(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】基板固定具および電流検知装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R15/20 D
(21)【出願番号】P 2020016601
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
(72)【発明者】
【氏名】細越 順一
(72)【発明者】
【氏名】白坂 正臣
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】安部 稔
(72)【発明者】
【氏名】福井 命
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 優
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012216260(DE,A1)
【文献】特開2019-105613(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203465(WO,A1)
【文献】特開2019-207935(JP,A)
【文献】実開昭62-14785(JP,U)
【文献】米国特許第5144533(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
G01R 15/00
G01R 1/00
G01R 11/00
G01R 21/00
H05K 7/12
H05K 7/14
H02G 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部に基板を位置決めして固定する基板固定具であって、
前記収納部の底面から立設され、前記基板に設けられた貫通孔に挿入される支柱と、
前記支柱の伸びる第1方向にみて前記支柱の周囲に位置して、前記基板の面を受ける受け面を有する基部と、
前記支柱の周面における前記受け面よりも前記底面から遠位となる部分から突出して、前記第1方向の前記支柱の付け根側へ延在するクラッシュリブと、
を備え、
前記受け面は、前記第1方向にみて、前記クラッシュリブの位置とは重ならない位置に設けられ
、
前記基部は、前記クラッシュリブと前記受け面との間に設けられ、前記受け面よりも前記底面に近位となる凹部を有する、基板固定具。
【請求項2】
1つの前記支柱に対して複数の前記クラッシュリブが設けられ、
前記受け面は、前記第1方向にみて、前記複数のクラッシュリブの間の位置であって前記周面の外方に設けられる、請求項1記載の基板固定具。
【請求項3】
バスバーに対応して配置された電流検知部を備える電流検知領域と、前記電流検知部で検知した電流に基づく信号を出力する検出回路領域と、を有する基板と、
前記基板を収容する収納部を有するケースと、
前記基板を前記収納部に位置決めして固定する請求項1
または請求項2に記載の基板固定具と、
を備えた電流検知装置。
【請求項4】
複数の前記基板固定具として、第1基板固定具と、第2基板固定具と、を有し、
前記基板は、前記電流検知領域に設けられ前記第1基板固定具と嵌合する第1貫通孔と、前記検出回路領域に設けられ前記第2基板固定具と嵌合する第2貫通孔とを有し、
前記第1基板固定具と前記第1貫通孔との嵌合によって前記基板の面に沿った互いに直交する第2方向および第3方向の位置が決まり、
前記第2基板固定具と前記第2貫通孔との嵌合によって前記基板の前記第3方向の位置が決まる、
請求項3記載の電流検知装置。
【請求項5】
前記電流検知部は前記第2方向に並置される複数の前記バスバーに対応し、
前記第1貫通孔は丸孔であり、前記第2貫通孔は前記第2方向に延びる長孔である、
請求項4記載の電流検知装置。
【請求項6】
前記第1基板固定具の前記支柱の側面における前記第2方向の両側、および前記第3方向の両側に複数の前記クラッシュリブが設けられ、
前記第2基板固定具の前記支柱の側面における前記第3方向の両側に複数の前記クラッシュリブが設けられる、
請求項4または請求項5に記載の電流検知装置。
【請求項7】
前記基板は第3貫通孔を有し、
前記収納部に立設され前記第3貫通孔が挿入された状態でかしめられるかしめ固定具をさらに備えた
