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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】静電容量式スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/66 20060101AFI20231016BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20231016BHJP
   H01H 36/00 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
H01H13/66
H01H13/00 B
H01H36/00 Y
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019210973
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021082543
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219233
【氏名又は名称】東プレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】浅野 護
(72)【発明者】
【氏名】三ツ森 大葵
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-173068(JP,A)
【文献】特開2011-175839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/66
H01H 13/00
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、及び前記第1の電極とは絶縁して配置された第2の電極からなる電極部と、
導電体または誘電体で形成された移動部材と、
突起部を備え、該突起部を変位させることにより前記移動部材と前記電極部との間の距離を変化させる押圧部材と、を有し、
前記移動部材は、第1の移動面、及び、前記第1の移動面とは独立して移動する第2の移動面を備え、
前記突起部は、前記押圧部材の第1の押圧により変位して、前記第1の移動面を前記電極部に接近させる第1の突起部と、前記第1の押圧よりも大きい第2の押圧により変位して前記第2の移動面を前記電極部に接近させる第2の突起部と、からなり、
更に前記移動部材は、平面形状を成し、前記第1の突起部の変位により付勢して前記第1の移動面を前記電極部側へ移動させる第1の発条部と、前記第2の突起部の変位により付勢して前記第2の移動面を前記電極部側へ移動させる第2の発条部と、
を備えたことを特徴とする静電容量式スイッチ。
【請求項2】
前記第1の発条部、及び第2の発条部は、渦巻き状のスプリングからなることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式スイッチ。
【請求項3】
第1の電極、及び前記第1の電極とは絶縁して配置された第2の電極からなる電極部と、
導電体または誘電体で形成された移動部材と、
突起部を備え、該突起部を変位させることにより前記移動部材と前記電極部との間の距離を変化させる押圧部材と、を有し、
前記移動部材は、第1の移動面、及び、前記第1の移動面とは独立して移動する第2の移動面を備え、
前記突起部は、前記押圧部材の第1の押圧により変位して、前記第1の移動面を前記電極部に接近させる第1の突起部と、前記第1の押圧よりも大きい第2の押圧により変位して前記第2の移動面を前記電極部に接近させる第2の突起部と、からなり、
前記押圧部材は、可撓性を有して変形する変形部材を有し、
前記第1の突起部は、前記押圧部材の平面視の中央に設けられ、前記押圧部材が押圧されていない通常時には前記移動部材と離間しており、前記第1の押圧時には、前記変形部材が変形することにより前記第1の移動面に接触し、
前記第2の突起部は、前記押圧部材の平面視で、前記第1の突起部から離れた位置に設けられ、前記通常時には前記移動部材と離間しており、前記第2の押圧時には、前記変形部材が変形することにより前記第2の移動面に接触すること
を特徴とする静電容量式スイッチ。
【請求項4】
前記第2の突起部は、前記押圧部材の平面視で、前記第1の突起部を挟んで対向する2箇所に設けられていること
