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特許7366791通信装置、情報処理方法、及びプログラム
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  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図1
  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図2
  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図3
  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図4
  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図5
  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図6
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  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図9
  • 特許-通信装置、情報処理方法、及びプログラム 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】通信装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/48 20060101AFI20231016BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20231016BHJP
【FI】
G01S3/48
G01S5/02 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020023213
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021128076
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大石 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】森 惠
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
(72)【発明者】
【氏名】古池 竜也
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129501(JP,A)
【文献】特開2010-002266(JP,A)
【文献】特開2016-200478(JP,A)
【文献】特開2013-036985(JP,A)
【文献】国際公開第2015/176776(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0339355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00- 3/74
G01S 5/00- 5/14
G01S 19/00-19/55
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信装置から信号を無線で受信する複数の無線通信部と、
前記他の通信装置から送信されたパルスを含む信号であるパルス信号を複数の前記無線通信部の各々が受信したことにより得られる情報であり、かつ、時系列に沿って変化する情報を時刻ごとの要素として含む複数の時系列情報の各々に基づいて、複数の前記無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における特定の前記要素である特定要素を検出する第1の処理を行い、
前記第1の処理において検出した複数の前記特定要素の各々が、前記他の通信装置から複数の前記無線通信部の各々までの最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであるか否かを検証する第2の処理を行い、
複数の前記無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における前記特定要素のうち、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであることが検証された複数の前記特定要素に基づいて、複数の前記無線通信部に設定された基準点から延伸する軸を基準軸として前記パルス信号が到来する角度を推定する第3の処理を行う、制御部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の処理において検出された複数の前記特定要素の各々が、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものである度合いを示す指標を算出し、
複数の前記特定要素の各々について算出された前記指標に基づいて、複数の前記特定要素の各々が、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであるか否かを検証することを、
前記第2の処理として行う、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記指標は、前記他の通信装置と前記無線通信部との間で前記パルス信号を送信してから受信するまでにかかる時間であり、前記特定要素に基づいて算出される伝搬遅延時間に基づいて推定される、前記他の通信装置と前記無線通信部との間の距離である測距値であり、
前記制御部は、複数の前記特定要素の各々について推定された複数の前記測距値のうち最短の前記測距値との差が第1の閾値以下である前記測距値が推定された前記特定要素が、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであると検証することを、前記第2の処理として行う、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記指標は、前記他の通信装置と前記無線通信部との間で前記パルス信号を送信してから受信するまでにかかる時間であり、前記特定要素に基づいて算出される伝搬遅延時間であり、
前記制御部は、複数の前記特定要素の各々について算出された複数の前記伝搬遅延時間のうち最短の前記伝搬遅延時間との差が第2の閾値以下である前記伝搬遅延時間が算出された前記特定要素が、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであると検証することを、前記第2の処理として行う、請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
複数の前記無線通信部の各々は、前記他の通信装置から送信された前記パルス信号である第1の信号を受信し、
複数の前記無線通信部のうち1つの前記無線通信部である第1の無線通信部は、前記第1の信号に対する応答であって前記パルス信号である第2の信号を送信し、
複数の前記無線通信部のうち前記第1の無線通信部以外の前記無線通信部である複数の第2の無線通信部の各々は、前記第2の信号を受信し、
前記第1の無線通信部に関する前記指標は、前記第1の無線通信部が前記第1の信号を受信したことにより得られた前記時系列情報における前記特定要素に対応する時刻から、前記第1の無線通信部が前記第2の信号を送信する時刻までの時間であり、
前記第2の無線通信部に関する前記指標は、前記第2の無線通信部が前記第1の信号を受信したことにより得られた前記時系列情報における前記特定要素に対応する時刻から、前記第2の無線通信部が前記第2の信号を受信したことにより得られた前記時系列情報における前記特定要素に対応する時刻までの時間であり、
前記制御部は、前記第1の無線通信部に関する前記指標としての時間、及び複数の前記第2の無線通信部の各々に関する前記指標としての時間のうち、最長の時間との差が第3の閾値以下である時間が算出された前記無線通信部に関し検出された前記特定要素が、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであると検証することを、前記第2の処理として行う、請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
複数の前記無線通信部の各々は、前記他の通信装置から送信された前記パルス信号である第1の信号を受信し、
複数の前記無線通信部のうち1つの前記無線通信部である第1の無線通信部は、前記第1の信号に対する応答であって前記パルス信号である第2の信号を送信し、
複数の前記無線通信部のうち前記第1の無線通信部以外の前記無線通信部である複数の第2の無線通信部の各々は、前記第2の信号を受信し、
複数の前記無線通信部の各々は、前記第2の信号に対する応答であって前記パルス信号である第3の信号を前記他の通信装置から受信し、
前記第1の無線通信部に関する前記指標は、前記第1の無線通信部が前記第2の信号を送信した時刻から、前記第1の無線通信部が前記第3の信号を受信したことにより得られた前記時系列情報における前記特定要素に対応する時刻までの時間であり、
前記第2の無線通信部に関する前記指標は、前記第2の無線通信部が前記第2の信号を受信したことにより得られた前記時系列情報における前記特定要素に対応する時刻から、前記第2の無線通信部が前記第3の信号を受信したことにより得られた前記時系列情報における前記特定要素に対応する時刻までの時間であり、
前記制御部は、前記第1の無線通信部に関する前記指標としての時間、及び複数の前記第2の無線通信部の各々に関する前記指標としての時間のうち、最短の時間との差が第4の閾値以下である時間が算出された前記無線通信部に関し検出された前記特定要素が、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであると検証することを、前記第2の処理として行う、請求項2に記載の通信装置。
【請求項7】
前記指標は、前記無線通信部が前記パルス信号を受信したことにより得られた前記時系列情報における前記特定要素に対応する時刻であり、
前記制御部は、複数の前記無線通信部の各々における前記特定要素に対応する時刻のうち最も早い時刻との差が第5の閾値以下である時刻に対応する前記特定要素が、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであると検証することを、前記第2の処理として行う、請求項2に記載の通信装置。
【請求項8】
前記時系列情報は、前記他の通信装置が送信した前記パルス信号と前記無線通信部が受信した前記パルス信号との相関を、前記他の通信装置が前記パルス信号を送信してから規定時間ごとにとった結果あって、相関の高さを示す相関値を、前記規定時間を間隔とする時刻ごとの前記要素として含む、相関演算結果であり、
前記制御部は、前記相関演算結果のうち、前記相関値に含まれる振幅成分が最初に所定の閾値を超える前記要素を前記特定要素として検出することを、前記第1の処理として行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記時系列情報は、前記無線通信部が受信した前記パルス信号を規定時間ごとにサンプリングした結果を、前記規定時間を間隔とする時刻ごとの前記要素として含み、
前記制御部は、前記パルス信号の振幅成分が最初に所定の閾値を超える前記要素を前記特定要素として検出することを、前記第1の処理として行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであることが検証された3つ以上の前記特定要素の各々に含まれる位相成分を抽出し、抽出した3つ以上の前記位相成分に基づいて、前記パルス信号が到来する角度を推定することを、前記第3の処理として行う、請求項1~9のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記制御部は、平面を構成する3つ以上の前記無線通信部について検出された3つ以上の前記特定要素の各々に含まれる前記位相成分に基づいて前記パルス信号が到来する角度を推定することを、前記第3の処理として行う、請求項10に記載の通信装置。
【請求項12】
他の通信装置から信号を無線で受信する複数の無線通信部を備える通信装置により実行される情報処理方法であって、
前記他の通信装置から送信されたパルスを含む信号であるパルス信号を複数の前記無線通信部の各々が受信したことにより得られる情報であり、かつ、時系列に沿って変化する情報を時刻ごとの要素として含む複数の時系列情報の各々に基づいて、複数の前記無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における特定の前記要素である特定要素を検出する第1の処理を行い、
前記第1の処理において検出した複数の前記特定要素の各々が、前記他の通信装置から複数の前記無線通信部の各々までの最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであるか否かを検証する第2の処理を行い、