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の、電流検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定具および電流検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリー状態検知装置として、特許文献1には、回路基板と、ケースと、蓋部と、を備える構成が開示される。このバッテリー状態検知装置では、基板は電流を検出し、ケースには、回路基板を収容する基板収容空間が形成される。また、ケースは基板収容空間の一方側が開放された開放口を有し、蓋部は、ケースの開放口を塞ぐ。そして、開放口の縁部に沿って、ケースと蓋部が溶着により接続された溶着部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケースに基板を固定する装置構成の場合、ケースの基板の収納部に支柱を立設し、この支柱を基板に設けられた貫通孔に挿入し、支柱に設けられたクラッシュリブを潰しながら圧入することで、基板の位置決め固定を行っている。
【0005】
このようなクラッシュリブによる基板の位置決め固定では、基板に設けられた貫通孔と支柱との圧入固定の際、潰れていくクラッシュリブからダストが発生しやすい。このダストが基板と受け面との間に挟まると、基板の高さ方向の位置決め精度に影響を及ぼすことになる。
【0006】
例えば、電流検知装置では、基板に設けられた電流検知部と、検知対象であるバスバーとのギャップを高い精度で設定することが電流検知を行う上で重要である。クラッシュリブによって基板の位置決め固定を行う際に、クラッシュリブから発生したダストが基板と受け面との間に噛み込まれると、電流検知部とバスバーとのギャップに狂いに生じ、検知精度に悪影響を及ぼすことになる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、クラッシュリブを用いて基板を高精度に位置決め固定できる基板固定具および電流検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、収納部に基板を位置決めして固定する基板固定具であって、収納部の底面から立設され、基板に設けられた貫通孔に挿入される支柱と、支柱の伸びる第1方向にみて支柱の周囲に位置して、基板の面を受ける受け面を有する基部と、支柱の周面における受け面よりも底面から遠位となる部分から延出して、第1方向の支柱の付け根側へ延在するクラッシュリブと、を備え、受け面は、第1方向にみて、クラッシュリブの位置とは重ならない位置に設けられる、基板固定具である。
【0009】
このような構成によれば、基板を収納部に位置決め固定するにあたり、基板の貫通孔に支柱を挿入してクラッシュリブを潰していくことで支柱と貫通孔とが圧入によって嵌合される。第1方向にみて、クラッシュリブの位置と基板の受け面との位置が重ならないため、クラッシュリブが潰れる際にダストが生じても、落下したダストが受け面の上に載らず、基板と受け面との間にダストが挟まることを抑制することができる。
【0010】
上記基板固定具において、1つの支柱に対して複数の前記クラッシュリブが設けられ、受け面は、第1方向にみて、複数のクラッシュリブの間の位置であって支柱の周面の外方に設けられることが好ましい。これにより、複数のクラッシュリブからダストが落下しても、受け面の上に載らずに済む。
【0011】
上記基板固定具において、基部は、クラッシュリブと受け面との間に設けられ、受け面よりも底面に近位となる凹部を有することが好ましい。これにより、クラッシュリブから生じたダストが凹部で捕獲され、基板の受け面の上にダストが載ることを効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様は、バスバーに対応して配置された電流検知部を備える電流検知領域と、電流検知部で検知した電流に基づく信号を出力する検出回路領域と、を有する基板と、基板を収容する収納部を有するケースと、基板を収納部に位置決めして固定する上記の基板固定具と、を備えた電流検知装置である。
【0013】
このような構成によれば、電流検知領域および検出回路領域を有する基板をケースの収納部に位置決め固定するにあたり、基板の貫通孔に支柱を挿入してクラッシュリブを潰していくことで支柱と貫通孔とが圧入によって嵌合される。第1方向にみて、クラッシュリブの位置と基板の受け面との位置が重ならないため、クラッシュリブが潰れる際にダストが生じても、落下したダストが受け面の上に載らず、基板と受け面との間にダストが挟まることを抑制することができる。
