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特許7366966正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231016BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231016BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231016BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231016BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021120295
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2022063840
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0131135
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒュン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017073(WO,A1)
【文献】特開2011-159421(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107221645(CN,A)
【文献】特表2018-533157(JP,A)
【文献】特開2020-068208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0311522(US,A1)
【文献】特開2022-039962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/58
H01M 4/36
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表され、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な第1化合物と、
下記の化学式2で表される第2化合物と、を
含み、
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M22+α
(ここで、
M1は、MnまたはAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、Mn、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Mg、V、Zn、Si、Y、Sn、Ge、Nb、WおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦α≦0.02である)
[化学式2]
LiCoM3(Pβγ
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0≦b≦8、0≦c≦8、0<d≦13、0β≦4、0<γ≦10である)
前記第2化合物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物の割合が、13mol%以下であり、
前記第2化合物は、下記の化学式3で表される第1酸化物および下記の化学式4で表される第2酸化物を含む、正極活物質。
[化学式3]
Lia′Cob′M3′c′(Pβ′γ′d′
(ここで、
M3′は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0<a′≦10、0≦b′≦8、0≦c′≦8、0<d′≦13、0β′≦4、0<γ′≦10である)
[化学式4]
Cob″M3″c″(Pβ″γ″d″
(ここで、
M3″は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦b″≦8、0≦c″≦8、0<d″≦13、0β″≦4、0<γ″≦10である)
【請求項2】
前記第2化合物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物は、cubicまたはrhombohedral結晶構造を有する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記第2化合物は、前記第1化合物の表面のうち少なくとも一部に存在するコーティング層に含有された、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記第2化合物は、1A族元素、3A族元素および5A族元素から選ばれる少なくとも1つの第1元素と、8族元素から選ばれる少なくとも1つの第2元素と、を含む酸化物である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記第1酸化物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物(r1)と、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3m以外の空間群に属する結晶構造を有する化合物(r2)との比(r1/r2)が、0.03以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記第2酸化物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物(s1)と、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3m以外の空間群に属する結晶構造を有する化合物(s2)との比(s1/s2)が、0.24以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記化学式1中、x+y+zが0.20以下である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記第1化合物の結晶格子内タングステンが存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記第1化合物の表面のうち少なくとも一部に下記の化学式5で表される第3化合物をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式5]
