(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20231016BHJP
H01R 13/04 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H01R13/46 C
H01R13/04 A
(21)【出願番号】P 2019234281
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智幸
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-075085(JP,U)
【文献】特開2014-072046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 13/04
H01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合するコネクタであって、
一対のコンタクトと、
前記
一対のコンタクトを保持するハウジングと
を備え、
前記
一対のコンタクトは、それぞれ、前記嵌合方向の前端に配置されると共に前記嵌合方向に沿って延びる丸ピン形状を有し且つ相手側コネクタのコンタクトに接触する接触部と、前記嵌合方向の後端に配置されると共に前記嵌合方向に沿って延びる平板形状を有し且つ接続対象物に接続される接続部と、前記接触部および前記接続部の間に配置され且つ前記ハウジングに保持される保持部とを有し、
前記
一対のコンタクト
は、それぞれ、前記保持部が屈曲形状を有することにより前記接触部と前記接続部とが前記嵌合方向から見て互いに異なる位置に配置され、
前記嵌合方向に直交する平面上において、前記
一対のコンタクト
の前記丸ピン形状を有する前記接触部は、所定の菱形の4つの頂点のうち、互いに隣接する2つの頂点に位置し、前記一対のコンタクトの前記平板形状を有する前記接続部は、前記所定の菱形の2本の対角線のうち、一方の対角線に平行な直線上に位置し、且つ、それぞれ、板厚方向が前記直線に沿った方向を向いていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記
一対のコンタクトは、それぞれ、内部まで金属材料が詰まった金属部材からなる請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記嵌合方向における前記ハウジングの前端側に配置され且つ前記
一対のコンタクトの前記接触部が貫通する防水部材を備える請求項1
または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記
一対のコンタクトの前記保持部は、それぞれ、平板形状を有する請求項1~
3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記
一対のコンタクトの前記保持部は、それぞれ、丸ピン形状を有する請求項1~
3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記
一対のコンタクトの前記保持部を収容し且つ前記嵌合方向の後端側に開放された
一対の収容溝を有する請求項1~
5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、機器に取り付けられて相手側コネクタとの接続を行うコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタが、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたコネクタ1は、
図28に示されるように、絶縁性材料からなるハウジング2に複数の導電性のコンタクト3が保持された構造を有している。ハウジング2の外周部には、フランジ2Aが突出して形成されており、取り付けネジ等を用いてフランジ2Aを電気機器または電子機器のケーシング4に固定することにより、コネクタ1が機器に取り付けられる。
【0003】
また、ハウジング2は、凹状の相手側コネクタ収容部2Bを有しており、それぞれのコンタクト3の一端に配置された接触部3Aは、相手側コネクタ収容部2B内に突出し、それぞれのコンタクト3の他端に配置された接続部3Bは、ハウジング2の背面側に突出して、機器内部の回路基板等の接続対象物に接続される。
コネクタ1と図示しない相手側コネクタとの接続時には、相手側コネクタの一部が嵌合方向Dに沿ってハウジング2の相手側コネクタ収容部2Bに収容され、複数のコンタクト3の接触部3Aが、相手側コネクタの複数のコンタクトに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにして相手側コネクタに接続される複数のコンタクト3の接触部3Aは、嵌合方向Dに直交する平面上において、規格等により定められた配列パターンを有することが多い。例えば、嵌合方向Dから見たハウジング2の外周部が円形である、いわゆる丸形コネクタでは、菱形または正方形の4つの頂点の位置を占めるように、複数のコンタクト3の接触部3Aが配置されることがある。
