(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】揮散装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
A01M1/20 C
(21)【出願番号】P 2020025198
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】明神 弘恭
(72)【発明者】
【氏名】浜井 孔明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 愛友
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-014345(JP,A)
【文献】特開2012-157264(JP,A)
【文献】実開平06-013482(JP,U)
【文献】特開2008-030846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/20
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ角度を変更可能な第1の折り曲げ部を介して接続した第1部分及び第2部分を有し、薬剤を含浸して担持し、含浸した薬剤の効果の終了時期を知らせるための第1の表示部を前記第1部分に有する薬剤担持シートと、
前記第1の折り曲げ部を介して前記第2部分を前記第1部分に対して略直角に折り曲げた状態の前記薬剤担持シートの前記第2部分の折り曲げ方向と反対側で前記第1部分に対向する第1の筐体、及び前記第1の筐体に対して前記薬剤担持シートの反対側に配置され、折り曲げた状態の前記薬剤担持シートを内部に収容して前記第1の筐体と接合される第2の筐体を有するケースと、を備え、
前記ケースの前記第1の筐体は、前記薬剤担持シートの前記第1部分に設けた前記第1の表示部を前記ケースの外から見るための第1の窓部を備えるとともに、前記薬剤担持シートの前記第1の折り曲げ部と前記第1の表示部の間の前記第1部分に向けて前記第1の筐体の内面から突設した突起を有し、
前記薬剤担持シートの前記第1部分は、前記突起による押圧位置と前記第1の表示部の間に前記第1の折り曲げ部と略平行な第1の折罫線を有し、
略直角に折り曲げた状態の前記薬剤担持シートを内部に収容して前記第1の筐体と前記第2の筐体を接合する動作によって前記突起が前記薬剤担持シートの前記第1部分を押圧することにより、前記第1の折罫線の位置で前記第1部分が折れ曲がり、前記突起から前記第1部分が受ける押圧力により、前記第1の表示部を前記第1の窓部に対して位置合わせする方向へ前記薬剤担持シートを移動させる、
揮散装置。
【請求項2】
前記ケースの前記第2の筐体は、前記突起による前記押圧位置に対し前記第1の折罫線の反対側で前記突起による押圧方向と逆方向から前記薬剤担持シートの前記第1部分を支える支え部材を有する、
請求項1の揮散装置。
【請求項3】
前記薬剤担持シートの前記第1部分は、前記支え部材によって前記第1部分を支える位置と前記第1の折罫線の間に前記第1の折り曲げ部と略平行な第2の折罫線を有する、
請求項2の揮散装置。
【請求項4】
前記薬剤担持シートは、前記第2部分の前記第1部分から離間した端辺に前記第1の折り曲げ部と略平行な第2の折り曲げ部を介して折り曲げ角度を変更可能に接続した第3部分を有し、
前記第2の筐体は、前記第1の折り曲げ部を介して前記第2部分を前記第1部分に対して略直角に折り曲げ且つ前記第2の折り曲げ部を介して前記第3部分を前記第2部分に対して同じ方向に略直角に折り曲げた状態の前記薬剤担持シートを前記ケースの内部に収容配置した状態で、前記第3部分の移動を規制する規制手段を備えている、
請求項1の揮散装置。
【請求項5】
前記薬剤担持シートの第2部分は、薬剤の効果の終了時期を知らせるための第2の表示部を有し、
前記ケースは、前記薬剤担持シートの前記第2部分に対向する位置に前記第2の表示
部を前記ケースの外から見るための第2の窓部を有し、
前記第1の筐体と前記第2の筐体を接合する動作によって、前記第1の表示部を前記第1の窓部に対して位置合わせするとともに前記第2の表示部を前記第2の窓部に対して位置合わせする方向へ前記薬剤担持シートを移動させる、
請求項4の揮散装置。
【請求項6】
