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特許7366693パイルの搬送時刻算出プログラム、及びパイルの自動搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】パイルの搬送時刻算出プログラム、及びパイルの自動搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
B41F33/00 200
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019200667
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021074889
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西口 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷本 裕子
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-038316(JP,A)
【文献】特開平11-078180(JP,A)
【文献】特開2007-144699(JP,A)
【文献】特開平05-181870(JP,A)
【文献】特開2016-163987(JP,A)
【文献】特開平10-186963(JP,A)
【文献】特表2010-527822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機に枚葉紙の印刷を実行させるための印刷命令を実行対象として選択する印刷準備処理と、前記印刷準備処理で選択した前記印刷命令に基づいて印刷処理を実行する印刷実行処理と、を実行するように構成されている前記印刷機へのパイルの搬送時刻を算出すべく、
コンピューターを、
前記印刷準備処理で選択され且つ前記印刷実行処理による前記印刷処理が実行される前の待機状態である前記印刷命令に対して、前記印刷実行処理により実行された前記印刷処理の完了後における前記パイルの搬送作業の要否を確認し、
前記搬送作業が必要である場合に、前記待機状態の前記印刷命令に含まれる予約枚数Nrと、前記印刷命令による印刷の開始後に印刷された枚葉紙の印刷済枚数Npと、前記印刷機の印刷速度V1と、を取得し、
下式(1)により前記印刷命令による印刷処理が終了する時刻を、複数の枚葉紙が積み重ねられてなるパイルの前記印刷機に対する搬送が必要となる搬送予定時刻Tcとして算出する搬送時刻算出手段として機能させる、
パイルの搬送時刻算出プログラム。
【数1】
【請求項2】
実行中の前記印刷処理が停止したときに、前記搬送時刻算出手段に前記搬送予定時刻Tcを再度算出させる、
請求項1に記載のパイルの搬送時刻算出プログラム。
【請求項3】
前記印刷機の給紙部に給紙可能な前記枚葉紙が無くなったとき、又は前記印刷機の排紙部に排出された前記枚葉紙の枚数が上限に達したときに、前記搬送時刻算出手段に前記搬送予定時刻Tcを再度算出させる、
請求項2に記載のパイルの搬送時刻算出プログラム。
【請求項4】
前記印刷処理を実行している状態で前記印刷命令の内容が変更されたときに、前記搬送時刻算出手段に前記搬送予定時刻Tcを再度算出させる、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のパイルの搬送時刻算出プログラム。
【請求項5】
印刷機に枚葉紙の印刷を実行させるための印刷命令を実行対象として選択する印刷準備処理と、前記印刷準備処理で選択した前記印刷命令に基づいて印刷処理を実行する印刷実行処理と、を実行するように構成されている前記印刷機へのパイルの搬送時刻を算出すべく、
自走可能であり且つ複数の枚葉紙が積み重ねられてなるパイルを印刷機に対して搬送するように構成された無人搬送車と、
前記無人搬送車の駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記印刷準備処理で選択され且つ前記印刷実行処理による印刷処理が実行される前の待機状態である前記印刷命令に対して、前記印刷実行処理により実行された前記印刷処理の完了後における前記パイルの搬送作業の要否を確認し、
前記搬送作業が必要である場合に、前記待機状態前記印刷命令に含まれる予約枚数Nrと、前記印刷命令による印刷の開始後に印刷された枚葉紙の印刷済枚数Npと、前記印刷機の印刷速度V1と、を取得したうえで、下式(2)により前記印刷命令による印刷処理が終了する時刻Tcをパイルの搬送が必要となる搬送予定時刻として算出する搬送時刻算出手段と、
前記搬送時刻算出手段により算出した前記搬送予定時刻に前記印刷機に到着するように移動をさせる移動命令を前記無人搬送車に送信する命令送信手段と、有する、
パイルの自動搬送システム。
【数2】
【請求項6】
前記印刷命令に前記印刷機の給紙部に供給されている前記パイルの枚葉紙の仕様を変更する旨を示す仕様変更情報が設定されている場合、前記搬送時刻算出手段で前記搬送予定時刻を算出する処理と、前記命令送信手段から前記無人搬送車に前記移動命令を送信する処理とを実行するように構成されていている、
請求項5に記載のパイルの自動搬送システム。
【請求項7】
前記搬送時刻算出手段は、実行中の前記印刷処理が停止した状態を検知したときに前記搬送予定時刻Tcを再度算出し、