【0006】
また、従来から、この種のコネクタに用いられる導電性のコンタクト3は、
図28に示されるように、接触部3Aから接続部3Bまで直線状に延びている。
このため、機器の内側に配置される複数のコンタクト3の接続部3Bも、接触部3Aの配列パターンと同じパターンに配列されることとなり、嵌合方向Dに直交する平面上において、例えば、菱形または正方形の4つの頂点の位置を占めるように配置されることがある。
【0007】
近年、各種の電気機器、電子機器は、ロボットを用いた組み付けの自動化が進められているが、複数のコンタクト3の接続部3Bが上述したようなパターンに配列されていると、例えば、
図28において、複数のコンタクト3の接続部3Bが互いに上下方向に重なる配置となるため、これらの接続部3Bと機器内部の回路基板等の接続対象物との電気的な接続作業および接続確認の検査作業をロボットにより行うことが困難になるという問題があった。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、接続対象物に接続される複数のコンタクトの接続部の配列パターンの自由度を高くすることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るコネクタは、嵌合方向に沿って相手側コネクタに嵌合するコネクタであって、一対のコンタクトと、一対のコンタクトを保持するハウジングとを備え、一対のコンタクトは、それぞれ、嵌合方向の前端に配置されると共に嵌合方向に沿って延びる丸ピン形状を有し且つ相手側コネクタのコンタクトに接触する接触部と、嵌合方向の後端に配置されると共に嵌合方向に沿って延びる平板形状を有し且つ接続対象物に接続される接続部と、接触部および接続部の間に配置され且つハウジングに保持される保持部とを有し、一対のコンタクトは、それぞれ、保持部が屈曲形状を有することにより接触部と接続部とが嵌合方向から見て互いに異なる位置に配置され、嵌合方向に直交する平面上において、一対のコンタクトの丸ピン形状を有する接触部は、所定の菱形の4つの頂点のうち、互いに隣接する2つの頂点に位置し、一対のコンタクトの平板形状を有する接続部は、所定の菱形の2本の対角線のうち、一方の対角線に平行な直線上に位置し、且つ、それぞれ、板厚方向が直線に沿った方向を向いているものである。
【0010】
一対のコンタクトは、それぞれ、内部まで金属材料が詰まった金属部材からなるコンタクトであることが好ましい。
【0011】
嵌合方向におけるハウジングの前端側に配置され且つ一対のコンタクトの接触部が貫通する防水部材を備えることが好ましい。
一対のコンタクトの保持部は、それぞれ、平板形状を有する、または、丸ピン形状を有するように構成することができる。
ハウジングは、一対のコンタクトの保持部を収容し且つ嵌合方向の後端側に開放された一対の収容溝を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、複数のコンタクトのうち少なくとも1つのコンタクトは、保持部が屈曲形状を有することにより接触部と接続部とが嵌合方向から見て互いに異なる位置に配置され、嵌合方向に直交する平面上において、複数のコンタクトのうち少なくとも1組のコンタクト対の接触部の配列方向と接続部の配列方向とが互いに異なるので、接続対象物に接続される複数のコンタクトの接続部の配列パターンの自由度を高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るコネクタを斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係るコネクタを斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係るコネクタを示す正面図である。
【
図4】実施の形態1に係るコネクタを示す側面図である。
【
図6】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第1コンタクトを示す斜視図である。
【
図7】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第1コンタクトを示す平面図である。
【
図8】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第1コンタクトを示す側面図である。
【