前記規制手段は、前記突起による前記押圧位置に対し前記第1の折罫線の反対側で前記突起による押圧方向と逆方向から前記薬剤担持シートの前記第1部分を支える支え部材として機能する、
請求項4または請求項5の揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防虫剤などの薬剤を揮散させる揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防虫剤の揮散装置として、防虫効果の終了時期をユーザーに知らせるためのインジケータ(表示部)を備えたものが知られている。インジケータは、防虫剤が浸透すると文字が消えて防虫剤が無くなると文字が表示される含浸シートを用いたものが一般的である。インジケータが表示する文字は、例えば「おわり」などであり、当該揮散装置による防虫効果が終了したことをユーザーに知らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、インジケータを備えた特許文献1の揮散装置をクローゼットに設置して使用すると、インジケータが衣類に接触して角度が変わり、或いはインジケータに手が触れて角度が変わり、表示が見え難くなる可能性がある。このように、従来の揮散装置のインジケータは、ユーザーにとって必ずしも見易いものではなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、表示部を見易くすることができる揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の揮散装置の一態様は、折り曲げ角度を変更可能な第1の折り曲げ部を介して接続した第1部分及び第2部分を有し、薬剤を含浸して担持し、含浸した薬剤の効果の終了時期を知らせるための第1の表示部を第1部分に有する薬剤担持シートと、第1の折り曲げ部を介して第2部分を第1部分に対して略直角に折り曲げた状態の薬剤担持シートを収容するケースと、を有する。ケースは、第2部分の折り曲げ方向と反対側で第1部分に対向する第1の筐体、及び第1の筐体に対して薬剤担持シートの反対側に配置され、折り曲げた状態の薬剤担持シートを内部に収容して第1の筐体と接合される第2の筐体を有する。第1の筐体は、薬剤担持シートの第1部分に設けた第1の表示部をケースの外から見るための第1の窓部を備えるとともに、薬剤担持シートの第1の折り曲げ部と第1の表示部の間の第1部分に向けて第1の筐体の内面から突設した突起を有する。薬剤担持シートの第1部分は、突起による押圧位置と第1の表示部の間に第1の折り曲げ部と略平行な第1の折罫線を有する。この揮散装置によると、略直角に折り曲げた状態の薬剤担持シートを内部に収容して第1の筐体と第2の筐体を接合する動作によって突起が薬剤担持シートの第1部分を押圧することにより、第1の折罫線の位置で第1部分が折れ曲がり、突起から第1部分が受ける押圧力により、第1の表示部を第1の窓部に対して位置合わせする方向へ薬剤担持シートを移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る揮散装置によれば、表示部を見易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る揮散装置を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の揮散装置の前面側の筐体を内側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の揮散装置の背面側の筐体を内側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の揮散装置のシート材を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のシート材をF5-F5線で切断した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る揮散装置10は、前面側の筐体2(第1の筐体)と、筐体2に接合して組み合わせることによりケース1を構成する背面側の筐体3(第2の筐体)と、薬剤Yを含侵したシート材4(薬剤担持シート)と、を有する。シート材4はケース1の内部に収容配置される。
