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  • 特許-印刷機におけるインキ膜厚調整方法 図1
  • 特許-印刷機におけるインキ膜厚調整方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】印刷機におけるインキ膜厚調整方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20231016BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B41F33/00 238
B41F7/02 414
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020114956
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012838
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】六原 義昭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 聖子
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴彦
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-188849(JP,A)
【文献】特開平10-16193(JP,A)
【文献】特開2013-75519(JP,A)
【文献】特開2015-100971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/00-35/06
B41F 5/00-13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現ジョブの本刷りの最終段階において、インキ呼び出しローラの呼出動作を停止した状態で該本刷りを行ってインキローラ群に該現ジョブの本刷りに必要とされる最低限のインキ膜厚を残すインキリムービングを行いながら、前記本刷りの最終段階で印刷される印刷物の濃度を測定し、該測定した濃度である最終濃度と予め設定されている基準濃度とを比較し、該比較した結果に基づいて、前記インキローラ群を構成するインキローラ上のインキを掻き取るかどうかを判断することを特徴とする印刷機におけるインキ膜厚調整方法。
【請求項2】
前記判断においてインキを掻き取ることの決定は、インキツボ内からインキツボローラに供給されるインキの量を調整する複数のインキツボキー毎に対応した印刷物上の各領域において前記本刷りの濃度を測定し、該各領域のうち前記最終濃度が前記基準濃度まで下がっていない領域の割合が所定割合以上の場合に行われることを特徴とする請求項1に記載の印刷機におけるインキ膜厚調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機におけるインキ膜厚調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、現ジョブの本刷り作業終了後に、インキ移しローラ(インキダクタローラやインキ呼び出しローラともいう)の呼び出し動作を停止した状態において現ジョブで用いた刷版を装着したまま印刷を行うことで、インキローラ群にジョブを問わずに印刷中に必要とされる最低限のインキ膜厚分布を残すインキリムービングを行い、その後、プレインキングによって、このインキ膜厚分布に次ジョブに用いる刷版の絵柄に応じたインキ膜厚分布を重畳するインキ膜厚制御に関する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、現ジョブの本刷り作業終了後に、インキローラ上のインキを掻き取ってインキ膜厚を減少させ、その後、現ジョブの絵柄を考慮して次ジョブのプレインキングを行うインキ供給方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-188849号公報
【文献】特開2015-100972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、現ジョブの刷版により本刷りした印刷物の各色の濃度を測定し、この測定した各色の濃度値と基準濃度との差に基づいて各色(各印刷ユニット)におけるリムービング枚数(インキ移しローラの呼び出し動作を停止した状態で印刷する枚数)を定めることで、インキローラ群に印刷中に必要とされる最低限のインキ膜厚分布を正確に残すことができるとされている。
【0006】
ところが、インキリムービングのためのリムービング枚数(各印刷ユニットで定められた枚数の中の最大値)の枚葉紙が無駄になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、特許文献1のインキリムービングを行わないので、枚葉紙の使用量を削減できるとされている。
【0008】