図9】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第1コンタクトを示す正面図である。
【
図10】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第2コンタクトを示す斜視図である。
【
図11】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第2コンタクトを示す底面図である。
【
図12】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第2コンタクトを示す側面図である。
【
図13】実施の形態1に係るコネクタに用いられた第2コンタクトを示す正面図である。
【
図14】実施の形態1に係るコネクタに用いられたハウジングを斜め後方から見た斜視図である。
【
図15】実施の形態1に係るコネクタに用いられたハウジングを示す背面図である。
【
図16】実施の形態1に係るコネクタに用いられたハウジングを示す正面図である。
【
図17】実施の形態1に係るコネクタに用いられたハウジングを示す側面図である。
【
図18】実施の形態1に係るコネクタに用いられた防水部材を斜め後方から見た斜視図である。
【
図19】実施の形態1に係るコネクタに用いられた防水部材を示す背面図である。
【
図20】実施の形態1に係るコネクタに用いられた防水部材を示す正面図である。
【
図21】実施の形態1に係るコネクタに用いられた防水部材を示す側面図である。
【
図22】実施の形態1に係るコネクタに用いられたシェルを斜め後方から見た斜視図である。
【
図23】実施の形態1に係るコネクタに用いられたシェルを示す背面図である。
【
図24】実施の形態1に係るコネクタに用いられたシェルを示す正面図である。
【
図25】実施の形態1に係るコネクタに用いられたシェルを示す側面図である。
【
図26】第1コンタクトおよび第2コンタクトの接続部に接続対象物が接続された状態の実施の形態1に係るコネクタを示す断面図である。
【
図27】実施の形態2に係るコネクタに用いられたコンタクトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1~
図4に実施の形態1に係るコネクタ11の構成を示す。コネクタ11は、電気機器または電子機器に取り付けられる、いわゆる丸形のレセプタクルコネクタであり、それぞれ嵌合軸Cに沿って嵌合方向に延び且つ嵌合軸Cに対して直交する方向に離れて配列された導電性の第1コンタクト12および第2コンタクト13を有している。
【0015】
第1コンタクト12および第2コンタクト13は、それぞれ、一端が、相手側コネクタに接続されるコネクタ11の嵌合方向の前部に露出されて接触部12Aおよび13Aを形成し、他端が、コネクタ11の嵌合方向の後部に露出されて接続部12Bおよび13Bを形成している。第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクト13の接続部13Bは、それぞれ、嵌合方向に沿ってコネクタ11の後方に突出するように延びると共に、板厚方向が互いに等しくなるような平板形状を有している。
【0016】
ここで、便宜上、嵌合軸Cに沿ってコネクタ11の前部から後部に向かう方向を+Y方向、第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクト13の接続部13Bの配列方向をX方向、XY面に垂直な方向をZ方向と呼ぶこととする。
相手側コネクタとなる図示しないプラグコネクタは、嵌合軸Cに沿って-Y方向から+Y方向に移動してコネクタ11に接続される。
【0017】
コネクタ11は、さらに、第1コンタクト12および第2コンタクト13を保持するハウジング14と、ハウジング14の-Y方向側部分の外周部を覆うシェル15を有している。
シェル15は、それぞれ嵌合軸Cを中心とする円筒形状の前側円筒部15Aおよび後側円筒部15Bと、前側円筒部15Aおよび後側円筒部15Bの境界部分から嵌合軸Cに対して垂直方向に突出するフランジ15Cを有している。
【0018】
ハウジング14の-Y方向側部分の外周部は、シェル15の後側円筒部15Bにより覆われ、シェル15の前側円筒部15Aの内部には、-Y方向に向かって開放された凹状の相手側コネクタ収容部15Dが形成されている。
また、シェル15の後側円筒部15Bの内部には、ハウジング14の-Y方向側に隣接して配置された防水部材16が配置されており、
図3に示されるように、相手側コネクタ収容部15D内に防水部材16の-Y方向側端面が露出し、第1コンタクト12の接触部12Aおよび第2コンタクト13の接触部13Aが、防水部材16に形成された貫通孔を通してシェル15の相手側コネクタ収容部15D内に突出している。
【0019】