複数の前記無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における前記特定要素のうち、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであることが検証された複数の前記特定要素に基づいて、複数の前記無線通信部に設定された基準点から延伸する軸を基準軸として前記パルス信号が到来する角度を推定する第3の処理を行うこと、
を含む情報処理方法。
【請求項13】
他の通信装置から信号を無線で受信する複数の無線通信部を備える通信装置を制御するコンピュータを、
前記他の通信装置から送信されたパルスを含む信号であるパルス信号を複数の前記無線通信部の各々が受信したことにより得られる情報であり、かつ、時系列に沿って変化する情報を時刻ごとの要素として含む複数の時系列情報の各々に基づいて、複数の前記無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における特定の前記要素である特定要素を検出する第1の処理を行い、
前記第1の処理において検出した複数の前記特定要素の各々が、前記他の通信装置から複数の前記無線通信部の各々までの最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであるか否かを検証する第2の処理を行い、
複数の前記無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における前記特定要素のうち、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであることが検証された複数の前記特定要素に基づいて、複数の前記無線通信部に設定された基準点から延伸する軸を基準軸として前記パルス信号が到来する角度を推定する第3の処理を行う、制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、装置間で信号を送受信した結果に従って、一方の装置が他方の装置の位置を推定する技術が開発されている。位置推定技術の一例として、下記特許文献1には、UWB(Ultra-Wide Band)で無線通信を行うことで、UWB受信機がUWB送信機からの無線信号の入射角を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/176776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、送受信間に遮蔽物が存在する等の環境下では無線信号の入射角の推定精度が低下するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置推定精度を向上させることが可能な仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、他の通信装置から信号を無線で受信する複数の無線通信部と、前記他の通信装置から送信されたパルスを含む信号であるパルス信号を前記複数の無線通信部の各々が受信したことにより得られる情報であり、かつ、時系列に沿って変化する情報を時刻ごとの要素として含む複数の時系列情報の各々に基づいて、前記複数の無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における特定の前記要素である特定要素を検出する第1の処理を行い、前記第1の処理において検出した複数の前記特定要素の各々が、前記他の通信装置から前記複数の無線通信部の各々までの最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであるか否かを検証する第2の処理を行い、前記複数の無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における前記特定要素のうち、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであることが検証された複数の前記特定要素に基づいて、前記複数の無線通信部に設定された基準点から延伸する軸を基準軸として前記パルス信号が到来する角度を推定する第3の処理を行う、制御部と、を備える通信装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、他の通信装置から信号を無線で受信する複数の無線通信部を備える通信装置により実行される情報処理方法であって、前記他の通信装置から送信されたパルスを含む信号であるパルス信号を前記複数の無線通信部の各々が受信したことにより得られる情報であり、かつ、時系列に沿って変化する情報を時刻ごとの要素として含む複数の時系列情報の各々に基づいて、前記複数の無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における特定の前記要素である特定要素を検出する第1の処理を行い、前記第1の処理において検出した複数の前記特定要素の各々が、前記他の通信装置から前記複数の無線通信部の各々までの最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであるか否かを検証する第2の処理を行い、前記複数の無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における前記特定要素のうち、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであることが検証された複数の前記特定要素に基づいて、前記複数の無線通信部に設定された基準点から延伸する軸を基準軸として前記パルス信号が到来する角度を推定する第3の処理を行うこと、を含む情報処理方法が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、他の通信装置から信号を無線で受信する複数の無線通信部を備える通信装置を制御するコンピュータを、前記他の通信装置から送信されたパルスを含む信号であるパルス信号を前記複数の無線通信部の各々が受信したことにより得られる情報であり、かつ、時系列に沿って変化する情報を時刻ごとの要素として含む複数の時系列情報の各々に基づいて、前記複数の無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における特定の前記要素である特定要素を検出する第1の処理を行い、前記第1の処理において検出した複数の前記特定要素の各々が、前記他の通信装置から前記複数の無線通信部の各々までの最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであるか否かを検証する第2の処理を行い、前記複数の無線通信部の各々にて受信した前記パルス信号に基づく前記時系列情報における前記特定要素のうち、前記最短の経路を経て到来した前記パルス信号に基づくものであることが検証された複数の前記特定要素に基づいて、前記複数の無線通信部に設定された基準点から延伸する軸を基準軸として前記パルス信号が到来する角度を推定する第3の処理を行う、制御部、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、位置推定精度を向上させることが可能な仕組みが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る車両に設けられる複数のアンテナの配置の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る携帯機の位置パラメータの一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る携帯機の位置パラメータの一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る通信ユニットにおける信号処理の処理ブロックの一例を示す図である。
図6】本実施形態に係るCIRの一例を示すグラフである。
図7】本実施形態に係るシステムにおいて実行される測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図8】本実施形態に係るシステムにおいて実行される角度推定処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図9】本実施形態に係るシステムにおいて実行される位置推定用通信の一例を説明するためのシーケンス図である。
図10】本実施形態に係る通信ユニット200において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素を、必要に応じて無線通信部210A、210B及び210Cのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、無線通信部210A、210B及び210Cを特に区別する必要が無い場合には、単に無線通信部210と称する。
【0013】
<<1.構成例>>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100、及び通信ユニット200を含む。本実施形態における通信ユニット200は、車両202に搭載される。車両202は、ユーザの利用対象の一例である。
【0014】
本発明には、被認証者側の通信装置と、認証者側の通信装置と、が関与する。図1に示した例では、携帯機100が被認証者側の通信装置の一例であり、通信ユニット200が認証者側の通信装置の一例である。
【0015】
システム1においては、ユーザ(例えば、車両202のドライバー)が携帯機100を携帯して車両202に近づくと、携帯機100と車両202に搭載された通信ユニット200との間で認証のための無線通信が行われる。そして、認証が成功すると、車両202のドア錠がアンロックされたりエンジンが始動されたりして、車両202がユーザにより利用可能な状態になる。システム1は、スマートエントリーシステムとも称される。以下、各構成要素について順に説明する。
【0016】
(1)携帯機100
携帯機100は、ユーザにより携帯される任意の装置として構成される。任意の装置には、電子キー、スマートフォン、及びウェアラブル端末等が含まれる。図1に示すように、携帯機100は、無線通信部110、記憶部120、及び制御部130を備える。
【0017】
無線通信部110は、車両202に搭載された通信ユニット200との間で、無線による通信を行う機能を有する。無線通信部110は、車両202に搭載された通信ユニット200から信号を無線で受信する。また、無線通信部110は、通信ユニット200へ信号を無線で送信する。
【0018】
無線通信部110と通信ユニット200との間の無線による通信は、例えばUWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号によって実現される。UWBを用いた信号の無線通信において、インパルス方式を利用すれば、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の伝搬遅延時間を高精度に測定することができ、伝搬遅延時間に基づく測距を高精度に行うことができる。なお、伝搬遅延時間とは、電波を送信してから受信するまでにかかる時間である。無線通信部110は、例えば、UWBでの通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0019】
なお、UWBを用いた信号は、例えば、測距用信号、角度推定用信号、及びデータ信号として送受信され得る。測距用信号とは、後述する測距処理において送受信される信号である。測距用信号は、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されていてもよいし、ペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されていてもよい。角度推定用信号とは、後述する角度推定処理において送受信される信号である。角度推定用信号は、測距用信号と同様の構成を有していてもよい。データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されることが好ましい。
【0020】
ここで、無線通信部110は、少なくとも1つのアンテナ111を有する。そして、無線通信部110は、少なくとも1つのアンテナ111を介して無線信号を送受信する。
【0021】
記憶部120は、携帯機100の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部120は、携帯機100の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(identifier)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部120は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0022】
