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特許7366891向き付け支援クランプ凹部を有する両面切削インサートおよび切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】向き付け支援クランプ凹部を有する両面切削インサートおよび切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20231016BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/16 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020524016
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 IL2018051288
(87)【国際公開番号】W WO2019106660
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】62/591,843
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャヒーン フィリップ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公告第01246360(DE,B)
【文献】特開2004-167635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0297115(US,A1)
【文献】国際公開第2012/161176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23B 27/16
B23B 51/00
B23C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
向き付け支援幾何学的形状と、中心軸(C)とを有する両面切削インサート(12、112)であって、前記中心軸の周りで前記切削インサートが割出し可能であり、
対向する同一の第一および第二の主面(18、20)と、その間に延在するインサート周面(22)であって、各主面(18、20)は切削部分(36)を備える、第一および第二の主面(18、20)とインサート周面(22)と、
前記中心軸(C)に垂直で、前記第一および第二の主面(18、20)の中間に位置する中央面(P)と、
前記第一および第二の主面(18、20)にそれぞれ開口して対向する第一および第二のクランプ凹部(26、126、28、128)と、
を備える、切削インサート(12、112)において、
各クランプ凹部(26、126、28、128)は、伸長軸(E1、E2)に沿って、前記中央面(P)に平行な方向に伸長され、
各クランプ凹部(26、126、28、128)は、凹部周面(30a、30b)を備え、そのそれぞれは少なくとも1つの凹部当接面(32)を備え、
前記第一および第二のクランプ凹部(26、126、28、128)の少なくとも一部分を前記中央面(P)上に投影すると、前記中心軸(C)を中心として互いに対して回転オフセットされ、
各クランプ凹部(26、126、28、128)は、前記中央面(P)に平行な方向に前記伸長軸(E1、E2)に沿って延在し、
各クランプ凹部(26、126、28、128)は、その対応する伸長軸(E1、E2)に沿った方向が、他のいずれの方向よりも長く、
いずれの前記クランプ凹部(26、126、28、128)も、前記中央面(P)を越えて延在せず、
前記伸長軸(E1、E2)は、それらの間にオフセット角(α)を形成し、
オフセット角(α)は90°であり、
前記切削インサートの各主面(18、20)がちょうど2つの対向配置された切削部分(36)を備え
前記第一の主面(18)における第一のクランプ凹部(26)は、前記第一の主面(18)における前記2つの切削部分(36)の対向方向に対して垂直な方向に延在し、前記前記第二の主面(20)における第二のクランプ凹部(28)は、前記第二の主面(20)における前記2つの切削部分(36)の対向方向に対して垂直な方向に延在する、切削インサート(12、112)。
【請求項2】
前記第一の主面(16)のいかなる切削部分(36)も、前記第二の主面(18)の切削部分(36)に対向して配置されていない、請求項1に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項3】
前記第一および第二のクランプ凹部(26、126、28、128)は、互いに接続し、それによって、前記第一および第二の主面(18、20)を接続する貫通孔(27)を形成する、請求項1または2に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項4】
