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特許7366732点検方法、点検構造の形成用治具、及び、点検構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】点検方法、点検構造の形成用治具、及び、点検構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 1/00 20060101AFI20231016BHJP
   E04C 5/10 20060101ALI20231016BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
E01D1/00 D
E04C5/10
E04G21/12 104Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019228186
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021095766
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】中積 健一
(72)【発明者】
【氏名】中島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 一治
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真也
(72)【発明者】
【氏名】川村 剛史
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123672(JP,A)
【文献】特開2002-235441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0367961(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04C 5/00- 5/20
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化したコンクリートからなる本体部(11)と、
前記本体部(11)の外部に開口する挿入部(15)を有し、該本体部(11)内に埋設された中空筒状のシース(12)と、
前記挿入部(15)に挿入される継手部材(14)の有無を点検するための点検孔(13)と、
を備え
前記シース(12)の少なくとも一部分が可視光を透過可能な透過性素材からなり、
前記点検孔(13)が前記本体部(11)の外表面から前記透過性素材の外面まで貫通しており、
前記点検孔(13)を通して視認される前記透過性素材の軸方向長さが、前記挿入部(15)に前記継手部材(14)が挿入されたときにおける、その軸方向挿入深さの許容範囲の幅に対応しており、
前記継手部材(14)の軸方向端部に、該継手部材(14)と前記シース(12)との間の液密を確保するシール部材(23)が設けられている点検構造(10)を用い、
隣り合うように配置された前記点検構造(10、10)の前記シース(12)の前記挿入部(15)に、前記継手部材(14)の接続部(22)を挿し込み、前記点検孔(13)及び前記挿入部(15)の前記透過性素材を通して、前記接続部(22)に設けられた前記シール部材(23)の軸方向位置を目視で点検し、前記点検孔(13)及び前記透過性素材を通して前記シール部材(23)を視認できる場合に前記継手部材(14)の挿入深さが適切であると判断する点検方法。
【請求項2】
硬化したコンクリートからなる本体部(11)と、
前記本体部(11)の外部に開口する挿入部(15)を有し、該本体部(11)内に埋設された中空筒状のシース(12)と、
前記挿入部(15)に挿入される継手部材(14)の有無を点検するための点検孔(13)と、
を備え、
前記点検孔(13)が前記本体部(11)の外表面から前記シース(12)の内部まで貫通している点検構造(10)を用い、
前記シース(12)に前記継手部材(14)を挿し込んだ状態で前記点検孔(13)に点検棒(40)を挿し込み、前記点検棒(40)が前記継手部材(14)の外周面と接触して前記シース(12)内に挿入できないときに、前記継手部材(14)の挿し込み深さが許容範囲内であると判断する点検方法。
【請求項3】
硬化したコンクリートからなる本体部(11)の外部から、該本体部(11)に埋設される中空筒状のシース(12)に挿入される継手部材(14)の有無を点検するための点検孔(13)を形成する中子(25)と、
前記中子(25)を前記シース(12)に対する所定の位置で固定する固定手段(26)と、
を有する点検構造の形成用治具。
【請求項4】
前記中子(25)が、前記シース(12)の表面に突き立てられた筒状の外筒(27)と、該シース(12)に臨むように該外筒(27)の内側に設けられた被押圧部材(28)と、該被押圧部材(28)を該シース(12)に向けて押圧する押圧部材(29)とを有し、