以下の説明では、ケース1の後述するフック3eを介してハンガーパイプなどに揮散装置10を吊り下げた状態(
図1に示す状態)で、揮散装置10を筐体2側から見て、上下左右を規定するとともに、前面側および背面側を規定する。
【0010】
図2に示すように、前面側の筐体2は、略矩形の平らな板状部分2aと板状部分2aの外周縁に一体に設けた略矩形枠状の周壁2bとを有する。板状部分2aは、4つの角部が円弧状に湾曲している。周壁2bは、板状部分2aの外周縁から筐体2の内側、すなわち背面側に向けて板状部分2aと略直交する方向に延設されている。周壁2bは、板状部分2aの4つの角部にならって湾曲している。板状部分2aの端縁と周壁2bの間の連結部分もなだらかに湾曲した曲面形状を有する。
【0011】
板状部分2aは、シート材4の後述する第1部分21の外面21aに設けた表示部24a(例えば「おわり」などの文字)を外部に露出するための略矩形の窓部5(第1の窓部)を有する。窓部5は、筐体2の長手方向(図示左右方向)の一端側(本実施形態では右側)に偏った位置に設けられている。窓部5の位置は任意に変更可能である。また、板状部分2aは、窓部5とは別の場所に、長円形の複数の揮散孔2cを有する。窓部5および複数の揮散孔2cは、板状部分2aを貫通して設けられている。複数の揮散孔2cは、板状部分2aの長手方向に沿って縦横に整列して配置されている。
【0012】
筐体2の内面2dには、略円柱形状の2本の押圧ピン6a、6b(突起)が背面側に向けて突設されている。押圧ピン6a、6bは、ケース1の右端の端壁1a(
図1)と窓部5の間に配置されており、窓部5の縁より端壁1aに近い位置に配置されている。押圧ピン6a、6bは、端壁1aの内面に沿って上下に互いに離間して配置されている。押圧ピン6a、6bは、背面側の筐体3に前面側の筐体2を近付けて2つの筐体2、3を接合する際に、シート材4の後述する第1部分21の外面21aを押圧することのできる長さを有する。押圧ピン6a、6bの本数は2本に限らず、1本或いは3本以上であってもよい。押圧ピン6a、6bは、略円柱形状に限らずいかなる形状であってもよく、ピン形状でなくてもよい。
【0013】
筐体2の内面2dには、この他に、複数のスペーサ突起10a、10b、10c、10d、10e、および複数のボス部11a、11b、11c、11dが突設されている。これら複数のスペーサ突起10a~10eおよび複数のボス部11a~11dは、筐体2の板状部分2aの内面2dと後述するシート材4との間に隙間を形成するために設けられている。つまり、シート材4を筐体2の内側に配置した場合、シート材4の表面が複数のスペーサ突起10a~10eの先端および複数のボス部11a~11dの先端に当接し、シート材4が筐体2の内面2dに接触することを防止することができる。このため、シート材4に含侵した薬剤Yが筐体2に付着して薬剤Yで濡れてしまう不具合を防止することができ、使用者が使用する際に手などに薬剤Yが付着してしまう不具合を防止することができる。
【0014】
図3に示すように、背面側の筐体3は、略矩形の平らな板状部分3aと板状部分3aの外周縁に一体に設けた略矩形枠状の周壁3bとを有する。背面側の筐体3は、前面側の筐体2と略同じ構造を有する。背面側の筐体3の板状部分3aは、4つの角部が円弧状に湾曲している。周壁3bは、板状部分3aの外周縁から内側に向けて板状部分3aと直交する方向に延設されている。周壁3bは、板状部分3aの4つの角部にならって湾曲している。板状部分3aの端縁と周壁3bの間の連結部分もなだらかに湾曲した曲面形状を有する。
【0015】
前面側の筐体2には無い構造として、背面側の筐体3の板状部分3aの上端に連続した周壁3bの部分には、揮散装置10を例えばクローゼットのハンガーパイプ(図示せず)に引っ掛けるためのフック3eが一体に設けられている。フック3eは、筐体3の右側から左側に向けて湾曲している。つまり、フック3eをハンガーパイプに掛けた状態でケース1の端壁1a(右端の壁)が手前に配置される向きでフック3eが湾曲している。また、筐体3の板状部分3aは、長円形の複数の揮散孔3cを有する。複数の揮散孔3cは、板状部分3aを貫通して設けられており、板状部分3aの長手方向に沿って縦横に整列して配置されている。
【0016】
