(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】陽子交換膜燃料電池のための触媒担体上の超薄型電気化学触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/42 20060101AFI20231016BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231016BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20231016BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20231016BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20231016BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20231016BHJP
【FI】
B01J23/42 M
B01J37/02 301E
B01J37/02 301P
B01J37/34
H01M4/86 B
H01M4/86 M
H01M4/92
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020524468
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(86)【国際出願番号】 US2018059672
(87)【国際公開番号】W WO2019094501
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ, フリードリヒ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャラミロ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス, ドリュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】シュー, シチェン
(72)【発明者】
【氏名】シュラド, トマス
(72)【発明者】
【氏名】グラフ, ターニャ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082077(JP,A)
【文献】特開2008-269850(JP,A)
【文献】特開2005-122925(JP,A)
【文献】特開2013-046883(JP,A)
【文献】特開2012-041581(JP,A)
【文献】特開2003-080077(JP,A)
【文献】特開2004-185874(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033342(WO,A1)
【文献】HAYDEN, B. E. et al.,Physical Chemistry Chemical Physics,2009年,Vol.11,pp.9141-9148,<DOI:10.1039/b910110a>
【文献】ZHENG, Y. et al., Journal of Materials Science,2016年12月05日,Vol.52,pp.3457-3466,<DOI:10.1007/s10853-016-0635-8>
【文献】SUI, S. et al.,Journal of Materials Chemistry A,2017年,Vol.5,pp.1808-1825,<DOI:10.1039/c6ta08580f>
【文献】KING, J. S. et al.,Nano Letters,2008年,Vol.8,pp.2405-2409,<DOI:10.1021/nl801299z>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C23C 16/00 - 16/56
H01M 4/86 - 4/98
H01M 8/10
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池での使用のための担持電気化学触媒
を製造するための方法であって、
表面官能化のために炭素基板を酸素プラズマに暴露することにより、触媒担体
を形成することと、
前記触媒担体を被覆する
ように触媒
を堆積させることであって、前記触媒は、白金族金属を含
み、前記触媒を堆積させることは、複数の原子層堆積サイクルを実施することと、各サイクルの終了時に前記触媒担体を含浸するように不動態化ガスを提供することとを含む、ことと
を
含み、前記
触媒の堆積物は、2nm以下の平均厚を有し、前記堆積物は、相互から離間され、
前記堆積物の側方サイズ対厚さの比の観点からの平均アスペクト比は、1.5以上である、
方法。
【請求項2】
前記堆積物の平均厚は、1.8nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記堆積物の平均厚は、1.6nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項4】
最近傍の隣接堆積物間の平均縁間距離は、10nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項5】
最近傍の隣接堆積物間の平均縁間距離は、5nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項6】
最近傍の隣接堆積物間の平均縁間距離は、3nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項7】
