(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20231016BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20231016BHJP
A23L 2/60 20060101ALI20231016BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20231016BHJP
A23L 27/30 20160101ALI20231016BHJP
A23L 29/256 20160101ALN20231016BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20231016BHJP
A23L 29/281 20160101ALN20231016BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L27/00 Z
A23L2/00 C
A23L2/52
A23L27/30 A
A23L29/256
A23G3/34 101
A23L29/281
(21)【出願番号】P 2019213511
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018225763
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森谷 愛美
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-65557(JP,A)
【文献】特開2010-131008(JP,A)
【文献】特開2007-159431(JP,A)
【文献】特開2002-291441(JP,A)
【文献】特開平6-335362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 27/00
A23L 2/00
A23L 2/52
A23L 29/256
A23G 3/34
A23L 29/281
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)糖アルコール及び二糖から選択される少なくとも1種
固形分中に20~95質量%
(B)カフェイン 固形分中に0.01~1.0質量%、及び
(C)アストラガリン
を含有し、
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が0.01~1である、
経口組成物。
【請求項2】
成分(A)がキシリトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、マルトース、パラチノース及びラクトースから選択される1種又は2種以上である、請求項1記載の経口組成物。
【請求項3】
飲食品である、請求項1又は2記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖アルコール及び二糖は甘味のキレがよく、単糖に比べて甘味が穏やかでありながらも、味の厚み(ボディ感)をもたらし、製造物性に優れていることから、甘味料や賦形剤として使用されている(特許文献1、2)。
【0003】
一方、カフェインは、脂質エネルギー代謝や運動機能の向上等の生理効果を有することが知られており、近年カフェインを強化した飲食品の需要が拡大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-198268号公報
【文献】特開平5-95766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、機能性素材としてカフェインを含有する飲食品を開発すべく、カフェインを含有する飲食品に糖アルコール及び/又は二糖を含有させたところ、ボディ感が低下するだけでなく、甘味のキレも悪化するという課題が存在することを見出した。
本発明の課題は、カフェインを含有しながらも、ボディ感が保たれ、甘味のキレの良好な経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、糖アルコール及び/又は二糖と、カフェインを含有する経口組成物に、カフェインに対して特定のポリフェノールを特定の量比で含有させることで、糖アルコール及び/又は二糖と、カフェインを含有しながらも、ボディ感が保たれ、甘味のキレの良好な経口組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)糖アルコール及び二糖から選択される少なくとも1種
固形分中に20~95質量%
(B)カフェイン 固形分中に0.01~1.0質量%、及び
(C)アストラガリン
を含有し、
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が0.01~1である、
経口組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、糖アルコール及び/又は二糖と、カフェインを含有しながらも、ボディ感が保たれ、甘味のキレの良好な経口組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「経口組成物」とは、経口摂取に供される製品をいう。経口組成物の製品形態としては、常温(20℃±15℃)において固形でも、液状でもよく、特に限定されない。液状の場合、濃縮液状、ゲル状、ゼリー状、スラリー状のいずれの形態であっても構わない。濃縮液状である場合、その固形分濃度はRTD(レディ・トゥ・ドリンク)よりも高濃度であれば適宜選択可能であり、特に限定されない。固形としては、例えば、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等を挙げることができる。
【0010】