前記2つの凹部周面(30a,30b)の輪郭(34a,34b)を前記中央面(P)上に投影すると、一方の凹部周面(30a)が投影された輪郭(34a)は、他方の凹部周面(30b)が投影された輪郭(34b)と、4つの頂点でのみ交差する、請求項1~のいずれか一項に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項5】
前記2つの凹部周面(30a,30b)の輪郭(34a,34b)を前記中央面(P)上に投影すると、一方の凹部周面(30a)が投影された輪郭(34a)は、他方の凹部周面(30b)が投影された輪郭(34b)に対して、前記中心軸(C)の周りで回転オフセットされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項6】
前記2つの凹部周面(30a,30b)の輪郭(34a,34b)を前記中央面(P)上に投影すると、一方の凹部周面(30a)が投影された輪郭(34a)のいかなる部分も、他方の凹部周面(30b)が投影された輪郭(34b)のいずれの部分にも接しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項7】
前記凹部当接面(32)は、前記中央面(P)に垂直な方向に延在する、請求項1~のいずれか一項に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項8】
前記クランプ凹部(26、126、28、128)は、ねじ切りされていない、請求項1~のいずれか一項に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項9】
前記第一および第二のクランプ凹部(26、126、28、128)は、互いに同一である、請求項1~8のいずれか一項に記載の切削インサート(12、112)。
【請求項10】
前記インサート周面(22)は、第一、第二およびコーナーの逃げ面(46、47、48)を含み、
第一および第二の主切れ刃(38、39)のそれぞれは、第一および第二のすくい面(42、43)と、前記第一および第二の逃げ面(46、47)との交点にそれぞれ形成されており、
各コーナー切れ刃(40)は、コーナーすくい面(44)と前記コーナー逃げ面(48)との交点に形成されており、
前記逃げ面(46、47、48)は、ネガティブとして定義され、前記中央面(P)に対して垂直である、請求項1~のいずれか一項に記載の切削インサート(112)。
【請求項11】
各切削部分(36)と前記中央面(P)との間で、前記インサート周面(22)は、関連する前記第一および第二の側部当接面(50、52)をさらに含み、
前記第一および第二の側部当接面(50、52)は、それぞれ第一および第二の逃げ面(46、47)から延在しており、
前記側部当接面(50、52)は、前記逃げ面(46、47)から内向きに中心軸Cに向かって延在している、請求項10に記載の切削インサート(112)。
【請求項12】
いずれかの前記主面(18、20)の前記逃げ面(46、47)から延在する前記側部当接面(50、52)は、前記中央面(P)を通って対向する前記主面(18、20)に向かって延在している、請求項11に記載の切削インサート(112)。
【請求項13】
ポケット(14、114)を有する工具本体(16)と、前記ポケット(14、114)内に固定された請求項1~1のいずれか一項に記載の切削インサート(12、112)とを備える切削工具(10、110)であって、前記ポケット(14、114)が、
ベース当接面(55)と、
第一および第二の壁当接面(60、62)と、
前記切削インサート(12、112)の前記第一および第二のクランプ凹部(26、126、28、128)の1つに当接し、それによって、前記切削インサートを前記ポケット(14、114)内に固定するように構成されたクランプ部材(66、75)と、
を備え、
前記第一および第二の主面(18、20)の一方が前記ベース当接面(55)に当接し、前記インサート周面(22)が前記第一および第二の壁当接面(60、62)に当接する、切削工具(10、100)。
【請求項14】
記工具本体(16)は、調整ねじ(74)を受けるように構成された調整穴(72)をさらに備え、
前記クランプ部材(66)は、前記調整穴(72)に接続されたクランプ穴(66)を占有するクランプレバー(66)であり、
前記クランプレバー(66)は、前記ベース当接面(55)に最も近い前記凹部当接面(32)に当接し、前記ポケット(14)内に前記切削インサート(12)を固定する、
請求項13に記載の切削工具(110)。
【請求項15】
クランプ凹部(126、128)は、対応する主当接面(18、20)に開口するねじ当接面(76)をさらに備え、
前記クランプ部材(75)は、前記ねじ当接面(76)に当接し、前記凹部当接面(32)に接触することなく、前記ポケット(114)内に前記切削インサート(112)を固定するクランプねじ(75)である、
