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特許7366843宇宙機の自律的な軌道離脱のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】宇宙機の自律的な軌道離脱のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/26 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
B64G1/26 C
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020102112
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021031050
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】16/553,206
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ピー.イーリー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン エー.フェイル
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ポラディアン
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5064151(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/026312(US,A1)
【文献】特開2013-018405(JP,A)
【文献】特開2015-168315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/26
B64G 1/24
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙機を軌道離脱させる方法であって、
前記宇宙機の演算装置によって、前記宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択し、
前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、
(i)前記演算装置によって、予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、
(ii)前記演算装置によって、前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求めた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、
(iii)前記演算装置によって、前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、
(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記演算装置によって、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算し、
前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って、前記推進システムによってパルス燃焼を行う、方法。
【請求項2】
前記目標着地点を選択するに際して、
前記演算装置のユーザインターフェースを介して、前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠の選択を受信し、
複数の地上位置を決定し、前記複数の地上位置は、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づいて前記宇宙機によって到達可能な位置であり、
前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を前記複数の地上位置から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の地上位置から前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を選択するに際して、
前記複数の地上位置の其々に関連付けられる優先度レベルを、少なくとも、各位置に関連する位置の種類に基づいて決定し、
最も高い優先度レベルを有する着地点を選択し、
前記宇宙機は、地上位置のデータベースを含み、前記複数の地上位置の其々に関連付けられる前記優先度レベルを決定するに際して、地上位置の前記データベースから各優先度レベルを抽出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を前記複数の地上位置から選択するに際して、
目標地上位置の地図に基づいて、前記地図上のどの指定着陸施設も、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づけば到達可能でないか判定し、
どの指定着陸施設も到達可能でないと判定したことを受けて、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づいて到達可能な緊急着地位置を選択し、前記緊急着地位置は、水面上のエリアを画定する水域多角形に相当し、
前記緊急着地位置を選択するに際して、
前記宇宙機の軌道経路が前記水域多角形の境界を横切るか判定し、
前記宇宙機の前記軌道経路が前記水域多角形の前記境界を横切ると判定したことを受けて、前記緊急着地位置を選択する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記複数の地上位置の其々への前記宇宙機の予想到着時刻を求め、前記複数の地上位置から前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を選択するに際して、
各地上位置の着地点スコアを、其々の予想到着時刻及び其々の優先度レベルに基づいて求め、
前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点として、前記複数の地上位置の中から着地点スコアの最も高い特定の地上位置を選択する、請求項2~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記宇宙機の1つ以上のセンサから、少なくとも前記宇宙機の位置及び速度を示すセンサデータを受信し、
前記宇宙機の前記既知の軌道状態を前記センサデータに基づいて判定する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記推進システムの種類を特定し、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記推進システムの前記種類に基づいて計算する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記予測大気圏突入位置における前記大気圏に対する前記宇宙機の所望の経路角度及び前記宇宙機の所望の速度に基づいて計算する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた前記所定の時間枠内に、さらに、
前記宇宙機の対応する既知の軌道状態に収束する逆伝播軌道状態予測を有する一組の距離目標及び速度目標を求め、
前記一組の距離目標及び速度目標の中から、対応する既知の軌道状態に最も緊密に収束する逆伝播軌道状態を有する最適な距離目標及び速度目標を選択し、
前記距離目標及び速度目標は、前記一組の距離目標及び速度目標のうちの前記最適な距離目標及び速度目標に相当し、
前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記一組の距離目標及び速度目標のうちの前記最適な距離目標及び速度目標を用いて計算する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
さらに、順伝播大気圏インターフェースを求め、前記順伝播大気圏インターフェースは、前記予測点火時刻、前記予測燃焼速度ベクトル、及び、前記宇宙機の既知の軌道状態に基づいた、前記大気圏に突入する際に前記宇宙機にかかると予想される力の特性に対応し、
前記予想される力の特性に基づいた前記順伝播大気圏インターフェースにおける前記宇宙機の予測距離誤差及び予測経路角度誤差を求め、
前記予測距離誤差が閾値距離誤差内に収束しているか判定し、
前記予測経路角度誤差が閾値経路角度誤差内に収束しているか判定し、
(i)前記予測距離誤差が閾値距離誤差内に収束していると判定したこと、及び、(ii)前記予測経路角度誤差が閾値経路角度誤差内に収束していると判定したことに基づいて、実点火時刻及び実燃焼速度ベクトルを計算し、
前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って、前記推進システムによって前記パルス燃焼を行うに際して、前記推進システムよって、前記実点火時刻に前記実燃焼速度ベクトルに従って前記パルス燃焼を行う、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記パルス燃焼を実行する前に、既知の大気圏条件及び前記宇宙機の前記既知の軌道状態に基づいて、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って前記パルス燃焼のシミュレーション結果を求め、
前記シミュレーション結果に基づいて前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルを調整する、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
宇宙機を軌道離脱させるためのシステムであって、宇宙機を含み、
前記宇宙機は、プロセッサと、命令を格納するメモリとを有する演算装置を含み、前記命令は、以下のこと、すなわち、
宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択し、
前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、
(i)予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、
(ii)前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求めた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、
(iii)前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、
(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能であり、
前記推進システムは、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従ってパルス燃焼を行うように構成されている、システム。
【請求項13】
前記命令は、さらに、以下のこと、すなわち、
前記演算装置のユーザインターフェースを介して、前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠の選択を受信し、
複数の地上位置を決定し、前記複数の地上位置は、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づいて前記宇宙機によって到達可能な位置であり、
前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を前記複数の地上位置から選択すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記宇宙機は、複数のセンサをさらに含み、
前記命令は、さらに、以下のこと、すなわち、前記宇宙機の1つ以上のセンサから、少なくとも前記宇宙機の位置及び速度を示すセンサデータを受信し、
前記宇宙機の前記既知の軌道状態を前記センサデータに基づいて判定すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記宇宙機は、推進システム特性のデータベースをさらに含み、
