(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20231016BHJP
B60N 2/38 20060101ALI20231016BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20231016BHJP
【FI】
B60N2/06
B60N2/38
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2020060128
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 芳憲
(72)【発明者】
【氏名】西郡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中屋 隆彦
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-230750(JP,A)
【文献】特開平4-356237(JP,A)
【文献】特開2013-23039(JP,A)
【文献】特開2012-61929(JP,A)
【文献】特開昭63-82841(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2071486(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0292045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
E02F 3/00-96
E02F 9/00-28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席と、
前記運転席を支持するシート台と、
前記シート台と前記運転席との間に配置されていて前記運転席の位置を調節するスライドレールと、
を備え、
前記シート台の前記スライドレールが取り付けられるレール取付部に、前記スライドレールのレール長手方向の両端から中央に向かうにつれて前記スライドレールから離れる方向に湾曲する下向きの反りが形成され、
前記スライドレールのレール長手方向の一端側及び他端側が前記レール取付部に取り付けられていて、前記スライドレールのレール長手方向中途部と前記レール取付部との間に隙間が形成されている作業機。
【請求項2】
前記スライドレールは、前記運転席側に取り付けられるアッパレールと、前記レール取付部に取り付けられるロアレールとを有し、
前記ロアレールのレール長手方向の一端側及び他端側が前記レール取付部に取り付けられていて、前記ロアレールのレール長手方向中途部と前記レール取付部との間に
前記隙間としての第1隙間が形成されている請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記運転席が取り付けられる可動体を備え、
前記アッパレールのレール長手方向の一端側及び他端側が前記可動体の下面に取り付けられていて、前記下面と前記アッパレールのレール長手方向中途部との間に第2隙間が形成されている請求項
2に記載の作業機。
【請求項4】
前記シート台は、取付穴が形成された天板を有し、
前記レール取付部は、前記天板から上方に突出するように前記取付穴に挿入される厚板材によって形成され且つ前記厚板材が前記下向きの反りが付与された状態で前記天板に溶接固定されている請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項5】
前記レール取付部を構成する前記厚板材のレール長手方向中途部に前記下向きの反りの
調節用の貫通孔が形成されている請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記スライドレールとして、前記運転席の一側方側に配置された第1スライドレールと、前記運転席の他側方側に前記第1スライドレールに対して略平行に配置された第2スライドレールとを備えている請求項1~5のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項7】
前記スライドレールによって前記シート台に対して位置調整可能に支持された可動体と、
前記運転席を前記可動体に対して位置調整可能に支持する他のスライドレールとを備えている請求項1~6のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項8】
前記運転席の一側方に配置されて前記可動体に取り付けられた第1コンソールと、
前記運転席の他側方に配置されて前記可動体に取り付けられた第2コンソールとを備えている請求項7に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業機が知られている。