本発明の経口組成物は、固形分が2.5%以上が好ましく、2.7%以上がより好ましく、3%以上が更に好ましい。より具体的には、経口組成物が液状である場合、経口組成物中の固形分量は通常2.5質量%以上、好ましくは2.7質量%以上、より好ましくは2.9質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であって、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、殊更に好ましくは10質量%以下である。また、経口組成物が固形である場合、経口組成物中の固形分量は通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。なお、固形である場合の固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。中でも、経口組成物の製品形態としては、固形、濃縮液状が好ましく、固形が更に好ましい。固形の中では、粉末状、顆粒状が好ましい。
【0011】
本発明の経口組成物は、成分(A)として糖アルコール及び二糖から選択される少なくとも1種を含有する。
糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、パラチニット等を挙げることができる。糖アルコールは、1種又は2種以上を使用することができる。中でも、糖アルコールとしては、ボディ感の保持、甘味のキレ改善の観点から、キシリトール、エリスリトール、マルチトール及びマンニトールから選択される1種又は2種以上が好ましく、キシリトール、エリスリトール及びマルチトールから選択される1種又は2種以上が更に好ましい。
【0012】
二糖としては、例えば、スクロース、マルトース、ラクトース、パラチノース、セロビオース、トレハロース等が挙げられる。二糖は、1種又は2種以上を使用することができる。中でも、二糖としては、ボディ感の保持、甘味のキレ改善の観点から、マルトース、パラチノース及びラクトースから選択される1種又は2種以上が好ましく、マルトース及びパラチノースから選択される少なくとも1種がより好ましく、マルトースが更に好ましい。
【0013】
成分(A)としては、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、マルトース、パラチノース及びラクトースから選択される1種又は2種以上が好ましく、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、マルトース及びパラチノースから選択される1種又は2種以上がより好ましく、キシリトール、エリスリトール、マルチトール及びマルトースから選択される1種又は2種以上が更に好ましい。
【0014】
本発明の経口組成物中の成分(A)の含有量は、固形分中に20~95質量%であるが、ボディ感の保持の観点から、22質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、28質量%以上が更に好ましく、また甘味のキレ改善の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。かかる成分(A)の含有量の範囲としては、本発明の経口組成物の固形分中に、好ましくは22~90質量%であり、より好ましくは25~80質量%であり、更に好ましくは28~60質量%である。
【0015】
本発明の経口組成物は、成分(B)としてカフェインを含有する。成分(B)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。また、成分(B)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、天然由来品でもよい。
【0016】
本発明の経口組成物中の成分(B)の含有量は、固形分中に0.01~1.0質量%であるが、生理効果の観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.04質量%以上が更に好ましく、またカフェイン由来の苦味抑制の観点から、0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。成分(B)の含有量の範囲としては、本発明の経口組成物の固形分中に、好ましくは0.02~0.8質量%であり、より好ましくは0.03~0.6質量%であり、更に好ましくは0.04~0.3質量%である。なお、成分(B)が水和物の形態である場合、成分(B)の含有量は無水物に換算した値とする。また、成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0017】
本発明の経口組成物は、成分(C)としてアストラガリンを含有する。ここで、本明細書において「アストラガリン」とは、ケンフェロールの3位にグルコースが結合した化合物である。成分(C)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。また、成分(C)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、アストラガリンを含有する植物から抽出したものでもよい。
【0018】
本発明の経口組成物中の成分(C)の含有量は、ボディ感の保持、甘味のキレ改善の観点から、固形分中に0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.007質量%以上が更に好ましく、またアストラガリン由来の渋味抑制の観点から、固形分中に0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。成分(C)の含有量の範囲としては、本発明の経口組成物の固形分中に、好ましくは0.001~0.5質量%であり、より好ましくは0.003~0.3質量%であり、更に好ましくは0.007~0.1質量%である。なお、成分(C)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0019】
また、本発明の経口組成物は、成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が0.01~1であるが、ボディ感の保持、甘味のキレ改善の観点から、0.02以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.04以上が更に好ましく、0.06以上が殊更に好ましく、またアストラガリン由来の渋味抑制の観点から、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。かかる質量比[(C)/(B)]の範囲としては、好ましくは0.02~0.9であり、より好ましくは0.03~0.7であり、更に好ましくは0.04~0.5であり、0.06~0.5が殊更に好ましい。