請求項1に記載の切削工具(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、機械加工工具、またはチップ除去切削工具に関する。具体的には、本発明は、「フールプルーフ」挿入補正、すなわち、向き付け支援連結凹部を含む両面切削インサートに関し、この切削インサートは、ポケット内にインサートが正しく着座していないことで、その後、ポケットが損傷するのを防止する。
【背景技術】
【0002】
ポケット内のインサートの向きを誤ると、インサート、ワークピース、ポケット、さらには工具全体を損傷する可能性があることは、この分野で知られている。
【0003】
いくつかのインサートでは、特定の対称性があるために、および/またはサイズが小さいために、切削のために構成されたインサート内の領域と、当接のためだけに構成された領域とを肉眼で区別することが困難であり得る。したがって、多くのシナリオでは、操作者がポケット内におけるインサートの正しい向きを決定し、インサートを固定するにあたって問題が生じている。ポケット内へのインサートの挿入または固定での誤りを防止するために、いくつかの製造業者は、マーキング(番号付け、記号)などの視覚的補助を含めている。視覚的補助は、通常、良好に機能するが、多くのシナリオでは、効果的ではない。例えば、照明が悪いと、操作者は、通常、もともと極めて小さいインサート上のマーキングを誤読することになる。
【0004】
同様の問題を生じ得る別のタイプのインサートは、単一の主面上に、2つ以上の別個の切削部分を有するインサートである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、切削部分および/または外部当接部の幾何学的形状から独立し得る向き付け支援幾何学的形状を提供することによって、これらの上述の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の主題の第一の態様によれば、向き付け支援幾何学的形状を有する両面切削インサートが提供され、この切削インサートは、
対向する同一の第一および第二の主面と、
それらの間に延在する周面と、
第一および第二の主面にそれぞれ開口して対向する第一および第二のクランプ凹部と、
を備え、
第一および第二のクランプ凹部は、中央面上に重ね合わせたとき、完全には重ならない。
【0007】
本出願の主題の第二の態様によれば、向き付け支援幾何学的形状と、中心軸とを有する両面切削インサートが提供され、中心軸の周りで切削インサートが割出し可能であり、この切削インサートは、
対向する同一の第一および第二の主面と、その間に延在するインサート周面とを備え、各主面は切削部分を備える、第一および第二の主面とインサート周面と、
中心軸に垂直で、第一および第二の主面の中間に位置する中央面と、
第一および第二の主面にそれぞれ開口して対向する第一および第二のクランプ凹部と、
を備え、
各クランプ凹部は、伸長軸に沿って、中央面に平行な方向に伸長され、
各クランプ凹部は、凹部周面を備え、そのそれぞれは少なくとも1つの凹部当接面を備え、
第一および第二のクランプ凹部の少なくとも一部分を中央面上に投影すると、中心軸を中心として互いに対して回転オフセットされる。
【0008】
本出願の主題の第三の態様によれば、ポケットを備える工具本体と、ポケットの中に固定されたインサートとを備える切削工具が提供され、このポケットは、
ベース当接面と、
第一および第二の壁当接面と、
切削インサートの第一および第二のクランプ凹部の1つに当接し、それによって、切削インサートをポケット内に固定するように構成されたクランプ部材と、
を備える。
【0009】
以下の特徴のいずれも、単独または組み合わせのいずれかで、本出願の主題の上記態様のいずれかに適用可能であり得る。
【0010】
第一の主面のいかなる切削部分も、第二の主面の切削部分に対向して配置されていない。
【0011】
インサートは、ちょうど2つの切削部分を含む。
【0012】
第一および第二のクランプ凹部は、互いに接続し、これによって、第一および第二の主面を接続する貫通孔を形成する。
【0013】
2つの凹部周面の輪郭を中央面上に投影すると、一方の凹部周面が投影された輪郭は、他方の凹部周面が投影された輪郭と、4つの頂点でのみ交差する。
【0014】
2つの凹部周面の輪郭を中央面上に投影すると、一方の凹部周面が投影された輪郭は、他方の凹部周面が投影された輪郭に対して、中心軸の周りで回転オフセットされる。
【0015】
2つの凹部周面の輪郭を中央面上に投影すると、一方の凹部周面が投影された輪郭のいかなる部分も、他方の凹部周面の投影された輪郭のいずれの部分に接しない。
【0016】
伸長軸は、それらの間にオフセット角を形成し、オフセット角(α)は90°である。
【0017】
凹部当接面は、中央面に垂直な方向に延在することができる。
【0018】
クランプ凹部は、ねじ切りされていない。
【0019】
各クランプ凹部は、その対応する伸長軸に沿った方向が、他のいずれの方向よりも長い。
【0020】
いずれのクランプ凹部も、中央面を越えて延在しない。
