IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェネンテック, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】抗JAGGED抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231016BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231016BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231016BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
【請求項の数】 27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019204815
(22)【出願日】2019-11-12
(62)【分割の表示】P 2018082543の分割
【原出願日】2013-08-13
(65)【公開番号】P2020048563
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2019-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】61/682,640
(32)【優先日】2012-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/784,332
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シーベル, クリスチャン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ヤン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】長井 啓子
【審判官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-078998(JP,A)
【文献】国際公開第03/076664(WO,A1)
【文献】国際公開第03/077848(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/063237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 16/00 - 16/46
A61K 39/00 - 39/44
A61P 35/00 - 35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Jagged1/2に結合する単離された抗体であって
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号127のアミノ酸配列を含むHVR-L3
含む、抗体。
【請求項2】
前記抗体は、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号125のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体は、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号126のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
抗体断片である、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号62のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号135のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
(a)配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、または(c)(a)に記載のVH配列および(b)に記載のVL配列を含む、請求項1または3に記載の抗体。
【請求項9】
配列番号17のVH配列を含む、請求項に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号26のVL配列を含む、請求項に記載の抗体。
【請求項11】
配列番号17のVH配列および配列番号26のVL配列を含む、抗体。
【請求項12】
完全長IgG1抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体は、Jagged1媒介性シグナル伝達のアンタゴニストである、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
前記抗体は、Jagged2媒介性シグナル伝達のアンタゴニストである、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項17】
抗体を産生する方法であって、前記抗体が産生されるように、請求項16に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体と、細胞傷害性薬剤とを含む、免疫複合体。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体と、薬剤的に許容される担体とを含む、医薬製剤。
【請求項20】
医薬として使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
がんを治療することにおいて使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
がん細胞の増殖を低減することにおいて使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
医薬の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項24】
前記医薬は、がんを治療するためのものである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記医薬は、がん細胞の増殖を低減するためのものである、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
有効量の、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体を含む、がんを有する個体を治療するための医薬
【請求項27】
前記がんは、乳がん、肺がん、脳がん、子宮頚がん、結腸がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、皮膚がん、B細胞悪性腫瘍、およびT細胞悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項26に記載の医薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、37 C.F.R.§ 1.53(b)(l)の下で出願された非仮出願であり、35 U.S.C.§ 119(e)の下で、2012年8月13日に出願された米国仮出願第61/682640号、および2013年3月14日に出願された米国仮出願第61/784332号に対する優先権を主張するものであり、これらの内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、配列表を含む。2013年8月9日に作成された、該ASCIIの複写は、P4959R1_WO_SeqList.txtと名付けられ、121,708バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、抗Jagged抗体およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
Notchシグナル伝達経路は、多種多様な細胞機能を調節する(Kopan et al.,Cell137,216‐233(2009))。細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む基本的な構造要素を共有する、4つのNotch受容体、すなわちNotch 1~4が、哺乳動物において特定されてきた。同様に、Notchの標準的リガンドは、ある特定の構造類似性を共有するが、Notchのいくつかの非古典的リガンドもまた特定されてきた(Kopan et al.,Cell137,216‐233(2009))。哺乳動物における5つの標準的リガンドは、Delta様1、Delta様3、Delta様4、Jagged1、およびJagged2である。Notch受容体の細胞外ドメインへのNotchリガンドの結合は、ADAM(ディスインテグリン・メタロプロテアーゼ)ファミリーのαセクレターゼによる細胞外S2部位におけるタンパク質分解切断で開始する、シグナル伝達カスケードを発動する。S2における切断に続いて、細胞内S3部位におけるγセクレターゼによるタンパク質分解切断が起こり、この切断が、Hes1およびHey等のNotch依存性転写因子を最終的に活性化する、細胞内ドメインおよび下流の事象の始動をもたらす。
【0005】
異常なNotch発現およびシグナル伝達は、がんを含むいくつかの疾患に関連付けられているので(Koch et al.,Cell.Mol.Life Sci.64,2746‐2762(2007))、Notchシグナル伝達の調節物質は、かかる疾患に対する可能性のある治療剤として調査されてきた。例えば、γセクレターゼ阻害剤が、臨床治験において、種々の悪性腫瘍の治療におけるそれらの有効性について試験されてきた(Shih et al,Cancer Res.67,1879‐1882(2007))。γセクレターゼ阻害剤は、S3における切断を防止し、それによって、Notch受容体を通じるシグナル伝達を防止する。しかしながら、γセクレターゼ阻害剤は、個々のNotchファミリーメンバーを識別せず、したがって、複数の受容体を通じるシグナル伝達を一度に阻害し、同様に、無関係の経路を通じるシグナル伝達も阻害する(Beel et al.,Cell.Mol.Life Sci.65,1311‐1334(2008))。結果的に、γセクレターゼ阻害剤の投与は、体重減少および腸杯細胞化生を特徴とする腸管毒性に関連付けられ、腸腺窩前駆細胞の増殖の維持および分泌細胞への分化の運命を阻止することによって細胞運命を決定することにおける、Notchの役割を示している(van Es et al.,Nature 435:959-963(2005)を参照されたい)。同様に、条件付きNotch遺伝子ノックアウト(Riccio et al.,EMBO Rep.9:377-383(2008))を介したまたはアンタゴニスト抗体阻害(米国特許出願公開第2010/0080808号)を介した、Notch1シグナル伝達およびNotch2シグナル伝達の両方の阻害もまた、腸杯細胞化生を引き起こす。
【0006】
複数のNotch受容体の阻害剤に関連付けられる重大な毒性のために、当該技術分野において、特定の受容体を通じるシグナル伝達の標的化された阻害に対する大きな必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、抗Jagged抗体およびそれを使用する方法を提供する。
【0008】
一態様において、本発明は、Jagged1に結合する単離抗体を提供する。一実施形態において、本抗体は、Jagged1媒介性シグナル伝達のアンタゴニストである。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号114のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号112のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号86のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号113のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号112のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、Jagged2に結合する単離抗体を提供する。一実施形態において、本抗体は、Jagged2媒介性シグナル伝達のアンタゴニストである。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号122のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号117のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号118のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号119のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号120のアミノ酸配列を
含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号121のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、Jagged1およびJagged2(Jagged1/2)に結合する単離抗体を提供する。一実施形態において、本抗体は、Jagged1/2媒介性シグナル伝達のアンタゴニストである。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号127のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号126のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0011】
別の実施形態において、本抗体は、(a)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号109のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号134のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号130のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号108のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号131のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号132のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号133のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号10
6のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号132のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。一実施形態において、本抗体は、(a)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f)配列番号132のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0012】
本発明のある特定の実施形態において、上の実施形態のうちのいずれかは、モノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、上の実施形態のうちのいずれかは、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体である。ある特定の実施形態において、上の実施形態のうちのいずれかは、抗体断片である。
【0013】
別の態様において、本発明は、配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR1、配列番号61のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号62のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号135のアミノ酸配列を含むFR4をさらに含む、上述の単離抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR1、配列番号136のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号57のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号35のアミノ酸配列を含むFR4を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR1、配列番号48のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号57のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号35のアミノ酸配列を含むFR4を含む。
【0014】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、または(c)(a)にあるようなVH配列および(b)にあるようなVL配列を含む、Jagged1に結合する単離抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号10のVH配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号19のVL配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号10のVH配列および配列番号19のVL配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、(a)配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、または(c)(a)にあるようなVH配列および(b)にあるようなVL配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号11のVH配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号20のVL配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号11のVH配列および配列番号20のVL配列を含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、(a)配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、または(c)(a)にあるようなVH配列および(b)にあるようなVL配列を含む、Jagged1に結合する単離抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号15のVH配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号24のVL配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号15のVH配列および配列番号24のVL配列を含む。
【0016】
上の実施形態のうちのいずれかは、完全長IgG1抗体であってもよい。
【0017】
別の態様において、本発明は、Jagged1への特異的結合に対して上の実施形態のうちのいずれかと競合する単離抗体を提供する。別の態様において、本発明は、Jagged2への特異的結合に対して上の実施形態のうちのいずれかと競合する単離抗体を提供する。別の態様において、本発明は、上の実施形態の単離抗体をコードする単離核酸を提供する。さらなる態様において、本発明は、本抗体をコードする単離核酸を含む、宿主細胞を提供する。さらなる態様において、本発明は、抗体が産生されるように宿主細胞を培養することを含む、抗体を産生する方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、上の実施形態のうちのいずれかの抗体と、細胞傷害性薬剤とを含む、免疫複合体を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、上の実施形態のうちのいずれかの抗体と、薬剤的に許容される担体とを含む、医薬製剤を提供する。
【0020】
別の態様において、上の実施形態のうちのいずれかの抗体は、医薬として使用するために提供される。いくつかの実施形態において、上の実施形態のうちのいずれかの抗体は、がんの治療において使用するために提供される。いくつかの実施形態において、上の実施形態のうちのいずれかの抗体は、がん細胞の増殖の低減において使用するために提供される。
【0021】
別の態様において、Jagged1媒介性シグナル伝達を阻害する方法が提供される。一実施形態において、Jagged1媒介性シグナル伝達を体外で阻害する方法が提供される。一実施形態において、Jagged1媒介性シグナル伝達を体内で阻害する方法が提供される。