特許文献1に開示された作業機は、運転席と、該運転席を支持するシート台との間に、運転席の前後位置を調節するスライドレールが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シート台のスライドレールが取り付けられるレール取付部が、部材の加工精度のばらつきなどによって、スライドレールの前後方向の両端から中央に向かうにつれて上方に凸形状に湾曲する場合がある。この場合、前記凸形状の頂部と運転席側のスライドレールの取付部分との間でスライドレールが押圧されて該スライドレールに所謂「こじれ」が生じる箇所が発生する。このため、該こじれが発生する箇所でスライドレールのスライド荷重が大きくなって良好にスライドしないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑みて、スライドレールのスライド荷重を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機は、運転席と、前記運転席を支持するシート台と、前記シート台と前記運転席との間に配置されていて前記運転席の位置を調節するスライドレールと、を備え、前記シート台の前記スライドレールが取り付けられるレール取付部に、前記スライドレールのレール長手方向の両端から中央に向かうにつれて前記スライドレールから離れる方向に湾曲する下向きの反りが形成され、前記スライドレールのレール長手方向の一端側及び他端側が前記レール取付部に取り付けられていて、前記スライドレールのレール長手方向中途部と前記レール取付部との間に隙間が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
上記の作業機によれば、下向きの反りが形成されたレール取付部にスライドレールを取り付けた際にスライドレールとレール取付部との間に隙間を形成することができる。この隙間によって、スライドレールをスライドさせる際において、シート台側のレール取付部と、運転席側のレール取付部との間でスライドレールにかかる負荷を抑制することができる。これにより、スライドレールのスライド荷重を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】機体に運転部及び原動機を組み付けた状態の側面図である。
【
図8】レール取付部及びスライドフレームに取り付けられた状態のスライドレールを示す側面断面図である。
【
図9】第1スライドレール及び第2スライドレールの斜視図である。
【
図11】スライドレールの取付部分の背面断面図である。
【
図12】第3スライドレール及び第4スライドレールの斜視図である。
【
図13】ロアレールの取付部分の分解斜視図である。
【
図14】天板に固定された状態のレール取付部の側面視のイメージ図である。
【
図15】レール取付部にロアレールが取り付けられ、スライドフレームにアッパレールが取り付けられた状態の側面視のイメージ図である。
【
図16】レール取付部に上向きの反りがある場合のスライドレールの取付部分のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機1の全体構成を示す概略側面図である。本実施形態では、作業機1として旋回作業機であるバックホーが例示されている。
図1に示すように、作業機1は、機体(旋回台)2と、走行装置3と、作業装置4とを備えている。機体2には、オペレータ(運転者)が着座する運転席6が搭載されている。
【0010】
本実施形態においては、作業機1の運転席6に着座したオペレータの前側に向かう方向(
図1の矢印A1方向)を前方、オペレータの後側に向かう方向(
図1の矢印A2方向)を後方、
図1のK1方向を前後方向として説明する。また、オペレータの左側に向かう方向(
図1の手前側)を左方、オペレータの右側に向かう方向(
図1の奥側)を右方として説明する。
【0011】
また、前後方向K1に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の幅方向(機体幅方向)の中央部から右部、或いは、左部へ向かう方向を機体外方として説明する。つまり、機体外方は、機体2の幅方向の中心から機体幅方向に離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。つまり、機体内方は、機体幅方向において機体2の幅方向の中心に近づく方向である。
【0012】
図1に示すように、走行装置3は、走行フレーム9と、走行フレーム9の左部及び右部に設けられた走行機構10とを有する。走行機構10は、油圧モータで駆動されるクローラ式の走行機構によって構成されている。走行装置3の前部には、油圧シリンダによって上げ下げ可能なドーザ装置7が装着されている。