前記堆積物の平均側方サイズは、20nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項8】
前記堆積物の平均側方サイズは、10nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項9】
前記堆積物の平均側方サイズは、5nm以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項10】
前記堆積物の側方サイズ対厚さの比の観点からの平均アスペクト比は、1.8以上である、請求項1に記載の
方法。
【請求項11】
前記堆積物の側方サイズ対厚さの比の観点からの平均アスペクト比は、2以上である、請求項1に記載の
方法。
【請求項12】
平均側方サイズに対する前記堆積物の側方サイズの標準偏差は、100%以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項13】
平均側方サイズに対する前記堆積物の側方サイズの標準偏差は、90%以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項14】
平均側方サイズに対する前記堆積物の側方サイズの標準偏差は、80%以下である、請求項1に記載の
方法。
【請求項15】
前記触媒担体は、炭素質ナノ粒子である、請求項1に記載の
方法。
【請求項16】
燃料電池のための膜電極アセンブリ
を製造するための方法であって、
高分子イオン伝導性膜
を準備することと、
電気触媒層を準備することと、前記高分子イオン伝導性膜に隣接
して前記電気触媒層
を配置することとを
含み、前記電気触媒層
を準備することは、請求項1~
15のいずれか一項に記載の
方法を含む、
方法。
【請求項17】
燃料電池
を製造するための方法であって、
カソード電気触媒層
を準備することと、
アノード電気触媒層
を準備することと、
前記カソード電気触媒層と前記アノード電気触媒層との間に
高分子イオン伝導性膜
を配置することと
を
含み、前記カソード電気触媒層または前記アノード電気触媒層のうちの少なくとも1つ
を準備することは、請求項1~
15のいずれか一項に記載の
方法を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その内容が、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、2017年11月9日に出願された、米国仮出願第62/583,973号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
陽子交換膜(PEM)燃料電池は、ゼロエミッション車両等の用途のための電力源として、大きい可能性を有している。しかしながら、最高水準のPEM燃料電池は、いくつかの欠点を被る。最も困難な欠点の1つは、燃料電池の膜電極アセンブリ(MEA)内で電気化学触媒としての役割を果たす、高価な白金族金属(PGM)の量である。
【0003】
本背景に対して、本開示の実施形態を開発する必要性が生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態では、担持触媒は、(1)触媒担体と、(2)触媒担体を被覆する、触媒の堆積物とを含み、堆積物は、約2nm以下の平均厚を有し、堆積物は、相互から離間される。
【0005】
いくつかの実施形態では、燃料電池のための膜電極アセンブリは、(1)高分子イオン伝導性膜と、(2)高分子イオン伝導性膜に隣接する、電気触媒層とを含み、電気触媒層は、前述の実施形態の担持触媒を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、燃料電池は、(1)カソード電気触媒層と、(2)アノード電気触媒層と、(3)カソード電気触媒層とアノード電気触媒層との間に配置される、高分子イオン伝導性膜とを含み、カソード電気触媒層またはアノード電気触媒層のうちの少なくとも1つは、前述の実施形態の担持触媒を含む。
【0007】
本開示の他の側面および実施形態もまた、考えられる。前述の概要および以下の詳細な説明は、本開示を任意の特定の実施形態に制限する意図はなく、単に、本開示のいくつかの実施形態を説明するように意図されている。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
担持触媒であって、
触媒担体と、
前記触媒担体を被覆する触媒の堆積物と
を備え、前記堆積物は、2nm以下の平均厚を有し、前記堆積物は、相互から離間される、担持触媒。
(項目2)
前記堆積物の平均厚は、1.8nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目3)
前記堆積物の平均厚は、1.6nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目4)
最近傍の隣接堆積物間の平均縁間距離は、10nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目5)
最近傍の隣接堆積物間の平均縁間距離は、5nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目6)
最近傍の隣接堆積物間の平均縁間距離は、3nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目7)
前記堆積物の平均側方サイズは、20nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目8)