LiM4
(ここで、
M4は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦e≦10、0<f≦8、0≦g≦8、2≦h≦13である)
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項11】
請求項10に記載の正極を使用するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的特性および安定性が向上した正極活物質および前記正極活物質が含まれた正極を使用するリチウム二次電池に関し、より具体的に、本発明は、正極活物質の表面に存在する残留リチウムの量を減らすために、水洗工程を経ることなく、表面に残留するLi不純物を含量を制御して、前記Li不純物に起因した正極活物質の電気化学的特性および安定性の低下をあらかじめ防止できる正極活物質および前記正極活物質が含まれた正極を使用するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって、電力を貯蔵するものである。このような電池のうち代表的な例としては、正極および負極でリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされるときの化学電位(chemical potential)の差異によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnO等の複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界によって高価なので、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMn等のリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さくて、高温特性が悪いという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属との間のカチオンミキシング(cation mixing)問題に起因して合成が難しく、これにより、レート(rate)特性に大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオンミキシングの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生することとなり、これらのLi副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極の製造後に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルのスウェリング現象を増加させて、サイクルを減少させると共に、バッテリーが膨らむ原因となる。
【0008】
一方、正極活物質の表面に存在するLi不純物の含量は、前記正極活物質中、Niの含量に対して比例的に増加する傾向にある。
【0009】
これによって、最近、正極活物質の容量特性を向上させるために導入されたhigh-Niタイプの正極活物質の場合、表面内Li不純物が過多に存在して、これを除去するための水洗工程が必須であるといえる。
【0010】
しかしながら、このような水洗工程を通じて前記正極活物質の表面に存在する残留リチウムを減少させることができるが、かえって前記正極活物質の表面に損傷を加えることができるという短所がある。前記水洗工程を通じて前記正極活物質の表面に損傷が加えられた場合、前記正極活物質の電気化学的特性および安定性が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国特許公開第10-2016-0112622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来、リチウム二次電池用正極活物質の多様な問題点を解決するために、電気化学的特性および安定性が向上した正極活物質を提供することを目的とする。特に、本発明は、正極活物質の表面に存在する残留リチウムの量を減らすために、水洗工程を経ることなく、表面に残留するLi不純物を含量を制御して、前記Li不純物に起因した正極活物質の電気化学的特性および安定性の低下をあらかじめ防止できる正極活物質を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、本願で定義された正極活物質を含む正極を提供することにある。
【0014】
また、本発明のさらに他の目的は、本願で定義された正極を使用するリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な第1化合物と、前記第1化合物の表面のうち少なくとも一部に存在し、第2化合物を含むコーティング層と、を含む正極活物質が提供される。
【0016】
この際、前記第2化合物は、1A族元素、3A族元素および5A族元素から選ばれる少なくとも1つの第1元素と、8族元素から選ばれる少なくとも1つの第2元素と、を含む酸化物でありうる。
【0017】
ここで、前記第1化合物は、下記の化学式1で表され得、
【0018】
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M22+α
(ここで、
M1は、MnまたはAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、Mn、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Mg、V、Zn、Si、Y、Sn、Ge、Nb、WおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦α≦0.02である)
【0019】
前記第2化合物は、下記の化学式2で表され得る。
【0020】
[化学式2]
LiCoM3(Pβγ
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0≦b≦8、0≦c≦8、0<d≦13、0<β≦4、0<γ≦10である)
【0021】
この際、前記第2化合物は、下記の化学式3で表される第1酸化物および下記の化学式4で表される第2酸化物を含むことができる。
【0022】
[化学式3]
Lia′Cob′M3′c′(Pβ′γ′d′
