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  • 特許-止水構造、及び、止水方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】止水構造、及び、止水方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/66 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
E04B1/66 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020071936
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167549
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-270532(JP,A)
【文献】特開2012-140844(JP,A)
【文献】特開2013-190031(JP,A)
【文献】特開2006-152580(JP,A)
【文献】特開2000-257174(JP,A)
【文献】特開2019-135369(JP,A)
【文献】米国特許第05193958(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 1/58
E04B 2/56
E04D 3/36,3/40,13/18
E04F 13/08
F16J 15/06,15/10
F16B 33/06,35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部が設けられており、前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水構造であって、
前記仕切り部及び前記防水シートは各々、前記ねじが有するねじ山の外径よりも大きな内径の第一貫通孔を有し、
前記木質部は、前記仕切り部側に当該仕切り部とは反対側に窪み、前記ねじ山の外径よりも大きな内径の凹部を有し、
前記ねじは、前記第一貫通孔を貫通し前記凹部内に進入して前記木質部に螺合されており、
前記凹部内の前記ねじの周面と、前記防水シートの前記第一貫通孔の周縁との間に亘る不定型止水材を有していることを特徴とする止水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の止水構造であって、
前記ねじは、前記木質部に螺合されるねじ部とねじ頭部との間に、前記ねじ山の外径より大きく、前記第一貫通孔の内径より小さな外径をなし前記ねじ山が形成されていない非ねじ部を有していることを特徴とする止水構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の止水構造であって、
前記仕切り部と、前記防水シートとの間に、他の部材が存在する場合には、前記他の部材に、前記ねじが貫通し、前記ねじ山の外径よりも大きな内径の第二貫通孔が設けられていることを特徴とする止水構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の止水構造であって、
前記木質部は建物の躯体であり、
前記仕切り部は前記建物の外壁であり、
前記ねじにより前記建物に付設物が取り付けられることを特徴とする止水構造。
【請求項5】
防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側と、を仕切る仕切り部の前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水方法であって、
前記木質部に前記ねじを螺合するための下孔と、前記下孔の外周側に設けられ前記仕切り部とは反対側に窪み前記ねじのねじ山の外径よりも大きな内径の凹部と、を形成し、
前記仕切り部及び前記防水シートに、前記ねじ山の外径よりも大きな内径の第一貫通孔を形成する第一ステップと、
不定型止水材がねじ部に設けられた前記ねじを、前記第一貫通孔を貫通させて前記下孔に螺合する第二ステップと、
を有することを特徴とする止水方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじが螺合される螺合部の止水構造及び止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ねじが螺合される螺合部の止水構造として、建物の床と壁との入隅となる隅角部において、床の上面に敷設された防水シートが壁の下部を覆うように立ち上げられた立上げ部の上縁とその上方の壁面とに跨って防水テープを配置し、立上げ部及び防水テープを覆う水切り材を、防水テープを貫通する固定ねじにより壁に取り付ける水切り構造は知られている(例えば、特許文献1参照)。