前記命令送信手段は、再度算出された前記搬送予定時刻Tcに基づいて前記無人搬送車に前記移動命令を再送信するように構成される、
請求項5又は6に記載のパイルの自動搬送システム。
【請求項8】
前記搬送時刻算出手段は、前記印刷機の給紙部に給紙可能な前記枚葉紙がなくなった状態、又は前記印刷機の排紙部に排出された前記枚葉紙の枚数が上限に達した状態を検知したときに前記搬送予定時刻Tcを再度算出する、
請求項7に記載のパイルの自動搬送システム。
【請求項9】
前記搬送時刻算出手段は、前記印刷処理を実行している状態で前記印刷命令の内容が変更された状態を検知したときに前記搬送予定時刻Tcを再度算出する、
請求項7又は8に記載のパイルの自動搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用の枚葉紙を積み重ねたパイルの搬送が必要となる時刻を算出するパイルの搬送時刻算出プログラム、及び該パイルを自動的に搬送するパイルの自動搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイルの搬送作業を自動的に行うためのシステムが知られており、例えば、特許文献1には、枚葉紙の表面を印刷する第1の凹版印刷機と、枚葉紙の裏面を印刷する第2の凹版印刷機との間でパイルを搬送する無人搬送車を備えた搬送システムが開示されている。
【0003】
かかる搬送システムでは、無人搬送車が第1の凹版印刷機の枚葉紙排出ステーションからパイルを取り出す動作と、第1の凹版印刷機の枚葉紙排出ステーションから取り出したパイルを第2の凹版印刷機の枚葉紙供給ステーションまで搬送する動作とを自動的に繰り返して行うように構成されているため、人手によらず第1の凹版印刷機から第2の凹版印刷機へのパイルの搬送を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-527822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の搬送システムでは、無人搬送車が第1の凹版印刷機の枚葉紙排出ステーション又は第2の凹版印刷機の枚葉紙供給ステーションに到着するタイミングと、パイルの搬送作業、具体的には、第1の凹版印刷機の枚葉紙排出ステーションからパイルを取り出す作業や、第2の凹版印刷機の枚葉紙供給ステーションにパイルを供給する作業が必要となるタイミングとがずれることがある。
【0006】
そのため、上記従来の搬送システムでは、搬送作業が必要になったときに無人搬送車が所定の位置に到着していない場合、無人搬送車による搬送作業が滞ることがある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、パイルの搬送を効率よく行えるようにするパイルの搬送時刻算出プログラム、及びパイルの自動搬送システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパイルの搬送時刻算出プログラムは、
コンピューターを、
印刷機に枚葉紙の印刷を実行させるための印刷命令に含まれる予約枚数Nrと、前記印刷命令による印刷の開始後に印刷された枚葉紙の印刷済枚数Npと、前記印刷機の印刷速度V1と、を取得し、
下式(1)により前記印刷命令による印刷処理が終了する時刻を、複数の枚葉紙が積み重ねられてなるパイルの前記印刷機に対する搬送が必要となる搬送予定時刻Tcとして算出する搬送時刻算出手段として機能させる。
【数1】
【0009】
上記構成のパイルの搬送時刻算出プログラムによれば、印刷処理が終了する時刻(搬送予定時刻)を算出することができるため、搬送予定時刻をパイルの搬送を行う作業者や無人搬送車に知らせれば、印刷処理の合間の時間を利用してパイルの搬送を行うことができる。
【0010】
従って、前記パイルの搬送時刻算出プログラムは、パイルの搬送に利用できる時間を適切に把握できるようにすることによって、作業者や無人搬送車がパイルの搬送を円滑に行えるようにすることができる。
【0011】
本発明のパイルの搬送時刻算出プログラムは、
実行中の前記印刷処理が停止したときに、前記搬送時刻算出手段に前記搬送予定時刻Tcを再度算出させる、ように構成されていてもよい。
【0012】
実行中の印刷処理が停止すると、印刷処理の終了時刻が当初に搬送時刻算出手段で算出した搬送予定時刻よりも遅れることになるが、上記構成のパイルの搬送時刻算出プログラムでは、実行中の印刷処理が停止した場合は搬送時刻算出手段で搬送予定時刻を算出し直すため、印刷処理の終了時刻を正しく把握することができる。
【0013】
本発明のパイルの搬送時刻算出プログラムは、
前記印刷機の給紙部に給紙可能な前記枚葉紙が無くなったとき、又は前記印刷機の排紙部に排出された前記枚葉紙の枚数が上限に達したときに、前記搬送時刻算出手段に前記搬送予定時刻Tcを再度算出させる、ように構成されていてもよい。
【0014】
給紙部に給紙可能な枚葉紙が無くなった場合や、排紙部内の枚葉紙の枚数が上限に達した場合、印刷処理の途中で給紙部への枚葉紙の補給や、排紙部内の枚葉紙の撤去が行われる。この間、印刷処理が停止した状態が続くため、印刷処理の終了時刻が当初に搬送時刻算出手段で算出した搬送予定時刻よりも遅れることになるが、上記構成のパイルの搬送時刻算出プログラムでは、実行中の前記印刷処理が停止した場合は搬送時刻算出手段で搬送予定時刻を再度算出するため、印刷処理の終了時刻を正しく把握することができる。