板状部分3aの内面3dには、シート材4の後述する嵌合孔26に嵌合する嵌合体12(規制手段)が突設されている。嵌合体12は、概ね、前面側の筐体2の窓部5に対向する位置に配置されている。嵌合体12は、筐体3の長手方向に延設された板状片12aと板状片12aと交差する短手方向に延設された2つの板状片12b、12cを井桁状に組み合わせた構造を有する。嵌合体12は、必ずしも
図3に示した構造に限らず、いかなる構造であってもよい。
【0017】
また、板状部分3aの内面3dには、複数(本実施形態では2本)のスペーサ突起13a、13b(支え部材)、および複数(本実施形態では3つ)のボス部14a、14b、14cが突設されている。ボス部14cは、筐体3の内面3dと嵌合体12の間に配置されている。言い換えると、嵌合体12は、ボス部14cの上に配置されている。2本のスペーサ突起13a、13bは、後述するシート材4の第1部分21の背面に当接して第1部分21を支え、第1部分21を前面側の筐体2の内面2dに近付けるために設けられている。また、嵌合体12もシート材4の第1部分21の背面に当接して支える支え部材として機能する。
【0018】
ボス部14cは、筐体3の板状部分3aの内面3dと後述するシート材4の第3部分23との間に隙間を形成するために設けられている。つまり、シート材4を2つの筐体2、3の間に配置した場合、シート材4の第3部分23に設けた後述する嵌合孔26に筐体3の嵌合体12が嵌合し、第3部分23の表面がボス部14cの端面に当接する。これにより、シート材4の第3部分23の表面が筐体3の内面3dに接触する不具合を防止することができる。つまり、背面側の筐体3においても、薬剤Yの付着の問題を生じることはない。
【0019】
なお、背面側の筐体3の板状部分3aと前面側の筐体2の板状部分2aは同じサイズに形成されており、周壁3bも周壁2bと同じサイズに形成されている。よって、周壁2bの板状部分2aから離間した端縁と周壁3bの板状部分3aから離間した端縁を当接させて前面側の筐体2と背面側の筐体3を接合すると、内部にシート材4を収納するための空間を有するケース1(
図1)が組み立てられる。
【0020】
2つの筐体2、3を組み合わせてケース1を形成するため、前面側の筐体2の周壁2bには5つの係合爪15a、15b、15c、15d、15eが設けられており、背面側の筐体3の周壁3bのそれぞれ対応する位置にも5つの係合爪16a、16b、16c、16d、16eが設けられている。2つの筐体2、3を接合する構造は、本実施形態の構造に限らず、例えば圧入などの他の接合構造を選択することもできる。
【0021】
図1に示すように、ケース1の右側の端壁1aには、シート材4の後述する第2部分22の外面22aに設けた表示部24b(例えば「おわり」などの文字)を外部に露出するための略矩形の窓部25(第2の窓部)が設けられている。ケース1の端壁1aは、前面側の筐体2の周壁2bと背面側の筐体3の周壁3bを接合した枠状の周壁の一部であり、周壁2bと周壁3bを足した幅を有する。すなわち、窓部25の約半分25a(
図2)は筐体2の周壁2bに形成され、残りの半分25b(
図3)は筐体3の周壁3bに形成されている。なお、ケース1の周壁のうちケース1の左端にある壁部分やケース1の下端にある壁部分には、揮散孔(図示せず)を設けてもよい。
【0022】
図4に示すように、シート材4は、1枚の長尺な矩形のシートにより形成されている。シート材4は、長尺な矩形の吸液シートを長手方向に沿った2位置(折れ線L1、L2)で略直角に同じ方向に折り曲げた図示の状態で使用される。シート材4の折れ線L1に沿った部位は第1の折り曲げ部として機能し、シート材4の折れ線L2に沿った部位は第2の折り曲げ部として機能する。言い換えると、シート材4は、図示のように略J字状に折り曲げた状態でケース1内に収容配置される。シート材4は、折れ線L1、L2の部位で折り曲げ可能なものであり、2つの折れ線L1、L2での折り曲げ角度も外部からの押圧力によって変化することができる。
【0023】
シート材4は、薬剤Yを含浸して担持している。当然のことながら、シート材4は、薬剤Yを良好に浸透させて保持することができる材質により形成する必要がある。本実施形態では、シート材4として天然パルプやマーセル化パルプなどのパルプ類を用いたが、ケナフやバガスなどの非木材紙やレーヨンなどの合成紙、ポリエチレンやポリプロピレンなどによる不織布などを用いることもでき、シート材4の材質はパルプ類に限定されるものではない。
