(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20231016BHJP
【FI】
H01R12/71
(21)【出願番号】P 2020102280
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大坂 純士
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-206059(JP,A)
【文献】特開2019-139940(JP,A)
【文献】特開2020-42916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において相手側コネクタと嵌合可能なコネクタであって、
相手側コネクタが備える相手側コンタクトと接触するコンタクトと、
前記コンタクトが嵌め込まれて取り付けられるハウジングと、を備え、
前記コンタクトは、
前記第1方向と交差する第2方向に延び、前記第2方向における端部が前記ハウジングに圧入される被圧入部と、
前記被圧入部から、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延びた延長部と、
前記延長部から前記第1方向に延び、前記相手側コンタクトと接触する接触部と、を備え、
前記ハウジングは、
前記第1方向に立ち上がった立ち上がり部と、
前記立ち上がり部から前記第3方向に突出した突出部と、を備え、
前記被圧入部が前記ハウジングに圧入された状態では、前記第3方向における前記延長部の先端部分が、前記第1方向において前記相手側コネクタ側を向く面にて前記突出部と接触する、コネクタ。
【請求項2】
前記コンタクトが前記ハウジングに嵌め込まれる際に、前記被圧入部が前記第3方向に沿って前記ハウジングに圧入される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接触部は、前記第2方向における前記延長部の両端面から延びた一対の弾性部を有し、
前記一対の弾性部は、前記第2方向における前記延長部の中央位置を境にして対称な形状をなしており、前記コネクタが前記相手側コネクタと嵌合する際に弾性変形して前記一対の弾性部の間に前記相手側コンタクトを挟み込む、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コンタクトは、前記第3方向において前記延長部とは反対側で前記被圧入部から延びた接続部を有し、
前記接続部は、前記コネクタが実装される回路基板の表面に固定される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記延長部の先端部分に設けられた前記突出部との接触面と、前記突出部に設けられた前記延長部との接触面とは、前記第2方向及び前記第3方向に沿う平面である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記コンタクトは、高周波信号伝送用のコンタクトである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記被圧入部が前記ハウジングに圧入された状態では、前記第3方向において前記立ち上がり部が前記延長部の先端部分と隣接し、
前記突出部は、前記立ち上がり部における前記延長部側を向く面から突出している請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記被圧入部が前記ハウジングに圧入された状態で前記第1方向において前記突出部とは反対側で前記延長部と接触する規制部を備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに係り、特に、相手側コネクタと嵌合可能であり、相手側コンタクトと接触するコンタクトを備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
相手側コネクタと上下に嵌合するコネクタの一例として、特許文献1に記載のコネクタ(以下、コネクタ1という。)が挙げられる。コネクタ1は、リセプタクルコネクタであり、プラグコネクタである相手側コネクタ2と嵌合する。コネクタ1は、
図18に示すようにハウジング3と、ハウジング3に固定されたコンタクト4とを有する。ハウジング3は、環状壁3Aの内部に形成された底壁3Bと、底壁3Bの中央部分から立ち上がった凸部3Cとを有する。凸部3Cの上端部分は、
図18に示すように水平方向に鍔状に広がっている。
【0003】
コンタクト4は、弾性を有する帯状導電部材であり、環状壁3Aに設けられた溝に嵌め込まれて圧入されることでハウジング3に装着されている。コンタクト4は、