前記命令は、さらに、以下のこと、すなわち、前記推進システムの種類を特定し、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記推進システム特性の前記データベースを用いて、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記推進システムの前記種類に基づいて計算すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である、請求項12~14のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、宇宙機を軌道離脱させることに関する。具体的には、本開示は、搭載センサ及び演算システムを用いて宇宙機を軌道離脱させることに関する。
【背景技術】
【0002】
惑星などの天体を周回する宇宙機は、例えば特定の時間枠内に軌道離脱することが理想的である。時間枠は、例えば、任務の終了、宇宙機の動作状態、又は所望の着地点と関連付けられている。着地点を選択し、効率的且つ実現可能な宇宙機の軌道離脱経路を計算するためには、いくつかの要素を考慮する必要がある。従って、このような作業を時間枠内に行うことが困難な場合がある。
【0003】
宇宙機を軌道離脱させるための既存のシステム及び方法は、地上側システム、及び、宇宙機と地上システムとの双方向通信を必要とし、この双方向通信によって、搭載センサの情報を地上システムに提供するとともに、地上システムからの命令を受信する。このような通信における遅延時間、送信エラー、及びその他の要因により、宇宙機の軌道離脱のための燃焼目標の計算に要する時間が増し、得られる燃焼命令の信頼性が低下する。
【0004】
従って、着地点の選択及び軌道離脱目標設定のための宇宙機の自律的な搭載システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施例として説明されるのは、宇宙機を軌道離脱させる方法である。当該方法は、前記宇宙機の演算装置によって、前記宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択することを含む。当該方法では、前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、(i)前記演算装置によって、予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、(ii)前記演算装置によって、前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求めた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、(iii)前記演算装置によって、前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記演算装置によって、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算する。当該方法では、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って、前記推進システムによってパルス燃焼を行う。
【0006】
別の実施例として説明されるのは、宇宙機を軌道離脱させるためのシステムである。当該システムは、宇宙機を含む。前記宇宙機は、プロセッサと、前記プロセッサによって実行可能な命令を格納するメモリとを有する演算装置を含む。前記命令は、宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択するために、前記プロセッサによって実行可能である。前記命令は、前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、以下のこと、すなわち、(i)予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、(ii)前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求められた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、(iii)前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である。前記システムは、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従ってパルス燃焼を行うように構成された前記推進システムをさらに含む。
【0007】
別の実施例として説明されるのは、演算装置の1つ又は複数のプロセッサによって実行された際に、前記演算装置に機能を実行させる命令を保存する非一時的なコンピュータ可読媒体である。前記機能は、宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択することを含む。前記機能は、さらに、前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、(i)予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、(ii)前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求められた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、(iii)前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算すること、を含む。前記機能は、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って、前記推進システムによってパルス燃焼を行う機能を実行させることを含む。
【0008】
上述した特徴、機能、及び、利点は、様々な実施例において個別に達成することができるが、他の実施例において互いに組み合わせてもよい。実施例のさらなる詳細は、以下の説明及び図面を参照すれば理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
例示的な実施形態に特有のものと考えられる新規の特徴は、添付の請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な実施例、ならびに、好ましい使用形態、さらなる目的及びその説明は、以下に示す添付の図面と併せて本開示の例示的な実施例の詳細な説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。
【0010】
図1】例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるためのシステムのブロック図である。
図2】例示的な実施態様による、宇宙機の軌道離脱経路の一例を示す図である。
図3】例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるための方法のフローチャートである。
図4A】例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるための着地点選択方法のフローチャートである。
図4B】例示的な実施態様による、図4Aに示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図4C】例示的な実施態様による、図4Aに示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図5A】例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるための軌道離脱目標設定方法のフローチャートである。
図5B】例示的な実施態様による、予測大気圏突入位置からの軌道状態の逆伝播の一例を示す図である。
図6A】例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるための燃焼調整の方法のフローチャートである。
図6B】例示的な実施態様による、図6Aに示した方法で用いる手法のフローチャートを示している。
図7】例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させる方法のフローチャートである。
図8】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図9】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図10】例示的な実施態様による、図7及び図9に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図11】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図12】例示的な実施態様による、図7及び図11に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図13】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図14】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図15】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図16】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図17】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図18】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
図19】例示的な実施態様による、図7に示した方法で用いる手法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施例を、添付図面を参照して以下により詳細に説明する。なお、図面は、開示の実施例のいくつかを示しており、全てを示しているわけではない。実際、いくつかの異なる実施例を説明することもでき、本明細書に記載の実施例に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施例は、本開示が十分且つ完全なものとなるように、そして、本開示の範囲を当業者に十分に伝えるために記載するものである。
【0012】
実施例には、宇宙機を軌道離脱させるためのシステム及び方法が説明されている。具体的には、搭載センサ及びシステムを用いて宇宙機を自律的に軌道離脱させるためのシステム及び方法である。
【0013】
システム及び方法の例は、宇宙機を軌道離脱させつつ、目標着地点を自律的に選択することを伴う。着地点を選択することは、宇宙機を軌道離脱させるための時間枠(time window)を含むユーザ入力を受信することを伴い得る。この時間枠内に、宇宙機の演算装置が、既知のいくつかの地点を評価し、宇宙機の軌道状態、ならびに天体の回転や天体の大気特性などの他の要素を考慮して、宇宙機が到達可能な地点を選択する。演算システムは、例えば、到達可能な地上位置(ground locations)の中から目標着地点を選択し、適切な地上位置が無い場合は、到達可能な着陸用の水上位置を決定する。このようにして、宇宙機は、選択された時間枠に収まるロバストな方法で、着地点を自律的に選択することができる。本開示において、機能を自律的に行うとは、センサデータ、保存された情報、機械学習技術などに基づいて、ユーザによる操作や命令無しで機能をプログラムによって実行することをいう。これに関連して、どこかの時点でユーザの行為によって機能が開始された場合も、当該機能を自律的と称することができる。例えば、ユーザは、宇宙機を軌道離脱させるための時間枠を選択することによって、宇宙機の自律的な軌道離脱を始動させることができる。
【0014】
システム及び方法の例は、宇宙機の搭載センサを用いて宇宙機及び環境の特性を判定することを含み、これらの特性は、選択された着地点に宇宙機を導くためのパルス燃焼(burn pulse)を計算することに関連する。演算装置は、センサからのセンサデータを用いて、パルス燃焼を決定するとともに、宇宙機を軌道離脱させる。これを実現するため、演算装置は、天体に関連する既知の性質及び宇宙機の予想軌道を用いて大気圏突入位置を特定し、この大気圏突入位置から繰り返し逆伝播(back-propagate)することにより、大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標が宇宙機の既知の軌道状態に収束するかどうかを判定する。パルス燃焼は、宇宙機の現在の状態などの既知の状態に収束する距離目標及び速度目標に基づいて決定することができる。これらの計算を宇宙機の機上で行うことにより、リアルタイム又はほぼリアルタイムで計算を行うことができる。このようにして、宇宙機は、宇宙機を軌道離脱せるための正確且つロバストな燃焼解(burn solution)を自律的に求めることができ、このようにして求められた燃焼解は、信頼性の高いものとなる。