制御部130は、携帯機100における処理を実行する機能を有する。一例として、制御部130は、無線通信部110を制御して車両202の通信ユニット200との通信を行う。制御部130は、記憶部120からの情報の読み出し及び記憶部120への情報の書き込みを行う。制御部130は、車両202の通信ユニット200との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0023】
(2)通信ユニット200
通信ユニット200は、車両202に対応付けて設けられる。ここでは、車両202の車室内に設置される、又は通信モジュールとして車両202に内蔵される等、通信ユニット200は車両202に搭載されるものとする。他にも、車両202の駐車場に通信ユニット200が設けられる等、車両202と通信ユニット200とが別体として構成されてもよい。その場合、通信ユニット200は、携帯機100との通信結果に基づいて、車両202に制御信号を無線送信し、車両202を遠隔で制御し得る。図1に示すように、通信ユニット200は、複数の無線通信部210(210A~210D)、記憶部220、及び制御部230を備える。
【0024】
無線通信部210は、携帯機100の無線通信部110との間で、無線による通信を行う機能を有する。無線通信部210は、携帯機100からの信号を無線で受信する。また、無線通信部210は、携帯機100へ信号を無線で送信する。無線通信部210は、例えば、UWBでの通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0025】
ここで、各々の無線通信部210は、アンテナ211を有する。そして、各々の無線通信部210は、アンテナ211を介して無線信号を送受信する。
【0026】
記憶部220は、通信ユニット200の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部220は、通信ユニット200の動作のためのプログラム、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部220は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0027】
制御部230は、通信ユニット200、及び車両202に搭載された車載機器の動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部230は、無線通信部210を制御して携帯機100との通信を行う。制御部230は、記憶部220からの情報の読み出し及び記憶部220への情報の書き込みを行う。制御部230は、携帯機100との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。また、制御部230は、車両202のドア錠を制御するドアロック制御部としても機能し、ドア錠のロック及びアンロックを行う。また、制御部230は、車両202のエンジンを制御するエンジン制御部としても機能し、エンジンの始動/停止を行う。なお、車両202に備えられる動力源は、エンジンの他にモータ等であってもよい。制御部230は、例えばECU(Electronic Control Unit)等の電子回路として構成される。
【0028】
<<2.位置パラメータの推定>>
<2.1.位置パラメータ>
本実施形態に係る通信ユニット200(詳しくは、制御部230)は、携帯機100が存在する位置を示す位置パラメータを推定する、位置パラメータ推定処理を行う。以下、図2図4を参照しながら、位置パラメータに関する各種定義について説明する。
【0029】
図2は、本実施形態に係る車両202に設けられる複数のアンテナ211(無線通信部210)の配置の一例を示す図である。図2に示すように、車両202の天井部分には、4つのアンテナ211(211A-211D)が設けられている。アンテナ211の配置位置は、無線通信部210の配置位置である。アンテナ211Aは、車両202の前方右側に設けられる。アンテナ211Bは、車両202の前方左側に設けられる。アンテナ211Cは、車両202の後方右側に設けられる。アンテナ211Dは、車両202の後方左側に設けられる。なお、隣接するアンテナ211間の距離は、後述する角度推定用信号の搬送波の波長λの2分の1以下になるように設定される。通信ユニット200を基準とする座標系として、通信ユニット200のローカル座標系が設定される。通信ユニット200のローカル座標系の一例は、4つのアンテナ211の中心を原点とし、車両202の前後方向をX軸とし、車両202の左右方向をY軸とし、車両202の上下方向をZ軸とする座標系である。なお、X軸は、前後方向のアンテナペア(例えば、アンテナ211Aとアンテナ211C、及び211Bとアンテナ211D)を結ぶ軸に平行する。また、Y軸は、左右方向のアンテナペア(例えば、アンテナ211Aとアンテナ211B、及び211Cとアンテナ211D)を結ぶ軸に平行する。
【0030】
なお、4本のアンテナ211の配置形状は、正方形に限らず、平行四辺形、台形、矩形、及びその他の任意の形状を取り得る。もちろん、アンテナ211の数は4本に限定されない。
【0031】
図3は、本実施形態に係る携帯機100の位置パラメータの一例を示す図である。位置パラメータは、携帯機100と通信ユニット200との間の距離Rを含み得る。図3に示す距離Rは、通信ユニット200のローカル座標系の原点から携帯機100までの距離である。距離Rは、複数の無線通信部210のうちひとつの無線通信部210と携帯機100との間で行われる、後述する測距用信号の送受信結果に基づいて、推定される。距離Rは、後述する測距用信号の送受信を行うひとつの無線通信部210から携帯機100までの距離であってもよい。
【0032】
また、位置パラメータは、図3に示す、X軸から携帯機100までの角度α、及びY軸から携帯機100までの角度βから成る、通信ユニット200を基準とする携帯機100の角度を含み得る。角度α及びβは、第1の所定の座標系における原点と携帯機100とを結ぶ直線と当該第1の所定の座標系における座標軸とがなす角度である。例えば、第1の所定の座標系は、通信ユニット200のローカル座標系である。角度αは、原点と携帯機100とを結ぶ直線とX軸とがなす角度である。角度βは、原点と携帯機100とを結ぶ直線とY軸とがなす角度である
【0033】
図4は、本実施形態に係る携帯機100の位置パラメータの一例を示す図である。位置パラメータは、第2の所定の座標系における携帯機100の座標を含み得る。図4に示す、携帯機100のX軸上の座標x、Y軸上の座標y、及びZ軸上の座標zは、そのような座標の一例である。即ち、第2の所定の座標系は、通信ユニット200のローカル座標系であってもよい。他にも、第2の所定の座標系は、グローバル座標系であってもよい。
【0034】
<2.2.CIR>
(1)CIR算出処理
携帯機100及び通信ユニット200は、位置パラメータ推定処理において、位置パラメータを推定するための通信を行う。その際、携帯機100及び通信ユニット200は、CIR(Channel Impulse Response)を算出する。
【0035】
CIRとは、インパルスをシステムに入力したときの応答である。本実施形態におけるCIRは、携帯機100及び通信ユニット200の一方(以下、送信側とも称する)の無線通信部がパルスを含む信号を送信した場合に、他方(以下、受信側とも称する)の無線通信部により受信された信号に基づいて算出される。パルスとは、振幅の変化を含む信号である。以下では、送信側が送信する信号を送信信号とも称する。また、受信側が受信する信号を受信信号とも称する。
【0036】
ここで、送信側と受信側との間に存在する遮蔽物等の影響で、送信信号と受信信号とが相違する場合がある。CIRは、送信信号及び受信信号に基づいて算出される。つまり、CIRは、送信側の無線通信部が送信信号を送信した場合に受信側の無線通信部により受信される、送信信号に対応する信号である受信信号に基づいて算出される。なお、送信信号は、受信側にも既知である。CIRは、携帯機100と通信ユニット200との間の無線通信路の特性を示すとも言える。
【0037】
一例として、CIRは、送信信号と受信信号との相関を、送信側が送信信号を送信してからの経過時間である遅延時間ごとにとった結果である、相関演算結果であってもよい。ここでの相関とは、送信信号と受信信号との相関を、各々の時間方向の相対位置をずらしながらとる処理である、スライディング相関であってもよい。相関演算結果は、送信信号と受信信号との相関の高さを示す相関値を、遅延時間ごとの要素として含む。相関演算結果に含まれる複数の要素の各々は、遅延時間と相関値との組み合わせを含む情報である。相関は、規定時間を間隔とする遅延時間において計算され得る。即ち、CIRは、送信信号と受信信号との相関を、送信側が送信信号を送信してから規定時間ごとにとった結果であってもよい。ここでの規定時間とは、例えば、受信側が受信信号をサンプリングする間隔である。そのため、CIRを構成する要素は、サンプリングポイントとも称される。相関値は、振幅成分及び位相成分の少なくともいずれかを含んでいてもよい。振幅成分は、振幅又は振幅を二乗することで得られる電力である。位相成分は、CIRにおけるIQ成分がIQ平面上でI軸となす角である。位相成分は、単に位相とも称される。相関値は、IQ成分を有する複素数であってもよい。
【0038】
CIRにおける遅延時間ごとの値を、CIR値とも称する。つまり、CIRは、CIR値の時系列変化である。CIRが相関演算結果である場合、CIR値は、遅延時間ごとの相関値である。
【0039】
CIRが相関演算結果である場合、受信側は、送信信号と受信信号とのスライディング相関をとることで、CIRを算出する。例えば、受信側は、受信信号とある遅延時間分遅延させた送信信号との相関をとった値を、当該遅延時間における特性(即ち、CIR値)として算出する。そして、受信側は、遅延時間ごとのCIR値を算出することで、CIRを算出する。以下では、CIRが相関演算結果であるものとして説明する。
【0040】
なお、UWBを用いた測距技術においては、CIRは遅延プロファイルとも称される。とりわけ、電力をCIR値とするCIRは、電力遅延プロファイルとも称される。
【0041】
以下、送信側が携帯機100であり、受信側が通信ユニット200である場合のCIR算出処理を、図5図6を参照しながら詳しく説明する。
【0042】
図5は、本実施形態に係る通信ユニット200における信号処理の処理ブロックの一例を示す図である。図5に示すように、通信ユニット200は、発振器212、乗算器213、90度移相器214、乗算器215、LPF(Low Pass Filter)216、LPF217、相関器218、及び積算器219を含む。
【0043】
発振器212は、送信信号を搬送する搬送波の周波数と同一の周波数の信号を生成して、生成した信号を乗算器213及び90度移相器214に出力する。
【0044】
乗算器213は、アンテナ211により受信された受信信号と発振器212から出力された信号とを乗算し、乗算した結果をLPF216に出力する。LPF216は、入力された信号のうち、送信信号を搬送する搬送波の周波数以下の周波数の信号を、相関器218に出力する。相関器218に入力される信号は、受信信号の包絡線に対応する成分のうちI成分(即ち、実部)である。
【0045】
90度移相器214は、入力された信号の位相を90度遅延させて、遅延させた信号を乗算器215に出力する。乗算器215は、アンテナ211により受信された受信信号と90度移相器214から出力された信号とを乗算し、乗算した結果をLPF217に出力する。LPF217は、入力された信号のうち、送信信号を搬送する搬送波の周波数以下の周波数の信号を、相関器218に出力する。相関器218に入力される信号は、受信信号の包絡線に対応する成分のうちQ成分(即ち、虚部)である。
【0046】
相関器218は、LPF216及びLPF217から出力された、I成分及びQ成分から成る受信信号と、参照信号と、のスライディング相関をとることで、CIRを算出する。なお、ここでの参照信号とは、搬送波が乗算される前の送信信号と同一の信号である。
【0047】
積算器219は、相関器218から出力されたCIRを積算して、出力する。
【0048】
ここで、送信側は、プリアンブルを含む信号を、送信信号として送信し得る。プリアンブルとは、送受信間で既知な系列である。プリアンブルは、典型的には送信信号の先頭に配置される。プリアンブルは、ひとつ以上のプリアンブルシンボルを含む。プリアンブルシンボルとは、ひとつ以上のパルスを含むパルス配列である。パルス配列とは、時間方向に分離した複数のパルスの集合である。
【0049】
プリアンブルシンボルは、積算器219による積算の対象である。即ち、相関器218は、受信信号に含まれるひとつ以上のプリアンブルシンボルに対応する部分の各々について、当該プリアンブルシンボルに対応する部分と送信信号に含まれるプリアンブルシンボルとの相関を、携帯機100がプリアンブルシンボルを送信してから規定時間ごとにとることで、ひとつ以上のプリアンブルシンボルごとのCIRを算出する。そして、積算器219は、プリアンブルシンボルごとのCIRを、プリアンブルに含まれるひとつ以上のプリアンブルシンボルについて積算することで、積算後のCIRを得る。そして、積算器219は、積算後のCIRを出力する。以下では、特に言及しない限り、CIRとは積算後のCIRであるものとする。