図1に示すように、作業装置4は、機体2の前部に設けられ、ブーム15と、アーム16と、バケット(作業具)17とを有する。ブーム15の基部は、スイングブラケット14に横軸心(機体幅方向K2に延伸する軸心)回りに回動自在(上下に揺動自在)に枢着されている。スイングブラケット14は、機体2の前部に設けられた支持ブラケット18に縦軸心(上下方向に延伸する軸心)回りに回動可能に支持されている。アーム16は、ブーム15の先端側に横軸心回りに回動自在(前後或いは上下に揺動自在)に枢着されている。バケット17は、アーム16の先端側にスクイ動作及びダンプ動作可能に設けられている。作業機1は、バケット17に代えて或いは加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(油圧アタッチメント)を装着することが可能である。この他の作業具としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等が例示できる。
【0013】
スイングブラケット14は、油圧シリンダの伸縮によって揺動する。ブーム15は、ブームシリンダC3の伸縮によって揺動する。アーム16は、アームシリンダC4の伸縮によって揺動する。バケット17は、バケットシリンダ(作業具シリンダ)C5の伸縮によってスクイ動作及びダンプ動作する。ブームシリンダC3、アームシリンダC4、バケットシリンダC5は、油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)によって構成されている。
【0014】
図1に示すように、機体2は、走行フレーム9(走行装置3)上に旋回ベアリング8を介して縦軸心回りに回転可能(左及び右に旋回可能)に支持されている。
図3に示すように、機体2は、骨格となる旋回フレーム41を有している。旋回フレーム41は、機体2の底部を構成する旋回基板42に、補強リブ43、支持ブラケット18、機体2に搭載される機器類(タンク類を含む)やその他の部品等を取り付けるためのブラケットやステー等を固定して構成されている。
【0015】
図1、
図3に示すように、機体2には、運転席6を含む運転部23が搭載されている。運転部23は、機体2の中央から一側部(左側)寄りに配置されている。
図3に示すように、機体2の前部には、機体2の床面(機体2上部の床面)を形成するフロアステップ52が設けられている。このフロアステップ52によって旋回フレーム41の前部の左側が覆われる。フロアステップ52の後部に運転部23が搭載されている。
【0016】
図3に示すように、運転部23の後方には、原動機E1を収容する原動機室E2を形成するボンネット22が設けられている。原動機E1は、例えば、ディーゼルエンジンであって、作業機1に装備された油圧モータ、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを駆動させる作動油(圧油)を吐出する油圧ポンプP1を駆動する。なお、原動機E1は、ガソリンエンジン、又は電動モータであってもよいし、エンジン及び電動モータを有するハイブリッド型であってもよい。
【0017】
ボンネット22は、原動機E1の前方(上部前方)を覆う隔壁部材(隔壁板)22Aと、原動機E1の上方及び後方を覆う開閉可能なボンネット後部22Bと、ボンネット後部22Bの上部前方側に配置された固定ボンネット22Cとを有する。ボンネット22内には、ボンネット22を支持する支持フレーム11が設けられている。この支持フレーム11は、機体2(旋回フレーム41)に立設されている。隔壁部材22Aは、原動機室E2と、原動機室E2の上部前方とを隔てる部材である。隔壁部材22Aの前方に運転席6が配置されている。つまり、隔壁部材22Aは、原動機室E2と運転席6の配置側(原動機室E2よりも運転席6側の領域)とを隔てる部材である。
【0018】
図2に示すように、運転部23は、運転席6の一側方(左の側方)に配置された左のコンソール(第1コンソール)79Lと、運転席6の他側方(右の側方)に配置された右のコンソール(第2コンソール)79Rとを有している。第1コンソール79Lには、アンロードレバー76、左の操作レバー(第1操縦部材)77L及び左のアームレスト78L等が設けられている。第2コンソール79Rには、右の操作レバー(第2操縦部材)77R、右のアームレスト78R、ドーザレバー(レバー部材)80が設けられている。運転席6は、オペレータの臀部を支持する座部6Aと、オペレータの背中を支持する背もたれ部6Bとを有する。
【0019】
アンロードレバー76は、油圧機器(例えば、作業装置4を駆動する油圧シリンダや機体2を旋回させる旋回モータ等)に対して作動油の供給が許容される状態と、油圧機器に対して作動油の供給ができなくなる状態とに切り替えるレバーである。
操作レバー77Lは、2つの操作対象を操作可能であり、例えば、機体2の旋回操作及びアーム16の揺動操作が可能である。操作レバー77Rも、2つの操作対象を操作可能であり、例えば、ブーム15の揺動操作及びバケット17の揺動操作が可能である。
【0020】
ドーザレバー80は、ドーザ装置7を操作するレバーである。
図1に示すように、運転部23の一側方(左側方)には、手すり26と外装カバー27とが設けられている。
図4、