【0020】
また、本発明の経口組成物は、必要に応じて許容される担体を含有することができる。例えば、賦形剤(例えば、澱粉、又はデキストリン等の澱粉分解物);結合剤(例えば、プルラン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、硬化油等);崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等);滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ素等);嬌味剤(例えば、ステビア等);オリゴ糖、寒天、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、リン酸水素カルシウム、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、希釈剤等の担体が挙げられる。なお、担体は、経口組成物の種類により適宜選択可能であり、また担体の含有量は、担体の種類に応じて本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することが可能である。
【0021】
更に、本発明の経口組成物は、所望により、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、香料、果汁、植物エキス、エステル、色素、乳化剤、乳成分、ココアパウダー、調味料、植物油脂、酸化防止剤、保存料、pH調整剤、品質安定剤、花蜜エキス等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0022】
本発明の経口組成物としては、飲食品が好ましい。飲食品の具体例としては、例えば、インスタント飲料;濃縮還元飲料;乳飲料、ヨーグルト、チーズ等の乳製品;ゼリー、チョコレート、キャンディー、スナック、ビスケット、米菓等の菓子の飲食品が挙げられ、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等)とすることもできる。なお、インスタント飲料又は濃縮還元飲料とは、液体に希釈溶解して飲料として飲用に供されるものをいい、液体は飲料に還元できれば特に限定されない。例えば、水、炭酸水、牛乳、豆乳等が挙げられ、液体の温度は問わない。また、固形食品、健康食品である場合の剤型としては、例えば、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、散剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤等が挙げられる。中でも、経口組成物としては、固形経口組成物が好ましく、固形食品が更に好ましい。
【0023】
本発明の経口組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方法を採り得る。例えば、成分(A)、成分(B)及び成分(C)、必要により他の成分を配合し、成分(A)及び成分(B)の各含有量、並びに質量比[(C)/(B)]が上記範囲内となるように混合して製造することができる。成分(A)、成分(B)及び成分(C)の混合順序は特に限定されず、任意の順序で添加しても、3者を同時に添加してもよい。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することが可能であり、混合装置を使用しても構わない。混合装置の混合方式は、容器回転型でも、容器固定型でもよい。容器回転型として、例えば、水平円筒型、V型、ダブルコーン型、立方体型等を採用することができる。また、容器固定型として、例えば、リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、流動層型、フィリップスブレンダ-等を採用することができる。また、公知の造粒法により造粒物としてもよい。造粒方法としては、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒、粉末被覆造粒等が挙げられる。なお、造粒条件は、造粒方法により適宜選択することができる。また、錠剤とする場合には、湿式打錠及び乾式打錠のいずれでもよく、公知の圧縮成形機を使用することができる。更に、濃縮液状である場合、例えば、常圧にて溶媒の蒸発を行う常圧濃縮法、減圧にて溶媒の蒸発を行う減圧濃縮法、膜分離により溶媒を除去する膜濃縮法等の公知の濃縮方法を採用することができる。
【実施例】
【0024】
1.糖アルコールの分析
糖アルコールの分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :示差屈折計 RID-10A(島津製作所社製)
・カラム :Shodex Asahipak NH2P-50 4E、φ4.6mm×250mm(昭和電工社製)
【0025】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:室温
・移動相 :アセトニトリル及び水の混液(81:19 体積比)
・流量 :1mL/min
・試料注入量:20μL
【0026】
以下の手順にて分析用試料を調製した。
試料を3g量りとり、これに水10mLを加えて溶解し中和した溶液を、超音波洗浄器を用いて超音波抽出を30分間行った。その溶液に水を加えて20mLに定容した。その溶液をメンブレンフィルターでろ過し、試料溶液とした。その試料溶液を高速液体クロマトグラフィ分析に供した。
【0027】
2.二糖の分析
二糖の含有量はHPLC分析法などの公知の方法で求めることができる。具体的には下記の方法で求めることができる。分析機器はHPLCを使用する。装置の構成ユニットの型番、分析条件は次の通りである。
・機種 :LC-10ADvp(島津製作所社製)
・検出器 :蛍光分光光度計 RF-10AXL(島津製作所社製)
・カラム :TSKgel SUGAR AXIφ4.6×150mm(東ソー社製)
・カラム温度 :60℃
・移動相 :0.5mol/Lホウ酸緩衝液(pH8.7)
・サンプル注入量:20μL