前記固定手段(26)が、前記シース(12)の外周面を通って前記外筒(27)、前記被押圧部材(28)、及び、前記押圧部材(29)の全体に巻き付けられる結束部材(30)であって、該結束部材(30)の締付力によって該押圧部材(29)を該被押圧部材(28)に向けて押し込むようにした請求項に記載の点検構造の形成用治具。
【請求項5】
点検構造(10)を形成するための型枠(31)の内壁にシース固定治具(32)を取り付け、前記シース固定治具(32)の端部にシース(12)の端部の挿入部(15)を挿し込む工程と、
前記シース(12)の前記挿入部(15)に、請求項3または4に記載の点検構造の形成用治具(24)を取り付ける工程と、
前記型枠(31)内にコンクリート(33)を充填し、前記コンクリート(33)の硬化後に、前記型枠(31)、前記シース固定治具(32)、及び、前記点検構造の形成用治具(24)を取り外す工程と、
を有する点検構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物同士を継手部材で接続する際の接続状態を点検するための点検構造、及び、点検構造の形成用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1の図1に示すように、橋梁や高速道路の高架橋の床版などのコンクリート構造体500は、シース210、220が埋設されたコンクリート構造物510、520を間詰用シース継手(継手部材)100で接続し、両コンクリート構造物510、520の間の間隙部530に間詰用コンクリート531を充填することによって一体化されている。この一体化後にシース内に緊張材(PC鋼材)600を通し、この緊張材600に張力を与えることによって、コンクリート構造体500にプレストレスを導入している。そして、プレストレスの導入後に、シース210、220及び間詰用シース継手100の内部にグラウト700が充填される。
【0003】
間詰用シース継手100の両端には、シール材311、321が巻き付けられた止水部310、320が形成されている。この止水部310、320によって、間隙部530に充填された間詰用コンクリート531がシース210、220内に流れ込むのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-123672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る止水部310、320においては、シース210、220への間詰用シース継手100の挿入後に、このシース210、220への止水部310、320の挿入状態を確認することが難しい。止水部310、320がシース210、220に確実に挿入されていないと、止水部310、320が、作業中にシース210、220から突然抜け落ちてしまうこともあり、止水効果が損なわれて間詰用コンクリート531がシース210、220内に流れ込む虞がある。間隙部530の幅の大きさからシール材311、321の挿入状態をある程度推定することもできるが、間詰用シース継手100が、隣り合って配置されたコンクリート構造物510、520のうちの一方のシース210、220側に偏っていることもあり、シール材311、321の挿入状態を容易に把握するのは困難である。
【0006】
そこで、この発明は、シースへの継手部材の挿入状態を容易に把握することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明は、硬化したコンクリートからなる本体部と、前記本体部の外部に開口する挿入部を有し、該本体部内に埋設された中空筒状のシースと、前記挿入部に挿入される継手部材の有無を点検するための点検孔と、を備えた点検構造を構成した。
【0008】
このように、点検孔を通してシース(挿入部)内に挿入される継手部材の有無を点検することで、シースへの継手部材の挿入状態を容易に把握することができる。そして、その挿入状態が不十分なときは、継手部材をさらに深く押し込むなどの適切な対応を速やかにとることができる。これにより、シースと継手部材との間の液密を確実に確保することができる。
【0009】
前記構成においては、前記シースの少なくとも一部分が可視光を透過可能な透過性素材からなり、前記点検孔が前記本体部の外表面から前記透過性素材の外面まで貫通しており、該透過性素材を通して前記継手部材の有無を点検する構成とすることができる。
【0010】
このようにすると、点検孔及び透過性素材を通して、シースへの継手部材の挿入状態を直接視認することができる。このため、継手部材の挿入状態が不十分であることによって、シースと継手部材との間の液密が損なわれるのを確実に防止することができる。
【0011】
前記透過性素材を有する構成においては、前記点検孔を通して視認される前記透過性素材の軸方向長さが、前記挿入部に前記継手部材が挿入されたときにおける、その軸方向挿入深さの許容範囲の幅に対応している構成とすることができる。
【0012】