【0014】
上記電流検知装置において、複数の基板固定具として、第1基板固定具と、第2基板固定具と、を有し、基板は、電流検知領域に設けられ第1基板固定具と嵌合する第1貫通孔と、検出回路領域に設けられ第2基板固定具と嵌合する第2貫通孔とを有し、第1基板固定具と第1貫通孔との嵌合によって基板の面に沿った互いに直交する第2方向および第3方向の位置が決まり、第2基板固定具と第2貫通孔との嵌合によって基板の第3方向の位置が決まることが好ましい。これにより、第1基板固定具と第1貫通孔との嵌合によって基板の面に沿った2方向の位置決めが行われ、第2基板固定具と第2貫通孔との嵌合では第2方向に対する位置決め誤差を吸収しながら第3方向の位置決めを行うことができる。
【0015】
上記電流検知装置において、電流検知部は第2方向に並置される複数のバスバーに対応する場合、第1貫通孔は丸孔であり、第2貫通孔は第2方向に延びる長孔であることが好ましい。これにより、丸孔である第1貫通孔と第1基板固定具との嵌合によって2方向が位置決めされ、長孔である第2貫通孔と第2基板固定具との嵌合によって第2方向に対する位置決め誤差を吸収しながら第3方向の位置決めを行うことができる。
【0016】
上記電流検知装置において、第1基板固定具の支柱の側面における第2方向の両側、および第3方向の両側に複数のクラッシュリブが設けられ、第2基板固定具の支柱の側面における第3方向の両側に複数のクラッシュリブが設けられることが好ましい。これにより、第1基板固定具の複数のクラッシュリブの潰れによって直交する第2方向および第3方向の位置決め固定が行われ、第2基板固定具の複数のクラッシュリブの潰れによって第3方向の位置決め固定が行われる。
【0017】
上記電流検知装置において、基板は第3貫通孔を有し、収納部に立設され第3貫通孔が挿入された状態でかしめられるかしめ固定具をさらに備えていてもよい。これにより、かしめ固定具によるかしめによって基板の第1方向の位置を確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クラッシュリブを用いて基板を高精度に位置決め固定できる基板固定具および電流検知装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る基板固定具の構成を例示する斜視図である。
【
図2】(a)および(b)は、本実施形態に係る基板固定具の構成を例示する図である。
【
図3】本実施形態に係る電流検知装置の構成を例示する斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る電流検知装置の構成を例示する平面図である。
【
図5】(a)および(b)は、基板固定具と貫通孔との関係を示す模式平面図である。
【
図6】(a)および(b)は、電流検知の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0021】
(基板固定具の構成)
図1は、本実施形態に係る基板固定具の構成を例示する斜視図である。
図2(a)および(b)は、本実施形態に係る基板固定具の構成を例示する図で、(a)には側面図が示され、(b)には平面図が示される。
なお、実施形態の説明では、支柱10の伸びる方向をZ方向(第1方向)、Z方向と直交する方向をX方向(第2方向)、Z方向およびX方向と直交する方向をY方向(第3方向)とする。また、Z方向において支柱10の突出する側を先端側、その反対側を付け根側ともいうことにする。
【0022】
本実施形態に係る基板固定具1は、基板100を収納部210に位置決め固定するためのもので、収納部210に立設される支柱10と、支柱10の周面10aに設けられるクラッシュリブ20と、基板100の面100aを受ける受け面30aを有する基部30とを備える。
【0023】
支柱10は収納部210の底面210aからZ方向に延出して設けられ、先端側から付け根側にかけてZ方向に同径の直胴部分11を有している。支柱10の付け根部分は基部30と一体に形成されていてもよいし、別体に形成されていてもよい。支柱10の付け根部分と基部30とが一体に形成されている場合、基部30からZ方向に突出する直胴部分11のみが支柱10として現れる部分となる。基板100の貫通孔110をこの支柱10に差し込むようにして基板100を支持し、基板100の位置決め固定が行われる。