(ここで、
M3′は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0<a′≦10、0≦b′≦8、0≦c′≦8、0<d′≦13、0≦β′≦4、0<γ′≦10である)
【0023】
[化学式4]
Cob″M3″c″(Pβ″γ″d″
(ここで、
M3″は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦b″≦8、0≦c″≦8、0<d″≦13、0≦β″≦4、0<γ″≦10である)
【0024】
他の実施例において、前記第1化合物の表面のうち少なくとも一部に下記の化学式5で表される第3化合物をさらに含むことができる。
【0025】
[化学式5]
LiM4
(ここで、
M4は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦e≦10、0<f≦8、0≦g≦8、2≦h≦13である)
【0026】
また、本発明の他の態様によれば、上述した正極活物質を含む正極が提供される。
【0027】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を使用するリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の多様な実施例による正極活物質は、前記正極活物質の表面に存在する残留リチウムの量を減らすための水洗工程なしに、表面内リチウム金属酸化物および/またはリチウム金属リン酸塩を形成して、表面に残留するLi不純物の含量を制御することが可能である。
【0029】
これによって、前記正極活物質の表面に残留するLi不純物に起因した正極活物質の電気化学的特性および安定性の低下をあらかじめ防止することができる。
【0030】
これを通じて、リチウム二次電池は、本発明の多様な実施例による正極活物質を使用することによって、リチウム二次電池の性能を評価するに重要な指標である容量特性、寿命特性、レート特性等のような多様な電気化学的特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明をさらに容易に理解するために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願で別途定義しない限り、本発明に使用された科学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態をも含むものと理解されなければならない。
【0032】
以下、本発明による正極活物質と、前記正極活物質を含む正極および前記正極を使用するリチウム二次電池についてより詳細に説明することとする。
【0033】
正極活物質
本発明の一態様によれば、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションが可能な第1化合物と、前記第1化合物の表面のうち少なくとも一部に存在するコーティング層と、を含む正極活物質が提供される。
【0034】
前記第1化合物は、単結晶または多結晶形態のリチウム複合酸化物でありうるが、好ましくは、多結晶形態のリチウム複合酸化物である。多結晶形態のリチウム複合酸化物とは、1次粒子と、前記1次粒子が複数で凝集した2次粒子と、を含む凝集体を意味する。
【0035】
前記1次粒子は、単一の結晶粒(grain or crystallite)を意味し、2次粒子は、複数の1次粒子が凝集して形成された凝集体を意味する。前記2次粒子を構成する前記1次粒子の間には、空隙および/または結晶粒界(grain boundary)が存在することができる。
【0036】
例えば、前記1次粒子は、前記2次粒子の内部で隣り合った1次粒子から離隔して内部空隙を形成することができる。また、前記1次粒子は、隣り合った1次粒子と互いに接して結晶粒界を形成せず、内部空隙と接することによって、前記2次粒子の内部に存在する表面を形成することができる。
【0037】
一方、前記2次粒子の最表面に存在する前記1次粒子が外気に露出した面は、前記2次粒子の表面を形成することになる。
【0038】
ここで、前記1次粒子の平均粒径は、0.1μm~5μm、好ましくは、0.1μm~3μmの範囲内に存在することによって、本発明の多様な実施例による正極活物質を使って製造された正極の最適密度を具現することができる。また、2次粒子の平均粒径は、凝集した1次粒子の数によって変わることができるが、3μm~20μmでありうる。
【0039】
また、前記1次粒子および/または前記2次粒子は、棒形状、楕円形状および/または不定形の形状を有することができる。
【0040】
ここで、前記第1化合物は、下記の化学式1で表されるリチウム複合酸化物である。
【0041】
[化学式1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M22+α
(ここで、
M1は、MnまたはAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、Mn、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Mg、V、Zn、Si、Y、Sn、Ge、Nb、WおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦α≦0.02である)
【0042】
この際、前記第1化合物は、少なくともNiおよびCoを含む層状結晶構造のリチウム複合酸化物でありうる。また、前記第1化合物は、前記化学式1中、x+y+zが0.20以下であるhigh-Niタイプのリチウム複合酸化物であることが好ましい。
【0043】
先立って説明したように、Niを含むリチウム複合酸化物の場合、LiとNiのカチオン混合が激しくなるにつれて、前記リチウム複合酸化物の表面に多量の残留リチウム、すなわちLi不純物が形成され得る。前記Li不純物は、主にLiOHおよびLiCOを含み、前記Li不純物は、正極を製造するためのペーストの製造時にゲル(gel)化したり、セルのスウェリング現象を引き起こす原因となる。
【0044】
前記Li不純物の含量は、前記リチウム複合酸化物中、Niの含量が増加するほど比例的に増加するが、一般的にNiの含量が80mol%以上であるhigh-Niタイプの正極活物質(リチウム複合酸化物)の場合、表面内Li不純物を除去するための水洗工程が必須的に伴わなければならない。しかしながら、前記水洗工程は、かえって前記リチウム複合酸化物の表面損傷を部分的に引き起こすことができ、これは、前記リチウム複合酸化物の電気化学的特性および安定性を低下する原因として作用することができる。