を特徴とする請求項3に記載の静電容量式スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器へ情報を入力する入力装置等に用いられるスイッチに係り、入力方式に静電容量方式を用いた静電容量式スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、カメラのオートフォーカスシャッターなどでは、一つの構造体で二段階の入力が可能な二段スイッチが用いられている。二段スイッチの作動方式としては、メカ方式、容量方式、メカ・容量ダブル方式等、種々の方式が知られている。このうち、機械的な接点がなく耐久性に優れ、回路・構造の単純化、操作感触の良好性から、静電容量の変化を利用した静電容量式スイッチが多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、キーパッドに触れた指と基板上の導電パターン間の静電容量の変化と、キーパッドを全押しした操作によりキーパッドの接触面積の拡大により静電容量がさらに増加することを用いて二段入力を可能にしたスイッチについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-175839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された静電容量式スイッチは、操作者の指が一方の電極になる構成であるので、指と電極との間隔が同一であっても、指のタッチ面積(指の太さ)や人体容量の変化によって容量値が変わるため、タッチの仕方により検出する容量値に大きな差が生じてしまい、スイッチのストロークと静電容量値の変化が入力環境により変動するという問題があった。
【0006】
また、人体に載ったノイズ除去や浮遊容量対策が難しく、安定した容量値が入手できないことがあり、急峻な容量変化を2箇所で得ることが困難であった。更には、個々のスイッチのバラツキもあり、速い操作が要求されるゲーム用マウスや連打が要求されるキーボード等の入力装置への使用には不向きであった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高速応答性を有し且つ1ストロークで安定した二段階の入力が可能な静電容量式スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明は、第1の電極、及び前記第1の電極とは絶縁して配置された第2の電極からなる電極部と、導電体または誘電体で形成された移動部材と、突起部を備え、該突起部を変位させることにより前記移動部材と前記電極部との間の距離を変化させる押圧部材と、を有し、前記移動部材は、第1の移動面、及び、前記第1の移動面とは独立して移動する第2の移動面を備え、前記突起部は、前記押圧部材の第1の押圧により変位して、前記第1の移動面を前記電極部に接近させる第1の突起部と、前記第1の押圧よりも大きい第2の押圧により変位して前記第2の移動面を前記電極部に接近させる第2の突起部と、からなり、更に前記移動部材は、平面形状を成し、前記第1の突起部の変位により付勢して前記第1の移動面を前記電極部側へ移動させる第1の発条部と、前記第2の突起部の変位により付勢して前記第2の移動面を前記電極部側へ移動させる第2の発条部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る静電容量スイッチでは、高速応答性を有し且つ1ストロークで安定した二段階の入力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチの構成を示す断面図であり、操作されていない状態を示す。
図2図2は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチに用いられるラバー部材の断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチに用いられるラバー部材を下方から見た斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチに用いられる固定電極の構成を示す平面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチに用いられる可動電極の構成を示す平面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチに用いられる固定電極の上に可動電極が配置された状態を示す説明図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチが、1段階目まで操作されたときの状態を示す断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチが、2段階目まで操作されたときの状態を示す断面図である。
図9図9は、静電容量式スイッチを一段構造とした場合、及び二段構造とした場合のストロークと静電容量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る静電容量式スイッチについて図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る静電容量式スイッチ(以下、単に「スイッチ」と略す)の構成を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、スイッチ1は、ラバー部材11(押圧部材)と、プランジャ12と、上ハウジング13と、下ハウジング14と、可動電極16と、固定電極17と、基板18と、を備えている。下ハウジング14には、スペーサ15が設けられている。なお、符号19は、下ハウジング14を基板18に固定するためのボスである。