【0024】
シート材4に含侵させる薬剤Yは、例えば揮散性を持つ防虫剤として、エムペントリン、シフェノトリン、フェノトリン、アレスリン、プラレトリン、ペルメトリン、フタルスリン、シフルスリン、デルタメトリン、エトフェンプロックス、フラメトリン、プロフルトリン、トランスフルスリン等があげられ、これらの1種もしくは2種以上の混合物を使用することができる。また、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤等を使用することができ、2-N-置換ベンゾトリアゾール誘導体などの添加剤の他、様々な薬剤を混合して使用することができる。
【0025】
シート材4は、前面側の筐体2の内面2dに対向する第1部分21と、端壁1aの内面に対向する第2部分22と、背面側の筐体3の内面3dに対向する第3部分23と、を一体に連続して有する。つまり、第2部分22が折れ線L1、L2を介して第1部分21と第3部分23の間をつないでいる。第1部分21は、揮散装置10のケース1の長手方向の全長よりわずかに短い長さを有する。第3部分23は、例えばケース1の全長の1/3よりわずかに短い長さを有する。第2部分22は、ケース1の長手方向の一端(窓部5に近い右端)にある端壁1a(
図1)に対向する部分であり、端壁1aより一回り小さい幅および長さを有する。第3部分23の長さは、当該揮散装置10に必要とされる薬剤Yの揮散性能(揮散量や揮散速度など)に応じて任意に変更可能である。
【0026】
シート材4の第1部分21には、シート材4に含侵した薬剤Yがほとんど無くなったときに薬剤Yの効果の終了時期をユーザーに知らせるための表示部24aが設けられている。表示部24aは、例えば、「おわり」などの文字であり、第1の表示部として機能する。また、シート材4の第2部分22にも、シート材4に含侵した薬剤Yがほとんど無くなったときに薬剤Yの効果の終了時期をユーザーに知らせるための表示部24bが設けられている。表示部24bは、例えば、「おわり」などの文字であり、第2の表示部として機能する。表示部24a、24bを介して表示する文字は、本実施形態のように同じものである必要はなく、異なる文字や模様などを表示するようにしてもよい。なお、含侵した薬剤が無くなったときに文字を表示する技術は周知であるため、ここではそのメカニズムに関する説明を省略する。
【0027】
シート材4の第3部分23には、背面側の筐体3の板状部分3aの内面3dに突設した嵌合体12を勘合するための嵌合孔26が第3部分23を貫通して設けられている。嵌合孔26の大きさおよび形状は、嵌合体12を勘合した状態で第3部分23が筐体3に対してほとんど移動不能となる大きさおよび形状であることが望ましい。本実施形態では、嵌合孔26を、嵌合体12の板状片12aよりわずかに短い長軸および板状片12b、12cよりわずかに短い短軸を有する長円形に形成した。
【0028】
なお、嵌合孔26の位置は、嵌合孔26に嵌合体12を勘合した状態で、シート材4の第2部分22と第3部分23の間の折れ線L2がケース1の端壁1aの内面に略接触する程度に近接する位置とすることが望ましい。嵌合体12は、嵌合孔26に嵌合した状態で第3部分23を貫通し、その先端が第1部分21に向けて突出し、第1部分21の背面を支える。
【0029】
シート材4の第1部分21には、折れ線L1と略平行な2本の折罫線27、28が設けられている。折罫線27、28は、第1部分21を一方の面から他方の面に向けて部分的に凹ませた形状を有する。2本の折罫線27、28は、第1部分21の長手方向に互いに離間して配置されている。
図5に断面を示すように、折れ線L1に近い一方の折罫線27(第1の折罫線)は、第1部分21の幅方向に沿った直線状の一部を前面側から背面側に凹ませた形状を有し、折れ線L2から遠いもう一方の折罫線28(第2の折罫線)は、第1部分21の幅方向に沿った直線状の一部を背面側から前面側に凹ませた形状を有する。前面側から背面側に向けて凹んだ一方の折罫線27は背面側が山になる方向に折り曲げ易く、背面側から前面側に向けて凹んだもう一方の折罫線28は背面側が谷になる方向に折り曲げ易い。
【0030】
