(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
E04F13/08 E
(21)【出願番号】P 2020062751
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和則
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190020(JP,A)
【文献】特開2017-172208(JP,A)
【文献】特開2013-167119(JP,A)
【文献】特表2013-529731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0260058(US,A1)
【文献】特開2015-140594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠面と、当該意匠面とは反対側の裏面とを有し、且つ当該意匠面および裏面の間に厚さを有する、建築板であって、
前記意匠面は、
第1方向に延びる少なくとも一本の目地溝と、
前記第1方向と交差する第2方向に前記目地溝を介して並列し、且つ前記第1方向にそれぞれが延びる、複数の柄部とを有し、
前記柄部は、前記第2方向に互いに離隔し且つ前記第1方向にそれぞれが延びる一対の頂面を有し、
前記複数の柄部は、ねじれ柄部を含み、
前記ねじれ柄部は、前記第2方向における前記一対の頂面の間に、前記第1方向に延びるねじれ面を有し、
前記ねじれ面は、前記厚さの方向において前記頂面から前記裏面側の位置にあり、且つ、前記厚さの方向と前記第2方向とに広がる断面における法線方向が、前記第1方向にわたって漸変する、建築板。
【請求項2】
前記第2方向における前記頂面の長さは、前記第1方向にわたって漸変する、請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記ねじれ柄部は、ねじれ柄傾斜面を含み、
前記ねじれ柄傾斜面は、前記一対の頂面における一方の頂面から、他方の頂面の側において前記裏面に向かって下り、且つ前記第1方向に延びる、請求項1または2に記載の建築板。
【請求項4】
前記ねじれ柄部にて、前記厚さの方向と前記第2方向とに広がる断面における、前記頂面と当該頂面から下る前記ねじれ柄傾斜面との間の開き角度は、前記第1方向にわたって漸変する、請求項3に記載の建築板。
【請求項5】
前記ねじれ面は、前記第2方向における両端縁のそれぞれにおいて、前記ねじれ柄傾斜面と繋がる箇所と、前記頂面と繋がる箇所とを含む、請求項3または4に記載の建築板。
【請求項6】
前記複数の柄部は、第1のくぼみ柄傾斜面と第2のくぼみ柄傾斜面とを有するくぼみ柄部を含み、
前記第1のくぼみ柄傾斜面は、前記一対の頂面における一方の頂面から、他方の頂面の側において前記裏面に向かって下り、
前記第2のくぼみ柄傾斜面は、前記他方の頂面から、前記一方の頂面の側において前記裏面に向かって下り、且つ前記第1のくぼみ柄傾斜面と繋がる、請求項1から5のいずれか一つに記載の建築板。
【請求項7】
前記くぼみ柄部は、前記第1のくぼみ柄傾斜面と前記第2のくぼみ柄傾斜面との間に、前記第2方向に対して非垂直な境界線を有する、請求項6に記載の建築板。
【請求項8】
前記くぼみ柄部にて、前記厚さの方向と前記第2方向とに広がる断面における、前記頂面と当該頂面から下る前記くぼみ柄傾斜面との間の開き角度は、前記第1方向にわたって漸変する、請求項6または7に記載の建築板。
【請求項9】
前記第2方向において、前記柄部は前記目地溝よりも長い、請求項1から8のいずれか一つに記載の建築板。
【請求項10】
前記柄部は、前記一対の頂面における一方の頂面から、他方の頂面とは反対側において前記裏面に向かって下る傾斜端面を有し、
前記厚さの方向と前記第2方向とに広がる断面における、前記頂面と当該頂面から下る前記傾斜端面との間の開き角度は、当該頂面から下る前記ねじれ柄傾斜面と当該頂面との間の開き角度よりも小さい、請求項3から5のいずれか一つに記載の建築板。
【請求項11】
前記柄部は、前記一対の頂面における一方の頂面から、他方の頂面とは反対側において前記裏面に向かって下る傾斜端面を有し、