【0022】
別の態様において、個体に、有効量の、上の実施形態のうちのいずれかの抗体を投与することを含む、がんを有する個体を治療する方法。一実施形態において、がんは、乳がん、肺がん、脳がん、子宮頚がん、結腸がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、皮膚がん、B細胞悪性腫瘍、およびT細胞悪性腫瘍からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ヒトおよびマウスJagged1タンパク質の例となるアミノ酸配列を示す。
図2】ヒトおよびマウスJagged2タンパク質の例となるアミノ酸配列を示す。
図3】(A~D)ファージ抗体ライブラリスクリーニングおよび選択に使用されるペプチドのアミノ酸配列を示す。全てのタンパク質は、BEVS細胞中で分泌タンパク質として発現されており、それらの配列が、N末端からC末端の方向で列挙される。(A)発現されたタンパク質のマウスJagged1-DSL-EGF1-4(Q34-D377)のアミノ酸配列。N末端における太字のフォントは、短いリンカー配列(ADLGS)(配列番号31)を表す。C末端における太字のフォントは、短いリンカー配列(EFG)、トロンビン切断部位(LVPRGS)(配列番号137)、Gスペーサ、および6-Hisタグ(配列番号138)を表す。(B)発現されたタンパク質のヒトJag1-DSL-EGF1-4のアミノ酸配列。Jag1配列のみが示されるが、この抗原はまた、C末端でTEVプロテアーゼ切断部位および6-Hisタグ(配列番号138)も含んだ。(C)発現されたタンパク質のマウスJag2-DSL-EGF1-4(M27-E388)のアミノ酸配列。N末端における太字のフォントは、短いリンカー配列(ADLGS)(配列番号31)を表す。C末端における太字のフォントは、短いリンカー配列(EFG)、トロンビン切断部位(LVPRGS)(配列番号137)、Gスペーサ、および6-Hisタグ(配列番号138)を表す。(D)発現されたタンパク質のヒトJag2-DSL-EGF1-4(R2-E388)のアミノ酸配列。C末端における太字のフォントは、短いリンカー配列(EFG)、トロンビン切断部位(LVPRGS)(配列番号137)、Gスペーサ、および6-Hisタグ(配列番号138)を表す。
図4】(A-1~B-2)抗Jagged抗体の重(図4A-1および図4A-2)および軽(図4B-1および図4B-2)鎖可変ドメインについてのアミノ酸配列のアライメントを示す(実施例1~2)。相補性決定領域(CDR)のアミノ酸位置が示される。
図5】(A~B)本発明の実施において使用するための、例となるアクセプターヒト可変重(VH)コンセンサスフレームワーク配列を示す。配列識別子は、次の通りである: -Kabat CDRを差し引いたヒトVH下位集団Iコンセンサスフレームワーク「A」(配列番号32、33、34、35)。 -伸長された超可変領域を差し引いたヒトVH下位集団Iコンセンサスフレームワーク「B」、「C」、および「D」(配列番号36、37、34、35;配列番号36、37、38、35;および配列番号36、37、39、35)。 -Kabat CDRを差し引いたヒトVH下位集団IIコンセンサスフレームワーク「A」(配列番号40、41、42、35)。 -伸長された超可変領域を差し引いたヒトVH下位集団IIコンセンサスフレームワーク「B」、「C」、および「D」(配列番号43、44、42、35;配列番号43、44、45、35;ならびに配列番号43、44、46、および35)。 -Kabat CDRを差し引いたヒトVH下位集団IIIコンセンサスフレームワーク「A」(配列番号47、48、49、35)。 -伸長された超可変領域を差し引いたヒトVH下位集団IIIコンセンサスフレームワーク「B」、「C」、および「D」(配列番号50、51、49、35;配列番号50、51、52、35;および配列番号50、51、53、35)。 -Kabat CDRを差し引いたヒトVHアクセプターフレームワーク「A」(配列番号54、48、55、35)。 -伸長された超可変領域を差し引いたヒトVHアクセプターフレームワーク「B」および「C」(配列番号50、51、55、35;および配列番号50、51、56、35)。 -Kabat CDRを差し引いたヒトVHアクセプター2フレームワーク「A」(配列番号54、48、57、35)。 -伸長された超可変領域を差し引いたヒトVHアクセプター2フレームワーク「B」、「C」、および「D」(配列番号50、51、57、35;配列番号50、51、58、35;および配列番号50、51、59、35)。
図6】本発明の実施において使用するための、例となるアクセプターヒト可変軽(VL)コンセンサスフレームワーク配列を示す。配列識別子は、次の通りである: -ヒトVLカッパ下位集団Iコンセンサスフレームワーク(κv1):配列番号60、61、62、63 -ヒトVLカッパ下位集団IIコンセンサスフレームワーク(κv2):配列番号64、65、66、63 -ヒトVLカッパ下位集団IIIコンセンサスフレームワーク(κv3):配列番号67、68、69、63 -ヒトVLカッパ下位集団IVコンセンサスフレームワーク(κv4):配列番号70、71、72、63。
図7】(A~F)実施例に記載される、抗Jagged抗体のH1、H2、およびH3重鎖超可変領域(HVR)配列を示す。アミノ酸位置は、下に記載されるKabat付番系に従って付番される。
図8】(A~E)実施例に記載される、抗Jagged抗体のL1、L2、およびL3軽鎖HVR配列を示す。アミノ酸位置は、下に記載されるKabat付番系に従って付番される。
図9】実施例に記載される、抗Jagged抗体の軽鎖および重鎖フレームワーク配列を示す。上付きの番号は、Kabatに従ったアミノ酸位置を示す。
図10】(A~B)第1(図10A)および第2(図10B)回目のスクリーニングから得られた抗体の結合特異性を示す。(A)抗体D-1(左パネル)およびC-1(右パネル)の、ヒトJagged1(hJag-1)、ヒトJagged2(hJag-2)、マウスJagged2(mJag-2)、ヒトDelta様1(hDLL-1)、マウスDelta様1(mDLL-1)、またはヒトDelta様4(hDLL-4)への結合を測定する、ELISAアッセイの結果。抗体濃度がx軸上に、およびOD650がy軸上に示される。(B)抗体AおよびB(両者は、さらなるスクリーニング中に、抗体Aに対してはヒトJag1-DSL-EGF1-4(図3B)および抗体Bに対してはマウスおよびヒトJag2-DSL-EGF1-4(図3CおよびD)を使用して特定された)の結合特異性を測定する、ELISAアッセイの結果。黒色の柱=ヒトJagged1への結合、灰色の柱=ヒトJagged2への結合。C-1は、Jagged1およびJagged2の両方への結合のための対照として働いた。
図11】精製されたヒトJagged1(ヒトJag1)、ヒトJagged2(ヒトJag2)、およびマウスJagged2(マウスJag2)に結合する、抗体A、A-1、A-2、B、B-1、B-2、B-3、C、C-1、D、D-1、およびD-2についての結合定数を示す。
図12】抗Jagged抗体によるNotch1のJagged1誘導性シグナル伝達の用量依存的阻害を示す。結果は、実施例4に記載されるように、Notch1受容体を通じるJagged1誘導性シグナル伝達を測定する共培養実験から得た。y軸は、対照遺伝子(ウミシイタケルシフェラーゼの発現を駆動する恒常的活性型のプロモーター)の発現と比べた、Notch依存性レポーター遺伝子ホタルルシフェラーゼの発現レベルを示す。x軸は、抗体DおよびCの濃度(0.4~50μg/mL)を示す。抗体を含まない共培養物(J1誘導性陽性対照)は、Jagged1誘導性シグナル伝達のための陽性対照として働いた。アイソタイプ対照抗体は、特異的抗体阻害のための対照として働いた。γセクレターゼ阻害剤(化合物E+)は、Notchシグナル伝達の阻害のための対照として使用された。
図13】(A~B)親和性成熟抗Jagged抗体によるNotchシグナル伝達の阻害を示す。共培養アッセイを図12および実施例4に記載されるように行った。(A)ファージ抗体およびそれらの濃度(μg/mL)がx軸上に示される(親抗体CおよびDは、対照として働いた)。示される濃度のγ-セクレターゼ阻害剤(GSI)化合物E(CmpE)およびN-[N-(3,5-ジフルオロフェンアセチル(Difluorophenacetyl))-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)は、Notchシグナル伝達の阻害のための陽性対照として働き、DMSOは、GSIのためのビヒクル対照として働き、パネルにおいて試験されたアイソタイプと同じアイソタイプを有する無関係の抗体は、アイソタイプ対照として働いた。(B)示される濃度のファージ抗体がx軸上に示される。示される濃度のDAPTは、Notchシグナル伝達の阻害のための陽性対照として働き、DMSOは、ビヒクル対照として働いた。シグナル伝達は、Jagged1(濃灰色の柱)によってまたはJagged2(薄灰色の柱)によって誘導された。無処理=リガンドで刺激されず、かつ抗体で処理されなかった培養物;無刺激または3T3P=リガンドで刺激されなかった培養物;agDまたはgD=アイソタイプ対照抗体;刺激/ABなしまたはAbなし=リガンドで刺激されたが、抗体で処理されなかった培養物;γ-セクレターゼ阻害剤DAPTまたはDMSOのDAPTビヒクル対照。
図14】(A~B)Jagged1およびJagged2の組み合わせた阻害が急速な体重減少を引き起こすことを示す。(A)マウスに、週2回、抗Jagged1/2抗体C-1(抗J1/2、5~10mpk)、抗Jagged1抗体A-2(抗J1、5~20mpk)、抗Jagged2抗体B-3(抗J2、5~20mpk)、抗体A-2およびB-3を一緒に(抗J1&2、各々5mpk)、またはアイソタイプ対照抗体(20mpk)を投与した。必要な場合、アイソタイプ対照抗体を用いて、各投薬の総抗体濃度を最大20mpkにした。平均体重変化(y軸)は、経時的な開始時体重のパーセンテージ(x軸)としてグラフ化される。(B)Balb/cマウス(1群当たり10匹、個々に収容)に、週2回、30mpkの抗gDアイソタイプ対照抗体、または15mpkの抗体A-2と15mpkの抗体B-3との組み合わせのいずれかを8日間、腹腔内注射した。摂餌を、各ケージ内で給餌および残餌を毎日計量することによって評価した。エラーバーは、標準誤差を表す(n=10)。
図15】(A~B)次の抗Jagged抗体処置の正常な腸組織像を示す。(A)実施例6に記載されるように処置されたマウスの腸試料を単離し、ヘマトキシリンおよびエオシン(図15A、H&E)で、またはアルシアンブルー(図15A、アルシアンブルー)で、染色した。(B)腸試料の切片を、リゾチームまたはKi-67のいずれかに対する一次抗体で染色した(図15B)。
図16】(A-1~B-2)体内での抗Jagged1アンタゴニスト抗体によるヒト肺がん細胞の増殖の阻害を示す。ヒト肺がん異種移植片を有するマウスに、週2回、腹腔内に(IP)20mpkの抗gDアイソタイプ対照抗体(アイソタイプ対照Ab)または抗Jagged1抗体A-2(抗Jag1)を注射し、この注射は、平均腫瘍体積(カリパスで測定)がおよそ180mmに到達した後に開始した。腫瘍体積(y軸)をその後、19日間測定した。図16A-1および図16A-2:各群(n=10)についての平均腫瘍体積を、経時的に(x軸)、線形混合効果モデルを使用してプロットした(図16A-1)。各群中の各マウスについての腫瘍体積は、図16A-2において2つのパネルに図示される。図16B-1および図16B-2:各マウスの総体重を測定し、各群について(図16B-1)または各群中の各マウスについて(図16B-2)平均化した変化パーセンテージとしてグラフ化した。
図17】(A~B)体内での抗Jagged1および抗Jagged2アンタゴニスト抗体によるヒト乳がん細胞の増殖の阻害を示す。ヒト乳がん異種移植片を有するC.B-17 SCID.bgマウスに、0、4、7、12、15、18、22、25、29、32、36、43、50、および57日目に、抗gDアイソタイプ対照抗体(抗gD)、抗ブタクサアイソタイプ対照抗体(抗ブタクサ)、ヒトIgG1骨格における抗Jagged1抗体A-2(抗Jag1 A-2(hIgG1))、マウスIgG2a骨格における抗Jagged1抗体A-2(抗Jag1 A-2(mIgG2a))、またはヒトIgG1骨格における抗Jagged2抗体B-3(抗Jag2 B-3(hIgG1))を注射した。処置群(A)または個々の動物(B)の腫瘍体積(y軸)を、線形混合効果モデルを使用して経時的に(x軸)プロットした。
【発明を実施するための形態】
【0024】
I. 定義
本明細書における目的のために、「アクセプターヒトフレームワーク」は、下に記載される、ヒト免役グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免役グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは、アミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークは、配列において、VLヒト免役グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0025】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の、総計の非共有性相互作用の強度を指す。別途指定されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1の相互作用を反映する、本来の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例示説明および例となる実施形態が、以下に記載される。
【0026】
「親和性成熟」抗体は、変化を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)において1つ以上の変化を有し、かかる変化が抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、抗体を指す。
【0027】
「抗Jagged抗体」および「Jaggedに結合する抗体」という用語は、抗体がJaggedを標的とすることにおいて診断剤および/または治療剤として有用であるように、Jagged1、Jagged2、またはJagged1および2(Jagged1/2)に十分な親和性で結合することが可能である抗体を指す。一実施形態において、無関係の非Jaggedタンパク質への抗Jagged抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定するとき、Jaggedへの抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、Jaggedに結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗Jagged抗体は、異なる種由来のJagged間で保存されるJaggedのエピトープに結合する。
【0028】
本明細書における「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含むが、これらに限定されない、種々の抗体構造を包含する。
【0029】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を(部分的にであれ完全にであれ)大きく阻害する抗体である。
【0030】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を含み、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);二重特異性抗体;線状抗体(linear抗体);1本鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、その抗原への参照抗体の結合を50%以上遮断する抗体、および逆に、競合アッセイにおいて、その抗原への抗体の結合を50%以上遮断する参照抗体を指す。例となる競合アッセイが本明細書に提供される。
【0032】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる源または種に由来する、抗体を指す。
【0033】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。5つの主要な抗体クラスIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちの数個は、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAにさらに分割され得る。免役グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0034】
本明細書で使用される「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞機能を阻害するもしくは阻止する、および/または細胞死もしくは破壊を引き起こす、物質を指す。細胞傷害性薬剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤もしくは化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素等の酵素およびそれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片および/または変異形を含む)等の毒素;ならびに下に記載される種々の抗腫瘍または抗がん薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプにより様々である、抗体のFc領域に起因し得る生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害作用(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0036】
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」は、必要な複数回投薬量で一定期間にわたる、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効な量を指す。
【0037】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する、免役グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。この用語は、天然配列Fc領域および変異形Fc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在することもあれば、しないこともある。本明細書で別途明記されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれる、EU付番方式に従う。
【0038】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメインFR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、HVRおよびFR配列は、一般に、VH(またはVL)において次の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0039】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有する、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する、抗体を指すように交換可能に使用される。
【0040】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、交換可能に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、初代形質転換細胞および継代の数に関わらずそれに由来する子孫を含む、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれる。子孫は、核酸含量において親細胞と完全に同一でない場合があるが、突然変異を含有し得る。元々形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0041】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された、またはヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する、抗体のアミノ酸配列、または他のヒト抗体コード配列に対応する、アミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。
