(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ヘリコプター
(51)【国際特許分類】
B64C 27/12 20060101AFI20231016BHJP
B64C 27/14 20060101ALI20231016BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20231016BHJP
B64D 35/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B64C27/12
B64C27/14
B64D27/24
B64D35/08
(21)【出願番号】P 2020572527
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065161
(87)【国際公開番号】W WO2020001970
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-07
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】515234772
【氏名又は名称】コプター、グループ、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】kopter group ag
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス、ヘッテンコファー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、デュメル
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ、イーフェン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、レーベンスタイン
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0010652(US,A1)
【文献】特開2017-184504(JP,A)
【文献】特表2018-502242(JP,A)
【文献】特開2018-096540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0225573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/12
B64C 27/14
B64D 27/24
B64D 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコプタ
ーロータを駆動するための少なくとも1
つの電気駆動部(E)を有する
ヘリコプターであって、
前記少なくとも1つの電気駆動部(E)は、ロータ変速機(2)の駆動ユニットに回転固定された態様で連結可能な前記少なくとも1つの電気駆動部(E)を、前記
ヘリコプターロータと回転固定された態様で連結するために、ロータマスト(4)に連結するための手段を備
え、
前記少なくとも1つの電気駆動部(E)は、少なくとも1つの電気リングモータとして
構成され、前記少なくとも1つの電気リングモータは、前記ロータマスト(4)と同軸に配置されるとともに取り付けら
れ、
前記電気駆動部(E)は、ロータとして機能する内側ロータ(11)を有する電気リングモータとして構成され、前記内側ロータ(11)は、前記ロータマスト(4)に直接的に固定接続可能であり、
前記ロータマスト(4)は、2つの部分において構成され、軸受マスト(5)と外側マスト(6)とを備え、
前記外側マスト(6)は、前記軸受マスト(5)に対して中心軸(Z)を中心として回転可能に装着されるとともに、前記軸受マスト(5)を同心状に包囲する中空体として構成され、
前記外側マスト(6)は、前記ロータ変速機(2)に作動接続可能であり、
前記軸受マスト(5)は、前記ヘリコプターにおいて固定位置に回転固定された態様で装着可能であり、これにより、前記外側マスト(6)は、回転固定された態様で前記ヘリコプターロータに連結可能であるとともに、前記ロータ変速機(2)とともに回転状態に設定可能であり、
前記内側ロータ(11)は、前記外側マスト(6)に固定接続されている、
ことを特徴とする
ヘリコプター。
【請求項2】
前記電気駆動部(E)は、ロータとして機能する外側ロータを有する電気リングモータとして
構成され、前記外側ロータは、前記ロータマストに固定接続可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の
ヘリコプター。
【請求項3】
前記電気駆動部(E)は、前記ロータマスト(4)への動力伝達のための一体型変速機を有する電気リングモータとして
構成される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の
ヘリコプター。
【請求項4】
前記電気駆動部(E)は、遊星歯車として
構成された一体型変速機を有する電気リングモータとして
構成される、
ことを特徴とする請求項
3に記載の
ヘリコプター。
【請求項5】
前記電気駆動部(E)は、少なくとも前
記ロータ変速機(2)
の変速機ハウジング(30)に機械的に接続可能で
ある、
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の
ヘリコプター。
【請求項6】
ヘリコプターロータが追加の駆動部を設けることなく独立して駆動可能であるように、前記少なくとも1つの電気駆動部(E)は
構成されるとともに寸法決めされる、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の
ヘリコプター。
【請求項7】
電気リングモータとして
構成され
た複数の
前記電気駆動部(E)は、前記ロータマスト(4)に互いに同軸に配置されるとともに取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の