【0013】
図2は、ラバー部材11の断面図、図3は、ラバー部材11を下方から見た斜視図である。ラバー部材11は、可撓性を有し且つ絶縁性を有する材質で構成されている。例えばシリコーンゴム、ウレタンゴム、などで構成されている。
【0014】
図2に示すように、ラバー部材11は、中空円筒形状をなす押圧部111と、押圧部111の下端面116の略中央部に形成され円柱形状をなす中央突起部113(第1の突起部)とを有する。また、ラバー部材11は、下端面116の周囲部の2箇所に形成された周囲突起部114(第2の突起部)を備えている。2つの周囲突起部114は、中央突起部113を挟んで互いに対向する位置、即ち180°の位置に設けられている。
【0015】
中央突起部113の下端は、周囲突起部114の下端よりも若干量だけ下方に突起している。従って、押圧部111が押圧され、後述する支持脚部112が弾性変形すると、先に中央突起部113の下端が可動電極16に接触し、更なる支持脚部112の弾性変形により周囲突起部114の下端が可動電極16に接触することになる。換言すれば、押圧部111が押圧されて第1の押圧とされると、中央突起部113が可動電極16に接触して、該可動電極16を下方に移動させる。更に押圧部111が押圧されて、第1の押圧よりも大きい第2の押圧とされると、周囲突起部114が可動電極16に接触して、該可動電極16を下方に移動させる。
【0016】
ラバー部材11は、円環形状をなし断面が矩形状とされたラバーベース115と、押圧部111とラバーベース115との間に設けられ、全体が上部裁断円錐形状をなす支持脚部112(変形部材)と、を備えている。
【0017】
ラバーベース115は、可動電極16の周囲部の表面に位置してラバー部材11全体を支持する。
【0018】
ラバー部材11は、2つの突起部、即ち中央突起部113(第1の突起部)、及び周囲突起部114(第2の突起部)を備え、各突起部を上下方向に変位させることにより、可動電極16(移動部材)と固定電極17(電極部)との間の距離を変化させる押圧部材としての機能を備えている。
【0019】
中央突起部113(第1の突起部)は、ラバー部材11(押圧部材)を平面視した図(図2の符号Gの方向から見た平面図)の中央に設けられ、ラバー部材11が押圧されていない通常時には可動電極16(移動部材)と離間しており、1段階目に押圧した際(第1の押圧時)には、支持脚部112が変形することにより第1の領域P1(第1の移動面)に接触する。
【0020】
また、周囲突起部114(第2の突起部)は、ラバー部材11の平面視で、中央突起部113から離れた位置に設けられ、通常時には可動電極16と離間しており、2段階目に押圧した際(第2の押圧時)には、支持脚部112が更に変形することにより第2の領域P2(第2の移動面)に接触する。
【0021】
支持脚部112は、可撓性を有しており、ユーザの操作により押圧部111が上端側から下方に向けて押圧された際に弾性変形する。このため、押圧部111は下方に移動し、ひいては中央突起部113及び周囲突起部114が下方に移動する。また、ユーザによる押圧が解除されると、弾性力により元の状態に戻る。
【0022】
図1に戻って、プランジャ12は、ラバー部材11の上方に設けられている。プランジャ12は、筒状部121と、平板部122と、脚部123から構成されている。プランジャ12は、例えばプラスチックなどの絶縁性の材質で構成されている。
なお、プランジャ12の上部には、例えば、キートップ、マウスボタンなどの操作スイッチが設けられる。
【0023】
筒状部121は、円柱形状を成しており、上面はユーザにより符号「F」の方向から押圧される面とされている。平板部122は、基板18に対してほぼ平行に形成されており、該平板部122の下面はラバー部材11の押圧部111(図2参照)の上面に接している。
【0024】
脚部123は、平板部122の周囲から斜め下方に向けて形成されている。
プランジャ12の周囲には、該プランジャ12を保持するための上ハウジング13及び下ハウジング14が設けられている。
【0025】
下ハウジング14は、筒形状を成しており、筒の中心軸が基板18に対して垂直方向を向くように設けられている。
上ハウジング13は、プランジャ12を囲むように配置されている。上ハウジング13の周囲部には突起131が形成され、下ハウジング14の内面側には切欠141が形成され、突起131が切欠141に係合して、下ハウジング14に対して上ハウジング13が固定される。