この水切り構造では、水切り材を取り付ける際に、固定ねじの先端にコーキング材などの不定型止水材を塗布してねじを締め込むことにより、固定ねじに塗布されていた不定型止水材が水切り材の貫通孔や防水テープの上縁付近に広がって、防水処理が施されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-193920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにねじの先端に塗布したコーキング材など不定型止水材は、ねじを締め込む際にねじが螺合される部材により刮ぎ取られる。このとき、刮ぎ取られる不定型止水材は、防水シートやねじが螺合される部材の周囲に残存するが、ねじの全周に確実に残存するとは限らず、不定型止水材が偏ってしまう虞がある。このとき、ねじが螺合されている部材が外部に露出している場合には、不定型止水材がいき渡っていない箇所に追加の不定型止水材を補充すればよいが、たとえば、外壁に部材を取り付ける際などに、外壁の内側に設けられている躯体などに、ねじを螺合する場合には、外壁に遮られて不定型止水材を追加補充することができず、確実に止水することができない虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、仕切り部により遮られて露出していない部位に螺合されるねじの螺合部をより確実に止水することが可能な止水構造、及び、止水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部が設けられており、前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水構造であって、前記仕切り部及び前記防水シートは各々、前記ねじが有するねじ山の外径よりも大きな内径の第一貫通孔を有し、前記木質部は、前記仕切り部側に当該仕切り部とは反対側に窪み、前記ねじ山の外径よりも大きな内径の凹部を有し、前記ねじは、前記第一貫通孔を貫通し前記凹部内に進入して前記木質部に螺合されており、前記凹部内の前記ねじの周面と、前記防水シートの前記第一貫通孔の周縁との間に亘る不定型止水材を有していることを特徴とする止水構造である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、仕切り部により遮られて露出していない部位に螺合されるねじの螺合部をより確実に止水することが可能な止水構造、及び、止水方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る止水構造を示す断面の模式図である。
図2】本発明の止水方法を示す断面の模式図である。
図3】胴縁を有していない場合における止水方法を説明する断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る止水構造について図面を参照して説明する。
本実施形態の止水構造は、例えば、建物の屋外に設けられるバルコニーの手すりや、サンルームなどの屋根の建物側を支持する垂木掛け、アウターシェードや壁付け面格子など、種々の建物付設物を構成する部材を建物に取り付けるねじが躯体などに螺合されている螺合部の止水構造である。このため、以下の説明では、外壁1に取り付けられる部材を、取付部材2と称し、図面上では、外壁1に当接されてねじ3により取り付けられる取付部材2の断面を矩形にて模式的に示して説明する。
【0010】
まず、取付部材2が取り付けられる外壁1を有する建物の構造について説明する。
図1に示すように、建物の木質部としての躯体4は、屋外側の面4aが透湿防水シート(防水シート)5に覆われており、透湿防水シート5の屋外側には、上下方向に沿って設けられた複数の胴縁6を介してサイディング材などでなる外壁1が設けられている。すなわち、透湿防水シート5に覆われた躯体4の屋外側に、防水シート5と間隔を空けて外壁1が設けられており、複数の胴縁6は、外壁1と透湿防水シート5との間に、水平方向に互いに適宜間隔を空けて設けられている。
【0011】
取付部材2は、既に設けられている外壁1に当接され、外壁1を貫通するねじ3が躯体4に螺合されて取り付けられる。このため、ねじ3が貫通する位置には、外壁1と透湿防水シート5との間に、胴縁6が存在する場合と、胴縁6が存在しない場合とのいずれの場合もあり得る。ここでは、外壁1と透湿防水シート5との間に胴縁6が存在する位置にねじ3を貫通させる場合を例に挙げて説明する。ここで、外壁1が、防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部に相当し、胴縁6が、仕切り部と防水シートとの間に存在する他の部材に相当する。また、仕切り部に仕切られた外側は屋外側に相当し、内側は屋内側に相当する。
【0012】
取付部材2を固定するねじ3は、躯体4に螺合するねじ部3aと、締め込まれたときに取付部材2の屋外側の面2aに当接されるねじ頭部3bと、ねじ部3aとねじ頭部3bとの間に設けられねじ山が設けられていない円柱状の非ねじ部3cと、を有している。本実施形態においては、図2(c)に示すように、非ねじ部3cの長さL1は、外壁1に当接された取付部材2の屋外側の面2aから躯体4の屋外側の面4aまでの距離L2(図1)よりも長く設けられており、非ねじ部3cの外径D1は、ねじ部3aのねじ山の外径D2よりも大きく形成されている。また、螺合前のねじ部3aには、周面にパテ・シーラントや未加硫ゴムなどの不定型止水材7が設けられている。