【0015】
本発明のパイルの搬送時刻算出プログラムは、
前記印刷処理を実行している状態で前記印刷命令の内容が変更されたときに、前記搬送時刻算出手段に前記搬送予定時刻Tcを再度算出させる、ようにしてもよい。
【0016】
印刷処理の実行中に印刷命令が変更されると、これに伴い、印刷処理の完了時刻が変わることがあるが、上記構成のパイルの搬送時刻算出プログラムでは、印刷命令が変更された場合、搬送時刻算出手段で搬送予定時刻を算出し直すため、印刷処理の終了時刻を正しく把握することができる。
【0017】
本発明のパイルの自動搬送システムは、
自走可能であり且つ複数の枚葉紙が積み重ねられてなるパイルを印刷機に対して搬送するように構成された無人搬送車と、
前記無人搬送車の駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
印刷機に枚葉紙の印刷を実行させるための印刷命令に含まれる予約枚数Nrと、前記印刷命令による印刷の開始後に印刷された枚葉紙の印刷済枚数Npと、前記印刷機の印刷速度V1と、を取得したうえで、下式(2)により前記印刷命令による印刷処理が終了する時刻Tcをパイルの搬送が必要となる搬送予定時刻として算出する搬送時刻算出手段と、
前記搬送時刻算出手段により算出した前記搬送予定時刻に前記印刷機に到着するように移動をさせる移動命令を前記無人搬送車に送信する命令送信手段と、有する。
【数2】
【0018】
上記構成のパイルの自動搬送システムによれば、印刷処理が終了する時刻(搬送予定時刻)を算出したうえで、無人搬送車に対して搬送予定時刻に印刷機の場所に到着するように移動命令を送信するため、印刷処理の合間の時間(パイルの搬送に利用できる時間)を利用してパイルの搬送を行うことで、パイルの搬送を円滑に行うことができる。
【0019】
本発明のパイルの自動搬送システムは、
前記印刷命令に前記印刷機の給紙部に供給されている前記パイルの枚葉紙の仕様を変更する旨を示す仕様変更情報が設定されている場合、前記搬送時刻算出手段で前記搬送予定時刻を算出する処理と、前記命令送信手段から前記無人搬送車に前記移動命令を送信する処理とを実行するように構成されていてもよい。
【0020】
印刷終了後に枚葉紙の仕様を変更する場合は給紙部や排紙部のパイルの搬送が必要となるが、上記構成のパイルの自動搬送システムでは、印刷の終了時刻に合わせて無人搬送車を印刷機の場所に移動させることでパイルの搬送を円滑に行うことができる。
【0021】
本発明のパイルの自動搬送システムにおいて、
前記搬送時刻算出手段は、実行中の前記印刷処理が停止した状態を検知したときに前記搬送予定時刻Tcを再度算出し、
前記命令送信手段は、再度算出された前記搬送予定時刻Tcに基づいて前記無人搬送車に前記移動命令を再送信するように構成されていてもよい。
【0022】
実行中の印刷処理が停止すると、印刷処理の終了時刻が当初に搬送時刻算出手段で算出した搬送予定時刻よりも遅れることになるが、上記構成のパイルの自動搬送システムでは、実行中の印刷処理が停止した場合は搬送時刻算出手段で搬送予定時刻を再度算出し、印刷処理の終了時刻に合わせて無人搬送車を適切に移動させることができる。
【0023】
本発明のパイルの自動搬送システムにおいて、
前記搬送時刻算出手段は、前記印刷機の給紙部に給紙可能な前記枚葉紙がなくなった状態、又は前記印刷機の排紙部に排出された前記枚葉紙の枚数が上限に達した状態を検知したときに前記搬送予定時刻Tcを再度算出するように構成されていてもよい。
【0024】
給紙部に給紙可能な枚葉紙が無くなった場合や、排紙部内の枚葉紙の枚数が上限に達した場合は、上述のように印刷処理が停止した状態が続くため、印刷処理の終了時刻が当初に搬送時刻算出手段で算出した搬送予定時刻よりも遅れることになるが、上記構成のパイルの自動搬送システムでは、実行中の前記印刷処理が停止した場合は搬送時刻算出手段で搬送予定時刻を再度算出し、印刷処理の終了時刻に合わせて無人搬送車を適切に移動させることができる。
【0025】
本発明のパイルの自動搬送システムにおいて、
前記搬送時刻算出手段は、前記印刷処理を実行している状態で前記印刷命令の内容が変更された状態を検知したときに前記搬送予定時刻Tcを再度算出する、ように構成されていてもよい。
【0026】
印刷処理の実行中に印刷命令が変更されると、これに伴い、印刷処理の完了時刻が変わることがあるが、上記構成のパイルの搬送時刻算出プログラムでは、印刷命令が変更された場合、搬送時刻算出手段で搬送予定時刻を再度算出し、印刷処理の終了時刻に合わせて無人搬送車を適切に移動させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明のパイルの搬送時刻算出プログラム、及びパイルの自動搬送システムによれば、パイルの搬送に利用できる時刻を正しく把握できるようにすることによって、パイルの搬送を円滑に行えるようになるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るパイルの自動搬送システムの概要図である。
図2図2は、同実施形態に係るパイルの自動搬送システムのブロック図である。
図3図3は、同実施形態に係るパイルの自動搬送システムにおいて用いられる情報のデータ構造の説明図であり、(a)は印刷命令のデータ構造の説明図であり、(b)は移動命令のデータ構造の説明図である。