【0015】
本開示において、燃焼解とは、1つ以上のスラスタ(thrusters)を用いた宇宙機の軌道離脱における1つ以上の制御される要素のことをいい、1つ以上のスラスタによるパルス燃焼を実行するための点火時刻、及び、パルス燃焼に関連する燃焼速度ベクトルを含むが、これらに限定されない。燃焼速度ベクトルとは、例えば、一般的にはパルス燃焼によって生じる宇宙機の速度の変化(すなわち、速さ及び/又は方向の変化)のことをいい、より具体的には、パルス燃焼の持続期間及び1つ以上のスラスタの作動に関連する力のことをいう。
【0016】
次に図面を参照すると、図1は、例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるためのシステム100のブロック図である。具体的には、図1は、宇宙機上に実装することができる自律的な軌道離脱システムを示している。当該システムは、演算装置102を含む。システム100は、宇宙機制御装置、宇宙機ナビゲーションシステム、あるいは宇宙機内のサブモジュールの組み合わせなどの1つ以上の演算装置を含み得る。
【0017】
演算装置102は、1つ以上のプロセッサ104、メモリ106、命令108、及び、ユーザインターフェース110を含む。1つ以上のプロセッサ104は、汎用プロセッサであってもよいし、専用プロセッサ(例えばデジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路など)であってもよい。1つ以上のプロセッサ104は、本明細書に記載の演算装置102ならびに関連するシステム及び方法の機能を実現するために実行可能な、メモリ106に格納された命令108(例えばコンピュータ可読プログラム命令)を実行するように構成することができる。
【0018】
メモリ106は、プロセッサ104による読み取り又はアクセスが可能な1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であるか、あるいはそれを含み得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、光学的、磁気的、有機的又はその他のメモリもしくはディスクストレージなどの揮発性及び/又は不揮発性ストレージコンポーネントを含み、全体的又は部分的にプロセッサ104に組み込むことができる。メモリ106は、非一時的なコンピュータ可読媒体と考えられる。いくつかの実施例では、メモリ106は、単一の物理的デバイス(例えば、1つの光学的、磁気的、有機的又はその他のメモリ又はディスクストレージユニット)を用いて実現することができ、また、他の実施例では、メモリ106は、2つ以上の物理的デバイスを用いて実現することができる。メモリ106は、このように非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であり、プロセッサ104によって実行可能な命令108は、メモリ106に格納される。命令108は、コンピュータ実行可能コードを含む。
【0019】
ユーザインターフェース110は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイク、ジェスチャー認識システム、これらの組み合わせ、または、演算装置102によってユーザ入力を受信する他の手段であるか、あるいはこれらを含み得る。ユーザインターフェースは、図1に示すように演算装置102に組み込んでもよいし、あるいは、別のサブシステムや装置に含めることもできる。
【0020】
システム100は、複数のアビオニクス装置112をさらに含む。アビオニクス装置112は、全地球測位システム(GPS)114、慣性計測装置(IMU)116、高度計118、及び、無線インターフェース120を含む。アビオニクス装置112は、図1に示したものよりも多い又は少ない数のセンサ及び装置を含んでいてもよいし、また、図1に示したものと同様の機能性を提供する代替のセンサを含んでいてもよい。アビオニクス装置112は、全体として、宇宙機の軌道状態を示す情報を含むセンサデータを取得するように構成することができ、このような情報には、例えば、宇宙機の位置、宇宙機の飛翔経路(trajectory)、及び宇宙機の高度が含まれる。演算装置102は、このような情報を用いて、目標の着地点を特定するとともに、宇宙機を軌道離脱させるための燃焼解を計算する。このような情報を用いて燃焼解を求めるための例示的な実施態様については、後述する。
【0021】
システム100は、宇宙機の複数の制御可能要素122をさらに含む。制御可能要素122は、推進システム124及び安定化システム126を含む。推進システム124及び安定化システム126は、演算装置102によって制御されて、宇宙機を目標着地点に誘導することができる。具体的には、推進システム124及び安定化システム126の一方又は両方が、1つ以上のスラスタを含み、スラスタが、パルス燃焼を発動して宇宙機の移動を生じさせる。
【0022】
システム100は、データベース128をさらに含む。データベース128は、宇宙機から離れた位置にあってもよいし、あるいは、宇宙機に搭載してもよく、宇宙機を軌道離脱させる際の使用に適した情報を含み得る。例えば、データベース128は、天体上の好ましい着地点の表示を含んだデータストアを含み得る。従って、データベース128は、例えば、目標地上位置などの地上位置、及び/又は水上位置のデータベースである。これらの表示は、例えば、目標着地点の位置及び標高の表示を含み、其々の着地点に関連付けられた優先度レベルを含む。データベース128は、さらに、推進システム(例えば推進システム124)などの様々な宇宙機システムの既知の特性の蓄積も含み得る。従って、データベース128は、例えば推進システム特性のデータベースである。データベース128は、さらに、天体の環境の既知の特性の表示を有するデータストアを含み得る。例えば、データストアは、物体が天体の大気圏に入る高度の表示(例えばカーマン・ライン)及びその他の大気特性の表示を含み得る。従って、データベース128は、例えば、大気圏が及ぼす既知の力のデータベースである。データストアは、さらに、過去の燃焼解の計算結果及びセンサデータの表示を含み得る。このようなデータは、宇宙機を軌道離脱させるための燃焼解を求めるために用いられる訓練された機械学習モデルと関連付けることができる。
【0023】
システム100が宇宙機を軌道離脱させる手法のさらなる例示的な実施例を、以下に提示する。
【0024】
図2は、例示的な実施態様による、宇宙機202の軌道離脱経路の一例を示している。具体的には、図2は、一例のシナリオによるシステム200を示している。システム200は、軌道状態204を有する宇宙機202と、大気圏210を有する天体216とを含む。軌道状態204は、図2では、飛翔経路として表されている。ただし、実施例において、軌道状態は、宇宙機202の高度などの宇宙機202の追加の情報を含み得る。天体216は、例えば、地球などの惑星あるいは別の天体である。
【0025】
本実施例では、大気圏突入位置208は、大気圏210のカーマン・ライン上に描かれている。実施例において、大気圏突入の別の解釈も採用することができる。宇宙機202は、軌道状態204、宇宙機202の高度、及び、宇宙機202にかかる重力に従って、図2に描かれた位置から第1経路206をたどる。大気圏突入位置208から目標着地点214までは、宇宙機202は第2経路212をたどる。図2は一例のシナリオに従って提示したものであるが、以降の図面についても、説明のために、この例のシナリオに関連させて説明することがある。
【0026】
図3は、例示的な実施態様による、宇宙機202を軌道離脱させるための方法300のフローチャートである。当該フローチャートは、ブロック302、304、306、308、310及び302を含む一連のブロックを含む。各ブロックは、宇宙機202の軌道離脱の一側面に関連しており、図1及び図2に示したシステム100又は200のコンポーネントを用いて、あるいは、例えば図2に示した宇宙機202のような宇宙機と協働して実施することができる。例えば、演算装置102は、方法300を実行するように構成することができる。これらのブロックは、宇宙機202の軌道離脱に関連するモジュール、サブコンポーネント、又はステップを表す。ブロックは、順番に示されているが、これらのブロックを平行して行うことも、ここで説明するものとは異なる順序で行うこともできる。また、所望の実施態様に応じて、様々なブロックを統合してブロックの数を減らしたり、分割してブロックを追加したり、省いたりすることもできる。
【0027】
方法300は、ブロック302において、宇宙機202の位置、宇宙機202の軌道状態204、及び、宇宙機202の高度を示すセンサデータを含むナビゲーションデータを取得することを含む。例えば、このナビゲーション情報は、アビオニクス装置112のうちの1つ以上を用いて取得することができる。
【0028】
方法300は、ブロック304において、宇宙機の軌道離脱の一部としての着地点の選択を含み、ブロック302で判定された宇宙機202の軌道状態を考慮して、宇宙機202の現在位置から到達可能な1つ以上の地上位置を特定することを含む。1つ以上の地上位置を特定することについては、図4Bに関連させて後に詳述する。複数の地上位置の中から、目標着地点への到達に関連する時間に基づいて、目標着地点を選択することができる。例えば、着地点は、図2に示した目標着地点214である。ブロック304に関するさらなる詳細は、図4Aに関連させて後述する。
【0029】
方法300は、ブロック306において、選択された時間枠を示すユーザ入力をユーザインターフェース110を介して受信する。時間枠は、例えば、宇宙機202の軌道離脱に関連している。例えば、時間枠は、現在時刻又は現在時刻よりも後の第1時刻と、第1時刻より後の第2時刻とを明示する。時間枠は、例えば、宇宙機の1つ以上のスラスタが、その枠内でパルス燃焼を実行するように制御される時間枠に相当し、このパルス燃焼が、宇宙機202を軌道離脱させて、選択された目標着地点につながる経路をたどらせる。さらに、ユーザ入力は、推進システム124及び安定化システム126のうちの1つ以上についての情報を含み得る。例えば、当該情報は、宇宙機202の推進システムの種類又は安定化システムの種類を明示するものであり、これらの種類は、宇宙機202を軌道離脱させるために用いられる1つ以上のスラスタからのスラストのレベルに関連し得る。このようにして、ユーザは、宇宙機202を軌道離脱させるためのいくつかのパラメータを提供することができ、搭載センサ及び演算装置は、これを受けて、宇宙機202を軌道離脱させるためのパルス燃焼を決定及び実行することができる。
【0030】
方法300は、宇宙機の軌道離脱の一部としての、軌道離脱目標設定(deorbit targeting)における燃焼予測を行うためのブロック308をさらに含む。軌道離脱目標設定における燃焼予測は、目標着地点214の決定を考慮して予測大気圏突入位置を特定すること、及び、予測大気圏突入位置を考慮して燃焼解を予測することを含む。例えば、予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標が計算される。実施例において、これは、目標着地点214に基づいて特定された大気圏突入ポイントの順伝播予測(forward-propagated prediction)、宇宙機202の現在の飛翔経路、及び、大気圏210及び宇宙機202の既知の特性に基づいて行われる。例えば、距離目標及び速度目標は、大気圏210と宇宙機202との相互作用によって生じると予想される力によって規定される制約条件下で、宇宙機が予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標に相当し得る。また、ブロック308は、この距離目標及び速度目標を用いて、予測大気圏突入位置からの宇宙機202の逆伝播軌道状態予測(back-propagated orbit state estimate)を求めることを含む。逆伝播に関するさらなる詳細は、図5Aに関連させて後述する。逆伝播軌道状態が宇宙機202の実際の軌道状態に緊密に一致する場合、対応する燃焼解が実現可能であることを示す。従って、ブロック308は、逆伝播軌道状態が宇宙機202の既知の軌道状態に収束したかどうかを判定することを含む。収束に関するさらなる詳細は、図5Aに関連させて後述する。収束が存在する場合、パルス燃焼について、点火時間及び速度ベクトルなどの燃焼解を予測大気圏突入位置に基づいて予測することができる。
【0031】