【0042】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免役グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を代表する、フレームワークである。一般に、ヒト免役グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位集団から行われる。一般に、配列の下位集団は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるような下位集団である。一実施形態において、VLについて、下位集団は、上記のKabatらにあるような下位集団カッパIである。一実施形態において、VHについて、下位集団は、上記のKabatらにあるような下位集団IIIである。
【0043】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、そのFRの全てまたは実質的に全てが、ヒト抗体のそれらに対応する。ヒト化抗体は任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の、「ヒト化型」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0044】
本明細書で使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が高度に変化する(「相補性決定領域」または「CDR」)、かつ/または構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触面」)を含有する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、このうち3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。本明細書における例となるHVRには、次のものが含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)において生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3)において生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、および93~101(H3)において生じる抗原接触面(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、および94~102(H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組み合わせ。
【0045】
別途指定されない限り、可変ドメインにおけるHVR残基および他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において上記のKabatらに従って付番される。
【0046】
「免疫複合体」は、細胞傷害性薬剤を含むが、これらに限定されない1個以上の異種性分子(複数可)に複合される抗体である。
【0047】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0048】
「単離抗体」は、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの実施形態において、本抗体は、例えば、電気泳動法(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ法(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって決定するとき、95%超または99%超の純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
【0049】
「単離核酸」は、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸には、核酸分子を通常含有する細胞内に含有される核酸分子が含まれるが、その核酸分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に、存在する。
【0050】
「抗Jagged抗体をコードする単離核酸」は、抗体重鎖および軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1個以上の核酸分子を指し、それには単一のベクターまたは別個のベクターにおけるかかる核酸分子(複数可)が含まれ、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0051】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する、可能性のある変異形抗体は例外であり、かかる変異形は一般に少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する。故に、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されないものとする。例えば、本発明による使用対象のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免役グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない、多様な技法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法および他の例となる方法が、本明細書に記載されている。
【0052】
「裸の抗体」は、異種性部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識に複合されていない抗体を指す。裸の抗体は、医薬製剤中に存在してもよい。
【0053】
「天然抗体」は、様々な構造を有する、自然発生免役グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの型うちの1つが割り当てられ得る。
【0054】
「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、および/またはその使用に関する警告を含有する、治療薬の商用のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
【0055】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントし、配列同一性最大パーセントを得るのに必要な場合はギャップを導入した後に、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮に入れずに、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当該技術分野における技術の範囲内である種々の方式で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較されている配列の完全長にわたる最大のアライメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするために適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(U.S.Copyright Office),Washington D.C.,20559に提出されており、米国著作権番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に利用可能であるか、またはソースコードから編集されてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用する場合は編集すべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変更はない。
【0056】
アミノ酸配列比較のためにALIGN-2が用いられる場合、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比した、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比したある特定のアミノ酸配列同一性%を有する、またはそれを含む、所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、次のように算出される:
100×分数X/Y
(式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAおよびBのアライメントにおいて完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくはならないことが理解されよう。特に別途定めのない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるように、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0057】
「医薬製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、製剤が投与されるであろう対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない、調製物を指す。
【0058】
「薬剤的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬剤的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で使用される「Jagged」または「Jag」という用語は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然Jaggedを指す。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないJagged、ならびに細胞内のプロセシングからもたらされるJaggedの任意の形態を包含する。この用語はまた、Jaggedの自然発生変異形、例えば、スプライス変異形または対立遺伝子変異形を包含する。例となるヒトおよびマウスJagged1およびJagged2のアミノ酸配列が、それぞれ図1および2(配列番号:1~4)に示される。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「治療」(および「治療する」または「治療すること」等のその文法上の変形形態)は、治療されている個体の自然過程を変えることを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程の間に行うことができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾患進行速度の低減、病状の回復または一次緩和、および寛解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延するために、または疾患の進行を緩徐にするために使用される。
【0061】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体を抗原に結合することに関与する、抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は一般に、同様の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。)抗原結合特異性を付与するためには、単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して、それぞれ、相補的VLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングして、特定の抗原に結合する抗体を単離してもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature352:624-628(1991)を参照されたい。
【0062】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を増殖することが可能な核酸分子を指す。この用語には、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびに導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。ある特定のベクターは、作動的に連結された核酸の発現を導くことが可能である。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0063】
II. 組成物および方法
一態様において、本発明は、部分的に、抗Jagged抗体およびこれらの断片の識別に基づく。ある特定の実施形態において、少なくとも1つのJaggedに結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、がんの診断または治療に有用である。したがって、本発明は、抗Jagged抗体に関連する方法、組成物、キット、および製品を提供する。
【0064】
A. 例となる抗Jagged抗体
一態様において、本発明は、Jaggedに結合する単離抗体を提供する。ある特定の実施形態において、抗Jagged抗体は、抗Jagged1抗体である。
【0065】
一態様において、本発明は、次のものから選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む、抗Jagged1抗体を提供する:
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号87のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号114のアミノ酸配列を含むHVR-L3。
【0066】
さらなる態様において、抗Jagged1抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、ならびに上記の(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)から選択される、少なくとも1、2、3、4、または5つのHVRを含む。一実施形態において、本抗体は、上記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)を含み、(b)(c)、および(f)に関して、次の実施形態のうちのいずれか1つ以上が企図される:HVR-H2は、配列番号82~83から選択されるアミノ酸配列を含み、HVR-H3は、配列番号85~86から選択されるアミノ酸配列を含み、HVR-L3は、配列番号112~113から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0067】
別の実施形態において、Jagged1に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号112のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0068】
別の実施形態において、Jagged1に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号86のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号113のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0069】
別の実施形態において、Jagged1に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号112のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0070】
ある特定の実施形態において、抗Jagged抗体は、抗Jagged2抗体である。
【0071】
一態様において、本発明は、次のものから選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む、抗Jagged2抗体を提供する:
(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号122のアミノ酸配列を含むHVR-L3。
【0072】
さらなる態様において、抗Jagged2抗体は、配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、ならびに上記の(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)から選択される、少なくとも1、2、3、4、または5つのHVRを含む。一実施形態において、本抗体は、上記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)を含み、(c)および(f)に関して、次の実施形態のうちのいずれか1つ以上が企図される:HVR-H3は、配列番号90~93から選択されるアミノ酸配列を含み、HVR-L3は、配列番号117~121から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0073】
一実施形態において、Jagged2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号117のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0074】
別の実施形態において、Jagged2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号118のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0075】
別の実施形態において、Jagged2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号119のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0076】
別の実施形態において、Jagged2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号120のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0077】
別の実施形態において、Jagged2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号116のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号121のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0078】
ある特定の実施形態において、抗Jagged抗体は、抗Jagged1/2抗体である。
【0079】
一態様において、本発明は、配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR-H3、配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号127のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む、抗Jagged1/2抗体を提供する。
【0080】
一実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0081】
一実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号123のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号126のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0082】
別の態様において、本発明は、配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号109のアミノ酸配列を含むHVR-H3、配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号134のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つのHVRを含む、抗Jagged1/2抗体を提供する。
【0083】
別の実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号130のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0084】
別の実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号108のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号131のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0085】
別の実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号132のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0086】
別の実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号133のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0087】