ところが、掻き取るインキの量が、インキリムービングを行わない分、多くなるため、枚葉紙の無駄は無くせても、インキが無駄になるという問題があった。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、枚葉紙及びインキの無駄を抑制してインキ膜厚を下げることができる印刷機におけるインキ膜厚調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷機におけるインキ膜厚調整方法は、現ジョブの本刷りの最終段階において、インキ呼び出しローラの呼出動作を停止した状態で該本刷りを行ってインキローラ群に該現ジョブの本刷りに必要とされる最低限のインキ膜厚を残すインキリムービングを行いながら、前記本刷りの最終段階で印刷される印刷物の濃度を測定し、該測定した濃度である最終濃度と予め設定されている基準濃度とを比較し、該比較した結果に基づいて、前記インキローラ群を構成するインキローラ上のインキを掻き取るかどうかを判断することを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、現ジョブの本刷りの最終段階において、インキローラ群に本刷りに必要とされる最低限のインキ膜厚を残すインキリムービングを行うことで、本刷りとは別にリムービング枚数の枚葉紙が印刷されることがないから、無駄な枚葉紙が発生することがないだけでなく、インキローラ群内のインキが本刷りで最大限消費されるため、インキを無駄に消費することがない。しかも、本刷りの最終段階で印刷される印刷物の濃度を測定し、測定した濃度である最終濃度と予め設定されている基準濃度とを比較することによって、現ジョブの本刷り中に必要とされる最低限のインキ膜厚になっているかどうかを確認することができる。そして、最終濃度と基準濃度とを比較した結果に基づいて、インキローラ群を構成するインキローラ上のインキを掻き取るかどうかを判断する。これによって、現ジョブの本刷りの最終段階において行ったインキリムービングにより印刷物の濃度を基準濃度まで下げることができなかった場合に、不要なインキを掻き取ることで、次ジョブでの色調合わせ時に多くの損紙の発生を抑えることができるとともに、次ジョブでの色調合わせに多くの時間がかかることを抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係る印刷機におけるインキ膜厚調整方法は、前記判断においてインキを掻き取ることの決定は、インキツボ内からインキツボローラに供給されるインキの量を調整する複数のインキツボキー毎に対応した印刷物上の各領域において前記本刷りの濃度を測定し、該各領域のうち前記最終濃度が前記基準濃度まで下がっていない領域の割合が所定割合以上の場合に行われる構成であってもよい。
【0013】
上記のように、インキを掻き取ることの決定が、前記本刷りの印刷物の最終濃度を各領域において測定し、該各領域のうちの所定割合以上の領域において最終濃度が前記基準濃度まで下がっているかどうかに基づいて行われるので、インキを掻き取ることの決定をより精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現ジョブの本刷りの最終段階において、インキリムービングを行うとともに、本刷りの最終段階で印刷される印刷物の濃度を測定し、測定した最終濃度と基準濃度とを比較した結果に基づいて、インキローラ上のインキを掻き取るかどうかを判断するによって、枚葉紙及びインキの無駄を抑制してインキ膜厚を下げることができる印刷機におけるインキ膜厚調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】印刷機の概略縦断側面図である。
図2】印刷機のインキ供給部の拡大図である。
図3】インキ調整方法の前半部分を示すフローチャートである。
図4】インキ調整方法の後半部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る印刷機のインキ膜厚調整方法について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、インキ膜厚調整モードを備えた印刷機であり、枚葉オフセット印刷機(以下において単に印刷機という)を示している。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙を送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙に印刷を行うための印刷部Bと、印刷部Bで印刷された枚葉紙に表面処理を施す表面処理部Cと、枚葉紙を排紙するための排紙部Dを備えている。ここで印刷部Bは、4色の印刷が行えるように4台の印刷ユニット5を備えた印刷部Bとしているが、4色以外の色、つまり1色又は2色又は3色、あるいは5色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図1に示されるものに限定されるものではない。
【0018】