図5に示すように、運転席6の下方には、シート台83が設けられている。シート台83は、フロアステップ52(機体2)に取り付けられている。シート台83には、第1レール装置(レール装置)84を介して可動体85が位置調節可能(前後位置調節可能)に支持されている。第1レール装置84は、複数のスライドレール84L、84Rを含む。複数のスライドレール84L、84Rは、運転席6の一側方側(左側方側)に配置された第1スライドレール(左のスライドレール)84Lと、運転席6の他側方側(右側方側)に第1スライドレール84Lと略平行に配置された第2スライドレール(右のスライドレール)84Rとを含む。可動体85には、第1コンソール79L及び第2コンソール79Rが取り付けられている。
【0021】
可動体85には、運転席6が搭載されている。詳しくは、可動体85には、第2レール装置(他のレール装置)86を介して運転席6が位置調節可能(前後位置調節可能)に支持されている。第2レール装置86は、複数のスライドレール(他のスライドレール)86L、86Rを含む。複数のスライドレール86L、86Rは、運転席6の一側方側(左側方側)に配置された第3スライドレール86Lと、運転席6の他側方側(右側方側)に第3スライドレール86Lと略平行に配置された第4スライドレール86Rとを含む。運転席6は、可動体85と共に第1レール装置84によって前後位置が調節可能である。つまり、第1レール装置84は、可動体85を介して運転席6を前後位置調節可能に支持している。
【0022】
可動体85は、シート台83に第1スライドレール84L及び第2スライドレール84Rを介して取り付けられたスライドフレーム87と、スライドフレーム87上に取り付けられたサスペンション(支持体)88とを有する。
図6、
図7に示すように、スライドフレーム87は、サスペンション88が取り付けられる第1取付部(メイン取付部)87Aと、第1取付部87Aから左方に延出する第2取付部(他方側取付部)87Lと、第1取付部87Aから右方に延出する第3取付部(一方側取付部)87Rとを有する。第2取付部87Lに第1コンソール79Lが取り付けられ、第3取付部87Rに第2コンソール79Rが取り付けられている。
【0023】
図4、
図5に示すように、サスペンション88に、第3スライドレール86L及び第4スライドレール86Rを介して運転席6が前後位置調節可能に取り付けられている。サスペンション88は、運転席6に作用するオペレータの荷重を支持すると共に、下方からの振動や衝撃が運転席6に伝わるのを緩和する緩衝装置である。また、サスペンション88は、運転席6の高さを調節する高さ調節機構を有していてもよい。
【0024】
図4に示すように、運転席6の後部には、ストッパ98が設けられている。ストッパ98の後方には、当接部材99が配置されている。当接部材99は、隔壁部材22Aの上部に設けられている。ストッパ98が当接部材99に当接することで運転席6が隔壁部材22Aに干渉する前に運転席6の後方移動を規制することができる。ストッパ98は、運転席6に前後方向K1に位置調節可能に取り付けられている。
【0025】
図5に示すように、ストッパ98は、座部6Aの後部の左方に設けられた第1ストッパ98Lと、座部6Aの後部の右方に設けられた第2ストッパ98Rとを含む。当接部材99は、第1ストッパ98Lの後方に位置する第1当接部材99Lと、第2ストッパ98Rの後方に位置する第2当接部材99Rとを含む。
図6、
図7に示すように、シート台83は、天板713と、天板713の前部を支持する前支持脚714と、天板713の後部を支持する後支持脚715とを有している。天板713は、板面を上下方向に向けて運転席6及び可動体85の下方且つフロアステップ52の上方に配置される。前支持脚714は、天板713の前端から下方に延出された前壁部714aと、前壁部714aの下端から前方に延出されていてフロアステップ52に載置され且つ取り付けられる取付壁部714bとを有する。
【0026】
図6、
図7に示すように、後支持脚715は、天板713の後部に固定された支持板716と、支持板716に固定されていてフロアステップ52に取り付けられた脚部717とを有する。支持板716は、天板713の下面に固定されている。詳しくは、支持板716は、天板713の後部下面に溶接によって固定された上壁716aと、上壁716aの後端から下方に延出された後壁716bとを有する。また、支持板716は、天板713の機体幅方向K2にわたって形成されていると共に天板713から左方に突出している。脚部717は、支持板716の左部に固定された第1脚部717Lと、支持板716の右部に固定された第2脚部717Rとを含む。第1脚部717L及び第2脚部717Rは、フロアステップ52上に載置され且つ取り付けられている。
【0027】
図8、
図9に示すように、第1スライドレール84L及び第2スライドレール84Rは、前後方向K1に長く形成されている。つまり、第1スライドレール84L及び第2スライドレール84Rは、該第1スライドレール84L及び第2スライドレール84Rのレール長手方向が前後方向K1に一致するように配置されている。第1スライドレール84L及び第2スライドレール84Rは、下部のロアレール89と、上部のアッパレール90とを有する。
【0028】
図6、