ヘリコプター。
【請求項8】
ハイブリッド駆動部(1)を有する
ヘリコプターであって、
前記ハイブリッド駆動部(1)は、
前記電気駆動部(E)と、
熱力学的エンジンとして
構成された第2駆動部(TK)と、
を備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のヘリコプター。
【請求項9】
前記電気駆動部(E)は、
前記第2駆動部(TK)に機械的に連結可能であり、これにより、前記電気駆動部(E)は、前記第2駆動部(TK)とともに連結状態で回転可能であり、このため、前記
ヘリコプターロータの駆動時に、並列に接続された
前記ハイブリッド駆動部(1)を形成する場
合に、前記電気駆動部(E)は前記第2駆動部(TK)を支援可能であ
る、
ことを特徴とする請求項
8に記載の
ヘリコプター。
【請求項10】
前記ハイブリッド駆動部(1)は
、蓄電ユニット(BS)である電気エネルギー源を備え、
前記電気駆動部(E)と
前記第2駆動部(TK)とが回転固定された態様で連結した状態において、前記電気駆動部(E)の前記第2駆動部(TK)の作動中に、前記ハイブリッド駆動部(1)の前記電気駆動部(E)は、前記蓄電ユニット(BS)の追加のエネルギー回収のための発電機として機能可能である、
ことを特徴とする請求項
9に記載の
ヘリコプター。
【請求項11】
整流器が前記電気駆動部(E)に設けられ、これにより、
前記電気駆動部(E)の非作動時に
前記蓄電ユニット(BS)が充電可能である、
ことを特徴とする請求項
10に記載の
ヘリコプター。
【請求項12】
前記軸受マスト(5)は中空体として
構成され、これにより、制御ロッドおよび/またはケーブル
を含む構成部品が、前記中心軸(z)の方向において前記軸受マスト(5)および前記外側マスト(6)を完全に貫通するように配置可能である、
ことを特徴とする請求項
1乃至11のいずれか一項に記載の
ヘリコプター。
【請求項13】
前記ロータマスト(4)は、駆動歯車(34)として
構成された前記駆動ユニットに、回転固定された態様で連結可能であり、
前記駆動歯車(34)は、少なくとも1つの径方向軸受により前記軸受マスト(5)に回転可能に装着可能であり、
前記駆動歯車(34)に対面する各第2遊星歯車キャリア(39)の側の少なくとも1つの駆動遊星歯車(41)の各遊星歯車軸(P)を中心とした回転が、回転固定された態様で前記駆動歯車(34)に接続された第2太陽歯車(35)により達成可能であり、
前記少なくとも1つの駆動遊星歯車(41)に属する少なくとも1つの固定装着された第2遊星歯車(40)が、中心軸(z)を中心として回転可能な内歯付き歯車リング(22)により包囲され、
前記駆動歯車(34)の回転運動から始まって、前記外側マスト(6)および前記外側マスト(6)に回転固定された態様で連結された前記
ヘリコプターロータが回転状態に設定可能であるように、動力伝達装置が、前記歯車リング(22)と前記外側マスト(6)との間に取り付け可能である、または一体成型される、
ことを特徴とする請求項
1乃至12のいずれか一項に記載の
ヘリコプター。
【請求項14】
前記
ヘリコプターは、制御ユニット(ST)とパワー電子ユニット(LEE)とを備え、
前記パワー電子ユニット(LEE)は、前記制御ユニット(ST)と
前記電気エネルギー源と前記電気駆動部(E)と相互作用可能であり
、前記パワー電子ユニット(LEE)は、電気エネルギーを前記エネルギー源から受け取り、これを電流の形態で前記電気駆動部(E)に伝達可能であり、
前記制御ユニット(ST)は、前記第2駆動部(TK)から、前記電気駆動部(E)から
、および前記電気エネルギー源から、センサ入力データを取得可能であり、且つ出力データを前記パワー電子ユニット(LEE)に伝達可能であるように
構成され、
前記制御ユニット(ST)は、ロジックを有して
構成され、これにより、前記パワー電子ユニット(LEE)から始まり、前記電気駆動部(E)の出力電力を、飛行条件、飛行プロファイル、バッテリレベル、および前記第2駆動部(TK)から生じる出力電力に応じて設定可能であり、
ことを特徴とする請求項
10または11に記載の
ヘリコプター。
【請求項15】
前記制御ユニット(ST)の前記ロジックにより、前記
ヘリコプターロータを駆動するためのトルク生成と、前記蓄電ユニット(BS)のための追加のエネルギー回収とを自動的にモード変更することが更に可能である、
ことを特徴とする請求項14に記載の
ヘリコプター。
【請求項16】
前記
ヘリコプターは、前記蓄電ユニット(BS)を充電するように前記第2駆動部(TK)に機械的に連結された追加の発電モジュール(SEM)を備え、これにより、直列に
構成されたハイブリッド駆動部(1)が得られる、
ことを特徴とする請求項
14に記載の
ヘリコプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる回転翼航空機のメインおよび/またはテールロータを駆動するための電気駆動部を有する回転翼航空機に関する。
【0002】
更に、本発明は、本発明による電気駆動部ならびに熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部を備えたハイブリッド駆動部であって、回転翼航空機のメインおよび/またはテールロータを駆動するためのハイブリッド駆動部を有する回転翼航空機に関する。
【背景技術】
【0003】
いわゆるマルチエンジン、特にツインエンジンヘリコプター、すなわち、複数のエンジンまたは駆動部を備えた駆動システムを有するヘリコプターが、従来技術から知られている。一般に、通常は化石燃料である燃料が、熱力学的エンジンとして設計された1つまたは複数の駆動部を使用して機械的仕事に変換され、メインロータがメインロータ変速機またはヘリコプターロータ変速機により駆動される、またはテールロータがテールロータ変速機により駆動される。
【0004】
このようなマルチエンジンヘリコプターに駆動不具合という形態で緊急事態が発生した場合、ヘリコプターを安全な飛行体制にするとともにエンジン不具合に対応すべく、ヘリコプターは、他の残っているエンジンの出力に所定時間に亘って依存することができる。
