(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】針キャップ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
A61M5/32 500
(21)【出願番号】P 2019172772
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真洋
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-160468(JP,A)
【文献】特開平09-299482(JP,A)
【文献】米国特許第05836920(US,A)
【文献】実公昭53-50402(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針の
先端である針先を覆う筒体を有する針キャップであって、
前記筒体は、
内部に形成され前記針先が収容される収容空間と、前記針先に対向する位置に当該針先を拡大して使用者に視認可能とするレンズ部
と、を有
し、
前記レンズ部は、前記筒体の外周面から外側に突出し、表面が半球形状を呈する凸メニスカスレンズを構成すると共に、前記レンズ部の内側に配置され前記収容空間を構成する前記筒体の内周面は、前記筒体の軸線と直交する方向の断面視で前記表面の曲率よりも小さな曲率の円弧状に形成される
針キャップ。
【請求項2】
請求項1記載の針キャップにおいて、
前記レンズ部は、前記筒体に一体成形されている
針キャップ。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の針キャップにおいて、
前記レンズ部は、前記針先のベベル方向を視認可能とする
針キャップ。
【請求項4】
請求項
3記載の針キャップにおいて、
前記針先は、前記針の軸方向に対して傾斜する刃面を有し、
前記レンズ部は、前記刃面に対向する周方向位置に配置されている
針キャップ。
【請求項5】
請求項
4記載の針キャップにおいて、
前記針は、前記針先を先端に有する針本体と、前記針本体を保持する針ハブとを有し、
前記筒体と前記針ハブとは、前記レンズ部と前記刃面とが対向する位置で相互の周方向位置を規定する周方向位置決め機構を有する
針キャップ。
【請求項6】
請求項
3~
5のいずれか1項に記載の針キャップにおいて、
前記筒体
と針ハブとは、当該針ハブに対する当該筒体の装着基端位置を規定する軸方向位置決め機構を有する
針キャップ。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の針キャップにおいて、
前記レンズ部は、前記筒体の当該レンズ部が設けられる箇所の周長に対して1/4以上の範囲に形成されている
針キャップ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の針キャップにおいて、
前記筒体は、当該筒体を補強する複数のリブを有すると共にユーザが把持するための被把持部を備え、
前記レンズ部は、前記被把持部から前記筒体の軸方向にオフセットした位置に設けられる
針キャップ。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の針キャップにおいて、
前記レンズ部は、前記筒体よりも透明度が大きい
針キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針を保護する針キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
採血針、翼状針、注射針、留置針等の針は、針キャップに収容された状態で医療従事者等のユーザに提供される。例えば特許文献1に示すように、針キャップは、針本体を保持する針ハブ(針基)、及び針ハブの先端から露出している針の針先を覆うように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医療用途で使用される針は、近年、穿刺対象(生体)の負担や恐怖心の軽減のために細径化が進められ、これに応じて針先も小さく形成されるようになっている。そのため、目視での針先の視認性が低下しており、例えば刃面の向きを下向きにしたまま穿刺する事例が生じている。
【0005】
このような意図しない向きによる針先(刃面)の誤刺を防ぐために、針本体を保持する針ハブに刃面位置を示すマーカを設けた構成も考えられる。しかしながら、穿刺処置時にユーザが針ハブを把持することで、マーカが見難くなる(又は見えなくなる)可能性がある。すなわち、生体に穿刺を行う際には、針ハブを把持した状態で刃面の向きも含めた針先の状態を確認することが重要である。