【0026】
また、プランジャ12が押圧されていない状態(符号「F」の方向から力が加えられてない状態)である通常状態において、上ハウジング13の上部裏面132は、プランジャ12の平板部122と面接触している。
【0027】
下ハウジング14に形成されるスペーサ15は、断面L字形状をなし、ラバー部材11のラバーベース115の外周面と基板18との間に設けられている。
【0028】
可動電極16(移動部材)は、平板形状をなし、基板18とほぼ平行になるようにスペーサ15の上面に配置されている。また、可動電極16の周囲部にはラバー部材11のラバーベース115が接している。下ハウジング14にスペーサ15が形成されていることにより、スペース20が形成されている。
【0029】
基板18は、例えばリジッド基板である。基板18には、平板形状の固定電極17が形成され、更にその表面にレジストが形成されている。
【0030】
[可動電極16、固定電極17の構成]
次に、図4図6を参照して可動電極16及び固定電極17の詳細な構成について説明する。図4は固定電極17の平面図、図5は可動電極16の平面図、図6は可動電極16に固定電極17(二点鎖線で表記)を重畳して示した平面図である。
【0031】
図4に示すように、絶縁性を有する基板18に形成された固定電極17(電極部)は、例えば銅箔などの導電体で構成され、半円形状をなす2つの電極、即ち、第1の電極171と第2の電極172を有している。各電極171、172の間の電極が形成されていない領域を空間部173とする。即ち、第1の電極171と第2の電極172は、空間部173により絶縁されている。空間部173はレジストで構成されている。
【0032】
第1の電極171及び第2の電極172は、それぞれ電線を経由して検出回路(図示省略)に接続されている。
【0033】
固定電極17は、コンデンサとしての機能を有する。各電極171、172のうちの一方がドライブ側固定電極となり、他方がセンス側固定電極となっている。
【0034】
図5に示すように、可動電極16は、ステンレスなどの金属板で形成されており、螺旋形状の切欠き161a、161b、161cがエッチング等で形成される。切欠き161aは狭幅の円弧形状を成しており、可動電極16の中央部を中心として、360°よりも若干小さい角度分だけ形成されている。同様に、切欠き161bは狭幅の円弧形状を成しており、可動電極16の中央部を中心として、360°よりも若干小さい角度分だけ形成されている。なお、可動電極16は金属以外の誘電体で構成することも可能である。なお、図5では、切欠き161a、161bは360°よりも若干小さい角度分だけ形成される例について示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、360°よりも大きくてもよい。
【0035】
切欠き161cは、2つの切欠き161a、161bの間の領域を通過し、且つ可動電極16の中心部を通過するように形成されている。切欠き161cは、可動電極16の中心部において半円状の曲線部p1を形成している。曲線部p1により、可動電極16の中央の領域は、第1の領域P1(第1の移動面)と第2の領域P2(第2の移動面)の2つの領域に分割される。また、半円形状の曲線部p1が形成されていることにより、第1の領域P1には半円形状部p2が形成されている。
なお、曲線部p1の形状は半円形状でなくても良く、ラバー部材11の中央突起部113で押下される形状であればよい。例えば、半円形状部p2の形状は四角形や三角形であってもよい。
【0036】
各切欠部161a~161cで挟まれる金属板の領域(符号q1、q2)は、狭幅な曲線状の領域となる。各切欠部161a~161cが形成されることにより、この領域は金属板に直交する方向(法線方向)に加えられる力により付勢するスプリングの機能を有することになる。切欠部161a~161cで挟まれる領域のうち、第1の領域P1に繋がる領域をスプリング部q1(第1の発条部)とし、第2の領域P2に繋がる領域をスプリング部q2(第2の発条部)とする。
【0037】
即ち、可動電極16(移動部材)は平面形状を成し、中央突起部113の変位により付勢して第1の領域P1(第1の移動面)を固定電極17側へ移動させるスプリング部q1(第1の発条部)と、周囲突起部114の変位により付勢して第2の領域P2(第2の移動面)を固定電極17側へ移動させるスプリング部q2(第2の発条部)を備えている。
スプリング部q1、及び、スプリング部q2は渦巻き状のスプリングである。
【0038】
切欠部161a~161cは、例えば、アルキメデスの螺旋状に形成され、切欠きの幅は一定とされている。従って、スプリング部q1、q2も一定の幅となる。スプリング部q1、q2は、金属板に直交する方向(法線方向)の変動に対して、水平方向(金属板に平行な方向)の変動幅が少ないため、耐久性が高い。可動電極16は、導電体または誘電体で形成された移動部材としての機能を備えている。