このようにすると、継手部材が透過性素材を通して視認できるか否かによって、継手部材の挿入深さが許容範囲内であるか否かを速やかに判断することができる。点検孔を通して視認される透過性素材の軸方向長さは、許容範囲の幅と同一とするのが前記判断の上では好ましいが、その軸方向長さを許容範囲の幅よりも若干長めとすることもできる。このように若干長めとした場合、例えば、挿入深さの許容範囲の幅を示すマークを透過性素材に付することによって、前記判断を正確に行うことができる。
【0013】
前記点検孔を通して視認される前記透過性素材の軸方向長さを、前記継手部材の軸方向挿入深さの許容範囲の幅に対応させる構成においては、前記継手部材の軸方向端部に、該継手部材と前記シースとの間の液密を確保するシール部材が設けられており、該シール部材の軸方向位置を前記点検孔から点検する構成とすることができる。
【0014】
このようにすると、点検孔及び透過性素材を通して、シール部材の軸方向位置を直接視認することができるため、シースと継手部材との間の液密を確実に確保することができる。
【0015】
上記のように、シースの少なくとも一部分を透過性素材で構成する代わりに、前記点検孔が前記本体部の外表面から前記シースの内部まで貫通している構成とすることもできる。
【0016】
このようにすると、シースの内部に挿入された継手部材の挿入状態を直接点検することができるため、その点検作業を簡便かつ確実に行うことができる。
【0017】
また、この発明においては、硬化したコンクリートからなる本体部の外部から、該本体部に埋設される中空筒状のシースに挿入される継手部材の有無を点検するための点検孔を形成する中子と、前記中子を前記シースに対する所定の位置で固定する固定手段と、を有する点検構造の形成用治具を構成した。
【0018】
このようにすると、固定手段によって中子が安定的に固定されるため、所望の位置に、本体部の外部から継手部材の有無を点検するための点検孔を形成することができる。
【0019】
前記構成においては、前記中子が、前記シースの表面に突き立てられた筒状の外筒と、該シースに臨むように該外筒の内側に設けられた被押圧部材と、該被押圧部材を該シースに向けて押圧する押圧部材とを有し、前記固定手段が、前記シースの外周面を通って前記外筒、前記被押圧部材、及び、前記押圧部材の全体に巻き付けられる結束部材であって、該結束部材の締付力によって該押圧部材を該被押圧部材に向けて押し込むようにした構成とすることができる。
【0020】
このようにすると、押圧部材によって被押圧部材をシースに向けて確実に押圧して、被押圧部材とシースを密接させることができる。このため、シースの表面にコンクリートの漏れが生じず、シースの内部をクリアに視認することが可能な点検孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明では、点検構造を、硬化したコンクリートからなる本体部と、前記本体部の外部に開口する挿入部を有し、該本体部内に埋設された中空筒状のシースと、前記挿入部に挿入される継手部材の有無を点検するための点検孔と、を備える構成としたので、この点検孔を通してシースへの継手部材の挿入状態を容易に把握することができる。このため、その挿入状態に対応して適切な対応を速やかにとることができ、シースと継手部材との間の液密を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明に係る点検構造の第一実施形態を示す断面図
図2】継手部材の一例を示す断面図
図3】第一実施形態に係る点検構造の形成用治具の一例を示す断面図であって、(a)は被押圧部材のシースへの押圧前、(b)は被押圧部材のシースへの押圧後
図4】第一実施形態に係る点検構造の製造工程の一例を示す断面図であって、(a)は型枠内にシース固定治具を取り付けた上で、シース及び点検構造の形成用治具を設けた状態、(b)は型枠内にコンクリートを充填した状態
図5】この発明に係る点検構造の第二実施形態を示す断面図
図6】第二実施形態に係る点検構造の形成用治具を型枠内に取り付けた状態を示す断面図
図7】第一実施形態に係る点検構造への継手部材の挿し込み状態を示す断面図であって、(a)は許容範囲内で最も深く挿し込んだとき、(b)は許容範囲内で比較的挿し込み量が小さいとき
図8】隣り合う点検構造の間及び点検孔の中にグラウトを充填した状態を示す断面図
図9】PC鋼材を通した上で、シース及び継手部材の中にグラウトを充填した状態を示す断面図
図10】この発明に係る点検構造の第三実施形態を示す断面図
図11】第三実施形態に係る点検構造の形成用治具を型枠内に取り付けた状態を示す断面図
図12】第三実施形態に係る点検構造への継手部材の挿し込み状態を示す断面図であって、(a)は許容範囲内で最も深く挿し込んだとき、(b)は許容範囲内で最も浅く挿し込んだとき、(c)は挿し込み量不足(許容範囲外)のとき
図13】この発明に係る点検構造の第四実施形態を示す断面図
図14】第四実施形態に係る点検構造の形成用治具を型枠内に取り付けた状態を示す断面図
図15】第一変形例に係る点検構造の形成用治具を型枠内に取り付けた状態を示す断面図
図16】第二変形例に係る点検構造の形成用治具を型枠内に取り付けた状態を示す断面図
図17】この発明に係る点検構造の第五実施形態を示す断面図