第1コンタクト12の接触部12Aと第2コンタクト13の接触部13Aは、嵌合方向であるY方向から見たときに、2本の対角線がX方向とZ方向に延びるような向きで且つ4つの内角がそれぞれ90度の菱形D1の4つの頂点のうち、互いに隣接する2つの頂点に位置するように配置されている。すなわち、第1コンタクト12の接触部12Aと第2コンタクト13の接触部13Aは、Y方向に沿い且つXY面に対して45度の角度で傾斜した平面上に位置している。
【0020】
図5に示されるように、シェル15の後側円筒部15BのY方向における中間部の内周面に、XZ面に沿った環状の段差15Eが形成されており、ハウジング14の-Y方向端部の環状の縁部がシェル15の段差15Eに接触するように、ハウジング14の-Y方向側部分がシェル15の後側円筒部15B内に配置されている。
また、シェル15の後側円筒部15Bの-Y方向端部の内周面に、XZ面に沿った環状の段差15Fが形成されており、防水部材16は、ハウジング14の-Y方向端部とシェル15の段差15Fに挟まれるように、シェル15の後側円筒部15B内に配置されている。
【0021】
第1コンタクト12の-Y方向端部に形成された接触部12Aは、シェル15の相手側コネクタ収容部15D内において、-Y方向に突出しており、第1コンタクト12の+Y方向端部に形成された接続部12Bは、ハウジング14の+Y方向端部から+Y方向に突出している。第1コンタクト12は、ハウジング14内に位置する部分が屈曲することにより、嵌合方向であるY方向から見て、接触部12Aと接続部12Bとが互いに異なる位置に配置されている。
【0022】
図5には、第2コンタクト13の-Y方向端部に形成された接触部13Aが示されていないが、第1コンタクト12と同様に、第2コンタクト13においても、接触部13Aは、シェル15の相手側コネクタ収容部15D内において、-Y方向に突出しており、接続部13Bは、ハウジング14の+Y方向端部から+Y方向に突出している。また、第2コンタクト13も、ハウジング14内に位置する部分が屈曲することにより、嵌合方向であるY方向から見て、接触部13Aと接続部13Bとが互いに異なる位置に配置されている。
【0023】
第1コンタクト12の構成を
図6~
図9に示す。第1コンタクト12は、内部まで導電性の金属材料が詰まった、いわゆる中実の金属部材からなり、-Y方向端部に形成された接触部12Aは、嵌合方向であるY方向に沿って延びる丸ピン形状を有し、+Y方向端部に形成された接続部12Bは、YZ面に沿って延びる平板形状を有している。
【0024】
接触部12Aと接続部12Bの間には、ハウジング14に保持される保持部12Cが配置されている。保持部12Cは、接触部12Aおよび接続部12Bと一体に形成され、接続部12Bにつながる平板形状を有すると共にX方向およびZ方向に屈曲した屈曲形状を有している。より詳細には、保持部12Cは、平板の板厚方向であるX方向にクランク状に屈曲した屈曲部12Dと、平板の表面に沿ってZ方向にクランク状に屈曲した屈曲部12Eとを有している。
このため、
図9に示されるように、-Y方向から見たときに、接触部12Aと接続部12Bとが、互いにX方向およびZ方向にずれた位置を占めている。
【0025】
第2コンタクト13も、第1コンタクト12と同様の構成を有している。すなわち、
図10~
図13に示されるように、第2コンタクト13は、内部まで導電性の金属材料が詰まった、いわゆる中実の金属部材からなり、-Y方向端部に形成された接触部13Aは、嵌合方向であるY方向に沿って延びる丸ピン形状を有し、+Y方向端部に形成された接続部13Bは、YZ面に沿って延びる平板形状を有している。
【0026】
接触部13Aと接続部13Bの間には、ハウジング14に保持される保持部13Cが配置されている。保持部13Cは、接触部13Aおよび接続部13Bと一体に形成され、接続部13Bにつながる平板形状を有すると共にX方向およびZ方向に屈曲した屈曲形状を有している。より詳細には、保持部13Cは、平板の板厚方向であるX方向にクランク状に屈曲した屈曲部13Dと、平板の表面に沿ってZ方向にクランク状に屈曲した屈曲部13Eとを有している。
このため、
図13に示されるように、-Y方向から見たときに、接触部13Aと接続部13Bが、互いにX方向およびZ方向にずれた位置を占めている。
【0027】
ただし、第1コンタクト12において、接触部12Aに対し接続部12Bがずれる方向およびずれ量と、第2コンタクト13において、接触部13Aに対し接続部13Bがずれる方向およびずれ量が、互いに相違している。すなわち、第1コンタクト12では、
図9に示されるように、-Y方向から見たときに、接続部12Bが、接触部12Aに対して+X方向および-Z方向にずれた位置にあり、第2コンタクト13では、