図4図4は印刷制御部の説明図であり、(a)は3つの印刷命令を受信している状態の説明図、(b)は印刷命令が実行対象として選択された状態の説明図、(c)は実行対象として選択された印刷命令に基づいて印刷処理が実行されている状態の説明図、(d)は別の印刷命令を実行対象として選択した状態の説明図、(e)は実行対象として選択した別の印刷命令に基づいて印刷処理を実行している状態の説明図である。
図5図5は、同実施形態に係るパイルの自動搬送システムにおいて制御装置から無人搬送車に移動命令を送信する処理の説明図であり、(a)は現在時刻が搬送予定時刻前である場合を示し、(b)は現在時刻が搬送予定時刻後である場合を示す。
図6図6は、同実施形態に係るパイルの自動搬送システムにおける搬送予定時刻を算出する処理のフローチャートである。
図7図7は、同実施形態に係るパイルの自動搬送システムにおける無人搬送車に移動命令を送信する処理と、無人搬送車に搬送作業命令を送信する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係るパイルの自動搬送システムについて説明する。なお、パイルとは、枚葉紙を積み重ねて構成されたものであり、印刷機で印刷をする前の枚葉紙を積み重ねたパイルを給紙パイル、印刷機で印刷をした後の枚葉紙を積み重ねたパイルを排紙パイルと称する。
【0030】
図1に示すように、自動搬送システム1は、自走可能であり且つパイルPを搬送するように構成された無人搬送車2と、前記無人搬送車2の駆動を制御する制御装置3とを備えている。なお、制御装置3は、印刷機4とは別の装置であってもよいし、印刷機4に内蔵されていてもよい。
【0031】
ここで、印刷機4は、印刷前の枚葉紙を積み重ねた給紙パイルPiを配置する給紙部40と、給紙部40内に給紙可能な枚葉紙がない状態を検知するための給紙側検知部41と、印刷後の枚葉紙を積み重ねた排紙パイルPoが配置される排紙部42と、排紙部42に排出されている枚葉紙の数が上限に達した状態を検知するための排紙側検知部43と、印刷処理を実行するための印刷制御部44と、を有する。
【0032】
なお、給紙部40内に給紙可能な枚葉紙がない状態というのは、例えば、給紙部40内に全く枚葉紙がない状態のことであったり、給紙部40内に所定数以上の枚葉紙が残っている状態においてのみ給紙を行うように構成されている場合は、給紙部40内の枚葉紙の数が前記所定数を下回っている状態のことである。
【0033】
給紙側検知部41は、給紙部40内に給紙可能な枚葉紙がない状態を検知すると制御装置3に信号を出力するように構成されている。給紙側検知部41は、印刷処理の実行状態に関わらず信号を出力するように構成されており、例えば、印刷処理が終了している状態で給紙部40内に給紙可能な枚葉紙がない状態を検知した場合であっても制御装置3に信号を出力することが可能である。
【0034】
排紙側検知部43は、排紙部42に配置されている枚葉紙の数が上限(排紙部42に配置可能な枚葉紙の枚数の上限)に達した状態を検知すると制御装置3に信号を出力するように構成されている。排紙側検知部43も、印刷処理の実行状態に関わらず信号を出力するように構成されており、例えば、印刷処理が終了している状態で排紙部42内の枚葉紙の数が上限に達している状態を検知した場合であっても制御装置3に信号を出力することが可能である。
【0035】
このように、給紙側検知部41から出力される信号は給紙部40へのパイルPの搬送(運び込み)が必要であることを示す信号であり、排紙側検知部43から出力される信号は排紙部42のパイルPの搬送(運び出し)が必要であることを示す信号である。
【0036】
印刷制御部44は、枚葉紙の印刷を命令する情報である印刷命令に基づいて、枚葉紙(給紙パイルPiを構成する枚葉紙)の印刷(印刷処理と称する)を実行するように構成されている。なお、印刷命令は、例えば、印刷会社の基幹システムや印刷機4のオペレーターが所有するパソコン等の端末から印刷機4に入力されるようになっている。
【0037】
より具体的に説明すると、印刷制御部44は、受信している印刷命令を実行対象として選択する印刷準備処理と、印刷準備処理で選択した印刷命令に基づいて印刷処理を実行する印刷実行処理と、を実行するように構成されている。
【0038】
図3(a)に示すように、印刷命令D1には、印刷を行う枚葉紙の数(予約枚数)Nrと、印刷機4の印刷速度V1と、印刷の完了後におけるパイルP(給紙パイルPi及び排紙パイルPoの少なくとも何れか一方)の搬送作業の要否を示す搬送命令D10とが含まれている。
【0039】
搬送命令D10には、印刷処理に用いる枚葉紙の仕様を指定する仕様変更命令D100と、ユーザーにより任意に設定される指定命令であって、印刷処理の完了後における搬送作業の要否を示す指定命令D101とが含まれている。
【0040】
なお、枚葉紙の仕様とは、枚葉紙の厚み、サイズ、紙種(例えば、紙の材質)等のことであり、本実施形態の仕様変更命令D100には、変更後の枚葉紙の仕様として厚み、サイズ、紙種が設定されている。すなわち、仕様変更命令D100とは、印刷処理に用いる枚葉紙を別の仕様に変更するためにパイルPの搬送作業が必要となることを示す情報である。また、指定命令D101には、搬送作業が必要なパイルPとして給紙パイルPiか排紙パイルPoが設定される。