前記印刷ユニット5は、版胴1とゴム胴2とインキローラ群4、そして圧胴3と渡し胴6とを備えている。図示していないが、圧胴3のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙を爪台と爪とで把持するグリッパを、円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号7は給紙胴であり、フィーダーボード8、口板9上を搬送される枚葉紙をスイングアーム10から受け取り、圧胴3に渡す役割を果たす。給紙胴7及びスイングアーム10にも爪台と爪が設けられている。また、版胴1には、画像が形成された図示しない刷版が巻回され、固定されている。
【0019】
排紙部Dは、2つの排紙胴とグリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成されている。すなわち、表面処理部Cの圧胴3に隣接した第1排紙胴11と、これに隣接した第2排紙胴12が設けられ、そして枚葉紙の搬送方向前側(上流側)に設けられたスプロケット13と枚葉紙の搬送方向後側(下流側)に設けられたスプロケット14に無端状のチェーン15が巻回されており、スプロケット13、14の回転により、図示しないチェーンガイドに規制された状態でチェーン15は周回する。枚葉紙は、チェーン15に所定間隔で複数固定された図示しないチェーングリッパに把持されて排紙される。
【0020】
図1に示すように、表面処理部Cには圧胴3と対向して当接するニス版胴16が設けられている。また、図示しないが、ニス版胴16に当接してニスを供給するアニロックスローラが設けられている。そして表面処理部Cは、ニス版胴16を圧胴3に対して昇降可能に支持する図示しない胴昇降装置を備えている。
【0021】
図2は、インキ供給部の拡大図である。インキツボ内のインキが供給されるインキツボローラ21は図中、反時計方向に回転し、インキ呼出しローラ25を介して下流に位置する多数のインキローラ群4にインキを供給する。インキ呼出しローラ25は詳細図示しないが、インキツボローラ21と横転ローラ26にそれぞれ接離可能に往復動する。すなわち、呼出しローラ25がインキツボローラ21に当接しているときは、呼出しローラ25は横転ローラ26と離反している。この往復動をインキ呼出し動作ともいい、インキ呼出し回数が多いほど、インキローラ群4へのインキ供給量が多くなる。また、インキツボローラ21に対してインキツボが備えるインキツボキーKが矢印S方向にスライド移動することにより接離可能となっており、インキツボキーKがインキツボローラ21に対して離間するほど、インキツボキーKの開度が大きくなって多量のインキがインキツボローラ21上に供給されるように構成されている。インキツボキーKは、図示していないインキツボキー駆動モータの駆動により移動する。また、インキローラ群4の下方に位置する水部には、湿し水を収容する水舟23が設けられており、水元ローラ24等を介して刷版に水舟23内の湿し水を供給可能となっている。
【0022】
前記インキツボキーKは、インキツボローラ21(図2参照)の軸方向、つまり印刷物の幅方向(搬送方向と直交する方向)に複数並設されている。インキツボキーKのインキツボローラ21に対する距離(開度)は、印刷画像に基づく必要なインキ量によって、インキツボキー毎に決められる。
【0023】
インキローラ群4のうちの1つのインキローラ4a(図2では、左端の下から2番目に位置するインキローラ)の左方には、インキ洗浄器22が設置されている。インキ洗浄器22は、不図示のアクチュエータ(例えば、エアーシリンダ)の駆動によって、矢印T方向へ回動することで、インキ洗浄器22が備えるブレード22aがインキローラ4aに対して接離可能となるように構成されている。ブレード22aは、インキローラ4aの軸方向に延びて設けられ、運転中にインキローラ4aへ接触することによりインキローラ4a上のインキを掻き取って、インキの膜厚を減少させることができる。インキの掻き取りは、インキローラ4a上のインキを全て掻き取るのではなく、インキローラ4a上のインキ膜厚を減少させつつ、ある程度均一にするために行われる。この掻き取り時は、洗浄液は使用しない。
【0024】
また、掻き取りによるインキの膜厚の調整は、現ジョブの本刷りの最終段階においてインキリムービングを行っている時に、印刷される印刷物の濃度を各色(各印刷ユニット5)毎で測定し、測定した最終濃度と予め設定されている基準濃度とを比較し、比較した結果に基づいて、行うかどうかを制御部(図示せず)が判断するようにしている。ブレード22aをインキローラ4aに接触させてインキを掻き取る時間は、本刷りした印刷物のうちの最後に印刷した印刷物の最も濃度が高いインキツボキーの濃度と次ジョブの目標濃度との差及びインキ特性等から決定する。最も濃度が高いインキツボキーの濃度を採用する理由は、濃度が低いところから濃度を合わせる方が容易に合わせられるためである。本刷り中の印刷物の濃度は、印刷機に備える撮像手段(例えばRGBカメラ)により撮像された画像で測定される。尚、本実施形態の印刷機では、インキの掻き取りは予め設定された運転速度で行われる。したがって、インキを掻き取る時間は、版胴1の回転数に換算することができる。すなわち、インキを掻き取る時間を、インキを掻き取る回転数とすることもできる。一方、インキの掻き取りを行うときの運転速度を変更できる構成とした場合は、インキを掻き取る時間よりもインキを掻き取る回転数を用いる方が都合がよい。