【0039】
なお、切欠部161a~161cは必ずしも同一の幅である必要はなく、外側の起点を太くし、終点に向けて徐々に細くなっても良いし、またこれとは反対に外側の起点を細くし、終点に向けて徐々に太くなっても良い。スプリング部q1、q2により第1の領域P1、及び第2の領域が上下方向(図5の紙面に直交する方向)に移動可能であればよい。切欠部161a~161cの形状は、種々の形状とすることができ、例えば、一定の幅で波打つ形状に形成されてもよい。
【0040】
スプリング部q1が形成されることにより、可動電極16の法線方向(図5の紙面に直交する方向)に第1の領域P1を押圧すると、第1の領域P1は法線方向に移動し、スプリング部q1は付勢される。つまり、第1の領域P1を法線方向(直交する方向)に押圧するとスプリング部q1は付勢され、押圧を解除すると第1の領域P1は元の位置に戻る。
【0041】
同様に、可動電極16の法線方向に第2の領域P2を押圧すると、第2の領域P2は法線方向に移動し、スプリング部q2は付勢され、押圧を解除すると元に戻る。即ち、第1の領域P1と第2の領域P2はそれぞれ独立に、可動電極16の法線方向に移動する。
なお、第1の領域P1に形成される半円形状部p2は、図2に示したラバー部材11の中央突起部113により押圧される部位である。
【0042】
図6は、可動電極16に固定電極17を重畳して示す説明である。図6に示すように、切欠部161cのうち、可動電極16の中央部を横切る領域αと、固定電極17の空間部173は、互いに直交するように配置されている。
【0043】
[本実施形態の作用の説明]
次に、本実施形態に係るスイッチ1の作用について説明する。図7は、符号「F」に示す方向からプランジャ12を押圧して第1の押圧としたときの状態(以下、第1の押圧状態という)を示す断面図である。図8は、第1の押圧状態から更にプランジャ12を押圧して第1の押圧よりも大きい第2の押圧としたときの状態(以下、第2の押圧状態という)を示す断面図である。なお、図7図8と対比するため、図1に示した状態、即ち、プランジャ12が押圧されていない状態を「通常状態」ということにする。
【0044】
図1に示す通常状態では、プランジャ12が押圧されていないため、支持脚部112(図2参照)は弾性変形していない。従って、中央突起部113は可動電極16に接しておらず、可動電極16と固定電極17との間は距離z1(図1参照)となっている。即ち、固定電極17に対して可動電極16は接近していないので、固定電極17を形成する第1の電極171と第2の電極172との間の静電容量は、第1の静電容量(これを、C1とする)となる。
【0045】
次いで、ユーザがプランジャ12を押圧すると、図7に示すように、ラバー部材11の押圧部111が下方に移動し、支持脚部112が弾性変形して中央突起部113が下方に移動する。中央突起部113は、図5に示した半円形状部p2に接触して、該半円形状部p2ひいては第1の領域P1を下方に押圧することになる。第1の領域P1は下方に移動して固定電極17に接近する。即ち、第1の押圧状態となる。このとき、プランジャ12の平板部122と、上ハウジング13の上部裏面132との間の距離はx1となる。なお、「固定電極17に接近する」とは、レジストを介して固定電極17に接触することを含む概念である。また、固定電極17はレジストで覆われているため、可動電極16の第1の領域P1ないし第2の領域P2が固定電極17にレジストを介して接触しても、第1の電極171と第2の電極172とは絶縁状態であり、短絡することはない。
【0046】
第1の押圧状態において、固定電極17の、第1の電極171と第2の電極172との間に可動電極16のうちの第1の領域P1が接近するので、第1の電極171と第2の電極172との間の静電容量は,第2の静電容量(これを、C2とする)に変化する。
【0047】
また、可動電極16にはスプリング部q1が形成されているので、スプリング部q1は付勢される。即ち、この状態でユーザがプランジャ12の押圧を解除すると、スプリング部q1の付勢力により可動電極16は、元の平板形状に戻る。また、支持脚部112の付勢力によりラバー部材11は通常状態(図1に示す状態)に戻されることになる。
【0048】
一方、図7に示した第1の押圧状態から更にプランジャ12を押圧すると、図2に示した周囲突起部114が図5に示した可動電極16の第2の領域P2を下方に押圧することになる。図8に示すように、第2の領域P2は下方に移動して固定電極17に接近する。即ち、第2の押圧状態となる。このとき、プランジャ12の平板部122と、上ハウジング13の上部裏面132との間の距離はx2となる。
【0049】
第2の押圧状態において、固定電極17の、第1の電極171と第2の電極172との間に可動電極16のうちの第1の領域P1及び第2の領域P2の双方が接近するので、第1の電極171と第2の電極172との間の静電容量は,第3の静電容量(これを、C3とする)に変化する。