【0024】
支柱10の周面10aに設けられるクラッシュリブ20は、周面10aにZ方向に延在するよう設けられる。基板100の貫通孔110を支柱10に差し込む際、貫通孔110によってクラッシュリブ20が押し潰されていき、その反力によって基板100を支柱10に固定する。すなわち、基板100の貫通孔110と支柱10との間にクラッシュリブ20が挟み込まれるように介在し、貫通孔110と支柱10とが圧入固定される。
【0025】
クラッシュリブ20は1つの支柱10に対して少なくとも1つ設けられ、基板100の位置決め方向に並ぶ2つのクラッシュリブ20が支柱10を間にして対向配置されることが好ましい。クラッシュリブ20は支柱10の周面10aから放射方向に突出する。XY平面に平行な方向におけるクラッシュリブ20の突出量はZ方向に一定でもよいし、Z方向の支柱10の付け根に向かうにしたがい増加するようなテーパ状に設けられていてもよい。
【0026】
基部30は、直胴部分11よりも付け根側に設けられる基台部31と、基台部31の周面31aに設けられる基板受け部32とを有する。基台部31は直胴部分11よりも太い直径を有し、直胴部分11とZ方向に重なるように(例えば、同心上に)配置される。基板受け部32は基台部31の周面31aから放射方向に延在し、Z方向においては収納部210の底面210aまで延設される。
【0027】
基台部31の上面には受け面30aが設けられる。本実施形態では、基台部31における基板受け部32の上面が受け面30aとなっている。受け面30aはXY平面を有していることが好ましい。基板100の貫通孔110に支柱10を差し込んでいくと、基板100の面100aが受け面30aと当接する位置で固定される。受け面30aがXY平面を有していることで、基板100を安定して支えることができる。受け面30aとの関係で規定すれば、クラッシュリブ20は、支柱10の周面10aにおける受け面30aよりも底面210aから遠位(Z方向先端側)となる部分から突出して、Z方向(第1方向)の支柱10の付け根側(Z方向付け根側、収納部210の底面210a側)へ延在する。換言すれば、クラッシュリブ20は、支柱10の周面10aから突出しZ方向(第1方向)の成分を有して周面10a上に延在し、クラッシュリブ20の少なくとも一部は、受け面30aよりもZ方向(第1方向)の先端側に位置する。
【0028】
基板受け部32は基台部31の周面31aに少なくとも1つ設けられる。複数の基板受け部32が設けられる場合、基台部31の周面31aに沿って等間隔で配置されることが好ましい。すなわち、2つの基板受け部32が設けられる場合、周面31aに沿って180度の間隔で配置され、3つの基板受け部32が設けられる場合、周面31aに沿って120度の間隔で配置され、4つの基板受け部32が設けられる場合、周面31aに沿って90度の間隔で配置されているとよい。
【0029】
基台部31の上面には段差面31bが設けられる。段差面31bは、Z方向に受け面30aよりも低い位置(付け根側)に配置される。段差面31bによって支柱10の周面10aと受け面30aとの間に、受け面30aよりも底面210aに近位となる凹部が構成される。クラッシュリブ20は、受け面30aよりも収納部210の底面210aから遠位となる部分から延出し、付け根側まで(例えば、段差面31bまで)延在するように設けられる。
【0030】
本実施形態に係る基板固定具1では、受け面30aがZ方向にみてクラッシュリブ20の位置とは重ならない位置に設けられる。すなわち、支柱10の周面10aに対してクラッシュリブ20が突出する方向に受け面30aは配置されておらず、Z方向にみてクラッシュリブ20の付け根側に受け面30aが配置されないようになっている。
【0031】
このような基板固定具1では、基板100を収納部210に位置決め固定するにあたり、基板100の貫通孔110に支柱10を挿入してクラッシュリブ20を潰していくことで支柱10と貫通孔110とが圧入によって嵌合される。この際、潰されたクラッシュリブ20や、クラッシュリブ20と接触した基板100からダストが発生する場合がある。本実施形態では、Z方向にみてクラッシュリブ20の位置と受け面30aとの位置が重ならないため、発生したダストが基板100の挿入方向(Z方向)に押し込まれたり、落下したりしてもダストが受け面30aの上に載りにくくなる。これにより、基板100と受け面30aとの間にダストが挟まることを抑制することができる。