方法300は、宇宙機の軌道離脱の一部としての、軌道離脱目標設定の燃焼調整を行うためのブロック308をさらに含む。軌道離脱目標設定の燃焼調整は、宇宙機を軌道離脱させるための実燃焼解(actual burn solution)を計算することを含む。実燃焼解は、例えば、推進システム124の1つ以上のスラスタによって実行されるパルス燃焼に対応する。ブロック310は、ブロック308で求められた燃焼解を変更して実燃焼解に収束させるために、より高次の重力モデルなどの追加の要素を考慮に入れることを含む。ブロック310のさらなる詳細については後述する。
【0032】
方法300は、宇宙機の軌道離脱の一部としての軌道離脱ガイダンスのブロック312をさらに含み、当該ブロックでは、軌道離脱中に継続的なエラーチェック及び調整が行われる。例えば、安定化システム126が軌道離脱中に制御されて、天体216の地表面に対する軌道離脱中の宇宙機202の配向を維持する。方法300の各側面について、以下にさらに詳述する。
【0033】
方法300のブロック304に戻ると、図4Aは、例示的な実施態様による、宇宙機202を軌道離脱させるための着地点選択の方法のフローチャートを示している。ブロック400において、機能は、入力を受信することを含む。当該入力は、宇宙機202の位置、宇宙機202の軌道状態204、及び宇宙機202の高度を示すセンサデータを含み得る。例えば、このセンサデータは、方法300のブロック302において、アビオニクス装置112のうちの1つ以上によって取得することができる。受信される入力は、宇宙機202の軌道離脱に関連付けられた時間枠、及び、推進システム124に対応する推進システムの種類も含み得る。時間枠及び推進システムの種類は、例えば、方法300のブロック306において、ユーザインターフェース110を介して受信される。
【0034】
ブロック402において、機能は、着地点選択を初期設定することを含む。例えば、これは、入力として受信した時間枠の期間を判定すること、及び、受信センサデータが、閾値速度、大気圏210に対する閾値角度、及び、閾値高度などの所定の制約内に収まるかどうかを判定することを含み得る。例えば、宇宙機が大気圏から遠く離れて飛行しているにもかかわらず狭い時間枠を選択すると、演算装置102は、ユーザインターフェース110を介してエラーメッセージを与えることにより、その選択が無効又は実行不可能であるとユーザに警告する。ブロック402の機能は、目標着地点を選択するために、受信した入力から情報を抽出することをさらに含む。例えば、機能は、天体216の地表面に対する宇宙機202の速度を判定することを含み得る。
【0035】
ブロック404において、機能は、宇宙機202の状態を、選択された時間枠の始点に伝播させることを含む。例えば、時間枠が、選択時刻から1時間後に開始し、選択時刻の2時間後に終了すると仮定する。この場合、宇宙機202の状態を選択時間枠の始点に伝播させることは、宇宙機の飛翔経路、宇宙機の高度、及び大気圏210への突入インターフェースの高度に基づいて、宇宙機202の現在の飛翔経路及び天体216の既知の回転を用いて、選択時刻から1時間後の宇宙機202の位置を予測することを含み得る。これによって、宇宙機202は、最も早い機会に着地点に到達し得る。図2に示した例のシナリオでは、宇宙機202の伝播された状態は、大気圏突入位置208に対応し得る。
【0036】
ブロック406において、機能は、陸上候補を探索することを含む。具体的には、これは、上記の伝播状態又は任意の伝播状態から、時間枠内にいずれかの既知の地上位置に到達可能かどうかを判定することを含む。従って、陸上候補を探索することは、宇宙機202が大気圏210に入った際に時間枠内に到達可能な天体216上の領域を特定すること、データベース128から既知の地上位置を抽出すること、及び、これらの既知の地上位置のうち、天体216の上記領域に入っているものがあれば、それを特定すること、を含み得る。宇宙機202が大気圏210に入った際に時間枠内に到達可能な天体216上の領域を特定することは、宇宙機202の現在の飛翔経路、時間枠の開始時刻、時間枠の終了時刻、及び、天体216の既知の回転に基づいて可能性のある突入位置の範囲を特定すること、及び、当該可能性のある突入位置の範囲から到達可能な天体216上の領域を特定することを含み得る。機能は、上記領域に入っている地上位置のうちのいずれが宇宙機202に最も近いアプローチを提供するかを特定すること、及び、この最も近いアプローチが許容可能なクロスレンジ距離(cross-range distance)を含むかどうかを判定することを、さらに含み得る。クロスレンジ距離とは、例えば、宇宙機202のダウンレンジ軌道(downrange orbit)からの横方向の距離である。許容可能なクロスレンジ距離は、例えば、宇宙機202のダウンレンジ経路から200kmなどの閾値距離である。陸上候補の探索については、後に詳述する。
【0037】
時間枠に対応する陸上の着地点が見つかると、機能は、機能状態408を経て機能状態414に進み、ブロック304に関連する機能が終了してブロック308が開始する。陸上の着地点が見つからなかった場合、ブロック410の機能が実行される。
【0038】
ブロック410において、機能は、水上候補を探索することを含む。例えば、ブロック406で陸上候補が特定されなかった場合、水上候補の探索が行われる。これは、データベース128から水面上の所定の多角形を抽出することを含み得る。所定の多角形は、例えば、緊急着地シナリオに適していると判断された水域上の場所である。従って、水上候補を探索することは、宇宙機202が大気圏210に入った際に時間枠内に到達可能な天体216上の領域を特定すること、データベース128から水面上の所定の多角形を抽出すること、及び、これらの所定の多角形の任意のいずれかの部分が、天体216の上記領域に入っているかどうかを判定することを含み得る。宇宙機202が大気圏210に入った際に時間枠内に到達可能な天体216上の領域を特定することは、ブロック406について上述したのと実質的に同様に行うことができる。機能は、上記領域に入っているこれらの所定の多角形のうちのいずれが宇宙機202に最も近いアプローチを提供するかを特定すること、及び、この最も近いアプローチが許容可能なクロスレンジ距離を含むかどうかを判定することを、さらに含み得る。水上候補の探索については、後に詳述する。
【0039】
時間枠に対応する水上地点が見つかると、機能は、機能状態408を経て機能状態414に進み、ブロック304に関連する機能が終了してブロック308が開始する。水上の着地点が見つからなかった場合、ブロック412の機能が実行される。
【0040】
ブロック412において、機能は、時間枠の終了時刻にパルス燃焼を設定することを含む。機能は、時間枠の終了時刻に対応する着地点であって、時間枠の終了時刻をパルス燃焼の点火時刻とした場合に、推進システムの種類に鑑みて宇宙機202の能力範囲内である着地点を特定することをさらに含む。機能は、機能状態414に進んでブロック308を開始させることをさらに含む。
【0041】
図4Bは、例示的な実施態様による、図4Aに示した方法で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、図4Bは、ブロック406による陸上の着地点の選択のさらなる詳細を示している。ブロック416において、機能は、宇宙機202の状態を順方向に次の時間ステップに伝播することを含む。各時間ステップは、例えば、時間枠の増分である。例えば、時間枠が選択時刻の1時間後に開始し選択時刻の2時間後に終了する場合、各時間ステップは、開始時刻(選択時刻から1時間後)と終了時刻(選択時刻から2時間後)との間に、さらに5分を追加する。これによれば、ブロック406の実行により、宇宙機202は、時間枠内の実質的に最も早い実現可能時刻にパルス燃焼を実行することができる。状態を順方向に伝播することは、例えば、予想された大気圏突入ポイントに基づいて決定することができ、宇宙機の伝播状態から到達可能な天体216上の領域を特定することを含み得る。機能は、いずれかの地上位置が前記領域に入っているかどうかを判定することをさらに含む。
【0042】
ブロック418において、機能は、ブロック416で特定された領域に入っている各地上位置(例えば陸上の地点)までのクロスレンジを算出することを含む。各地点のクロスレンジ(CR)を求めることは、上記領域に入っている各地上位置について、宇宙機202のダウンレンジ軌道からの横方向の距離を求めることを含み得る。これらの地上位置のうちの1つ以上について許容可能なクロスレンジ(すなわち、例えば200kmなどの閾値クロスレンジ以下のクロスレンジ)が検出された場合、最小のCRが検出され、ブロック418はブロック422に進む。上記領域に入っている地上位置が無い場合、あるいは、上記最小のクロスレンジに対応する地上位置が無い場合、最小のCRは検出されず、ブロック418は、機能状態420に進む。
【0043】
ブロック422において、機能は、ブロック416及び418で特定された1つ以上の軌道離脱候補を評価することを含む。これは、推進システム124の能力などのビークルの制約に照らして条件をチェックすること、パルス燃焼の目標点火時刻を予測すること、及び、対応する地上位置が、予想着地時刻に宇宙機202が着陸できる位置であると確認するなどによって、軌道離脱候補が有効であると確認することを伴う。軌道離脱候補が有効である場合、あるいは、別の有効地点を見つけられないまま伝播状態が時間枠の終点まで進んだ場合、ブロック422は、機能状態408に進む。軌道離脱候補が有効ではなく、且つ、伝播状態が時間枠の終点まで進んでいない場合、ブロック422は、機能状態420に進む。ブロック418又は422で有効な軌道離脱候補が検出されなかったことを表す信号を受信すると、機能状態420は、プロセスを再びブロック416に戻し、同ブロックにおいて、宇宙機202の伝播状態を次の時間ステップまで増分させる。時間枠を通してこのように反復することにより、当該プロセスは、軌道離脱のための時間枠の始点により近い地上位置を優先させることができる。1つ以上の地上位置について反復した後でも着地点が見つからなかった場合、ブロック406は、ブロック410に進む。ブロック410は、ブロック406と平行して行われるか、あるいは図4Aに示したようにブロック406の完了後に行われるかのいずれかである。
【0044】
図4Cは、例示的な実施態様による、図4Aに示した方法で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、図4Cは、ブロック410による水上の着地点の選択のさらなる詳細を示している。ブロック424において、機能は、宇宙機の飛翔経路(例えば1つ以上の候補)が、どこで水面上の到達可能な各多角形に入るかを判定することを含み、本明細書ではこれらの多角形を場合によっては水域多角形と称する。これは、水域多角形に入る宇宙機202の可能性のある飛翔経路の其々について、水域多角形の境界線上に位置する始点及び終点を特定することを含み得る。
【0045】
ブロック426において、機能は、各水域多角形について、宇宙機202がどこで多角形の境界を横切るかに基づいて、1つ以上の着地目標(例えば、特定の水上着地候補に関連付けられた1つ以上の位置)を決定することを含む。これは、上記始点又は終点を着地目標として使用すべきかどうかを判定すること、及び、上記始点及び終点のいずれかまたは両方を着地目標として使用することを含み得る。着地目標は、「水上地点」と称することができる。
【0046】
ブロック428において、機能は、ブロック426で決定された1つ以上の着地目標を評価することによって、1つの着地目標を選択すること、あるいは、目標枠の終点を検出することを含む。これは、推進システム124の能力などのビークルの制約に照らして条件をチェックすること、パルス燃焼の目標点火時刻を評価すること、及び、対応する水域多角形が、予想着地時刻に宇宙機202が着地できる位置であると確認するなどによって、着地目標に対応する軌道離脱候補が有効であると確認することを伴う。軌道離脱候補が有効であり、これにより着地目標が選択された場合、あるいは、有効な着地目標を見つけられないまま伝播状態が時間枠の終わりまで進んだ場合、ブロック428は、機能状態408に進む。有効な軌道離脱候補が無く、着地目標が選択されなかった場合、ブロック428は、図4Aに示したように、ブロック412に進む。
【0047】
図5Aは、例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるための軌道離脱目標設定方法のフローチャートである。具体的には、図5Aは、方法300のブロック308に関するさらなる詳細を示している。ブロック500において、機能は、入力を受信することを含む。例えば、入力は、ブロック302からのセンサデータ、ブロック304からの目標着地点、及び、ブロック306からのユーザ入力に対応し得る。ブロック502において、機能は、現在時刻がブロック306で決定された選択時間枠の終点より後かどうかを判定することを含む。時間枠が終了していない場合、ブロック502はブロック504に進む。