前記厚さの方向と前記第2方向とに広がる断面における、前記頂面と当該頂面から下る前記傾斜端面との間の開き角度は、当該頂面から下る前記くぼみ柄傾斜面と当該頂面との間の開き角度よりも小さい、請求項6から8のいずれか一つに記載の建築板。
【請求項12】
前記複数の柄部における複数の頂面は、同一仮想平面上に位置する、請求項1から11のいずれか一つに記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装仕上げや内装仕上げに用いることのできる建築用の板材すなわち建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の例えば外壁部や内壁部を構成するための建築用板材として、例えば、窯業系サイディングボード、スラグ石膏ボードや金属サイディングボード等の無機質板、パーティクルボード等の繊維板、および樹脂板が用いられることがある。建築板を用いての壁部の施工にあたっては、複数枚の建築板が上下方向や左右方向に継ぎ合わされる。このような建築板は、意匠性を高めるための種々の凹凸形状を伴う意匠面を有する形状で、製造されることが多い。建築板の意匠面としては、ボーダー調模様の意匠面や、レンガ調模様の意匠面、石積み調模様の意匠面などがある。意匠面を有する建築板に関する技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築板の保管時や運搬時などには、複数の建築板がその厚さ方向に積み重ねられる場合がある。例えば、複数の建築板は、隣り合う建築板間では意匠面どうし又は裏面どうしが相対する態様で、積み重ねられる。しかしながら、建築板が積み重ねられる場合、建築板意匠面の凹凸形状に含まれる凸部が隣接建築板との接触に起因して破損することがある。建築板の積み重ね作業時等には、例えば、建築板意匠面が隣接建築板と擦れることにより、当該意匠面における凸部が破損することがある。
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであり、陰影の変化に富む意匠を実現するとともに積み重ね時における当該意匠の損傷を抑制するのに適した建築板を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供される建築板は、意匠面と、当該意匠面とは反対側の裏面とを有し、且つ、当該意匠面および裏面の間に厚さを有する。意匠面は、第1方向にそれぞれが延びる複数の柄部と、第1方向に延びる少なくとも一本の目地溝とを有する。複数の柄部は、第1方向と交差する第2方向に、目地溝を介して並列する。各柄部は、一対の頂面を有する。一対の頂面は、第2方向に互いに離隔し、且つ、第1方向にそれぞれが延びる。また、複数の柄部は、ねじれ柄部を含む。ねじれ柄部は、第2方向における一対の頂面の間に、第1方向に延びるねじれ面を有する。ねじれ面は、上記厚さの方向において頂面から裏面側の位置にあり、且つ、上記厚さの方向と第2方向とに広がる断面における法線方向が、第1方向にわたって漸変する。
【0007】
本建築板では、上記のように、意匠面における複数の柄部(それぞれ第1方向に延びる)にはねじれ柄部が含まれ、当該ねじれ柄部は、一対の頂面と、当該頂面間のねじれ面とを有する。ねじれ面は、上記のように、建築板厚さ方向と第2方向とに広がる断面における法線方向が第1方向にわたって漸変(漸次的に変化)している。すなわち、ねじれ面は、緩やかに捩れて滑らかな起伏を有する。このようなねじれ面は、その緩やかな捩れによ
り、第1方向にわたって濃淡が緩やかに変化する柔らかい陰影を表現するのに適する。
【0008】
また、ねじれ柄部では、このようなねじれ面が、上記のように、第2方向における一対の頂面の間にて、建築板厚さ方向において頂面から裏面側の位置にある。このような構成は、両頂面とねじれ面との建築板厚さ方向の高低差が第1方向にわたって漸次的に変化する構成を実現するのに適し、従って、ねじれ面と各頂面との各境界部において、第1方向にわたって濃淡が変化する陰影を表現するのに役立つ。
【0009】
本建築板では、意匠面において第1方向に延び且つ第2方向に目地溝を介して並列する複数の柄部が以上のようなねじれ柄部を含む。このような本建築板は、その意匠面において、陰影の変化に富む意匠を実現するのに適する。