【0006】
本発明は、上記の針先の状態を確認する技術に関連するものであり、簡単な構成によって針先を容易に視認可能とすることができる針キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様は、針の先端である針先を覆う筒体を有する針キャップであって、前記筒体は、内部に形成され前記針先が収容される収容空間と、前記針先に対向する位置に当該針先を拡大してユーザに視認可能とするレンズ部と、を有し、前記レンズ部は、前記筒体の外周面から外側に突出し、表面が半球形状を呈する凸メニスカスレンズを構成すると共に、前記レンズ部の内側に配置され前記収容空間を構成する前記筒体の内周面は、前記筒体の軸線と直交する方向の断面視で前記表面の曲率よりも小さな曲率の円弧状に形成される。
【発明の効果】
【0008】
上記の針キャップは、単な構成によって針先を容易に視認可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る針キャップを装着した針の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3Aは、装着前の針キャップ及び採血針を拡大して示す平面図である。
図3Bは装着状態の針キャップ及び採血針を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係る針キャップ10は、医療用途で使用される針12の外側を覆うことで、無菌性を高めると共に生体への針12の誤刺を防止する機能を有する。針キャップ10は、製品提供時に針12を覆っており、使用においてユーザにより針12の先端側から取り外されることで針12を露出させる。
【0012】
なお、針キャップ10は、穿刺後の針12に取り付けられて(リキャップされて)、針12を再び覆うことが可能な構成でもよく、この際、使用済の針12であることをユーザに認識させるタンパプルーフ機能を有しているとよい。また本発明に係る針キャップ10の構成は、使用時に取り外される構成に限定されない。例えば、針キャップ10は、適宜の改変を施すことにより、針12の使用時でも保持が継続され、穿刺時に針12を露出させる一方で、穿刺後に針12を自動的に収容する保護装置にも適用し得る。
【0013】
針キャップ10が保護する針12は、種々の医療用針であってよく、例えば、採血針、翼状針、注射針、留置針等があげられる。本実施形態では、採血針14に適用される針キャップ10について例示する。また以下では、本発明の理解の容易化のため、採血針14の構成について先に説明していく。
【0014】
採血針14は、血液バッグシステム16(図示しない医療用バッグ及びチューブ等により構成される医療機器)の一端部に設けられ、使用時に、穿刺対象(生体)の血液を流出させる導出部を形成する。採血針14は、金属材料等により硬質に構成されて穿刺対象に実際に穿刺される針本体20と、針本体20の基端に固定され針本体20を保持する樹脂製の針ハブ30とを有する。また、採血針14の針ハブ30には、血液バッグシステム16の図示しない採血バッグにつながるチューブ40が接続されている。
【0015】
針本体20は、中空状の管部22と、管部22の先端側で鋭利に形成された針先24とを有する。針本体20の内部には、当該針本体20の軸方向に沿って延在して、管部22の基端と針先24を貫通する内腔20aが形成されている。内腔20aは、血液を流通可能な適宜の流路断面積(内径)に設定されている。
【0016】
管部22は、一定の外径で軸方向に沿って直線状に延在する。管部22(針本体20)の外径は、特に限定されないが、穿刺対象の負担や恐怖心を軽減可能な細さと、血液を安定的に流動させる内腔20aを形成可能な太さとを両立する適宜の寸法に設定されるとよい。例えば、管部22の直径は1.2mm~1.3mmの範囲に設定されることが好ましい。
【0017】
管部22の基端には内腔20aに連通する基端開口(不図示)が設けられている。管部22の基端側は、針ハブ30に挿入され、適宜の固着手段によってその外周面が針ハブ30に固着される。針ハブ30から露出される管部22の長さは、採血針14の仕様に応じて適切な寸法に設定される。針先24は、この管部22の長さに応じて、針ハブ30から先端方向に向かって所定長さ離れた箇所に位置する。
【0018】
管部22の形状は、特に限定されず、先端方向に向かって先細りとなるテーパ状や途中位置が湾曲した形状等であってもよい。また管部22の外周面には、種々の加工(内腔20aに連通する横孔、マーキング等)が施されていてもよい。