【0013】
外壁1、取付部材2、透湿防水シート5、及び、胴縁6には、ねじ3のねじ頭部3bよりも小さく、非ねじ部3cの外径D1よりも大きな内径D3の貫通孔1a、2b、5a、6aが同軸上に設けられており、躯体4には、外壁1、透湿防水シート5、及び、胴縁6と同軸上に形成され、同じ内径D3をなして屋内側に窪む凹部4bが、屋外側の面4aに設けられている。ねじ3は、凹部4b内に進入し当該凹部の中心に屋外側から屋内側に向かって躯体4に螺合される。ここで、外壁1及び透湿防水シート5に設けられた貫通孔1a、5aが第一貫通孔に相当し、胴縁6に設けられた貫通孔6aが第二貫通孔に相当する。
【0014】
取付部材2は、外壁1、取付部材2、透湿防水シート5、及び、胴縁6を貫通したねじ3が、凹部4b内に進入して当該凹部4bの中心に屋外側から屋内側に向かって躯体4に螺合され、外壁1とねじ頭部3bに挟持されて固定されている。このため、ねじ3の非ねじ部3cの長さL1は、外壁1に当接された取付部材2の屋外側の面2aから躯体4の凹部4b内の屋外側の面4cまでの距離L3(図1)よりも短く形成されている。本実施形態においては、透湿防水シート5の厚みが薄いので、実質的にねじ3は透湿防水シート5を単に貫通しているが、ねじ3は回転しつつ進入するので、透湿防水シート5をねじ3が貫通している状態を螺合と表現する。
【0015】
ねじ3が躯体4に螺合される際には、ねじ3のねじ部3aに設けられていた不定型止水材7が、躯体4に刮ぎ取られ、凹部4bに残留する。ねじ3が締め込まれるに連れて、刮ぎ取られて凹部4b内に残留する不定型止水材7の量が増え、凹部4bから躯体4の屋外側に溢れ出す。溢れ出した不定型止水材7は、躯体4の屋外側の面4aと透湿防水シート5との間、透湿防水シート5と胴縁6の屋内側の面6bとの間、胴縁6の貫通孔6aとねじ3の非ねじ部3cとの間に進入している。このため、透湿防水シート5と、躯体4との間は不定型止水材7により止水されており、ねじ3が螺合している螺合部への雨水などの水の浸入を防止している。
【0016】
取付部材2を取り付けるねじ3の螺合部における止水方法は、まず、取付部材2を取り付けたい位置、すなわちねじ止めしたい位置に、ドリル等で、図2(a)に示すように、ねじ3用の下孔4dを形成する。このとき、外壁1の屋外側から屋内側に向かって、躯体4に至るように、外壁1、透湿防水シート5、及び、胴縁6を貫通させて下孔4dを形成する。
【0017】
次に、図2(b)に示すように、ねじ3の非ねじ部3cの外径D1より大きな内径D3の貫通孔1a、5a、6aを、下孔4dとほぼ同軸となるように、ドリル等により、外壁1の屋外側から屋内側に向かって、外壁、透湿防水シート5、及び、胴縁6を貫通させて形成するとともに、さらにドリルを進入させて、躯体4に凹部4bを形成する。ここで、下孔4d、貫通孔1a、5a、6a及び、凹部4bを形成する工程が第一ステップに相当する。このとき、下孔4dと、貫通孔1a、5a、6a及び、凹部4bとを形成する順序は、どちらが先でも構わない。また、胴縁6が存在しない場合には、下孔4d、貫通孔1a、5a及び、凹部4bを形成する工程が第一ステップに相当する。
【0018】
次に、図2(c)に示すように、外壁1、透湿防水シート5、及び、胴縁6の貫通孔1a、5a、6aと、同じ内径D3の貫通孔2bを設けた取付部材2を、外壁1の貫通孔1aの位置に合わせて配置し、取付部材2の屋外側からねじ3を各貫通孔1a、2b、5a、6aに挿入していく。このとき、できるだけ各貫通孔1a、2b、5a、6aの内周に、ねじ3に設けた不定型止水材7が接触しないようにねじ3の先端を躯体4に当接させる。
【0019】
最後に、図1に示すように、ねじ3を躯体4に螺合させて、取付部材2を外壁1とねじ頭部3bとにより挟持して取り付ける。ここで、取付部材2の屋外側からねじ3を各貫通孔1a、2b、5a、6aに挿入し、ねじ3を躯体4に螺合させる工程が第二ステップに相当する。
【0020】
本実施形態の止水構造及び止水方法によれば、ねじ3が螺合されている躯体4の凹部4b内から透湿防水シート5の少なくともいずれか一方の面側に不定型止水材7が繋がって設けられているので、ねじ3が螺合されている凹部4b内、及び、ねじ3が貫通している透湿防水シート5の周縁部と躯体4との間が不定型止水材7によりシールされている。このため、より高い防水性を備えることが可能である。
【0021】