【0048】
ブロック504において、機能は、宇宙機202の突入インターフェース予測タスクを初期化することを含む。具体的には、突入インターフェース予測タスクを初期化することは、目標着地点214に関連する着地点データを受信することを含む。着地点データは、目標着地点214の座標を含み得る。ここでの機能は、受信した着地点データに基づいて、宇宙機202と予測大気圏突入位置との間の予想距離に関連する距離目標、予測大気圏突入位置に到達する際の宇宙機202の予想速度に関連する速度目標、及び、予測大気圏突入位置に到達する際の宇宙機202の経路に対応する経路角度(path-angle)を予測することを含む。例えば、経路角度は、大気圏210に対して接線方向に延びる線に対して求められる。予測大気圏突入位置は、宇宙機202が目標着地点214に到達するために大気圏210と干渉する地点に相当する。例えば、この地点は、図2に示した大気圏突入位置208と同じであり得る。
【0049】
目標距離、目標速度、及び、経路角度を決定することは、例えば、宇宙機202から目標着地点214までの1つ以上の目標ライン(target lines)に基づいて行われる。例えば、目標距離、目標速度、及び、経路角度は、一般的に、天体216の重力を考慮した宇宙機の慣性に影響される。着地点データ及びこれに対応する目標ラインは、トポデティック座標系(topodetic coordinate)または測心座標系(topocentric coordinate)及び対応する四元数などの3次元(3D)基準系に従って規定することができる。
【0050】
ブロック506において、機能は、宇宙機202及び大気圏210の既知事項を考慮して、初期設定の距離目標、速度目標、及び経路角度を用いた突入インターフェースを予測することを含む。例えば、当該機能は、大気圏210と干渉する際に宇宙機202にかかる力を考慮して、距離目標、速度目標及び経路角度のうちの1つ以上を調整することを含み得る。これにより、軌道状態を逆伝播させて距離目標、速度目標及び経路角度を調整する前に、宇宙機202の経路が最適に近いものとなり得る。
【0051】
ブロック508において、機能は、距離目標及び速度目標に対応する予測大気圏突入位置からの逆伝播を行うこと、及び、宇宙機202の逆伝播による軌道状態予測を、宇宙機202の現在の軌道状態などの宇宙機202の既知の軌道状態と比較することを含む。説明のために、例えば、宇宙機202の現在の軌道状態が、図2に示した軌道状態204であると考える。
【0052】
逆伝播軌道状態が既知の軌道状態と交差しない場合(例えば、逆伝播軌道状態の経路が既知の軌道状態の経路を横切らない場合)、あるいは、これらの経路が閾値量異なる場合(例えば、其々に対応する経路が、0.001度などの閾値角度を超えた角度で互いに交差する場合)、逆伝播軌道状態は、既知の軌道状態に収束しない。この場合、例えば、プロセスは、逆伝播軌道状態と既知の軌道状態とが収束して実質的に一致するまで(例えば、一直線状になるか、あるいは交差して0.001度などの閾値角度未満の角度を形成する経路を有するまで)、距離目標、速度目標、及び経路角度のうちの1つ以上を調整しつつ、ブロック502から508までを繰り返す。距離目標、速度目標、及び、経路角度のうちの1つ以上を調整することは、これらの要素を調整することにより、逆伝播軌道状態の経路と既知の軌道状態の経路との間の角度などの、逆伝播軌道状態と既知の軌道状態との差異を修正することを含み得る。逆伝播軌道状態が既知の軌道状態に収束すると、ブロック508は、ブロック510に進み得る。
【0053】
ブロック510において、機能は、宇宙機202の燃焼予測を計算することを含む。具体的には、燃焼予測は、宇宙機202の推進システム124の予測点火時刻、及び、パルス燃焼を行うための推進システム124の予測燃焼速度ベクトルを含み得る。予測点火時刻及び予測燃焼速度ベクトルは、例えば、推進システム124の既知のスラスト定格、宇宙機202の質量、宇宙機の抵抗因子といった宇宙機202の既知事項を考慮した上で、宇宙機202が収束した距離目標、速度目標、及び経路角度のうちの1つ以上に適合する態様で推進されるように設定される。従って、宇宙機の燃焼予測を計算することは、宇宙機202の現在の軌道状態及び宇宙機202の既知事項を考慮した上で、距離目標、速度目標及び経路角度に適合する点火時刻及び燃焼速度ベクトルを特定することを、少なくとも含む。燃焼速度ベクトルは、このような適合を実現するために、宇宙機の飛翔経路の相対的な変化に従って増減させることができる。ブロック502において、時間枠が終了していた場合、燃焼予測は、最も近い逆伝播軌道状態に基づいて求めることができる。さらに、図5Aには示していないが、逆伝播軌道状態が既知の軌道状態に収束すると判定された場合でも、時間枠が終了するまでブロック502から508を繰り返して燃焼予測を改善してもよい。これにより、計算されたパルス燃焼をできるだけ正確なものとすることができ、軌道離脱中に必要となる調整を低減することができる。
【0054】
図5Bは、例示的な実施態様による予測大気圏突入位置からの軌道状態の逆伝播の一例を示している。より具体的には、図5Bは、既知の軌道状態に収束しない逆伝播軌道状態予測512を示している。
【0055】
例示のために、逆伝播軌道状態予測512は、ブロック506で宇宙機202と大気圏210との干渉を考慮して調整することができる状態である。例えば、逆伝播軌道状態予測512の経路514は、大気圏210の突入インターフェースにおける接線方向に延びる接線518と実質的に共線的に延びている。従って、経路514では、うまく軌道離脱せずに突入インターフェースをスキップしてしまう可能性がある。
【0056】
経路514は、距離目標、速度目標、及び、経路角度のうちの1つ以上を表している。逆伝播軌道状態予測512は、既知の軌道状態(例として軌道状態204として描かれている)における宇宙機202の位置での、経路514に対する接線である飛翔経路として描かれている。逆伝播軌道状態予測512は既知の軌道状態と交差するが、経路514と既知の軌道状態の経路(第1経路206として描かれている)との間に形成される角度516は、閾値角度(例えば0.001度)より大きい。従って、図示の例では、逆伝播軌道状態予測512は既知の軌道状態に収束せず、ブロック502~508の繰り返しが続けられることになる。従って、ブロック504及び506の一方又は両方において、収束する逆伝播軌道状態を達成すべく、目標距離、目標速度、又は経路角度を調整する。
【0057】
図6Aは、例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させるための燃焼調整方法のフローチャートである。具体的には、図6Aは、方法300のブロック310に関するさらなる詳細を示している。ブロック600において、機能は、宇宙機202を軌道離脱させるための実燃焼解を求めることを含む。これらの機能は、ブロック308で求められた予測点火時刻及び予測燃焼速度ベクトルを受信すること、及び、予測点火時刻及び予測燃焼速度ベクトルのうちの1つ以上を調整することによって実パルス燃焼(actual burn pulse)を決定することを含み得る。さらに、当該機能は、予測大気圏突入位置からの現在の距離、現在の速度、予測大気圏突入位置に対する現在の経路角度、及び、宇宙機202の現在位置から目標着地点214までの目標ラインの切片及び傾き(intercept and slope)を受信することを含み得る。機能は、これらの入力に基づいて、経路角度、距離、及び、速度の収束誤差ループを用いて実燃焼解を収束させることを含む。これをどのように行うかについては、後に詳述する。
【0058】
実施例において、機能は、図5Aに関して上述した予測大気圏突入位置を用いるのではなく、順伝播大気圏インターフェースによる収束誤差ループを用いることを含み得る。ここで、順伝播大気圏インターフェースとは、予測点火時刻、予測燃焼速度ベクトル、及び、宇宙機の既知の軌道状態に基づいた、大気圏に突入する際に宇宙機にかかる力の予想される特性に対応する。
【0059】
ブロック602において、機能は、決定された実燃焼解に基づいて、宇宙機202のPEG(Powered Explicit Guidance)を求めることを含む。具体的には、機能は、実燃焼解に関連する実点火時刻及び実燃焼速度ベクトル、ならびに、例えば、宇宙機202の現在位置から目標着地点214までの目標ラインのn切片及び傾き、予測大気圏突入位置までの経路角度、及び、大気圏210の突入インターフェースからの高さを受信することを含み得る。PEGを求めることは、これらの入力を用いて、宇宙機202を標準的なPEGプロトコルに従って軌道離脱させつつ、採用される第1経路206及び第2経路212の粗調整及び微調整を行うことを含み得る。これらの機能は、演算装置102または宇宙機202の専用PEG制御装置によって行うことができる。
【0060】
ブロック604において、機能は、PEGによって行われた調整を考慮して実燃焼解の最終チェックを行うことを含む。例えば、これは、決定された解及びこれによる経路の妥当性を所定のルールに鑑みてチェックすること、宇宙機202及び/又は他の宇宙機の過去の軌道離脱によって訓練された機械学習モデルを用いて実燃焼解を分析すること、または、実燃焼解の結果をシミュレーションして、シミュレーションで得られた力が宇宙機202の定格の範囲内であること、及び、実燃焼解で宇宙機202が目標着地点214に到達可能であることを確認すること、を含み得る。実施例において、このシミュレーションは、演算装置102または別体のシミュレーションシステムによって行うことができる。
【0061】
実施例において、実燃焼解は、実点火時刻に実燃焼速度ベクトルに従って推進システム124の1つ以上のスラスタによって生成されるパルス燃焼として実現することができる。さらに、PEG粗調整及び最終チェックは、パルス燃焼の実点火時刻の前および後の両方で行うことができる。これらの工程で行われるあらゆる粗調整及び微調整は、推進システム124、安定化システム126、又はこれらの組み合わせを用いて実施することができる。
【0062】
図6Bは、例示的な実施態様による、図6Aに示した方法で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、図6Bは、ブロック600に関するさらなる詳細を示している。より具体的には、図6Bは、図6Aに関して上述した実燃焼解を決定するために用いられる収束ループの一例を示している。ブロック606において、機能は、経路角度誤差がゼロに向かって収束したかどうかを判定することを含む。経路角度誤差が収束すると、ブロック606はブロック608に進む。経路角度誤差が収束していない間は、ブロック606が繰り返される。例えば、経路角度誤差が閾値誤差率を超えているとわかった場合、実燃焼解に関連する経路角度、距離目標、及び速度目標のうちの1つ以上の更新値を用いて、ブロック606が繰り返される。ブロック608において、機能は、距離誤差がゼロに向かって収束したかどうかを判定することを含む。距離誤差が収束すると、ブロック608はブロック610に進む。距離誤差が収束していない間は、ブロック608が繰り返される。ブロック610において、機能は、速度誤差がゼロに向かって収束したかどうかを判定することを含む。速度誤差が収束していない間は、ブロック610が繰り返される。速度誤差が収束すると、ブロック610はブロック612に進む。この文脈における収束とは、例えば、誤差の各項目を、1秒あたり1メートルの誤差などの閾値より小さい値に最小化することをいう。ブロック612において、機能は、ブロック606、608、及び610において収束したかどうかを判定することを含み、そうであれば、ブロック614においてプロセスを終了する。この場合、経路角度、距離目標、及び、速度目標の最終値を用いて、実燃焼解を求めることができる。
【0063】
これに対して、ブロック610に関して上述したようにすべての項目の収束が完了していない場合、ブロック612はブロック606に進み、収束ループが繰り返される。例えば、予測点火時刻及び予測燃焼速度ベクトルの計算に用いた経路角度、距離目標、及び、速度目標を、収束ループに提供することにより、其々の誤差項目がその燃焼解の使用を容認できるほど十分に低いかどうかを判定することができ、ループを繰り返すごとに、経路角度、距離目標、及び、速度目標のうちの1つ以上を調整しつつ、これらの各誤差項目を改善することができる。誤差項目を順次評価することによって、ループが進行するにつれて信頼性を向上させることができる。例えば、距離目標誤差を計算するために用いられる経路角度の項目は、誤差閾値以下に下がっていることがすでに確認されているので、距離目標を変化させることによって収束が達成されるという信頼性が増す。