前記堆積物の平均側方サイズは、10nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目9)
前記堆積物の平均側方サイズは、5nm以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目10)
前記堆積物の側方サイズ対厚さの比の観点からの平均アスペクト比は、1.5以上である、項目1に記載の担持触媒。
(項目11)
前記堆積物の側方サイズ対厚さの比の観点からの平均アスペクト比は、1.8以上である、項目1に記載の担持触媒。
(項目12)
前記堆積物の側方サイズ対厚さの比の観点からの平均アスペクト比は、2以上である、項目1に記載の担持触媒。
(項目13)
平均側方サイズに対する前記堆積物の側方サイズの標準偏差は、100%以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目14)
平均側方サイズに対する前記堆積物の側方サイズの標準偏差は、90%以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目15)
平均側方サイズに対する前記堆積物の側方サイズの標準偏差は、80%以下である、項目1に記載の担持触媒。
(項目16)
前記触媒担体は、炭素質担体である、項目1に記載の担持触媒。
(項目17)
前記触媒担体は、炭素質ナノ粒子である、項目1に記載の担持触媒。
(項目18)
前記触媒は、白金族金属を含む、項目1に記載の担持触媒。
(項目19)
燃料電池のための膜電極アセンブリであって、前記膜電極アセンブリは、高分子イオン伝導性膜と、前記高分子イオン伝導性膜に隣接する電気触媒層とを備え、前記電気触媒層は、項目1-18のいずれかに記載の前記担持触媒を含む、膜電極アセンブリ。
(項目20)
燃料電池であって、
カソード電気触媒層と、
アノード電気触媒層と、
前記カソード電気触媒層と前記アノード電気触媒層との間に配置される高分子イオン伝導性膜と
を備え、前記カソード電気触媒層または前記アノード電気触媒層のうちの少なくとも1つは、項目1-18のいずれかに記載の前記担持触媒を含む、燃料電池。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態の性質および目的のより深い理解のために、以下の詳細な説明が、添付図面と併せて参照されるべきである。
【0009】
【
図1】
図1は、触媒担体を被覆する触媒の堆積物を含む、担持触媒の構造の略図である。
【0010】
【
図2】
図2は、
図1に示される担持触媒の一部の拡大断面図の概略図である。
【0011】
【
図3】
図3は、本明細書に開示される担持触媒を組み込む、PEM燃料電池の概略図である。
【0012】
【
図4】
図4は、前駆体吸着段階において比較される、不動態化処理が組み込まれた原子層堆積(PALD)(a)、および通常の原子層堆積(b)プロセスの概略図である。炭素上での75サイクルのPALD(c)および50サイクルの通常の原子層堆積(d)の透過電子顕微鏡法(TEM)およびエネルギーフィルタTEM(EF-TEM)顕微鏡写真。(c)および(d)内のスケールバーは、20nmを表す。
【0013】
【
図5】
図5は、密度関数理論(DFT)計算からの、Pt上の白金(Pt)含有前駆体、および一酸化炭素吸着Ptの吸着エネルギーである。
【0014】
【
図6】
図6は、質量活性対電気化学ポテンシャルによって比較された、40サイクルのPALDによって改質された、ガラス状炭素電極および炭素粉末(a)。O
2飽和電解質における10,000サイクル(約0.6~約1.0V対可逆水素電極(RHE))の加速劣化試験(ADT)の前後に40サイクルのPALDを用いた、炭素上の白金(Pt/C)の酸素還元反応(ORR)分極曲線(b)。ADT後にTEMによって検査された、Pt堆積物の形態(c)。
【0015】
【
図7】
図7は、予測される運動電流密度(左下)および比活性度(右下)が比較される、O
2中における、10,000回のADTの前後の、40サイクルのPALD Pt/Cサンプルのサイクリックボルタンメトリ曲線(上)である。
【0016】
【
図8A】
図8Aは、ガラス状炭素電極上のPtおよびPt/C触媒に関する、40サイクルのPALDの比活性度の比較である。
【0017】
【
図8B】
図8Bは、ガラス状炭素電極上のPtおよびPt/C触媒に関する、40サイクルのPALDの質量活性の比較である。
【0018】
【
図9】
図9は、40サイクルのPALDを施したPt/C触媒でのPt装填量の関数としての質量活性である。
【0019】
【
図10】
図10は、ORR試験の前後の40サイクルのPALD Pt/C触媒のPt堆積物サイズの統計値である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態は、非常に活性であって、非常に安定した、かつPEM燃料電池を含む、燃料電池のための超低負荷触媒のための触媒担体上に堆積される、PGM(またはPGMを含む、合金または他の複数元素材料)の改良された構造、およびその構造を形成するプロセスを対象とする。原子層堆積の使用を通して、触媒は、低減された厚さと、高い共形性とを伴って堆積されることができる。触媒の低減された厚さは、低い装填量での触媒の効率的な使用を可能にし、さらに、触媒表面原子のより多くの暴露に伴って、より高い触媒活性へと変換させる。触媒の堆積は、ナノ島またはナノクラスタの形態の担体上に触媒のナノサイズの堆積物をもたらすことができ、これらの堆積物は、担体の表面上に高密度に充塞され、適度な表面積を有する担体の使用を可能にすることができ、これは、ガス拡散インピーダンスを低減させるために望ましい。触媒活性の改良もまた、高密度に充塞された堆積物の近接効果を通して達成されることができる。触媒の堆積物と担体との間の強力な接着は、高い安定性を提供し、オストヴァルト熟成および凝集等の分解プロセスに対するより大きい耐性を提供する。