また、ねじ3が貫通している透湿防水シート5に設けられている貫通孔5a及び躯体4の凹部4bは、ねじ山の外径D2よりも大きな内径D3をなしているので、ねじ部3aに不定型止水材7が設けられたねじ3を躯体4に螺合する場合であっても、ねじ部3aに塗布した不定型止水材7は躯体4に螺合されるまで刮ぎ取られない。このため、螺合されて刮ぎ取られた不定型止水材7を凹部4b内に留まらせ、溢れさせることにより透湿防水シート5と躯体4との間を止水することが可能である。このため、外壁1が、ねじ3が螺合される躯体4と間隔を空けて設けられており、外壁1により屋外とは仕切られた躯体4に直接シールを施すことができない状態であっても、ねじ3が螺合されている螺合部をより確実に容易に止水することが可能である。すなわち、外壁1により遮られて露出していない躯体4にねじ3を螺合しつつもより高い止水性を備えることが可能である。
【0022】
また、ねじ3は、躯体4に螺合されるねじ部3aとねじ頭部3bとの間に、ねじ山の外径D2より大きく、貫通孔1a、2b、5a、6aの内径D3より小さな外径D1をなす非ねじ部3cを有しているので、不定型止水材7がねじ溝を伝って、よりねじ頭部3b側に移動することを抑制することが可能であり、不定型止水材7を凹部4b内により多く留めることが可能である。
【0023】
また、外壁1と透湿防水シート5との間に存在する胴縁6にも、ねじ山の外径D2よりも大きな内径D3の貫通孔6aが設けられているので、外壁1と透湿防水シート5との間に胴縁6が存在する場合であっても、ねじ3が螺合されている螺合部をより確実に容易に止水することが可能である。
【0024】
また、外壁1の屋外側から躯体4まで、ドリル等により一挙に貫通孔1a、5a、6a及び凹部4bを形成することができるので、外壁1、透湿防水シート5、及び、胴縁6に、ねじ山の外径D2よりも大きな同一の内径の貫通孔1a、5a、6aを同軸上に容易に設けることが可能である。また、不定型止水材7をねじ部3aの周面に残存させたまま貫通孔1a、5a、6aを容易に挿通させることができるので、より多くの不定型止水材7を躯体4により刮ぎ取って凹部4b内に留まらせることが可能であり、また、凹部4bから溢れ出させて、躯体4の屋外側の面4aと透湿防水シート5との間、透湿防水シート5と胴縁6の屋内側の面6bとの間、胴縁6の貫通孔6aとねじ3の非ねじ部3cとの間に、より確実に進入させることが可能である。このため、ねじ3が螺合される躯体4と間隔を空けて設けられ、屋外と透湿防水シート5側とを仕切る外壁1が設けられていても、外壁1の屋外側からの作業により下孔4d、貫通孔1a、5a、6a及び凹部4bを形成し、不定型止水材7が設けられたねじ3を締め込むだけで、より簡単に且つより確実に、透湿防水シート5と躯体4との間を不定型止水材7により止水し、ねじ3が螺合している躯体4の螺合部への雨水などの水の浸入を防止することが可能な止水方法を提供することが可能である。
【0025】
上記実施形態においては、ねじ3に非ねじ部3cが設けられている例について説明したが、非ねじ部3cは必ずしも設けられていなくとも構わない。
【0026】
また、上記実施形態においては、外壁1と透湿防水シート5との間に胴縁6が存在する位置にねじ3を貫通させる場合を例に挙げて説明したが、胴縁が存在しない位置にねじ3を貫通させる場合には、図3(a)、図3(b)に示すように、上記実施形態において胴縁6が存在しないだけであって、躯体4に下孔4dと凹部4bを、また、外壁1と透湿防水シート5に貫通孔1a、5aを形成した後に、ねじ部3aに不定型止水材7が設けられたねじ3を外壁1の貫通孔1a側から挿入して躯体4の凹部4b内から螺合することにより、不定型止水材7を凹部4bから繋がって透湿防水シート5の両面に至るように進入させることが可能である。このため、胴縁が存在しない位置であっても、より簡単に且つより確実に、凹部4b内のねじ3の周面と、透湿防水シート5の貫通孔5aの周縁との間に亘って不定型止水材7を設けることが可能であり、ねじ3が螺合している躯体4の螺合部への雨水などの水の浸入を防止することが可能である。
【0027】
上記実施形態においては、木質部を躯体4とし、仕切り部を外壁1とした例について説明したが、これに限るものではなく、防水シートで覆われた木質部が設けられている内側と、外側と、を仕切る仕切り部に、木質部に螺合するねじにより部材を取り付ける場合であれば適用可能である。
【0028】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0029】
防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部が設けられており、前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水構造であって、前記仕切り部及び前記防水シートは各々、前記ねじが有するねじ山の外径よりも大きな内径の第一貫通孔を有し、前記木質部は、前記仕切り部側に当該仕切り部とは反対側に窪み、前記ねじ山の外径よりも大きな内径の凹部を有し、前記ねじは、前記第一貫通孔を貫通し前記凹部内に進入して前記木質部に螺合されており、前記凹部内の前記ねじの周面と、前記防水シートの前記第一貫通孔の周縁との間に亘る不定型止水材を有していることを特徴とする止水構造である。
【0030】