別の実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号132のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0088】
別の実施形態において、Jagged1/2に特異的に結合する抗体が提供され、この抗体は、
(a)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号132のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0089】
上の実施形態のうちのいずれかにおいて、抗Jagged抗体は、ヒト化されている。一実施形態において、抗Jagged抗体は、上の実施形態のいずれかにあるようなHVRを含み、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免役グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークをさらに含む。別の実施形態において、抗Jagged抗体は、上の実施形態のうちのいずれかにあるようなHVRを含み、配列番号32、36、40、43、47、50、または54のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号33、37、41、44、48、51、または136のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号34、38、39、42、45、46、49、52、53、55、56、57、58、59のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号35のアミノ酸配列を含むFR4から選択される、少なくとも1、2、3、または4つのFRを含む、VHをさらに含む。別の実施形態において、抗Jagged抗体は、上の実施形態のうちのいずれかにあるようなHVRを含み、配列番号60、64、67、または70のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号61、65、68、または71のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号62、66、69、または72のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号63または135のアミノ酸配列を含むFR4から選択される、少なくとも1、2、3、または4つのFRを含む、VLをさらに含む。
【0090】
別の態様において、抗Jagged抗体は、配列番号9~17、29~30、または73~76のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する、重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗Jagged抗体は、少なくとも1つのJaggedに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。ある特定の実施形態において、抗Jagged抗体は、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する、重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。任意に、抗Jagged抗体は、配列番号11におけるVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VHは、(a)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、1、2、または3つのHVRを含む。
【0091】
別の態様において、抗Jagged抗体が提供され、この抗体は、配列番号18~28または77~80のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する、軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗Jagged抗体は、少なくとも1つのJaggedに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態において、総計1~10個のアミノ酸が、配列番号20において置換され、挿入され、および/または欠失されている。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。任意に、抗Jagged抗体は、配列番号20におけるVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、含む。特定の実施形態において、VLは、(a)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号112のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、1、2、または3つのHVRを含む。
【0092】
別の態様において、抗Jagged抗体が提供され、この抗体は、この抗体は、上に提供される実施形態のいずれかにあるようなVH、および上に提供される実施形態のいずれかにあるようなVLを含む。一実施形態において、本抗体は、それぞれ配列番号10および配列番号19におけるVHおよびVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含めて、含む。一実施形態において、本抗体は、それぞれ配列番号11および配列番号20におけるVHおよびVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含めて、含む。一実施形態において、本抗体は、それぞれ配列番号15および配列番号24におけるVHおよびVL配列を、それらの配列の翻訳後修飾を含めて、含む。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に提供される抗Jagged抗体と同じエピトープに結合する、抗体を提供する。例えば、ある特定の実施形態において、配列番号10のVH配列および配列番号19のVL配列を含む抗Jagged1抗体と同じエピトープに結合する、抗体が提供される。別の実施形態において、配列番号11のVH配列および配列番号20のVL配列を含む抗Jagged1抗体と同じエピトープに結合する、抗体が提供される。別の実施形態において、配列番号15のVH配列および配列番号24のVL配列を含む抗Jagged2抗体と同じエピトープに結合する、抗体が提供される。
【0094】
ある特定の実施形態において、配列番号5のマウスJag1-DSL-EGF1-4ペプチド内のエピトープに結合する、抗体が提供される。ある特定の実施形態において、配列番号6のヒトJag1-DSL-EGF1-4ペプチド内のエピトープに結合する、抗体が提供される。ある特定の実施形態において、配列番号7のマウスJag2-DSL-EGF1-4ペプチド内のエピトープに結合する、抗体が提供される。ある特定の実施形態において、配列番号8のヒトJag2-DSL-EGF1-4ペプチド内のエピトープに結合する、抗体が提供される。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、結合に対して、本明細書に提供される抗体のいずれかと競合する、抗体を提供する。
【0096】
本発明のさらなる態様において、上の実施形態のうちのいずれかによる抗Jagged抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一実施形態において、抗Jagged抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)断片である。別の実施形態において、本抗体は、完全長抗体、例えば、本明細書に定義されるインタクトなヒトIgG1抗体または他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
【0097】
さらなる態様において、上の実施形態のいずれかによる抗Jagged抗体は、下の第1~7節に記載される特長のうちのいずれをも、単独でまたは組み合わせて、組み込んでもよい。
【0098】
1. 抗体親和性
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0099】
一実施形態において、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原と共に行われる。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、Fabを、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原と平衡化し、次いで抗Fab抗体コーティングプレートと結合した抗原を捕捉することによって、測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mLの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンにより、室温(およそ23℃)で2~5時間ブロッキングする。非吸着性のプレート(Nunc番号269620)中で、100pMまたは26pM [125I]-抗原を、目的のFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における、抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致)。目的のFabを次いで一晩インキュベートするが、インキュベーションは、平衡に到達することを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続してもよい。その後、混合物を、室温での(例えば、1時間にわたる)インキュベーションのために、捕捉プレートに移す。溶液を次いで除去し、プレートを、PBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したとき、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)γ計数器(Packard)により10分間計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選定する。
【0100】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラスモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用したアッセイは、25℃で、約10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて行われる。一実施形態において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)により、供給業者の指示に従って活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)まで希釈した後、5μL/分の流速で注射して、カップリングされたタンパク質のおよそ10応答単位(RU)を達成する。抗原の注射後、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応の基をブロッキングする。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)中、25℃で、およそ25μL/分の流速で注射する。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software第3.2版)を使用して、会合センサグラムおよび解離センサグラムを同時に適合することによって、算出する。平衡解離定数(Kd)は、比率koff/konとして算出する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。オン速度が、上の表面プラスモン共鳴アッセイによって、10-1-1を超える場合、オン速度は、撹拌されたキュベットを備えるストップトフロー装着分光光度計(Aviv Instruments)または8000-シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計において測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、25℃で、PBS(pH7.2)中20nM抗-抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加
または減少を測定する、蛍光消光技法を使用することによって、決定することができる。
【0101】
2. 抗体断片
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、およびscFv断片、ならびに下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)に記載される。scFv断片の概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたく、また、国際公開第93/16185号、ならびに米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加した体内半減期を有する、FabおよびF(ab’)断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0102】
ダイアボディは、二価性または二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ(Triabodies)およびテトラボディ(tetrabodies)もまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載される。
【0103】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。
【0104】
抗体断片は、本明細書に記載される、インタクトな抗体のタンパク質分解消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、種々の技法によって作製することができる。
【0105】
3. キメラおよびヒト化抗体
ある特定の実施形態,本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載される。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる実施例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれから変更された、「クラススイッチされた」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合断片が含まれる。
【0106】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。任意にヒト化抗体はまた、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元するまたは改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0107】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説され、また例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフティングを記載する)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載する)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャフリング」を記載する)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」アプローチを記載する)にさらに記載される。
【0108】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、次のものが含まれるが、これらに限定されない:「最良適合(best-fit)」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、およびPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞株フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)およびRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
4. ヒト抗体
ある特定の実施形態,本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)およびLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載される。
【0110】
ヒト抗体は、免疫原を、抗原投与に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を含むインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に投与することによって、調製されてもよい。かかる動物は典型的に、内因性免役グロブリン遺伝子座を置き換える、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体中に無作為に組み込まれる、ヒト免役グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免役グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術を記載する)、米国特許第5,770,429号(HUMAB(登録商標)技術を記載する)、米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する)、ならびに米国特許出願公開第US 2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する)を参照されたい。かかる動物によって生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに修飾されてもよい。
【0111】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、およびBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体もまた、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載される。追加の方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、およびNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma technology)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)およびVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載される。
【0112】
ヒト抗体はまた、Fvクローン可変ドメイン配列をヒト由来ファージディスプレイライブラリから単離することによって、生成されてもよい。かかる可変ドメイン配列は次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わされてもよい。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が、下に記載される。
【0113】
5. ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、コンビナトリアルライブラリを、所望の活性(単数または複数)を有する抗体についてスクリーニングすることによって、単離されてもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、かかるライブラリを、所望の結合特性を保有する抗体についてスクリーニングするための、多様な方法が当該技術分野で知られている。かかる方法は、例えば、HoogenboomらのMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、またさらに、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、MarksおよびBradburyのMethods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、およびLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に記載される。
【0114】