第1の折罫線27は、第1部分21の長手方向と直交する短手方向(幅方向)に直線状に延設されている。折罫線27の両端は、第1部分21の幅方向両端縁の近くで終端している。言い換えると、折罫線27の長さは第1部分21の幅よりわずかに短く、折罫線27の端部と第1部分21の幅方向の端縁との間には、折罫線が設けられていない部分がある。このように、折罫線27の両端を第1部分21の端縁まで届かない長さにすることで、シート材4の強度を保つことができる。このため、シート材4を筐体2、3に取り付ける前に、シート材4が折れ曲がることを防ぐことができ、シート材4の取り付けを容易にすることができる。
【0031】
この折罫線27は、第1部分21の長手方向において、上述した前面側の筐体2の内面2dから突設した押圧ピン6a、6bにより第1部分21が押圧される押圧位置29(
図5)と表示部24a(
図4)の間に設けられている。上述したように、背面側の筐体3の内面3dに突設した嵌合体12は前面側の筐体2に設けた窓部5に対向する位置に配置されている。また、第1部分21の折れ線L1側の端辺は、ケース1の端壁1aと略平行に配置されている第2部分22により背面側から支えられている。このため、押圧ピン6a、6bによって第1部分21を背面側に押圧すると、第1部分21が、嵌合体12により支えられた位置と第2部分22によって支えられた位置との間の折罫線27の位置で背面側に折り曲げられる。
【0032】
このとき、押圧ピン6a、6bによる押圧位置29は、第1部分21の長手方向において、折れ線L1と折罫線27との間になる。このため、押圧ピン6a、6bは、折罫線27から折れ線L1に向けて前面側に傾斜した第1部分21の外面21aを押圧することになる。押圧ピン6a、6bによる押圧位置29は、押圧による第1部分21の移動(後に詳述する)に伴い長手方向にわずかにずれる。しかし、第1部分21が移動されても、折れ線L1と折罫線27の間の第1部分21の外面21aを押圧ピン6a、6bが押圧することができる位置に折罫線27を設けた。
【0033】
第2の折罫線28は、第1部分21の長手方向と直交する幅方向に直線状に延設されている。折罫線28の両端も、上述した第1の折罫線27と同様に、第1部分21の幅方向の両端縁の近くで終端している。言い換えると、折罫線28の長さは第1部分21の幅よりわずかに短く、折罫線28の端部と第1部分21の幅方向の端縁との間には、折罫線が設けられていない部分がある。このように、折罫線28の両端を第1部分21の端縁まで届かない長さにすることで、シート材4の強度を保つことができる。このため、シート材4を筐体2、3に取り付ける前に、シート材4が折れ曲がることを防ぐことができ、シート材4の取り付けを容易にすることができる。
【0034】
この折罫線28は、シート材4の第1部分21を嵌合体12が背面側から支える位置と上述した第1の折罫線27との間に配置されている。上述した第1の折罫線27は、押圧ピン6a、6bにより第1部分21が押圧されたとき
図5で下方に折れ易く、第2の折罫線28は、上述したように、折罫線27とは反対側に折れ易い。このため、
図4に示す姿勢のシート材4を内部に収容して2つの筐体2、3を接合すると、シート材4の第1部分21は、Z状(
図6)に折れ曲がる。
【0035】
本実施の形態では、折罫線27、28を用いたが、リード罫線を用いる事も可能である。特に、シート材4が厚かったり硬かったりする場合、リード罫線を用いることが望ましい。
【0036】
本実施形態の揮散装置10において、シート材4の第1部分21の外面21aに設けた表示部24aをケース1の外側から見易くするためには、前面側の筐体2の窓部5の中心に表示部24aを配置することが望ましい。また、シート材4の第2部分22の外面22aに設けた表示部24bをケース1の外側から見易くするためには、シート材4の第2部分22の外面22aを端壁1aの内面に近付けて配置することに加えて、第2部分22の外面22aを端壁1aと平行に配置することが望ましい。
【0037】
また、シート材4の第2部分22を端壁1aと平行にして窓部25に近付けて配置することで、第2部分22を外気に触れ易くすることができ、その分、薬剤Yの揮散効率を良くすることができる。また、ケース1の色とシート材4の色が違うため、シート材4の第2部分22を端壁1aと平行にして窓部25に近付けて配置すると、窓部25を介してケース1の外側からシート材4を視認し易くなり、第2部分22の外面22aに文字や図形の印刷などが無かった場合でも、シート材4を目立ち易くすることができる。