【0010】
加えて、本建築板では、上記のように、意匠面において第1方向に延び且つ第2方向に目地溝を介して並列する複数の柄部のそれぞれが、第2方向に互いに離隔して第1方向に延びる一対の頂面を有する。各柄部にて、頂面は、建築板厚さ方向における裏面からの高さが最も高く、頂面以外の他の部位は、建築板厚さ方向において、頂面から裏面側の位置にある(ねじれ柄部では、ねじれ面は、頂面から裏面側の位置にある)。このような構成は、本建築板の複数枚が積み重ねられる場合に、各柄部において頂面間に形成されている凹凸形状が、隣接建築板と接触するのを回避するのに役立ち、従って、当該凹凸形状を含んで表現される意匠の損傷を抑制するのに適する。
【0011】
以上のように、本建築板は、陰影の変化に富む意匠を実現するとともに、積み重ね時における当該意匠の損傷を抑制するのに適する。
【0012】
第2方向における柄部の頂面の長さは、好ましくは、第1方向にわたって漸変する。このような構成は、本建築板における柄部、ひいては意匠面に、陰影の変化を付与するのに適する。
【0013】
ねじれ柄部は、好ましくは、ねじれ柄傾斜面を含む。ねじれ柄傾斜面は、一対の頂面における一方の頂面から、他方の頂面の側において裏面に向かって下り、且つ、第1方向に延びる。ねじれ柄部では、好ましくは、上記厚さの方向と第2方向とに広がる断面における、頂面と当該頂面から下るねじれ柄傾斜面との間の開き角度は、第1方向にわたって漸変する。また、ねじれ面は、好ましくは、第2方向における両端縁のそれぞれにおいて、ねじれ柄傾斜面と繋がる箇所と、頂面と繋がる箇所とを含む。これら構成は、本建築板におけるねじれ柄部、ひいては意匠面に、陰影の変化を付与するのに役立つ。
【0014】
複数の柄部は、好ましくは、くぼみ柄部を含む。くぼみ柄部は、第1のくぼみ柄傾斜面と第2のくぼみ柄傾斜面とを有する。第1のくぼみ柄傾斜面は、一対の頂面における一方の頂面から、他方の頂面の側において裏面に向かって下る。第2のくぼみ柄傾斜面は、他方の頂面から、一方の頂面の側において裏面に向かって下り、且つ、第1のくぼみ柄傾斜面と繋がる。くぼみ柄部は、好ましくは、第1のくぼみ柄傾斜面と第2のくぼみ柄傾斜面との間に、第2方向に対して非垂直な境界線を有する。くぼみ柄部では、好ましくは、上記厚さの方向と第2方向とに広がる断面における、頂面と当該頂面から下るくぼみ柄傾斜面との間の開き角度は、第1方向にわたって漸変する。
【0015】
このようなくぼみ柄部によると、上述のねじれ柄部とは異なる陰影を表現することが可能である。本建築板における複数の柄部が上述のねじれ柄部と共にくぼみ柄部含むという構成は、本建築板の意匠性を高めるのに役立つ。
【0016】
好ましくは、第2方向において、柄部は目地溝よりも長い。このような構成は、意匠面
において、柄部を目立たたせるのに役立ち、従って意匠性を確保するのに適する。
【0017】
柄部は、好ましくは、傾斜端面を有する。傾斜端面は、一対の頂面における一方の頂面から、他方の頂面とは反対側において裏面に向かって下る。上記厚さの方向と第2方向とに広がる断面における、頂面と当該頂面から下る傾斜端面との間の開き角度は、当該頂面から下るねじれ柄傾斜面と当該頂面との間の開き角度よりも小さい。或いは、上記厚さの方向と第2方向とに広がる断面における、頂面と当該頂面から下る傾斜端面との間の開き角度は、当該頂面から下るくぼみ柄傾斜面と当該頂面との間の開き角度よりも小さい。これら構成は、意匠面において各柄部の輪郭を強調するうえで好ましい。
【0018】
複数の柄部における複数の頂面は、好ましくは、同一仮想平面上に位置する。このような構成は、複数枚の本建築板をその厚さ方向に安定して積み重ねるのに適する。また、当該構成は、複数枚の本建築板が積み重ねられる場合に、各柄部において頂面間に形成されている凹凸形状が、隣接建築板と接触するのを回避するのに役立ち、従って、当該凹凸形状を含んで表現される意匠の損傷を抑制するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る建築板の平面図である。
【
図2】