【0050】
プリアンブルシンボルごとのCIRは、第1の相関演算結果の一例である。積算後のCIRは、第2の相関演算結果の一例である。上述したように、CIRは、送信信号と受信信号との相関の高さを示す相関値を、送信側が送信信号を送信してからの経過時間である遅延時間ごとの要素として含む。プリアンブルシンボルの観点で言えば、CIRは、送信信号と受信信号との相関の高さを示す相関値を、送信側が各々のプリアンブルシンボルを送信してからの経過時間である遅延時間ごとの要素として含む。
【0051】
ここで、携帯機100及び通信ユニット200は、時間カウンタを用いて時刻を取得する。時間カウンタとは、時刻を取得するためのカウンタである。カウンタとは、数を数える機能である。時間カウンタの値(以下、カウンタ値とも称する)は、単位時間が経過する度に増加される。単位時間は、規定の時間である。従って、携帯機100及び通信ユニット200は、カウンタ値、及び単位時間に基づいて、時刻を取得することができる。なお、ここでの時刻とは、基準となる時刻(以下、基準時刻とも称する)を基準とする相対的な時刻である。基準時刻の一例は、カウンタ値が0であるときの時刻である。また、単位時間の一例は、規定時間である。
【0052】
時間カウンタは、携帯機100と通信ユニット200とで同期していてもよい。時間カウンタが同期しているとは、単位時間、及び基準時刻が一致していることを指す。時間カウンタは、携帯機100と通信ユニット200とで非同期であってもよい。時間カウンタが非同期であるとは、単位時間、及び基準時刻の少なくともいずれかが不一致であることを指す。
【0053】
時間カウンタは、複数の無線通信部210において同期していてもよい。時間カウンタが非同期である場合、複数の無線通信部210に関し計算された複数のCIRの時間軸もまた非同期である(即ち、一致しない)。時間カウンタは、複数の無線通信部210において非同期であってもよい。時間カウンタが同期している場合、複数の無線通信部210に関し計算された複数のCIRの時間軸もまた同期する(即ち、一致する)。
【0054】
時間カウンタにより取得される時刻は、上述した遅延時間に対応する。時間カウンタにより取得される時刻から送信側が送信信号を送信した時刻を差し引いた時間が、遅延時間となるためである。そのため、CIRは、時間カウンタにより取得される時刻ごとのCIR値の時系列変化であるものとして捉えられてもよい。その場合、積算後のCIRの時間軸としては、最初に受信されたプリアンブルシンボルについての、プリアンブルシンボルごとのCIRの時間軸が用いられる。
【0055】
(2)CIRの例
積算器219から出力されるCIRの一例を、図6に示す。図6は、本実施形態に係るCIRの一例を示すグラフである。グラフの横軸は遅延時間である。縦軸はCIR値の絶対値(例えば、振幅又は電力)である。なお、CIRの形状、より詳しくはCIR値の時系列変化の形状は、CIR波形とも称される。典型的には、CIRにおいて、ゼロクロス点とゼロクロス点との間の要素の集合が、ひとつのパルスに対応する。ゼロクロス点とは、値がゼロになる要素である。ただし、ノイズがある環境ではその限りではない。例えば、基準となる水準とCIR値の時系列変化との交点間の要素の集合が、ひとつのパルスに対応すると捉えられてもよい。図6に示したCIRには、あるパルスに対応する要素の集合21、及び他のパルスに対応する要素の集合22が、含まれている。
【0056】
ここで、マルチパス(Multi Path)が発生する場合がある。マルチパスとは、ひとつの送信源から送信された電波が受信側に複数到達する状態を指す。マルチパスは、送受信間で複数の経路が存在する場合に発生する。マルチパスが発生している状況下では、複数の異なる経路を経由した信号が別のタイミングで受信側に到来したり、重複するタイミングで受信側に到来し互いに干渉した状態で受信されたりする場合がある。
【0057】
集合21は、例えば、ファストパスを経由して受信側に到来した信号(例えば、パルス)に対応する。ファストパスとは、送受信間の最も短い経路を指す。ファストパスは、遮蔽物がない環境では送受信間の直線経路を指す。集合22は、例えば、ファストパス以外の経路を通って受信側に到来した信号(例えば、パルス)に対応する。このように、複数の経路を経由して到来する信号を、マルチパス波とも称する。
【0058】
(3)第1到来波の検出
受信側は、送信側から受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号を、ファストパスを経由して受信側に到来した信号として検出する。そして、受信側は、検出した信号に基づいて、位置パラメータを推定する。
【0059】
ファストパスを経由して受信側に到来した信号として検出された信号を、以下では第1到来波とも称する。第1到来波は、直接波、遅延波、又は合成波のいずれかであり得る。直接波とは、送受信間の最短経路を経て、受信側に受信される信号である。即ち、直接波とは、ファストパスを経由して受信側に到来した信号である。遅延波とは、送受信間の最短でない経路を経て、即ち、ファストパス以外の経路を経由して受信側に到来した信号である。遅延波は、直接波よりも遅延して受信側に受信される。合成波とは、複数の異なる経路を経た複数の信号が合成された状態で受信側に受信される信号である。
【0060】
受信側は、受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号を、第1到来波として検出する。所定の検出基準の一例は、CIR値(例えば、振幅又は電力)が最初に所定の閾値を超えることである。即ち、受信側は、CIRのうちCIR値が最初に所定の閾値を超えた部分に対応するパルスを、第1到来波として検出してもよい。
【0061】
ここで注意すべきは、第1到来波として検出された信号が、必ずしも直接波であるとは限らない点である。例えば、直接波が遅延波と打ち消し合った状態で受信されると、CIR値が所定の閾値を下回り、直接波が第1到来波として検出されない場合がある。その場合、直接波よりも遅延して到来する遅延波又は合成波が、第1到来波として検出されてしまう。
【0062】
以下では、第1到来波を検出するために使用される上記所定の閾値を、ファストパス閾値とも称する。
【0063】
-第1到来波の受信時刻
受信側は、所定の検出基準が満たされた時刻を、第1到来波の受信時刻としてもよい。第1到来波の受信時刻の一例は、CIR値が最初にファストパス閾値を超える要素の遅延時間に対応する時刻である。
【0064】
他にも、受信側は、検出した第1到来波のピークの時刻を、第1到来波の受信時刻としてもよい。その場合、第1到来波の受信時刻の一例は、CIRにおける第1到来波に対応する要素の集合のうち、CIR値としての振幅又は電力が最も高い要素の遅延時間に対応する時刻である。
【0065】
ここで、無線通信部210は、送信信号として送信されたパルスであって、複数の経路を経由して携帯機100から到来した複数のパルスを、受信信号として受信する。第1到来波の受信時刻とは、無線通信部210が受信信号に含まれるパルスを受信した時刻である、パルス受信時刻である。とりわけ、第1到来波の受信時刻は、複数の経路を経て到来した複数のパルスのうち、最初に検出されたパルスのパルス受信時刻である、と言える。
【0066】
以下では、第1到来波の受信時刻は、CIR値が最初にファストパス閾値を超える要素の遅延時間に対応する時刻であるものとする。
【0067】
-第1到来波の位相
受信側は、所定の検出基準が満たされた時刻の位相を、第1到来波の位相としてもよい。第1到来波の位相の一例は、CIR値が最初にファストパス閾値を超える要素の、CIR値としての位相である。
【0068】
他にも、受信側は、検出した第1到来波のピークの位相を、第1到来波の位相としてもよい。その場合、第1到来波の受信時刻の一例は、CIRにおける第1到来波に対応する要素の集合のうち、CIR値としての振幅又は電力が最も高い要素の、CIR値としての位相である。
【0069】
以下では、第1到来波の位相は、CIR値が最初にファストパス閾値を超える要素の、CIR値としての位相であるものとする。
【0070】
-第1到来波の幅について
第1到来波に対応する要素の集合の時間方向の幅を、第1到来波の幅とも称する。一例として、第1到来波の幅は、CIRにおけるゼロクロス点とゼロクロス点との間の時間方向の幅である。他の一例として、第1到来波の幅は、基準となる水準とCIR値の時系列変化との交点間の時間方向の幅である。
【0071】
送信信号に含まれるパルスの時間方向の幅を、パルスの幅とも称する。一例として、パルスの幅は、CIR値の時系列変化におけるゼロクロス点とゼロクロス点との間の時間方向の幅である。他の一例として、パルスの幅は、基準となる水準とCIR値の時系列変化との交点間の時間方向の幅である。
【0072】
第1到来波として直接波のみが検出される場合、CIRにおける第1到来波の幅は、理想的な幅となる。第1到来波として直接波のみが検出される場合の理想的な幅は、送信信号の波形、及び受信信号処理方法等から理論計算により算出可能である。他方、第1到来波として合成波が受信される場合、CIRにおける第1到来波の幅は、理想的な幅とは異なり得る。例えば、直接波と同相の遅延波が直接波と合成された合成波が第1到来波として検出される場合、直接波に対応する部分と遅延波に対応する部分とが時間方向にずれた状態で加算され強め合うので、CIRにおける第1到来波の幅は広くなる。他方、直接波と逆相の遅延波が直接波と合成された合成波が第1到来波として検出される場合、直接波と遅延波とが互いに打ち消し合うので、CIRにおける第1到来波の幅は狭くなる。
【0073】
<2.3.位置パラメータの推定>
(1)測距
通信ユニット200は、測距処理を行う。測距処理とは、通信ユニット200と携帯機100との間の距離を推定する処理である。通信ユニット200と携帯機100との間の距離は、例えば図3に示した距離Rである。測距処理は、測距用信号を送受信すること、及び測距用信号の伝搬遅延時間に基づいて距離Rを計算することを含む。測距用信号とは、携帯機100と通信ユニット200との間で送受信される信号のうち、測距に用いられる信号である。伝搬遅延時間とは、信号が送信されてから受信されるまでにかかる時間である。
【0074】
ここで、通信ユニット200が有する複数の無線通信部210のうち、いずれか1つの無線通信部210が、測距用信号を送受信する。測距用信号を送受信する無線通信部210を、以下ではマスタとも称する。距離Rは、マスタとして機能する無線通信部210(より正確には、アンテナ211)と携帯機100(より正確には、アンテナ111)との間の距離である。また、測距用信号を送受信する無線通信部210以外の無線通信部210を、スレーブとも称する。
【0075】
測距処理においては、通信ユニット200と携帯機100との間で複数の測距用信号が送受信され得る。複数の測距用信号のうち、一方の装置から他方の装置へ送信される測距用信号を第1の測距用信号とも称する。次に、第1の測距用信号を受信した装置から、第1の測距用信号を送信した装置へ、第1の測距用信号の応答として送信される測距用信号を、第2の測距用信号とも称する。次いで、第2の測距用信号を受信した装置から、第2の測距用信号を送信した装置へ、第2の測距用信号の応答として送信される測距用信号を、第3の測距用信号とも称する。
【0076】
以下、図7を参照しながら、測距処理の流れの一例を説明する。
【0077】
図7は、本実施形態に係るシステム1において実行される測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。本シーケンスには、携帯機100及び通信ユニット200が関与する。本シーケンスでは、無線通信部210Aがマスタとして機能するものとする。
【0078】
図7に示すように、まず、携帯機100は、第1の測距用信号を送信する(ステップS102)。無線通信部210Aにより第1の測距用信号が受信されると、制御部230は、第1の測距用信号のCIRを算出する。その後、制御部230は、算出したCIRに基づいて、無線通信部210Aにおける第1の測距用信号の第1到来波を検出する(ステップS104)。
【0079】
次いで、無線通信部210Aは、第1の測距用信号の応答として第2の測距用信号を送信する(ステップS106)。携帯機100は、第2の測距用信号を受信すると、第2の測距用信号のCIRを算出する。その後、携帯機100は、算出したCIRに基づいて、第2の測距用信号の第1到来波を検出する(ステップS108)。
【0080】
次に、携帯機100は、第2の測距用信号の応答として第3の測距用信号を送信する(ステップS110)。無線通信部210Aにより第3の測距用信号が受信されると、制御部230は、第3の測距用信号のCIRを算出する。その後、制御部230は、算出したCIRに基づいて、無線通信部210Aにおける第3の測距用信号の第1到来波を検出する(ステップS112)。