図7に示すように、ロアレール89は、シート台83に取り付けられている。アッパレール90は、ロアレール89に前後方向K1に移動可能に嵌められて支持されていると共にスライドフレーム87に取り付けられている。これにより、シート台83に対して可動体85が前後方向K1に移動可能とされている。
図8に示すように、アッパレール90の前部には、ロアレール89の前端に当接することによりロアレール89に対するアッパレール90の後方移動を規制する規制部材93が取り付けられている。
【0029】
図10に示すように、ロアレール89は、前後方向K1に間隔をあけて設けられ且つ前部から後部にわたって形成された多数の係合部91Aを有する。
図11に示すように、アッパレール90内には、係合部91Aに係合する係合部材92Aが設けられている。係合部材92Aが係合部91Aに係合している状態では、ロアレール89に対するアッパレール90の前後移動が規制(第1スライドレール84L及び第2スライドレール84Rがロック)される。
【0030】
図9に示すように、アッパレール90には、操作杆94が取り付けられている。操作杆94は、一端部94aが第1スライドレール84Lのアッパレール90に取り付けられ、他端部94bが第2スライドレール84Rのアッパレール90に取り付けられている。操作杆94は、係合部材92Aに連動しており、操作杆94を引き上げることにより、係合部材92Aが係合部91Aから離反する。これにより、ロアレール89に対するアッパレール90の前後移動が許容される。操作杆94の操作力を解除すると、操作杆94は、バネの付勢力により下方に引き下げられ、係合部材92Aが係合部91Aに係合する。
【0031】
図12に示すように、第3スライドレール86L及び第4スライドレール86Rは、前後方向K1に長く形成され、ロアレール95と、アッパレール96とを有する。
図11に示すように、ロアレール95は、サスペンション88に取り付けられている。アッパレール96は、ロアレール95に前後方向K1に移動可能に嵌められていると共に運転席6に固定されたブラケット部材6aに取り付けられている。これにより、可動体85に対して運転席6が前後方向K1に移動可能とされている。
【0032】
図10に示すように、ロアレール95は、前後方向K1に間隔をあけて設けられ且つ前部から後部にわたって形成された多数の係合部91Bを有する。
図56に示すように、アッパレール96内には、係合部91Bに係合する係合部材92Bが設けられている。係合部材92Bが係合部91Bに係合している状態では、ロアレール95に対するアッパレール96の前後移動が規制(第3スライドレール86L及び第4スライドレール86Rがロック)される。
【0033】
図12に示すように、アッパレール96には、操作杆97が取り付けられている。操作杆97は、一端部97aが第3スライドレール86Lのアッパレール96に取り付けられ、他端部97bが第4スライドレール86Rのアッパレール96に取り付けられている。操作杆97は、係合部材92Bに連動しており、操作杆97を引き上げることにより、係合部材92Bが係合部91Bから離反する。これにより、ロアレール95に対するアッパレール96の前後移動が許容される。操作杆97の操作力を解除すると、操作杆97は、バネの付勢力により下方に引き下げられ、係合部材92Bが係合部91Bに係合する。
【0034】
図6、
図7に示すように、シート台83は、天板713に設けられたレール取付部718を有している。レール取付部718に第1レール装置84のロアレール89が取り付けられている。
図5に示すように、レール取付部718は、第1スライドレール84Lが取り付けられる第1レール取付部718Lと、第2スライドレール84Rが取り付けられる第2レール取付部718Rとを含む。
【0035】
図8、
図13に示すように、レール取付部718は、前後方向K1に長い矩形の厚板材(フラットバー)で形成されている。レール取付部718の長手方向は、レール長手方向に一致する。天板713におけるレール取付部718の配置部分には、取付穴719が上下方向に貫通状に形成されている。取付穴719は、レール取付部718の平面形状と略同形で且つレール取付部718が挿入可能である。また、取付穴719は、天板713の前端側から後端側にかけて形成されている。
図7に示すように、支持板716(上壁716a)は、平面視で取付穴719と交差するように天板713の下面に固定されている。支持板716を取付穴719と交差するように天板713の下面に固定することで、取付穴719を天板713の後端近傍にまで形成することができる。
【0036】