図18】第五実施形態に係る点検構造の形成用治具を型枠内に取り付けた状態を示す断面図
図19】この発明に係る点検構造の第六実施形態を示す断面図
図20】第六実施形態に係る点検構造の形成用治具を型枠内に取り付けた状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明に係る点検構造10の第一実施形態(全体の一部分)を図1に示す。この点検構造10は、橋梁や高速道路の高架橋の床版などのコンクリート構造体の建設に用いられる。
【0024】
この点検構造10は、本体部11、本体部11内に埋設された中空筒状のシース12、及び、本体部11の外表面からシース12の表面まで貫通する点検孔13を主要な構成要素としている。
【0025】
本体部11は、硬化したコンクリートからなる直方体状の部材であって、点検構造10の外形輪郭を構成している。そのサイズは、コンクリート構造体の種類や規模によって異なるが、例えば、縦方向(図1の左右方向)及び横方向(図1の紙面奥方向)の幅を数メートル程度、厚さ(図1の上下方向)を数十センチメートルから1メートル程度とすることが多い。
【0026】
シース12は、後述する継手部材14が挿入される挿入部15と、両端がそれぞれ挿入部15と連続する螺旋部16とから構成される樹脂製の部材である。挿入部15及び螺旋部16の全体は、可視光(例えば、一般的な白色照明光)を透過することが可能な透過性素材からなり、この実施形態では乳白色半透明のポリエチレンが採用されている。この透過性素材は、透明素材又は半透明素材のように、挿入部15に挿入された継手部材14の軸方向位置を視認できるものであれば、その素材の種類や透明度などは特に限定されない。
【0027】
点検孔13を通して視認される透過性素材の軸方向長さは、継手部材14の軸方向挿入深さの許容範囲の幅に対応している。すなわち、挿入部15への継手部材14の挿入深さの許容範囲に30ミリメートルの幅があるときは、その軸方向長さが30ミリメートル程度になるように点検孔13が形成される。
【0028】
なお、この実施形態では、挿入部15及び螺旋部16の全体を透過性素材で構成したが、その一部分(例えば、点検孔13の軸方向位置に対応する上半分)のみを透過性素材で構成することもできる。
【0029】
挿入部15の端部は、本体部11の端面に形成された開口部17を介して開口している。この開口部17は、点検構造10同士を接続する際に、隣り合う点検構造10の端面と対向する凹状の嵌め合い段部18と、嵌め合い段部18と軸方向に連続し、本体部11の奥に向かうほど内径が縮径するテーパ面からなる縮径部19とを有する。シース12の挿入部15は、縮径部19の小径側端部に接続されている。凹状の嵌め合い段部18と対向する隣り合う点検構造10の開口部17には、凸状の嵌め合い段部20が形成されており(図7(a)参照)、凹状の嵌め合い段部18の内側に凸状の嵌め合い段部20が若干入り込むように両点検構造10、10が配置される。このようにすると、隣り合う嵌め合い段部18、20の嵌め合いによって上下方向の剪断抵抗が生じるため、点検構造10同士の連結強度を高めることができる。なお、本実施形態では嵌め合い段部18、20を形成した例を示したが、嵌め合い段部18、20を形成しない構成(隣り合う点検構造10の平坦な面同士が対向する構成)としてもよい。
【0030】
螺旋部16は、軸方向の全長に亘って、螺旋状の突起が形成されている。この螺旋部16は、挿入部15と異なり、透明素材又は半透明素材に限定されず、金属材を採用することもできる。
【0031】
点検孔13は、挿入部15の透過性素材からなる部分の外面まで至り、この透過性素材を通して、挿入部15に挿入される継手部材14の軸方向深さ(継手部材14の有無)を視認することによって点検する。この実施形態では、点検孔13は、本体部11の外表面から挿入部15の透過性素材に至るまでの内径が一定の断面円形状の孔であるが、その孔の形状は特に限定されず、断面矩形状とすることもできる。また、点検孔13の上部で狭く、下部で広がっている形状とすることもできる。この場合、ファイバースコープなどの撮影手段によって、継手部材14の接続状態を容易に点検することができる。
【0032】
挿入部15に挿入される継手部材14の一例を図2に示す。継手部材14は、ホース部21と、ホース部21の両端に接続された接続部22、22とから構成される。ホース部21は、可撓性を有する樹脂製の部材である。接続部22は、シース12との接続に耐える所定の剛性を有する樹脂製の部材である。接続部22の軸方向端部近傍の外周面には周溝が形成されており、この周溝にシール部材23としてのOリング(以下、シール部材23と同じ符号を付する。)が設けられている。Oリング23は、黒色に着色されたゴム材からなる。Oリング23によって、継手部材14とシース12との間の液密が確保される。Oリング23による液密を確保するためには、このOリング23が、本体部11に形成された縮径部19よりも軸方向内側に位置し、継手部材14とシース12(挿入部15)の間に確実に挟み込まれている必要がある。
【0033】