【0064】
ブロック606、608、及び610の各々において、対応する誤差項目を求めるために、経路角度、距離目標、及び速度目標のうちの1つ以上の変化を偏導関数行列に対して重み付けする微分補正を行うことができる。これらのブロックは、上記に加えて又は代えて、以下のもの、すなわち、予測大気圏突入位置からの現在の距離、現在の速度、予測大気圏突入位置に対する現在の経路角度、宇宙機202の現在の位置から目標着地点214までの目標ラインの切片及び傾き、及び、大気圏との干渉に関連する力のうちの1つ以上を入力として用いるコスト関数(cost function)の形態をとることもできる。コスト関数によって、経路角度、距離目標、及び速度目標のうちの1つ以上に関連する誤差スコアを求めることができる。これらの例において、閾値誤差スコアを用いて収束の有無を判定してもよい。他の方法で誤差項目を求めることも可能である。
【0065】
図7は、例示的な実施態様による、宇宙機を軌道離脱させる方法700のフローチャートを示している。図7に示した方法700は、例えば、図1及び図2に示したシステム100及び200と共に、あるいは、システム100及び/又は200のコンポーネントと共に、あるいは、図2に示した宇宙機202などの宇宙機と連携して採用することができる方法の一例を提示している。また、図7に関して説明する機能は、図3図4A図4B図4C図5A図5B図6A、及び図6Bについて上述した方法300による機能によって補ったり、入れ替えたり、あるいはそれらと組み合わせたりすることができる。また、装置やシステムを、図7に提示した論理機能を実行するために使用したり、実行するように構成したりしてもよい。
【0066】
いくつかの例においては、装置及び/又はシステムのコンポーネントは、これらの機能を実行するように構成されており、このような動作を実現可能なように実際に(ハードウェア及び/又はソフトウェアを用いて)構成及び組み立てがなされている。他の例においては、装置及び/又はシステムのコンポーネントは、例えば、特定の態様で操作された場合などに、これらの機能の実行に適合するように、又は、当該機能の実行が可能なように、又は、当該機能の実行に好適なように、構成することができる。方法700は、ブロック702~712のうちの1つ以上が示す1つ以上の操作、機能、又は作用を含み得る。さらに、方法700のブロック714~770は、ブロック702~712のうちの1つ以上に従って行うことができる。ブロックは順番に示されているが、これらのブロックを平行して行ったり、ここでの説明とは異なる順序で行ったりしてもよい。また、所望の実施態様に応じて、様々なブロックを統合してブロックの数を減らしたり、分割してブロックを追加したり、省いたりすることもできる。
【0067】
なお、本明細書に開示する当該及びその他のプロセス及び方法に関し、フローチャートは、本実施例の1つの可能な実施態様における機能及び動作を示している。この点において、各ブロック又は各ブロックの一部は、モジュール、セグメント、又はプログラムコードの一部を表す場合があり、これらは、当該プロセスにおける特定の論理機能又はステップを実施するためにプロセッサによって実行可能な1つ以上の命令を含む。プログラムコードは、例えばディスクやハードドライブを含む記憶装置などの任意の種類のコンピュータ可読媒体又はデータストレージに保存することができる。また、プログラムコードは、機械可読形式のコンピュータ可読記憶媒体や、その他の非一時的な媒体もしくは製造品にエンコードすることができる。コンピュータ可読媒体は、例えば、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、及びランダムアクセスメモリ(RAM)のような短期間データを保存するコンピュータ可読媒体などの、非一時的なコンピュータ可読媒体またはメモリを含み得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、光ディスクまたは磁気ディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)などの二次または永続的長期ストレージなどの非一時的媒体も含み得る。コンピュータ可読媒体は、任意の他の揮発性又は不揮発性の記憶システムであってもよい。コンピュータ可読媒体は、例えば、有形のコンピュータ可読記憶媒体であると考えることができる。
【0068】
さらに、図7及び本明細書に開示の他のプロセス及び方法の各ブロックまたは各ブロックの一部は、プロセス内の特定の論理機能を実行するように配線された回路を表し得る。代替の実施態様が本開示の実施例の範囲内に含まれており、これらの代替の実施態様では、図示及び記載したものとは異なる順序で機能を実行する場合があり、当業者であればわかるように、これには、その機能性に応じて、機能を実質的に同時に行うことも逆の順序で行うことも含まれる。
【0069】
方法700は、ブロック702において、宇宙機202の演算装置102によって、宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点214を選択することを含む。目標着地点214を選択することは、図3図4A図4B及び図4Cならびにそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0070】
実施例において、当該方法は、宇宙機202を軌道離脱させることに関連する所定の時間枠を受信することを含み得る。例えば、所定の時間枠は、ユーザインターフェース110を介して受信することができる。ブロック704~710は、宇宙機202の軌道離脱に関連する前記所定の時間枠内で行われ得る。
【0071】
方法700は、ブロック704において、演算装置102によって、予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定することを含み、ここで、予測大気圏突入位置は、目標着地点214に到達するために宇宙機202が大気圏210と干渉する地点に相当する。距離目標及び速度目標を決定することは、図3図5A(特にブロック504及び506)及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0072】
方法700は、ブロック706において、演算装置102によって、宇宙機202の逆伝播軌道状態予測512を求めることを含み、ここで、宇宙機202の逆伝播軌道状態予測512は、距離目標及び速度目標に基づいて予測大気圏突入位置から求められた宇宙機202の予測位置及び経路角度に相当する。宇宙機202の逆伝播軌道状態予測512を求めることは、図3図5A(特にブロック508)、図5B及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0073】
方法700は、ブロック708において、演算装置102によって、逆伝播軌道状態予測512を宇宙機202の既知の軌道状態と比較して、逆伝播軌道状態予測512が既知の軌道状態に収束しているか判定することを含む。代替の実施例の範囲において、逆伝播軌道状態予測512を宇宙機202の既知の軌道状態と比較した結果、逆伝播軌道状態予測512が既知の軌道状態に収束していないか判定する。このような場合、宇宙機202の既知の軌道状態に収束する距離目標及び速度目標が演算装置102によって求められるまで、さらなる距離目標及び速度目標を求めることができる。実施例において、宇宙機の既知の軌道状態は、例えば、宇宙機202の現在の軌道状態である。逆伝播軌道状態予測512を宇宙機202の既知の軌道状態と比較して、逆伝播軌道状態予測512が既知の軌道状態に収束しているか判定することは、図3図5A(特にブロック508)、図5B及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0074】
方法700は、ブロック710において、逆伝播軌道状態予測が既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、演算装置102によって、前記距離目標及び速度目標を用いて(a)宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算することを含む。宇宙機の推進システムの予測点火時刻及び推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算することは、例えば、推進システム124によって実行されるパルス燃焼に対応し、図3図5A(特にブロック510)、図5B及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0075】
方法700は、ブロック712において、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び予測燃焼速度ベクトルに従って、推進システム124によってパルス燃焼を行うことを含む。パルス燃焼を行うことは、図3図6A図6B及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0076】
図8は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。方法700のブロック714、716、及び718は、ブロック702に従って行われる。方法700は、ブロック714において、演算装置102のユーザインターフェース110を介して、宇宙機を軌道離脱させるための所定の時間枠の選択を受信することを含む。実施例において、時間枠を選択することによって、演算装置102の軌道離脱機能が自動的にトリガーされてもよい。方法700は、ブロック716において、複数の地上位置を決定することを含み、ここで、前記複数の地上位置は、宇宙機202の既知の軌道状態及び宇宙機を軌道離脱させるための所定の時間枠に基づいて、宇宙機202によって到達可能な位置である。例えば、これらの複数の地上位置は、データベース128から抽出することができる。方法700は、ブロック718において、宇宙機202を軌道離脱させるための目標着地点214を複数の地上位置から選択することを含む。ブロック714、716及び718は、図3図4A図4B及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0077】
図9は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。方法700のブロック720及び722は、ブロック702に従って行われる。方法700は、ブロック720において、前記複数の地上位置の其々に関連付けられる優先度レベルを、少なくとも、各位置に関連する位置の種類に基づいて決定することを含む。例えば、第1の地上位置は、当該第1の地上位置が第1の国にあることに基づく第1優先度レベルを有し、第2の地上位置は、当該第2の地上位置が第2の国にあることに基づく第2優先度レベルを有するとする。この場合、例えば、第1の地上位置が宇宙機202の自国と関連しているという理由で、第1の優先度が第2の優先度より高いとしてもよい。方法700は、ブロック722において、最も高い優先度レベルを有する着地点を選択することを含む。このようにして、状況に応じて着地点に優先順位を付ける機能を実行することができる。
【0078】
図10は、例示的な実施態様による、図7及び図9に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、図10は、宇宙機202が地上位置のデータベース128を含む例を示している。ブロック724は、例えば、ブロック720に従って行われる。ブロック724において、複数の地上位置の其々に関連付けられる優先度レベルを決定することは、地上位置のデータベース128から各優先度レベルを抽出することを含む。
【0079】
図11は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。ブロック726及び728は、ブロック702に従って行われる。方法700は、ブロック726において、目標地上位置の地図に基づいて、地図上のどの指定着陸施設も、宇宙機202の既知の軌道状態及び宇宙機202を軌道離脱させるための所定の時間枠に基づけば到達可能でないと判定することを含む。このような場合、指定着陸施設の地図は、例えば、データベース128に保存されている。方法700は、ブロック728において、どの指定着陸施設も到達可能でないと判定したことを受けて、宇宙機202の既知の軌道状態及び宇宙機を軌道離脱させるための所定の時間枠に基づいて到達可能な緊急着地位置を選択することを含む。例えば、緊急着地位置は、水域多角形に相当し、緊急着地位置は、水面上のエリアを画定する水域多角形に相当する。例えば、上述したように、水域多角形によって規定されるエリアは、実現可能な緊急着地ゾーンを構成することができる。実施例において、これらの着地ゾーンは、優先度及び/又は安全度の格付けによって分類することができる。ブロック726及び728は、図3図4A図4C及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0080】
