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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/06 20060101AFI20231016BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20231016BHJP
   F16F 1/32 20060101ALI20231016BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20231016BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F16C27/06 B
F04D19/04 A
F16F1/32
F16F1/18 Z
F16F15/02 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020545632
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019055205
(87)【国際公開番号】W WO2019170555
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】202018001170.3
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508206070
【氏名又は名称】レイボルド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ホルツァー,レイナー
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-056976(JP,A)
【文献】特開昭61-262222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 23/00-27/08
F16F 1/00- 6/00
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングに配置されたステータ要素と
前記ステータ要素と協働するロータ要素と
前記ロータ要素を保持するロータ軸と
前記ポンプハウジングに配置され、前記ロータ軸を保持する軸受要素と
前記軸受要素の少なくとも1つを囲んで、前記軸受要素に連結された内側部分、前記ポンプハウジングに連結された外側部分、及び前記内側部分を前記外側部分に連結する複数のスプリングアームを有している少なくとも1つの支持要素と
を備えており、
各スプリングアームは、完全に密閉されている少なくとも1つの中空空間を有していることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの中空空間に減衰材料、特には粉末状材料が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記スプリングアーム毎に、前記少なくとも1つの中空空間、又は複数の中空空間が共に、前記スプリングアームの体積の少なくとも5%を占めていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記スプリングアームは、環状の部分及び螺旋状の部分として構成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項5】
複数のスプリングアームが、前記支持要素の径方向に少なくとも部分的に互いに重なり合っていることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項6】
全てのスプリングアームが、前記内側部分及び/又は前記外側部分に固定して連結されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記スプリングアーム、前記内側部分及び前記外側部分は一体に形成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の真空ポンプ。
【請求項8】
真空ポンプのロータ軸の軸受要素のための支持要素であって、
前記軸受要素に連結されるように構成されている内側部分と
ポンプハウジングに連結されるように構成されている外側部分と
前記内側部分を前記外側部分に連結する複数のスプリングアームと
を備えており、
各スプリングアームは、完全に密閉されている少なくとも1つの中空空間を有していることを特徴とする支持要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプのような真空ポンプは、複数のステータディスクを有するステータ要素をポンプハウジングに備えている。更に、複数のロータディスクを有するロータ要素が設けられており、ステータディスク及びロータディスクは、軸方向又は供給方向に互いに交互に配置されている。ロータディスクを有するロータ要素は、ロータ軸によって保持されている。ロータ軸は、ポンプハウジングに間接的又は直接的に配置されている軸受要素によって保持されている。スクリューポンプのような他の真空ポンプのタイプでは、ロータ要素が2つのスクリューロータによって構成されており、各スクリューロータは、ロータ軸を介してポンプハウジングに取り付けられている。この場合、ステータ要素は、ポンプハウジングによって、又はスクリューロータが配置されているポンプハウジングの孔若しくは開口部によって構成されている。同様の構成がルーツポンプ、クローポンプなどに当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ロータ軸は磁気軸受及び/又は転がり軸受を介して取り付けられていることが多い。転がり軸受の場合、転がり軸受はポンプハウジングに直接配置されず、振動環のような支持要素が転がり軸受の外側レースとポンプハウジングとの間に設けられていることが知られている。構成に応じて、このような支持要素は径方向の力及び/又は軸方向の力を吸収する及び/又は減衰させる。
【0004】
特別に構成された支持要素が、欧州特許出願公開第2064448 号明細書で知られている。この支持要素は、環状の内側部分及び環状の外側部分を有している。内側部分及び外側部分はスプリングアームを介して互いに連結されており、内側部分、外側部分及びスプリングアームは互いに一体に形成されている。欧州特許出願公開第2064448 号明細書で知られている支持要素では、スプリングアームは、周方向に延びているスロットがディスク状の要素に設けられるように構成されている。このため、環状の内側部分が環状の外側部分に対して移動することが可能になる。しかしながら、欧州特許出願公開第2064448 号明細書で知られている支持要素では、前記支持要素が非常に低い減衰特性しか有していないことが不利である。これは、この支持要素の特性が温度変化及び環境の化学物質の影響に起因して変化することが特に原因である。更に、スプリングアームが摩擦を受けるので、転がり軸受の外側レースの径方向移動の伝達は不十分である。このとき、摩擦挙動は大幅に変わる。
【0005】
本発明の目的は、軸受要素の減衰を向上させる支持要素が設けられている真空ポンプ、特にターボ分子ポンプを提案するということである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する真空ポンプ、及び請求項9の特徴を有する支持要素により達成される。