・流量 :0.4mL/min
・蛍光励起波長:320nm
・蛍光測定波長:430nm
・ポストカラム:反応液 ;1W/V%のL-アルギニン溶液
反応液流量;0.7mL/min
反応温度 ;150℃
【0028】
試料2gを精秤し、中和して濃縮乾固させた後、水で再溶解させ、水で50mLに定容する。これをSep-Pak plus Accell QMA(日本ウォーターズ社製)に通液し、更に孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した溶液について、高速液体クロマトグラフ法により分析する。
【0029】
3.カフェインの分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフィ(型式SCL-10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフィ用パックドカラム(L-カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。グラジエント条件は以下の通りである。リテンションタイム条件は、カフェインの標準試薬を用いて設定した。
【0030】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 97% 3%
5 97% 3%
37 80% 20%
43 80% 20%
43.5 0% 100%
48.5 0% 100%
49 97% 3%
60 97% 3%
【0031】
4.アストラガリンの分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフィ(型式LC-20 Prominence,島津製作所製)を用い、カラム〔Cadenza CD-C18(3μm,4.6mmφ×150mm,Imtakt)〕を装着し、カラム温度40℃にてグラジエント法により行った。移動相C液は酢酸を0.05質量%含有するアセトニトリル溶液、D液はアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は360nmの条件で行った。なお、グラジエントの条件は、以下のとおりである。
【0032】
濃度勾配条件
時間(分) C液濃度(体積%) D液濃度(体積%)
0 85% 15%
20 80% 20%
35 10% 90%
50 10% 90%
50.1 85% 15%
60 85% 15%
【0033】
アストラガリンの標準品を用いて濃度既知の標準溶液を調製し、上記分析条件にて高速液体クロマトグラフィ分析に供することによりリテンションタイムを測定するとともに、検量線を作成した。
・アストラガリン :18.2分
上記リテンションタイムで一致したピークをアストラガリンとして試料溶液中の各成分の定量を行った。
【0034】
実施例1~3、比較例1及び参考例1
表3に示す各成分を均一に混合して粉末食品を製造した。得られた粉末食品について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、下記の官能評価1に準じて行った。その結果を表3に併せて示す。
【0035】
官能評価1
(1)ボディ感の評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表1に示す標準粉末食品を調製した。そして、専門パネル4名が表1に示す標準粉末食品のボディ感について、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが標準粉末食品0.2gをカフェインが低濃度のものから順に喫食し、ボディ感の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各被験粉末食品0.2gを喫食し、ボディ感の程度を認識し、標準粉末食品の中からボディ感が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0036】
【0037】
(2)甘味のキレの評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表2に示す標準粉末食品を調製した。そして、専門パネル4名が表2に示す標準粉末食品の甘味のキレについて、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが標準粉末食品0.2gをカフェインが低濃度のものから順に喫食し、甘味のキレの程度を記憶した。次いで、各専門パネルが各被験粉末食品0.2gを喫食し、甘味のキレの程度を認識し、標準粉末食品の中から甘味のキレが最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0038】
【0039】
【0040】
実施例4~9及び比較例2~4
表4に示す各成分を均一に混合したこと以外は、実施例1と同様の操作により粉末食品を製造した。得られた粉末食品について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、官能評価1に準じて行った。その結果を、参考例1の結果とともに表4に併せて示す。
【0041】
【0042】
実施例10、11、比較例5、6及び参考例2、3
表5に示す各成分を均一に混合したこと以外は、実施例1と同様の操作により粉末食品を製造した。得られた粉末食品について分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、官能評価1に準じて行った。その結果を、実施例2、比較例1及び参考例1の結果とともに表5に併せて示す。
【0043】
【0044】
実施例12~17及び比較例7~14
表6に示す各成分を均一に混合したこと以外は、実施例1と同様の操作により粉末食品を製造した。得られた粉末食品ついて分析及び官能評価を行った。なお、官能評価は、官能評価1に準じて行った。その結果を表6に併せて示す。
【0045】
【0046】
実施例18及び比較例15
表9に示す各成分を均一に混合して粉末状のインスタント飲料を得た。次いで、得られた粉末状のインスタント飲料1質量部に対し全体で8質量部になるように25℃の温水で希釈し、還元飲料を得た。得られたインスタント飲料について分析を行い、還元飲料について官能評価を行った。なお、官能評価は、下記の官能評価2に準じて行った。その結果を表9に併せて示す。