【0005】
緊急事態でない場合でも、マルチエンジンヘリコプターは、例えば、別のエンジンの出力によって飛行中の負荷用量を向上させ得るという利点を有している。
【0006】
このようなツインエンジンヘリコプターの特殊な形態も、従来技術からハイブリッド駆動部を有するヘリコプターとして知られている。このヘリコプターにおいては、熱力学的エンジンとして設計された駆動部に加えて、追加の機械的仕事が、電気駆動部および関連する電気エネルギー源によって実施される。ハイブリッド駆動部を有するこのようなヘリコプターは、化石燃料の供給のツインエンジンヘリコプターを上回る追加の安全面の利点を提供する。なぜならば、例えば、化石燃料の供給に不具合が生じた場合、追加の電気エネルギーの供給を利用できるからである。
【0007】
更に、熱力学的エンジンとして設計された駆動部と電気駆動部とを有するハイブリッド駆動部が、文献US2017/0225573A1から知られている。ハイブリッド駆動部は、熱力学的エンジンにより形成されたメイン駆動部と、電気駆動部により形成された補助駆動部と、を備えている。メイン駆動部は、熱力学的エンジンとして設計された駆動部と、メインロータ変速機またはヘリコプターロータ変速機と、駆動トレインまたはメインモータシャフトと、メインロータシャフトまたはメインロータマストと、を備えている。ここで、メイン駆動部は、メインモータシャフトに機械的に接続されているため、メインモータシャフトは回転状態に設定可能である。更に、メインモータシャフトは、メインロータに固定接続されたメインロータシャフトに、メインロータ変速機を介して接続されている。これにより、メインロータは回転状態に設定可能である。
【0008】
補助駆動部は、追加の電気エネルギー源と、電気駆動部と、駆動トレインまたは関連するモータシャフトと、を備えている。電気エネルギー源は、電気駆動部に必要なエネルギーを提供する。
【0009】
文献US2017/0225573A1で提案されている実施形態によれば、電気駆動部は、関連するモータシャフトを介して、メインロータシャフトまたはメインロータマストと機械的に作動接続され得る。電気駆動部およびモータシャフトは、ロータマストに対して並列に配置されている。
【0010】
US2017/0225573A1から知られる、ハイブリッド駆動部を有する回転翼航空機は、大きなスペースが必要であるとともに、構造が複雑で、高度のメンテナンスが必要であるという欠点を有している。
【0011】
例えばUS2017/0225573A1に示されるように、この種のハイブリッド駆動部は、エンジンが2つ存在するため、より高いレベルの安全性は実現されるものの、回転翼航空機の重量が単一エンジンの変形例に比較して不利に増大するという根本的な問題を有している。
【発明の概要】
【0012】
本発明の課題は、従来技術の欠点が克服され、特に、必要なスペースが小さく、構造が単純化され、必要なメンテナンスが少ない、ハイブリッド駆動部を有する回転翼航空機を提供することである
【0013】
本発明の更なる課題は、従来技術の欠点が、コンパクトで軽量の設計により克服される、電気駆動部を備えたハイブリッド駆動部を有する回転翼航空機を提供することである。
【0014】
この課題は、請求項1の特徴を持つ電気駆動部を有する回転翼航空機、または請求項7の特徴を持つハイブリッド駆動部を有する回転翼航空機により解決される。
【0015】
本発明によれば、電気駆動部は、電気リングモータとして設計され、電気リングモータは、ロータマストと同軸に配置されるとともに取り付けられる。
【0016】
本発明の概念において、電気リングモータとは、中空シャフトを有するいわゆるトルクモータを意味すると理解される。したがって、電気リングモータタイプのモータの場合、中央に配置されるモータシャフトは不要である。電気リングモータは、ステータとして機能するリングと、ロータとして機能するリングと、を本質的に備える。電気リングモータは、外側ロータの場合には「外側ロータ」と称され、内側ロータの場合には「内側ロータ」と称される。
【0017】
本発明の電気リングモータの場合、力効果が、ロータとステータとの間のエアギャップまたは磁気ギャップにおいて生じる。
【0018】
このような電気リングモータは、モータシャフトを有する従来の電気モータに比べて、低速での大きな駆動トルクにより高加速が可能になるという利点を有する。歯付きベルト等の機械的要素が不要であるため、電気リングモータを使用することでコンパクトな設計が更に達成され得る。換言すれば、電気リングモータを、非常にコンパクトな態様で回転翼航空機の既存の推進システムに組み込むことができる。また、機械要素がないので、このような電気リングモータは、スムーズに動作し、静かでメンテナンスが少なくてよい。電気リングモータをモータマストに簡単に取り付けることができ、特にハイブリッド駆動部と組み合わせた場合にコンパクトな設計となる。これに対し、US2017/0225573A1に示されるハイブリッド駆動部は、開示された電気駆動部の機械的動力の結合のために追加の変速機が必要であり、追加のシャフトや偏向歯車ユニットを理由としてより複雑であるという欠点を有している。
【0019】
本発明の概念において、ロータマストとは、テールロータの場合にはテールロータハブを、またはメインロータの場合にはメインロータマストを意味すると理解される。
【0020】
他の有利な実施形態が、従属請求項で特定される。
【0021】
好適な実施形態によれば、電気駆動部は、ロータとして機能する電気リングモータであって、特にリング状の内側ロータを有する電気リングモータとして設計可能である。内側ロータは、ロータマストに固定接続可能である。
【0022】
このような好適な実施形態は、電気リングモータとして設計された電気駆動部からロータマストに動力が直接伝達されることにより、「ギアボックス」またはメインロータ変速機が不要であるという利点を有する。
【0023】