【0050】
また、プランジャ12の押下を解除すると、スプリング部q1、q2の付勢力により可動部材16は元の平板形状に戻る。また、支持脚部112並びに下端面116の付勢力によりラバー部材11は通常状態(図1に示す状態)に戻される。
【0051】
[ストロークと静電容量の変化]
次に、プランジャ12を押圧したときの、ストロークと静電容量の変化を、図9に示すグラフを参照して説明する。
【0052】
図9に示す曲線S1(実線)は、スイッチ1を二段構造にした場合(本実施形態の場合)を示し、曲線S2(破線)は、二段構造としない構造(標準構造)とした場合を示す。曲線S2では、プランジャ12のストロークが0.5[mm]に達すると静電容量が上昇し始め、0.8[mm]付近で上限の4.2[pF]程度に達する。即ち、通常状態では静電容量は0[pF]とされ、プランジャの押下状態において4.2[pF]に変化する。
【0053】
一方、曲線S1では、プランジャ12のストロークが0.5[mm]に達すると静電容量が上昇し始め、0.6~0.8[mm]の範囲で静電容量は2~2.5[pF]となる。更に、ストロークが0.9[mm]程度に達すると静電容量は4.2[pF]に達する。即ち、通常時において静電容量は0[pF]とされ、一段階の押圧で静電容量は2~2.5[pF]とされ、二段階の押圧で静電容量は4.2[pF]とされる。
【0054】
そののち、ストロークを大きくしても、可動電極16と固定電極17のレジストが接触した状態が維持されるだけであるので、静電容量は変化しない。
このように、本実施形態では、プランジャ12のストロークにより切り替えられる二段階スイッチとして機能させることができる。
【0055】
[本実施形態の効果の説明]
このようにして、本実施形態に係るスイッチ1(静電容量スイッチ)では、ユーザがプランジャ12を押下しない通常状態では、第1の電極171と第2の電極172の間の静電容量は第1の静電量C1となる。ユーザがプランジャ12を押圧して第1の押圧状態となった場合には、静電容量は第2の静電容量C2となる。その後更に、ユーザがプランジャ12を押圧して第2の押圧状態となった場合には、静電容量は第3の静電容量C3となる。
【0056】
そして、これらの静電容量の変化を検出することにより、ユーザによるプランジャ12の押圧状態を検出できる。従って、スイッチ1を二段階スイッチして使用することが可能となる。
【0057】
また、ラバー部材11に設けられる支持脚部112が弾性変形することにより、可動電極16を押圧する構成であるので、ユーザによる押圧が解除されると即時に通常状態に戻るので、スイッチの切替速度を高めることができる。
【0058】
可動電極16にスプリング部q1、q2を形成して、第1の領域P1、及び第2の領域P2を固定電極17に接近させる構成であるので、即応性に優れ、且つ耐久性を高めることが可能となる。
【0059】
更に、短いストロークでアナログ信号(容量)の急激な変化を2箇所で作り出すことができ、「2動作/1ストローク」によりスイッチング動作の高速応答性を実現し、連打入力を可能とすることができる。
【0060】
また、ストローク当たりにおけるコンデンサの急峻な容量変化により、ON位置をユーザの好みの位置に合わせて選択することができる。また、従来のように人体に載ったノイズの影響を受けることなく、微小静電容量検出下でのS/N比が向上し、スイッチング動作の安定化することが可能である。
【0061】
更に、静電容量方式により微弱な力で確実な入力が可能なため二点の入力ポイントがあっても最適な荷重特性を維持できる。二段階の入力スイッチとしては簡素な構造のため、他の方式と比較して安価に製造できる。また、従来のコニカルスプリング方式の静電容量型スイッチではできなかった薄型化を図ることが可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0063】
1 静電容量式スイッチ
11 ラバー部材(押圧部材)
12 プランジャ
13 上ハウジング
14 下ハウジング
15 スペーサ
16 可動電極(移動部材)
17 固定電極(電極部)
18 基板
20 スペース
111 押圧部
112 支持脚部(変形部材)
113 中央突起部(第1の突起部)
114 周囲突起部(第2の突起部)
115 ラバーベース
116 下端面
121 筒状部
122 平板部
123 脚部
131 突起
132 上部裏面
141 切欠
161a 切欠部
161b 切欠部
161c 切欠部
171 第1の電極
172 第2の電極
173 空間部
p1 曲線部
p2 半円形状部
P1 第1の領域(第1の移動面)
P2 第2の領域(第2の移動面)
q1 スプリング部(第1の発条部)
q2 スプリング部(第2の発条部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9