【0041】
印刷機4は、印刷命令D1に基づく印刷処理の実行を開始してから印刷を行った枚葉紙の数(印刷済枚数)を記憶し、さらに、印刷処理を完了した状態で印刷済枚数をリセットするように構成されている。
【0042】
なお、本実施形態では、印刷準備処理によって実行対象として選択される前の印刷命令D1の状態を予約状態と称する。図4(a)に示す例では、3つの印刷命令D1(図3では、それぞれの印刷命令にD1A,D1B,D1Cを付している)が予約状態となっている。
【0043】
印刷制御部44は、印刷準備処理で予約状態の印刷命令D1を実行対象として選択する。図4(b)に示す例では、3つの印刷命令D1A,D1B,D1Cのうち、最も先に受信した印刷命令D1Aを実行対象として選択している。実行対象として選択された印刷命令D1は、印刷実行処理の実行待ちの状態(以下、待機状態と称する)となる。なお、本実施形態では、3つの印刷命令D1A,D1B,D1Cのうち、最も先に受信した印刷命令D1Aから順番に実行対象として選択する場合を一例に挙げて印刷準備処理の説明をするが、印刷命令D1A、D1B、D1Cを実行対象として選択する順番はオペレータにより設定することも可能である。
【0044】
そして、印刷実行処理が実行されると、印刷準備処理で選択された印刷命令D1に基づいて印刷処理が実行される。図4(c)に示す例では、印刷準備処理で選択された印刷命令D1Aに基づいて印刷処理が実行されている。なお、本実施形態では、印刷処理が実行されている印刷命令D1の状態を実行状態と称する。
【0045】
印刷処理が完了した際、予約状態の印刷命令D1があれば、印刷準備処理が実行対象として印刷命令D1を選択し、かかる印刷命令D1に基づいて印刷実行処理が印刷処理を実行する。図4(d)及び図4(e)に示す例では、2つの予約状態の印刷命令D1B、D1Cのうち、先に受信した一方の印刷命令D1Bを印刷準備処理が実行対象として選択している。その後、印刷命令D1Bに基づいて印刷実行処理が印刷処理を実行する。
【0046】
図1に示すように、無人搬送車2は、いわゆるAGVであり、予め設定された移動経路に沿って自動的に移動するように構成されている。移動経路は、給紙部40、排紙部42、パイル置き場S等を通るように設定されている。また、無人搬送車2は、制御装置3と情報の送受信が可能であり、制御装置3から命令(後述する移動命令、及び搬送命令D10)を受信した場合は、該命令に基づいた動作(移動、搬送作業、情報の出力等)を行うように構成されている。
【0047】
図2に示すように、制御装置3は、印刷命令D1に基づく印刷処理の終了時刻をパイルPの搬送予定時刻(パイルPの搬送が必要となる時刻)として算出する搬送時刻算出手段30と、該搬送時刻算出手段30で算出した搬送予定時刻に基づいて無人搬送車2に移動命令を出力する移動命令手段31と、パイルPの運搬作業を実行するための搬送作業命令を無人搬送車2に出力する搬送命令手段32と、を有する。
【0048】
搬送時刻算出手段30は、待機状態の印刷命令D1の有無を判定する命令判定手段300と、命令判定手段300が待機状態の印刷命令D1があると判定した場合に、該印刷命令D1の搬送命令D10の内容を確認する搬送確認手段301と、搬送確認手段301による搬送命令D10の確認結果に応じて印刷処理の終了時刻を算出する処理を実行する印刷前算出手段302と、実行状態の印刷命令D1の有無を監視(判定)する監視手段303と、監視手段303の監視結果に応じて実行中の印刷処理の終了時刻を再度算出する処理を実行する再算出手段304と、を有する。
【0049】
命令判定手段300は、待機状態の印刷命令D1があると判定した場合は、搬送確認手段301を実行し、実行状態の印刷命令D1があると判定した場合は、監視手段303を実行するように構成されている。
【0050】
命令判定手段300が待機状態の印刷命令D1があると判定するのは、印刷制御部44が印刷準備処理を実行している状態で且つ印刷命令D1を選択している場合である。また、命令判定手段300が待機状態の印刷命令D1がないと判定するのは、印刷制御部44が印刷準備処理を実行していない場合か、印刷準備処理を実行しているが印刷命令D1が選択されていない場合である。
【0051】
そのため、搬送時刻算出手段30では、印刷制御部44が印刷処理を開始する前の状態であるときに搬送確認手段301による処理が実行されるように構成されている。
【0052】
搬送確認手段301は、仕様変更命令D100の内容を確認する仕様確認処理と、指定命令D101の内容を確認する指定確認処理と、を実行するように構成されている。
【0053】
仕様確認処理では、仕様変更命令D100に枚葉紙の仕様を示す情報(本実施形態では、枚葉紙の厚み、サイズ、紙種)が設定されているか否かを判定し、枚葉紙の仕様を示す情報が設定されていると判定した場合は印刷前算出手段302による実行に移り、枚葉紙の仕様を示す情報が設定されていないと判定した場合は指定確認処理を実行する。
【0054】
また、指定確認処理では、仕様変更命令D100に枚葉紙の仕様を示す情報が設定されていると判定した場合は、無人搬送車2の移動先を示す目的地情報に給紙部40又は排紙部42を設定する。なお、目的地情報には、給紙部40及び排紙部42の少なくとも何れか一方が設定されるように構成されていればよい。
【0055】