【0038】
よって、本実施形態の揮散装置10は、装置を組み立てる際の筐体2、3の接合動作によって、表示部24aを窓部5に位置合わせし、且つ表示部24bを窓部25に位置合わせするようにした。以下、上記構造の揮散装置10の組み立て方法の一例、および本実施形態の効果について説明する。
【0039】
本実施形態の揮散装置10を組み立てる場合、まず、シート材4を背面側の筐体3の内面3dに取り付ける。このとき、シート材4の第3部分23に設けた嵌合孔26に筐体3の内面3dに突設した嵌合体12を勘合させる。これにより、第3部分23が背面側の筐体3の内面3dに対して移動不能となる。この状態で、シート材4の第1部分21の筐体3に対向した背面に、嵌合体12の先端が当接するとともに、スペーサ突起13a、13bの先端が当接し、第1部分21が背面側から支えられる。なお、この状態で、シート材4の第2部分22と第3部分23の間の折れ線L2における折り曲げ角度は、直角よりわずかに小さい鋭角にして癖をつけておくことが望ましい。
【0040】
次に、上記のようにシート材4を保持した筐体3に前面側の筐体2を接合し、揮散装置10を
図1の状態に組み立てる。このとき、筐体2の周壁2bに設けた5つの係合爪15a、15b、15c、15d、15eが、それぞれ筐体3の周壁3bに設けた5つの係合爪16a、16b、16c、16d、16eと係合する。接合する際に2つの筐体2、3を移動する方向は、筐体2、3が互いに近付く方向であり、筐体2、3の板状部分2a、3aと直交する方向である。
【0041】
前面側の筐体2を背面側の筐体3に近付けると、筐体2の内面2dに突設した2本の押圧ピン6a、6bの先端がシート材4の第1部分21に当接し、第1部分21を背面側に押し込む。このとき、第1部分21の折罫線28より図示左側の部分は嵌合体12及びスペーサ突起13a、13bにより支えられているため、背面側の筐体3に向けて移動することが抑制されている。また、第1部分21の折れ線L1側の端辺は第2部分22によって支えられているため、背面側の筐体3に向けて移動することが抑制されている。このため、嵌合体12及び第2部分22により背面側を支えた第1部分21を押圧ピン6a、6bによって押圧することになり、第1部分21が折罫線27の位置で背面側に凹むように谷状に折り曲げられ、折罫線28の位置で山状に折り曲げられる。つまり、筐体2、3を接合する動作により、
図6に実線で示すように、シート材4の第1部分21がZ状に折り曲げられる。
【0042】
上記のように、第1部分21をZ状に折り曲げる途中で、押圧ピン6a、6bによる押圧力は、折り曲げにより傾斜した第1部分21の外面21aに作用する。押圧ピン6a、6bによる押圧位置29は、折罫線27と折れ線L1の間の第1部分21の傾斜した外面21aに位置するため、押圧ピン6a、6bが押圧する第1部分21の傾斜方向、すなわちシート材4の第1部分21をケース1の端壁1aに向けて移動させる方向の力が第1部分21に加えられる。そして、シート材4の第1部分21が端壁1aの内面に向けてその長手方向に付勢される。
【0043】
これにより、第1部分21と第2部分22の間の折れ線L1が、端壁1aに近付く方向に第1部分21が移動され、折れ線L1を介して第1部分21に連続した第2部分22が端壁1aと平行な姿勢に配置される。この状態を
図6に実線で示す。このとき、端壁1aの内面にスペーサ突起を有する場合、第2部分22の外面22aがスペーサ突起の先端に当接して、第2部分22の外面22aと端壁1aの内面との間にわずかな隙間を介して第2部分22が端壁1aと平行な姿勢に配置される。
【0044】
つまり、筐体2、3の接合動作により、第1部分21を
図6に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へ移動させると、第1部分21の表示部24aが筐体2の窓部5に位置合わせされ、且つ第2部分22の表示部24bが窓部25に位置合わせされる。言い換えると、
図6に実線で示す位置にシート材4を配置した状態で、第1部分21の表示部24aが窓部5の中心に配置されるように、第1部分21の表示部24aを予め位置決めした。
【0045】