好適な代替実施形態によれば、電気駆動部を、ロータとして機能する、特にリング状の外側ロータを有する電気リングモータとして設計することが原理的に想定可能である。外側ロータは、ロータマストに固定接続可能である。このような外側ロータの変形例の利点は、より多くのトルクを提供可能である更にコンパクトな設計である。内側ロータと同様に、高い動作安全性及びスムーズな動作が提供される。
【0024】
他の好適な実施形態によれば、電気駆動部は、ロータマストへの動力伝達のための一体型変速機を有する電気リングモータとして設計される。一体型変速機によるこのような動力伝達は、ロータ速度より通常高い最も効率的なエンジン速度を維持できるという利点を有する。更に、一体型変速機による動力伝達の利点は、達成される減速比で非常に高いトルクが生成できるとともに、更にコンパクトな設計が得られることである。
【0025】
原理的に、一体型変速機の任意の適切な形式が想定可能である。しかしながら、遊星歯車として設計された一体型変速機を有する電気リングモータとしての電気駆動部が、特に好適である。
【0026】
特に、ステータとして機能する電気駆動部の外側リングが変速機ハウジングに固定接続可能であるという点で、電気駆動部は、好適には、少なくともヘリコプター変速機の変速機ハウジングに機械的に接続可能である。
【0027】
特に好適には、電気駆動部は、特にヘリコプターである回転翼航空機のメインロータおよび/またはテールロータが追加の駆動部を設けることなく独立して駆動可能であるように、電気駆動部は設計されるとともに寸法決めされる。本発明の概念において、独立した電気駆動部とは、好適には少なくとも150kW、より好適には200kW乃至700kW、更に好適には300kW乃至600kW、特に好適にはおよそ600kWの機械的出力が達成可能であることを意味する。一例として、371rpmの低速度でおよそ600kWの機械的出力を有する電気駆動部で、略15,500Nmの高いトルクを達成することができる。
【0028】
本発明の好適で可能な進展によれば、電気リングモータとして設計された複数の駆動部が、ロータマストに互いに同軸に配置可能であるとともに取り付け可能である。換言すれば、電気リングモータとして設計された複数の駆動部は、互いに積層可能である。単一の電気リングモータではなく複数の積層された電気リングモータを使用することで、電気駆動部のモジュール構造を達成できるとともに、製造技術の点でわずかな努力で異なる電力ステージを生成できるという特別の利点が得られる。モジュール構造の結果、必要とされる高い電力が低電力で複数のステージに分散可能であるため、物理的に、且つ生産技術の点から、より大きい面積を理由として、エンジンおよび制御システムから電力損失熱が放散されるという利点が得られる。また、複数のステージに分散させた電気駆動部は、熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部が全体的な不具合に対するより良好な保護をもたらす。
【0029】
したがって、例えば熱力学的エンジンとして設計されたマルチエンジンヘリコプターの第2駆動部の不具合という形態で非常事態が発生した場合、ヘリコプターを安全な飛行体制にするとともにエンジン不具合に対応すべく、残りの電気駆動部からの非常用電力出力に所定時間に亘って依存できることが有利に保証される。
【0030】
原理的に、本発明による回転翼航空機は、電気リングモータとして設計されるとともにロータマストと同軸に配置された独立した電気駆動部のみを備え得る。しかしながら、本発明の別の態様は、本発明による電気駆動部と、例えば、内燃機関、タービンエンジン、火花点火エンジン、ディーゼルエンジン、燃料電池駆動部等の熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部と、を備えるハイブリッド駆動部を有する回転翼航空機に関する。
【0031】
このようなハイブリッド駆動部の場合、好適には、電気駆動部は、熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部に連結可能であり、これにより、電気駆動部は第2駆動部とともに連結状態で回転可能であり、このため、メインロータおよび/またはテールロータの駆動時にまたはその逆に、電気駆動部は第2駆動部を支援可能である。本発明の概念において、このようなハイブリッド駆動部は、並列に設計されたハイブリッド駆動部として理解され得る。
【0032】
原理的に、本発明による回転翼航空機のロータマスターは、一部品として設計可能である。本発明による回転翼航空機のロータマストは、好適には、2つの部分において設計され、軸受マストと外側マストとを備え、外側マストは、軸受マストに対して中心軸を中心として回転可能に装着されるとともに、軸受マストを同心状に包囲する中空体として設計され、外側マストは、ヘリコプター変速機に作動接続可能であり、軸受マストは、回転翼航空機において固定位置に回転固定された態様で装着可能であり、これにより、外側マストは、回転固定された態様でメインロータに連結可能であるとともに、ヘリコプターロータ変速機と回転状態に設定可能である。可能な外側ロータの変形例に関して、例えばステータとして機能する内側リングが、回転固定された態様で軸受マストに取り付け可能である一方、ロータとして機能するリング状の外側ロータが外側マストに取り付けられる。本発明の更に好適で可能な進展によれば、このような外側ロータの変形例を用いても、電気リングモータとして設計された複数の駆動部は、ロータマストに互いに同軸に配置可能であるとともに取り付け可能であり(すなわち互いに積層され)、単一の電気リングモータではなく積層された電気リングモータの有する上述の利点、すなわち、モジュール構造、異なる電力ステージを簡単に達成できること、低電力で複数ステージに亘って必要な高電力を分散させること、という利点が得られる。また別の好適な進展によれば、互いに積層された電気リングモータを有するような外側ロータの変形例の場合、リングモータは、遊星歯車として設計された一体型変速機を有するように設計可能である。
【0033】