指定確認処理では、指定命令D101に給紙部40が設定されているか、排紙部42が設定されているか、給紙部40も排紙部42も設定されていないかを判定し、給紙部40若しくは排紙部42が設定されている場合は搬送時刻算出手段30による処理の実行に移り、給紙部40及び排紙部42が設定されていない場合は処理を終了する。
【0056】
また、指定確認処理では、指定命令D101に給紙部40が設定されていると判定した場合は目的地情報に給紙部40を設定し、指定命令D101に排紙部42が設定されていると判定した場合は目的地情報に排紙部42を設定する。
【0057】
印刷前算出手段302は、命令取得手段で取得した印刷命令D1に設定されている予約枚数Nrと、印刷済枚数Npと、印刷機4の印刷速度V1と、を取得する情報取得処理と、下式(3)により印刷命令D1による印刷処理が終了する時刻TをパイルPの搬送が必要となる搬送予定時刻として算出する算出処理とを実行するように構成されている。
【数3】
【0058】
また、印刷前算出手段302は、算出した搬送予定時刻Tcと目的地情報D20とを関連付けて移動命令D2を作成するように構成されている(図3(b)参照)。
【0059】
監視手段303は、実行状態の印刷命令D1の有無を判定する実行監視処理と、判定処理で実行状態の印刷命令D1があると判定した場合に、実行状態の印刷命令D1に基づく印刷処理が正常に行われているか否かを判定する異常監視処理とを実行するように構成されている。
【0060】
なお、異常監視処理では、給紙側検知部41か排紙側検知部43から信号が出力されていることを検知した場合に再算出手段304による処理が実行され、給紙側検知部41及び排紙側検知部43から信号が出力されていない場合は再算出手段304による処理を実行せずに処理を終了する。
【0061】
このように、監視手段303は、実行中の印刷処理が停止した場合に、再算出手段304が印刷処理を再開した時点を基準として搬送予定時刻Tcを再度算出するように構成されている。
【0062】
再算出手段304は、印刷前算出手段302と同様に予約枚数Nrと、印刷済枚数Npと、印刷機4の印刷速度V1と、を取得する情報取得処理と、上式(3)により印刷命令D1による印刷処理が終了する時刻を搬送予定時刻(新たな搬送予定時刻)Tcとして算出する算出処理とを実行するように構成されている。
【0063】
また、再算出手段304は、算出した搬送予定時刻Tcと目的地情報D20とを関連付けて移動命令D2を作成するように構成されている。
【0064】
移動命令手段31は、搬送予定時刻Tcに間に合うように印刷機4の元に到着できる移動の開始時刻を算出する移動開始時刻算出手段310と、移動開始時刻算出手段310で算出した移動の開始時刻と現在の時刻とに基づいて移動命令を出力する移動命令出力手段311と、を有する。
【0065】
移動開始時刻算出手段310は、例えば、移動命令D2の出力対象とする無人搬送車2の現在地から印刷機4までの距離Dと、無人搬送車2の移動速度V2とに基づいて、下式(4)により現在地から印刷機4までの移動時間Tmを算出し、該移動時間Tmと搬送予定時刻Tcとに基づいて下式(5)により移動の開始時刻Tsを算出するように構成されていればよい。
【数4】
【数5】
【0066】
移動命令手段31は、現在の時刻Tnと開始時刻Tsとを比較し、図5(a)に示すように、現在の時刻Tnが開始時刻Tsよりも前である場合は開始時刻Tsに合わせて移動命令を無人搬送車2に出力し、図5(b)に示すように、現在の時刻Tnが開始時刻Ts以後である場合は即座に移動命令を無人搬送車2に出力する。
【0067】
搬送命令手段32は、無人搬送車2が印刷機4の元に到着したか否かを判定する到着判定手段320と、到着判定手段320の判定結果に基づいて無人搬送車2に搬送作業の命令(搬送作業命令)を出力する搬送命令出力手段321と、を有する。
【0068】
到着判定手段320は、例えば、無人搬送車2の現在地と印刷機4の設置位置とを比較することで無人搬送車2が印刷機4の元に到着したか否かを判定すればよい。また、到着判定手段320は、搬送予定時刻Tcに合わせて無人搬送車2の現在地と印刷機4の設置位置との比較をしてもよいし、所定の時間ごとに無人搬送車2の現在地と印刷機4の設置位置との比較をしてもよい。
【0069】
搬送命令出力手段321は、給紙側検知部41又は排紙側検知部43から出力された信号を検出し、且つ印刷処理が完了している状態を検知したときに、無人搬送車2に搬送作業命令を出力するように構成されている。
【0070】
本実施形態のパイルの自動搬送システム1の構成は以上の通りである。続いて、パイルの自動搬送システム1の動作を説明する。
【0071】
図6に示すように、パイルの自動搬送システム1は、命令判定手段300が印刷制御部44で受信している印刷命令D1の中に待機状態のものがあるかを判定する(S1)。
【0072】
命令判定手段300が待機状態の印刷命令D1があると判定した場合は(S1でYes)、搬送確認手段301が搬送命令D10の内容を確認する。
【0073】
搬送確認手段301は、仕様確認処理により仕様変更命令D100の内容を確認し、仕様変更命令D100に枚葉紙の厚み、サイズ、紙種の何れかが設定されている場合(S2~S4の何れかでYes)、目的地情報D20に給紙部40若しくは排紙部42を設定し、印刷前算出手段302による搬送予定時刻Tcの算出処理に移る(S5)。
【0074】