【0047】
官能評価2
(1)ボディ感の評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表7に示す標準インスタント飲料を調製した。次いで、得られた標準インスタント飲料1質量部に対し全体で8質量部になるように25℃の温水で希釈し、還元飲料を得た。そして、専門パネル4名が表7に示す標準インスタント飲料から調製した還元飲料のボディ感について、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが、カフェインが低濃度の還元飲料から順に飲用し、ボディ感の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各被験還元飲料を飲用し、ボディ感の程度を認識し、標準インスタント飲料から調製した還元飲料の中からボディ感が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0048】
【0049】
(2)甘味のキレの評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表8に示す標準インスタント飲料を調製した。次いで、得られた標準インスタント飲料1質量部に対し全体で8質量部になるように25℃の温水で希釈し、還元飲料を得た。そして、専門パネル4名が表8に示す標準インスタント飲料から調製した還元飲料の甘味のキレについて、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが、カフェインが低濃度の還元飲料から順に飲用し、甘味のキレの程度を記憶した。次いで、各専門パネルが各被験還元飲料を飲用し、甘味のキレの程度を認識し、標準インスタント飲料から調製した還元飲料の中から甘味のキレが最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0050】
【0051】
【0052】
実施例19及び比較例16
表12に示す各成分を混合し、合計で100質量%になるよう水を加え、90℃まで加熱して撹拌しながら溶解したのち、型に流し入れ、5℃に冷蔵してグミを得た。そして、得られたグミについて官能評価と分析を行った。なお、官能評価は、下記の官能評価3に準じて行った。その結果を表12に示す。
【0053】
官能評価3
(1)ボディ感の評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表10に示す標準グミを調製した。そして、専門パネル4名が表10に示す標準グミのボディ感について、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが標準グミ3gを、カフェインが低濃度のものから順に喫食し、ボディ感の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各被験グミ3gを喫食し、ボディ感の程度を認識し、標準グミの中からボディ感が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0054】
【0055】
(2)甘味のキレの評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表11に示す標準グミを調製した。そして、専門パネル4名が表11に示す標準グミの甘味のキレについて、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが標準グミ3gをカフェインが低濃度のものから順に喫食し、甘味のキレの程度を記憶した。次いで、各専門パネルが各被験グミ3gを喫食し、甘味のキレの程度を認識し、標準グミの中から甘味のキレが最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0056】
【0057】
【0058】
実施例20及び比較例17
表15に示す各成分を混合し、合計で100質量%になるよう水を加え、90℃まで加熱して撹拌しながら溶解したのち、型に流し入れ、5℃に冷蔵してゼリー食品を得た。そして、得られたゼリー食品について官能評価と分析を行った。なお、官能評価は、下記の官能評価4に準じて行った。その結果を表15に示す。
【0059】
官能評価4
(1)ボディ感の評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表13に示す標準ゼリー食品を調製した。そして、専門パネル4名が表13に示す標準ゼリー食品のボディ感について、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが標準ゼリー食品7gをカフェインが低濃度のものから順に喫食し、ボディ感の強さを記憶した。次いで、各専門パネルが各被験ゼリー食品7gを喫食し、ボディ感の程度を認識し、標準ゼリー食品の中からボディ感が最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0060】
【0061】
(2)甘味のキレの評価基準
カフェイン含有量が異なる、下記の表14に示す標準ゼリー食品を調製した。そして、専門パネル4名が表14に示す標準ゼリー食品の甘味のキレについて、同表に示す評価基準とすることを合意したうえで、次の手順で官能試験を行った。先ず、各専門パネルが標準ゼリー食品7gをカフェインが低濃度のものから順に喫食し、甘味のキレの程度を記憶した。次いで、各専門パネルが各被験グミ3gを喫食し、甘味のキレの程度を認識し、標準ゼリー食品の中から甘味のキレが最も近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により「0.5」刻みで最終評点を決定した。
【0062】
【0063】
【0064】
表3~6、9、12及び15から、カフェインを含有する飲食品に糖アルコール及び/又は二糖を含有させると、ボディ感が低下するだけでなく、甘味のキレも悪化するが、カフェインに対してアストラガリンを特定の量比で含有させることで、糖アルコール及び/又は二糖と、カフェインを含有しながらも、ボディ感が保たれ、甘味のキレの良好な飲食品が得られることがわかる。