図12は、例示的な実施態様による、図7及び図11に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。ブロック730及び732は、ブロック728に従って行われる。方法700は、ブロック730において、宇宙機の軌道経路が水域多角形の境界を横切るか判定することをさらに含む。実施例において、この軌道経路は、例えば、宇宙機202の現在の軌道状態に基づいた投射経路、または、時間枠及び大気圏210の既知の特性を含む制約条件を考慮した宇宙機202の予想軌道離脱に対応する。ブロック732において、方法700は、宇宙機の軌道経路が水域多角形の境界を横切ると判定したことを受けて、前記緊急着地位置を選択することをさらに含む。このような場合、前記緊急着地位置は、前記軌道経路が前記水域多角形を横切る第1の位置か、前記軌道経路が前記水域多角形を横切る第2の位置のいずれかに相当し得る。さらなる実施例において、前記緊急着地位置は、水域多角形を横切って延びる軌道経路上にある地点など、水域多角形内の位置であってもよい。このようにして、いずれの指定着陸施設も時間枠内に到達可能でない場合、宇宙機202は、実現可能な緊急着地位置を迅速に決定することができる。
【0081】
図13は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。方法700は、ブロック734において、複数の地上位置の其々への宇宙機202の予想到着時刻を求めることを含む。ブロック736及び738は、ブロック702に従って行われる。方法700は、ブロック736において、各地上位置の着地点スコアを、其々の予想到着時刻及び其々の優先度レベルに基づいて求めることを含む。例えば、着地点スコアは、其々の地上位置に対応する予想到着時刻及びクロスレンジに基づいて、重み付けされる。方法700は、ブロック738において、宇宙機202を軌道離脱させるための目標着地点214として、複数の地上位置の中から着地点スコアの最も高い特定の地上位置を選択することを含む。
【0082】
図14は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、ブロック740及び742は、例えばブロック708の前に行われ、実施例において、ブロック702、704、及び706のうちの1つ以上と同時に行うことができる。方法700は、ブロック740において、宇宙機の1つ以上のセンサから、少なくとも前記宇宙機202の位置及び速度を示すセンサデータを受信することを含む。例えば、前記1つ以上のセンサは、アビオニクス装置112のうちの1つ以上に相当する。方法700は、ブロック742において、宇宙機202の既知の軌道状態をセンサデータに基づいて判定することを含む。ブロック740及び742は、図1図3及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0083】
図15は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、ブロック744は、ブロック710の前に行われ得る。例えば、宇宙機は、軌道離脱目標設定のタスクが開始された際に、ユーザインターフェース110を介して推進システムの種類の表示を受信する。あるいは、例えば、宇宙機は、特定の種類の推進システムに関連付けられており、この推進システムの種類の表示が、宇宙機を発射する前にメモリ106に格納される。方法700は、ブロック744において、推進システム124の種類を特定することを含む。ブロック746は、ブロック710に従って行われる。方法700は、ブロック746において、宇宙機202の推進システム124の予測点火時刻及び推進システムの予測燃焼速度ベクトルを、推進システム124の種類に基づいて計算することを含む。
【0084】
図16は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。ブロック748は、ブロック710に従って行われる。方法700は、ブロック748において、宇宙機202の推進システム124の予測点火時刻及び推進システムの予測燃焼速度ベクトルを、予測大気圏突入位置における大気圏に対する宇宙機202の所望の経路角度及び宇宙機の所望の速度に基づいて計算することを含む。例えば、前記所望の経路角度及び所望の速度は、図3図5A図5Bについて上述した経路角度及び速度目標に相当し得る。
【0085】
図17は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、ブロック750及び752は、ブロック710の前に行われ得る。実施例においては、ブロック750及び752は、ブロック706及び708と同時に行われる。方法700は、ブロック750において、宇宙機の対応する既知の軌道状態に収束する逆伝播軌道状態予測を有する一組の距離目標及び速度目標を求めることを含む。例えば、前記一組の距離目標及び速度目標は、図5Aに示したブロック308のフローチャートのブロック502~508を繰り返すことに対応し得る。方法700は、ブロック752において、前記一組の距離目標及び速度目標の中から、対応する既知の軌道状態に最も緊密に収束する逆伝播軌道状態を有する最適な距離目標及び速度目標を選択することを含む。この場合、最も緊密に収束する逆伝播軌道状態予測とは、例えば、宇宙機202の投射経路と最も揃っているもの、あるいは、図5Bに示した角度516と同様にして、宇宙機202の既知の飛翔経路に対して最も小さい相対角度を成す飛翔経路を有するものである。従って、ブロック752は、図5A及び図5Bに従って行われる。実施例において、これは、時間枠が終了するまでブロック502~508を繰り返して、宇宙機202の既知の軌道状態に最も緊密に収束する距離目標及び速度目標を選択することを含み得る。この例において、前記距離目標及び速度目標は、前記一組の距離目標及び速度目標のうちの最適な距離目標及び速度目標に相当する。ブロック754は、ブロック710に従って行われる。方法700は、ブロック754において、宇宙機202の推進システム124の予測点火時刻及び推進システム124の予測燃焼速度ベクトルを、前記一組の距離目標及び速度目標のうちの最適な距離目標及び速度目標を用いて計算することを含む。
【0086】
図18は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。具体的には、ブロック756~764は、ブロック712の前に行われ得る。さらに、実施例では、ブロック756~764は、ブロック710の後に行われ得る。方法700は、ブロック756において、順伝播大気圏インターフェースを求めることを含み、ここで、順伝播大気圏インターフェースは、予測点火時刻、予測燃焼速度ベクトル、及び、宇宙機202の既知の軌道状態に基づいた、大気圏に突入する際に宇宙機にかかると予想される力の特性に対応する。例えば、順伝播インターフェースは、図6Aについて上述した予測大気圏突入位置に対応し得る。ブロック758において、方法700は、前記予想される力の特性に基づいた順伝播大気圏インターフェースにおける宇宙機202の予測距離誤差及び予測経路角度誤差を求めることを含む。例えば、これは、図6Bについて上述したコスト関数の一部として実施することができる。方法700は、ブロック760において、予測距離誤差が閾値距離誤差内に収束しているか判定することをさらに含む。方法700は、ブロック762において、予測経路角度誤差が閾値経路角度誤差内に収束しているか判定することをさらに含む。方法700は、ブロック764において、(i)予測距離誤差が閾値距離誤差内に収束していると判定したこと、及び、(ii)予測経路角度誤差が閾値経路角度誤差内に収束していると判定したことに基づいて、実点火時刻及び実燃焼速度ベクトルを計算することを含む。ブロック766は、ブロック712に従って行われる。方法700は、ブロック766において、推進システムよって、実点火時刻に実燃焼速度ベクトルに従ってパルス燃焼を行うことを含む。ブロック756~766は、図1図3図6A図6B図7及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0087】
図19は、例示的な実施態様による、図7に示した方法700で用いる手法のフローチャートを示している。方法700は、ブロック768において、パルス燃焼を実行する前に、既知の大気圏条件及び宇宙機202の既知の軌道状態に基づいて、予測点火時刻及び予測燃焼速度ベクトルに従ってパルス燃焼のシミュレーション結果を求めることを含む。方法700は、ブロック770において、シミュレーション結果に基づいて予測点火時刻及び予測燃焼速度ベクトルを調整することを含む。ブロック768及び770は、図1図3図6A図6B図7及びそれらに対応する説明に従って行うことができる。
【0088】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例を含む。
【0089】
付記1. 宇宙機を軌道離脱させる方法であって、前記宇宙機の演算装置によって、前記宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択し、前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、(i)前記演算装置によって、予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、(ii)前記演算装置によって、前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求められた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、(iii)前記演算装置によって、前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記演算装置によって、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算し、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って、前記推進システムによってパルス燃焼を行う、方法。
【0090】
付記2.前記目標着地点を選択するに際して、前記演算装置のユーザインターフェースを介して、前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠の選択を受信し、複数の地上位置を決定し、前記複数の地上位置は、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づいて前記宇宙機によって到達可能な位置であり、前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を前記複数の地上位置から選択する、付記1に記載の方法。
【0091】
付記3. 前記複数の地上位置から前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を選択するに際して、前記複数の地上位置の其々に関連付けられる優先度レベルを、少なくとも、各位置に関連する位置の種類に基づいて決定し、最も高い優先度レベルを有する着地点を選択する、付記2に記載の方法。
【0092】
付記4. 前記宇宙機は、地上位置のデータベースを含み、前記複数の地上位置の其々に関連付けられる前記優先度レベルを決定するに際して、地上位置の前記データベースから各優先度レベルを抽出する、付記3に記載の方法。
【0093】
付記5. 前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を前記複数の地上位置から選択するに際して、目標地上位置の地図に基づいて、前記地図上のどの指定着陸施設も、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づけば到達可能でないか判定し、どの指定着陸施設も到達可能でないと判定したことを受けて、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づいて到達可能な緊急着地位置を選択し、前記緊急着地位置は、水面上のエリアを画定する水域多角形に相当する、付記2~4のいずれかに記載の方法。
