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  • 特許-乗物用シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
B60N2/68
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019196623
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070356
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】追川 亮太
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】手塚 亨
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105050(JP,A)
【文献】特開2000-153728(JP,A)
【文献】特開2014-223236(JP,A)
【文献】特開2016-094100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの座面に沿って配置される座面フレームと、
前記座面に対して傾いて配置される脚フレームと、
前記座面フレームと前記脚フレームとの間に架け渡される補強フレームと、
を備え、
前記座面フレームは、前記シートクッションの前部に配置されるフロントフレームと、前記シートクッションの後部に配置されるバックフレームと、前記フロントフレームと前記バックフレームとの間に架け渡された複数の梁フレームと、を有し、
1つの着座エリアには、前記梁フレームが一対設けられ、
前記補強フレームは、長手方向に垂直な断面が閉断面であるフレーム材によって形成され、
前記脚フレームは、一対の脚部と、前記一対の脚部を連結している連結部と、を有し、
前記連結部が車両フロアに固定され、
前記一対の脚部のそれぞれと前記一対の梁フレームのそれぞれとの間に、前記補強フレームが架け渡されている乗物用シート。
【請求項2】
請求項1記載の乗物用シートであって、
前記補強フレームは、
前記梁フレームに接合される座面側接合部と、
前記脚部に接合される脚側接合部と、
前記座面側接合部と前記脚側接合部との間の中間部と、
を有し、
前記座面側接合部は、前記中間部に対して曲げられ、前記梁フレームに沿って延びており、
前記脚側接合部は、前記中間部に対して曲げられ、前記脚部に沿って延びており、
前記一対の梁フレームの間隔は、前記一対の脚部の間隔よりも小さい乗物用シート。
【請求項3】
請求項2記載の乗物用シートであって、
前記座面側接合部及び前記中間部が配置される第1平面と、前記脚側接合部及び前記中間部が配置される第2平面と、は互いに異なる乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された車両用シートでは、シートクッションのフレームが左右一対の側部フレームを備える。側部フレームは、シートクッションの座面に沿って配置される上部フレームと、座面に対して傾く上下方向に延びる前部フレーム及び後部フレームを有する。上部フレーム、前部フレーム、後部フレームは、いずれも管材によって形成されている。そして、補強プレートが、上部フレームと後部フレームとに跨って固着されており、上部フレームと後部フレームとの間の隅部の変形が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-283885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両用シートでは、上部フレームと下部フレームとの間の隅部が、補強プレートによって補強されている。補強プレートは板材からなり、典型的にはプレス加工によって成形される。しかし、板材の成形には金型が必要となり、金型の作製にコストがかかる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、シートクッションのフレームの補強と、コストとの低減とを両立可能な乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の乗物用シートは、シートクッションの座面に沿って配置される座面フレームと、前記座面に対して傾いて配置される脚フレームと、前記座面フレームと前記脚フレームとの間に架け渡される補強フレームと、を備え、前記補強フレームは、長手方向に垂直な断面が閉断面であるフレーム材によって形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートクッションのフレームの補強と、コストの低減とを両立可能な乗物用シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態を説明するための、乗物用シートの一例を示す斜視図である。
図2図1の乗物用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
図3図2のシートクッションフレームの下側からみた斜視図である。
図4図2のシートクッションフレームが備える補強フレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、乗物用シートの一例を示す。