本発明による回転翼航空機のヘリコプターロータ変速機において、好適には、ロータマストは、駆動歯車として設計された駆動ユニットに、回転固定された態様で連結可能であり、駆動歯車は、少なくとも1つの径方向軸受により軸受マストに回転可能に装着可能であり、駆動歯車に対面する各第2遊星歯車キャリアの側の少なくとも1つの駆動遊星歯車の各遊星歯車軸を中心とした回転が、回転固定された態様で駆動歯車に接続された太陽歯車により達成可能であり、少なくとも1つの駆動遊星歯車に属する少なくとも1つの固定装着された第2遊星歯車が、中心軸を中心として回転可能な内歯付き歯車リングにより包囲され、駆動歯車の回転運動から始まって、外側マストおよび外側マストに回転固定された態様で連結されたメインロータが回転状態に設定可能であるように、動力伝達装置が、歯車リングと外側マストとの間に取り付け可能である、または一体成型される。
【0034】
しかしながら、原理的には、非定常遊星歯車を有する遊星歯車を、本発明による回転翼航空機のヘリコプターロータ変速機に使用することも想定可能である。ここで、遊星歯車は、関連する遊星キャリアに装着された複数の外歯付き遊星歯車を備えている。設計上の理由から、遊星歯車は、局所的に固定された歯車リングに回転可能に装着される。非定常遊星歯車は、それらの遊星軸を中心としてそれぞれ回転するとともに、中心ロータ軸を中心として歯車リング内で回転する。遊星歯車の回転は、同様に局所的に固定されているが、中心ロータ軸を中心として回転可能に装着された中央太陽歯車の回転駆動により生じる。駆動部は、中央太陽歯車を回転させるため、回転運動は、太陽歯車および遊星歯車を介してロータマストに伝達される。
【0035】
ヘリコプターのロータ変速機のこのような実施形態に関して、メイン駆動トレインの全体的な不具合を、安全な着陸を確実にするために、所定時間に亘って完全に有利に補償することができる。
【0036】
また、直接且つ迅速に利用できる追加の電力を使用して、熱力学的エンジンとして設計された駆動部と交代する、またはこれを支援することができる。したがって、熱力学的エンジンとして設計された駆動部の耐用年数が延びるという利点が考えられ、これにより、例えばメンテナンス費用が節約できるとともに、駆動部の効率性が向上する。これに伴い、化石燃料の消費が削減されるとともに、可能な限りシンプルでコンパクトに駆動システムを設計することができる。
【0037】
本発明の主題である実施形態の好適な例を、添付図面を参照しつつ以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】ハイブリッド駆動部を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の斜視図。
【
図2】ハイブリッド駆動部を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の縦断面図。
【
図2a】ハイブリッド駆動部を有する本発明による回転翼航空機の他の好適な実施形態の縦断面図であって、複数の電気リングモータが互いに積層されている図。
【
図3】ハイブリッド駆動部を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の縦断面図であって、電気駆動部が遊星歯車として設計された一体型変速機を有する電気リングモータとして設計されている図。
【
図3a】ハイブリッド駆動部と互いに積層された複数の電気リングモータとを有する本発明による回転翼航空機の他の好適な実施形態の縦断面図であって、電気リングモータが遊星歯車として設計された一体型変速機を有するように設計されている図。
【
図4】並列に設計されたハイブリッド駆動部を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の駆動力制御の機能ブロック図。
【
図5】直列に設計されたハイブリッド駆動部を有する本発明による回転翼航空機の他の好適な実施形態の駆動力制御の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、ハイブリッド駆動部1を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の斜視図を示す。
図2に詳細に示すように、図示の電気駆動部Eは、少なくともヘリコプターロータ変速機またはメインロータ変速機2の変速機ハウジング30に、機械的に接続されている。これにより、ステータとして機能する電気駆動部Eの外側リング10は、ここでは外側リング10の4つの第1留めアーム12を介して、ここでは変速機ハウジング30の対応する4つの第2留めアーム31に接続されている。
【0040】
図2は、ハイブリッド駆動部1を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の縦断面図を示す。
【0041】
図示のハイブリッド駆動部1は、電気駆動部Eと、図示しない第2駆動部TKと、を備えている。第2駆動部TKは、例えば、内燃機関、タービンエンジン、火花点火エンジン、ディーゼルエンジン、燃料電池駆動部等の熱力学的エンジンとして設計されている。
【0042】
図2に示すように、2つの部分において設計されたメインロータマスト4は、軸受マスト5と、キャビティH3を有する中空体として設計された外側マスト6と、を備えている。外側マスト6は、軸受マスト5を、中心軸zを中心として同心円状に取り囲んでいる。
【0043】
電気駆動部Eは、電気リングモータとして設計されている。電気リングモータは、ロータマスト4と同軸に、特にロータマストまたはメインロータマスト4に沿って延びる中心軸zと同軸に配置されるとともに取り付けられている。更に、図示の電気リングモータは、ロータとして機能するリング状の内側ロータ11(すなわち、内側リングを形成する)を有するように設計されている。内側ロータ11は、メインロータマスト4の外側マスト6に固定接続されている。
【0044】