図18に示すように、回路基板に接合させる端子部4Aと、端子部4Aの一端から上方に延びた保持部4Bと、保持部4Bの一端から水平方向に延びた接続部4Cと、接続部4Cの一端から下方に延在して緩やかに水平方向に湾曲した後に上方に立ち上がって形成された湾曲部4Dとを有する。湾曲部4Dは、
図18に示すように、頂部5と、頂部5を挟んで互いに反対側に位置する2つの側部6,7と、側部7の先端からV字状に屈曲した屈曲部8とを有する。
【0004】
コネクタ1が相手側コネクタ2と嵌合する際には、
図18に示すように、相手側コネクタ2に向かって開口するように湾曲したコンタクト4の湾曲部4D内に、相手側コネクタ2のコンタクト(相手側コンタクト9)が挿入される。このとき、
図19に示すように、湾曲部4Dが相手側コンタクト9によって押し広げられて側部7が凸部3Cに近付くように弾性変形し、屈曲部8が、鍔状に広がった凸部3Cの上端部分の下側に潜り込んで係止される。この結果、コネクタ嵌合状態でのコンタクト4の上方への移動(つまり、コンタクト4の浮き上がり)が規制されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コネクタ1は、上述したように、湾曲部4Dの弾性変形時に凸部3Cに係止されるように構成された屈曲部8を備えている。言い換えれば、屈曲部8の位置は、コネクタ1に対する相手側コネクタ2の着脱に応じて変化する。そして、コネクタ1から相手側コネクタ2を外す(つまり、コンタクト4から相手側コンタクト9を抜く)場合には、
図18から分かるように屈曲部8が凸部3Cの上端部に係止されなくなり、コンタクト4の浮き上がりが規制し難くなる。
また、例えば、相手側コネクタ2の着脱の繰り返しに伴って凸部3Cの形状又は湾曲部4Dの弾性等が変化すると、コネクタ嵌合時における屈曲部8の位置が上下に変動する可能性がある。
【0007】
以上のように屈曲部8の位置が安定しない構成では、コンタクト4が意図せずに上下方向に移動し、これに起因してコンタクト4によって伝送される信号の特性等に影響を及ぼす虞がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、コンタクトの移動、特にコネクタから相手側コネクタを外す際の浮き上がりを適切に規制することが可能なコンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のコネクタは、第1方向において相手側コネクタと嵌合可能なコネクタであって、相手側コネクタが備える相手側コンタクトと接触するコンタクトと、コンタクトが嵌め込まれて取り付けられるハウジングと、を備え、コンタクトは、第1方向と交差する第2方向に延び、第2方向における端部がハウジングに圧入される被圧入部と、被圧入部から、第1方向及び第2方向と交差する第3方向に延びた延長部と、延長部から第1方向に延び、相手側コンタクトと接触する接触部と、を備え、ハウジングは、第1方向に立ち上がった立ち上がり部と、立ち上がり部から第3方向に突出した突出部と、を備え、被圧入部がハウジングに圧入された状態では、第3方向における延長部の先端部分が、第1方向において相手側コネクタ側を向く面にて突出部と接触することを特徴とする。
【0010】
上記のように構成された本発明のコネクタによれば、コンタクトの被圧入部がハウジングに圧入された状態では、コンタクトの延長部の先端部分が、第1方向において相手側コネクタ側を向く面(上面)にてハウジングの突出部と接触する。これにより、コンタクトがハウジングに嵌め込まれた状態では、コンタクトの上方移動、すなわち浮き上がりを良好に抑えることができる。
【0011】
また、上記の構成において、コンタクトがハウジングに嵌め込まれる際に、被圧入部が第3方向に沿ってハウジングに圧入されてもよい。この場合には、コネクタの嵌合方向である第1方向と、コンタクトの圧入方向である第3方向とが互いに交差し、両方向が互いに沿う構成(例えば、特許文献1の記載の構成)と比較して、より適切にコンタクトの浮き上がりを抑制することができる。なお、第1方向と第3方向とは、互いに直交しているのが好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、接触部は、第2方向における延長部の両端面から延びた一対の弾性部を有してもよい。この場合、一対の弾性部は、第2方向における延長部の中央位置を境にして対称な形状をなしており、コネクタが相手側コネクタと嵌合する際に弾性変形して一対の弾性部の間に相手側コンタクトを挟み込むとよい。
上記の構成であれば、コンタクトを相手側コンタクトと良好に接触させつつ、コンタクトの浮き上がりを適切に規制することができる。
【0013】