【0010】
乗物用シート1は、自動車などの車両(乗物)に設置される乗物用シートである。シート1は、複数の乗員が横並びに着座可能なベンチシートであるが、一人用のいわゆるキャプテンシートであってもよい。シート1は、シート1に着座した乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、乗員の腰部及び背部を支持するシートバック3とを備える。
【0011】
シートクッション2は、シートクッションフレーム10を有し、ウレタンフォーム等の発泡材からなるクッションパッド(不図示)がシートクッションフレーム10に被せられる。そして、シートクッションフレーム10及びクッションパッドは、皮革、織物及び編物等の表皮材からなるトリムカバー(不図示)によって覆われる。
【0012】
図2から図4はシートクッションフレーム10を示す。
【0013】
シートクッションフレーム10は、座面フレーム11と、脚フレーム12とを備える。
【0014】
座面フレーム11は、シートクッション2の前部に配置されるフロントフレーム20と、シートクッション2の左右の側部に配置される一対のサイドフレーム21と、シートクッション2の後部に配置されるバックフレーム22とを有し、シートクッション2の座面に沿って配置される。
【0015】
フロントフレーム20、一対のサイドフレーム21、及びバックフレーム22は、いずれも、金属材料からなる管材によって形成されている。フロントフレーム20と一対のサイドフレーム21とは一本の管材からなり、管材が曲げられることによって一体に形成されている。そして、バックフレーム22は、一対のサイドフレーム21の間に架け渡され、サイドフレーム21それぞれに接合されている。接合方法は、例えば溶接、ろう付け等である。
【0016】
ここで、一方のサイドフレーム21に接合されているバックフレーム22の第1端部22aは、サイドフレーム21に対し、第1端部22aの軸方向に突き当てられている。他方のサイドフレーム21に接合されているバックフレーム22の第2端部22bは、扁平に潰されており、サイドフレーム21の上に載せられている。一本の管材が曲げられてなるフロントフレーム20及び一対のサイドフレーム21の成形誤差があった場合にも、扁平に潰された第2端部22bが、サイドフレーム21の上で第2端部22bの軸方向に適宜ずれることによって成形誤差が吸収される。これにより、成形誤差にかかわらず、バックフレーム22が一対のサイドフレーム21に確実に接合される。
【0017】
座面フレーム11は、複数の梁フレーム23をさらに有する。梁フレーム23は、フロントフレーム20とバックフレーム22との間に架け渡され、フロントフレーム20及びバックフレーム22それぞれに接合されている。梁フレーム23は、シート1に着座した乗員の真下に配置される。ベンチシートであるシート1は、シート幅方向に並ぶ二つの着座エリアA1,A2を有し、着座エリアA1,A2毎に一対の梁フレーム23が設けられている。
【0018】
梁フレーム23は、金属材料からなる管材によって形成されている。フロントフレーム20に接合されている梁フレーム23の第1端部23aは、フロントフレーム20に対し、第1端部23aの軸方向に突き当てられている。一方、バックフレーム22に接合されている梁フレーム23の第2端部23bは、扁平に潰されており、バックフレーム22の上に載せられている。これにより、フロントフレーム20、一対のサイドフレーム21、及びバックフレーム22の成形誤差にかかわらず、梁フレーム23がフロントフレーム20及びバックフレーム22に確実に接合される。なお、梁フレーム23は、管材に限定されず、板材によって形成されてもよい。
【0019】
脚フレーム12は、シートクッション2の前部に配置される前脚フレーム30と、シートクッション2の後部に配置される後脚フレーム31とを有する。前脚フレーム30及び後脚フレーム31は、シート1の着座エリアA1,A2毎に設けられている。
【0020】
前脚フレーム30は、一対の脚部32と、一対の脚部32を連結している連結部33とを有する。一対の脚部32と連結部33とは一本の管材からなり、管材が曲げられることによって略U字状に一体に形成されている。一対の脚部32それぞれの端部がフロントフレーム20に接合されており、一対の脚部32は、フロントフレーム20から下方に延び、シートクッション2の座面に対して傾いて配置されている。
【0021】
後脚フレーム31は、一対の脚部35と、一対の脚部35を連結している連結部36とを有する。一対の脚部35と連結部36とは一本の管材からなり、管材が曲げられることによって略U字状に一体に形成されている。一対の脚部35それぞれの端部がバックフレーム22に接合されており、一対の脚部35は、バックフレーム22から下方に延び、シートクッション2の座面に対して傾いて配置されている。
【0022】
前脚フレーム30の連結部33には、車両フロアに固定されるフロア固定部34が設けられている。また、座面フレーム11の一対のサイドフレーム21それぞれの後端部にもフロア固定部24が設けられている。これらのフロア固定部24,34が、ねじ止め等によって車両フロアに固定され、シート1は車両に設置される。後脚フレーム31にはフロア固定部が設けられていないが、前脚フレーム30と同様に、後脚フレーム31の連結部36にもフロア固定部が設けられてもよい。