Oリング23は黒色に着色されているため、このOリング23を点検孔13及び挿入部15の透過性素材を通して明確に視認することができる。このため、透過性素材が設けられた範囲内で、必要に応じて継手部材14を軸方向にスライドさせることで、挿入部15に対する継手部材14の挿入深さの調節を行うことができる。
【0034】
上記の実施形態においては、シース12の挿入部15を透過性素材とし、この挿入部15の内径側に継手部材14の接続部22を挿入する構成としたが、継手部材14の接続部22を透過性素材とし、挿入部15の外径側に接続部22を挿入する構成とすることもできる。このように、シース12の挿入部15又は継手部材14の接続部22のうち、少なくとも接続時において外径側となる部材を透過性素材で構成すればよい。
【0035】
第一実施形態に係る点検孔13を形成するための点検構造の形成用治具24の一例を図3(a)(b)に示す。この点検構造の形成用治具24は、硬化したコンクリートからなる本体部11の外部から本体部11に埋設される中空筒状のシース12に至る点検孔13を形成する中子25と、シース12に中子25を固定する固定手段26を主要な構成要素としている。
【0036】
中子25は、筒状の外筒27、被押圧部材28、及び、押圧部材29から構成されている。
【0037】
外筒27は、シース12の表面に突き立てられた筒状の部材であり、この外筒27によって、本体部11の外部から、この本体部11に埋設される中空筒状のシース12の外面まで貫通する点検孔13の側壁が形成される。この実施形態では外筒27として円筒を採用したが、断面四角形などの角筒を採用することもできる。外筒27の下端を挿入部15(透過性素材)の外面に当接させておくことにより(図4(a)など参照)、押圧部材29によって押し出された被押圧部材28を、その外面にスムーズに密着させることができる。
【0038】
被押圧部材28は、シース12の挿入部15に臨むように外筒27の内側に設けられた発泡体(バックアップ材)である。この発泡体として、例えば、発泡ウレタン樹脂などを採用することができる。この被押圧部材28は、発泡体に限定されず、例えば粘土のように、押圧によって変形してシース12と密着する素材を適宜採用できる場合がある。
【0039】
押圧部材29は、被押圧部材28をシース12に向けて押圧するための部材である。この実施形態では、押圧部材29として、外筒27の内径よりも若干小さい外径を有する円筒状の部材を採用している。押圧部材29によって被押圧部材28を押圧すると、外筒27とシース12の間の隙間に被押圧部材28が入り込んで、被押圧部材28とシース12の挿入部15の透過性素材との間の隙間が塞がれて密着する。
【0040】
図3(a)などに示すように、挿入部15(シース12)の外周面を通って外筒27、被押圧部材28、及び、押圧部材29の全体には、固定手段26としてのバンド状の結束部材30が巻き付けられている。この結束部材30を締め付けると、その締付力によって押圧部材29が被押圧部材28に向けて押し込まれ、図3(b)に示すように、被押圧部材28が挿入部15(シース12)に向けて押し付けられる。この押圧部材29は円筒状なので、被押圧部材28の中央には押圧力が直接作用しない一方で、その外周部に大きな押圧力が作用する。このため、押圧前に挿入部15(シース12)の表面と離間している被押圧部材28の外周部を挿入部15(シース12)の表面にスムーズに密着させることができる。なお、この実施形態においては、押圧部材29として円筒状の部材を採用したが、円柱状の部材を採用できる場合もある。
【0041】
第一実施形態に係る点検構造10の製造工程の一例を図4(a)(b)を用いて説明する。
【0042】
この製造工程においては、まず、点検構造10を形成するための型枠31の内壁にシース固定治具32を取り付ける。図4(a)に示すように、型枠31の一端側(図4(a)の左端側)には、凹状の嵌め合い段部18(図1参照)を形成するための段部が形成されており、シース固定治具32には、嵌め合い段部18と軸方向に連続し、本体部11の奥に向かうほど内径が縮径する縮径部19(図1参照)を形成するためのテーパ部が形成されている。また、型枠31の他端側(図示せず)には、凸状の嵌め合い段部20(図7(a)参照)を形成するための段部が形成されている。
【0043】
シース固定治具32の縮径側の端部に、シース12の一端側の挿入部15が挿し込まれる。シース12の他端側の挿入部(図示せず)にも、シース固定治具(図示せず)が挿し込まれている。シース固定治具32の素材として、ポリ塩化ビニル樹脂や金属を採用することができる。この実施形態においては、シース固定治具32を中空としたが、中実とすることもできる。
【0044】
シース12の両端をシース固定治具32で固定したら、シース12の挿入部15に、図3(a)に示す点検構造の形成用治具24を取り付ける。そして、結束部材30を締め付けて押圧部材29を押圧することによって、被押圧部材28をシース12の挿入部15に向けて押し付け、この被押圧部材28とシース12の挿入部15の透過性素材とを密着させる。その上で、図4(b)に示すように、型枠31内にコンクリート33を充填する。コンクリート33が硬化したら、型枠31、シース固定治具32、及び、点検構造の形成用治具24を取り外して、図1に示す点検構造10を得る。