また、上記の構成において、コンタクトは、第3方向において延長部とは反対側で被圧入部から延びた接続部を有してもよい。この場合、接続部は、コネクタが実装される回路基板の表面に固定されるとよい。
【0014】
また、上記の構成において、延長部の先端部分に設けられた突出部との接触面と、突出部に設けられた延長部との接触面とは、第2方向及び第3方向に沿う平面であるとよい。この場合、突出部と延長部の先端部分とは、互いに平行な平面にて面接触することになるため、より確実かつ効果的に、突出部によってコンタクトの浮き上がりを規制することができる。
【0015】
また、上記の構成において、コンタクトは、高周波信号伝送用のコンタクトであると、より好適である。高周波信号伝送用のコンタクトについては、上下の位置ずれ(浮き上がり)が生じた場合に信号特性に影響が及び易くなる。したがって、本発明による浮き上がり抑制の効果が、より際立って発揮されることになる。
【0016】
また、上記の構成において、被圧入部がハウジングに圧入された状態では、第3方向において立ち上がり部が延長部の先端部分と隣接し、突出部は、立ち上がり部における延長部側を向く面から突出しているとよい。このように突出部が立ち上がり部における延長部に近い側の面から突出していれば、延長部の先端部分を突出部により簡単に接触させることができる。
【0017】
また、上記の構成において、ハウジングは、被圧入部がハウジングに圧入された状態で第1方向において突出部とは反対側で延長部と接触する規制部を備えるとよい。この場合には、コネクタに相手側コネクタを嵌合させる際、すなわちコンタクト内に相手側コンタクトが挿し込まれる際にコンタクトの下方移動(つまり、コンタクトの沈み込み)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コネクタから相手側コネクタを外す際のコンタクトの移動、特にコンタクトの浮き上がりを適切に規制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタを示す斜視図である。
【
図2】コネクタが相手側コネクタと嵌合した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコネクタの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るコネクタの底面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るコネクタの前面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るコネクタの側面図である。
【
図7】相手側コネクタを上方側から見た斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るコンタクトを後方側から見た斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るコンタクトを前方側から見た斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るコンタクトの正面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るコンタクトの平面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るコンタクトの側面図である。
【
図14】コンタクトが取り付けられたハウジングの正面図である。
【
図15】コンタクトが取り付けられたハウジングの斜視図である。
【
図16】
図2のI-I断面におけるコンタクト付近の構造を拡大して示す断面斜視図である。
【
図17】コンタクトが相手側コンタクトと接触している状態を示す斜視図である。
【
図18】従来例におけるコンタクトと相手側コンタクトとの嵌合構造を示す断面図であり、嵌合途中の状態を示す図である。
【
図19】従来例におけるコンタクトと相手側コンタクトとの嵌合構造を示す断面図であり、嵌合完了の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<<本発明の一実施形態に係るコネクタについて>>
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係るコネクタについて、添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。特に、本発明に用いられる各部品の材質及び設計寸法等については、本発明の用途及び本発明の実施時点での技術水準等に応じて自由に設定することができる。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0021】