【0021】
第一および第二のクランプ凹部は、互いに同一である。
【0022】
各クランプ凹部は、対応する主当接面に開口するねじ当接面をさらに備える。
【0023】
第一および第二の主面の一方は、ベース当接面に当接し、インサート周面は、第一および第二の壁当接面に当接する。
【0024】
工具本体は、調整ねじを受けるように構成された調整穴をさらに備え、
クランプ部材は、調整穴に接続されたクランプ穴を占有するクランプレバーであり、
クランプレバーは、凹部当接面に当接し、ポケット内に切削インサートを固定する。
【0025】
各クランプ凹部は、対応する主当接面に開口するねじ当接面をさらに備え、
クランプ部材は、ねじ当接面に当接し、凹部当接面に接触することなく、ポケット内に切削インサートを固定するクランプねじである。
【0026】
本出願の主題をより良く理解し、それが実際にどのように実行され得るかを示すために、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】旋削インサートを有する旋削工具の等角半分解図である。
図2】ポケット内にインサートを固定した図1の工具の側面図である。
図3図1の工具の上面図である。
図4図3のIV-IV線に沿って取られた図1の工具の断面図である。
図5図3のV-V線に沿って取られた図1の工具の断面図である。
図6図1のインサートの等角図である。
図7図1のインサートの第一の主面の平面図であり、対向する第二の主面の特徴の少なくとも一部分を表す隠線を伴う。
図8図1のインサートの側面図である。
図9図1のインサートの第一の主面の平面図である。
図10図9のX-X線に沿って取られた図1のインサートの断面図である。
図11】組み立てられた旋削工具の第二の実施形態の上面図である。
図12図11のXII-XII線に沿って取られた断面図である。
図13図12のXIII-XIII線に沿って取られた断面図である。
図14図11のインサートの第一の主面の平面図であり、対向する第二の主面の特徴の少なくとも一部分を表す隠線を伴う。
図15図14のXV-XV線に沿って取られた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
適切であると考えられる場合、参照番号は、対応または類似する要素を示すために、図面の間で繰り返されることもある。
【0029】
以下の記載で、本出願の主題の様々な態様を説明する。説明を目的として、特定の構成および詳細は、本出願の主題の完全な理解を提供するために十分に詳細に記載される。しかしながら、本出願の主題は、本明細書で提示される特定の構成および詳細がなくても実施できることも当業者には明らかであろう。
【0030】
図1図4に注目する。機械加工または切削工具10は、工具本体16内のポケット14内に固定された少なくとも1つの切削インサート12を含む。本実施形態では、切削工具10は、旋削工具である。
【0031】
インサート12は、両面であり、割出し可能である。割出し可能という用語は、インサートの2つの側面のそれぞれに、2つ以上の独立した切削幾何学的形状を有するインサートを意味する。インサート12は、対向する同一の第一および第二の主面18、20と、それらの間に延在するインサート周面22とを含む。第一および第二の主面は、便宜上、上面18および下面20と呼ぶこともできる。第一および第二の主面18、20のそれぞれは、主当接面24を含む。主当接面24は、平坦であり、互いに平行である。インサート12は、第一および第二の主面18、20の間に、したがって、主当接面24の間で、正確に中間に位置する中央面Pをさらに含む。中央面Pは、主当接面24に平行である。基準面Rは、主当接面のそれぞれの同一平面上の伸長部として定義される。主面18、20の一方の平面図は、基準面Rに対して垂直に向けられている。中央面Pは、基準面Rに対して平行である。図10に見られるように、2つの基準面Rの間の距離によって、インサートの高さHが確定される。
【0032】
インサート12は、典型的には、超硬合金のような極めて硬質で耐摩耗性の材料から、バインダー内で炭化物粉末を成形プレスして、焼結することによって作られる。また、超硬合金は、例えば、炭化タングステンであってもよい。インサート12は、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。
【0033】
中央面Pに垂直な図において、インサート12は、第一および第二のクランプ凹部26、28を有する。第一および第二のクランプ凹部26、28は、互いに接続することができ、それによって、インサートを通過する貫通穴27を形成し、2つの主面18、20を接続する。第一および第二のクランプ凹部26、28のそれぞれは、中央面Pに垂直な共通のインサート中心軸Cを有し、それに沿って延びる。各クランプ凹部26,28は、それぞれ対応する凹部周面30a,30bを有する。図7および図14に見られるように、中心軸Cに沿った図において、第一および第二のクランプ凹部26、28のそれぞれの少なくとも一部分、特にそれらの対応する周面30a、30bは、細長くすることができる。同じ図において、実線は、第一のクランプ凹部26を表し、破線は、インサート12の両側に位置する第二のクランプ凹部28を表す。しかしながら、図7および図14の図では、第一のクランプ凹部26、126は、その半径方向の最も内側の部分までしか見えないことを理解される。