図11に示すように、レール取付部718の板厚は、天板713の板厚よりも厚く、本実施形態では、レール取付部718の板厚は、天板713の板厚の略2倍の厚さに形成されている。レール取付部718は、下半部が取付穴719内に天板713の下面近傍にまで挿入されている。また、レール取付部718の下面は、天板713の下面よりも若干高い位置に形成されている。レール取付部718の下面を天板713の下面よりも高い位置にすることで、支持板716を天板713の下面に面接触させることができる。また、レール取付部718の上半部は、天板713から上方に突出している。レール取付部718は、溶接によって、天板713に固定されている。溶接は、レール取付部718の周囲(取付穴719の縁)に断続状に施されている。取付穴719にレール取付部718を挿入して天板713に溶接するという構造をとることにより、レール取付部718として天板713よりも厚い板厚の材料を使うことができ、運転席6及び可動体85等の重量物を支持するための強度を十分に確保することができる。
【0037】
図13に示すように、レール取付部718の長手方向の一端側(前部)及び他端側(後部)には、挿通穴720が上下方向に貫通状に形成されている。
図8に示すように、レール取付部718の下面の各挿通穴720に対応する部分にロアレール89を取り付けるための取付ナット721が固定されている。レール取付部718の長手方向の中途部(略中央部)には、レール取付部718を上下方向に貫通する貫通孔723が形成されている。
【0038】
図11に示すように、ロアレール89は、底壁89aと、底壁89aの機体外方端から立ち上がる一端側壁89bと、底壁89aの機体内方端から立ち上がる他端側壁89cと、一端側壁89bの上端から機体外方に延出する一端延出壁89dと、他端側壁89cの上端から機体内方に延出する他端延出壁89eとを有する。一端延出壁89d及び他端延出壁89eに係合部91Aが形成されている。アッパレール90は、上壁90aと、上壁90aの機体外方端から下方に延出された第1側壁90bと、第1側壁90bの下端から機体内方に延出された第1延出壁90cと、第1延出壁90cの機体内方端から上方に延出されて一端延出壁89dに当接する第1上方延出壁90dと、上壁90aの機体内方端から下方に延出された第2側壁90eと、第2側壁90eの下端から機体外方に延出された第2延出壁90fと、第2延出壁90fの機体外方端から上方に延出されて他端延出壁89eに当接する第2上方延出壁90gとを有している。
【0039】
図8に示すように、ロアレール89は、レール取付部718の上面(レール取付面)718aに載置されて、レール長手方向の一端側(前部)及び他端側(後部)が取付ボルト722によって取り付けられる。詳しくは、ロアレール89は、底壁89a及び挿通穴720に取付ボルト722を上方から貫通し且つ該取付ボルト722を取付ナット721にねじ込むことにより、レール取付部718に取り付けられている。本実施形態では、ロアレール89は、前部が一カ所、後部が二カ所、取付ボルト722及び取付ナット721によってレール取付部718に固定されている。取付ボルト722及び取付ナット721は、ロアレール89をレール取付部718に固定する固定具を構成している。
【0040】
図8に示すように、アッパレール90は、スライドフレーム87の下面87a(可動体85の下面)に取り付けられている。アッパレール90は、レール長手方向の一端側(前部)及び他端側(後部)が取付ボルト724及び取付ナット725によってスライドフレーム87に取り付けられる。詳しくは、取付ナット725は、スライドフレーム87の上面のアッパレール90の前部及び後部に対応する位置に固定されている。取付ボルト724は、アッパレール90の上壁90a及びスライドフレーム87を貫通して取付ナット725にねじ込まれている。本実施形態では、アッパレール90は、前部が二カ所、後部が一カ所、取付ボルト724及び取付ナット725によってスライドフレーム87に固定されている。取付ボルト724及び取付ナット725は、アッパレール90をスライドフレーム87(可動体85)に取り付ける固定具を構成している。
【0041】
図14は、天板713に固定されたレール取付部718の側面視のイメージ図を示している。
図14に示すように、レール取付部718には、「下向きの反りD1」が形成されている。この下向きの反りD1は、レール取付部718の長手方向(第1スライドレール84L、第2スライドレール84Rのレール長手方向)の両端部718b、718cから中央に向かうにつれてスライドレール(第1スライドレール84L、第2スライドレール84R)から離れる方向(下方)に湾曲する反りである。
【0042】
本実施形態では、「下向きの反りD1」の大きさは、例えば、0.1mm~1mmであり、好ましくは、0.5mm~1mmである。「下向きの反りD1」の大きさとは、
図14に示すように、レール取付部718の長手方向の一端部718bと他端部718cとの上端同士を結ぶ直線R1と、レール取付部718の上面(レール取付面)718aとの間を測った最大距離である。
【0043】