図13に示されるように、-Y方向から見たときに、接続部13Bが、接触部13Aに対して-X方向および+Z方向にずれた位置にある。
【0028】
第1コンタクト12および第2コンタクト13は、例えば、矩形の断面形状を有する金属製の帯状部材を屈曲して帯状部材の一端側に平板形状の接続部12B、13Bおよび保持部12C、13Cを形成した後、帯状部材の他端側にコイニング加工を施して丸ピン形状の接触部12A、13Aを形成し、さらに全体にメッキ処理を施すことで、形成することができる。
【0029】
このような第1コンタクト12および第2コンタクト13を用いることにより、
図3に示されるように、接触部12Aと接続部12Bが、Y方向に沿い且つXY面に対して45度の角度で傾斜した平面上に配列されながらも、
図1および
図2に示されるように、接続部12Bと接続部13Bを、XY面上で且つX方向に配列することが可能となる。すなわち、嵌合方向に直交するXZ面上において、第1コンタクト12および第2コンタクト13における、接触部12Aおよび13Aの配列方向と接続部12Bおよび13Bの配列方向を互いに相違させることができる。
【0030】
ここで、ハウジング14の構成を
図14~
図17に示す。ハウジング14は、絶縁性樹脂等の絶縁性材料からなり、Y方向に沿ったほぼ円柱形状を有している。ハウジング14の-Y方向側部分は、円板形状を有しているが、ハウジング14の+Y方向側で且つ-Z方向側には、切り欠き14Aが形成され、ハウジング14の-Y方向側端面には、-Y方向に突出するステージ状の突部14Bが一体に形成されている。
【0031】
ハウジング14には、第1コンタクト12および第2コンタクト13を通すための、Y方向に延びる貫通孔14Cおよび14Dが形成されると共に、これら貫通孔14Cおよび14Dにそれぞれ連通し且つハウジング14の後端である+Y方向端部に開放された2つの収容溝14Eおよび14Fが形成されている。収容溝14Eおよび14Fは、+Y方向側から挿入される第1コンタクト12の保持部12Cおよび第2コンタクト13の保持部13Cを収容するためのものである。
【0032】
ステージ状の突部14Bには、-Y方向に突出する1つのピン状部14Gが一体に形成されている。
さらに、円板形状を有するハウジング14の-Y方向側部分で且つ突部14Bが形成されていない箇所に、Y方向に延びる貫通孔14Hが形成されている。この貫通孔14Hは、図示しないグランド用コンタクトを通すためのもので、切り欠き14Aを通ってハウジング14の+Y方向側に通じている。
【0033】
図16に示されるように、貫通孔14C、14Dおよび14Hとピン状部14Gは、-Y方向から見たときに、2本の対角線がX方向とZ方向に延びるような向きで且つ4つの内角がそれぞれ90度の菱形D2の4つの頂点に位置するように配置されている。
また、ハウジング14の+Z方向端部には、Y方向に延びる位置合わせ用溝14Jが形成されている。
【0034】
防水部材16の構成を
図18~
図21に示す。防水部材16は、ゴム等の弾性変形可能な材料から形成されており、Y方向に沿ったほぼ円柱形状を有している。防水部材16の+Y方向側端面には、ハウジング14のステージ状の突部14Bに対応する形状の凹部16Aが形成され、防水部材16の-Y方向側で且つ-Z方向側には、切り欠き16Bが形成されている。
【0035】
また、防水部材16には、それぞれY方向に延びる4つの貫通孔16C~16Fが形成されており、これら4つの貫通孔16C~16Fのうち、3つの貫通孔16C~16Eは、凹部16Aを通って防水部材16の+Y方向側に通じている。残る貫通孔16Fは、図示しないグランド用コンタクトを通すためのもので、凹部16Aが形成されていない部分で且つ切り欠き16Bを通って防水部材16の+Y方向側に通じている。
【0036】
なお、貫通孔16Cおよび16Dは、それぞれ、第1コンタクト12の接触部12Aおよび第2コンタクト13の接触部13Aの直径よりも小さい直径を有し、貫通孔16Eは、ハウジング14のピン状部14Gの直径よりも小さい直径を有し、貫通孔16Fは、図示しないグランド用コンタクトの直径よりも小さい直径を有している。
【0037】
図19および
図20に示されるように、4つの貫通孔16C~16Fは、Y方向から見たときに、2本の対角線がX方向とZ方向に延びるような向きで且つ4つの内角がそれぞれ90度の菱形D3の4つの頂点に位置するように配置されている。この菱形D3は、ハウジング14の貫通孔14C、14Dおよび14Hとピン状部14Gが配置されている菱形D2と同じ大きさおよび形状を有している。
また、防水部材16の外周部の+Z方向側部分には、互いにX方向に離れ且つそれぞれ-Y方向に開放された2つの位置合わせ用溝16Gが形成されている。
【0038】
シェル15の構成を
図22~