【0034】
また、図から分かるように、2つのクランプ凹部26、28は、それぞれ、概ね細長い、または楕円形の形状を有することもできる。第一または第二の主面18、20のいずれかの平面図では、第一および第二のクランプ凹部26、28は、完全には重ならず、中心軸Cの周りで互いに対して回転オフセットされ、あるいは捻じれている。換言すれば、中央面P上に投影された、または重ね合わされた第一および第二のクランプ凹部26、28の細長い部分の輪郭(outlines)または外形(contours)は、完全には重ならず、回転オフセットされる。また、中央面Pに投影された第一および第二のクランプ凹部26、28の輪郭は、互いに重ね合わされた湾曲部分を有さない。換言すれば、一方のクランプ凹部の輪郭の湾曲部分は、中央面P上に投影されたときに、他方のクランプ凹部の輪郭の湾曲部分に接している。
【0035】
各クランプ凹部26、28は、それぞれ対応する主面18、20に開口している。各クランプ凹部26、28は、それぞれの主当接面24に開口することができ、互いに接続可能であり、それによって、インサートの厚さを通る貫通穴27を形成することができる(図10および図15)。各クランプ凹部26、28は、それぞれ伸長軸E1、E2を有する。伸長軸E1、E2は、中心軸Cに対して垂直に取られた第一および第二の主面18、20のうちの1つの平面図において、対応するクランプ凹部(26、28)の最長寸法の方向を表す(図7および図14)。各伸長軸E1、E2は、中央面Pに平行である。本実施形態によれば、各クランプ凹部26、28は、中心軸Cに沿った図において、その伸長軸E1、E2を中心とする鏡面対称性を有することができる。中心軸Cは、伸長軸E1、E2に対して垂直であり、それらに交差している。各クランプ凹部26,28は、対応する凹部周面30a,30bを有する。各凹部周面30a、30bの少なくとも一部分は、それぞれの中心軸Cに対して平行とすることができる。凹部周面30a、30bの少なくとも一部分は、生産工程上の理由から(例えば、この分野でよく知られているように、型抜きが容易になるために)中心軸Cに対してわずかに傾斜(1~3°)させることができる。凹部周面30a、30bの少なくとも一部は、中心軸Cに沿った図において、それぞれ、その伸長軸E1、E2に沿って伸長している。
【0036】
いくつかの実施態様によれば、クランプ凹部26、28の伸びは、対応する形状を有する係止レバーヘッドを収容するように設計される。重ならないことは、レバーヘッドが特定の向きのクランプ凹部にしか適合しないため、インサートのポケットへの正しくない挿入を防止することを目的としている。
【0037】
図7図10図14および図15に注目する。各凹部周面30a、30bは、連結部材66、75を受けて当接するように構成され、一般に32として示されている凹部当接面を含む。本実施形態によれば、各凹部周面30a、30bは、対応する伸長軸E1、E2に近接して位置するか、あるいはそれと交差するちょうど2つの対向する凹部当接面32を含む。第一の主面18からの中心軸Cに沿った図において、クランプ凹部26に関連した凹部当接面32は目視可能であり、凹状にすることが可能であるが、その一方で、クランプ凹部28に関連した凹部当接面32は視野から隠れている。さらに、第一および第二のクランプ凹部26、28の凹部当接面32は、中央面P上に投影されたとき、重ならない。換言すれば、中央面P上に投影された凹部当接面32の形状輪郭または外形は、重ならない。
【0038】
図7に注目する。本実施例によれば、中央面Pに垂直な図において、中央面Pに投影された第一および第二のクランプ凹部26,28のそれぞれの凹部輪郭34a,34bは、4つの頂点でのみ交差する。
【0039】
本実施形態によれば、第一および第二のクランプ凹部26,28のそれぞれの少なくとも一部分は、中心軸Cを中心にして角度的に捻じれている(すなわち、互いに回転オフセットされる)。具体的には、中心軸Cに沿った図において、伸長軸E1,E2は、それらの間に、ゼロでないオフセット角αを形成する。本出願によれば、オフセット角αは、製造公差内で90°である。換言すれば、第一および第二のクランプ凹部26、28は、90°のオフセット角αだけ、他方から回転オフセットされる。
【0040】