ある特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ中で無作為に組み換えられ、それを次いで、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは典型的に、1本鎖Fv(scFv)断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫された源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)によって記載されるように、ナイーブレパートリーをクローニングして(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、広範な非自己抗原およびまた自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、体外で再配列を達成することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリを記載する特許公開には、例えば、米国特許第5,750,373号、および米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号が含まれる。
【0115】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書でヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0116】
6.多重特異性抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうちの一方は、Jaggedに対するものであり、他方は、任意の他の抗原に対するものである。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、Jaggedの2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体をまた使用して、細胞傷害性薬剤を、Jaggedを発現する細胞に限局させてもよい。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0117】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免役グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、国際公開第93/08829号、およびTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、「ノブ・イン・ホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、静電的ステアリング(electrostatic steering)効果を操作して抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製すること(国際公開第2009/089004A1号)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照されたい)、および1本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載される三重特異性抗体を調製することによって、作製されてもよい。
【0118】
「オクトパス(Octopus)抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、米国公開特許第2006/0025576A1号を参照されたい)。
【0119】
本明細書における抗体または断片にはまた、Jaggedならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む、「二重作用(Dual Acting)FAb」または「DAF」が含まれる(例えば、米国公開特許第2008/0069820号を参照されたい)。
【0120】
7.抗体変異形
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異形が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列変異形は、適切な修飾を、抗体をコードするヌクレオチド配列中に導入することによって、またはペプチド合成によって、調製されてもよい。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、および/またはそこへ残基の挿入、および/またはその内の残基の置換が含まれる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを作製して、最終構築物に到達することができるが、但し、その最終構築物が、所望の特性、例えば、抗原結合性を保有することを条件とする。
【0121】
a) 置換、挿入、および欠失変異形
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形が提供される。置換型突然変異生成に対する目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換は、表1において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1において、「例となる置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して下にさらに記載される。アミノ酸置換が目的の抗体中に導入され、産物が、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについて、スクリーニングされてもよい。
[表1]
アミノ酸は、次の一般的な側鎖特性に従って分類されてもよい:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0122】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0123】
置換型変異形の1つの種類は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1個以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、結果として生じる変異形(複数可)は、親抗体と比べて、ある特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加した親和性、低減された免疫原性)を有することになり、および/または親抗体の、実質的に保持されたある特定の生物学的特性を有することになる。例となる置換型変異形は、例えば、本明細書に記載されるもの等のファージディスプレイベースの親和性成熟技法を使用して、好都合に生成され得る、親和性成熟抗体である。簡潔に述べると、1個以上のHVR残基が突然変異させられ、変異形抗体がファージ上で提示され、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0124】
変化(例えば、置換)をHVRにおいて行って、例えば、抗体親和性を改善してもよい。かかる変化は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、および/または抗原に接触する残基において行われてもよく、結果として生じる変異形VHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、HoogenboomらのMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態において、多様性が、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性突然変異生成)のうちのいずれかによって、成熟のために選定された可変遺伝子中に導入される。二次ライブラリが次いで作り出される。ライブラリは次いで、所望の親和性を有する任意の抗体変異形を特定するために、スクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、数個のHVR残基(例えば、1回に4~6個の残基)が無作為化される、HVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異生成またはモデリングを使用して、具体的に特定されてもよい。特にCDR-H3およびCDR-L3が、しばしば標的とされる。
【0125】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる変化が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ以上のHVR内で生じてもよい。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的変化(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVRにおいて行われてもよい。かかる変化は、例えば、HVRにおける抗原接触残基の外側にあってもよい。上に提供される変異形VHおよびVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは、変化させられないか、または1つ、2つ、もしくは3つを超えるアミノ酸置換を含有することはないかのいずれかである。
【0126】
突然変異生成のための標的とされ得る、抗体の残基または領域の特定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異生成」と呼ばれるものである。この方法において、標的残基(例えば、arg、asp、his、lys、およびglu等の荷電残基)のうちのある残基または基が特定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の場所に導入されてもよい。代替的に、または追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原との間の接触点が特定される。かかる接触残基および隣接する残基は、置換の候補として標的とされるか、または排除されてもよい。変異形をスクリーニングして、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定してもよい。
【0127】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の長さである、アミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一のまたは多数のアミノ酸残基の配列内(intrasequence)挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型変異形には、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドに対する抗体のN末端もしくはC末端への融合が含まれる。
【0128】
b) グリコシル化変異形
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変化させられる。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、または除去されるように、アミノ酸配列を変化させることによって、好都合に遂行されてもよい。
【0129】
抗体がFc領域を含む場合、そこに結合した炭水化物が変化させられてもよい。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的に、一般にN-結合によって、Fc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される、分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖類には、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖類構造の「ステム」においてGlcNAcに結合したフコースが含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、ある特定の改善された特性を有する抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
【0130】
一実施形態において、Fc領域に(直接的にまたは間接的に)結合されるフコースを欠いた炭水化物構造を有する、抗体変異形が提供される。例えば、かかる抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されるように、MALDI-TOF質量分析法によって測定するとき、Asn297に結合した全ての糖鎖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、および高マンノース構造)の合計と比べた、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域における約297位(Fc領域残基のEu付番)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位~300位の間にも位置する。かかるフコシル化変異形は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第US 2003/0157108号(Presta,L.)、同第US 2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異形に関連する刊行物の例としては、米国公開特許第2003/0157108号、国際公開第2000/61739号、国際公開第2001/29246号、米国公開特許第2003/0115614号、米国公開特許第2002/0164328号、米国公開特許第2004/0093621号、米国公開特許第2004/0132140号、米国公開特許第2004/0110704号、米国公開特許第2004/0110282号、米国公開特許第2004/0109865号、国際公開第2003/085119号、国際公開第2003/084570号、国際公開第2005/035586号、国際公開第2005/035778号、国際公開第2005/053742号、国際公開第2002/031140号、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株
の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US 2003/0157108 A1号(Presta、L)、および国際公開第2004/056312 A1号(Adamsら、特に実施例11で)、およびα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、および国際公開第2003/085107号を参照されたい)が挙げられる。
【0131】
二分されたオリゴ糖類を有する、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖類がGlcNAcによって二分される、抗体変異形がさらに提供される。かかる抗体変異形は、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異形の例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairetら)、米国特許第6,602,684号(Umanaら)、および米国公開特許第2005/0123546号(Umanaら)に記載される。Fc領域に結合したオリゴ糖類において少なくとも1個のガラクトース残基を有する、抗体変異形もまた提供される。かかる抗体変異形は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異形は、例えば、国際公開第1997/30087号(Patelら)、国際公開第1998/58964号(Raju,S.)、および国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載される。
【0132】
c) Fc領域変異形
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それによってFc領域変異形を生成してもよい。Fc領域変異形は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含んでもよい。
【0133】
ある特定の実施形態において、本発明は、いくつかのエフェクター機能を保有するが、全てのエフェクター機能は保有せず、それにより、体内での抗体の半減期が重要であるが、なおもある特定のエフェクター機能(補体およびADCC等)が不必要または有害である場合の適用に対する望ましい候補となる、抗体変異形を企図する。体外および/または体内細胞傷害性アッセイを実行して、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(よって、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現するが、一方で単球は、Fc(RI、Fc(RII、およびFc(RIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464ページの表3に要約される。目的の分子のADCC活性を評価するための体外アッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい)およびHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、同第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載される。代替的に、非放射性アッセイ法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、体内で、例えば、Clynes et al.Pr
oc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるもの等の動物モデルにおいて、評価されてもよい。C1q結合アッセイをまた行って、抗体がC1qに結合不可能であり、よってCDC活性を欠いていることを確認してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号および国際公開第2005/100402号におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003)、およびCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合および体内クリアランス/半減期決定もまた、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0134】
低減されたエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc突然変異体には、アラニンへの残基265および297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む(米国特許第7,332,581号)、アミノ酸265、269、270、297、および327位のうちの2つ以上において置換を有するFc突然変異体が含まれる。
【0135】
FcRへの改善されたまたは減少した結合を有する、ある特定の抗体変異形が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、国際公開第2004/056312号、およびShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい)。
【0136】
ある特定の実施形態において、抗体変異形は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEU付番)における置換を有する、Fc領域を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、およびIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、変化した(すなわち、改善されたかまたは減少したかのいずれか)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変化が、Fc領域において行われる。
【0138】
母体IgGの胎児への移入に関与する、増加した半減期および新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))が、米国公開特許第2005/0014934A1号(Hintonら)に記載される。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する、1つ以上の置換を内部に有するFc領域を含む。かかるFc変異形には、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を有するものが含まれる。
【0139】