以上のように、本実施形態によると、揮散装置10の組み立てと同時にシート材4の第1部分21を所定位置に位置決め配置することができるとともに、シート材4の第2部分22を所望する姿勢に位置決めすることができ、第1部分21の表示部24aをケース1の窓部5を介して見易くすることができ、第2部分22の表示部24bをケース1の窓部25を介して見易くすることができる。これに対し、仮に、シート材4に折罫線27、28を設けずにシート材4の筐体2に対する移動方向を制御しない場合、シート材4の第1部分21が長手方向にずれを生じ、且つシート材4の第2部分22がケース1の端壁1aに対して傾斜してしまい、表示部24a、24bが見え難くなってしまう可能性がある。
【0046】
また、本実施形態によると、2つの筐体2、3を接合する動作時に、シート材4の第1部分21を端壁1aに向けてわずかに移動させるため、シート材4の第1部分21の折れ線L1と反対の長手方向の左側の端縁が筐体2、3の周壁2b、3bの間に挟まれる不具合を防止することができる。これにより、揮散装置10の組み立て時における作業性を向上させることができる。
【0047】
(変形例)
図7は、上述した実施形態の変形例に係る揮散装置10’の要部を示す概略図である。本変形例の揮散装置10’は、シート材4’が折罫線28を有していない。言い換えると、これ以外の構成は、上述した実施形態の揮散装置10と同じである。よって、ここでは、揮散装置10と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
折罫線28を有していないシート材4’を内部に収容して筐体2、3を接合すると、前面側の筐体2の内面2dに設けた押圧ピン6a、6bがシート材4’の第1部分21を背面側に押し込んだ際に、第1部分21が折形成28の部位で折り曲げられない。この場合、第1部分21の図示右端辺が折れ線L1の部位で第2部分22によって背面側から支えられており、押圧位置29より図示左側で第1部分21の背面側が嵌合体12によって支えられているため、第1部分21だけが折罫線27の位置で背面側に凹むように折り曲げられる。
【0049】
本変形例のシート材4’は、折罫線27の図示左側に折罫線28を有していないため、折罫線27の図示左側の第1部分21は、嵌合体12による支え位置と折罫線27の間で図示のように湾曲される。この状態で、押圧ピン6a、6bが当接する第1部分21は、上述した実施形態と同様に、折罫線27から折れ線L1に向けて前面側に傾斜している。このため、本変形例においても、筐体2、3の接合動作によって、シート材4’の第1部分21を端壁1aに向かう方向に付勢することができ、シート材4’を
図7に実線で示す状態に移動させることができる。
【0050】
よって、本変形例においても、第1部分21の表示部24aを窓部5の中心に位置合わせすることができ、第2部分22をケース1の端壁1aと平行に配置することができ、表示部24a、24bをケース1の外から見易くすることができる。
【0051】
以上、実施形態及びその変形例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、折れ線L1、L2でJ字状に折り曲げたシート材4、4’を用いた場合について説明したが、これに限らず、シート材4、4’はL字状に折り曲げたものであってもよく、少なくとも第1部分21と第2部分22を有するものであればよい。この場合、背面側の筐体3の内面3dには嵌合体12を設ける必要はない。
【0053】
また、上述した実施形態では、第1部分21の外面21aに表示部24aを有するとともに、第2部分2の外面22aに表示部24bを有するシート材4、4’を用いた場合について説明したが、これに限らず、第1部分21及び第2部分22の少なくとも一方に表示部を設ければよく、ケース1の窓部5、25も表示部に対応して設ければよい。
【符号の説明】
【0054】
1…ケース、 1a…端壁、 2…前面側の筐体、 3…背面側の筐体、 5…窓部、 4、4’…シート材、 6a、6b…押圧ピン、 10、10’…揮散装置、 12…嵌合体、 21…第1部分、 22…第2部分、 23…第3部分、 21a、22a…外面、 24a、24b…表示部、 25…窓部、 26…嵌合孔、 27、28…折罫線、 29…押圧位置、 L1、L2…折れ線、 Y…薬剤。