【0032】
また、基台部31に段差面31bが設けられていることで、ダストを段差面31bで受けて捕獲することができ、ダストの飛散を抑制して受け面30aに載ることを効果的に抑制することができる。また、クラッシュリブ20の突出量が大きめで、基板100の貫通孔110の大きさが小さめの組み合わせになった場合などでは、クラッシュリブ20が貫通孔110によってうまく潰されずに、一部が削られ、ダストがカンナ屑のように受け面30aの方向に延びてくることも考えられる。このような場合にも、段差面31bが設けられていることで、ダストが段差面31bと受け面30aとの段差に入り込み、受け面30a上には載り難くすることができる。
【0033】
1つの支柱10に対して複数のクラッシュリブ20が設けられている場合、受け面30aはZ方向にみて複数のクラッシュリブ20の間の位置であって周面10aの外方に設けられていることが好ましい。例えば、4つのクラッシュリブ20が90度間隔で設けられている場合、受け面30aはクラッシュリブ20に対して45度ずれた位置に90度間隔で設けられるとよい。これにより、複数のクラッシュリブ20からダストが落下しても、受け面30aの上に載らずに済む。
【0034】
(電流検知装置の構成)
図3は、本実施形態に係る電流検知装置の構成を例示する斜視図である。
図4は、本実施形態に係る電流検知装置の構成を例示する平面図である。
本実施形態に係る電流検知装置500は、バスバー300に流れる電流を検知する装置であり、電流検知を行う回路を備えた基板100と、基板100を収容する収納部210を有するケース200と、基板100を収納部210に位置決めして固定する基板固定具1とを備える。
【0035】
基板100は、バスバー300に対応して配置された電流検知部150を備える電流検知領域R1と、電流検知部150で検知した電流に基づく信号を出力する検出回路領域R2と、を有する。電流検知領域R1と検出回路領域R2とは、基板100のX方向に並置される。
【0036】
本実施形態では、3相交流の電流検知に対応してX方向に並置される3つのバスバー300U、300Vおよび300Wに流れる電流を検知する構成である。このため、電流検知領域R1はX方向に3つのバスバー300U、300Vおよび300Wを跨ぐように配置され、この電流検知領域R1に検出回路領域R2が並置される。したがって、基板100はX方向を長手方向とした略長方形に設けられる。
【0037】
電流検知領域R1にはバスバー300Uに対向して電流検知部150Uが配置され、バスバー300Vに対向して電流検知部150Vが配置され、バスバー300Wに対向して電流検知部150Wが配置される。なお、バスバー300U、300Vおよび300Wを区別しない場合にはバスバー300と総称し、電流検知部150V、150Uおよび150Wを区別しない場合には電流検知部150と総称することにする。
【0038】
電流検知部150には例えば磁気センサが用いられ、バスバー300に流れる電流によって生じる磁界を検出して電流量に応じた信号を出力する。検出回路領域R2には、電流検知部150V、150Uおよび150Wのそれぞれから出力される信号に基づきバスバー300U、300Vおよび300Wのそれぞれに流れる電流値を求めて出力する回路が構成される。
【0039】
ケース200の収納部210には基板100が位置決め固定される。バスバー300に対してケース200を取り付けることで、バスバー300と基板100の電流検知領域R1とが対向して配置され、バスバー300U、300Vおよび300Wのそれぞれと、電流検知部150V、150Uおよび150Wのそれぞれとが一定のギャップによって対向配置されることになる。このバスバー300と電流検知部150とのギャップは、精度の高い電流検知を行ううえで非常に重要である。また、複数のバスバー300を検知対象とする場合においては、各バスバー300と各電流検知部150とのギャップにばらつきが生じないように各電流検知部150を配置することが重要である。
【0040】