【0081】
携帯機100は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間T、及び第2の測距用信号の受信時刻から第3の測距用信号の送信時刻までの時間Tを計測する。ここで、第2の測距用信号の受信時刻とは、ステップS108において検出された、第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻である。そして、携帯機100は、時間T及びTを示す情報を含む信号を送信する(ステップS114)。かかる信号は、例えば無線通信部210Aにより受信される。
【0082】
制御部230は、第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間T、及び第2の測距用信号の送信時刻から第3の測距用信号の受信時刻までの時間Tを計測する。ここで、第1の測距用信号の受信時刻とは、ステップS104において検出された、第1の測距用信号の第1到来波の受信時刻である。同様に、第3の測距用信号の受信時刻とは、ステップS112において検出された、第3の測距用信号の第1到来波の受信時刻である。
【0083】
そして、制御部230は、時間T、T、T、及びTに基づいて、距離Rを推定する(ステップS116)。例えば、制御部230は、次式により伝搬遅延時間τを推定する。
【0084】
【数1】
【0085】
その後、制御部230は、推定した伝搬遅延時間τに信号の速度を乗算することで、距離Rを推定する。
【0086】
-推定精度低下の一因
時間T、T、T、及びTの始期又は終期となる測距用信号の受信時刻は、測距用信号の第1到来波の受信時刻である。上述したように、第1到来波として検出された信号は、必ずしも直接波であるとは限らない。
【0087】
直接波よりも遅延して到来する遅延波又は合成波が第1到来波として検出された場合、直接波が第1到来波として検出される場合と比較して、第1到来波の受信時刻が変動する。その場合、伝搬遅延時間τが真の値(直接波が第1到来波として検出される場合の伝搬遅延時間τ)から変動する。そして、変動した分だけ、距離Rの推定精度(以下、測距精度とも称する)は低下する。
【0088】
詳しくは、直接波が第1到来波として検出されない場合、直接波よりも後に到来する遅延波又は合成波が第1到来波として検出されるので、第1到来波の受信時刻は遅れる。その結果、直接波が第1到来波として検出されない場合の伝搬遅延時間τは、直接波が第1到来波として検出される場合の伝搬遅延時間τと比較して長くなる。そして、伝搬遅延時間τが真の値よりも長くなった分、距離Rは真の値よりも長い距離として推定されてしまう。
【0089】
(2)角度推定
通信ユニット200は、角度推定処理を行う。角度推定処理とは、図3に示した角度α及びβを推定する処理である。角度取得処理は、角度推定用信号を受信すること、及び角度推定用信号の受信結果に基づいて角度α及びβを計算することを含む。角度推定用信号とは、携帯機100と通信ユニット200との間で送受信される信号のうち、角度推定に用いられる信号である。以下、図8を参照しながら、角度推定処理の流れの一例を説明する。
【0090】
図8は、本実施形態に係るシステム1において実行される角度推定処理の流れの一例を示すシーケンス図である。本シーケンスには、携帯機100及び通信ユニット200が関与する。
【0091】
図8に示すように、まず、携帯機100は、角度推定用信号を送信する(ステップS202)。次いで、無線通信部210A~210Dの各々により角度推定用信号が受信されると、制御部230は、無線通信部210A~210Dの各々により受信された角度推定用信号のCIRを算出する。その後、制御部230は、無線通信部210A~210Dの各々について、算出したCIRに基づいて角度推定用信号の第1到来波を検出する(ステップS204A~S204D)。次に、制御部230は、無線通信部210A~210Dの各々について、検出した第1到来波の位相を検出する(ステップS206A~S206D)。そして、制御部230は、無線通信部210A~210Dの各々について検出した第1到来波の位相に基づいて、角度α及びβを推定する(ステップS208)。
【0092】
以下、ステップS208における処理の詳細について説明する。無線通信部210Aについて検出された第1到来波の位相をPとする。無線通信部210Bについて検出された第1到来波の位相をPとする。無線通信部210Cについて検出された第1到来波の位相をPとする。無線通信部210Dについて検出された第1到来波の位相をPとする。X軸方向に並ぶ2つの無線通信部210のペアである、無線通信部210A及び210C、並びに無線通信部210B及び210Dは、X軸方向のアンテナアレーを構成する。アンテナアレーとは、複数のアンテナの組み合わせである。他方、Y軸方向に並ぶ2つの無線通信部210のペアである、無線通信部210A及び210B、並びに無線通信部210C及び210Dは、Y軸方向のアンテナアレーを構成する。この場合、X軸方向のアンテナアレー位相差Pd AC 及びPd BD 、並びにY軸方向のアンテナアレー位相差PdBA及びPdDCは、それぞれ次式で表される。アンテナアレー位相差とは、アンテナアレーを構成する2つのアンテナ211(即ち、無線通信部210)における、第1到来波の位相の差である。
【0093】
【数2】
【0094】
角度α及びβは、次式により計算される。ここで、λは角度推定用信号の搬送波の波長であり、dはアンテナ211間の距離である。
【0095】
【数3】
【0096】
従って、それぞれのアンテナアレー位相差に基づいて計算される角度は、それぞれ次式により表される。
【0097】
【数4】
【0098】
制御部230は、上記計算された角度α AC 、α BD 、βDC、及びβBAに基づいて、角度α及びβを計算する。例えば、制御部230は、次式に示すように、X軸及びY軸方向で各2アレーについて計算された角度を平均することで、角度α及びβを計算する。
【0099】
【数5】
【0100】
-推定精度低下の一因
以上説明したように、角度α及びβは、第1到来波の位相に基づいて計算される。上述したように、第1到来波として検出された信号は、必ずしも直接波であるとは限らない。
【0101】
つまり、第1到来波として、遅延波又は合成波が検出される場合がある。典型的には遅延波及び合成波の位相は直接波の位相と相違するので、相違した分だけ角度推定精度は低下する。
【0102】
-補足
なお、角度推定用信号は、角度推定処理の中で送受信されてもよいし、その他のタイミングで送受信されても良い。例えば、角度推定用信号は、測距処理において送受信されてもよい。具体的には、図7に示した第3の測距用信号と、図8に示した角度推定用信号とは、同一であってもよい。この場合、通信ユニット200は、角度推定用信号及び第2の測距用信号を兼ねるひとつの無線信号を受信することで、距離R並びに角度α及びβを計算することができる。
【0103】
上記では、受信側は、2つのX軸方向のアンテナアレーにおける位相差に基づいて推定された角度α AC 及び角度α BD を平均することで、角度αを推定した。受信側は、角度α AC 又は角度α BD のいずれか一方を角度αとして採用してもよいし、3つ以上のX軸方向のアンテナアレーにおける位相差に基づいて推定された角度を平均することで角度αを推定してもよい。即ち、受信側は、少なくとも1つのX軸方向のアンテナアレーにおける位相差に基づいて、角度αを推定すればよい。同様に、受信側は、少なくとも1つのY軸方向のアンテナアレーにおける位相差に基づいて、角度βを推定すればよい。
【0104】
(3)座標推定
制御部230は、座標推定処理を行う。座標推定処理とは、図4に示した携帯機100の三次元座標(x,y,z)を推定する処理である、座標推定処理としては、以下の第1の計算方法及び第2の計算方法が採用され得る。
【0105】
-第1の計算方法
第1の計算方法は、測距処理及び角度推定処理の結果に基づいて、座標x、y、及びzを計算する方法である。その場合、まず、制御部230は、次式により座標x及びyを計算する。
【0106】
【数6】
【0107】
ここで、距離R、並びに座標x、y及びzには、次式の関係が成り立つ。
【0108】
【数7】
【0109】
制御部230は、上記関係を利用して、次式により座標zを計算する。
【0110】
【数8】
【0111】
-第2の計算方法
第2の計算方法は、角度α及びβの推定を省略して、座標x、y、及びzを計算する方法である。まず、上記数式(4)(5)(6)(7)により、次式の関係が成り立つ。
【0112】
【数9】
【0113】
【数10】
【0114】
【数11】
【0115】
【数12】
【0116】
【数13】
【0117】
数式(12)を、cosαに関し整理して数式(9)に代入すると、次式により座標xが得られる。
【0118】
【数14】
【0119】
数式(13)を、cosβに関し整理して数式(10)に代入すると、次式により座標yが得られる。
【0120】
【数15】
【0121】
そして、数式(14)及び数式(15)を数式(11)に代入して整理すると、次式により座標zが得られる。
【0122】
【数16】
【0123】
以上、ローカル座標系における携帯機100の座標の推定処理について説明した。ローカル座標系における携帯機100の座標と、グローバル座標系におけるローカル座標系の原点の座標とを組み合わせることで、グローバル座標系における携帯機100の座標も推定可能である。
【0124】
-推定精度低下の一因
以上説明したように、座標は、伝搬遅延時間及び位相に基づいて計算される。そして、これらは、いずれも第1到来波に基づいて推定される。従って、測距処理、及び角度推定処理と同様の理由で、座標推定精度は低下し得る。
【0125】
(4)存在領域の推定
位置パラメータは、予め定義された複数の領域のうち、携帯機100が存在する領域を含んでいてもよい。一例として、領域が通信ユニット200からの距離により定義される場合、制御部230は、測距処理により推定された距離Rに基づいて、携帯機100が存在する領域を推定する。他の一例として、領域が通信ユニット200からの角度により定義される場合、制御部230、角度推定処理により推定された角度α及びβに基づいて、携帯機100が存在する領域を推定する。他の一例として、領域が三次元座標により定義される場合、制御部230は、座標推定処理により推定された座標(x,y,z)に基づいて、携帯機100が存在する領域を推定する。
【0126】
他にも、車両202に特有の処理として、制御部230は、車両202の車室内及び車室外を含む複数の領域の中から、携帯機100が存在する領域を推定してもよい。これにより、ユーザが車室内にいる場合と車室外にいる場合とで異なるサービスを提供する等、細やかなサービスを提供することが可能となる。他にも、制御部230は、車両202から所定距離以内の領域である周辺領域、及び車両202から所定距離以上の領域である遠方領域の中から、携帯機100が存在する領域を推定してもよい。
【0127】
(5)位置パラメータの推定結果の用途
位置パラメータの推定結果は、例えば携帯機100の認証のために使用され得る。例えば、制御部230は、運転席側であって通信ユニット200からの距離が近い領域に携帯機100が存在する場合に、認証成功を判定し、ドアを解錠する。
【0128】
<<3.技術的課題>>
複数の無線通信部210のすべてにおいて、直接波を第1到来波として検出することに成功するとは限らない。複数の無線通信部210のうち少なくともいずれかにおいて直接波を第1到来波として検出することに失敗した場合、角度推定精度は低下する。また、マスタにおいて直接波を第1到来波として検出することに失敗した場合、測距精度は低下する。このように、直接波を第1到来波として検出することに失敗した場合、位置パラメータの推定精度は低下する。
【0129】
そこで、本実施形態では、複数の無線通信部210のうち、直接波を第1到来波として検出することに成功した可能性が高い無線通信部210において検出された第1到来波に基づいて、角度推定を行う仕組みを提供する。かかる構成により、角度推定精度を向上させることが可能である。
【0130】
<<4.技術的特徴>>
(1)位置推定用通信
本実施形態に係る通信ユニット200は、位置推定用通信を行う。位置推定用通信とは、位置パラメータの推定のために行われる通信である。具体的には、位置推定用通信は、携帯機100と通信ユニット200との間で測距用信号及び角度推定用信号を送受信することを含む。
【0131】
ここで、通信ユニット200が有する複数の無線通信部210は、ひとつのマスタと、複数のスレーブとに分類される。マスタは、複数の無線通信部210のうちひとつの無線通信部210である第1の無線通信部210の一例である。スレーブは、複数の無線通信部210のうち第1の無線通信部210以外の無線通信部210である第2の無線通信部210の一例である。
【0132】
本実施形態における位置推定用通信では、測距用信号の受信を、マスタだけではなくスレーブも行う。この点について、図9を参照しながら説明する。