本実施形態に係るコネクタ(以下、コネクタ10)は、リセプタクルコネクタであり、不図示の回路基板に実装され、
図1及び2に示すようにプラグコネクタである相手側コネクタ100と嵌合する。
【0022】
ここで、コネクタ10が相手側コネクタ100に嵌合する方向、すなわち、コネクタ10に対する相手側コネクタ100の着脱方向は、本発明の「第1方向」に相当し、コネクタ10の上下方向に該当する。以下では、説明の便宜上コネクタ10の嵌合方向をZ方向と呼び、Z方向においてコネクタ10から見て相手側コネクタ100が位置する側、すなわちコネクタ10の上側を「+Z側」とし、その反対側、すなわちコネクタ10の下側を「-Z側」とする。
【0023】
また、以下では、Z方向と直交する2つの方向をX方向及びY方向とする。これら3つの方向は互いに交差しており、厳密には互いに直交している。なお、本明細書において、「直交」は、コネクタの分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な直交に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含む。同様に、本明細書において、「平行」は、コネクタの分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含む。
【0024】
X方向は、本発明の「第2方向」に相当し、コネクタ10の横幅方向に該当する。Y方向は、本発明の「第3方向」に相当し、コネクタ10の前後方向に該当し、後述のハウジング20に対するコンタクト30の圧入方向である。ここで、Y方向における一方の向き(詳しくは、後述のフレーム後部16から見てフレーム前部15が位置する側)を「+Y側」とし、その反対の向きを「-Y側」とする。
【0025】
コネクタ10は、
図3~6に示す外観をなし、平面視で矩形型の外側フレーム12と、外側フレーム12の内側に配置されたハウジング20,22と、ハウジング20,22に取り付けられたコンタクト30,32とを有する。
【0026】
相手側コネクタ100は、
図7及び8に示す外観をなし、平面視で矩形状の相手側フレーム102と、相手側フレーム102の内側に配置された底壁104と、底壁104のY方向中央部で立ち上がった凸部106と、底壁104の+Y側端部及び-Y側端部の各々から隆起した隆起部108と、を有する。凸部106及び隆起部108の各々には、相手側コンタクト110,112が嵌め込まれている。相手側コンタクト110は、コネクタ10のコンタクト30と対応し、相手側コンタクト112は、コネクタ10のコンタクト32と対応する。コネクタ10のコンタクト30,32は、それぞれ、対応する相手側コンタクト110,112と接触して電気的に接続される。
【0027】
以下、コネクタ10各部の構成について説明する。
外側フレーム12は、
図3~6に示すように、X方向における両端に位置するフレーム側部13,14と、+Y側の端に位置するフレーム前部15と、-Y側の端に位置するフレーム後部16とを有する。外側フレーム12の内側には凹部空間17が形成されている。コネクタ10が相手側コネクタ100と嵌合した状態では、
図2に示すように、コネクタ10の外側フレーム12の内側に相手側コネクタ100の相手側フレーム102が嵌り込んで、凹部空間17内に相手側コネクタ100全体が収まる。
【0028】
凹部空間17内には、
図3に示すように、クロストーク対策用の一対の遮蔽シールド片18が+Y側及び-Y側にそれぞれ配置されている。+Y側に配置された一対の遮蔽シールド片18は、フレーム前部15から-Y側に若干離れた位置にあり、-Y側に配置された一対の+X側の遮蔽シールド片18は、フレーム後部16から+Y側に若干離れた位置にある。また、一対の遮蔽シールド片18は、X方向に沿って間隔を空けて直線状に並べられている。
【0029】
相手側コネクタ100には、
図7及び8に示すように、クロストーク対策用の相手側シールド片114が、コネクタ10の遮蔽シールド片18と対応させて+Y側及び-Y側にそれぞれ配置されている。コネクタ10が相手側コネクタ100と嵌合した状態では、+Y側の相手側シールド片114が+Y側の遮蔽シールド片18と組み合わされて遮蔽シールドを構成し、-Y側の相手側シールド片114が-Y側の遮蔽シールド片18と組み合わされて遮蔽シールドを構成する。これにより、+Y側のコンタクト32と-Y側のコンタクト32との間に遮蔽シールドが構築され、コンタクト間で信号(詳しくは、高周波信号)を遮蔽し、クロストークを抑えることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、