図25に示す。シェル15は、例えば金属材料からなり、フランジ15Cに4つの取り付け孔15Gが形成されている。これらの取り付け孔15Gを利用することにより、シェル15は、電気機器または電子機器のケーシングに取り付け可能となる。
【0039】
シェル15の後側円筒部15Bの内部で且つ-Z方向側部分に、扇形状のストッパ15Hが形成されている。このストッパ15Hは、防水部材16の切り欠き16Bに対応する形状を有し、ストッパ15Hにグランド用コンタクトを通すための貫通孔15Jが形成されている。
【0040】
また、シェル15の後側円筒部15Bの内部で且つ+Z方向側部分には、Y方向に延びる突状部15Kと、突状部15Kを挟んでX方向に互いに離間して配置された2つの突状部15Lが形成されている。突状部15Kは、ハウジング14の位置合わせ用溝14Jに挿入されるものであり、2つの突状部15Lは、防水部材16の2つの位置合わせ用溝16Gに挿入されるものである。
【0041】
コネクタ11を組み立てる際には、まず、防水部材16が嵌合軸Cに沿ってシェル15の+Y方向側から-Y方向に移動され、シェル15の後側円筒部15B内に挿入される。このとき、シェル15の2つの突状部15Lが防水部材16の2つの位置合わせ用溝16Gに挿入され、シェル15のストッパ15Hが防水部材16の切り欠き16Bの内面に接触し、シェル15の段差15Fが防水部材16の-Y方向端部の環状の縁部に接触することで、シェル15の後側円筒部15B内における防水部材16の配置位置が決定される。
【0042】
次に、ハウジング14が嵌合軸Cに沿ってシェル15の+Y方向側から-Y方向に移動され、ハウジング14の位置合わせ用溝14Jにシェル15の突状部15Kを挿入しながら、ハウジング14の-Y方向側部分がシェル15の後側円筒部15B内に挿入される。ハウジング14のステージ状の突部14Bが防水部材16の凹部16Aに挿入され、シェル15の段差15Eがハウジング14の-Y方向端部の環状の縁部に接触することで、ハウジング14が防水部材16の+Y方向側に隣接して配置される。
【0043】
このとき、防水部材16の-Y方向端部の環状の縁部は、ハウジング14によりシェル15の環状の段差15Fに押しつけられた状態となる。また、ハウジング14の貫通孔14C、14Dおよび14Hは、それぞれ、防水部材16の貫通孔16C、16Dおよび16Fと同軸上に位置して連通し、ハウジング14のピン状部14Gは、防水部材16の貫通孔16Eに挿入される。
【0044】
この状態で、第1コンタクト12がハウジング14の+Y方向側からハウジング14に向けて移動され、第1コンタクト12の接触部12Aをハウジング14の貫通孔14Cおよび防水部材16の貫通孔16Cに挿入しつつ、第1コンタクト12の保持部12Cがハウジング14の収容溝14Eに圧入されて保持される。これにより、第1コンタクト12の接触部12Aは、防水部材16の貫通孔16Cからシェル15の相手側コネクタ収容部15D内に突出し、第1コンタクト12の接続部12Bは、ハウジング14の+Y方向端部から+Y方向に突出した状態となる。
【0045】
同様に、第2コンタクト13がハウジング14の+Y方向側からハウジング14に向けて移動され、第2コンタクト13の接触部13Aをハウジング14の貫通孔14Dおよび防水部材16の貫通孔16Dに挿入しつつ、第2コンタクト13の保持部13Cがハウジング14の収容溝14Fに圧入されて保持される。これにより、第2コンタクト13の接触部13Aは、防水部材16の貫通孔16Dからシェル15の相手側コネクタ収容部15D内に突出し、第2コンタクト13の接続部13Bは、ハウジング14の+Y方向端部から+Y方向に突出した状態となる。
【0046】
さらに、図示しないグランド用コンタクトが、ハウジング14の+Y方向側からハウジング14に向けて移動され、グランド用コンタクトの-Y方向端部が、ハウジング14の貫通孔14Hおよび防水部材16の貫通孔16Fを通ってシェル15の相手側コネクタ収容部15D内に突出した状態となる。なお、グランド用コンタクトとしては、Y方向に直線状に伸びる棒状の金属部材を用いることができる。
これにより、コネクタ11の組み立てが完了する。
【0047】
上述したように、弾性変形可能な材料からなる防水部材16の貫通孔16Cおよび16Dは、それぞれ、第1コンタクト12の接触部12Aおよび第2コンタクト13の接触部13Aの直径よりも小さい直径を有し、貫通孔16Eは、ハウジング14のピン状部14Gの直径よりも小さい直径を有し、貫通孔16Fは、グランド用コンタクトの直径よりも小さい直径を有しており、これらの貫通孔16C、16D、16Eおよび16Fに、第1コンタクト12の接触部12A、第2コンタクト13の接触部13A、ハウジング14のピン状部14Gおよびグランド用コンタクトが圧入されることで、シェル15の相手側コネクタ収容部15Dから防水部材16の+Y方向側への水の浸入が防止される。