【0019】
針先24は、管部22の先端の微小範囲に設けられ、また管部22の太さに応じたサイズに形成される。針先24は、管部22を構成している部材を適宜の傾斜角度で切断する(ベベルを形成する)ことにより、穿刺対象の生体組織を切り裂く刃面26を有する。刃面26は、管部22の軸方向に対して所定角度傾斜し、針先24の平面視で楕円状を呈している。刃面26の内側には、内腔20aに連通する先端開口26aが形成されている。なお、針先24の形状は、特に限定されず、ランセット型、バックカット型等の種々の形状であってもよい。
【0020】
一方、採血針14の針ハブ30は、針本体20よりも太い筒部材に構成されている。針ハブ30は、チューブ40が連結される基端筒部32と、基端筒部32の先端に連なる中間筒部34と、中間筒部34の先端に連なる先端筒部36とを有する。また針ハブ30の軸心部には、針本体20を挿入及び固着可能な保持孔30aが設けられている。
【0021】
基端筒部32は、針ハブ30において最も太い部分を構成し、採血針14を穿刺対象に穿刺する際にユーザの被把持部分となる。基端筒部32の外周面には、把持をし易くするために針ハブ30の軸方向に延在する突条部32aが周方向に沿って複数設けられている。また基端筒部32は、チューブ40が装着される固定筒部(不図示)を内側に有する。針ハブ30は、固定筒部とチューブ40の連結状態で、針本体20の内腔20aとチューブ40内の流路40aとを連通させる。
【0022】
中間筒部34は、基端筒部32よりも小さな外径に形成されている。この中間筒部34の先端は、先端筒部36に装着される針キャップ10(後記の筒体50)の境界となり、筒体50の装着基端位置(移動限界)を規定する軸方向位置決め機構38を構成する。
【0023】
先端筒部36は、中間筒部34よりも小さな外径に形成されている。先端筒部36の外周面は、針キャップ10を摩擦力によって篏合(係合)する被係合部36aとなっている。本実施形態において被係合部36aは、基端側の第1外径部36a1、第1外径部36a1の先端側で当該第1外径部36a1よりも小径の外径に形成された第2外径部36a2を有する段差状に形成されている。
【0024】
針キャップ10は、以上の採血針14(針本体20、針ハブ30)の形状に合わせた筒体50に成形され、装着状態で、針ハブ30の一部及び針ハブ30から露出されている針本体20全体を覆う。筒体50を構成する材料は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。本実施形態に係る筒体50は、医療機器の仕様等に応じて適宜の色に着色した半透明状に形成されている。なお、筒体50は透明に形成されていてもよい。
【0025】
具体的には、筒体50(針キャップ10)は、針ハブ30に係合する係合部52と、係合部52の先端に連なりユーザが把持するための被把持部54と、被把持部54の先端に連なり針本体20の針先24を覆う先端側覆い部56とを有する。この筒体50の内側には、係合部52、被把持部54、先端側覆い部56にわたって延在する収容空間50aが形成されている。収容空間50aは、筒体50の基端に設けられた基端開口50a1に連通している。また筒体50の基端は、針ハブ30の中間筒部34の先端と共に軸方向位置決め機構38を構成している。
【0026】
係合部52は、針キャップ10を採血針14に装着した装着状態で、針ハブ30の被係合部36aに係合する。すなわち、係合部52の収容空間50aを構成する内周面の直径は、被係合部36aの外径に一致している。具体的には、係合部52は、第1外径部36a1に篏合する基端係合部52aと、第2外径部36a2に篏合する先端係合部52bとを有する段差状に形成され、また基端係合部52aの外径と先端係合部52bの外径にも段差が形成されている。
【0027】
被把持部54は、係合部52から先端方向に向かって緩やかに先細りとなるテーパ状に形成されている。被把持部54の外周面には、周方向に沿って複数の平たいリブ54aが設けられている。各リブ54aは、筒体50の軸方向に沿って延在している。ユーザは、基端筒部32を一方の手で把持しつつ、各リブ54aにより補強された被把持部54を他方の手で把持して、針キャップ10を採血針14と相対的に先端方向に移動させることで、針キャップ10を取り外す。
【0028】