図3に示すように、外側フレーム12と一対の遮蔽シールド片18とが一体化されており、具体的には、一対の遮蔽シールド片18の各々が連結部19によってフレーム側部13,14に連結されている。
【0031】
ハウジング20,22は、絶縁性樹脂からなるインシュレータであり、凹部空間17内に配置され、外側フレーム12に対して固定されている。本実施形態では、
図3及び4に示すように、Y方向において凹部空間17の中央部分に一つのハウジング20が配置されており、Y方向の両端側にハウジング22が一つずつ配置されている。
【0032】
ハウジング20は、Y方向において、+Y側に配置された一対の遮蔽シールド片18と、-Y側に配置された一対の遮蔽シールド片18との間に配置されている。ハウジング20は、
図3に示すように、ハウジング底部20Aと、X方向中央部に位置する中央凸部20Bと、X方向において中央凸部20Bの両脇に位置する側方凸部20Cと、中央凸部20Bと側方凸部20Cの間に形成された凹部20Dとを有する。中央凸部20Bと側方凸部20Cは、それぞれ、ハウジング底部20Aから+Z側に突出し、Z方向に沿って延びている。
【0033】
ハウジング20には、
図3及び4に示すように、コンタクト30が嵌め込まれる嵌め込み溝21が複数形成されている。各嵌め込み溝21は、中央凸部20Bから凹部20Dを跨いで側方凸部20Cに亘るように形成されている。嵌め込み溝21は、ハウジング20のX方向中央位置を境にして対称な位置に配置されて対をなし、かつ、Y方向に間隔を空けながら複数個所(
図3では2箇所)に設けられている。本実施形態において、各嵌め込み溝21には低周波信号伝送用のコンタクト30、若しくは給電用のコンタクト30が嵌め込まれる。
【0034】
ハウジング22は、本発明の「ハウジング」に相当し、Y方向において一対の遮蔽シールド片18よりも外側(外側フレーム12により近い側)に配置されている。ハウジング22は、
図3に示すように+Y側及び-Y側にそれぞれ配置されているが、二つのハウジング22は、互いに前後対称に配置されているものの同様の構造であるため、以下では、+Y側のハウジング22の構造のみについて説明することとする。
【0035】
ハウジング22は、コネクタ10のX方向中央位置を境にして対称的な構造であり(例えば、
図14参照)、
図3、4及び14に示すように、ハウジング底部22Aと、ハウジング底部22AのY方向端と隣接する一対のハウジング端部22Bと、ハウジング底部22Aの+Z側の面から立ち上がった立ち上がり部22Cとを有する。
【0036】
一対のハウジング端部22Bは、
図3、14及び15に示すように、X方向において間隔を空けて配置されており、各ハウジング端部22Bは、+Z側に立ち上がり、且つX方向に沿って延びている。立ち上がり部22Cは、
図3に示すように、X方向において一対のハウジング端部22Bの間に設けられ、Y方向においてハウジング端部22Bよりも凹部空間17の中央に近い位置に、換言するとハウジング20寄りの位置に配置されている。また、
図3及び16に示すように、立ち上がり部22Cは、Y方向において遮蔽シールド片18と隣り合う位置に配置されている。
【0037】
なお、
図3に示すように、立ち上がり部22Cの+X側の端部からは、交差部22Dが+X側のハウジング端部22Bに向かってY方向に延びており、立ち上がり部22Cの-X側の端部からは、交差部22Dが-X側のハウジング端部22Bに向かってY方向に延びている。
【0038】
そして、一対のハウジング端部22Bと立ち上がり部22Cと交差部22Dとによって囲まれる凹状の空間(以下、嵌め込み空間23)には、
図3及び15に示すようにコンタクト32がY方向に沿って嵌め込まれて圧入される。
【0039】
詳しく説明すると、一対のハウジング端部22Bの各々においてX方向内側の面、すなわち嵌め込み空間23を向く側の面には圧入凹部24が形成されている。圧入凹部24は、Y方向から見て略矩形状の窪みであり、ハウジング端部22Bの-Z側の端(下端)から若干の高さを有するように+Z側へ延びており、かつハウジング端部22BのY方向外側の端から若干の奥行きを有するようにY方向に延びている。コンタクト32は、一対のハウジング端部22Bの各々に設けられた圧入凹部24を通じてハウジング22に圧入される。
【0040】
また、嵌め込み空間23内では、
図14及び16に示すように、立ち上がり部22Cにおいて嵌め込み空間23を向く側の面(換言すると、後述するコンタクト32の延長部34を向く側の面)から突出部25が突出している。突出部25は、Y方向外側に突出しており、ハウジング底部22Aよりも+Z側に位置し、厳密には、ハウジング底部22Aの+Z側の面から延長部34の厚みに相当する距離だけ離れた位置に設けられている。また、突出部25の下面(-Z側の面)は、平面であり、厳密にはXY方向に沿う平坦面である。