【0021】
図1は、いくつかの実施形態による、触媒担体104を被覆する触媒102の堆積物を含む、担持触媒100の構造の概略図である。
図1は、担持触媒100の単一事例を示すが、担持触媒100の複数の事例もまた、含まれることができる。ここで、触媒102は、白金(Pt)等のPGMを含む。Ptに加え、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、およびイリジウム(Ir)、および銀(Ag)および金(Au)等の貴金属等の他のPGMもまた、本開示によって包含される。また、本開示によって包含されるものは、2つ以上の異なるPGMの合金、およびPGMと、貴金属またはスカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、または亜鉛(Zn)等の他の遷移金属との合金である。
図1を参照すると、触媒担体104は、約10nm~約400nm、約10nm~約300nm、約10nm~約200nm、約10nm~約150nm、または約10nm~約100nm等の、約5nm~約500nmの範囲内またはそれよりも大きいサイズを有し、約3以下、または約2以下のアスペクト比を有する、炭素質ナノ粒子等のナノ粒子の形態にある。炭素質ナノ粒子の場合では、ナノ粒子は、黒鉛または非結晶質である、炭素を含むことができ、そのようなナノ粒子の複数の事例は、粉末の形態で提供されることができる。炭素ナノホーン、炭素ナノ繊維、炭素ナノリボン、黒鉛、およびグラフェンシート等の他のタイプの触媒担体、および非炭素系担体もまた、使用されることができる。
図1を参照すると、触媒担体104は、官能化され、官能化された触媒担体104上に堆積される、触媒102との接着を助長する。
【0022】
図2は、
図1に示される担持触媒100の一部の拡大断面図の概略図である。
図2に示されるように、触媒102の堆積物は、下層の担体104を暴露させるように相互から離間される、ナノ島またはナノクラスタの離散領域の形態にあり、これらの堆積物は、約8nm以下、約6nm以下、約4nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1.9nm以下、約1.8nm以下、約1.7nm以下、約1.6nm以下、または約1.5nm以下、そして最低で約1nm以下または最低で約0.5nm以下の範囲内の平均厚を伴う、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%等の、少なくとも約5%の担体104の表面被覆率を提供する。例えば、堆積物の平均厚は、約1nm~約2nmまたは約0.5nm~約2nmの範囲内であることができる。言い換えると、堆積物の平均厚は、約1原子層~約20原子層、約1原子層~約15原子層、約1原子層~約10原子層、約1原子層~約8原子層、約1原子層~約5原子層、約1原子層~約4原子層、約1原子層~約3原子層、約1原子層~約2原子層、または約1原子層~約1.5原子層の範囲内であることができる。堆積物の表面被覆率および厚さは、透過電子顕微鏡(TEM)または走査電子顕微鏡(SEM)画像、後方散乱分光法、X線光電子分光法(XPS)、または誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等を使用する、撮像技法を使用して査定されることができる。単一元素材料の場合では、1つの原子層が、元素の原子の単層の厚さに対応することができる。a%の第1の元素と、b%の第2の元素とのモル組成を有する、二元元素材料の場合では、1つの原子層が、(a/100)×(第1の元素の原子のサイズ)+(b/100)×(第2の元素の原子のサイズ)によって求められる有効サイズを有する、原子の単一層の厚さに対応することができる。モル組成による類似する加重平均が、三元元素材料または他の多元素材料のための1つの原子層の厚さを規定するために使用されることができる。
【0023】
図2を参照すると、触媒102の堆積物は、最近傍の隣接堆積物間に、約15nm以下、約10nm以下、約8nm以下、約5nm以下、約4nm以下、または約3nm以下、そして最低で約0.5nm以下または最低で約0.2nm以下等の、約20nm以下の平均縁間距離を伴って、担体104の表面上で高密度に充塞される。例えば、最近傍の隣接堆積物間の平均縁間距離は、約0.2nm~約3nmの範囲内であることができる。2つの隣接堆積物間の縁間距離は、堆積物の個別の縁または境界間の最も近接する距離に対応し、TEMまたはSEM画像等を使用する撮像技法を使用して査定されることができる。堆積物の高密度に充塞される配列は、約500m
2/g以下、約400m
2/g以下、約300m
2/g以下、または約200m
2/g以下、そして最低で約100m
2/g以下のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積等の適度な表面積を有する、担体104の使用を可能にする。担体上への触媒102の装填量は、約18μg/cm
2以下、約15μg/cm
2以下、約13μg/cm
2以下、約10μg/cm
2以下、または約8μg/cm
2以下、そして最低で約7μg/cm
2以下、最低で約5μg/cm
2以下、または最低で約2μg/cm
2以下等、約20μg/cm