【0048】
なお、第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクト13の接続部13Bが図示しないキャリアに一体に接続され、キャリアをハウジング14の+Y方向側からハウジング14に向けて移動することにより、第1コンタクト12と第2コンタクト13を同時にハウジング14に組み込むこともできる。
また、シェル15へのハウジング14の組み込みに先立って、ハウジング14に第1コンタクト12および第2コンタクト13を保持させ、その後、ハウジング14を、第1コンタクト12および第2コンタクト13と共にシェル15の後側円筒部15Bに挿入してコネクタ11を組み立てることもできる。
【0049】
図26に、電気機器、電子機器等の機器21に組み付けられた状態のコネクタ11を示す。機器21は、コネクタ11の接続対象物として、第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクト13の接続部13Bにそれぞれ接続される接続端子22および23を有している。接続端子22および23は、それぞれ、X方向に対向する一対のバネ接点を有しており、機器21に対してコネクタ11が+Y方向に移動すると、YZ面に沿って延びる平板形状の第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクト13の接続部13Bが、接続端子22および23の一対のバネ接点の間に挿入されて、接続端子22および23に電気的に接続される。
【0050】
第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクト13の接続部13Bは、いずれも、YZ面に沿って延びる平板形状を有し、接続端子22および23は、いずれも、X方向に対向する一対のバネ接点を有しているので、接続端子22および23に対してコネクタ11の位置がX方向およびZ方向にわずかに位置ずれした状態であっても、第1コンタクト12および第2コンタクト13を確実に接続端子22および23に導通させることができる。
なお、第1コンタクト12および第2コンタクト13が接続端子22および23に電気的に接続された状態で、シェル15のフランジ15Cを機器21のケーシング24に固定することにより、コネクタ11が機器21に取り付け可能となる。
【0051】
実施の形態1に係るコネクタ11では、第1コンタクト12および第2コンタクト13における、接触部12Aおよび13Aの配列方向と接続部12Bおよび13Bの配列方向が互いに異なり、また、接触部12Aと接続部12Bが嵌合方向から見て互いに異なる位置に配置され、接触部13Aと接続部13Bも嵌合方向から見て互いに異なる位置に配置されている。このため、接触部12Aおよび13Aが、例えば、規格等により定められた配列パターンに従って配置されていても、接続部12Bおよび13Bを自由に配列することができ、接続部12Bおよび13Bの配列パターンの自由度を高くすることが可能となる。
その結果、ロボット等を用いることにより、コネクタ11を機器21に容易に自動組み付けすることができる。
【0052】
なお、上記の実施の形態1では、防水部材16の貫通孔16Eにハウジング14のピン状部14Gが挿入されることにより、この貫通孔16Eが閉塞されているが、これに限るものではなく、ハウジング14に、ピン状部14Gの代わりに図示しない第3コンタクト用の貫通孔を形成し、第1コンタクト12および第2コンタクト13と同様に、第3コンタクトをコネクタ11に具備させることもできる。
さらに、グランド用コンタクトの代わりに図示しない第4コンタクトをコネクタ11に具備させることもできる。
【0053】
この場合、図示しない第3コンタクトの接続部および第4コンタクトの接続部も、第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクト13の接続部13Bと同様に、YZ面に沿って延びる平板形状を有して、4つのコンタクトの接続部の板厚方向を互いに等しくし、4つのコンタクトの接続部を板厚方向に沿って一直線上に配列することが、コネクタ11を自動組み付けするために好ましい。あるいは、4つのコンタクトの接続部を千鳥状に配列しても、これらの接続部と機器内部の接続対象物との電気的な接続作業および接続確認の検査作業をロボットにより容易に行うことができる。
【0054】
さらに、少なくとも1つのコンタクトの接触部と接続部とが嵌合方向から見て互いに異なる位置に配置され、嵌合方向に直交する平面上において、少なくとも1対のコンタクトの接触部の配列方向と接続部の配列方向とが互いに異なっていればよく、5つ以上のコンタクトを有することもできる。
【0055】