また、Fc領域変異形の他の例に関して、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、および国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0140】
d) システイン操作された抗体変異形
ある特定の実施形態において、抗体の1個以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「チオMab」を作り出すことが望ましい場合がある。特に実施形態において、置換残基は、抗体の利用しやすい部位において生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基はそれによって、抗体の利用しやすい部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を、薬物部分またはリンカー-薬物部分等の他の部分に複合して、本明細書にさらに記載される、免疫複合体を作り出してもよい。ある特定の実施形態において、次の残基のうちの任意の1個以上が、システインで置換されてもよい:軽鎖のV205(Kabat付番)、重鎖のA118(EU付番)、および重鎖Fc領域のS400(EU付番)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成されてもよい。
【0141】
e) 抗体誘導体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってもよく、分岐していても非分岐であってもよい。抗体に結合したポリマーの数は、様々であってもよく、1つを超えるポリマーが結合される場合、それらは、同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または種類は、改善対象の抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下で療法において使用されるかどうか等を含むが、これらに限定されない考慮に基づいて、決定することができる。
【0142】
別の実施形態において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体および非タンパク質性部分の複合体が提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブ(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005)である。放射線は、任意の波長のものであってもよく、一般の細胞を害さないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅させられる温度まで加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
B. 組換え法および組成物
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載される、組換え法および組成物を使用して産生されてもよい。一実施形態において、本明細書に記載される抗Jagged抗体をコードする単離核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードし得る。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのかかる実施形態において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核性、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗Jagged抗体を作製する方法が提供され、本方法は、上に提供される抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0144】
抗Jagged抗体の組換え産生のために、例えば、上述の、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニングおよび/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入される。かかる核酸は、慣例の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能である、オリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0145】
抗体コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌において産生されてもよい。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、および同第5,840,523号を参照されたい。(また、大腸菌における抗体断片の発現を記載する、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい)。発現後、抗体は、可溶性画分において細菌細胞ペーストから単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0146】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗体コードベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、それには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全ヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌および酵母株が含まれる。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、およびLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0147】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞と併せて、特にヨトウガ細胞のトランスフェクションのために、使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されてきた。
【0148】
植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、および同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPL抗体(商標)技術を記載している)を参照されたい。
【0149】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように適合される哺乳類細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載される、293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載される、TM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頚がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝がん細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載される、TRI細胞;MRC 5細胞;およびFS4細胞がある。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、DHFRCHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにY0、NS0、およびSp2/0等の骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0150】
C. アッセイ
本明細書に提供される抗Jagged抗体は、それらの物理/化学特性および/または生物活性について、当該技術分野で既知の種々のアッセイによって、特定され、スクリーニングされ、または特徴付けられてもよい。
【0151】
1. 結合アッセイおよび他のアッセイ
一態様において、本発明の抗体は、その抗原結合活性について、例えば、ELISA、またはウェスタンブロット等の既知の方法によって、試験される。
【0152】
別の態様において、競合アッセイを使用して、ヒトまたはマウスJagged1への結合に対して抗体A、A-1、A-2、C、C-1、D、D-1、D-2、D-3、D-4、およびD-5と競合する抗体を特定してもよい。別の態様において、競合アッセイを使用して、ヒトまたはマウスJagged2への結合に対して抗体B、B-1、B-2、B-3、C、C-1、D、D-1、D-2、D-3、D-4、およびD-5と競合する抗体を特定してもよい。ある特定の実施形態において、かかる競合抗体は、A、A-1、A-2、B、B-1、B-2、B-3、C、C-1、D、D-1、D-2、D-3、D-4、またはD-5によって結合される、同じエピトープ(例えば、直線状または立体配座エピトープ)に結合する。
【0153】
抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例となる方法は、Methods in Molecular Biology vol.66におけるMorris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”(Humana Press,Totowa,NJ)に提供される。
【0154】
例となる競合アッセイにおいて、固定化されたJagged1またはJagged2は、Jagged1またはJagged2に結合する第1の標識抗体(例えば、A、A-1、A-2、B、B-1、B-2、B-3、C、C-1、D、D-1、D-2、D-3、D-4、またはD-5)、およびJagged1またはJagged2への結合に対して第1の抗体と競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体を含む、溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化されたJagged1またはJagged2が、第1の標識抗体を含むが、第2の未標識抗体を含まない、溶液中でインキュベートされる。Jagged1またはJagged2への第1の抗体の結合を許容する条件下でのインキュベーション後、過剰の非結合抗体が除去され、固定化されたJagged1またはJagged2に関連する標識の量が測定される。固定化されたJagged1またはJagged2に関連する標識の量が、対照試料と比べて試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体がJagged1またはJagged2への結合に対して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0155】
2. 活性アッセイ
一態様において、生物活性を有するその抗Jagged抗体を特定するためのアッセイが提供される。生物活性には、例えば、Notch1を通じたJagged1誘導性シグナル伝達の阻害等の、Notch受容体を通じたJagged1またはJagged2誘導性細胞シグナル伝達の阻害が含まれてもよい。例となるアッセイが実施例に提供される。ある特定の他の実施形態において、本発明の抗体は、Jagged1誘導性Notchシグナル伝達に応答性であるレポーター遺伝子の発現を阻害するその能力について試験される。例となるアッセイが実施例に提供される。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、かかる生物活性について試験される。体内および/または体外でかかる生物活性を有する抗体もまた提供される。
【0156】
D. 免疫複合体
本発明はまた、本明細書において、化学療法剤もしくは化学療法薬、増殖阻害性薬剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体等の、1つ以上の細胞傷害性薬剤に複合される抗Jagged抗体を含む、免疫複合体も提供する。
【0157】
一実施形態において、免疫複合体は、抗体が、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、および欧州特許第EP 0 425 235 B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)等のオーリスタチン(米国特許第5,635,483号および同第5,780,588号、ならびに同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、および同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシン等のアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358-362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002)、および米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル(tesetaxel)、およびオルタタキセル(ortataxel)等のタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない1つ以上の薬物に複合される、抗体-薬物複合体(ADC)である。
【0158】
別の実施形態において、免疫複合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセン(tricothecene)を含むが、これらに限定されない、酵素活性毒素またはその断片に複合される、本明細書に記載される抗体を含む。
【0159】
別の実施形態において、免疫複合体は、放射性原子に複合されて放射性物質複合体(radioconjugate)を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性物質複合体の産生のために、多様な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体が挙げられる。放射性物質複合体が検出に使用されるとき、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばtc99mまたはI123、または、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄等の、核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られる)のためのスピン標識を含んでもよい。
【0160】
抗体および細胞傷害性薬剤の複合体は、N-コハク酸イミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、コハク酸イミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCl等)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジル等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムンゾイル等)-エチレンジアミン)、ジイソシアン酸塩(トルエン2,6-ジイソシアン酸塩等)、およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)等の多様な二機能性タンパク質結合剤を使用して作製されてもよい。例えば、リシン免疫毒素をVitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドの複合のための、例となるキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは、細胞内での細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)が使用されてもよい。
【0161】
本明細書における免疫複合体(immunuoconjugates)またはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されている、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されないクロスリンカー試薬により調製される、かかる複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0162】
E. 診断および検出のための方法および組成物
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗Jagged1抗体のいずれも、生体試料中のJagged1の存在を検出するために有用である。ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗Jagged2抗体のいずれも、生体試料中のJagged2の存在を検出するために有用である。本明細書で使用される「検出すること」という用語は、定量または定性検出を包含する。ある特定の実施形態において、生体試料は、癌性組織等の、細胞または組織を含む。
【0163】
一実施形態において、診断または検出方法において使用するための抗Jagged抗体が提供される。さらなる態様において、生体試料中のJagged1の存在を検出する方法が提供される。さらなる態様において、生体試料中のJagged2の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態において、本方法は、生体試料を、本明細書に記載される抗Jagged1抗体または抗Jagged2抗体と、それぞれJagged1およびJagged2への抗Jagged1抗体または抗Jagged2抗体の結合を許容する条件下で接触させることと、複合体が、抗Jagged1抗体とJagged1との間で、または抗Jagged2抗体とJagged2との間で形成されるかどうかを検出することとを含む。かかる方法は、体外方法であっても、体内方法であってもよい。一実施形態において、例えば、Jagged1が患者の選択のためのバイオマーカーである場合、抗Jagged1抗体を使用して、抗Jagged1抗体での治療法にふさわしい対象を選択する。一実施形態において、例えば、Jagged2が患者の選択のためのバイオマーカーである場合、抗Jagged2抗体を使用して、抗Jagged2抗体での治療法にふさわしい対象を選択する。
【0164】
本発明の抗体を使用して診断され得る例となる障害には、がん、例えば、乳がん、肺がん、脳がん、子宮頚がん、結腸がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、皮膚がん、B細胞悪性腫瘍、およびT細胞悪性腫瘍が含まれる。
【0165】
ある特定の実施形態において、標識された抗Jagged抗体が提供される。標識には、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識等)、ならびに例えば、酵素反応または分子相互作用を通じて、間接的に検出される酵素またはリガンド等の部分が含まれるが、これらに限定されない。例となる標識には、放射性同位体32P、14C、125I、H、および131I、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体等のフルオロフォア、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ等の複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離ラジカル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
F. 医薬製剤
本明細書に記載される抗Jagged抗体の医薬製剤抗は、所望の程度の純度を有するかかる抗体を、1つ以上の任意の薬剤的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬剤的に許容される担体は、一般に、用いられる投薬量および濃度で、受容者に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム等;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免役グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTA等のキレート薬剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における例となる薬剤的に許容される担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の、介在性(insterstitial)薬物分散剤がさらに含まれる。rHuPH20を含む、ある特定の例となるsHASEGPおよび使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載される。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼ等の1つ以上
の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0167】