図2の好適な実施形態によれば、電気駆動部Eの内側ロータ11が、メインロータマスト4の外側マスト6に固定接続されるという点で、電気駆動部Eは、熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKに連結可能である。また、後述のように、第2駆動部に作動接続されたメインロータ変速機2は、外側マスト6に歯車リング伝達機構21を介して、同様に回転固定された態様で接続されている。図示の好適な実施形態において、有利には、電気駆動部Eの固定部(ステータ)と、熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKとの間には、直接的な機械的接触領域または連結部が存在しない。リングモータの同軸的な配置により、本例での作動接続は、完全に電磁的である。換言すれば、リングモータとして設計された電気駆動部Eの場合、慣性動作や非作動状態のために更なる労力を費やす必要がないため、電気駆動部Eの遮断は事実上除外される。
【0045】
更に高いレベルの安全性を達成するように、リングモータとして設計された電気駆動部Eの回転部(ロータ)と、ヘリコプターロータ変速機または熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKとの間の領域に、分離機構を任意に設けてもよい。
【0046】
したがって、このような連結状態にある第2駆動部を有する電気駆動部Eは、更なるトルクを吸収することができるため、電気駆動部Eは、メインロータの駆動時に第2駆動部を支援することができ、この逆もまた同様である。
【0047】
メインロータ変速機2は、変速機ハウジング30により包囲されているため、種々の構成部品が外部の影響から保護され続けている。特に、ステータとして機能する電気駆動部Eの外側リング10が、変速機ハウジング30に堅固に接続されている、または固定されているという点で、図示の電気駆動部Eは、少なくともヘリコプターロータ変速機またはメインロータ変速機2の変速機ハウジング30に機械的に接続されている。具体的には、外側リング10の第1留めアーム12が、変速機ハウジング30の対応する第2留めアーム31に固定接続される。
【0048】
図2に示すように、外側リング10と内側ロータ11との間に、磁気ギャップMが形成されている。好適には、メインロータマスト4は、必要とされるトルクが磁場により生成されるように、またはロータからの曲げモーメントが、外側リング10と内側ロータ11との間の磁気ギャップMにできるだけ影響を及ぼさないように、または影響を及ぼさないように作製される。カバー15が、電気駆動部Eを外部環境の影響から保護している。
【0049】
図2に示すメインロータ変速機またはヘリコプターロータ変速機2は、中央キャビティH1を有している。この中央キャビティH1には、不動且つ回転不可能な軸受マスト5が装着されている。軸受マスト5は、キャビティH2を有して中心軸zを包囲する中空体として設計されている。中心軸zは、軸受マスト5の長手方向を形成すると同時に、メインロータシャフトまたはメインロータマスト4の回転軸を形成している。
【0050】
ここで、軸受マスト5は、変速機ハウジング30を完全に横切るように設計されている。例えば、制御ロッド(図示せず)またはケーブル等の電線が、軸受マスト5の中央キャビティH2を、本質的に中心軸zに沿って通過可能である。このように軸受マスト5を内部に配置転換した結果、メインロータマスト4の外部に配置されることと比較して、制御ロッドやケーブルを、バードストライク等の外部の影響によって損傷され得ないようにすることができる。更に、制御ロッドを軸受マスト5のキャビティH2内に配置転換した結果、メインロータマスト4の外側に、電気リングモータとして設計される電気駆動部Eを、メインロータマスト4と同軸に取り付けるために十分なスペースを作り出すことができる。換言すれば、制御ロッドが内部にあること、および関連し得るロータマスト4の外側の斜板(swash plate)がないことにより、電気リングモータをロータマスト4に簡単に取り付けることができる。
【0051】
好適には、制御ロッドを偏向および整列させるための偏向装置が、変速機ハウジング30の駆動トレイン側に配置される。
【0052】
開口20を介して変速機ハウジング30に受容されたメイン駆動トレインまたは駆動トレイン32は、熱力学的エンジンとして設計された図示しない第2駆動部TKに機械的に作動接続されている。
図2によれば、駆動歯車34は、ここでは軸受マスト5に回転可能に装着されている。駆動歯車34は、ここでは駆動トレイン32の駆動トレイン歯車33と相互作用可能なかさ歯車の歯を有している。中空シャフトとして設計された第2太陽歯車35は、駆動歯車34に接続され、外歯システム37を有する管状セクション36を有している。第2太陽歯車35により、駆動歯車34は、中心軸zを中心として回転可能であるように、局所的に回転固定された態様で軸受マスト5に押し付けられるように装着されている。ここで、
図2に示す第2太陽歯車35は、軸受マスト5上で回転可能であるように太陽歯車軸受38に装着されている。第2太陽歯車35は駆動トレイン32により駆動可能であるため、第2太陽歯車35は駆動中空シャフトとなっている。複数の駆動遊星歯車41が、第2太陽歯車35の外歯システム37の高さにおいて、関連する第2遊星歯車キャリア39に配置されている。遊星歯車キャリア39は、遊星シャフトとして理解され得る。駆動遊星歯車41は、それぞれ外歯システムを有し、第2太陽歯車35の外歯システム37と係合する。駆動遊星歯車41およびそれらの第2遊星歯車キャリア39が変速機ハウジング30内において固定回転状態に設定可能であるように、第2遊星歯車キャリア39は、固定されるとともに、変速機ハウジング30または中心軸zから、または回転可能な第2太陽歯車35から距離を置くように設計されている。第2遊星歯車キャリア39は、二重遊星キャリアとして設計されている。なぜならば、第2遊星歯車40が、各駆動遊星歯車41に対して遊星歯車軸Pの方向に離間して配置された各第2遊星歯車キャリア39に配置されているからである。駆動遊星歯車41は、関連する第2遊星歯車40に対してそれぞれ並列に配置されている。複数の第2遊星歯車キャリア39は、中心軸zの周りに、軸受マスト5の外周の周りに分散配置されるとともに、変速機ハウジング30内に固定した態様で配置されている。