なお、突出部25の突出量は、コネクタ10が相手側コネクタ100と嵌合する際に相手側コンタクト112と干渉しない程度の突出量に設定されるのが好ましい。
【0041】
さらに、嵌め込み空間23内では、
図4、15及び16に示すように、ハウジング底部22Aにおいて嵌め込み空間23を向く側の面、詳しくは、X方向において一対のハウジング端部22Bの間に位置する面から規制部26が突出している。規制部26は、Y方向外側に突出しており、前述の突出部25よりも-Z側に位置し、厳密には、延長部34の厚みに相応する距離だけ突出部25から下がった位置に設けられている。また、規制部26の上面(+Z側の面)は、平面であり、厳密にはXY方向に沿う平坦面である。
【0042】
コンタクト32は、本発明の「コンタクト」に相当し、+Y側のハウジング22及び-Y側のハウジング22のそれぞれに一つずつ嵌め込まれて取り付けられる。本実施形態のコンタクト32は、高周波信号伝送用のコンタクト、すなわちRF(Radio Frequency)用の端子である。ここで、高周波とは、例えば6GHz以上の周波数帯域が該当し、具体的には5G(5th Generation)に利用される28GHz帯域を含む周波数帯域である。
【0043】
なお、コンタクト32は、高周波信号伝送用のコンタクトに限定されるものではなく、一般的な周波数帯域の信号、又は低周波信号を伝送するコンタクトでもよい。
【0044】
本実施形態のコンタクト32は、
図9~
図13に示す外観をなすように成形した金属等の導電性材料からなり、コンタクト32のX方向中央を境にして対称な形状である。コンタクト32は、X方向に延びた被圧入部33と、被圧入部33からY方向に延びた延長部34と、Y方向において延長部34とは反対側で被圧入部33から延びた接続部35と、接続部35の両脇位置からY方向に張り出た一対の張出し部36と、延長部34から+Z側に延びた接触部37とを有する。
【0045】
ここで、説明の便宜上、Y方向をコンタクト32の前後方向とし、Y方向において被圧入部33から見て延長部34が延びている側を「前側」と呼ぶこととし、接続部35が延びている側を「後側」と呼ぶこととする。
【0046】
被圧入部33は、平面視で略矩形状をなし、X方向に真っ直ぐ延びており、その両端部33Aは、
図9及び12に示すように前方の角部分が面取りされて台形形状をなしている。被圧入部33の幅(すなわち、X方向の長さ)は、一対のハウジング端部22Bの各々に設けられた圧入凹部24間の距離よりも幾分長くなっている。圧入凹部24間の距離とは、+X側のハウジング端部22Bに設けられた圧入凹部24のX方向端面と-X側のハウジング端部22Bに設けられた圧入凹部24のX方向端面との間の距離である。
【0047】
そして、被圧入部33のX方向における両端部33Aがハウジング22に対して圧入される。被圧入部33の両端部33Aの圧入については、後段で説明する。
【0048】
延長部34は、
図9に示すように、被圧入部33のX方向における中央部分の前端から前方に真っ直ぐ延びており、被圧入部33と直交している。なお、延長部34の根元部分は、
図12に示すように括れており、詳しくは根元部分のX方向両端面が円弧状に抉れている。延長部34の+Z側の面(すなわち、相手側コネクタ100を向く側の面)と、-Z側の面(すなわち、相手側コネクタ100とは反対側を向く面)とは、いずれも平面であり、厳密にはXY方向に沿う平坦面である。
【0049】
接続部35は、
図9に示すように、被圧入部33のX方向における中央部分の後端から後方に延びた後に-Z側に向かって湾曲している。接続部35の先端部分は、コネクタ10が実装される回路基板の表面(コネクタ10を向く側の面)にハンダにて接合されて固定されている。
【0050】
一対の張出し部36は、
図9に示すように、X方向において接続部35を挟む位置に配置されており、Y方向において被圧入部33の後端から後方に真っ直ぐ延びている。なお、被圧入部33、延長部34及び一対の張出し部36の各々の+Z側の表面は、XY方向に沿って連続し、互いに同一平面上にある。同様に、被圧入部33、延長部34及び一対の張出し部36の各々の-Z側の表面は、いずれもXY方向に沿って連続し、互いに同一平面上にある。
【0051】
接触部37は、
図9~12に示すように、延長部34の中途位置において延長部34のX方向における両端から+Z側に延びた一対の弾性部38を有する。一対の弾性部38は、X方向における延長部34の中央位置を境にして対称な形状をなしている。各弾性部38は、
図12に示すように、延長部34のX方向における両端から延びた後に円弧状に湾曲してX方向内側に入り込み、延長部34から+Z側に若干離れた位置にてV字状に再度屈曲してX方向外側に向かって延びている。