例となる凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号および国際公開第2006/044908号に記載されるものが含まれ、後者の製剤はヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0168】
本明細書における製剤はまた、治療されている特定の適応症に対する必要に応じて、1つを超える活性成分、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する成分を含有してもよい。例えば、細胞傷害性薬剤、例えば、化学療法剤をさらに提供することが望ましい場合がある。かかる活性成分は、意図される目的のために有効である量で組み合わされて、好適に存在する。
【0169】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製される、マイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中またはマクロエマルション中の、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中に、封入されてもよい。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示される。
【0170】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、そのマトリクスは、造形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。
【0171】
体内投与のために使用されるべき製剤は、一般に滅菌されている。滅菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を通じた濾過によって、容易に遂行され得る。
【0172】
G. 治療方法および組成物
本明細書に提供される抗Jagged抗体のいずれも、治療方法において使用され得る。
【0173】
一態様において、医薬として使用するための抗Jagged抗体が提供される。さらなる態様において、異常なNotchシグナル伝達に関連する疾患または障害、例えば、がんの治療において使用するための、抗Jagged1抗体が提供される。ある特定の実施形態において、治療法において使用するための抗Jagged1抗体が提供される。ある特定の実施形態において、本発明は、がんを有する個体に有効量の抗Jagged1抗体を投与することを含む、がんを有する個体を治療する方法において使用するための抗Jagged1抗体を提供する。1つのかかる実施形態において、本方法は、個体に、例えば、下に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。さらなる態様において、がんの治療において使用するための抗Jagged2抗体が提供される。ある特定の実施形態において、治療の方法において使用するための抗Jagged2抗体が提供される。ある特定の実施形態において、本発明は、がんを有する個体に有効量の抗Jagged2抗体を投与することを含む、がんを有する個体を治療する方法において使用するための抗Jagged2抗体を提供する。1つのかかる実施形態において、本方法は、個体に、例えば、下に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。
【0174】
さらなる実施形態において、本発明は、肺がんの増殖を阻害することにおいて使用するための抗Jagged抗体を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、個体に、肺がんの増殖を低減するために有効である抗Jagged1抗体を投与することを含む、個体における肺がんの増殖を低減する方法において使用するための抗Jagged1抗体を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、個体に、肺がんの増殖を低減するために有効である抗Jagged2抗体を投与することを含む、個体における肺がんの増殖を低減する方法において使用するための抗Jagged2抗体を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、個体に、乳がんの増殖を低減するために有効である抗Jagged1抗体を投与することを含む、個体における乳がんの増殖を低減する方法において使用するための抗Jagged1抗体を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、個体に、乳がんの増殖を低減するために有効である抗Jagged2抗体を投与することを含む、個体における乳がんの増殖を低減する方法において使用するための抗Jagged2抗体を提供する。上の実施形態のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0175】
さらなる態様において、本発明は、医薬の製造または調製における、抗Jagged抗体の使用を提供する。一実施形態において、医薬は、異常なNotchシグナル伝達に関連する疾患または障害の治療のためのものである。一実施形態において、医薬は、がんの治療のためである。さらなる実施形態において、医薬は、がんを有する個体に有効量の医薬を投与することを含む、がんを治療する方法において使用するためのものである。1つのかかる実施形態において、本方法は、個体に、例えば、下に記載される、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。上の実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0176】
さらなる態様において、本発明は、異常なNotchシグナル伝達に関連する疾患または障害を治療する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、かかる疾患または障害を有する個体に、有効量の抗Jagged抗体を投与することを含む。一実施形態において、本方法は、がんを有する個体に、有効量の抗Jagged1抗体を投与することを含む。1つのかかる実施形態において、本方法は、個体に、下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。一実施形態において、本方法は、がんを有する個体に、有効量の抗Jagged2抗体を投与することを含む。1つのかかる実施形態において、本方法は、個体に、下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。上の実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0177】
さらなる態様において、本発明は、個体においてがん細胞の増殖を阻害するための方法を提供する。一実施形態において、本方法は、個体に、がん細胞の増殖を阻害するための有効量の抗Jagged1抗体または抗Jagged2抗体を投与することを含む。一実施形態において、「個体」は、ヒトである。
【0178】
さらなる態様において、本発明は、例えば、上の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗Jagged抗体のいずれかを含む、医薬製剤を提供する。一実施形態において、医薬製剤は、本明細書に提供される抗Jagged抗体のいずれかと、薬剤的に許容される担体とを含む。別の実施形態において、医薬製剤は、本明細書に提供される抗Jagged抗体のいずれかと、例えば、下に記載される、少なくとも1つの追加の治療剤とを含む。
【0179】
本発明の抗体は、治療法において、単独で、または他の薬剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。ある特定の実施形態において、追加の治療剤は、細胞傷害性薬剤である。ある特定の実施形態において、追加の治療剤は、抗体である。
【0180】
上述のかかる併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤中に含まれる)、および別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤(単数または複数)の投与の前、それと同時、および/またはその後に生じ得る。一実施形態において、抗Jagged抗体の投与および追加の治療剤の投与は、互いに約1ヶ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。本発明の抗体はまた、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0181】
本発明の抗体(および任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、および鼻腔内、ならびに局所両方のために所望される場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、任意の好適な経路による、例えば、投与が短時間であるか慢性的であるかに部分的に応じて、静脈内または皮下注射等の、注射によるものであり得る。単回または種々の時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むが、これらに限定されない、種々の投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0182】
本発明の抗体は、良好な医療行為と一致した様式で、製剤化され、投薬され、投与されるであろう。この文脈における考慮の要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール管理、および医療従事者に既知の他の要因が含まれる。抗体は、必要ではないが、任意に、問題の障害を予防または治療するために現在使用される1つ以上の薬剤と共に製剤化される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療の種類、および上に考察された他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載されるのと同じ投薬量で、本明細書に記載される投与経路により、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%、または適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量で、任意の経路によって、使用される。
【0183】
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な投薬量(単独でまたは1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用されるとき)は、治療対象の疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療法、患者の病歴および抗体への反応、ならびに主治医の裁量に依存するであろう。抗体は、患者に、1回で、または一連の治療にわたって、好適に投与される。疾患の種類および重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によってであれ、連続注入によってであれ、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、患者への投与のための初回の候補投薬量であり得る。1つの典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。病態に応じて数日間またはより長い日数にわたる反復投与について、治療は、一般に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるであろう。抗体の1つの例となる投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲内であろう。故に、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)の1回以上の用量が患者に投与されてもよい。かかる用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間毎に(例えば、患者が抗体の約2~約20回、または例えば、約6回用量を受容するように)投与されてもよい。初回のより高い負荷用量、続いて1回以上のより低い用量が投与されてもよい。例となる投薬レジメンは、約4mg/kgの抗体の初回の負荷用量、続いて約2mg/kgの抗体の毎週の維持用量を投与することを含む。しかしながら、他の投薬レジメンが有用な場合がある。この治療法の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易に監視される。
【0184】
上の製剤または治療方法のうちのいずれも、抗Jagged抗体の代わりにまたはそれに加えて、本発明の免疫複合体を使用して行われ得ることが理解される。
【0185】
H. 製品
本発明の別の態様において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な物質を含有する製品が提供される。製品は、容器、および容器上のまたは容器と関連したラベルまたは添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグ等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の多様な材料から形成され得る。容器は、組成物を、それ自体で、または病態を治療する、予防する、および/もしくは診断するのに有効な別の組成物と組み合わせて保有し、また滅菌アクセスポートを有し得る(例えば容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性な薬剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選定した病態を治療するために使用されることを表示する。さらに、製品は、(a)組成物がその中に含有された第1の容器(この組成物は本発明の抗体を含む)、および(b)組成物がその中に含有された第2の容器(この組成物はさらなる細胞傷害性薬剤または治療剤を含む)を含んでもよい。本発明のこの実施形態の製品は、組成物が特定の病態を治療するために使用され得ることを表示する、添付文書をさらに含んでもよい。代替的に、または追加的に、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液および、デキストロース溶液等の、薬剤的に許容される緩衝液を含む、第2の(または第3の)容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的およびユーザの立場から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0186】
上の製品のうちのいずれも、抗Jagged抗体の代わりにまたはそれに加えて、本発明の免疫複合体を含んでもよいことが理解される。
【0187】
III.実施例
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上に提供される一般的説明を考慮すると、種々の他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0188】
実施例1.抗Jagged抗体の生成。
a. 抗Jagged1/2抗体を特定するためのライブラリ選別およびスクリーニング
ヒトIgGレパートリーの天然の多様性を模倣する、選択された相補性決定領域において合成の多様性を有するヒトファージ抗体ライブラリを、M13バクテリオファージ粒子の表面上で提示されたFab断片のパンニングに使用した。ヒトJag1-DSL-EGF1-4(配列番号6)またはヒトJag2-DSL-EGF1-4(配列番号8)をライブラリ選別のための抗原として使用した。Nunc 96ウェルMaxisorpイムノプレートを4℃で一晩、標的抗原(10μg/mL)でコーティングし、それを室温で1時間、ファージブロッキング緩衝液PBST(リン酸緩衝食塩水(PBS)、および1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)、および0.05%(v/v)tween-20)によりブロッキングした。抗体ファージライブラリVH(例えば、Lee et al.,J.Immunol.Meth.284:119-132(2004)を参照されたい)およびVH/VL(Liang et al.,JMB.366:815-829(2007)を参照されたい)を抗原プレートに別個に添加し、室温で一晩インキュベートした。翌日、抗原コーティングプレートをPBT(0.05%Tween-20を含むPBS)で10回洗浄し、結合したファージを50mM HClおよび500mM NaClで30分間溶出し、等体積の1Mトリス塩基(pH7.5)で中和した。回収されたファージを大腸菌XL-1 Blue細胞中で増幅した。後続の選択ラウンドの間、抗原コーティングプレートとの抗体ファージのインキュベーションを2~3時間まで減少させ、プレート洗浄のストリンジェンシーを徐々に増加させた。
【0189】
4回のパンニング後、かなりの濃縮が観察された。96個のクローンを各々VHおよびVH/VLライブラリ選別から選んで、それらがヒトJagged1またはJagged2に特異的に結合するかどうかを決判定した。これらのクローンの可変領域をPCRで配列決定して、固有の配列クローンを特定した。ファージ抗体の親和性を、スポット競合ELISAを使用して順位付けした。ファージ抗体IC50値を、競合ファージ結合ELISAを使用してさらに決定した。ヒトJagged1に特異的に結合する(かつJagged2に結合しない)、Jagged2に特異的に結合する(かつJagged1に結合しない)、またはJagged1およびJagged2の両方に特異的に結合する、固有のファージ抗体を選定し、体外細胞アッセイにおける評価のために完全長IgGに再配列した。
【0190】
目的のクローンを、個々のクローンのVおよびV領域を、それぞれ、ヒトカッパ定常ドメインを含有するpRK哺乳類細胞発現ベクター(pRK.LPG3.ヒトカッパ)、および完全長ヒトIgG1定常ドメインをコードする発現ベクター(pRK.LPG4.ヒトHC)中にクローニングすることによって、IgGへと再配列した(Shields et al.,J Biol Chem 2000;276:6591-6604)。抗体を次いで哺乳類CHO細胞中にて一過性で発現させ、プロテインAカラムで精製した。
【0191】
b. VまたはVライブラリに由来するクローンの親和性改善のためのライブラリの構築物
ファージミドpV0350-2bに由来する、ファージミドpW0703(Lee et al.,J.Mol.Biol340,1073-1093(2004)、全てのCDR-L3位置に停止コドン(TAA)を含有し、M13バクテリオファージの表面上で一価型Fabを提示する)は、親和性成熟のためにVライブラリからの目的のクローンの重鎖可変ドメイン(V)をグラフティングするための、ライブラリテンプレートとして働いた。ハードランダム化戦略およびソフトランダム化戦略の両方を、親和性成熟のために使用した。ハードランダム化のために、3つの軽鎖CDRの選択された位置を有する1つの軽鎖ライブラリを、天然ヒト抗体を模倣するように設計されたアミノ酸を使用してランダム化し、設計されたDNA縮重は、Leeら(J.Mol.Biol 340,1073-1093(2004))に記載される通りであった。選択された位置でおよそ50%の突然変異率を導入した、ソフトランダム化条件を達成するために、野生型ヌクレオチドを選好する塩基の70-10-10-10混合物により突然変異原性DNAを合成した(Gallop et al.,Journal of Medicinal Chemistry 37:1233-1251(1994))。ソフトランダム化のために、CDR-L3の91~96位、CDR-H1の30~33、35位、CDR-H2の50、52、53~54、および56位、CDR-H3の95~98位の残基を標的とし、CDRループの3つの異なる組み合わせH1/L3、H2/L3、およびH3/L3をランダム化のために選択した。
【0192】
ライブラリに由来したクローンのために、各CDRに4つの停止コドン(TAA)を含有し、M13バクテリオファージの表面上で一価型Fabを提示するファージミドを、個々に生成し、それらは、親和性成熟ライブラリの構築のためのクンケル突然変異生成のためのテンプレートとして働いた。CDR-L3の多様性がナイーブライブラリ中に構築されたため、ソフトランダム化戦略のみを、Vライブラリに由来するクローンのために使用した。ソフトランダム化条件を達成するために、CDR-L1の28-31位、CDR-L2の50、53~55位、CDR-L3の91~96位、CDR-H1の30~35位、CDR-H2の50~56位、CDR-H3の95-100位の残基を標的とし、CDRループの4つの異なる組み合わせH1/L3、H2/L3、ならびにH3/L3およびL1/L2/L3(ここでは、テンプレート上の停止コドンの位置を表す)をランダム化のために選択した。
【0193】
c.親和性改善を生じさせるためのファージ選別戦略