図1に示す建築板のII-II断面図である。
【
図3】
図1に示す建築板のIII-III断面図(一部省略断面図)である。
【
図6】ねじれ柄部における複数箇所での横断面を表す。
【
図7】くぼみ柄部における複数箇所での横断面を表す。
【
図8】第1の実施形態に係る複数枚の建築板による壁部施工構造の平面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る建築板の平面図である。
【
図10】第2の実施形態に係る複数枚の建築板による壁部施工構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図3は、本発明の第1の実施形態に係る建築板X1を表す。
図1は、建築板X1の平面図であり、
図2は、
図1に示す建築板X1のII-II断面図である。
図3は、
図1
に示す建築板X1のIII-III断面図(一部省略断面図)である。
【0021】
建築板X1は、意匠面Sと、当該意匠面Sとは反対側の裏面Bとを有し、且つ、意匠面Sおよび裏面Bの間に厚さを有する。建築板X1は、建築物の外壁部や内壁部を構成するための建築用板材であり、壁部の施工にあたって複数枚の建築板X1が上下方向(縦方向)や左右方向(横方向)に継ぎ合わされるものである。
【0022】
建築板X1の意匠面Sは、
図1に示すように、第1方向D1に延びる一対の縁端E1,
E2と、第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる一対の縁端E3,E4とによって
、外郭形状が規定されている。第1方向D1と第2方向D2とは、本実施形態では直交する。
【0023】
建築板X1の意匠面Sについて、第1方向D1の寸法は例えば910~3030mmであり、第2方向D2の寸法は例えば160~910mmである。建築板X1の厚さ、即ち、意匠面Sと裏面Bとの間における例えば
図2に示す厚さ方向Tの寸法は、例えば14~26mmである。また、建築板X1は、例えば、窯業系サイディングボード、スラグ石膏ボードや金属サイディングボード等の無機質板、パーティクルボード等の繊維板、または樹脂板である。
【0024】
建築板X1の意匠面Sは、複数の柄部10と、少なくとも一本の目地溝20とを有する(意匠面Sが複数の目地溝20を有する場合を例示的に図示する)。柄部10および目地溝20は、第1方向D1に延びる。複数の柄部10は、第2方向D2に目地溝20を介して並列している。
【0025】
複数の柄部10は、本実施形態では、ねじれ柄部10Aと、くぼみ柄部10Bとを含む。第2方向D2における柄部10の長さ、即ち、柄部10の幅は、例えば30~450mm、好ましくは30~50mmである。本実施形態では、第2方向D2において、柄部10は目地溝20よりも長い。
【0026】
ねじれ柄部10Aは、
図4および
図5に示すように、一対の頂面11と、ねじれ面12と、ねじれ柄傾斜面13と、傾斜端面14とを有する(図の明確化の観点から、
図1および
図4では、ねじれ柄部10Aの各頂面11と後述のくぼみ柄部10Bの各頂面11とについて、ハッチングを付して表す)。
【0027】
一対の頂面11は、第2方向D2に互いに離隔し、且つ、第1方向D1にそれぞれが延びる。柄部10にて、頂面11は、厚さ方向Tにおける裏面Bからの高さが最も高く、頂面11以外の他の部位は、厚さ方向Tにおいて、頂面11から裏面B側の位置にある。また、第2方向D2における頂面11の長さ、即ち、頂面11の幅は、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。頂面11の幅は、例えば5~50mmの範囲内にあり、好ましくは5~15mmの範囲内にある。
【0028】
本実施形態では、頂面11は、平坦であり、裏面Bに対して平行である。頂面11が平坦であり且つ裏面Bに対して平行であるという構成は、複数枚の建築板X1をその厚さ方向Tに安定して積み重ねるのに適する。
【0029】
ねじれ面12は、第2方向D2において一対の頂面11の間に位置して第1方向D1に延びる。ねじれ面12は、
図2および
図5に示すように、厚さ方向Tにおいて、頂面11から裏面B側の位置にある。
【0030】