なお、上記の実施の形態1に係るコネクタ11は、第1コンタクト12および第2コンタクト13が、中空の金属材料ではなく、内部まで導電性の金属材料が詰まった、いわゆる中実の金属部材から形成されているので、機器の電源電流等の大電流を流すためのコネクタとして適している。
なお、防水性が要求されないコネクタ11を構成する場合には、防水部材16を省略することもできる。
【0056】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、第1コンタクト12の保持部12Cおよび第2コンタクト13の保持部13Cが屈曲された平板形状を有しているが、
図27に示されるコンタクト25のように、屈曲された丸ピン形状の保持部25Cを有するものであってもよい。
このコンタクト25は、丸ピン形状の接触部25Aと、接触部25Aに接続された丸ピン形状の保持部25Cと、保持部25Cに接続された平板形状の接続部25Bを有している。
【0057】
コンタクト25は、例えば、円形の断面形状を有する金属製の棒状部材を屈曲して棒状部材の一端側に丸ピン形状の接触部25Aおよび保持部25Cを形成した後、棒状部材の他端側にフライス加工またはコイニング加工を施して平板形状の接続部25Bを形成し、さらに全体にメッキ処理を施すことで、形成することができる。
このように丸ピン形状の保持部を有する複数のコンタクトを使用しても、実施の形態1と同様に、複数のコンタクトの接続部の配列パターンの自由度が高いコネクタを実現することが可能となる。
【0058】
なお、実施の形態1では、第1コンタクト12の保持部12Cは、屈曲された平板形状を有しているため、保持部12Cが、平板の板厚方向であるX方向にクランク状に屈曲した屈曲部12Dと、平板の表面に沿ってZ方向にクランク状に屈曲した屈曲部12Eとを有することにより、
図9に示されるように、-Y方向から見たときに、接触部12Aと接続部12Bが、互いにX方向およびZ方向にずれた位置を占めている。これに伴い、保持部12Cが収容されるハウジング14の収容溝14Eも、
図15に示されるように、X方向およびZ方向にそれぞれ沿い且つ屈曲して延びている。
【0059】
同様に、第2コンタクト13の保持部13Cは、屈曲された平板形状を有しているため、保持部13Cが、平板の板厚方向であるX方向にクランク状に屈曲した屈曲部13Dと、平板の表面に沿ってZ方向にクランク状に屈曲した屈曲部13Eとを有することにより、
図13に示されるように、-Y方向から見たときに、接触部13Aと接続部13Bが、互いにX方向およびZ方向にずれた位置を占めている。これに伴い、保持部13Cが収容されるハウジング14の収容溝14Fも、
図15に示されるように、X方向およびZ方向にそれぞれ沿い且つ屈曲して延びている。
【0060】
これに対して、実施の形態2におけるコンタクト25の保持部25Cは、断面形状が円形の丸ピン形状を有するので、保持部25Cを、X方向およびZ方向の双方に交差する方向に屈曲させることで、-Y方向から見たときに、X方向へのずれとZ方向へのずれを同時に生じさせることができる。これに伴い、実施の形態2におけるハウジングに、-Y方向から見たときに、X方向およびZ方向にそれぞれ交差する方向に延びる収容溝を形成して、この収容溝にコンタクト25の保持部25Cを保持させることが可能となる。
【0061】
なお、実施の形態1における第1コンタクト12の接続部12Bおよび第2コンタクトの接続部13Bと実施の形態2におけるコンタクト25の接続部25Bは、いずれも平板形状を有しているが、例えば
図26に示される接続端子22および23等の接続対象物との接続の信頼性を高めるために、これらの平板形状の接続部に、貫通孔、窪み、突起等を形成することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 コネクタ、2 ハウジング、2A フランジ、2B 相手側コネクタ収容部、3 コンタクト、3A 接触部、3B 接続部、4 ケーシング、11 コネクタ、12 第1コンタクト、12A,13A,25A 接触部、12B,13B、25B 接続部、12C,13C、25C 保持部、12D,12E,13D,13E 屈曲部、13 第2コンタクト、14 ハウジング、14A 切り欠き、14B 突部、14C,14D,14H 貫通孔、14E,14F 収容溝、14G ピン状部、14J,16G 位置合わせ用溝、15 シェル、15A 前側円筒部、15B 後側円筒部、15C フランジ、15D 相手側コネクタ収容部、15E,15F 段差、15G 取り付け孔、15H ストッパ、15J 貫通孔、15K,15L 突状部、16 防水部材、16A 凹部、16B 切り欠き、16C~16F 貫通孔、21 機器、22,23 接続端子、24 ケーシング、25 コンタクト、D 嵌合方向、C 嵌合軸、D1,D2,D3 菱形。