先端側覆い部56は、平滑な外周面を有する円筒状に形成され、被把持部54から先端方向に向かって所定長さ(被把持部54の軸方向長さよりも短く)突出している。先端側覆い部56の先端は、先端壁58により収容空間50aを閉じており、針先24を密閉している。そして本実施形態に係る針キャップ10は、この先端側覆い部56にレンズ部60を備える。
【0029】
レンズ部60は、装着状態で、採血針14(針本体20)の針先24に対向する先端側覆い部56の壁部56aに設けられ、針先24を拡大してユーザに視認させる機能を有する。
図2に示すように、レンズ部60は、筒体50の成形時に当該筒体50に一体成形される。レンズ部60は、壁部56aの外周面から径方向外側に突出(膨出)し、その突出部分の表面60a(外形)が半球形状を呈している。
【0030】
またレンズ部60の形成箇所の内側(収容空間50aを構成する内周面)は、断面視で表面60aの曲率よりも小さな曲率の円弧状に形成されている。これによりレンズ部60は凸メニスカスレンズを構成している。なおレンズ部60は、当該レンズ部60及びレンズ部60が連設されている壁部56aを適切に設計及び加工することで、平凸レンズ、両凸レンズ等に構成されていてもよい。
【0031】
レンズ部60による針先24の拡大倍率は、例えば、1.1~2倍に設定されているとよい。レンズ部60の拡大倍率が1.1倍より小さいと、レンズ部60を視認した際の針先24の大きさが殆ど変わらず視認性がそれほど向上しない。逆に、レンズ部60の拡大倍率が2倍より大きいと、針先24が大きくなりすぎて認識し難くなる。
【0032】
本実施形態に係るレンズ部60は、拡大倍率を高くするために壁部56aに対して厚みを有するように形成している。なお、レンズ部60は、透明度を高めることを優先して薄肉に形成されていてもよい。また、レンズ部60は、成形時に壁部56aから膨出する加工を行って着色度合を薄くするように形成されることが好ましい。これにより、壁部56aの透明度に対してレンズ部60の透明度のほうが高くなり、より針先24を認識し易くすることができる。
【0033】
レンズ部60は、先端側覆い部56の軸方向基端位置(すなわち被把持部54の複数のリブ54aよりも先端側にずれた位置)に設けられている。なお、レンズ部60の筒体50の軸方向位置は、特に限定されず、針12の針先24に対向する位置に形成されていればよい。針キャップ10は、製造工程における採血針14へ装着時に、軸方向位置決め機構38により基端が針ハブ30の中間筒部34の先端に当接するまで挿入され基端装着位置が規定される。よって、装着状態で、レンズ部60を針先24に確実に対向させることが可能である。
【0034】
レンズ部60の軸方向長さは、針先24の軸方向長さよりも長く形成される。また、レンズ部60は、針先24のベベル方向を視認可能としている。具体的には、レンズ部60は針先24の刃面26と対向する周方向位置に配置される。このため、針キャップ10及び採血針14は、針キャップ10と針ハブ30の周方向の係合位置を規定する周方向位置決め機構62を有することが好ましい。周方向位置決め機構62は、例えば、針キャップ10の基端と針ハブ30(中間筒部34)の境界において、一方に凸部62aを形成し他方に凸部62aが入り込む凹部62bを形成することで実現し得る。この周方向位置決め機構62は、採血針14からの針キャップ10の離脱時に凸部62aが折れることでタンパプルーフ機能の役割を果たしてもよい。
【0035】
また、本実施形態に係るレンズ部60は、筒体50の軸方向に沿って長軸を有し、筒体50の周方向に短軸を有する楕円状に形成されている。レンズ部60の周方向長さ(短軸)は、当該レンズ部60が設けられる箇所(先端側覆い部56)の筒体50の周長に対して1/4以上の範囲に形成されることが好ましい。これによりユーザは、レンズ部60を確実に認識することができる。なお、レンズ部60の平面形状は、特に限定されないことは勿論である。
【0036】
また、レンズ部60は、筒体50に複数設けられていてもよい。例えば、レンズ部60は、筒体50の軸方向に沿って複数並んで設けられることで、複数種類の長さの針12の針先24に、レンズ部60を対向させることができる。
【0037】
本実施形態に係る針キャップ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用について説明する。
【0038】
血液バッグシステム16の採血針14は、
図1に示すように、針キャップ10により針本体20を覆った状態で製品提供される。針キャップ10と採血針14の装着状態で、レンズ部60は、針本体20の刃面26(針先24)に対向している。これによりレンズ部60は、ユーザに対して刃面26を拡大して視認させることができる。