【0025】
インキリムービングは、現ジョブの本刷りの最終段階で行い、その最終段階において、前記インキ呼び出し動作を停止した状態で現ジョブの刷版を装着したまま印刷することで、インキローラ群4に現ジョブの本刷りで必要とされる最低限のインキ膜厚を残すための動作である。インキリムービングを行うリムービング枚数は、インキリムービングを実施した印刷物が、現ジョブの本刷りにおける目標濃度の許容範囲の下限値を下回ってNGシートとならないように、本刷り印刷物の目標濃度や用紙種、インキ種等のジョブ情報から各色毎(各印刷ユニット毎)に、インキリムービングを行う前に予め設定しておくことになる。この設定を行って現ジョブの本刷りの最終段階において、インキリムービングを行うことにより、印刷物の濃度が、本刷り印刷物の目標濃度の下限値に近い値まで低下する。このとき、インキローラ群4におけるインキ膜厚は、現ジョブの本刷りで必要とされる最低限のインキ膜厚に近い値になる。尚、インキリムービングを行うことによりインキローラ上の幅方向でのインキ膜厚の違いも小さくなっていく。前記インキリムービングは、印刷終了後に行うことが通常であるため、現ジョブの本刷りの最終段階で行うインキリムービングを、この実施形態では、以下においてスマートエンドと呼ぶ。
【0026】
制御部は、前記スマートエンドにおいて、測定された最終又は最終付近の1枚の印刷物の濃度と、基準濃度とを比較し、比較した結果に基づいて、インキローラ4a上のインキを掻き取るかどうかを判断している。基準濃度は、現ジョブにおける本刷り印刷物の目標濃度の許容範囲内の下限値に近い値に設定されている。具体的には、次のように判断することが好ましい。つまり、複数のインキツボキーK毎に対応する印刷物上の各領域において本刷りの印刷物の最終濃度を測定し、これら各領域のうちの所定割合以上の領域において最終濃度が前記基準濃度まで下がっていない場合に、インキを掻き取ることの決定を行う。本実施形態においては、該所定割合は2割~8割の間で設定できる。ただし、これ以外の割合に設定できるようにすることも可能である。尚、所定割合以上のインキツボキーの最終濃度が前記基準濃度まで下がっている場合でも、次ジョブの目標濃度の下限値が前記基準濃度よりも大きく下回っている場合には、インキを掻き取って調整するように構成することもできる。この場合、次ジョブの目標濃度の上限値と下限値の間の中央値又は中央値よりも下限値に近い値になるようにインキを掻き取る。また、基準濃度は、現ジョブにおける本刷りの目標濃度の許容範囲であれば、例えば次ジョブにおける本刷りの目標濃度の許容範囲内の下限値に近い値に設定することもできる。
【0027】
前述したように、現ジョブの本刷りの最終段階において、インキローラ群4に本刷りに必要とされる最低限のインキ膜厚を残すインキリムービング(スマートエンド)を行うことで、本刷りとは別にリムービング枚数の枚葉紙が印刷されることがないから、無駄な枚葉紙が発生することがないだけでなく、インキローラ群4のインキが本刷りで最大限消費されるため、インキを無駄に消費することがない。しかも、本刷りの最終段階で印刷される印刷物の濃度を測定し、測定した最終濃度と予め設定されている基準濃度とを比較することによって、現ジョブの本刷り中に必要とされる最低限のインキ膜厚になっているかどうかを確認することができる。そして、最終濃度と基準濃度とを比較した結果に基づいて、インキローラ群4のインキローラ上のインキを掻き取るかどうかを判断する。これによって、現ジョブの本刷りの最終段階において行ったインキリムービング(スマートエンド)により印刷物の濃度を基準濃度まで下げることができなかった場合に、不要なインキを掻き取ることで、次ジョブでの色調合わせ時に多くの損紙の発生を抑えることができるとともに、次ジョブでの色調合わせに多くの時間がかかることを抑えることができる。
【0028】
また、インキを掻き取ることの決定が、複数のインキツボキーK毎に対応する印刷物上の各領域において本刷りの印刷物の最終濃度を測定し、これらの各領域のうちの所定割合以上の領域で最終濃度が前記基準濃度まで下がっているかどうかに基づいて行われるので、インキを掻き取ることの決定をより精度よく行うことができる。
【0029】
次に、本実施形態のインキ膜厚調整方法について、図3及び図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0030】