また、ねじれ面12は、厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における法線方向Nが、例えば
図6(a)、
図6(b)および
図6(c)をもって示すように、第1方向D1にわたって漸変している。
図6(a)、
図6(b)および
図6(c)は、それぞれ、ねじれ柄部10Aにおける所定箇所での横断面(厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面)を表す。ねじれ面12の法線方向Nは、
図6(a)に示す箇所と
図6(b)に示す箇所との間で連続的に変化し、また、
図6(b)に示す箇所と
図6(c)に示す箇所との間で連続的に変化している。ねじれ面12の法線方向Nの、第1方向D1にわたっての変化幅(方向の角度差の最大値)は例えば20~160度である。
【0031】
ねじれ柄傾斜面13は、ねじれ柄部10Aにおいて、頂面11とねじれ面12との間で傾斜している面である。ねじれ柄傾斜面13は、具体的には、一対の頂面11における一方の頂面11から、他方の頂面11の側において裏面Bに向かって下り、ねじれ面12に至る。これとともに、ねじれ柄傾斜面13は第1方向D1に延びている。また、第2方向D2におけるねじれ柄傾斜面13の長さ、即ち、ねじれ柄傾斜面13の幅は、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。上述のねじれ面12は、第2方向D2における両端縁のそれぞれにおいて、ねじれ柄傾斜面13と繋がる箇所と、頂面11と繋がる箇所とを含む。
【0032】
厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下る
ねじれ柄傾斜面13との間の開き角度θ
1(
図6(a)に示す)は、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。開き角度θ
1は、例えば110~179度の範囲内にある。
【0033】
傾斜端面14は、第2方向D2におけるねじれ柄部10Aの端部で傾斜している面である。傾斜端面14は、具体的には、一対の頂面11における一方の頂面11から、他方の頂面11とは反対側(即ち目地溝20側)において裏面Bに向かって下る。これとともに、傾斜端面14は第1方向D1に延びている。
【0034】
厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下る傾斜端面14との間の開き角度θ
2(
図6(b)に示す)は、例えば110~150度であり、好ましくは、同一頂面11から下るねじれ柄傾斜面13と当該頂面11との間の開き角度θ
1よりも、小さい。
【0035】
くぼみ柄部10Bは、
図4および
図5に示すように、一対の頂面11と、傾斜端面14と、第1のくぼみ柄傾斜面15Aと、第2のくぼみ柄傾斜面15Bとを有する。くぼみ柄部10Bの頂面11および傾斜端面14は、ねじれ柄部10Aの頂面11および傾斜端面14と同様の構成を有する。
【0036】
くぼみ柄部10Bにおいて、くぼみ柄傾斜面15A(第1のくぼみ柄傾斜面)は、一対の頂面11における一方の頂面11から、他方の頂面11の側において裏面Bに向かって下る。くぼみ柄傾斜面15B(第2のくぼみ柄傾斜面)は、他方の頂面11から、一方の頂面11の側において裏面Bに向かって下る。くぼみ柄傾斜面15A,15Bは、互いに
繋がり、境界線16をなす。すなわち、くぼみ柄部10Bは、くぼみ柄傾斜面15A,1
5B間に境界線16を有する。境界線16は、好ましくは、第2方向D2に対して非垂直である。
【0037】
くぼみ柄部10Bでは、厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下るくぼみ柄傾斜面15Aとの間の開き角度θ
3(
図7(b)に示す)は、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。
図7(a)、
図7(b)および
図7(c)は、それぞれ、くぼみ柄部10Bにおける所定箇所での横断面(厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面)を表す。開き角度θ