【0007】
真空ポンプはポンプハウジングを備えており、ポンプハウジングにステータ要素が配置されているか、又はポンプハウジングがステータ要素を構成している。少なくとも1つのロータ要素が少なくとも1つのステータ要素と協働する。真空ポンプのタイプに応じて、ステータ要素及びロータ要素は異なる構成である。ターボ分子ポンプの場合、ステータ要素は、複数のロータディスクと協働する複数のステータディスクを有している。同様に、スクリューポンプの場合、スクリューロータは、ハウジングの対応する孔及び/又は凹部と協働し、ハウジングの内部がステータ要素を構成している。同様の構成がルーツポンプ又はクローポンプに当てはまる。ロータ要素は少なくとも1つのロータ軸に保持されている。少なくとも1つのロータ軸はポンプハウジングに配置され、ポンプハウジングに配置された軸受要素によって保持されている。軸受要素は、特に磁気軸受又は転がり軸受とすることができる。転がり軸受の場合、転がり軸受をポンプハウジングに直接配置するのではなく、支持要素を転がり軸受、特にポンプハウジングの下方で転がり軸受の外側レースに設けることが有利である。
【0008】
本発明によれば、支持要素は内側部分及び外側部分を有している。ここで、内側部分は軸受要素に連結されており、内側部分は、転がり軸受の外側レースを更に構成してもよい。外側部分はポンプハウジングに連結されている。内側部分を外側部分に連結するために、特に複数のスプリングアームが設けられている。特に好ましい実施形態によれば、スプリングアームは内側部分及び/又は外側部分に連結されているか、又は内側部分及び/又は外側部分と一体に形成されている。本発明によれば、減衰特性を向上させるために、スプリングアームは少なくとも1つの中空空間を夫々有している。そのため、スプリングアームは、減衰特性を向上させるように容易に変形することができる。
【0009】
特に好ましい実施形態によれば、減衰材料が少なくとも1つの中空空間に充填されている。減衰材料が充填される中空空間は、減衰特性を変更するために異なる特性、量などの減衰材料で充填され得る。
【0010】
減衰材料として粉末を使用することが特に好ましい。微細固体粒子の混合物が粉末として使用され、微細固体粒子が動作条件下で凝集しないか、又は固まらないことが特に好ましい。
【0011】
特に好ましい実施形態によれば、スプリングアームにつき少なくとも1つの中空空間は完全に密閉されている。このため、減衰材料が中空空間の外に押し出されることがないことにより、減衰特性の変更が保証される。更に、減衰材料の損失が回避される。負圧が支持要素の領域に存在する場合、これは特に有利である。ここで、スプリングアームに設けられている中空空間をカバーによって閉じることができる。途中で中空空間を閉じる製造工程を選択することが好ましい。例えば、支持要素を鋳造することができ、中空空間は、欠損したコアによって実現される。支持要素を3D印刷によって製造し、対応する粉末を中空空間に充填して印刷中に中空空間を形成し得ることが好ましい。ここで、金属の3D印刷が特に好ましい。
【0012】
スプリングアームにつき少なくとも1つの中空空間又は複数の中空空間が夫々のスプリングアームの体積の少なくとも5%を占めていることが好ましい。そのため、特に使用される減衰材料に応じてスプリングアームの減衰特性を定めることが可能である。
【0013】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、個々のスプリングアームは環状の部分又は螺旋状の部分として構成されている。従って、スプリングアームは環又は螺旋の一部を形成している。特に、環状の部分又は螺旋状の部分として構成されたスプリングアームは、90°を超える角度、特には180 °を超える角度、特に好ましくは270 °を超える角度分、延びている。更に、複数のスプリングアームが、支持要素の径方向に、つまりロータ軸の径方向に少なくとも部分的に互いに重なり合っていることが好ましい。更に、優れた減衰特性を得るために、特に環状の部分又は螺旋状の部分として構成されたスプリングアームの場合、周方向の重なり合いが好ましい。
【0014】
全てのスプリングアームが、内側部分及び/又は外側部分に固定して連結されていることが特に好ましい。特に、スプリングアーム、内側部分及び外側部分が一体に形成されていることが好ましい。
【0015】
更に本発明は、真空ポンプのロータ軸の転がり軸受のような軸受要素のための支持要素に関する。上述したように、本発明によれば、支持要素は内側部分及び外側部分を有するように構成されており、内側部分は、軸受要素に間接的又は直接的に連結されるように構成されており、外側部分は、ハウジングに間接的又は直接的に連結されるように構成されている。内側部分は複数のスプリングアームを介して外側部分に連結されており、各スプリングアームは少なくとも1つの中空空間を有している。支持要素は、真空ポンプに関して上述したように構成されており、特に有利に更に開発されている。
【0016】
本発明を、添付図面を参照して好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ターボ分子ポンプの一部を非常に簡略化して示す概略図である。
図2】支持要素を示す平面略図である。
図3図2の線III -III に沿った断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1の非常に簡略化した断面図では、ターボ分子ポンプが真空ポンプとして示されている。ポンプはポンプハウジング10を備えている。ポンプハウジング10はステータ要素を保持しており、ステータ要素は、図示された例示的な実施形態では複数のステータディスク12を有している。更にポンプハウジング10には、ロータ要素16を保持するロータ軸14が配置されている。図示された例示的な実施形態では、前記ロータ軸は複数のロータディスク16を保持している。ロータ軸14は、概略的に図示された電気モータ18によって駆動される。ロータ軸14は、軸受20を介してポンプハウジング10のカバーに取り付けられている。反対側の真空ポンプの入口には、別の転がり軸受又は軸受要素が設けられてもよい。
【0019】
転がり軸受20の内側レース22がロータ軸14に連結されている。転がり軸受20の外側レース24が支持要素26に連結されている。
【0020】
支持要素26(図2及び図3)は内側部分28及び外側部分30を有している。図示された例示的な実施形態では、内側部分28は4つのスプリングアーム32を介して外側部分30に連結されている。図示された例示的な実施形態では、支持要素26全体が一体の構成である。
【0021】
螺旋状部分として構成されたスプリングアーム32は、スロット34によって互いに分離している。スロット34は、支持要素26の厚さ全体に亘って延びている(図3)。
【0022】
各スプリングアーム32には中空空間36が設けられており、複数の中空空間36が各スプリングアーム32に設けられ得る。減衰特性を定めるための粉末が中空空間36に充填されている。
【0023】
本発明に係る支持要素によって、回転軸芯38(図1)に対して生じる軸方向の力及び径方向の力を減衰させることが可能になる。
図1
図2
図3