【0053】
図示のメインロータ変速機2は、二段遊星歯車として理解され得る。軸受マスト5は、ここでは変速機ハウジング30を完全に横断し、駆動トレイン32の反対側において変速機ハウジング30から突出している。
【0054】
歯車リング22は、中心軸zの方向において第2遊星歯車40のレベルで中心軸zを中心として回転可能に配置されている。歯車リング22は、全ての遊星歯車40を取り囲み、第2遊星歯車40の回転によって駆動可能であり、中心軸zを中心として回転可能である。歯車リング22には、力伝達装置として機能する歯車リング伝達機構21が配置されている。歯車リング伝達機構21により、歯車リング22の回転が回転可能な外側マスト6に伝達可能である。
【0055】
図2aは、ハイブリッド駆動部を有する本発明による回転翼航空機の他の好適な実施形態の縦断面を示す。
図2に示す実施形態と対照的に、複数の、すなわち、この場合には、3つの電気リングモータE;E’、E”が互いに積層されるとともに、それぞれが、外側リング10;10’;10”と、内側ロータ11;11’;11”と、を備えている。
【0056】
図3は、ハイブリッド駆動部1を有する本発明による回転翼航空機の他の好適な実施形態の縦断面を示す。電気駆動部Eは、遊星歯車PEとして設計された一体型変速機を有する電気リングモータとして設計されている。
図3に示すように、メインロータ変速機2が、
図2に示す好適な実施形態のメインロータ変速機2に対応する。
【0057】
図示の好適な実施形態において、内歯付きリング歯車51が、ロータとして機能する(すなわち内側リングを形成する)リング状の内側ロータ11に回転固定された態様で配置されている。これにより、内歯付きリング歯車51は、内側ロータ11の回転に関与する。
【0058】
図示の遊星歯車PEは、関連する第1遊星キャリア53に装着された複数の外歯付き第1遊星歯車52を備えている。第1遊星歯車52の外歯システムは、ここでは、リング歯車51の内歯と係合する。したがって、第1遊星歯車52は、設計上の理由から、リング歯車51に回転可能に装着されている。固定されていない遊星歯車52は、それらの遊星軸Pを中心としてそれぞれ回転するとともに、中心ロータ軸または中心軸zを中心として歯車リング22内で回転する。第1遊星歯車52の回転は、ここでは、回転固定された態様で配置された第1太陽歯車50、すなわち回転不能の第1太陽歯車50を中心とした、内側ロータ11に配置された内歯付きリング歯車51の回転駆動により生じる。
図3に示すように、この更なる好適な実施形態における第1太陽歯車50の回転固定された態様の配置は、外側リング10と第1太陽歯車50との堅固な接続を形成する固定されたハウジングベース55によりもたらされる。
【0059】
外側マスト6は、第1遊星キャリア53と外側マスト6との間の回転固定された態様の接続要素54を介して回転状態に設定される。
【0060】
図3aは、ハイブリッド駆動部1と、複数の、すなわち、この場合2つの互いに積層された電気リングモータE;E’を有する本発明による回転翼航空機の他の好適な実施形態の縦断面を示す。電気リングモータE;E’は、遊星歯車PE;PE’として設計された一体型変速機を有するようにそれぞれ設計されている。
図3aに示すように、互いに積層された2つの電気リングモータE;E’は、それぞれ、第1太陽歯車50;50’と、第1の内歯付きリング歯車51;51’と、第1遊星歯車52;52’と、第1遊星歯車キャリア53;53’と、接続要素54;54’と、を備えている。この他の好適な実施形態は、互いに積層された2つの電気リングモータE;E’の間に、中間ベース56を備えている。中間ベース56は、外側リング10;10’と第1太陽歯車50’との堅固な接続を形成する。これに対し、固定されたハウジングベース55は、外側リング10と第1太陽歯車50との堅固な接続を形成する。
【0061】
この他の好適な実施形態は、特に高い生成トルクを有する一体型変速機により達成される減速比と、互いに積層された電気リングモータにより達成される異なる達成可能な電力レベルを有する電気駆動部のモジュール構造との利点を組み合わせたものである。
【0062】
図4は、並列に配置されたハイブリッド駆動部1を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の駆動力制御の機能ブロック図を示す。電気駆動システムの主要構成部品は、左側のフレームに示され、熱力学的機械として設計された駆動部TKの主要構成部品は、右側のフレームに示されている。
【0063】
図2で既に示されたように、熱力学的エンジンとして設計された駆動部TKおよび電気駆動部Eは、ハイブリッド駆動部1を有する本発明による回転翼航空機において、メインロータマスト4に機械的に作動接続されている。
【0064】
図4に示すように、回転翼航空機は、ここでは、制御ユニットSTと、パワー電子ユニットLEE(「インバータ」とも称する)と、を備えている。パワー電子ユニットLEEは、電気信号伝達cに基づいて制御ユニットSTと相互作用する。さらに、電気エネルギー伝達bに基づいて、電気エネルギーが蓄電ユニットBSの形態の電気エネルギー源から取り出されて、電流の形態で電気駆動部Eに伝達されるように、パワー電子ユニットLEEは設計されている。
【0065】
制御ユニットSTは、電気信号伝達cに基づいて、航空電子ユニットAEを介して、熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKから、電気駆動部Eから、パイロット制御部から、およびエネルギー源から、センサ入力データを取得可能であり、且つ出力データをパワー電子ユニットLEEに伝達可能であるように設計されている。
【0066】