3は、例えば110~179度の範囲内にある。
【0038】
くぼみ柄部10Bでは、厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下るくぼみ柄傾斜面15Bとの間の開き角度θ
4(
図7(b)に示す)は、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。開き角度θ
4は、例えば110~179度の範囲内にある。
【0039】
くぼみ柄部10Bでは、厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下る傾斜端面14との間の開き角度θ
2(
図7(b)に示す)は、例えば110~150度であり、好ましくは、同一頂面11から下るくぼみ柄傾斜面15A(又は、くぼみ柄傾斜面15B)と当該頂面11との間の開き角度θ
3(又は、開き角度θ
4)よりも、小さい。
【0040】
意匠面Sにおける目地溝20は、柄部10間に位置する。すなわち、目地溝20は、ねじれ柄部10A間、くぼみ柄部10B間、または、ねじれ柄部10Aとくぼみ柄部10Bとの間に位置する。第2方向D2における目地溝20の長さ、即ち、目地溝20の幅は、例えば1~20mmである。目地溝20の幅は、好ましくは、第1方向D1にわたって同一である。
【0041】
複数の柄部10(ねじれ柄部10A,くぼみ柄部10B)における複数の頂面11は、本実施形態では、同一仮想平面上に位置する。裏面Bから頂面11までの長さ、即ち、裏面Bに対する頂面11の高さ(上述の建築板厚さ寸法に相当)は、例えば14~26mmである。
【0042】
図2に示すように、本実施形態では、建築板X1は、縁端E1とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための表側接合部31を有し、且つ、縁端E2とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための裏側接合部32を有する。これら表側接合部31および裏側接合部32には、相決り継ぎ合わせにおける部材間の隙間を埋めるためのシーリング部(図示略)が設けられてもよい。二枚の建築板X1は、それらの縁端E1,E2を介して継ぎ合
わせることができる。具体的には、一方の建築板X1の縁端E1側と、他方の建築板X1の縁端E2側とを、相決りによって継ぎ合わせることができる。
【0043】
図3に示すように、本実施形態では、建築板X1は、縁端E3とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための表側接合部33を有し、且つ、縁端E4とその近傍において、相決り継ぎ合わせのための裏側接合部34を有する。これら表側接合部33および裏側接合部34には、相決り継ぎ合わせにおける部材間の隙間を埋めるためのシーリング部(図示略)が設けられてもよい。二枚の建築板X1は、それらの縁端E3,E4を介して継ぎ合
わせることができる。具体的には、一方の建築板X1の縁端E3側と、他方の建築板X1の縁端E4側とを、相決りによって継ぎ合わせることができる。
【0044】
以上のような構成を備える建築板X1を用いての壁部の施工にあたっては、複数枚の建築板X1が上下方向(縦方向)や左右方向(横方向)に継ぎ合わされる。具体的には、複数の建築板X1を、それらの第2方向D2における端部(縁端E1,E2)どうしを例え
ば上下方向に継ぎ合わせて連ね、且つ、複数の建築板X1を、それらの第1方向D1における端部(縁端E3,E4)どうしを例えば左右方向に継ぎ合わせて連ねる。
【0045】
図8は、複数の建築板X1による壁部施工構造の一例を表す。
図8に示す壁部施工構造例では、各列二枚の建築板X1がそれらの縁端E1,E2を介して上下方向(第2方向D
2)に継ぎ合わされて連ねられ、且つ、各行二枚の建築板X1がそれらの縁端E3,E4
を介して左右方向(第1方向D1)に継ぎ合わされて連ねられている。
【0046】