基板100は、ケース200の収納部210に設けられた基板固定具1によって位置決め固定される。すなわち、基板100には貫通孔110が設けられており、基板固定具1の支柱10を貫通孔110に差し込むように基板100をケース200の収納部210に配置する。支柱10にはクラッシュリブ20が設けられているため、支柱10を貫通孔110に差し込む際にクラッシュリブ20が潰されて支柱10と貫通孔110とを圧入固定することができる。
【0041】
基板100は、面100aが基板固定具1の受け面30aに当接する位置まで嵌め込まれる。基板100の面100aが受け面30aに当接することで、基板100の収納部210内での位置が安定して固定され、バスバー300と電流検知部150とのギャップを一定にすることができる。
【0042】
本実施形態に係る電流検知装置500において、基板100の位置決め固定として基板固定具1を用いることで、クラッシュリブ20が潰れる際にダストが生じても、落下したダストが受け面30aの上に載らず、基板100と受け面30aとの間にダストが挟まることを抑制することができる。これにより、基板100の配置が所定の位置からずれてしまうことや、基板100に設けられた電流検知部150とバスバー300とのギャップにばらつきが発生してしまうことを抑制して、精度の高い電流検知を行うことができるようになる。
【0043】
電流検知装置500における基板100の位置決め固定として、複数の基板固定具1を用いるようにしてもよい。本実施形態では、第1基板固定具1Aと、第2基板固定具1Bとが設けられる。第1基板固定具1Aは電流検知領域R1に設けられた第1貫通孔110Aと嵌合し、第2基板固定具1Bは検出回路領域R2に設けられた第2貫通孔110Bと嵌合するように設けられる。
【0044】
図5(a)および(b)は、基板固定具と貫通孔との関係を示す模式平面図である。
図5(a)には第1基板固定具1Aと第1貫通孔110Aとの関係が示され、
図5(b)には第2基板固定具1Bと第2貫通孔110Bとの関係が示される。
【0045】
図5(a)に示すように、第1貫通孔110Aは丸孔になっており、第1基板固定具1Aが嵌合することでX方向およびY方向の2方向の位置決めが行われる。第1貫通孔110Aが電流検知領域R1に設けられていることで、第1貫通孔110Aと第1基板固定具1Aとの嵌合によって基板100における電流検知領域R1側のX方向およびY方向の位置を確実に決めることができる。
【0046】
電流検知領域R1にはバスバー300との位置合わせが重要な電流検知部150が設けられていることから、電流検知領域R1についてX方向およびY方向の位置が確実に決まるようにすることが、バスバー300と電流検知部150との正確な位置合わせを行う上で重要である。
【0047】
そこで、第1基板固定具1Aの支柱10の側面におけるX方向の両側、およびY方向の両側に複数のクラッシュリブ20を設け、丸孔の第1貫通孔110Aを嵌め込むことで、基板100のX方向およびY方向の2方向でクラッシュリブ20による圧入固定が行われ、X方向およびY方向の確実な位置決めが行われる。
【0048】
図5(b)に示すように、第2貫通孔110BはX方向に延びる長孔になっており、第2基板固定具1Bとの嵌合によって基板100のX方向に対する位置決め誤差を吸収しながらY方向の位置決めが行われる。
【0049】
先に説明したように、第1貫通孔110Aと第1基板固定具1Aとの嵌合によって電流検知領域R1側のXY方向の位置が決まることになるが、第2貫通孔110Bが長孔になっていることで、基板100の固定における余裕度を持たせることができる。基板100における検出回路領域R2側は電流検知領域R1側に比べて高い位置決め精度は求められない。したがって、検出回路領域R2に長孔の第2貫通孔110Bを設けておき、第2基板固定具1Bの支柱10の側面におけるY方向の両側に複数のクラッシュリブ20を設けておくことで、X方向では基板100の位置ずれを吸収し、Y方向ではクラッシュリブ20による圧入固定によって位置決め固定が行われる。
【0050】
なお、第2貫通孔110Bの長孔の方向は基板100の長手方向であることが好ましい。基板100の長手方向のほうが短手方向に比べて位置ずれが生じやすいため、その方向の位置ずれを吸収しやすくなるためである。
【0051】