図4の右側のフレームに示すように、熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKは、ここでは、化石燃料を搬送する燃料ラインdを介して、駆動制御ユニットARにより作動する。熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKは、メインロータ変速機2およびメインロータマスト4を介して、メインロータと機械的作動接続aの状態にある。好適には、駆動制御ユニットARは、いわゆるFADECとして自律的且つ完全にデジタル的に設計され、これにより、第2駆動部TKは、全ての作動状態において独立して制御される。
【0067】
電子信号伝達cにより、FADECとして設計された駆動制御ユニットARは、航空電子ユニットAEに接続可能である。航空電子ユニットAEは、第2駆動部TKから生じる出力電力を検出し、これを制御ユニットSTに電子信号伝達cにより伝達可能である。
【0068】
本発明による回転翼航空機は、追加の電源システムSVを備え得る。電源システムSVは、航空電子ユニットAEおよび蓄電ユニットBS用の追加の電源を確保する。
【0069】
特に、制御ユニットSTは、ロジックを有するように設計可能であり、これにより、パワー電子ユニットLEEから始まり、電気駆動部Eの出力電力を、飛行条件、飛行プロファイル、バッテリレベル、および第2駆動部から生じる出力電力に応じて設定可能である。換言すれば、第2駆動部TKの不具合が発生した場合、制御ユニットSTは、電気駆動部Eの出力電力を必要に応じて自動的に増加させ得るであろう。
【0070】
また、電気駆動部Eと熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKとが回転固定された態様で連結された状態において、作動していない電気駆動部Eの第2駆動部TKの作動中に、本発明による回転翼航空機のハイブリッド駆動部1の電気駆動部Eは、蓄電ユニットBSの追加のエネルギー回収のための発電機として機能可能である。好適には、例えばブロッキングダイオードの形態の整流器が、パワー電子ユニットLEEに、または電子駆動部Eに設けられる。これにより、電気駆動部Eの非作動時に、蓄電ユニットBSが充電可能である。
図4に示す実施形態において、電気駆動部は発電機として既に機能可能であるが、本発明による回転翼航空機は、蓄電ユニットBSを充電するための追加の発電モジュールSEMを選択的に備え得る。
【0071】
特に好適には、制御ユニットSTのロジックにより、ロータを駆動するためのトルク生成と、蓄電ユニットBSのための追加のエネルギー回収とを自動的にモード変更することが可能である。
【0072】
図5は、直列に設計されたハイブリッド駆動部1を有する本発明による回転翼航空機の好適な実施形態の駆動力制御の機能ブロック図を示す。
図4に示す並列に設計されたハイブリッド駆動部1との本質的な違いとして、
図5に示すように、熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部TKとメインロータマスト4またはメインロータとの間に、機械的作動接続は存在しない。
【0073】
この他の好適な実施形態によれば、本発明による回転翼航空機は、蓄電ユニットBSを追加の電気エネルギー伝達bを介して充電するために駆動部2に機械的に連結された追加の発電モジュールSEMを備え得る。この目的は、任務の全てまたは飛行中の全ての間、電気リングモータとして設計された電気駆動部Eの連続的な作動を可能とすることである。このような好適には独立した電気駆動部Eに関して、発電モジュールSEMは、これに対応して電気駆動部Eの独立した作動を保証するように十分な電力を供給可能でなければならない。少なくとも1つの発電モジュールSEMは、ここでは、電気駆動部Eの連続作動のための全てのエネルギーを完全に供給する追加の発電機として機能する。
【0074】
更に、図示の他の好適な実施形態によれば、第2駆動部TKに、制御ユニットSTとFADECとして設計された駆動制御ユニットARとの間の追加の電気信号伝達cを介して、必要に応じてスイッチを入れることができる、または、第2駆動部TKを必要に応じて作動させることができる。
【0075】
図示される他の好適な実施形態において、熱力学的エンジンとして設計された駆動部TKは、飛行範囲を延長するための手段としてのみ理解され得る。
【符号の説明】
【0076】
1 ハイブリッド駆動部
2 メインロータ変速機
4 ロータマストまたはメインロータマスト
5 軸受マスト
6 外側マスト
7 (軸受マストと外側マストとの間の)軸受
10 外側リング
11 内側リング
12 (ステータとして機能する外側リングの)第1留めアーム
15 電気駆動部のカバー
20 (駆動トレインを受容するための変速機ハウジングにおける)開口
21 (動力伝達手段としての)歯車リング伝達機構
22 歯車リング
30 (メイン変速機の)変速機ハウジング
31 (変速機ハウジングの)第2留めアーム
32 駆動トレイン
33 駆動トレイン歯車
34 駆動歯車
35 第2太陽歯車
36 管状セクション
37 (管状セクションの)外歯システム
38 太陽歯車軸受
39 第2遊星歯車キャリア
40 第2遊星歯車
41 駆動遊星歯車
42 遊星歯車キャリア軸受
50;50’ (リングモータにおける一体型遊星歯車の)第1太陽歯車
51;51’ リングギア
52;52’ (リングモータにおける一体型遊星歯車の)第1遊星歯車
53;53’ (リングモータにおける一体型遊星歯車の)第1遊星歯車キャリア
54;54’ (遊星キャリアと外側マストとの)接続要素
55 ハウジングベース(外側リングと第1太陽歯車50との接続部)
56 中間ベース(外側リングと第1太陽歯車50’との接続部)
BS 蓄電ユニット
E;E’;E“ 電気駆動部
H1 (メイン変速機の変速機ハウジングの)第1キャビティ
H2 (軸受マストの)第2キャビティ
H3 (外側マストの)第3キャビティ
M (内側ロータと外側リングとの間の)磁気ギャップ
P 遊星歯車軸
PE;PE’ (電気駆動部)の遊星歯車
SEM 発電モジュール
ST 制御ユニット
TK 熱力学的エンジンとして設計された第2駆動部
z 中心軸