インサート12、112は、主面18、20ごとに、少なくとも1つの切削部分36を含む。本実施形態によれば、第一および第二の主面18、20のそれぞれにおいて、インサート12、112は、それぞれの中心軸Cの対角線上で対向する側に位置するちょうど2つの切削部分36を含む。各切削部分36は、ワークピースを加工するように構成されている。本実施形態によれば、例えば、第一の主面18の平面図(図7)において、第一の主面18に属する伸長軸E1は、第二の主面20の切削部分36と交差する。換言すれば、一方の主面に属する各伸長軸は、対向する主面の切削部分36と交差することができる。
【0041】
各切削部分36は、例えば、第一および第二の主切れ刃38、39と、それらの間に延在するコーナー切れ刃40を含むことができる。各切削部分36は、切れ刃38、39、40からクランプ凹部26、28に向かってそれぞれ延在する第一、第二およびコーナーのすくい面42、43、44をさらに含む。
【0042】
本実施形態によれば、一方の主面に属する切削部分36は、中心軸Cに平行な方向において、他方の主面に属する切削部分36と対向して配置されない。したがって、中心軸Cに沿った図において、第一の主面18の切削部分36は、第二の主面20の切削部分36と重ならないか、または交差しないし、あるいは、その逆も同様である。換言すれば、両方の主面18、20に関連した切削部分36が中央面P上に投影されると、いずれの切削部分36も、重なることも、交差することもない。本実施例では、いずれかの中心軸Cに沿った図において、切削部分36は、第一および第二の主面18,20のそれぞれに対称的に配置され、それぞれの中心軸Cの対角線上で対向して位置している。換言すれば、その平面図において、第一および第二の主面18,20のそれぞれは、それぞれの中心軸Cの周りで180°の回転対称性を有している。
【0043】
インサート周面22は、第一、第二およびコーナーの逃げ面46、47、48を含む。本実施例によれば、第一および第二の主切れ刃38、39のそれぞれは、第一および第二のすくい面42、43と、第一および第二の逃げ面46、47との交点にそれぞれ形成される。同様に、各コーナー切れ刃40は、コーナーすくい面44とコーナー逃げ面48との交点に形成される。本実施形態によれば、逃げ面46、47、48は、ネガティブとして定義される。より具体的には、これらは、中央面Pに対して垂直である。
【0044】
各切削部分36と中央面Pとの間で、インサート周面22は、関連する第一および第二の側部当接面50、52をさらに含む。具体的には、本実施形態によれば、第一および第二の側部当接面50、52は、それぞれ第一および第二の逃げ面46、47から延在している。側部当接面50、52は、逃げ面46、47から内向きに中心軸Cに向かって延在している。図8に最もよく見られるように、いずれかの主面18、20の逃げ面46、47から延在する側部当接面50、52は、中央面Pを通って対向する主面に向かって延在している。
【0045】
ポケット14は、ベース面54と、好ましくはベース面54に対して横方向に延在する2つのポケット壁56とを含む。ベース面54は、ベース当接面55を有し、ベース当接面55は、好ましくは平坦であり、インサート12、特に主当接面24のそれぞれを支持し、当接するように構成されている。本実施形態によれば、ポケット14は、ベース面54およびベース当接面55を含むシム58を含む。シム58は、任意の交換可能な要素として知られており、ポケットの幾何学的形状を摩耗から保護するのに役立ち、工具本体16全体を交換する必要なしに、同じポケット内に異なるサイズのインサートを連結することを可能にする。
【0046】
ポケット壁56は、それぞれの第一および第二の壁当接面60、62を含み、これらの壁当接面は、平坦であり、ベース当接面55とそれぞれ鋭角の壁角度θを形成する。同様に、当接品質(例えば、十分な接触面積)を最大にするために、好ましくは、各側部当接面50、52と中央面Pとの間にも同じ壁角度θが形成される。
【0047】
本実施形態によれば、好ましい連結装置内では、ポケット14は、ベース面54に開口するクランプ穴64と、クランプ穴64内に配置されるL字形クランプレバー66とを含む。レバー66は、第一および第二のレバー端部68、70を有し、第一のレバー端部68は、クランプ穴64からポケット14内に外向きに突出する。工具本体16は、クランプ穴64に隣接して配置され、これと連通するねじ切り調整穴72を含む。第二のレバー端部70は、調整穴72の中に突出する。調整穴72は、第一のレバー端部68がインサート12をポケット14内に固定するように、第二のレバー端部70と連通する調整ねじ74を含む。
【0048】
ポケット14内のインサート12の初期着座位置において、例えば、第一の主当接面24は、ベース当接面55に当接する。第一の壁当接面60は、第一の主面18上で切削部分36に隣接する第一の側部当接面50に当接する。第二の壁当接面62は、第一の主面18上で対向する切削部分36に隣接して位置する第二の側部当接面52に当接する。
【0049】