作業者(オペレータ)が、本刷り開始前に、図示しないインキ膜厚調整用のボタンまたはスイッチ等を押しておくことによって、本刷りを開始した後に、制御部が、本刷りの最終段階になったと判断すると、スマートエンド(刷り減らし)を開始する(ステップS1)。続いて、印刷機に備えるRGBカメラの撮像により本刷りの最終紙(又は最終紙付近の紙)の各インキツボキーに対応する各領域の濃度(最終濃度)を測定し(ステップS2)、本刷りが終了する(S3)。本刷りが終了すると、次ジョブ用データ(用紙種、インキ種、画像データ、目標濃度等)を制御部に転送する(ステップS4)。転送後は、転送されたデータに基づいてインキプリセット(インキツボキー開度の設定)を行う(ステップS5)。こののち、現ジョブの終了後に、第1番目のユニット(印刷ユニット)のローラ洗浄を行いインキローラ群4のインキを除去したかどうかを確認し(ステップS6)、洗浄している場合には、次(第2番目)のユニットに移行する(ステップS11)。ローラ洗浄を行っていない場合には、最終濃度が基準濃度よりも大きい領域の数を計数する(ステップS7)。計数した領域の数が所定割合(2割から8割の間で設定された割合)以上であるかどうかを確認する(ステップS8)。計数した領域の数が所定割合以上である場合には、そのユニットをインキ削除対象ユニットに設定する(ステップS9)。インキ削除対象ユニットではインキを掻き取ることになる。計数された領域の数が所定割合未満である場合には、次(第2番目)のユニットに移行する(ステップS11)。次に、インキ削除対象ユニットに設定されたユニットのインキ削除時間を設定する(ステップS10)。尚、前記インキ削除時間は、最終濃度が最も高い領域において、最終濃度と次ジョブの本刷りにおける目標濃度との差に基づいて設定する。インキ削除時間の設定が終了すると、次(第2番目)のユニットに移行し(ステップS11)、一点鎖線で囲まれたステップS6~ステップS10の処理を行い、これを第3番目のユニット及び最終の第4番目のユニットまで繰り返し行って、各ユニットにおいて、インキを掻き取るかどうかと、掻き取る場合の掻き取り時間であるインキ除去時間とを確認する。
【0031】
全て(この実施形態では4個)のユニットにおいてインキを掻き取るかどうかと、掻き取る場合の掻き取り時間であるインキ除去時間との確認が終了すると、全てのユニットにおいて、ステップS5で設定されたインキツボキー開度にするためのインキツボキーの開度調整をスタートする(ステップS12)。続いて、機械をアイドリング回転させて、ステップS5で設定されたインキツボキー開度に調整されたインキツボからインキツボローラ21へインキを供給する(ステップS13)。次に、第1番目のユニットが、インキ削減対象ユニットかどうかを確認する(ステップS14)。インキ削減対象ユニットであれば、第1番目のユニットに備えているブレード22aをインキローラ4aのインキへ接触させるべく、洗浄器22を駆動するアクチュエータをONしてインキローラ4a上のインキの掻き取りを開始する(ステップS15)。ステップS10で設定したインキ削減時間が経過したかどうかを確認する(ステップS16)。インキ削減時間が経過すると、前記アクチュエータをOFFすることにより、ブレード22aをインキローラ4aから離間させる(ステップS17)。第1番目のユニットの処理が終了すると、第2番目のユニットから最終の第4番目のユニットまでの各ユニットについて、ステップS14~ステップS17までの処理を繰り返し行う(ステップS18)。前記処理を繰り返し行った後、対象ユニットのインキ削減が終了したかどうかを確認する(ステップS19)。対象ユニットのインキ削減が終了すると、ステップS13で機械アイドリング回転を開始してから設定時間経過したかどうかを確認する(ステップS20)。機械アイドリング回転を開始してから設定時間経過すると、インキ呼び出しローラ25をON(呼び出し動作開始)して、インキツボローラ21からインキローラ群4へインキを供給する。すなわち、プリセットインキングを続行する(ステップS21)。
【0032】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
前記実施形態では、枚葉オフセット式印刷機であったが、インキ供給量が調整可能な印刷機であれば、これに限らず、輪転オフセット印刷機等、その他の印刷機にも適用可能である。
【0034】
また、前記実施形態では、インキローラ群4のうちの左端の下から2番目に位置するインキローラ4aにおいてインキを掻き取るようにしたが、インキローラ群4の他のインキローラにおいてインキを掻き取る構成であってもよい。
【0035】
また、前記実施形態では、ローラ洗浄用の洗浄器22を利用してインキの掻き取りを行う構成であったが、インキ掻き取り専用の装置を使用してインキを掻き取るように構成してもよい。
【0036】
また、前記実施形態では、印刷物の濃度を測定するためにRGBカメラを用いたが、分光測色計を用いてもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、1枚の最終紙(又は最終紙付近の紙)の濃度を測定し、その濃度と基準濃度とを比較するようにしたが、本刷りの最終段階で印刷される複数枚(2枚以上)の濃度を測定し、それら複数の濃度の平均値を基準濃度と比較してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…版胴、2…ゴム胴、3…圧胴、4…インキローラ群、4a…インキローラ、5…印刷ユニット、6…渡し胴、7…給紙胴、8…フィーダーボード、9…口板、10…スイングアーム、13、14…スプロケット、15…チェーン、16…ニス版胴、21…インキツボローラ、22…洗浄器、22a…ブレード、23…水舟、24…水元ローラ、25…インキ呼び出しローラ、26…横転ローラ、A…給紙部、B…印刷部、C…表面処理部、D…排紙部、K…インキツボキー、S,T…矢印
図1
図2
図3
図4