建築板X1では、上述のように、意匠面Sにおける複数の柄部10(それぞれ第1方向D1に延びる)がねじれ柄部10Aを含み、ねじれ柄部10Aは、一対の頂面11と、当該頂面11間のねじれ面12とを有する。ねじれ面12は、上述のように、建築板X1の厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における法線方向Nが、第1方向D1にわたって漸次的に変化している。すなわち、ねじれ面12は、緩やかに捩れて滑らかな起伏を有する。このようなねじれ面12は、その緩やかな捩れにより、第1方向D1にわたって濃淡が緩やかに変化する柔らかい陰影を表現するのに適する。
【0047】
また、ねじれ柄部10Aでは、このようなねじれ面12が、上述のように、第2方向D2における一対の頂面11の間にて、当該頂面11から裏面B側の位置にある。このような構成は、両頂面11とねじれ面12との厚さ方向Tの高低差が第1方向D1にわたって漸次的に変化する構成を実現するのに適し、従って、ねじれ面12と各頂面11との各境界部において、第1方向D1にわたって濃淡が変化する陰影を表現するのに役立つ。
【0048】
建築板X1では、意匠面Sにおいて第1方向D1に延び且つ第2方向D2に目地溝20を介して並列する複数の柄部10が以上のようなねじれ柄部10Aを含む。このような建築板X1は、その意匠面Sにおいて、陰影の変化に富む意匠を実現するのに適する。
【0049】
加えて、建築板X1では、上述のように、意匠面Sにおいて第1方向D1に延び且つ第2方向D2に目地溝20を介して並列する複数の柄部10のそれぞれが、第2方向D2に互いに離隔して第1方向D1に延びる一対の頂面11を有する。各柄部10にて、頂面11は、厚さ方向Tにおける裏面Bからの高さが最も高く、頂面11以外の他の部位は、厚さ方向Tにおいて、頂面11から裏面B側の位置にある。このような構成は、建築板X1の複数枚が積み重ねられる場合に、各柄部10において頂面11間に形成されている凹凸形状が、隣接の建築板X1と接触するのを回避するのに役立ち、従って、当該凹凸形状を含んで表現される意匠の損傷を抑制するのに適する。
【0050】
以上のように、建築板X1は、陰影の変化に富む意匠を実現するとともに、積み重ね時における当該意匠の損傷を抑制するのに適する。
【0051】
建築板X1では、上述のように、第2方向D2における柄部10の頂面11の長さは、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。このような構成は、建築板X1における柄部10、ひいては意匠面Sに、陰影の変化を付与するのに適する。
【0052】
建築板X1では、上述のように、ねじれ柄部10Aのねじれ柄傾斜面13は、一対の頂面11における一方の頂面11から、他方の頂面11の側において裏面Bに向かって下り、且つ、第1方向D1に延びる。また、厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下るねじれ柄傾斜面13との間の開き角度θ1は、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。加えて、ねじれ面12は、第2方向D2における両端縁のそれぞれにおいて、ねじれ柄傾斜面13と繋がる箇所と、頂面11と繋がる箇所とを含む。これら構成は、建築板X1におけるねじれ柄部10A、ひいては意匠面Sに、陰影の変化を付与するのに役立つ。
【0053】
ねじれ柄部10Aは、上述のように、頂面11から裏面Bに向かって下る傾斜端面14を有する。厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下る傾斜端面14との間の開き角度θ2は、上述のように、好ましくは、当該頂面11から下るねじれ柄傾斜面13と当該頂面11との間の開き角度θ1よりも、小さい。このような構成は、意匠面Sにおいてねじれ柄部10Aの輪郭を強調するうえで好ましい。
【0054】
建築板X1では、上述のように、くぼみ柄部10Bのくぼみ柄傾斜面15Aは、一対の頂面11における一方の頂面11から、他方の頂面11の側において裏面Bに向かって下り、くぼみ柄傾斜面15Bは、他方の頂面11から、一方の頂面11の側において裏面Bに向かって下り、くぼみ柄傾斜面15A,15Bは繋がって境界線16をなす。この境界