このような止水構造によれば、凹部内のねじの周面と、防水シートの第一貫通孔の周縁との間に亘る不定型止水材を有しているので、ねじが螺合されている凹部内、及び、ねじが貫通している防水シートの周縁と木質部との間が不定型止水材により止水されている。このため、ねじが防水シート貫通していても、より高い防水性を備えることが可能である。また、ねじが貫通している第一貫通孔及び木質部の凹部は、ねじ山の外径よりも大きな内径をなしているので、例えば、ねじに不定型止水材を塗布した状態で、木質部に螺合する場合であっても、ねじに塗布した不定型止水材は木質部に螺合されるまで刮ぎ取られない。このため、螺合することにより木質部に刮ぎ取られた不定型止水材を凹部内に留まらせ、溢れさせることにより凹部内のねじの周面と、防水シートの第一貫通孔の周縁との間を止水することが可能である。このため、ねじが螺合される木質部側と屋外とが仕切り部材により仕切られていても、螺合部をより確実に且つ容易に止水することが可能である。すなわち、仕切り部により遮られて露出していない部材にねじを螺合しつつもより高い止水性を備えることが可能な止水構造を提供することが可能である。
【0031】
かかる部材の止水構造であって、前記ねじは、前記木質部に螺合されるねじ部とねじ頭部との間に、前記ねじ山の外径より大きく、前記第一貫通孔の内径より小さな外径をなし前記ねじ山が形成されていない非ねじ部を有していることを特徴とする。
【0032】
このような止水構造によれば、不定型止水材がねじ溝を伝ってねじ頭部側に移動することを抑制することが可能であり、不定型止水材を凹部内により多く留めることが可能である。
【0033】
かかる止水構造であって、前記仕切り部と、前記防水シートとの間に、他の部材が存在する場合には、前記他の部材に、前記ねじが貫通し、前記ねじ山の外径よりも大きな内径の第二貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0034】
このような止水構造によれば、仕切り部と防水シートとの間に存在する他の部材にも、ねじ山の外径よりも大きな内径の第二貫通孔が設けられているので、仕切り部と防水シートとの間に他の部材が存在する場合であっても、螺合部をより確実に容易に止水することが可能である。
【0035】
かかる止水構造であって、前記木質部は建物の躯体であり、前記仕切り部は前記建物の外壁であり、前記ねじにより前記建物に付設物が取り付けられることを特徴とする。
【0036】
このような止水構造によれば、ねじが螺合される躯体側と屋外とが外壁により仕切られていても、ねじの螺合部をより確実に且つ容易に止水することが可能である。すなわち、外壁により遮られて露出していない躯体にねじを螺合しつつもより高い止水性を備えて付設物を建物に取り付けることが可能である。
【0037】
また、防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側と、を仕切る仕切り部の前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水方法であって、前記木質部に前記ねじを螺合するための下孔と、前記下孔の外周側に設けられ前記仕切り部とは反対側に窪み前記ねじのねじ山の外径よりも大きな内径の凹部と、を形成し、前記仕切り部及び前記防水シートに、前記ねじ山の外径よりも大きな内径の第一貫通孔を形成する第一ステップと、不定型止水材がねじ部に設けられた前記ねじを、前記第一貫通孔を貫通させて前記下孔に螺合する第二ステップと、を有することを特徴とする止水方法である。
【0038】
このような止水方法によれば、ねじが下孔に至るまでに通過する第一貫通孔、第二貫通孔、及び、凹部の内径は、ねじ山の外径よりも大きいので、ねじ部に不定型止水材が設けられた状態でねじを木質部に設けられた凹部内の下孔に螺合することが可能である。このため、ねじに設けられた不定型止水材が、下孔に至る前に刮ぎ取られることなくねじを木質部に螺合することが可能である。このため、螺合されて刮ぎ取られた不定型止水材をより多く凹部内にとどまらせ、溢れさせることにより凹部内のねじの周面と、防水シートの第一貫通孔の周縁との間を止水することが可能である。このため、ねじが螺合される木質部側と屋外とを仕切る仕切り部材により仕切られていても、螺合部をより確実に容易に止水することが可能である。すなわち、仕切り部により遮られて露出していない部材にねじを螺合しつつもより高い止水性を備えることが可能な止水方法を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 外壁、1a 貫通孔(第一貫通孔)、2 取付部材、
2b 貫通孔、3 ねじ、3a ねじ部、3b ねじ頭部、
3c ねじ部、4 躯体、4b 凹部、4d 下孔、5 透湿防水シート、
5a 貫通孔(第一貫通孔)、6 胴縁、6a 貫通孔(第二貫通孔)、
7 不定型止水材、
D1 非ねじ部の外径、D2 ねじ山の外径、
D3 第一貫通孔、第二貫通孔、及び、凹部の内径
図1
図2
図3