【0052】
接触部37は、+Z側に、一対の弾性部38の先端部分同士が離れていることで形成された開口端を有する。そして、コネクタ10が相手側コネクタ100と嵌合する際には、
図17に示すように、相手側コンタクト112が接触部37の+Z側の開口端から-Z側に挿し込まれ、一対の弾性部38の間に入り込む。このとき、一対の弾性部38は、それぞれ、X方向外側に広がるように弾性変形し、かつ弾性部38の間に相手側コンタクト112を挟み込む。これにより、接触部37は、各弾性部38においてV字状に屈曲した部分の内側面にて、相手側コンタクト112と接触する。
【0053】
上記のように構成されたコンタクト32は、ハウジング22に設けられた嵌め込み空間23内にY方向に沿って嵌め込まれることで、
図14及び15に示すようにハウジング22に取り付けられる。
詳しく説明すると、コンタクト32は、接触部37が延長部34よりも+Z側に位置した状態で把持され、延長部34の先端側(つまり、前端側)から、Y方向における嵌め込み空間23の開口端を通じて嵌め込み空間23内に挿し込まれる。このとき、被圧入部33のX方向における両端部33Aが、一対のハウジング端部22Bの各々に設けられた圧入凹部24の内側に入り込む。
【0054】
そして、コンタクト32が嵌め込み空間23の奥側に向かう際に、被圧入部33の両端部33Aの各々が、圧入凹部24のX方向端面と干渉し、X方向端面に減り込みながらY方向奥側に進む。これにより、コンタクト32の被圧入部33(厳密には、両端部33A)がY方向に沿ってハウジング22に対して圧入される。
【0055】
コンタクト32が嵌め込み空間23内に挿し込まれていくと、やがて、延長部34の先端がハウジング22の立ち上がり部22Cに突き当たる(
図16参照)。換言すると、被圧入部33がハウジング22に圧入された状態では、Y方向において立ち上がり部22Cが延長部34の先端部分34Aと隣接する。かかる位置にコンタクト32が到達した時点でコンタクト32の嵌め込みが完了し、コンタクト32がハウジング22に取り付けられる。
【0056】
コンタクト32がハウジング22に取り付けられた状態(すなわち、被圧入部33がハウジング22に圧入された状態)では、
図16に示すように、Y方向における延長部34の先端部分34Aが、突出部25の下側(-Z側)に潜り込み、延長部34の+Z側の面(上面)にて突出部25と接触する。つまり、延長部34が+Z側で突出部25により係止されるようになる。これにより、コンタクト32の上方移動(+Z側への移動)が規制される。この結果、コネクタ10に嵌合した相手側コネクタ100をコネクタ10から外す際、相手側コンタクト112の抜去時にコンタクト32が+Z側に浮き上がるのを抑えることができる。このように浮き上がりが抑制されることで、相手側コンタクト112の抜去時に大きな外力がコンタクト32に作用したとしても、コンタクト32の変形及び破損の発生を抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態では、延長部34の先端部分34Aに設けられた突出部25との接触面(つまり、+Z側の面)と、突出部25に設けられた延長部34との接触面(つまり、-Z側の面)とが、いずれもXY方向に沿う平面である。すなわち、突出部25は、延長部34の先端部分34Aと面接触する。この結果、本実施形態のコネクタ10では、前述した特許文献1に記載のコネクタ1よりも、コンタクトの浮き上がりを適切に抑えることができる。
【0058】
詳しく説明すると、特許文献1に記載のコネクタ1では、相手側コネクタ2との嵌合時に、相手側コンタクト9がコンタクト4の湾曲部4D内に挿入されることで、湾曲部4Dが弾性変形してコンタクト4の側部7が凸部3Cに近付く。この結果、屈曲部8が凸部3Cの上端部分の下側に潜り込んで係止されてコンタクト4の浮き上がりが規制される。
【0059】
以上のように特許文献1に記載のコネクタ1では、相手側コンタクト9がコンタクト4の湾曲部4D内に挿入されることで、はじめてコンタクト4の上方移動が規制されるので、相手側コンタクト9が抜き去られた場合には、コンタクト4の上方移動が規制され難くなる。また、コネクタ1では、
図19から分かるように、コンタクト4の浮き上がりを規制する上で屈曲部8の角(エッジ)が凸部3Cに当たるため、相手側コンタクト9の挿入及び抜去が繰り返されると、凸部3Cが削れて変形したり、若しくは湾曲部4D自体の弾性等が変わったりする。そのために凸部3Cと屈曲部8との接触位置が上下に変動し、結果として、Z方向におけるコンタクト4の位置が変化する虞がある。
【0060】