【0133】
図9は、本実施形態に係るシステム1において実行される位置推定用通信の一例を説明するためのシーケンス図である。本シーケンスには、携帯機100及び通信ユニット200が関与する。本シーケンスでは、無線通信部210Aがマスタとして機能するものとする。
【0134】
図9に示すように、まず、携帯機100は、パルスを含む第1の測距用信号を送信する(ステップS302)。無線通信部210A~無線通信部210Dの各々は、第1の測距用信号を受信する。
【0135】
次いで、第1の測距用信号を受信した無線通信部210Aは、第1の測距用信号の応答として、パルスを含む第2の測距用信号を送信する(ステップS304)。第2の測距用信号は、携帯機100により受信される。さらに、複数の無線通信部210のうち無線通信部210A以外の無線通信部210である複数の無線通信部210(無線通信部210B~210D)の各々もまた、第2の測距用信号を受信する。
【0136】
次に、第2の測距用信号を受信した携帯機100は、第2の測距用信号の応答として、パルスを含む第3の測距用信号を送信する(ステップS306)。無線通信部210A~無線通信部210Dの各々は、第3の測距用信号を受信する。
【0137】
携帯機100は、第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間T、及び第2の測距用信号の受信時刻から第3の測距用信号の送信時刻までの時間Tを計測する。ここで、第2の測距用信号の受信時刻とは、第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻、即ち、第2の測距用信号について計算されたCIRにおける特定要素に対応する時刻である。そして、携帯機100は、時間T及びTを示す情報を含む信号を送信する(ステップS308)。かかる信号は、複数の無線通信部210の各々により受信される。
【0138】
本シーケンスにおいては、第3の測距用信号が、角度推定用信号を兼ねるものとする。他にも、第1の測距用信号が、角度推定用信号を兼ねていてもよい。
【0139】
(2)特定要素検出処理
制御部230は、携帯機100から送信された測距用信号を複数の無線通信部210の各々が受信したことにより得られる情報であり、かつ、時系列に沿って変化する情報を時刻ごとの要素として含む複数の時系列情報を取得する。測距用信号は、パルスを含む信号であるパルス信号の一例である。時系列情報の一例は、時系列に沿って変化するCIR値を時刻ごとの要素として含むCIRである。例えば、制御部230は、複数の無線通信部210の各々により受信された測距用信号に基づいて、マスタ及びスレーブを含む複数の無線通信部210の各々におけるCIRを算出する。
【0140】
次いで、制御部230は、複数の無線通信部210の各々について取得された複数のCIRの各々に基づいて、複数の無線通信部210の各々にて受信した測距用信号に基づくCIRにおける特定の要素である特定要素を検出する、特定要素検出処理を行う。具体的には、制御部230は、図9に示した角度推定用信号を兼ねる第3の測距用信号を複数の無線通信部210の各々が受信したことにより得られたCIRから、複数の無線通信部210の各々における特定要素を検出する。特定要素検出処理は、第1の処理の一例である。
【0141】
制御部230は、所定の基準に従って特定要素を検出する。例えば、制御部230は、特定要素として、CIR値に含まれる振幅成分が所定の閾値を超えるひとつ以上の要素を検出することを、特定要素を所定の基準に従って検出することとして行う。CIR値に含まれる振幅成分とは、振幅そのものであってもよいし、振幅を二乗することで得られる電力であってもよい。
【0142】
特定要素は、第1到来波に対応する要素である。即ち、特定要素を検出することは、上述した第1到来波を検出することと同義である。そして、直接波を第1到来波として検出することは、直接波に対応する特定要素を検出することと同義である。
【0143】
特定要素の遅延時間に対応する時刻は、第1到来波の受信時刻として、測距のために使用される。また、特定要素の位相は、第1到来波の位相として、角度推定のために使用される。つまり、制御部230は、複数の無線通信部210の各々について、位置パラメータ推定に使用される特定要素を検出する。
【0144】
一例として、制御部230は、CIR値に含まれる振幅成分が最初に第1の閾値を超える要素を検出することを、特定要素を所定の基準に従って検出することとして行う。この場合、複数の無線通信部210について得られた複数のCIRの各々において、ひとつずつ特定要素が検出される。所定の閾値は、上述したファストパス閾値である。即ち、特定要素とは、CIRにおける複数の要素のうち、CIR値に含まれる振幅成分が最初にファストパス閾値を超える要素である。これにより、ひとつのCIRから特定要素を複数検出する場合と比較して、特定要素を検出するための演算負荷を軽減することが可能となる。
【0145】
以上から、特定要素検出処理においては、複数の無線通信部210の各々について、特定要素がひとつずつ検出される。
【0146】
(3)検証処理
制御部230は、特定要素検出処理において検出した複数の特定要素の各々が、携帯機100から複数の無線通信部210の各々までの最短の経路を経て到来した測距用信号に基づくものであるか否かを検証する、検証処理を行う。特定要素が携帯機100から無線通信部210までの最短の経路(即ち、ファストパス)を経て到来した測距用信号に基づくものとであるとは、特定要素が直接波に対応することを指す。即ち、制御部230は、複数の無線通信部210の各々について検出した複数の特定要素の各々が、直接波に対応するか否かを検証する。検証処理は、第2の処理の一例である。
【0147】
制御部230は、特定要素検出処理において検出された複数の特定要素の各々が、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものである度合いを示す指標を算出する。即ち、制御部230は、特定要素検出処理において検出された複数の特定要素の各々が、直接波に対応する度合いを示す指標を算出する。以下、かかる指標をファストパス指標とも称する。
【0148】
ファストパス指標は、例えば、連続値又は離散値である。一例として、ファストパス指標は、値が小さいほど特定要素が直接波に対応することを示していてもよい。同様に、ファストパス指標は、値が大きいほど特定要素が直接波に対応しないことを示していてもよい。もちろん、その逆であってもよい。
【0149】
そして、制御部230は、複数の特定要素の各々について算出されたファストパス指標に基づいて、複数の特定要素の各々が、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであるか否かを検証することを、検証処理として行う。即ち、制御部230は、ファストパス指標に基づいて、複数の特定要素の各々が直接波に対応するものであるか否かを検証する。
【0150】
-第1のファストパス指標
ファストパス指標は、複数の無線通信部210の各々について推定された測距値であってもよい。かかるファストパス指標は、第1のファストパス指標とも称される。
【0151】
測距値とは、伝搬遅延時間に基づいて推定される、携帯機100と無線通信部210との間の距離である。伝搬遅延時間とは、携帯機100と無線通信部210との間で測距用信号を送信してから受信するまでにかかる時間である。伝搬遅延時間は、特定要素に基づいて算出される。以下、複数の無線通信部210の各々についての測距値を算出する処理について、詳しく説明する。
【0152】
-マスタについて
制御部230は、図9に示すように、第1の測距用信号の第1到来波の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間T3―mを計測する。詳しくは、制御部230は、マスタが第1の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻から、マスタが第2の測距用信号を送信する時刻までの時間T3-mを、計測する。時間T3-mは、測距処理において説明した時間Tに相当する。
【0153】
また、制御部230は、図9に示すように、第2の測距用信号の送信時刻から第3の測距用信号の第1到来波の受信時刻までの時間Tを計測する。詳しくは、制御部230は、マスタが第2の測距用信号を送信した時刻から、マスタが第3の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻までの時間T4-mを計測する。時間T4-mは、測距処理において説明した時間Tに相当する。
【0154】
そして、制御部230は、携帯機100において計測された時間T及び時間T、並びにマスタについて計測した時間T3-m及び時間T4―mに基づいて、携帯機100とマスタとの間の測距値を取得する。詳しくは、制御部230は、次式を用いて、伝搬遅延時間τを推定する。そして、制御部230は、伝搬遅延時間τに基づいて測距値を取得する。なお、時間T及び時間Tは、図9に示すように携帯機100から通知される。
【0155】
【数17】
【0156】
-スレーブについて
マスタが第2の測距用信号を送信するので、スレーブは第2の測距用信号の送信時刻を取得することが困難である。そのため、制御部230は、スレーブについては、第2の測距用信号の送信時刻に代えて、マスタから送信された第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻を用いる。
【0157】
まず、制御部230は、図9に示すように、第1の測距用信号の第1到来波の受信時刻から第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻までの時間T3-s(T3-s1、T3-s2、及びT3-s3)を計測する。詳しくは、制御部230は、スレーブが第1の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻から、スレーブが第2の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻までの時間T3-sを、計測する。
【0158】
次いで、制御部230は、図9に示すように、第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻から第3の測距用信号の第1到来波の受信時刻までの時間T4-s(T4-s1、T4-s2、T4-s3)を計測する。詳しくは、制御部230は、スレーブが第2の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻から、スレーブが第3の信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻までの時間T4-sを計測する。
【0159】
そして、制御部230は、携帯機100において計測された時間T及び時間T、並びにスレーブについて計測した時間T3-s及び時間T4―sに基づいて、携帯機100とスレーブとの間の測距値を取得する。例えば、制御部230は、次式を用いて、複数のスレーブの各々についての伝搬遅延時間τ(τs1、τs2、τs3)を推定する。そして、制御部230は、複数のスレーブの各々についての伝搬遅延時間τに基づいて、複数のスレーブの各々についての測距値を取得する。なお、時間T及び時間Tは、図9に示すように携帯機100から通知される。
【0160】
【数18】
【0161】
なお、無線通信部210Bについての測距値は、上記数式において、T3-sとしてT3-s1が代入され、T4-sとしてT4-s1が代入されることで得られたτs1に基づいて、取得される。同様に、無線通信部210Cについての測距値は、上記数式において、T3-sとしてT3-s2が代入され、T4-sとしてT4-s2が代入されることで得られたτs2に基づいて、取得される。同様に、無線通信部210Dについての測距値は、上記数式において、T3-sとしてT3-s3が代入され、T4-sとしてT4-s3が代入されることで得られたτs3に基づいて、取得される。
【0162】
-マスタの測距値とスレーブの測距値との関係
隣接する無線通信部210間の距離は、角度推定用信号の搬送波の波長λの2分の1以下の超短距離である。
【0163】
そのため、携帯機100との間の距離は、すべての無線通信部210で同一とみなすことができる。よって、全ての無線通信部210において、第1の測距用信号に関し直接波に対応する特定要素を検出することに成功している場合、T3-m、T3-s1、T3-s2、及びT3-s3の始期は同一又は略同一となる。同様に、全ての無線通信部210において、第3の測距用信号に関し直接波に対応する特定要素を検出することに成功している場合、T4-m、T4-s1、T4-s2、及びT4-s3の終期は同一又は略同一となる。
【0164】