【0045】
一方、本発明の多様な実施例によるリチウム複合酸化物および前記リチウム複合酸化物を含む正極活物質は、前記リチウム複合酸化物に後述するリチウム金属酸化物および/またはリチウム金属リン酸塩を形成することによって、水洗工程なしにも前記リチウム複合酸化物の表面に残留するLi不純物の含量を効果的に低減することが可能である。
【0046】
また、前記第1化合物は、前記化学式1に示されたように、M1で表される金属元素でドープされ得、好ましくは、M1は、タングステン(W)を含むことができる。
【0047】
この際、前記タングステンは、前記第1化合物の結晶格子内に存在することができる。すなわち、前記タングステンは、前記第1化合物中、Li 3aサイトおよび3bサイトのうち少なくとも1つに挿入されたNiと置換された状態で存在することができる。
【0048】
一方、前記タングステンが前記第1化合物にドープされる場合、X線回折パターンのリートベルト解析によるLi 3aサイトに挿入されたNiの割合Nioccが向上することができ、これを通じて、前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等を向上させることができる。この際、前記Li 3aサイトに挿入されたNiの割合Nioccは、前記タングステンのドープによって前記Li 3aサイトに挿入されたNiの量が増加することに伴うものでありうるが、前記Li 3aサイトにWが挿入されるにつれて増加することもできる。好ましくは、前記タングステンが前記第1化合物にドープされる場合、前記第1化合物にドープされた前記タングステンのうち少なくとも一部が前記Li 3aサイトに挿入されるにつれて前記第1化合物の電気化学的特性および安定性等の向上に寄与することができる。
【0049】
この場合、前記第1化合物は、下記の化学式1-1で表され得る。
【0050】
[化学式1-1]
LiNi1-(x+y+z)CoM1M2z′2+δ
(ここで、
M1は、MnまたはAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、Mn、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Al、Hf、Ta、Mg、V、Zn、Si、Y、Sn、Ge、NbおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦z′≦0.20、0≦δ≦0.02である)
【0051】
追加的に、前記リチウム複合酸化物に存在するM1は、前記2次粒子の表面部から中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0052】
前記濃度勾配とは、前記2次粒子の表面部の任意の地点でのM1の濃度と前記2次粒子の中心部の任意の地点でのM1の濃度との間に(-)傾きが存在することを意味する。
【0053】
このように、前記2次粒子内にM1、好ましくは、タングステン(W)の濃度勾配が存在するにつれて、前記2次粒子および前記2次粒子を構成する前記1次粒子内リチウムイオンの移動経路(リチウムイオンの拡散経路)が前記2次粒子の表面部から中心部に向かう方向に形成され得る。
【0054】
本発明の多様な実施例による正極活物質は、前記第1化合物の表面に存在する残留Li、すなわちLi不純物の含量を減らすために、表面に第2化合物を含むコーティング層が設けられることを特徴とする。
【0055】
この際、前記第2化合物は、前記第1化合物の1次粒子間の界面および前記1次粒子が凝集して形成された2次粒子の表面のうち少なくとも一部に存在することができる。また、前記第2化合物の濃度は、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0056】
前記コーティング層は、1A族元素、3A族元素および5A族元素から選ばれる少なくとも1つの第1元素と、8族元素から選ばれる少なくとも1つの第2元素と、を含む酸化物である前記第2化合物を含むことができる。
【0057】
前記第2化合物は、下記の化学式2で表され得る。
【0058】
[化学式2]
LiCoM2(Pβγ
(ここで、
M2は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦10、0≦b≦8、0≦c≦8、0<d≦13、0<β≦4、0<γ≦10である)
【0059】
この際、前記第2化合物は、単一の結晶構造または無定形の酸化物でありうるが、必ずこれに制限されるものではなく、少なくとも1つの結晶構造および/または無定形の異種の酸化物の集合でありうる。
【0060】
もし、前記第2化合物のうち少なくとも1つが結晶構造を有する酸化物である場合、前記第2化合物は、空間群Fd-3m、Pnma、P*/n、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有することができる。この際、前記結晶構造は、monoclinic、cubic、orthorhombicまたはrhombohedral結晶構造でありうる。
【0061】
好ましい場合において、前記第1化合物の表面に存在する残留Liを効果的に除去するために、前記第2化合物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物の割合は、13mol%以下であることが好ましく、より好ましくは、10mol%以下、より好ましくは、5mol%以下でありうる。前記第2化合物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造は、cubicまたはrhombohedral結晶構造でありうる。
【0062】
前記第2化合物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する酸化物の代表的な例としては、Co、LiCoOおよびP等があり、その他にも、前記第1化合物の表面に存在することによって、前記第1化合物の表面に存在するにつれて残留Liと類似に不純物として作用し得る酸化物をさらに含むことができる。
【0063】