【0045】
第一実施形態に係る点検構造10においては、点検孔13を通して視認される透過性素材の軸方向長さが、継手部材14の軸方向挿入深さの許容範囲の幅に対応するようにその点検孔13を形成したが、継手部材14の挿入状態を点検し得る限りにおいて、例えば、図5に示す第二実施形態のように、点検孔13をさらに小径の孔とできる場合がある。
【0046】
第二実施形態に係る点検構造の形成用治具24を型枠31内に取り付けた状態を図6に示す。この点検構造の形成用治具24の中子25はボルト34であり、中子25の固定手段26はシース12の表面に接着剤やインサート成形などによって固定されたナット35である。ボルト34は、その先端がシース12(挿入部15)の外面に突き当たるまでナット35にねじ込まれる。型枠31、並びに、型枠31内に設けられたシース12及びシース固定治具32は、第一実施形態に係るものと同じなので説明は省略する(図4(a)参照)。
【0047】
この型枠31内にコンクリートを充填し硬化させた上で、型枠31、シース固定治具32、及び、ボルト34を取り外して、図5に示す点検構造10を得る。なお、ボルト34の取り外しを容易に行うために、ボルト34の軸部にグリスなどの潤滑剤を塗布しておくのが好ましい。また、型枠31内にコンクリートを充填した際に、ボルト34とナット35のねじ部の隙間にコンクリートのペースト成分(流動成分)が入り込まないように、ボルト34の下端に予め撥水性素材(例えばテープ状のフッ素樹脂)を巻き付けた上でナット35にねじ込むのが好ましい。
【0048】
なお、この実施形態においては、中子25としてボルト34を採用したが、ナット35にねじ込まれるねじ部を先端に形成した丸鋼を採用することもできる。あるいは、中子25として棒状体を採用し、この棒状体を接着剤などのようにねじ以外の固定手段によってシース固定治具32に固定することもできる。この場合、棒状体の素材は鋼に限定されず、樹脂材などの任意の素材を採用することができる。
【0049】
また、軸部の少なくとも一部が先細のテーパ状に形成されているボルト34を採用することもできる。このように、ボルト34をテーパ状とすると、型枠31内に充填したコンクリートの硬化後に、このボルト34をスムーズに取り外すことができる。
【0050】
第一実施形態に係る点検構造10を接続したコンクリート構造体の施工工程の一例を、図7(a)(b)、図8図9を用いて説明する。
【0051】
まず、図7(a)に示すように、隣り合うように配置された点検構造10、10のシース12の挿入部15に、継手部材14の接続部22を挿し込む。この挿入部15は透過性素材で構成されているため、点検孔13及び挿入部15の透過性素材を通して、接続部22に設けられたOリング23の軸方向位置を目視で点検することができる。Oリング23の軸方向位置は、図7(b)に示すように、挿入部15への接続部22の挿入深さによって変わるが、点検孔13及び透過性素材を通してOリング23を視認できる限りにおいて、その挿入深さは適切であると判断することができる。
【0052】
隣り合う点検構造10、10の相対位置が確定したら、図8に示すように、両点検構造10、10の間、及び、点検孔13の中にグラウト36を充填する。グラウト36の硬化後に、シース12内にPC鋼材37を挿通し、このPC鋼材37に張力を与えて、点検構造10を一体化したコンクリート構造体にプレストレス(圧縮応力)を導入する。その後、図9に示すように、シース12及び継手部材14の中にPC鋼材37の腐食防止のためのグラウト38を充填して硬化させ、コンクリート構造体を完成する。
【0053】
このように製造された点検構造10は、点検孔13及びシース12の透過性素材を通して、継手部材14の挿入状態だけでなく、シース12内のグラウト38の充填状態などの種々の情報を得ることも可能であり、高品質なコンクリート構造体の施工に寄与する。
【0054】
この発明に係る点検構造10の第三実施形態(全体の一部分)を図10に示す。第三実施形態に係る点検構造10は、第二実施形態に係る点検構造10(図5参照)と類似しているが、点検孔13が、本体部11の外表面からシース12(挿入部15)の内部まで貫通している点で異なっている。このように、点検孔13を貫通させることにより、シース12の内部に挿入された継手部材14の挿入深さを直接点検することができるため、その点検作業を簡便かつ確実に行うことができる。また、この構成においては、シース12の挿入部15を透過性素材とする必要がないため、着色された汎用品のシース12を採用することもできる。
【0055】
第三実施形態に係る点検構造の形成用治具24を型枠31に取り付けた状態を図11に示す。この点検構造の形成用治具24の中子25はボルト34であり、中子25の固定手段26はシース12の端部を固定するシース固定治具32と、このシース固定治具32にインサート成形によって固定されたナット39である。ボルト34は、その先端がシース12(挿入部15)を貫通して、シース固定治具32に固定されたナット39にねじ込まれる。