下向きの反りD1は、レール取付部718を天板713に溶接固定する際に該レール取付部718に付与され、レール取付部718は、下向きの反りD1が形成された状態で天板713に固定される。詳しくは、先ず、レール取付部718を取付穴719に挿入した状態で、レール取付部718の長手方向の両端718b、718c側をジグで固定する。次に、レール取付部718の両端部をジグで固定した状態で該レール取付部718の長手方向の中央部に下向きの力を付与してレール取付部718に下向きの反りD1を形成する。そして、この下向きの反りD1を形成した状態でレール取付部718を天板713に溶接固定する。レール取付部718の長手方向の中央部に下向きの力を付与する方法としては、レール取付部718の長手方向の中央部を押圧する方法、レール取付部718の長手方向の中央部を引っ張り下げる方法が考えられる。例えば、レール取付部718の長手方向の略中央部に形成した貫通孔723にボルトを挿通すると共に該ボルトをジグ等に固定し、且つ該ボルトに上方からナットをねじ込む。そして、このナットを締め付けて該ナットによってレール取付部718を上方から押圧することにより、レール取付部718に下向きの反りD1を形成することができる。レール取付部718を押圧するナットの締め付け力を調節(ボルトに対するナットの位置を調節)することにより、下向きの反りD1の大きさを調節することができる。つまり、レール取付部718の長手方向中央部に形成された貫通孔723は、レール取付部718に下向きの反りD1を付与するための孔であり、且つ下向きの反りD1の調節用の孔である。
【0044】
図15は、レール取付部718にロアレール89が取り付けられ、スライドフレーム87にアッパレール90が取り付けられた状態の側面視のイメージ図を示している。
図15に示すように、ロアレール89は、レール取付部718に取付ボルト722及び取付ナット721によって固定されるので、下向きの反りD1に沿って下側に歪む。しかしながら、ロアレール89は、レール取付部718にレール長手方向の一端側及び他端側が固定されていて、レール長手方向の中央側が固定されていないので、ロアレール89のレール長手方向中途部とレール取付部718との間に隙間(第1隙間)S1が形成される。また、アッパレール90は、スライドフレーム87にレール長手方向の一端側及び他端側が固定されていて、レール長手方向の中央側が固定されていないので、アッパレール90の中央側は下側に歪むことができる。これにより、アッパレール90のレール長手方向中途部とスライドフレーム87との間に隙間(第2隙間)S2が形成される。
【0045】
ところで、
図16に示すように、レール取付部718(レール取付面718a)には、加工精度のばらつきなどによって、長手方向(第1スライドレール84L、第2スライドレール84Rのレール長手方向)の両端部から中央に向かうにつれて上方に凸形状に湾曲する「上向きの反りD2」が形成される場合がある。
図16は、レール取付部718に上向きの反りD2がある場合のスライドレールの取付部分のイメージ図を示している。
【0046】
この場合、ロアレール89は、レール取付部718に取り付けられる為、レール取付部718の上面に沿って上側に歪む。一方、アッパレール90は、スライドフレーム87に取り付けられる為、上側に歪めない。この場合、ロアレール89に対してアッパレール90が前後方向に摺動して、アッパレール90のレール長手方向の中央部がロアレール89のレール長手方向の中央部に一致するところで、レール取付部718の上向きの反りD2の頂部と、スライドフレーム87との間でスライドレールが押圧されてスライド荷重が大きくなって良好にスライドしないという問題が生じる。スライド荷重とは、アッパレール90がロアレール89に対してスライド(前後方向K1に摺動)する際に、アッパレール90とロアレール89との間に生じる摺動抵抗である。
【0047】
これに対して、本実施形態では、スライドレール84L、84R(ロアレール89)のレール長手方向中途部とレール取付部718との間に第1隙間S1があり、スライドレール84L、84R(アッパレール90)のレール長手方向中途部とスライドフレーム87との間に第2隙間S2があるので、レール取付部718とスライドフレーム87との間でスライドレール84L、84Rにかかる負荷を抑制することができる。これにより、スライドレール84L、84Rのスライド荷重を小さくすることができる。
【0048】
例えば、レール取付部718に1mm程度の上向きの反りD2があると、20Kgfくらいのスライド荷重(操作荷重)がかかるが、レール取付部718に0.1mmくらいの下向きの反りD1があるだけで、4Kgfくらいのスライド荷重(操作荷重)でスライドレール84L、84Rがスムーズにスライドする。
また、本実施形態では、ロアレール89とアッパレール90との形状を同形状にすることができ、これにより、スライドレール84L、84Rのスライド荷重が要求値を満足することができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、シート台83側のレール取付部718と、運転席6側のレール取付部であるスライドフレーム87との間でスライドレール84L、84Rにかかる負荷を抑制するのに、少なくとも隙間S1があればよい。