線16は、上述のように、好ましくは、第2方向D2に対して非垂直である。加えて、厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下るくぼみ柄傾斜面15A(又は、くぼみ柄傾斜面15B)との間の開き角度θ3(開き角度θ4)は、好ましくは、第1方向D1にわたって漸変している。
【0055】
このようなくぼみ柄部10Bによると、建築板X1において、ねじれ柄部10Aとは異なる陰影を表現することが可能である。建築板X1における複数の柄部10が、上述のねじれ柄部10Aと共にくぼみ柄部10B含むという構成は、建築板X1の意匠性を高めるのに役立つ。
【0056】
くぼみ柄部10Bは、ねじれ柄部10Aと同様に、頂面11から裏面Bに向かって下る傾斜端面14を有する。厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下る傾斜端面14との間の開き角度θ2は、上述のように、好ましくは当該頂面11から下るくぼみ柄傾斜面15Aと当該頂面11との間の開き角度θ3よりも
、小さい。また、上述のように、厚さ方向Tと第2方向D2とに広がる断面における、頂面11と当該頂面11から下る傾斜端面14との間の開き角度θ2は、当該頂面11から下るくぼみ柄傾斜面15Bと当該頂面11との間の開き角度θ4よりも小さい。これら構成は、意匠面Sにおいてくぼみ柄部10Bの輪郭を強調するうえで好ましい。
【0057】
建築板X1では、上述のように、第2方向D2において、柄部10は目地溝20よりも長い。また、第2方向D2における目地溝20の長さは、上述のように、好ましくは、第1方向D1にわたって同一である。これら構成は、意匠面Sにおいて、柄部10を目立たたせるのに役立ち、従って意匠性を確保するのに適する。
【0058】
複数の柄部10における複数の頂面11は、上述のように、同一仮想平面上に位置する。このような構成は、複数枚の建築板X1をその厚さ方向に安定して積み重ねるのに適する。また、当該構成は、複数枚の建築板X1が積み重ねられる場合に、各柄部10において頂面11間に形成されている凹凸形状が、隣接の建築板X1と接触するのを回避するのに役立ち、従って、当該凹凸形状を含んで表現される意匠の損傷を抑制するのに適する。
【0059】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る建築板X2を表す(
図9は、建築板X2の平面図である)。
【0060】
建築板X2は、意匠面Sと、当該意匠面Sとは反対側の裏面Bとを有し、且つ、意匠面Sおよび裏面Bの間に厚さを有する。建築板X2の意匠面Sは、複数の柄部10としてのねじれ柄部10Aと、少なくとも一本の目地溝20とを有する(意匠面Sが複数の目地溝20を有する場合を例示的に図示する)。建築板X2の意匠面Sは、くぼみ柄部10Bに代えてねじれ柄部10Aを有すること以外は、建築板X1の意匠面Sと同様の構成を有する(建築板X2における柄部10は、すべてねじれ柄部10Aである)。建築板X2は、この点において、上述の建築板X1と異なる。
【0061】
このような建築板X2は、建築板X1と同様に、壁部の施工に用いられうる。
図10は、複数の建築板X2による壁部施工構造の一例を表す。
図10に示す壁部施工構造例では、各列二枚の建築板X2がそれらの縁端E1,E2を介して上下方向(第2方向D2)に
継ぎ合わされて連ねられ、且つ、各行二枚の建築板X2がそれらの縁端E3,E4を介し
て左右方向(第1方向D1)に継ぎ合わされて連ねられている。
【0062】
建築板X2は、建築板X1に関して上述したのと同様の理由から、陰影の変化に富む意匠を実現するとともに、積み重ね時における当該意匠の損傷を抑制するのに適する。建築板X2によると、くぼみ柄部10Bに基づく技術的効果を除き、建築板X1に関して上述したのと同様の技術的効果を享受することができる。
【符号の説明】
【0063】
X1,X2 建築板
D1 第1方向
D2 第2方向
S 意匠面
B 裏面
10 柄部
10A ねじれ柄部
10B くぼみ柄部
11 頂面
12 ねじれ面
13 ねじれ柄傾斜面
14 端傾斜面
15A,15B くぼみ柄傾斜面
16 境界線
20 目地溝