また、同様の理由で、マスタとスレーブとの間に遮蔽物が存在しないと仮定すると、マスタにおける第2の測距用信号の送信時刻とスレーブにおける第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻とは、略同一であるとみなすことができる。即ち、T3-m、T3-s1、T3-s2、及びT3-s3の終期は略同一である。また、T4-m、T4-s1、T4-s2、及びT4-s3の始期は略同一である。
【0165】
以上から、全ての無線通信部210において、第1の測距用信号に関し直接波に対応する特定要素を検出することに成功している場合、T3-m、T3-s1、T3-s2、及びT3-s3は同一又は略同一となる。また、全ての無線通信部210において、第3の測距用信号に関し直接波に対応する特定要素を検出することに成功している場合、T4-m、T4-s1、T4-s2、及びT4-s3は同一又は略同一となる。
【0166】
従って、すべての無線通信部210において直接波に対応する特定要素を検出することに成功している場合、すべての無線通信部210における測距値は略同一となる。
【0167】
-特定要素が直接波に対応するか否かの検証
測距処理に関し上記説明したように、直接波が第1到来波として検出されない場合、即ち特定要素が直接波に対応しない場合、測距値は真の値よりも長い距離として推定される。つまり、測距値が小さいほど、当該測距値の算出に用いた特定要素が直接波に対応する度合いが高いと言える。他方、測距値が大きいほど、当該測距値の算出に用いた特定要素が直接波に対応しない度合が高いと言える。
【0168】
そこで、制御部230は、複数の特定要素の各々について推定された複数の測距値のうち最短の測距値との差が第1の閾値以下である測距値が推定された特定要素が、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであると検証することを、検証処理として行う。即ち、制御部230は、複数の無線通信部210の各々において検出された特定要素に基づいて推定された測距値のうち最短の測距値との差が第1の閾値以下である測距値が推定された特定要素は、直接波に対応すると判定する。他方、制御部230は、複数の無線通信部210の各々において検出された特定要素に基づいて推定された測距値のうち最短の測距値との差が第1の閾値を超える測距値が推定された特定要素は、直接波に対応しないと判定する。
【0169】
このように、第1のファストパス指標によれば、測距値の観点から、特定要素が直接波に対応するか否かを検証することが可能となる。
【0170】
(4)信号到来角度の推定処理
制御部230は、複数の無線通信部210の各々にて受信した測距用信号に基づくCIRにおける特定要素のうち、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであることが検証された複数の特定要素に基づいて、信号到来角度の推定処理を行う。信号到来角度の推定処理とは、複数の無線通信部210に設定された基準点から延伸する軸を基準軸として測距用信号が到来する角度(以下、信号到来角度とも称する)を推定する処理である。具体的には、制御部230は、図9に示した角度推定用信号を兼ねる第3の測距用信号を複数の無線通信部210の各々が受信したことにより得られたCIRから検出された複数の特定要素のうち、直接波に対応することがファストパス指標により検証された複数の特定要素に基づいて、信号到来角度を推定する。
【0171】
基準点の一例は、通信ユニット200のローカル座標系における原点である。基準軸の一例は、通信ユニット200のローカル座標系における座標軸である。そして、信号到来角度の一例は、角度推定処理に関し説明した角度α及びβである。その場合、信号到来角度の推定処理は、上述した角度推定処理において角度α及びβを推定する処理と同様である。つまり、信号到来角は、携帯機100の位置パラメータのひとつである、通信ユニット200を基準とする携帯機100の角度に相当する。
【0172】
詳しくは、制御部230は、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであることが検証された特定要素のCIR値に含まれる位相成分に基づいて、信号到来角度を推定することを、信号到来角度の推定処理として行う。例えば、制御部230は、X軸方向のアンテナアレーを構成する無線通信部210のペアにおける特定要素の位相成分の差を、X軸方向のアンテナアレー位相差として、X軸に対する角度αを推定する。また、制御部230は、Y軸方向のアンテナアレーを構成する無線通信部210のペアにおける特定要素の位相成分の差を、Y軸方向のアンテナアレー位相差として、Y軸に対する角度βを推定する。角度推定処理に関し上記説明したように、直接波に対応することが検証された特定要素の位相成分に基づいて角度推定を行うことで、信号到来角度の推定精度を向上させることが可能となる。信号到来角度の推定処理は、第3の処理の一例である。
【0173】
ここで、角度推定処理に関し上記説明したように、受信側は、少なくとも1つのX軸方向のアンテナアレーにおける位相差に基づいて、角度αを推定可能である。また、受信側は、少なくとも1つのY軸方向のアンテナアレーにおける位相差に基づいて、角度βを推定可能である。X軸方向のアンテナアレーを構成する無線通信部210とY軸方向のアンテナアレーを構成する無線通信部210とは、一部重複してもよい。例えば、無線通信部210A及び無線通信部210Cから成るX軸方向のアンテナアレーにおける位相差、並びに無線通信部210A及び無線通信部210Bから成るY軸方向のアンテナアレーにおける位相差に基づいて、角度α及び角度βを推定可能である。従って、受信側は、少なくとも3つの無線通信部210における特定要素に基づいて、角度α及び角度βを推定可能である。
【0174】
そこで、制御部230は、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであることが検証された3つ以上の特定要素の各々に含まれる位相成分を抽出し、抽出した3つ以上の位相成分に基づいて、信号到来角度を推定する。つまり、制御部230は、直接波に対応することがファストパス指標により検証された3つ以上の特定要素に基づいて、信号到来角度を推定する。制御部230は、信号到来角度を推定するために使用する特定要素の数を3に抑えることで、処理負荷を軽減することが可能である。他方、制御部230は、信号到来角度を推定するために使用する特定要素の数を4以上にすることで、信号到来角度の推定精度を向上させることが可能である。
【0175】
ここで、信号到来角度の推定に用いられる3つ以上の特定要素は、平面を構成する3つ以上の無線通信部210について検出された特定要素であることが望ましい。即ち、制御部230は、平面を構成する3つ以上の無線通信部210について検出された3つ以上の特定要素の各々に含まれる位相成分に基づいて、信号到来角度を推定することが望ましい。3つ以上の無線通信部210が平面を構成することは、3つ以上の無線通信部210が同一の直線上に配置されないことを指す。X軸を基準とする角度α及びY軸を基準とする角度βのように、2つの基準軸に対する信号到来角度を推定することが可能となる。
【0176】
(5)処理の流れ
図10は、本実施形態に係る通信ユニット200において実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0177】
図10に示すように、まず、通信ユニット200は、携帯機100との間で位置推定用通信を行う(ステップS402)。位置推定用通信については、図9を参照しながら上記説明した通りである。
【0178】
次いで、制御部230は、複数の無線通信部210の各々における特定要素を検出する(ステップS404)。詳しくは、制御部230は、位置推定用通信において複数の無線通信部210の各々が測距用信号を受信することにより得られた複数のCIRの各々から、特定要素を検出する。
【0179】
次に、制御部230は、複数の無線通信部210の各々における測距値を計算する(ステップS406)。詳しくは、まず、制御部230は、複数の無線通信部210の各々について検出された特定要素に対応する時刻に基づいて、伝搬遅延時間を計算する。そして、制御部230は、複数の無線通信部210の各々について計算された伝搬遅延時間に基づいて、複数の無線通信部210の各々と携帯機100との間の測距値を計算する。
【0180】
次に、制御部230は、閾値を決定する(ステップS408)。例えば、制御部230は、次式により閾値を決定する。
【0181】
【数19】
【0182】
ここで、THは、決定される閾値である。Rは、マスタにおける測距値である。Rs1、Rs2、及びRs3は、それぞれスレーブにおける測距値である。αは、所定の値である。最短の測距値との差がα以下である測距値は、直接波に対応すると検証される。つまり、αは、第1の閾値の一例である。
【0183】
次いで、制御部230は、測距値が閾値以下である無線通信部210の数が3つ以上であるか否かを判定する(ステップS410)
【0184】
測距値が閾値以下である無線通信部210の数が3つ以上でないと判定された場合(ステップS410:NO)、処理は再度ステップS402に戻る。
【0185】
他方、測距値が閾値以下である無線通信部210の数が3つ以上であると判定された場合(ステップS410:YES)、制御部230は、測距値が閾値以下である無線通信部210において得られた特定要素の位相成分に基づいて、信号到来角度を推定する(ステップS412)。詳しくは、まず、制御部230は、平面を構成する3つ以上の無線通信部210について検出された特定要素の位相成分に基づいて、少なくとも2つの基準軸におけるアンテナアレー位相差を計算する。そして、制御部230は、少なくとも2つの基準軸におけるアンテナアレー位相差に基づいて、当該少なくとも2つの基準軸に対する信号到来角度を推定する。
【0186】
(6)ファストパス指標の他の一例
ファストパス指標としては、上述した測距値の他にも多様に考えられる。以下、ファストパス指標の他の一例を説明する。
【0187】
-第2のファストパス指標
ファストパス指標は、複数の無線通信部210の各々について計算された伝搬遅延時間であってもよい。かかるファストパス指標は、第2のファストパス指標とも称される。
【0188】
伝搬遅延時間とは、第1のファストパス指標に関し上記説明したように、携帯機100と無線通信部210との間で測距用信号を送信してから受信するまでにかかる時間である。伝搬遅延時間は、特定要素に基づいて算出される。
【0189】
測距処理に関し上記説明したように、直接波が第1到来波として検出されない場合の伝搬遅延時間は、直接波が第1到来波として検出される場合の伝搬遅延時間と比較して長くなる。つまり、伝搬遅延時間が短いほど、当該伝搬遅延時間の算出に用いた特定要素が直接波に対応する度合いが高いと言える。他方、伝搬遅延時間が長いほど、当該伝搬遅延時間の算出に用いた特定要素が直接波に対応しない度合が高いと言える。
【0190】
そこで、制御部230は、複数の特定要素の各々について算出された複数の伝搬遅延時間のうち最短の伝搬遅延時間との差が第2の閾値以下である伝搬遅延時間が算出された特定要素が、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであると検証することを、検証処理として行う。即ち、制御部230は、複数の無線通信部210の各々において検出された特定要素に基づいて計算された伝搬遅延時間のうち最短の伝搬遅延時間との差が第2の閾値以下である伝搬遅延時間が計算された特定要素は、直接波に対応すると判定する。他方、制御部230は、複数の無線通信部210の各々において検出された特定要素に基づいて計算された伝搬遅延時間のうち最短の伝搬遅延時間との差が第2の閾値を超える伝搬遅延時間が計算された特定要素は、直接波に対応しないと判定する。
【0191】
このように、第2のファストパス指標によれば、伝搬遅延時間の観点から、特定要素が直接波に対応するか否かを検証することが可能となる。
【0192】
-第3のファストパス指標
ファストパス指標は、複数の無線通信部210の各々について計算された時間Tであってもよい。かかるファストパス指標は、第3のファストパス指標とも称される。
【0193】
マスタに関する第3のファストパス指標は、時間T3-mである。時間T3-mは、上記説明したように、マスタが第1の測距用信号(第1の信号の一例)を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻から、マスタが第2の測距用信号(第2の信号の一例)を送信する時刻までの時間である。
【0194】
スレーブに関する第3のファストパス指標は、時間T3-s(T3-s1、T3-s2、及びT3-s3)である。時間T3-sは、上記説明したように、スレーブが第1の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻から、スレーブが第2の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻までの時間である。
【0195】