また、スライドレール84L、84Rのスライド荷重を小さくする方法として、スライドレール84L、84Rが取り付けられる取付面をフライス加工することにより該取付面の平面度を出す方法があるが、そうすると、時間と費用が増大する。本実施形態では、スライドレール84L、84Rが取り付けられる取付面にフライス加工をしないでスライドレール84L、84Rのスライド荷重を小さくすることができる。
【0050】
上記作業機1は、運転席6と、運転席6を支持するシート台83と、シート台83と運転席6との間に配置されていて運転席6の位置を調節するスライドレール(第1スライドレール84L、第2スライドレール84R)と、を備え、シート台83のスライドレール84L、84Rが取り付けられるレール取付部718に、スライドレール84L、84Rのレール長手方向の両端から中央に向かうにつれてスライドレール84L、84Rから離れる方向に湾曲する下向きの反りD1が形成されている。
【0051】
この構成によれば、下向きの反りD1が形成されたレール取付部718にスライドレール84L、84Rを取り付けた際にスライドレール84L、84Rとレール取付部718との間に隙間を形成することができる。この隙間によって、スライドレール84L、84Rをスライドさせる際において、シート台83側のレール取付部718と、運転席6側のレール取付部との間でスライドレール84L、84Rにかかる負荷を抑制することができる。これにより、スライドレール84L、84Rのスライド荷重を小さくすることができる。
【0052】
また、スライドレール84L、84Rは、運転席6側に取り付けられるアッパレール90と、レール取付部718に取り付けられるロアレール89とを有し、ロアレール89のレール長手方向の一端側及び他端側がレール取付部718に取り付けられていて、ロアレール89のレール長手方向中途部とレール取付部718との間に第1隙間S1が形成されている。
【0053】
この構成によれば、第1隙間S1によってシート台83側のレール取付部718と、運転席6側のレール取付部との間でスライドレール84L、84Rにかかる負荷を抑制することができる。
また、運転席6が取り付けられる可動体85を備え、アッパレール90のレール長手方向の一端側及び他端側が可動体85の下面87aに取り付けられていて、該下面87aとアッパレール90のレール長手方向中途部との間に第2隙間S2が形成されている。
【0054】
この構成によれば、スライドレール84L、84Rとレール取付部718との間に形成される隙間及び第2隙間S2によって、シート台83側のレール取付部718と、可動体85の下面87aとの間でスライドレール84L、84Rにかかる負荷を抑制することができる。
また、シート台83は、取付穴719が形成された天板713を有し、レール取付部718は、天板713から上方に突出するように取付穴719に挿入される厚板材によって形成され且つ厚板材が下向きの反りD1が付与された状態で天板713に溶接固定されている。
【0055】
この構成によれば、レール取付部718として天板713よりも厚い板厚の材料を使うことができ、運転席6及び可動体85等の重量物を支持するための強度を十分に確保することができる。
また、レール取付部718を構成する厚板材のレール長手方向中途部に下向きの反りD1の調節用の貫通孔723が形成されている。
【0056】
この構成によれば、下向きの反りD1の大きさを調節することができる。
また、スライドレールとして、運転席6の一側方側に配置された第1スライドレール84Lと、運転席6の他側方側に第1スライドレール84Lに対して略平行に配置された第2スライドレール84Rとを備えていてもよい。
また、スライドレール84L、84Rによってシート台83に対して位置調整可能に支持された可動体85と、運転席6を可動体85に対して位置調整可能に支持する他のスライドレールとを備えている。
【0057】
この構成によれば、運転席6が搭載された可動体85の位置調節をするスライドレール84L、84Rと、可動体85に対して運転席6の位置調節をする他のスライドレール86L、86Lとを備えた運転部23における可動体85のスライド荷重を小さくすることができる。
また、運転席6の一側方に配置されて可動体85に取り付けられた第1コンソール79Lと、運転席6の他側方に配置されて可動体85に取り付けられた第2コンソール79Rとを備えている。
【0058】
この構成によれば、運転席6、第1コンソール79L及び第2コンソール79Rが搭載された可動体85のスライド荷重を小さくすることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
6 運転席
79L 第1コンソール
79R 第2コンソール
83 シート台
84L スライドレール(第1スライドレール)
84R スライドレール(第2スライドレール)
85 可動体
86L 他のスライドレール(第3スライドレール)
86R 他のスライドレール(第4スライドレール)
87a 下面
89 ロアレール
90 アッパレール
713 天板
718 レール取付部
719 取付穴
723 貫通孔
D1 下向きの反り
S1 第1隙間
S2 第2隙間