【0023】
シートクッションフレーム10は、座面フレーム11と脚フレーム12との間に架け渡される補強フレーム13をさらに備える。この補強フレーム13は、長手方向に垂直な断面が閉断面であるフレーム材、換言すれば管材によって形成されている。管材の材料は、塑性加工によって成形可能な材料であり、例えば金属材料であるが、熱可塑性樹脂でもよい。
【0024】
本例では、補強フレーム13は、座面フレーム11の梁フレーム23と前脚フレーム30の脚部32との間に架け渡されている。梁フレーム23は、シートクッション2の座面に沿ってフロントフレーム20からシート後方に延びており、一方、脚部32は、シートクッション2の座面に対して傾いてフロントフレーム20からシート下方に延びている。すなわち、梁フレーム23と脚部32とは互いに異なる方向に延びている。
【0025】
補強フレーム13は、梁フレーム23(座面フレーム11)に接合される座面側接合部40と、脚部32(脚フレーム12)に接合される脚側接合部41と、座面側接合部40と脚側接合部41との間の中間部42とを有する。座面側接合部40は、中間部42に対して曲げられており、梁フレーム23に沿って延びている。また、脚側接合部41は、中間部42に対して曲げられており、脚部32に沿って延びている。すなわち、座面側接合部40と脚側接合部41とは、梁フレーム23と脚部32と同様に、互いに異なる方向に延びている。
【0026】
さらに、シート1の一つの着座エリアA1(又はA2)に含まれる一対の梁フレーム23の間隔W1は、一対の脚部32の間隔W2より小さく、梁フレーム23と脚部32とは、フロントフレーム20の長手方向にずれて配置されている。したがって、座面側接合部40と脚側接合部41もまた、フロントフレーム20の長手方向にずれて配置されており、座面側接合部40、脚側接合部41、及び中間部42は同一平面上に存在していない。すなわち、図4に示すように、座面側接合部40と中間部42とが配置される第1平面S1と、脚側接合部41と中間部42とが配置される第2平面S2とは互いに異なっており、補強フレーム13は捩じれている。
【0027】
上述した補強フレーム13は、管材の曲げ加工によって形成される。管材の曲げ加工に金型は不要であり、曲げ角度、曲げ方向等の組み合わせに基づいて管材は種々の形状に成形され得る。これにより、互いに異なる方向に延びる座面側接合部40と脚側接合部41とを有する補強フレーム13も低コストで容易に形成できる。特に、座面側接合部40と中間部42とが配置される第1平面S1と、脚側接合部41と中間部42とが配置される第2平面S2とが互いに異なる捩じれた補強フレーム13も低コストで容易に形成できる。曲げ加工の観点から、管材の断面形状は、好ましくは円形状である。
【0028】
さらに、座面側接合部40が梁フレーム23に沿って延びていることにより、補強フレーム13と梁フレーム23との接合面積が拡大され、両者の接合強度が高まる。また、脚側接合部41が脚部32に沿って延びていることにより、補強フレーム13と脚部32との接合面積が拡大され、両者の接合強度が高まる。
【0029】
ここまで、自動車等の車両に搭載されるシート1を例にして本発明を説明したが、本発明は、船舶や航空機といった車両以外の乗物用シートにも適用可能である。
【0030】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された乗物用シートは、シートクッションの座面に沿って配置される座面フレームと、前記座面に対して傾いて配置される脚フレームと、前記座面フレームと前記脚フレームとの間に架け渡される補強フレームと、を備え、前記補強フレームは、長手方向に垂直な断面が閉断面であるフレーム材によって形成されている。
【0031】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記補強フレームが、前記座面フレームに接合される座面側接合部と、前記脚フレームに接合される脚側接合部と、前記座面側接合部と前記脚側接合部との間の中間部と、を有し、前記座面側接合部は、前記中間部に対して曲げられ、前記座面フレームに沿って延びており、前記脚側接合部は、前記中間部に対して曲げられ、前記脚フレームに沿って延びている。
【0032】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記座面側接合部及び前記中間部が配置される第1平面と、前記脚側接合部及び前記中間部が配置される第2平面と、が互いに異なる。
【符号の説明】
【0033】
1 乗物用シート
2 シートクッション
3 シートバック
10 シートクッションフレーム
11 座面フレーム
12 脚フレーム
13 補強フレーム
20 フロントフレーム
21 サイドフレーム
22 バックフレーム
22a 第1端部
22b 第2端部
23 梁フレーム
23a 第1端部
23b 第2端部
24 フロア固定部
30 前脚フレーム
31 後脚フレーム
32 脚部
33 連結部
34 フロア固定部
35 脚部
36 連結部
40 座面側接合部
41 脚側接合部
42 中間部
S1 第1平面
S2 第2平面
図1
図2
図3
図4