測距処理に関し上記説明したように、直接波が第1到来波として検出されない場合、第1到来波の受信時刻は遅れる。換言すると、直接波が第1到来波として検出されない場合、特定要素に対応する時刻は遅れる。従って、時間T(T3-m、T3-s1、T3-s2、及びT3-s3)の始期である、複数の無線通信部210の各々における第1の測距用信号の特定要素に対応する時刻は、直接波が第1到来波として検出されない場合には遅れる。他方、第1のファストパス指標に関し上記説明したように、マスタとスレーブとの間に遮蔽物が存在しないと仮定すると、T3-m、T3-s1、T3-s2、及びT3-s3の終期は略同一である。以上から、直接波が第1到来波として検出されない場合、直接波が第1到来波として検出される場合と比較して、時間Tは短くなる。
【0196】
そこで、制御部230は、マスタに関する第3のファストパス指標としての時間T3-m、及び複数のスレーブの各々に関する第3のファストパス指標としての時間T3-sのうち、最長の時間との差が第3の閾値以下である時間が算出された無線通信部210に関し検出された特定要素が、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであると検証することを、検証処理として行う。即ち、制御部230は、時間T3-m、T3-s1、T3-s2、及びT3-s3のうち、最長の時間との差が第3の閾値以下である時間が算出された特定要素は、直接波に対応すると判定する。他方、制御部230は、時間T3-m、T3-s1、T3-s2、及びT3-s3のうち、最長の時間との差が第3の閾値を超える時間が算出された特定要素は、直接波に対応しないと判定する。
【0197】
このように、第3のファストパス指標によれば、時間Tの観点から、特定要素が直接波に対応するか否かを検証することが可能となる。
【0198】
-第4のファストパス指標
ファストパス指標は、複数の無線通信部210の各々について計算された時間Tであってもよい。かかるファストパス指標は、以下では第4のファストパス指標とも称される。
【0199】
マスタに関する第4のファストパス指標は、時間T4-mである。時間T4-mは、上記説明したように、マスタが第2の測距用信号を送信した時刻から、マスタが第3の測距用信号(第3の信号の一例)を受信したことにより得られたCIRにおける前記特定要素に対応する時刻までの時間である。
【0200】
スレーブに関する第4のファストパス指標は、時間T4-s(T4-s1、T4-s2、及びT4-s3)である。時間T4-sは、上記説明したように、スレーブが第2の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻から、スレーブが第3の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける前記特定要素に対応する時刻までの時間である。
【0201】
測距処理に関し上記説明したように、直接波が第1到来波として検出されない場合、第1到来波の受信時刻は遅れる。換言すると、直接波が第1到来波として検出されない場合、特定要素に対応する時刻は遅れる。従って、時間T(T4-m、T4-s1、T4-s2、及びT4-s3)の終期である、複数の無線通信部210の各々における第3の測距用信号の特定要素に対応する時刻は、直接波が第1到来波として検出されない場合には遅れる。他方、第1のファストパス指標に関し上記説明したように、マスタとスレーブとの間に遮蔽物が存在しないと仮定すると、T4-m、T4-s1、T4-s2、及びT4-s3の始期は略同一である。以上から、直接波が第1到来波として検出されない場合、直接波が第1到来波として検出される場合と比較して、時間Tは長くなる。
【0202】
そこで、制御部230は、マスタに関する第4のファストパス指標としての時間T4-m、及び複数のスレーブの各々に関する第4のファストパス指標としての時間T4-sのうち、最短の時間との差が第4の閾値以下である時間が算出された無線通信部210に関し検出された特定要素が、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであると検証することを、検証処理として行う。即ち、制御部230は、時間T4-m、T4-s1、T4-s2、及びT4-s3のうち、最短の時間との差が第4の閾値以下である時間が算出された特定要素は、直接波に対応すると判定する。他方、制御部230は、時間T4-m、T4-s1、T4-s2、及びT4-s3のうち、最短の時間との差が第4の閾値を超える時間が算出された特定要素は、直接波に対応しないと判定する。
【0203】
このように、第4のファストパス指標によれば、時間Tの観点から、特定要素が直接波に対応するか否かを検証することが可能となる。
【0204】
-第5のファストパス指標
ファストパス指標は、複数の無線通信部210の各々における特定要素に対応する時刻であってもよい。かかるファストパス指標は、以下では第5のファストパス指標とも称される。
【0205】
詳しくは、第5のファストパス指標は、無線通信部210が測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻である。とりわけ、第5のファストパス指標は、複数の無線通信部210の各々が同一の測距用信号を受信したことにより得られたCIRにおける特定要素に対応する時刻である。ここでの測距用信号とは、第1の測距用信号又は第3の測距用信号である。
【0206】
測距処理に関し上記説明したように、直接波が第1到来波として検出されない場合、第1到来波の受信時刻は遅れる。換言すると、直接波が第1到来波として検出されない場合、特定要素に対応する時刻は遅れる。
【0207】
そこで、制御部230は、複数の無線通信部210の各々における特定要素に対応する時刻のうち最も早い時刻との差が第5の閾値以下である時刻に対応する特定要素が、ファストパスを経て到来した測距用信号に基づくものであると検証することを、検証処理として行う。即ち、制御部230は、特定要素のうち、対応する時刻が最も早い時刻との差が第5の閾値以下である特定要素は、直接波に対応すると判定する。他方、制御部230は、特定要素のうち、対応する時刻が最も早い時刻との差が第5の閾値を超える特定要素は、直接波に対応しないと判定する。
【0208】
このように、第5のファストパス指標により、特定要素に対応する時刻の観点から、特定要素が直接波に対応するか否かを検証することが可能となる。
【0209】
<<5.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0210】
例えば、上記実施形態では、スレーブにおける時間T3―sの終期、及びスレーブにおける時間T4-sの始期として、マスタから送信された第2の測距用信号の第1到来波の受信時刻を用いるものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、制御部230は、スレーブにおける時間T3―sの終期、及びスレーブにおける時間T4-sの始期として、マスタにおける第2の測距用信号の送信時刻を用いてもよい。
【0211】
例えば、上記実施形態では、通信ユニット200は4つの無線通信部210を有するものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。通信ユニット200は、少なくとも3つの無線通信部210を有していればよい。また、通信ユニット200は、5つ以上の無線通信部210を有していてもよい。
【0212】
例えば、上記実施形態において説明した複数のファストパス指標のうち任意の2以上のファストパス指標が、組み合わせて使用されてもよい。
【0213】
例えば、上記実施形態では、特定要素はCIR値が最初にファストパス閾値を超える要素であるものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、特定要素は、CIR値が2番目以降にファストパス閾値を超える要素であってもよい。
【0214】
例えば、上記実施形態では、CIRが相関演算結果であるものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。一例として、CIRは、受信信号そのものであってもよい。その場合、CIRは、無線通信部210が受信したパルスを含む信号を規定時間ごとにサンプリングした結果を、規定時間を間隔とする時刻ごとの前記要素として含む。CIR値は、遅延時間ごとの受信信号である。ここで、CIR値は、受信信号の振幅成分及び位相成分の少なくともいずれかを含んでいればよい。受信信号の振幅成分は、振幅又は振幅を二乗することで得られる電力である。受信信号の位相成分は、受信信号のIQ成分がIQ平面上でI軸となす角である。位相成分は、単に位相とも称される。受信信号は、IQ成分を有する複素数であってもよい。CIRが受信信号そのものである場合、受信側は、受信した無線信号の振幅成分が最初にファストパス閾値を超えることを、第1到来波を検出するための所定の検出基準として用いてもよい。その場合、受信側は、受信信号の振幅成分が最初にファストパス閾値を超える要素を、特定要素として検出してもよい。換言すると、受信側は、受信信号の振幅成分が最初にファストパス閾値を超える部分を、第1到来波として検出してもよい。
【0215】
例えば、上記実施形態では、制御部230がCIRの算出、第1到来波(換言すると、特定要素)の検出、及び位置パラメータの推定を行うものと説明したが、本発明はかかる例に限定されない。これらの処理の少なくともいずれかが、無線通信部210により実行されてもよい。例えば、複数の無線通信部210の各々において、各々が受信した受信信号に基づいてCIRの算出、及び第1到来波の検出を行ってもよい。また、位置パラメータの推定は、例えばマスタとして機能する無線通信部210により実行されてもよい。
【0216】
例えば、上記実施形態では、アンテナペアにおけるアンテナアレー位相差に基づいて角度α及びβが計算される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。一例として、通信ユニット200は、複数のアンテナ211によりビームフォーミングを行うことで、角度α及びβを計算してもよい。その場合、通信ユニット200は、複数のアンテナ211のメインローブを全方向にわたって走査し、受信電力が最も大きい方向に携帯機100が存在すると判定し、かかる方向に基づいて角度α及びβを計算する。
【0217】
例えば、上記実施形態では、図3を参照しながら説明したように、ローカル座標系が、アンテナペアを結ぶ軸に平行する座標軸を有する座標系であるものとして説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ローカル座標系は、アンテナペアを結ぶ軸に平行しない座標軸を有する座標系であってもよい。また、原点は、複数のアンテナ211の中心に限定されない。本実施形態に係るローカル座標系は、通信ユニット200が有する複数のアンテナ211の配置を基準に、任意に設定されてよい。
【0218】
例えば、上記実施形態では、被認証者が携帯機100であり、認証者が通信ユニット200である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100及び通信ユニット200の役割は逆であってもよい。例えば、携帯機100が、位置パラメータを推定してもよい。また、携帯機100及び通信ユニット200の役割が動的に交換されてもよい。また、通信ユニット200同士で位置パラメータの特定、及びに認証が行われてもよい。
【0219】
例えば、上記実施形態では、本発明がスマートエントリーシステムに適用される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、信号を送受信することで位置パラメータを推定し認証を行う任意のシステムに適用可能である。例えば、携帯機、車両、スマートフォン、ドローン、家、及び家電製品等のうち任意の2つの装置を含むペアに、本発明は適用可能である。その場合、ペアのうち一方が認証者として動作し、他方が被認証者として動作する。なお、ペアは、2つの同じ種類の装置を含んでいてもよいし、2つの異なる種類の装置を含んでいてもよい。また、無線LAN(Local Area Network)ルータがスマートフォンの位置を推定するためにも、本発明は適用可能である。
【0220】
例えば、上記実施形態では、無線通信規格としてUWBを用いるものを挙げたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、無線通信規格として、赤外線を用いるものが使用されてもよい。
【0221】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0222】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0223】
1:システム、100:携帯機、110:無線通信部、111:アンテナ、120:記憶部、130:制御部、200:通信ユニット、202:車両、210:無線通信部、211:アンテナ、220:記憶部、230:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10