2以下であることができる。触媒102の堆積物の平均側方サイズは、約15nm以下、約10nm以下、約8nm以下、約5nm以下、約4nm以下、または約3nm以下、そして最低で約1nm以下等、約20nm以下であることができる。堆積物のサイズは、堆積物が完全に囲繞され得る、最も小さい対応する円の直径に対応し、TEMまたはSEM画像等を使用する撮像技法を使用して査定されることができる。堆積物は、球状または八面体ではなく、(側方サイズ対厚さの比の観点から)約1.5以上、約1.8以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、約4.5以上、約5以上、約5.5以上、または約6以上、そして最高で約10以上、最高で約15以上、または最高で約20以上の平均アスペクト比を伴う、平坦であることができる。触媒102の堆積物の平坦な形態は、触媒102の単位質量あたり、少なくとも約1/100cm
2/μg、少なくとも約1/80cm
2/μg、少なくとも約1/50cm
2/μg、少なくとも約1/30cm
2/μg、または少なくとも約1/10cm
2/μg、そして最高で約1/5cm
2/μg以上の担体104の表面との高い接触を提供する。堆積物は、平均側方サイズに対して、約100%以下、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、または約50%以下、そして最低で約30%以下の側方サイズの標準偏差を伴う、均質な側方サイズ分布によって特徴付けられることができる。
【0024】
図1および2に示される担持触媒100等の担持触媒を形成するプロセスフローが、次いで、いくつかの実施形態に従って説明される。プロセスフローは、官能化担体をもたらすために触媒担体を官能化することを含み、後に、官能化担体上への触媒の堆積が続く。担体を官能化することは、担体の表面に固定基または官能基をもたらし、担体上に堆積されるべき触媒の前駆体との化学的接合を向上または助長するために実施される。担体を官能化することは、水素プラズマ、酸素プラズマ、または窒素プラズマ等のプラズマ処理を適用することによって実施されることができる。プラズマ処理の代わりに、またはそれと組み合わせて、担体を官能化することは、酸、塩基、または他の反応性化合物等を使用する湿式化学処理によって、または熱処理によって実施されることができる。例えば、昇温状態における酸素、オゾン、二酸化窒素、または過酸化水素を用いた酸化処理もまた、官能基をもたらすために実施されることができる。また、窒素源または水素源も、適用され、担体の表面上に官能基をもたらすことができる。
【0025】
次いで、官能化担体上への触媒の堆積が、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施される。いくつかの実施形態では、触媒の原子層堆積は、不動態化処理を組み込み、触媒のすでに堆積された材料の表面を不動態化し、そうでなければ厚い島またはクラスタの形成につながり得る、核生成性質を克服する。いくつかの実施形態の改良されたプロセスは、堆積が自己終了し、材料の後続の堆積が、すでに堆積された材料の代わりに、担体の空いている面積を被覆することに向かって優先または助長されるであろうように、すでに堆積された材料の表面エネルギーを調整または変化させるための、不動態化プロセスガスの使用を組み込む。
【0026】
不動態化処理が組み込まれた原子層堆積のプロセスフローは、堆積チャンバ内に保持される担体上に材料を堆積させるための、第1の原子層堆積サイクルを実施することを含み、必要な量の材料が堆積されるまで、担体上に材料を堆積させるための、第2の原子層堆積サイクルを実施することが後に続き、担体上に材料を堆積させるための、第3の原子層堆積サイクルを実施することが後に続く等となる。堆積サイクルの数は、例えば、1~5,000、2~4,000、3~3,000、5~2,000、または10~1,000の範囲内であることができる。
【0027】
各原子層堆積サイクルを実施することは、担体または担体の一部を、堆積されるべき材料を含有する、第1の前駆体と、第2の酸化前駆体と、不動態化ガスとを含む、堆積ガスに連続的に暴露することを含む。単一元素金属の場合では、例えば、第1の前駆体は、金属が有機配位子と配位される、有機金属化合物等の金属含有前駆体であることができ、第2の酸化前駆体は、酸素、オゾン、または酸素プラズマであることができる。例えば、Ptの具体的な場合に関して、第1の前駆体は、トリメチル(メチルシクロペンタジニエル)白金(IV)または別のPt含有有機金属化合物であることができる。Ptに加えて、堆積は、他の貴金属、およびNiまたはCo等の他の単一元素金属のために実施されることができる。第1の原子層堆積サイクルの間に、第1の前駆体が、チャンバの中に導入され、第1の前駆体が、第1の前駆体の分子、第1の前駆体の分子の残留物、または両方の組み合わせの形態で担体に吸着されることをもたらし、第2の酸化前駆体が、チャンバの中に導入され、吸着された第1の前駆体と第2の酸化前駆体との間に反応をもたらし、吸着された第1の前駆体中に含まれる配位子を遊離させ、それによって、担体上に堆積された材料を残す。水素または水素プラズマ等の第2の還元前駆体が、第2の酸化前駆体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用されることができる。除去動作が、各前駆体を導入することに続いて実施され、真空化または不活性キャリアガスで清浄にすること等によって、反応生成物および任意の未反応前駆体を除去することができる。
【0028】
