るホットメルト接着シートの作製)
スチレン系ブロック共重合体としてのSEEPS及びスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(b)、並びに、テルペン変性フェノール樹脂を下記表1に示す配合で有機溶媒中に含ませたワニスを調製した後、実施例1と同様に、このワニスをポリエチレンテレフタレートフィルムにコーティングして、乾燥厚さ約50μmの接着層を有するホットメルト接着シートを得た。
なお、SEPSは、質量平均分子量が25万であり、スチレンの含有割合が20質量%であった。
また、脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(b)は、軟化点が115℃であった。
【0045】
(実施例4に係るホットメルト接着シートの作製)
スチレン系ブロック共重合体としてのスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、及び、脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(b)、並びに、テルペン変性フェノール樹脂を下記表1に示す配合で有機溶媒中に含ませたワニスを調製した後、実施例1と同様に、このワニスをポリエチレンテレフタレートフィルムにコーティングして、乾燥厚さ約50μmの接着層を有するホットメルト接着シートを得た。
【0046】
(比較例1に係るホットメルト接着シートの作製)
スチレン系ブロック共重合体としてのスチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(c)、水添芳香族炭化水素系石油樹脂、及び、水添テルペン樹脂を下記表1に示す配合で有機溶媒中に含ませたワニスを調製した後、実施例1と同様に、このワニスをポリエチレンテレフタレートフィルムにコーティングして、乾燥厚さ約50μmの接着層を有するホットメルト接着シートを得た。
なお、SEBSは、質量平均分子量が16万であり、かつ、スチレンの含有割合が31%のSEBS1と、分子量が5.7万であり、かつ、スチレンの含有割合が30%のSEBS2と、分子量が7万であり、かつ、スチレンの含有割合が30%のSEBS3とを、質量部がSEB1:SEBS2:SEBS3=100:60:40となるように混合したものを用いた。
また、脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(c)は、軟化点が115℃であり、水添テルペン樹脂は、軟化点が125℃であり、水添芳香族炭化水素系石油樹脂は、軟化点が120℃であった。
【0047】
(比較例2に係るホットメルト接着シートの作製)
スチレン系ブロック共重合体としてのSEEPS、及び、脂環式飽和炭化水素系石油樹脂(b)を下記表1に示す配合で有機溶媒中に含ませたワニスを調製した後、実施例1と同様に、このワニスをポリエチレンテレフタレートフィルムにコーティングして、乾燥厚さ約50μmの接着層を有するホットメルト接着シートを得た。
【0048】
(ガラス転移温度の測定)
接着層の厚さが0.5mm以上の厚みとなるように作製した各例に係るホットメルト接着シートを試験体として、ガラス転移温度を測定した。
各試験体のガラス転移温度は、粘弾性測定装置(株式会社アントンパール・ジャパン(Anton Paar Japan)製、型番MCR 302)を用いて測定した。
具体的には、上記粘弾性測定装置を用いて、空気雰囲気下にて、各試験体に10Nの荷重をかけて、周波数1Hz、ひずみ0.1%、-70℃から200℃の温度範囲を昇温速度5℃/minで昇温するという条件で測定し、tanδのピーク位置よりガラス転移温度(Tg)を求めた。
上記のようにして測定した各例に係るホットメルト接着シートのガラス転移温度(Tg)を下記表1に示した。
【0049】
(室温環境下でのピール試験)
各例に係るホットメルト接着シートから、幅10mmの短冊状試料を切り出した。
次に、前記短冊状試料の接着層を被着体の表面に熱プレス(圧力:0.2MPa、温度:60℃、時間:5秒)して熱接着させ、室温になるまで十分に冷却させることにより、試験体を得た。
そして、引張試験機を用いて、室温(23℃)の環境下、300mm/minの試験速度で、被着体からホットメルト接着シートを引っ張ることにより、180度ピール試験を実施して、室温の環境下におけるピール強度(N/10mm)を求めた。
なお、被着体としては、PP(ポリプロピレン樹脂)板、PI(ポリイミド樹脂)板、PC(ポリカーボネート樹脂)板、AC(アクリル樹脂)板、PET-G(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂)板、ABS樹脂板、PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)板、PS(ポリスチレン樹脂)板、SUS板、Al(アルミニウム)板、Cu(銅)板、及び、ガラス板を用いた。
上記のようにして測定した各例に係るホットメルト接着シートのピール強度を下記表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から、被着体をアルミニウム板とした場合に、実施例1~4に係るホットメルト接着シートは、比較例1及び2に係るホットメルト接着シートに比べて、室温環境下において特に優れた接着性を示すことが分かった。