また、電流検知装置500において、基板100はかしめ固定用の貫通孔130(第3貫通孔)を有し、収納部210には、貫通孔130に挿入されるかしめ固定具2が設けられていてもよい。かしめ固定具2は収納部210に立設される。基板100を固定する際、基板100の貫通孔130にかしめ固定具2を挿入した状態でかしめ固定具2の先端をかしめることにより、基板100のZ方向の位置を確実に固定することができる。第1基板固定具1Aおよび第2基板固定具1Bによるクラッシュリブ20の圧入固定によって基板100のXY方向とともにZ方向の位置決め固定も行われるが、かしめ固定具2によるかしめによって基板100のZの方向の固定を確実にすることができる。
【0052】
(電流検知の例)
ここで、本実施形態に係る電流検知装置500および比較例に係る電流検知装置の電流検知の例について説明する。
比較例に係る電流検知装置では、ケースの収納部に基板を固定する基板固定具として、Z方向にみてクラッシュリブと受け面とが重なるものを用いている。
図6(a)および(b)は、電流検知の例を示す図である。
図6(a)には本実施形態に係る電流検知装置500での電流検知の例が示され、
図6(b)には比較例に係る電流検知の例が示される。グラフの横軸は時間(hour)であり、縦軸は検知電流に相当する信号値(mV)である。
いずれの例においても、125℃の温度環境下において、3相交流の電流(IMA(U)、IMB(V)、IMC(W))を検知した場合の時間変化を示している。
【0053】
図6(a)に示す本実施形態に係る電流検知装置500では、3相ともに安定して検知しているのに対し、
図6(b)に示す比較例に係る電流検知装置では、3相ともばらつきが大きく、3相間での値のばらつきも大きいことが分かる。
【0054】
比較例に係る電流検知装置では、基板を固定する際、クラッシュリブが潰される際に生じるダストが基板と受け面との間に噛み込まれている。このダストが時間の経過とともに基板の浮き上がりを発生させて基板と電流検知部とのギャップに影響を与え、電流検知の値のばらつきを発生させていると考えられる。
【0055】
一方、本実施形態に係る電流検知装置500では、クラッシュリブ20の削れによるダストが基板100の面100aと基板固定具1の受け面30aとの間に噛み込まれることを抑制できているため、ダストによる基板100の浮き上がりが抑制され、電流検知の値が安定することが分かる。
【0056】
(他の例)
図7(a)および(b)は、他の例を示す模式平面図である。
図7(a)に示す例では、基板固定具1Cの支柱10が多角柱状(例えば、8角柱状)になっている。支柱10は円柱状に限られず、多角柱状であってもよい。一方、多角柱状の支柱10に対して基板100の貫通孔110は丸孔や長孔になっている。これにより、第1基板固定具1Aおよび第2基板固定具1Bと同様に基板100の位置決め固定を行うことができる。
【0057】
また、
図7(b)に示す例では、基板固定具1Dの支柱10が多角柱状(例えば、4角柱状)になっており、多角柱の稜線部分をクラッシュリブ20としている。すなわち、Z方向にみたときに、支柱10の中心に対して対角にある多角形の角を結ぶ直線の長さを、貫通孔110の直径よりも僅かに長くしておき、多角柱の稜線部分にクラッシュリブ20の機能を持たせている。貫通孔110の直径よりも僅かに長いとは、多角柱の稜線部分が貫通孔110に接触したときに潰れる程度の大きさである。このような基板固定具1Dでは、支柱10を多角柱状にすることで別途クラッシュリブ20を設ける必要はなく、製造上有利である。
【0058】
このように、本実施形態によれば、クラッシュリブ20を用いて基板100を高精度に位置決め固定できる基板固定具1、1A、1B、1C、1Dおよび電流検知装置500を提供することが可能となる。
【0059】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0060】
1,1C,1D…基板固定具
1A…第1基板固定具
1B…第2基板固定具
2…かしめ固定具
10…支柱
10a…周面
11…直胴部分
20…クラッシュリブ
30…基部
30a…受け面
31…基台部
31a…周面
31b…段差面
32…基板受け部
100…基板
100a…面
110…貫通孔
110A…第1貫通孔
110B…第2貫通孔
130…貫通孔
150,150U,150V,150W…電流検知部
200…ケース
210…収納部
210a…底面
300,300U,300V,300W…バスバー
500…電流検知装置
R1…電流検知領域
R2…検出回路領域