一方で、仕様変更命令D100に枚葉紙の厚み、サイズ、紙種の何れも設定されていない場合は(S2~S4の全てがNo)、印刷前算出手段302を実行せずに指定確認処理による指定命令D101の内容確認の処理に移る。
【0075】
搬送確認手段301は、指定確認処理において指定命令D101に排紙部42が設定されていると判定した場合(S6でYes)は、目的地情報D20に排紙部42を設定し、さらに、印刷前算出手段302により搬送予定時刻Tcを算出する(S5)。また、指定確認処理において指定命令D101に排紙部42ではなく給紙部40が設定されていると判定した場合(S6でNo且つS7でYes)は、目的地情報D20に給紙部40を設定し、さらに、印刷前算出手段302により搬送予定時刻Tcを算出する(S5)。
【0076】
一方で、搬送確認手段301は、指定確認処理において指定命令D101に排紙部42も給紙部40も設定されていないと判定した場合(S6でNo且つS7でNo)は、印刷前算出手段302を実行せずに処理を終了する。
【0077】
そして、印刷前算出手段302は、搬送予定時刻Tcを算出した場合は、搬送予定時刻Tcと目的地情報D20とを関連付けて移動命令D2を作成する。
【0078】
続いて、制御装置3から無人搬送車2に移動命令D1を出力する場合は、図7に示すように、移動開始時刻算出手段310が、移動の開始時刻Tsを算出し(S8)、現在時刻Tnと移動の開始時刻Tsとを比較する(S9)。
【0079】
移動開始時刻算出手段310は、現在時刻Tnが移動の開始時刻Tsよりも前であると判定した場合(S9でNo)は、現在時刻Tnが開始時刻Tsに至った時点(S9でYes)で移動命令D1を無人搬送車2に出力する(S10)。
【0080】
一方で、移動開始時刻算出手段310は、現在時刻Tnが移動の開始時刻Tsよりも後であると判定した場合(S9でYes)は、即座に移動命令D1を無人搬送車2に出力する(S10)。
【0081】
そして、制御装置3から無人搬送車2に搬送作業命令を出力する場合は、到着判定手段320が無人搬送車2が印刷機4の元に到着したか否かを判定する(S11)
【0082】
到着判定手段320が無人搬送車2が印刷機4の元に到着したと判定し(S11でYes)、排紙側検知部43から信号が出力されている場合、又は給紙側検知部41から信号が出力されている場合(S12,S13の何れかでYes)は、搬送命令出力手段321が印刷処理の状態を確認し(S14)、印刷処理が完了している状態を検知したときに(S14でYes)、無人搬送車2に搬送作業命令を出力する(S15)。
【0083】
これにより、印刷機4の元に到着した無人搬送車2が給紙パイルPi又は排紙パイルPoに対する搬送作業を実行するようになっている。
【0084】
さらに、本実施形態に係るパイルの自動搬送システム1は、印刷命令D1に基づいて印刷処理を実行している間、該印刷処理が正常に実行されているかを監視し、印刷処理が中断された場合は再度搬送予定時刻Tcを算出し直すようになっている。
【0085】
より具体的に説明すると、図6に示すように、命令判定手段300が待機状態の印刷命令D1が無いと判定した場合(S1でNo)であっても、監視手段303が実行監視処理において実行状態の印刷命令D1があると判定した場合(S16でYes)は、監視手段303による異常監視処理が実行される。
【0086】
監視手段303は、実行監視処理において、排紙側検知部43か給紙側検知部41から信号が出力されていることを検知した場合(S17、S18の何れかでYes)は、目的地情報に給紙部40又は排紙部42を設定した後に、再算出手段304で搬送予定時刻を再度算出する(S19)。
【0087】
再算出手段304で搬送予定時刻Tcを新たに算出し、該搬送予定時刻Tcを含む印刷命令D1が作成された場合は、移動命令手段31により印刷命令D1を無人搬送車2に出力し、搬送命令出力手段321により搬送作業命令を無人搬送車2に出力することでパイルPの搬送作業が行われる。
【0088】
以上のように、本実施形態のパイルの自動搬送システム1は、印刷処理が終了する時刻(搬送予定時刻Tc)を算出したうえで、無人搬送車2に対して搬送予定時刻Tcに印刷機4の場所に到着するように移動命令D1を出力するため、印刷処理の合間の時間(パイルPの搬送に利用できる時間)を利用してパイルPの搬送を行うことで、パイルPの搬送を円滑に行うことができる。
【0089】
また、印刷終了後に枚葉紙の仕様を変更する場合は給紙部40や排紙部42のパイルPの搬送が必要となるが、上記構成のパイルの自動搬送システム1では、印刷の終了時刻に合わせて無人搬送車2を印刷機4の場所に移動させることでパイルPの搬送を円滑に行うことができる。
【0090】
さらに、実行中の印刷処理が停止する場合、より具体的には、給紙部40内に給紙可能な枚葉紙が無くなった場合や、排紙部42内の枚葉紙の枚数が上限に達した場合、給紙部40への枚葉紙の補給や、排紙部42内の枚葉紙の撤去が行われる間、印刷処理は停止した状態が続くため、印刷処理の終了時刻が搬送時刻算出手段30で算出した搬送予定時刻よりも遅れることになる。しかし、本実施形態のパイルの自動搬送システム1では、実行中の印刷処理が停止した場合は搬送時刻算出手段30で搬送予定時刻を算出し直すため、印刷処理の終了時刻を正しく把握したうえで、この時刻に合わせて無人搬送車2を適切に移動させることができる。