【0094】
付記6. 前記緊急着地位置を選択するに際して、前記宇宙機の軌道経路が前記水域多角形の境界を横切るか判定し、前記宇宙機の前記軌道経路が前記水域多角形の前記境界を横切ると判定したことを受けて、前記緊急着地位置を選択する、付記5に記載の方法。
【0095】
付記7. さらに、前記複数の地上位置の其々への前記宇宙機の予想到着時刻を求め、前記複数の地上位置から前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を選択するに際して、各地上位置の着地点スコアを、其々の予想到着時刻及び其々の優先度レベルに基づいて求め、前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点として、前記複数の地上位置の中から着地点スコアの最も高い特定の地上位置を選択する、
付記2~6のいずれかに記載の方法。
【0096】
付記8. さらに、前記宇宙機の1つ以上のセンサから、少なくとも前記宇宙機の位置及び速度を示すセンサデータを受信し、前記宇宙機の前記既知の軌道状態を前記センサデータに基づいて判定する、付記1~7のいずれかに記載の方法。
【0097】
付記9. さらに、前記推進システムの種類を特定し、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記推進システムの前記種類に基づいて計算する、付記1~8のいずれかに記載の方法。
【0098】
付記10. 前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記予測大気圏突入位置における前記大気圏に対する前記宇宙機の所望の経路角度及び前記宇宙機の所望の速度に基づいて計算する、付記1~9のいずれかに記載の方法。
【0099】
付記11. 前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた前記所定の時間枠内に、さらに、前記宇宙機の対応する既知の軌道状態に収束する逆伝播軌道状態予測を有する一組の距離目標及び速度目標を求め、前記一組の距離目標及び速度目標の中から、対応する既知の軌道状態に最も緊密に収束する逆伝播軌道状態を有する最適な距離目標及び速度目標を選択し、前記距離目標及び速度目標は、前記一組の距離目標及び速度目標のうちの前記最適な距離目標及び速度目標に相当し、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記一組の距離目標及び速度目標のうちの前記最適な距離目標及び速度目標を用いて計算する、付記1~10のいずれかに記載の方法。
【0100】
付記12. さらに、順伝播大気圏インターフェースを求め、前記順伝播大気圏インターフェースは、前記予測点火時刻、前記予測燃焼速度ベクトル、及び、前記宇宙機の既知の軌道状態に基づいた、前記大気圏に突入する際に前記宇宙機にかかると予想される力の特性に対応し、前記予想される力の特性に基づいた前記順伝播大気圏インターフェースにおける前記宇宙機の予測距離誤差及び予測経路角度誤差を求め、前記予測距離誤差が閾値距離誤差内に収束しているか判定し、前記予測経路角度誤差が閾値経路角度誤差内に収束しているか判定し、(i)前記予測距離誤差が閾値距離誤差内に収束していると判定したこと、及び、(ii)前記予測経路角度誤差が閾値経路角度誤差内に収束していると判定したことに基づいて、実点火時刻及び実燃焼速度ベクトルを計算し、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って、前記推進システムによって前記パルス燃焼を行うに際して、前記推進システムよって、前記実点火時刻に前記実燃焼速度ベクトルに従って前記パルス燃焼を行う、付記1~11のいずれかに記載の方法。
【0101】
付記13. さらに、前記パルス燃焼を実行する前に、既知の大気圏条件及び前記宇宙機の前記既知の軌道状態に基づいて、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って前記パルス燃焼のシミュレーション結果を求め、前記シミュレーション結果に基づいて前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルを調整する、付記1~12のいずれかに記載の方法。
【0102】
付記14. 宇宙機を軌道離脱させるためのシステムであって、宇宙機を含み、前記宇宙機は、プロセッサと、命令を格納するメモリとを有する演算装置を含み、前記命令は、以下のこと、すなわち、宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択し、前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、(i)予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、(ii)前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求めた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、(iii)前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能であり、前記推進システムは、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従ってパルス燃焼を行うように構成されている、システム。
【0103】
付記15. 前記命令は、さらに、以下のこと、すなわち、前記演算装置のユーザインターフェースを介して、前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠の選択を受信し、複数の地上位置を決定し、前記複数の地上位置は、前記宇宙機の前記既知の軌道状態及び前記宇宙機を軌道離脱させるための前記所定の時間枠に基づいて前記宇宙機によって到達可能な位置であり、前記宇宙機を軌道離脱させるための前記目標着地点を前記複数の地上位置から選択すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である、付記14に記載のシステム。
【0104】
付記16. 前記宇宙機は、複数のセンサをさらに含み、前記命令は、さらに、以下のこと、すなわち、前記宇宙機の1つ以上のセンサから、少なくとも前記宇宙機の位置及び速度を示すセンサデータを受信し、前記宇宙機の前記既知の軌道状態を前記センサデータに基づいて判定すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である、付記14又は15に記載のシステム。
【0105】
付記17. 前記宇宙機は、推進システム特性のデータベースをさらに含み、前記命令は、さらに、以下のこと、すなわち、前記推進システムの種類を特定し、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記推進システム特性の前記データベースを用いて、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記推進システムの前記種類に基づいて計算すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である、付記14~16のいずれかに記載のシステム。
【0106】
付記18. 前記宇宙機は、前記大気圏に対する前記宇宙機の経路角度及び前記宇宙機の速度に関連して、前記大気圏が前記宇宙機に及ぼす既知の力のデータベースをさらに含み、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを計算するに際して、前記宇宙機の前記推進システムの前記予測点火時刻及び前記推進システムの前記予測燃焼速度ベクトルを、前記予測大気圏突入位置における前記大気圏に対する前記宇宙機の所望の経路角度及び前記宇宙機の所望の速度に基づいて計算する、付記14~17のいずれかに記載のシステム。
【0107】
付記19. 前記宇宙機は、前記宇宙機を軌道離脱ためのシミュレーションシステムをさらに含み、前記命令は、さらに、以下のこと、すなわち、前記パルス燃焼を実行する前に、既知の大気圏条件及び前記宇宙機の前記既知の軌道状態に基づいて、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って前記パルス燃焼のシミュレーション結果を求め、前記シミュレーション結果に基づいて前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルを調整すること、を行うために前記プロセッサによって実行可能である、付記14~18のいずれかに記載のシステム。
【0108】
付記20. 命令を保存する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、演算装置の1つ又は複数のプロセッサによって実行された際に、前記演算装置に、以下の機能、すなわち、宇宙機を軌道離脱させるための目標着地点を選択し、前記宇宙機の軌道離脱に関連付けられた所定の時間枠内に、(i)予測大気圏突入位置に到達するための距離目標及び速度目標を決定し、前記予測大気圏突入位置は、前記宇宙機が前記目標着地点に到達するために大気圏と干渉する地点に相当し、(ii)前記宇宙機の逆伝播軌道状態予測を求め、前記宇宙機の前記逆伝播軌道状態予測は、前記距離目標及び前記速度目標に基づいて前記予測大気圏突入位置から求めた前記宇宙機の予測位置及び経路角度に相当し、(iii)前記逆伝播軌道状態予測を前記宇宙機の既知の軌道状態と比較して、前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束しているか判定し、(iv)前記逆伝播軌道状態予測が前記既知の軌道状態に収束していると判定したことに基づいて、前記距離目標及び前記速度目標を用いて(a)前記宇宙機の推進システムの予測点火時刻、及び、(b)前記推進システムの予測燃焼速度ベクトルを計算し、前記所定の時間枠の終了時刻またはそれ以前に、前記予測点火時刻及び前記予測燃焼速度ベクトルに従って、前記推進システムによってパルス燃焼を行う機能を実行させる、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0109】
このように、実施例において、本明細書に記載の機能を実行することができるロバスト且つ正確な搭載軌道離脱システムを説明している。このような機能を地上システムとの通信に依存せずに機上で行うことによって、開示の実施形態及び実施例は、既知の軌道状態によってリアルタイム又はほぼリアルタイムで精査されて迅速に実行される逆伝播燃焼予測を実現する。従って、選択された時間枠が狭い場合や緊急着陸が必要となった場合でも、宇宙から地上への通信による遅延及び誤差無しに、確実且つ効果的に軌道離脱プロセスを実施することができる。
【0110】
本明細書において「実質的に」、「近似」、及び「約」という用語が用いられている場合、記載された特性、パラメータ、又は値を必ずしも正確に達成する必要は無く、例えば、許容差、測定誤差、測定精度限界、及び当業者には既知の他の要因よるズレやばらつきは、その特性が提供しようとする効果を排除しない程度に生じてもよいという趣旨である。
【0111】
本明細書に開示のシステム、装置および方法の様々な実施例は、様々な部品、特徴、および機能を含む。なお、本明細書に開示されているシステム、装置、及び方法の様々な例は、本明細書に開示されているシステム、装置及び方法の他の例における部品、特徴、及び機能を、どのようなコンビネーションまたはサブコンビネーションで含んでいてもよく、このような可能性のすべては、本開示の精神及び範囲に含まれるものとする。
【0112】
様々な有利な構成の説明は、例示及び説明を目的として提示したものであり、すべてを網羅したり、開示した態様の実施例に限定したりすることを意図するものではない。多くの変更又は変形が当業者には明らかであろう。また、様々な有利な実施例においては、他の有利な実施例とは異なる効果が説明されている場合がある。選択した実施例は、実施例の原理及び実際の用途を最も的確に説明するために、且つ、当業者が、想定した特定の用途に適した種々の変形を加えた様々な実施例のための開示を理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
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図10
図11
図12
図13
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図19