親和性改善選択のために、Jag1またはJag2抗原を最初に、限定試薬条件下でビオチン化した。ファージライブラリを1回のプレート選別、およびストリンジェンシーを増加させながら5回の溶液選別に供した。第1回目のプレート選別について、10ug/mL抗原を最初にMaxisorpプレート上にコーティングし、ブロッキング緩衝液(PBS中1%BSAおよび0.05%Tween20)でプレブロッキングした。ブロッキング緩衝液中、3光学濃度/mLのファージ投入物を、抗原プレートに3時間インキュベートした。ウェルをPBS-0.05%Tween20で10回洗浄した。結合したファージを150μL/ウェルの50mM HCl、500mM KClで30分間溶出し、その後50μL/ウェルの1Mトリス(pH8)で中和し、滴定し、次のラウンドのために繁殖させた。後続のラウンドについて、ファージライブラリのパンニングを溶液相中で行い、ここでファージライブラリを、1%Superblock(Pierce Biotechnology)および0.05%Tween20を含有する100μLの緩衝液中、100nMビオチン化標的タンパク質(この濃度は、親クローンファージのIC50値に基づく)と共に、室温で2時間インキュベートした。混合物を1%Superblockでさらに10回希釈し、100μL/ウェルをニュートラアビジンコーティングウェル(10μg/mL)に室温で30分間、穏やかに振盪しながら適用した。バックグラウンド結合を決定するために、ファージを含有する対照ウェルを、ニュートラアビジンコーティングプレート上に捕捉した。結合したファージを次いで、第1回目について記載されるように洗浄し、溶出し、繁殖させた。さらに5回の溶液選別を、選択ストリンジェンシーを増加させながら行った。このうちの最初の1、2回は、ビオチン化標的タンパク質濃度を100nMから0.1nMまで減少させることによる、オン速度選択のためのものであり、このうちの最後の2回は、室温で過剰量の非ビオチン化標的タンパク質(300~1000倍多い)を添加して、より弱い結合剤を打ち負かすことによる、オフ速度選択のためのものである。
【0194】
d.高処理親和性スクリーニングELISA(単一スポット競合)
コロニーを6回目のスクリーニングから選んだ。コロニーを37℃で一晩、96ウェルプレート(Falcon)中、50μg/mLのカルベニシリンおよび1×1010/mL個のM13KO7を含む、150μL/ウェルの2YT培地中で増殖させた。同じプレートから、XL-1感染親ファージのコロニーを対照として選んだ。96ウェルのNunc Maxisorpプレートを、PBS中100μL/ウェルのJag1またはJag2のいずれか(0.5μg/mL)で、4℃で一晩コーティングした。プレートを、PBS 20中150μLの1%BSAおよび0.05%Tween20で1時間ブロッキングした。
【0195】
35μLのファージ上清を、5nM Jag1またはJag2を含むまたは含まない、75μLのELISA(酵素結合免疫吸着測定法)緩衝液(0.5%BSA、0.05%Tween20を含むPBS)中で希釈し、Fプレート(NUNC)中にて、室温で1時間インキュベートさせた。95μLの混合物を抗原コーティングプレートに並べて移した。プレートを15分間穏やかに振盪し、PBS-0.05%Tween 20で10回洗浄した。結合を、ELISA緩衝液中、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合化抗M13抗体を添加することによって定量し(1:2500)、室温で30分間インキュベートした。プレートをPBS-0.05%Tween 20で10回洗浄した。次に、100μL/ウェルのペルオキシダーゼ基質をウェルに添加し、室温で5分間インキュベートした。反応を、100μLの0.1Mリン酸(HPO)を各ウェルに添加することによって停止させ、室温で5分間インキュベートさせた。各ウェル中、黄色のO.D.(光学濃度)を、450nmで標準ELISAプレートリーダーを使用して決定した。親ファージ(100%)のウェルのOD450nm低下(%)と比較して、50%未満のOD450nm低下(%)を有したクローンを配列分析のために選んだ。固有のクローンをファージ調製のために選択して、それぞれの親クローンと比較することによってJag1またはJag2のいずれかに対する結合親和性(ファージIC50)を決定した。次いで最も親和性が改善されたクローンを、抗体産生ならびにさらなるBIAcore結合動態測定分析および他の体外または体内アッセイのために、ヒトIgG1へと再配列した。
【0196】
実施例2.Jagged1またはJagged2抗原に対して生成された抗体の特異的結合。
抗体D-1(図10A、左パネル)およびC-1(図10A、右パネル)を、組換え精製NotchリガンドであるヒトJagged1(hJag-1)、ヒトJagged2(hJag-2)、マウスJagged2(mJag-2)、ヒトDelta様1(hDLL1)、マウスDelta様1(mDLL1)、およびヒトDelta様4(hDLL4)への結合について、標準的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して試験した。ヒトJagged1、ヒトおよびマウスJagged2、ヒトおよびマウスDelta様1(DLL-1)を含む、PBS(pH7.4)中1μg/mLのNotchリガンドタンパク質を、ELISAプレート(Nunc Maxisorp)上に40℃で一晩コーティングした。プレートをPBS中カゼインブロッカー(Pierce)で、室温にて1時間ブロッキングした。PBST緩衝液(0.5%(w/v)BSAを含むPBT緩衝液(PBS+0.05%(v/v)Tween 20))中、抗Jagged1/2 IgGの3倍段階希釈液をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを次いでPBSTで洗浄し、結合した抗体を、IgG特異的ペルオキシダーゼ複合化ヤギ抗ヒトFab(Sigma)で検出した。TMB基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)を使用し、650nMでの吸光度を、標準ELISAプレートリーダーを使用して読み取った。吸光度を、IgGの濃度に対して、KaleidaGraph(Synergy Software)を使用してプロットした。図10Aは、結果を図示し、このうちy軸上のOD450が結合の程度を表す。実施例1に記載される1回目の抗体スクリーニングにおいて得られた抗体のうちの何一つとして、Jagged1のみまたはJagged2のみを選択的に認識するものはなかった。D-1は、ヒトおよびマウスJagged1ならびにヒトおよびマウスJagged2を結合する(図10A、左パネル、データは示されず)。C-1は、ヒトおよびマウスJagged1、ヒトおよびマウスJagged2、ならびにヒトおよびマウスDelta様1を結合する(図10A、右パネル、データは示されず)。いずれの抗体もヒトDelta様4に結合することはなかった。
【0197】
さらなるスクリーニングラウンドは、ELISAによって決定するとき、Jaggedファミリーメンバーのうちの1つのみに特異的な抗体を特定した。抗体Aは、ヒトおよびマウスJagged1を結合したが、Jagged2は結合しなかった(図10B)。逆に、抗体Bは、ヒトおよびマウスJagged2を結合したが、Jagged1は結合しなかった(図10B)。C-1は、Jagged1およびJagged2の両方への結合のための対照として働いた。
【0198】
実施例3.抗体結合親和性およびエピトープマッピング。
抗Jagged1/2ファージ抗体の結合親和性を、BIAcore(商標)-3000器具を使用して表面プラスモン共鳴(SRP)によって測定した。抗Jagged1/2ファージヒトIgGsを、CM5センサチップ上にコーティングしたマウス抗ヒトIgGによって捕捉して、およそ150個の応答単位(RU)を達成した。動態測定のために、ヒトまたはマウスJag1/2 DSL_EGF1-4の2倍段階希釈液(1.95nM~250nM)を、25℃でPBT緩衝液(0.05%Tween 20を含むPBS)中にて、30mL/分の流速で注射した。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純な1対1Langmuir結合モデル(BIAcore Evaluation Software第3.2版)を使用して算出した。平衡解離定数(k)を、比率koff/konとして算出した。
【0199】
図11は、精製されたヒトJagged1、ヒトJagged2、およびマウスJagged2に結合する、抗体A、A-1、A-2、B、B-1、B-2、B-3、B-4、C、C-1、D、D-1、およびD-2についての結合定数を要約する。親抗体Aは、ヒトおよびマウスJagged1に特異的に結合した(図11、データは示されず)。親和性成熟抗体A-1およびA-2は、高い親和性でヒトおよびマウスJagged1の両方を結合した(図11)。抗体A、A-1、およびA-2は、ヒトまたはマウスJagged2を結合しなかった(図11)。逆に、抗体B、B-1、B-2、B-3、またはB-4のうちの何一つとして、ヒトまたはマウスJagged1を結合するものはなかった。親和性成熟抗体B-1、B-2、B-3、またはB-4は、ヒトおよびマウスJagged2に特異的に結合した(図11、データは示されず)。抗体C、C-1、D、D-1、D-2、D-3、D-4、およびD-5は、ヒトおよびマウスJagged1およびJagged2の両方に結合した。(図11)。Jagged1に関して、抗体C、C-1、D、D-1、D-2、D-3、D-4、およびD-5の結合を、ELISA交差遮断(cross-blocking)実験を使用して、Jagged1のDSL-EGF1-4断片にマッピングした。
【0200】
実施例4.抗Jaggedアンタゴニスト抗体は、体外でJagged1誘導性シグナル伝達を阻害する。
抗Jagged抗体がJagged誘導性Notchシグナル伝達のアンタゴニストとして作用し得るかどうかを決定するために、共培養実験を、Wu et al.,Nature 464,1052-1057(15 April 2010)によって記載されるように本質的に行った。NotchリガンドとしてJagged1を発現するように操作されたNIH-3T3細胞を、Notch1を安定に発現する、ならびにNotch応答性TP-1(12X CSL)ホタルルシフェラーゼレポーターおよび恒常的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼレポーター(pRL-CMV、Promega)を発現するように一過性でトランスフェクトされた、NIH 3T3細胞と共培養した。強力なNotchレポーターシグナル(ホタルルシフェラーゼ)が、共培養物中で観察された(図12、J1誘導性陽性対照)。γ-セクレターゼ阻害剤を共培養に添加したとき(図12、化合物E+)、レポーター発現は、バックグラウンドレベルまで低減され、これはレポーター構築物のNotch依存性発現を実証している。
【0201】
漸増量(0.4~50μg/mL)の抗Jagged抗体CまたはDの添加は、レポーター発現の用量依存的阻害をもたらした(図12、CおよびDをJ1誘導性陽性対照と比較されたい)。対照的に、JaggedまたはNotchを認識しないアイソタイプ対照抗体は、レポーター遺伝子発現を有意に低減しなかった(図12、Abアイソタイプ対照)。まとめると、これらの結果は、抗体CおよびDがアンタゴニストとして作用する、すなわち、Notch受容体Notch1を通じたJagged1媒介性シグナル伝達を用量依存的様態で阻害することを実証する。
【0202】
同様の結果を、Jagged1媒介性Notchシグナル伝達を阻害する抗体の能力について上述の共培養アッセイにおいて試験された、親和性成熟した抗体で得た。それぞれの親抗体CおよびDのように、親和性成熟した抗体C-1、D-1、D-2、D-3、D-4、およびD-5は、Jagged1媒介性Notchシグナル伝達を用量依存的様態で阻害したが、一方でアイソタイプ対照については何の阻害も観察されなかった(図13A)。
【0203】
実施例5.抗Jaggedアンタゴニスト抗体は、体外でJagged1誘導性シグナル伝達を阻害する。
抗体CおよびD、ならびにそれらのそれぞれの親和性の成熟した子孫は、ヒトおよびマウスJagged1、ならびにヒトおよびマウスJagged2の両方に結合する(例えば、図10A)。Jagged1のみまたはJagged2のみに選択的な抗体が、それぞれJagged1および/または2誘導性Notchシグナル伝達を選択的に阻害し得るかどうかを決定するために、実施例4に記載される共培養実験をJagged1特異的抗体A-2またはJagged2特異的抗体B-3により反復した。シグナル伝達をJagged1(図13B、濃灰色の柱)によってまたはJagged2(図13B、薄灰色の柱)によって誘導させ、阻害を、実施例4に記載されるように、0.016~50μg/mLの濃度の抗体を使用して決定した。対照には、リガンドで刺激されず、かつ抗体で処理されなかった培養物(図1B3、無処理)、リガンドで刺激されなかった培養物(図13B、無刺激または3T3P)、5~10μg/mLのアイソタイプ対照抗体で処理された培養物(図13B、agDまたはgD)、リガンドで刺激されたが、抗体で処理されなかった培養物(刺激/ABなしまたはAbなし)、5μMのγ-セクレターゼ阻害剤DAPTまたはDMSOのDAPTビヒクル対照で処理された培養物が含まれた。
【0204】
抗体A-2は、用量依存的様態で、Jagged1誘導性シグナル伝達を阻害したが、Jagged2誘導性シグナル伝達を阻害しなかった(図13B、左上パネル)。A-2についてのIC50は、Jagged1阻害に対して2~10μg/mLであったが、一方でJagged2阻害は、最も高い50μg/mLの濃度であってもほとんどまたは全く観察されなかった。この結果は、抗体A-2がJagged1選択的アンタゴニストである、すなわち、抗体A-2がJagged1媒介性シグナル伝達を阻害するが、Jagged2媒介性シグナル伝達を阻害しないことを実証する。対照的に、抗体B-3は強力に、試験された最も低い濃度でJagged2誘導性シグナル伝達を阻害したが、試験された最も高い濃度でJagged1誘導性シグナル伝達を阻害せず、故に、B-3はJagged1選択的アンタゴニストとして確立される(左下パネル)。抗体C-1は、用量依存的様態で、Jagged1誘導性シグナル伝達およびJagged2誘導性シグナル伝達の両方を阻害した(右上パネル)。まとめると、これらの結果は、A-2およびB-3がそれぞれJagged1およびJagged2選択的阻害剤として機能するが、一方でC-1がJagged1およびJagged2の両方の阻害剤として機能することを示す。
【0205】
実施例6.体重に及ぼす抗Jagged抗体処置の影響。
上述のように、γ-セクレターゼ阻害剤、および複数のNotch受容体の他の阻害剤は、体重減少および腸杯細胞化生を引き起こし、これは臨床投与に望ましくない。本明細書に記載される抗体がどのように体重および腸の健康に影響するかを決定するために、マウスに、週2回、抗Jagged1/2抗体C-1(マウス体重1kg当たり5~10mgの抗体(mpk)、抗Jagged1抗体A-2(5~20mpk)、抗Jagged2抗体B-3(5~20mpk)、抗体A-2およびB-3を一緒に(各々5mpk)、またはアイソタイプ対照抗gD抗体(20mpk)を投薬した。アイソタイプ対照抗体はまた、各投薬の総抗体濃度を20mpkにするためにも使用した。各マウスの総体重を、抗体の最初の投与前に決定し、研究の12日目まで監視した。平均体重変化が図14に図示され、開始時体重のパーセンテージとしてグラフ化される。抗Jagged1/2抗体C-1、またはJagged1特異的抗体A-2およびJagged2特異的抗体B-3が一緒の組み合わせのいずれかを使用した、Jagged1およびJagged2の二重阻害は、急速で実質的な体重減少を引き起こした(図14A)。4日目までに、抗Jagged1/2抗体C-1を受けた何匹かのマウスは、それらの体重の5%超を損失しており、それは7日目までに体重のほぼ8~10%の損失にまで進行した(図14A)。A-2およびB-3の両方を受けたマウスもまた、急速に体重を損失し、いくつかの症例においては、11日目までに最大17%まで損失した(図14A)。対照的に、Jagged1特異的またはJagged2特異的抗体単独のうちの何一つとして、5mpkまたは20mpkのいずれでも、研究の過程にわたって体重減少を引き起こしたものはなかった(図14A)。抗Jagged1抗体と抗Jagged2抗体との組み合わせでの処置は、減少した摂餌をもたらし(図14B)、これは観察された体重の減少と相関しており(図14A)、減少した摂餌が部分的または全体的にこの相関する体重減少を説明し得ることを示唆した。
【0206】
実施例7.抗Jagged抗体処置後の腸組織像。
例えば、γ-セクレターゼ阻害剤による、ならびにNotch1およびNotch2またはDll1およびDll4の組み合わせた阻害による、汎Notch阻害(Wu et al.,Nature 2010、Pellegrinet et al.,Gastroenterology,2011を参照されたい)は、マウスにおいて杯細胞化生を引き起こし、この化生は、観察される体重減少に関与すると仮説が立てられてきた。
【0207】
実施例6において観察された、Jagged1およびJagged2の組み合わせた阻害後の体重の急速な減少が、杯細胞化生に同様に関連していたかどうかを決定するために、実施例6に記載されるように処置したマウスの腸試料を単離し、検査した。腸を、ヘマトキシリンおよびエオシン(図15A、H&E)で、または分泌性杯細胞のマーカーである粘液についてはアルシアンブルー(図15A、アルシアンブルー)で、染色した。いくつかの試料は、Paneth細胞のマーカーであるリゾチームの発現について、または増殖マーカーKi-67について、免疫組織化学によって分析した(図15B)。対照抗体または抗Jagged1/2抗体C-1のいずれかで処置されたマウスの腸切片の組織像またはマーカー発現の間で、明白な差異は何ら観察され得なかった。これらの結果は、Jagged1および2の両方の阻害後に観察された体重減少が、杯細胞化生に起因し得ないことを示唆する。その上、これらの結果は、Notch阻害剤での処置後の体重減少に対する新規の機構を明らかにしており、杯細胞化生が汎Notch阻害剤での処置後の体重減少を説明するには不十分であり得ることを示している。
【0208】
実施例8.抗Jagged1アンタゴニスト抗体は、体内でヒト肺がん細胞の増殖を阻害する。
Harlan胸腺欠損ヌードマウスに、ヒト非小細胞肺がん株であるCalu-6細胞を皮下接種した。腫瘍体積がおよそ200平方mmに到達した後、マウスに週2回(0、4、7、11、14、および18日目)、20mpkの抗gDアイソタイプ対照抗体(n=10)または抗Jagged1抗体A-2(n=10)のいずれかを腹腔内(IP)注射した。各マウスにおける腫瘍体積をカリパスでさらに19日間測定した。各マウスの総体重を研究の過程にわたって監視した。
【0209】
抗Jagged1で処置されたマウスにおける腫瘍は、対照群における腫瘍と比べて腫瘍体積の有意な減少を示した(図16A)。抗Jagged1抗体処置の影響は、処置後7日目ほどの早期に検出することができた(図16A)。18日目に、抗Jagged1抗体を受けたマウスにおける平均腫瘍体積は、およそ500mmに到達した一方で、対照動物における平均腫瘍体積は、18日目におよそ750mmに到達した。処置群と対照群との間の体重の有意な変化は、何ら観察することができなかった(図16B)。
【0210】
実施例9.抗Jagged1および抗Jagged2抗体は、体内でヒト乳がん細胞の増殖を阻害する。
C.B-17 SCID.bgマウスに、ヒト基底乳がん株であるMDA-MD-468細胞を乳房脂肪体から接種した。腫瘍体積がおよそ200平方mmに到達した後、マウスに、30mpkの抗gDアイソタイプ対照抗体(ヒトIgG1アイソタイプ)、抗ブタクサアイソタイプ対照抗体(マウスIgG2aアイソタイプ)、ヒトIgG1骨格における抗Jagged1抗体A-2、マウスIgG2a骨格における抗Jagged1抗体A-2、またはヒトIgG1骨格における抗Jagged2抗体B-3を、0、4、7、12、15、18、22、25、29、32、36、43、50、および57日目に腹腔内投薬した。腫瘍体積(y軸)を、最初の注射の60日後にカリパスで測定した。各群(1群当たりn=9)についての腫瘍体積を、線形混合効果モデルを使用してプロットした(図17A)。各群中の各マウスについての腫瘍体積が、図17Bに図示される。
【0211】
3つ全ての抗Jagged抗体が、腫瘍増殖を有意に阻害した。両方の抗Jagged1抗体が、腫瘍増殖を同程度に阻害し、これは観察された抗腫瘍増殖特性が一貫しており、抗体骨格とは独立していることを実証している。
【0212】
上述の発明は、明確な理解のための例示説明および例としてある程度詳細に記載されたが、これらの説明および例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許および科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A-1】
図4A-2】
図4B-1】
図4B-2】
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A-1】
図16A-2】
図16B-1】
図16B-2】
図17A
図17B
【配列表】
0007366700000001.app