【0091】
また、制御装置3に搬送時刻算出手段30を実行させるためのパイルの搬送時刻算出プログラムにおいても、印刷処理が終了する時刻(搬送予定時刻)を算出することができるため、搬送予定時刻TcをパイルPの搬送を行う作業者や無人搬送車2に知らせれば、印刷処理の合間の時間を利用してパイルPの搬送を行うことができる。
【0092】
従って、前記パイルの搬送時刻算出プログラムは、パイルPの搬送に利用できる時間を適切に把握できるようにすることによって、作業者や無人搬送車2がパイルPの搬送を円滑に行えるようにすることができる。
【0093】
また、給紙部40内に給紙可能な枚葉紙が無くなったり、排紙部42内の枚葉紙の枚数が上限に達したりすると、印刷処理を続行できなくなるため、給紙部40への枚葉紙の補給や、排紙部42内の枚葉紙の撤去が行われる。この間、印刷処理は中断されるため、印刷処理が終了する時刻が搬送時刻算出手段30で算出した搬送予定時刻よりも遅れることになる。
【0094】
上記構成のパイルの搬送時刻算出プログラムでは、印刷処理が中断された場合は搬送時刻算出手段30で搬送予定時刻Tcを算出し直すため、印刷処理が終了する時刻を正しく把握することができる。
【0095】
なお、本発明のパイルの搬送時刻算出プログラム、及びパイルの自動搬送システム1は、上記一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0096】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、搬送予定時間Tcに合わせてパイルPの他に、印刷版等を無人搬送車2で搬送してもよい。
【0097】
上記実施形態において特に言及しなかったが、搬送時刻算出手段30は、制御装置3に導入されたプログラム(パイルの搬送時刻算出プログラム)により実行されるように構成されていればよい。また、命令取得手段、搬送判定手段、中断検知手段、命令出力手段も同様に、制御装置3に導入されたプログラムにより実行されるように構成されていればよい。
【0098】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、搬送時刻算出手段30は、搬送予定時刻Tcを時刻として算出されてもよいし、時間算出により実質的に時刻として算出するように構成されていてもよい。
【0099】
上記実施形態では、目的地情報に給紙部40又は排紙部42の何れか一方が設定される場合のみを例に挙げていたが、この構成に限定されない。例えば、目的地情報には給紙部40と排紙部42の両方が設定されていてもよい。但し、目的地情報に対して、給紙部40と排紙部42の何れかを優先して選択するための優先情報を関連付けて設定しておくことが好ましい。
【0100】
上記実施形態において、監視手段303は、給紙部40内に給紙可能な枚葉紙がない状態か、排紙部42に排出されている枚葉紙の数が上限に達した状態を実行中の印刷処理が停止した状態として検知するように構成されていたが、この構成に限定されない。監視手段303は、例えば、印刷機4の枚葉紙の搬送系に生じた異常(例えば、給紙部40の動作不良(給紙不良)や、印刷機4内での枚葉紙の搬送ミス、排紙部の動作不良(排紙不良)等))によって印刷処理が停止した状態を検知し、再算出手段304により搬送予定時刻Tcを再度算出するように構成されていてもよい。
【0101】
また、監視手段303は、作業者等が印刷機4の内部及び周辺の危険区域に進入したことを検知して印刷機4の稼働を停止させる安全装置が作動した状態、又は該安全装置の作動によって印刷処理が停止した状態を検知するようにしてもよい。
【0102】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、搬送時刻算出手段30の再算出手段304は、印刷処理が実行されている状態で印刷命令D1の内容(より具体的には、印刷枚数や、印刷速度等の印刷時間に影響を与える内容)が変更されたときに搬送予定時刻Tcを再度算出するように構成されていてもよい。
【0103】
印刷処理の実行中に印刷命令の内容が変更されると、印刷処理の完了時刻Tcが変わることがあるが、印刷命令が変更された場合も搬送時刻算出手段30で搬送予定時刻Tcを算出し直すようにすれば、印刷処理の終了時刻を正しく把握することができる。
【符号の説明】
【0104】
1…自動搬送システム、2…無人搬送車、3…制御装置、4…印刷機、30…搬送時刻算出手段、31…移動命令手段、32…搬送命令手段、40…給紙部、41…給紙側検知部、42…排紙部、43…排紙側検知部、44…印刷制御部、300…命令判定手段、301…搬送確認手段、302…印刷前算出手段、303…監視手段、304…再算出手段、310…移動開始時刻算出手段、311…移動命令出力手段、320…到着判定手段、321…搬送命令出力手段、D…距離、D1…印刷命令、D1…移動命令、D10…搬送命令、D100…仕様変更命令、D101…指定命令、D1A,D1B,D1C…印刷命令、D2…移動命令、D20…目的地情報、Np…印刷済枚数、Nr…予約枚数、P…パイル、Pi…給紙パイル、Po…排紙パイル、S…パイル置き場、Tc…搬送予定時刻、Tm…移動時間、Tn…現在時刻、Ts…開始時刻、V1…印刷速度、V2…移動速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7