【0056】
シース固定治具32にボルト穴を形成し、このボルト穴にボルト34を直接ねじ込んでも特に問題はないが、本実施形態に示すように、シース固定治具32にインサート成形されたナット39にボルト34をねじ込むことで、シース固定治具32の耐久性が一層高まるため、部材コストの削減を図ることができる。型枠31及びシース12は、第一実施形態などに係るものと同じなので説明は省略する(図4(a)参照)。
【0057】
この型枠31内にコンクリートを充填し硬化させた上で、型枠31、シース固定治具32、及び、ボルト34を取り外して、図10に示す点検構造10を得る。なお、ボルト34の取り外しを容易に行うために、ボルト34の軸部にグリスなどの潤滑剤を塗布しておくのが好ましい。また、型枠31内にコンクリートを充填した際に、シース12に形成された貫通孔とシース固定治具32との間の隙間からシース12内にコンクリートのペースト成分が入り込まないように、シース固定治具32とシース12の挿入部15との間に、スポンジ状のテープ材(液密部材)を貼り付けておくのが好ましい。
【0058】
第三実施形態に係る点検構造10に継手部材14を挿し込んだ状態を図12(a)~(c)に示す。この点検構造10においては、シース12に継手部材14を挿し込んだ状態で点検孔13に点検棒40を挿し込み、この点検棒40が継手部材14の外周面と接触してシース12内に挿入できないときに、継手部材14の挿し込み深さが許容範囲内であると判断する。この許容範囲内においては、継手部材14に設けられたOリング23は、シース12の開口端と点検孔13の間(図12(a)に示す位置と図12(b)に示す位置の間)に位置している。このため、このOリング23によって、シース12と継手部材14との間の液密を確保することができる。
【0059】
その一方で、図12(c)に示すように、点検孔13に挿し込んだ点検棒40が、継手部材14の外周面と接触することなくシース12内に挿入できるときは、継手部材14の挿し込み深さが許容範囲外であると判断する。この許容範囲外においては、継手部材14に設けられたOリング23はシース12の開口端の外側に位置している。このため、このOリング23によってシース12と継手部材14との間の液密を確保することはできない。
【0060】
第三実施形態に係る点検構造10に用いられる継手部材14のOリング23の軸方向位置は、第一実施形態などに係る点検構造10に用いられる継手部材14(図2参照)のOリング23の軸方向位置よりも、軸方向中央側に偏位している。このようにすることで、継手部材14の挿し込み深さが許容範囲内にあるときに、Oリング23と点検孔13の軸方向位置が重ならないようにし、Oリング23による液密作用を確保している。
【0061】
なお、この実施形態においては、点検孔13に点検棒40を挿入することによって継手部材14の挿入深さを点検したが、点検孔13の内径がある程度大きく、作業現場で十分な明るさの照明を確保できるときは、点検棒40を用いずに目視によって直接点検できる場合もある。
【0062】
この発明に係る点検構造10の第四実施形態(全体の一部分)を図13に示す。第四実施形態に係る点検構造10は、第三実施形態に係る点検構造10(図10参照)と類似しているが、点検孔13の内壁に管状部材41を設けた点で異なっている。管状部材41として、例えばゴムホースを採用することができる。この管状部材41の下端は、シース固定治具32とシース12の挿入部との間に設けられたスポンジ状のテープ材(図示せず)に当接している。この当接によって、シース12に形成された貫通孔とシース固定治具32との間の液密がさらに高まり、型枠31内にコンクリートを充填した際に、シース12内にコンクリートのペースト成分が入り込むのを確実に防止することができる。
【0063】
第四実施形態に係る点検構造の形成用治具24を型枠31に取り付けた状態を図14に示す。この点検構造の形成用治具24の中子25はボルト34であり、中子25の固定手段26はシース12の端部を固定するシース固定治具32である。ボルト34の軸部には、管状部材41が予め取り付けられている。ボルト34は、その先端がシース12(挿入部15)を貫通して、シース固定治具32にインサート成形によって固定されたナット39にねじ込まれる。型枠31及びシース12は、第一実施形態などに係るものと同じなので説明は省略する(図4(a)参照)。
【0064】
第三実施形態及び第四実施形態に係る点検構造の形成用治具24は、中実のシース固定治具32を使用したが、図15に示すように、ボルト34を安定的にねじ込むのに十分な肉厚を有するのであれば、中空のシース固定治具32を採用することもできる(第一変形例)。この場合、シース固定治具32の内側にもナット42を設けて、シース固定治具32の内外面をナット35、42で挟み込むようにしてボルト34を固定するのが好ましい。
【0065】