不動態化ガスは、前駆体を第1の原子層堆積サイクルを含む、各原子層堆積サイクルの中に導入することに続いて、かつ前駆体を後続の原子層堆積サイクルの中に導入することに先立って、チャンバの中に導入される。不動態化ガスは、第1の前駆体の後続の吸着が、すでに堆積された材料の代わりに、担体の空いている面積を被覆することに向かって優先または助長されるであろうように、その吸着エネルギーをあまり好ましくないものにするために、第1の前駆体とすでに堆積された材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させる役割を果たす。そのような様式で、不動態化ガスの使用は、担体に沿った第1の前駆体の分散を向上させ、担体に沿った堆積された材料の向上されたより均一な被覆につながり、かつその被覆にわたる制御を可能にする。いくつかの実施形態では、不動態化ガスに関する基準は、以下、すなわち、1)堆積された材料上に吸着するための能力と、2)担体と比較して、堆積された材料上へのより強力な吸着に向かったより高い性質を呈する、またはそれを有することと、3)堆積された材料上への吸着の後、不動態化ガスが、中間体化学種を形成することと、4)中間体種への第1の前駆体の吸着エネルギーが、約-5kJ/モル以上(または約-0.052eV以上)、約0kJ/モル以上(または約0eV以上)、または約10kJ/モル以上(または約0.104eV以上)等、約-10kJ/モルを上回る(または約-0.104eVを上回る)(例えば、それより負ではない、またはそれより正である)こと、または中間体種への第1の前駆体の吸着エネルギーが、担体への第1の前駆体の吸着エネルギーを上回ることとのうちの1つ以上のものを含む。例えば、Ptまたは別の単一元素金属の場合に関して、不動態化ガスは、一酸化炭素(CO)であることができる。COに加えて、上記に記載される基準を満たす、アンモニア(NH3)、一酸化窒素(NO)、およびメタン(CH4)等の他の不動態化ガスもまた、使用されることができる。プロセス温度が、不動態化ガスの脱離を軽減させるために制御されることができる。例えば、COまたは別の不動態化ガスの場合に関して、担体の温度は、約50℃~約250℃、約80℃~約200℃、または約100℃~約150℃の範囲内になるように制御されることができる。
【0029】
不動態化ガスの使用に加えて、不動態化処理が組み込まれた原子層堆積もまた、担体に吸着された第1の前駆体と反応し、吸着された第1の前駆体中に含まれる配位子を遊離させることと、第1の前駆体の後続の吸着が、担体の空いている面積を被覆することに向かって優先または助長されるであろうように、その吸着エネルギーをあまり好ましくないものにするために、第1の前駆体とすでに堆積された材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させることとの二重機能の役割を果たす、不動態化前駆体を使用して実施されることができる。また、上記に説明される単一元素材料の堆積に加えて、不動態化処理が組み込まれた原子層堆積もまた、多元素材料の堆積のために適用されることができる。
【0030】
図3は、本明細書に開示される担持触媒を組み込む、PEM燃料電池300の概略図である。燃料電池300は、ともに燃料電池300の膜電極アセンブリを構成する、カソード電気触媒層304とアノード電気触媒層306との間に配置される、高分子イオン伝導性膜302を含む。燃料電池300はまた、双極プレートまたは単極プレートであり得る、導電性流動フィールドプレート308および310を含む。ガス拡散層312および314もまた、流動フィールドプレート308および310と電気触媒層304および306との間に介在される。カソード電気触媒層304およびアノード電気触媒層306のいずれかまたは両方は、本明細書に開示される担持触媒を含むことができる。例えば、担持触媒は、カソード電気触媒層304の中に組み込まれると、カソード側における酸素還元反応を助長し得、アノード電気触媒層306の中に組み込まれると、アノード側における水素酸化反応も助長し得る。
【実施例】
【0031】
以下の実施例は、本開示のいくつかの実施形態の具体的な側面を説明し、当業者のための説明を例証または提供する。実施例は、本開示のいくつかの実施形態を理解および実践することにおいて有用である具体的な方法論を提供しているにすぎないため、実施例は、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0032】
通常の原子層堆積(ALD)では、基板上での材料成長は、典型的には、核生成相を経て、実質的に完全な膜の形成まで垂直の成長および表面被覆が、競合する。これは、堆積された材料および堆積する基板上への前駆体の吸着挙動の差異に起因する。
図4bに図示されるように、前駆体分子は、大部分は、ファンデルワールス力に起因して、堆積物上に容易に吸着することができる。核生成相に対抗し、基板上への前駆体被覆を助長するための方略は、基板の表面が、事実上湿潤され得るように、より高い表面エネルギーを伴う基板を選定することである。しかしながら、本方略は、基板の選択肢を制約させ得る。堆積物の表面が、堆積物表面を不動態化させ、前駆体の吸着を阻止する、吸着剤によって改質される、改良された方略が、
図4aに図示される。本場合では、一酸化炭素(CO)が、Pt含有前駆体、すなわち、トリメチル(メチルシクロペンタジニエル)白金(IV)が、剥き出しのPt上と比較して、COが吸着されたPt上に有意にあまり好ましくない吸着エンタルピー(
図5)を有し得るため、Ptの堆積のための不動態化ガスとして使用されることができる。炭素基板上への堆積結果が、
図4cおよび4dに提示される。類似する側方粒径において、不動態化処理が組み込まれたALD(PALD)プロセスは、CO不動態化を用いない3次元島の形成と比較して、垂直成長を有意に抑制させた。全体的な成長率もまた、不動態化ガスの導入に伴って低下し、Pt堆積が、大部分はPALDを用いたPt島の側方成長によって支配されることを示す。
【0033】