最終的な固定位置において、調整ねじ74を完全に締め付けると、調整ねじ74は、第二のレバー端部70に当接し、それを押して、第一のレバー端部68が凹部当接面32の一方に当接するようになる。また、固定位置は、インサートと工具ポケットとの間の着座位置と、レバー66と凹部当接面32との同じ係合も含むが、レバー66によって凹部当接面32に対して作り出された付加的な力を伴い、この付加的な力は、インサートから工具ポケットに伝達される。
【0050】
図7に注目する。伸長軸E1、E2の方向は、第一のレバー端部68が当接力を加えて当接する方向、またはその近似的方向を決定する。具体的には、各伸長軸E1、E2は、中央面Pに対して垂直な図において、その関連する凹部当接面32と交差することができる。図7に見られるように、各伸長軸E1、E2は、インサートの対角線上で対向するコーナーと交差することができる。本実施形態では、伸長軸E1、E2は、切削部分36、具体的にはコーナー切れ刃40に向けられ、それらと交差するが、このことは必須ではない。クランプ凹部26、28は、切削部分36から独立させることができ、インサート12に加えられる力の方向(凹部当接面32の一般的な位置および向き)は、必要とされる用途に応じて、工学設計させること/向けることができる。したがって、伸長軸E1、E2は、切削部分36の幾何学的形状とは無関係である。これにより、工具を設計する際に、工具ポケット14に対して、クランプ穴64の位置決めに柔軟性を持たせることができる。
【0051】
主面18、20内のクランプ凹部26、28の向きおよび位置は、インサートのポケット14への着座向きまたは挿入での誤りを防止するように選択される。これは、操作者が意図的にそうしようとする場合であっても、そのように選択される。これは、第二のレバー端部70の整合形状に応じて達成される。換言すれば、クランプ凹部を押し、ポケット内にインサートを固定または保持するクランプ部材の形状は、クランプ凹部26、28の形状に対応/整合するように設計される。レバー66は、クランプ凹部26、28の形状にほぼ対応する細長い形状を有し、所与のクランプ凹部26、28に、一定の正しく整列した向きで入るのみである。その結果、インサート12は、ポケット14内のインサートの2つの所望の向きのうちの1つにおいてのみクランプ機構によって固定することができるので、その結果、対向する主面の切削部分36のうちの1つが作動することができる。さらに、他の誤った向きであれば、インサートがポケットに完全に入るのを妨げることでき、あるいは、工具/ポケット14に対してインサート12が明確に見える傾斜した向きに導くことができる。
【0052】
図11図15に注目する。切削工具110、ポケット114、およびインサート112の第二の実施形態が示されている。インサート112は、レバー66またはクランプねじ75のいずれかによって、選択的に固定されるように構成される。換言すれば、第一および第二のクランプ凹部126、128のそれぞれは、レバーおよびクランプねじの両方によってインサートを固定できる適切な幾何学的形状を有している。第一および第二のクランプ凹部126、128は、互いに接続し、それによって、切削インサート112の対向する第一および第二の主面18.20を接続する貫通穴27から接続する。各クランプ凹部126、128は、上述した第一の実施形態の対応するクランプ凹部26、28と同じ「基本」幾何学的形状を含み、さらに、ねじ当接面76を含む。本実施例によれば、ねじ当接面76は円錐状である。第二の実施形態によれば、ねじ当接面76は、対応する主当接面24に開口し、凹部当接面32と接続する。
【0053】
図14に注目すると、この図は、第一の主面18に関連するねじ当接面76の半径方向外側輪郭76aを表す円を示している。中央面P上に投影されると、ねじ当接面76と、2つのクランプ凹部126、128に属する半径方向外側輪郭76aとは、重なり合う。したがって、図14において、見られるクランプ凹部126のねじ当接面76は、隠れたクランプ凹部128の隠れたねじ当接面76と一致し、したがって、それらを視野から隠している。
【0054】
ポケット114は、ベース面54から外側に突出するポケット突出部78を有する。ポケット突出部78は、上述のフールプルーフの利点を可能にするように構成される。換言すれば、ベース面54の平面図において、ポケット突出部は、ポケット114内のいずれかのインサート12、112の誤った着座を防止するために、クランプ凹部26、126、28、128の細長い形状に対応する細長い形状を有している。ポケット突出部78は、内側にねじ切りされ、クランプねじ75を受けるように構成されている。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、インサート12、112の両方の実施形態は、工具110の第二の実施形態における固定に適している。
【0056】
第二の実施形態の固定位置では、インサート112はポケット114に着座し、クランプねじ75はポケット突出部75にねじ込まれ、ねじ当接面76に当接する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15