また、第三実施形態及び第四実施形態に係る点検構造の形成用治具24は、ボルト34がシース固定治具32側までねじ込まれた構成としたが、図16に示すように、シース12の挿入部15に形成された透孔の位置に合わせて、中子25としての管状部材43を溶着などの固定手段によって直接固定してもよい(第二変形例)。この場合、シース12の挿入部15が、管状部材43の固定手段26として機能する。このようにすると、作業現場においてシース12に中子25としてのボルト34(図11など参照)を取り付けるための作業が不要となるため、作業工数の削減を図ることができる。
【0066】
この発明に係る点検構造10の第五実施形態(全体の一部分)を図17に示す。上記の第一実施形態から第四実施形態に係る点検構造10は、いずれもシース12の挿入部15の位置に対応して点検孔13を形成したが、この第五実施形態においては、挿入部15ではなく、本体部11の縮径部19の位置に対応して点検孔13が形成されている。このように、点検孔13を縮径部19に形成しても、この点検孔13に点検棒40(図12(a)~(c)参照)を挿入したり、目視によって直接点検したりすることによって、継手部材14の挿入深さを容易に点検することができる。
【0067】
第五実施形態に係る点検構造の形成用治具24を型枠31に取り付けた状態を図18に示す。この点検構造の形成用治具24の中子25はボルト34であり、中子25の固定手段26はシース12の端部を固定するシース固定治具32である。ボルト34は、その先端がシース固定治具32にインサート成形によって固定されたナット39にねじ込まれる。型枠31及びシース12は、第一実施形態などに係るものと同じなので説明は省略する(図4(a)参照)。
【0068】
点検孔13の形成位置は特に限定されないが、シース12の挿入部15の近くに形成するのが好ましい。例えば、シース12が透過性素材で構成されている場合において、図19に示すこの発明に係る点検構造10の第六実施形態(全体の一部分)のように、挿入部15の端部に点検孔13の一部がオーバーラップするように形成すると、継手部材14が挿入部15まで挿入されているか否かを容易に確認することができ、シース12と継手部材14との間の液密を確実に確保することができる。
【0069】
第六実施形態に係る点検構造の形成用治具24を型枠31に取り付けた状態を図20に示す。この点検構造の形成用治具24の中子25は、ボルト34とこのボルト34に同軸に挿入された管状部材44とで構成される。この管状部材44は、内側部材44aと外側部材44bから構成される2重管である。中子25の固定手段26は、シース12の端部を固定するシース固定治具32である。ボルト34には、ワッシャ45とナット46が同軸に設けられている。ボルト34の先端は、シース固定治具32に形成されたボルト穴にねじ込まれている。このボルト穴の周囲には、座繰りが形成されており、内側部材44aの下端はこの座繰りに当接している。
【0070】
シース固定治具32にボルト34をねじ込むと、ワッシャ45及びナット46を介して、内側部材44aが座繰りの底部に、外側部材44bがシース固定治具32及び挿入部15の端部に押し付けられる。この押し付けによって、管状部材44とシース固定治具32及びシース12との間の液密が高まり、型枠31内にコンクリートを充填した際に、挿入部15の端部からシース12内にコンクリートのペースト成分が入り込んだり、挿入部15の端部の表面にペースト成分が付着したりするのを確実に防止することができる。
【0071】
この型枠31内にコンクリートを充填し硬化させた上で、型枠31、シース固定治具32、ボルト34、及び、管状部材44をすべて取り外して、図19に示す点検構造10を得る。なお、管状部材44の取り外しを容易に行うために、管状部材44(外側部材44b)の表面にグリスなどの潤滑剤を塗布しておくのが好ましい。なお、この実施形態では、管状部材44を2重管としたが、その端部を確実に座繰りや挿入部15の端部に押し付けられることができる限りにおいて単管を採用できる可能性もある。
【0072】
上記において説明した点検構造10、及び、点検構造の形成用治具24は全ての点で例示であって、シース12への継手部材14の挿入状態を容易に把握する、という本願発明の課題を解決し得る限りにおいて、点検構造10、及び、点検構造の形成用治具24の形状や素材などに適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0073】
10 点検構造
11 本体部
12 シース
13 点検孔
14 継手部材
15 挿入部
16 螺旋部
17 開口部
18 (凹状の)嵌め合い段部
19 縮径部
20 (凸状の)嵌め合い段部
21 ホース部
22 接続部
23 シール部材(Oリング)
24 点検構造の形成用治具
25 中子
26 固定手段
27 外筒
28 被押圧部材
29 押圧部材
30 結束部材
31 型枠
32 シース固定治具
33 コンクリート
34 ボルト
35、39、42、46 ナット
36、38 グラウト
37 PC鋼材
40 点検棒
41、43、44 管状部材
44a 内側部材
44b 外側部材
45 ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20