実践的な炭素上の白金(Pt/C)触媒を作製する実行可能性を実証するために、PALDが、商業的に利用可能な炭素粉末上で実施され、次いで、典型的なインク調合プロセスを受け、ガラス状炭素電極上に装填された。スルホン化テトラフルオロエチレン(Nafion)が、イオノマー結合剤として使用され、回転ディスク電極(RDE)評価プロセス下におけるPt/C触媒の薄膜の機械的安定性を確実にする。したがって、イオノマー/炭素比率が、Pt/C薄膜の機械的安定性とイオノマーと関連付けられる付加的な酸素拡散インピーダンスに起因する触媒活性との間の平衡が保たれるように、約0.1に最適化された。炭素粉末上に堆積されたPt/C触媒およびガラス状炭素上に直接堆積されたPtの平均質量活性が、
図6aで比較され、炭素粉末上に堆積されたPt/C触媒およびガラス状炭素上に直接堆積されたPtの平均比活性度が、
図8Aで比較される。濃度補正が、ガラス状炭素の対応物より高い装填量に起因する(約7μg/cm
2対約1μg/cm
2)Pt/C触媒の性能に関する過小評価を除外するために実施される。濃度補正の有無別のデータセット間の間隙によって示されるように、より高い装填量の触媒の固有の運動電流密度は、所与の測定された電気化学ポテンシャルにおける全体的なより高い性能に起因して、より低い表面反応物質の濃度を前提として、より高いネルンスト損失の結果として、より過小評価される。また、物質輸送インピーダンスは、約0.9Vを下回るPt/CとPt/ガラス状炭素サンプルとの間の間隙相違(対可逆水素電極(RHE))によって示されるように、ナノ構造化およびNafionの結果として、Pt/Cサンプル上において重要な役割を果たすことができる。本領域において、膜品質の影響は、Pt/Cサンプル間の拡大する変動によって示されるような、触媒性能へのより大きい影響を有する。ターフェルプロットは、殆ど、電流密度が、大部分が、動態学的に支配される、約0.92Vの上方(対RHE)の電気化学ポテンシャルに重複した。約0.9Vにおける(対RHE)Pt/C触媒の質量活性は、約1.16A/mgPt(濃度補正を用いない場合、約0.98A/mg
Pt)であり、これは、他のPt/C触媒より1倍を上回って有意に優れている。Pt/C触媒中のPt装填量の関数としての質量活性が、
図8Bおよび
図9に提示される。
【0034】
Pt/C触媒の安定性性能が、
図6bに提示され、酸素飽和電解質中での10,000サイクルの加速劣化試験(ADT)の前後の同一の触媒の線形掃引ボルタンメトリが、比較される。電気化学的表面積(ECSA)の(
図7のサイクリックボルタンメトリデータによって示されるように、ADT後、概略的に約-10%の)小さいが、顕著な変化にもかかわらず、予測される(正規化される幾何学形状の面積の)運動電流密度は、わずか約1.2%だけ低下される(
図7)。これは、一連のほぼ重複する酸素還元反応(ORR)分極曲線と、ADTの前後の比活性度に関する約10%の改良とをもたらす。水素アンダーポテンシャル折出(HUPD)ECSAは、全ての陽子に接近可能なPtを考慮する一方、表面上に様々な構成で分散されるPtに関する酸素接近性および電子接近性は、変動し得る。結果は、ADTプロセスが、おそらく、不十分な触媒活性を有し得る、触媒薄膜に不十分に付着されたPt/C粒子を剥取することによって、Pt/C触媒の利用を改良したことを示す。10,000サイクル後のPt/C触媒の形態が、
図6cに示される。第1のORR掃引後のものと比較すると、Pt堆積物は、殆ど、それらの平均直径(ADT後の約3.14nm対約3.18nm)を留保したが、サイズ分布の分散が、約0.5nmから約0.7nmに増加したことにつれて(
図10)、わずかな熟成を伴い、Ptの酸化および溶解に起因する、熟成効果を示した。それにもかかわらず、可能性として強力なPt堆積/基板接着に起因する、有意な凝集作用は、見出されない。
【0035】
手短に言えば、本実施例は、原子層堆積プロセスの間に堆積されるPtの厚さを抑制することにおける、不動態化ガスの能力を実証している。本技法は、炭素質触媒担体上への薄いPt堆積物の直接堆積を可能にする。そのようなPt/C触媒は、酸素還元反応のための質量活性を改良し、かつ優れた安定性を実証している。
【0036】
PALDおよびALD
【0037】
PtのALDが、Pt前駆体と、トリメチル(メチルシクロペンタジニエル)白金(IV)(約99%、Strem Chemicals製)と、酸化剤と、オゾンとを標的基板に交互に暴露させることによって達成された。オゾンが、オゾン発生器(MKS Instrument製、AX8407-C2)中で、酸素(約99.99%)と、窒素(約99.998%、混合濃度は、約50パーツパーミリオン(ppm))との混合物から生成された。供給酸素流量が、毎分約500標準立方センチメートル(sccm)に保たれ、約21.7重量%のオゾン濃度を提供した。Pt前駆体が、約80℃で加熱された。堆積されたPtの金属形態を保証するために、水素(約99.999%、Praxair製)が、酸化段階後の各サイクルに導入された。
【0038】
PALDが、各ALDサイクルの終了時に不動態化ガス含浸動作を組み込むことによって、達成された。本実施例では、一酸化炭素(約99.5%、Praxair製)が、ALDチャンバの中に供給され、各ALDサイクルの終了時に、基板を約20秒にわたって約2トルで含浸した。Pt堆積に先立って、炭素基板は、表面官能化のために、約10分にわたってプラズマクリーナ(Harrick PDC-001)中で、酸素プラズマに暴露された。
【0039】
電気化学測定
【0040】