【0039】
具体的には、
図3Aに示すように、採血針14と針キャップ10を分離した状態(装着前、装着後)では、採血針14の針先24が細く形成されていることで、例えば、遠視等の症状を有するユーザは針先24を視認し難い。
【0040】
これに対して、
図2及び
図3Bに示すように、針キャップ10と採血針14の装着状態では、刃面26(針先24)からの光がレンズ部60において屈折して透過することで、拡大した刃面26の結像を表面60aに視覚化させる。これにより遠視等の症状を有するユーザでも、針先24の刃面26の向きを容易に認識することが可能となる。その結果、ユーザは刃面26の向きを認識した状態で、採血針14から針キャップ10を取り外して、そのままの把持形態で穿刺対象に穿刺を行うことができる。
【0041】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、レンズ部60は、筒体50と別材料(例えば、透明度が高い材料)により構成され、適宜の接合手段により筒体50に接合される構成でもよい。
【0042】
上記の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について、以下に記載する。
【0043】
本発明の一態様は、針12の針先24を覆う筒体50を有する針キャップ10であって、筒体50は、針先24に対向する位置に当該針先24を拡大して使用者に視認可能とするレンズ部60を有する。
【0044】
上記によれば、針キャップ10は、レンズ部60を筒体50に有するという簡単な構成によって、レンズ部60を介して拡大した針先24をユーザに容易に視認させることができる。従って、ユーザは、針12の穿刺を行う際に針ハブ30を保持した状態でも、刃面26の向きを含めた針先24の状態を良好に確認することができる。
【0045】
また、レンズ部60は、筒体50に一体成形されている。これにより、針キャップ10は、レンズ部60を筒体50に設けた構成でも製造コストを抑えることができる。
【0046】
また、レンズ部60は、筒体50の外周面から外側に突出し表面60aが半球形状を呈する凸メニスカスレンズを構成している。これにより、ユーザは、レンズ部60を見た際に、充分に拡大した針先24を認識することができる。
【0047】
また、レンズ部60は、針先24のベベル方向を視認可能とする。これにより針キャップ10の使用者は、針先24のベベル方向を容易に認識して、針12を穿刺することができる。
【0048】
また、針先24は、針12の軸方向に対して傾斜する刃面26を有し、レンズ部60は、刃面26に対向する周方向位置に配置されている。これにより、針キャップ10は、レンズ部60を介して刃面26の向きをユーザに認識させることができ、より使い勝手が向上する。
【0049】
また、針12は、針先24を先端に有する針本体20と、針本体20を保持する針ハブ30とを有し、筒体50と針ハブ30とは、レンズ部60と刃面26とが対向する位置で相互の周方向位置を規定する周方向位置決め機構62を有する。これにより、針キャップ10のレンズ部60と刃面26とを一層確実に対向させることができる。
【0050】
また、筒体50と針ハブ30とは、当該針ハブ30に対する当該筒体50の装着基端位置を規定する軸方向位置決め機構38を有する。これにより、軸方向位置決め機構38は、針キャップ10を針ハブ30に装着した際に、レンズ部60と針先24の軸方向位置を簡単に合わせることができる。
【0051】
また、レンズ部60は、筒体50の当該レンズ部60が設けられる箇所の周長に対して1/4以上の範囲に形成されている。これにより、レンズ部60は、針先24を充分に大きく視認させることができる。
【0052】
また、筒体50は、当該筒体50を補強する複数のリブ54aを有すると共にユーザが把持するための被把持部54を備え、レンズ部60は、被把持部54から筒体50の軸方向にオフセットした位置に設けられる。これにより、針キャップ10は、ユーザが被把持部54を把持してもレンズ部60が見えなくなることを抑制することができる。
【0053】
また、レンズ部60は、筒体50よりも透明度が大きい。これによりレンズ部60は、一層確実に針先24を視認させることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…針キャップ 12…針
20…針本体 24…針先
26…刃面 30…針ハブ
38…軸方向位置決め機構 50…筒体
54…被把持部 54a…リブ
56a…壁部 60…レンズ部
62…周方向位置決め機構