これに対して、本実施形態のコネクタ10では、コンタクト32がハウジング22に嵌め込まれた時点で、ハウジング22の突出部25がコンタクト32の延長部34と接触してコンタクト32を係止する。これにより、相手側コンタクト112の有無に拘わらず、コンタクト32の浮き上がりを抑えることができる。また、本実施形態では、突出部25が延長部34の先端部分34Aと面接触するので、突出部25と延長部34との接触状態を安定させ、相手側コンタクト112の挿入及び抜去を繰り返しても接触状態を良好に維持することができる。
【0061】
さらに、ハウジング底部22Aには規制部26が設けられており、被圧入部33がハウジング22に圧入されてコンタクト32がハウジング22に取り付けられた状態では、
図16に示すように、規制部26が被圧入部33及び延長部34の各々の下面(-Z側の面)と接触する。つまり、規制部26は、Z方向において突出部25とは反対側で延長部34と接触してコンタクト32を係止する。これにより、コンタクト32の下方移動(-Z側への移動)が規制され、例えば、相手側コンタクト112が挿し込まれる際のコンタクト32の沈み込みを抑えることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態のコネクタ10では、コンタクト32のZ方向における移動(位置ずれ)を適切に抑制することができる。このような効果は、コンタクト32が高周波信号伝送用のコンタクト(端子)である場合には特に有意義である。
【0063】
具体的に説明すると、コンタクト32により伝送される高周波信号の特性は、例えば前述の遮蔽シールドとコンタクト32との間のインピーダンスに依存し、インピーダンスは、遮蔽シールドとコンタクト32との間の距離に応じて変化する。ここで、コンタクト32がZ方向に僅かでも移動してしまうと、上記距離が変化し、その距離変化が高周波信号特性に影響を及ぼし得る。こうした状況の下では、本実施形態におけるコンタクト32の移動規制の効果が、より際立って発揮されるようになる。
【0064】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明のコネクタについて、具体例を挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、上記以外の実施形態も考えられ得る。
【0065】
上記の実施形態では、コンタクト32をハウジング22に嵌め込む際にコンタクト32の被圧入部33をY方向に沿ってハウジング22に圧入することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、コンタクト32をハウジング22の下方(-Z側)からZ方向に沿って圧入してもよい。
【0066】
上記の実施形態では、被圧入部33のX方向における両端部33Aが、前端角部が面取りされた台形形状であり、ハウジング端部22Bに設けられた圧入凹部24に入り込み圧入凹部24のX方向端面と干渉することでハウジング22に圧入されることとした。ただし、これに限定されるものではなく、コンタクト32をハウジング22に好適に嵌め込んで取り付けることができればよく、その限りにおいては上記以外の圧入方法を採用してもよい。
【0067】
上記の実施形態では、ハウジング22のZ方向においてコンタクト32の延長部34の上側(+Z側)で延長部34と接触する突出部25の他に、延長部34の下側(-Z側)で延長部34と接触する規制部26をハウジング22に設けることとしたが、規制部26の代わりにハウジング底部22Aを延長部34の下側(-Z側)で延長部34と接触させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 コネクタ
2 相手側コネクタ
3 ハウジング
3A 環状壁
3B 底壁
3C 凸部
4 コンタクト
4A 端子部
4B 保持部
4C 接続部
4D 湾曲部
5 頂部
6,7 側部
8 屈曲部
9 相手側コンタクト
10 コネクタ
12 外側フレーム
13,14 フレーム側部
15 フレーム前部
16 フレーム後部
17 凹部空間
18 遮蔽シールド片
19 連結部
20,22 ハウジング
20A ハウジング底部
20B 中央凸部
20C 側方凸部
20D 凹部
21 嵌め込み溝
22A ハウジング底部
22B ハウジング端部
22C 立ち上がり部
22D 交差部
23 嵌め込み空間
24 圧入凹部
25 突出部
26 規制部
30,32 コンタクト
33 被圧入部
33A 両端部
34 延長部
34A 先端部分
35 接続部
36 張出し部
37 接触部
38 弾性部
100 相手側コネクタ
102 相手側フレーム
104 底壁
106 凸部
108 隆起部
110,112 相手側コンタクト
114 相手側シールド片