ORR活性試験に関して、Ptでコーティングされたガラス状炭素電極が、RDE先端に組み立てられた。電解質が、超純水で、約70%過塩素酸(Merck製、Suprapur)から約0.1モル/Lに希釈された(約18.2MΩ・cm、全有機炭素(TOC)<約5パーツパービリオン(ppb))。対電極としての白金ワイヤと、基準電極としてのRHEとを伴う、3電極セルが、使用された。ORR測定の間、酸素の圧力が、大気圧によって平衡された。測定温度は、23±2℃であり、ボルタンメトリが、Gamry PCI4/300ポテンショスタットによって行われた。汚染物質を低減させるために、全てのガラス製品が、約24時間超にわたってピラニア溶液中に含浸され、使用に先立って、超純水で5回濯洗された。それらのORR活性を測定する前に、全ての電極が、アルゴンガスで清浄にされた電解質中での、サイクリックボルタンメトリを用いた、約500mV/秒の走査率で50サイクルにわたる、約0.025Vから約1.0Vへの活性化プロセスを受けた。触媒が装填された電極のORR活性が、約1,600rpmの電極回転速度下で、約-0.01Vから約1Vの約20mV/秒の走査率における、線形掃引ボルタンメトリによって評価された。報告された値は、背景および補償されていない電解質抵抗に関して補正される。
【0041】
Pt/C触媒に関して、(炭素の質量に基づいた)約45mgの粉末が、超音波処理の助けを借りて約25mlの超純水中に分散された。約3mlの懸濁液がさらに、超純水で3倍に希釈され、約10μlの約5%Nafion溶液と、約1.12mlの無水エタノールとの添加が、後に続いた。本混合物は、次いで、ガラス状炭素電極上への分散に先立って、約20分にわたって氷浴中で超音波処理された。典型的な電極に関して、約10~40μlのアリコートが、RDE先端に落下され(約2~約20μg/cm2のPt装填量範囲に対応する)、これは、溶媒の蒸発および薄膜形成のために約1時間にわたって約700rpmで回転される。電極は、次いで、上記に説明されるものと同一のプロトコルを用いて測定される。
【0042】
加速劣化試験(ADT)は、電気化学ポテンシャルを、約100mV/秒の走査率で10,000サイクルにわたって、約0.6Vから約1.0V(対RHE)に循環させることによって行われる。ADTの(約23時間)後、先端は、新鮮な電解質の中に置かれ、酸素環境におけるORR活性の試験を実施する前に、不活性ガス飽和環境内で、同一の活性化およびサイクリックボルタンメトリプロセスを受ける。
【0043】
材料の特性評価
【0044】
Ptの質量が、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって定量化された。Pt/Cサンプルに関して、電極が、一晩、王水中に浸漬され、溶液のPt濃度が、測定された。
【0045】
本明細書で使用されるように、単数形を表す用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別様に示さない限り、複数の指示物を含み得る。したがって、例えば、物体の言及は、文脈が明確に別様に示さない限り、複数の物体を含み得る。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「substantially(実質的に)」、「substantial(実質的な)」、「approximately(およそ)」および「about(約)」は、わずかな変動を説明し、考慮するために使用される。事象または状況と併用されると、本用語は、事象または状況が、精密に生じる事例、および事象または状況が近似して生じる事例を指すことができる。数値と併用されると、用語は、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下等、その数値の±10%以下変動の範囲を指すことができる。
【0047】
いくつかの実施形態の説明では、別の物体「上の」物体は、前者の物体が、後者の物体の上に直接存在(例えば、それと物理接触)する場合、および1つ以上の介在物体が、前者の物体と後者の物体との間に位置する場合を包含することができる。
【0048】
加えて、量、比率、および他の数値が、時として、範囲の形式で本明細書に提示される。そのような範囲形式は、便宜および簡潔さのために使用され、範囲の限定として明示的に規定される数値を含むものとしてというだけではなく、各数値および部分的範囲が、明示的に規定されている場合と同様にその範囲内に包含される、全ての個々の数値または部分的範囲を含むものとしても柔軟に理解されるべきであることを理解されたい。例えば、約1~約200の範囲内の比率は、約1および約200の明示的に列挙される限界を含むものとしてというだけではなく、約2、約3、および約4等の個々の比率、および約10~約50、約20~約100等の部分的範囲を含むものとしても理解されるべきである。
【0049】
本開示は、その具体的な実施形態を参照して説明されているが、添付の請求項によって定義されるような、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更が成され得ること、および均等物が置き換えられ得ることが、当業者によって理解されるべきである。加えて、多くの修正が、特定の状況、材料、物質の組成、方法、動作、または複数の動作を、本開示の目的、精神、および範囲に適合させるように成され得る。そのような修正は全て、本明細書に添付される請求項の範囲内であることが意図される。特に、ある方法が、特定の順序で実施される、特定の動作を参照して説明されている場合があるが、これらの動作は、本開示の教示から逸脱することなく均等な方法を形成するように、組み合わせられる、細分化される、または並べ替えられ得ることを理解されたい。故に、本明細書に具体的に示されない限り、動作の順序および群化は、本開示の限定にはならない。