前記第1化合物の表面に存在する残留Liを効果的に除去するために、前記第2化合物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物の割合が13mol%を超過する場合、前記第2化合物による前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等の向上効果が極めて少ないか、かえって前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等を低下させる恐れがある。
【0064】
また、前記第2化合物は、下記の化学式3で表される第1酸化物および下記の化学式4で表される第2酸化物を含むことができる。
【0065】
[化学式3]
Lia′Cob′M3′c′(Pβ′γ′d′
(ここで、
M3′は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0<a′≦10、0≦b′≦8、0≦c′≦8、0<d′≦13、0≦β′≦4、0<γ′≦10である)
【0066】
[化学式4]
Cob″M3″c″(Pβ″γ″d″
(ここで、
M3″は、Ni、Mn、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦b″≦8、0≦c″≦8、0<d″≦13、0≦β″≦4、0<γ″≦10である)
【0067】
例えば、前記第1酸化物は、リチウムホスフェート、リチウムコバルトホスフェート、リチウム金属(コバルト除外)ホスフェート、リチウム金属(コバルト除外)-コバルト ホスフェート、リチウムコバルト酸化物および/またはリチウム金属(コバルト除外)酸化物であり得、前記第2酸化物は、五酸化リン、コバルトホスフェート、金属(コバルト除外)ホスフェート、金属(コバルト除外)-コバルトホスフェート、コバルト酸化物および/または金属(コバルト除外)酸化物でありうる。
【0068】
追加的に、前記コーティング層内存在する前記第2化合物中、上記に定義したところによる前記第1酸化物および前記第2酸化物の割合(第1酸化物/第2酸化物)は、0.87以上であることが好ましい。
【0069】
前記コーティング層内存在する前記第2化合物中、前記第1酸化物および前記第2酸化物の割合(第1酸化物/第2酸化物)が0.87未満の場合(すなわち、リチウムリン酸塩に対して金属酸化物の割合が大きくなる場合)、前記第2化合物による前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等の向上効果が極めて少ないか、かえって前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等を低下させる恐れがある。
【0070】
一方、前記第2化合物中、前記第1酸化物(例えば、LiCo(PO)、LiPOおよびLiCoO)のうち、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物r1(例えば、LiCoO)と、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3m以外の空間群に属する結晶構造を有する化合物r2(例えば、LiCo(PO)およびLiPO)との比r1/r2(例えば、LiCoO(mol%)/LiCo(PO)(mol%)+LiPO(mol%))が、0.03以下であることが好ましい。
【0071】
また、前記第2化合物中、前記第2酸化物(例えば、Co(PO、CoおよびP)のうち、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物s1(例えば、CoおよびP)と、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3m以外の空間群に属する結晶構造を有する化合物s2(例えば、Co(PO)との比s1/s2(例えば、Co(mol%)+P(mol%)/Co(PO(mol%))が、0.24以下であることが好ましい。
【0072】
前記第2化合物中、前記第1酸化物および前記第2酸化物に含まれた空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物と、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3m以外の空間群に属する結晶構造を有する化合物との比が、上述した範囲内に存在することで、前記正極活物質の電気化学的特性および安定性等の低下を最小化することが可能である。
【0073】
また、上述したように、前記第1酸化物および前記第2酸化物は、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができ、これによって、前記リチウム複合酸化物中、Co濃度も、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0074】
他の実施例において、前記第1化合物の表面のうち少なくとも一部に下記の化学式5で表される第3化合物をさらに含むことができる。
【0075】
[化学式5]
LiM4
(ここで、
M4は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦e≦10、0<f≦8、0≦g≦8、2≦h≦13である)
【0076】
前記第3化合物は、前記第2化合物が存在する前記コーティング層内存在したり、前記コーティング層と独立して存在することができる。また、前記第3化合物は、前記第1化合物の1次粒子間の界面および前記1次粒子が凝集して形成された2次粒子の表面のうち少なくとも一部に存在することができる。また、前記第3化合物の濃度は、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0077】
さらに他の実施例において、前記正極活物質は、前記第1化合物の表面(前記コーティング層でカバーされていない表面)および前記コーティング層の表面のうち少なくとも一部をカバーするシェル層をさらに含むことができる。
【0078】
この際、前記シェル層は、下記の化学式4で表される第4化合物を含むことができる。すなわち、前記シェル層は、下記の化学式4で表される第4化合物が存在する領域と定義され得る。
【0079】
[化学式4]
LiM4
(ここで、M4は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦j≦10、0≦k≦8、2≦l≦13である)
【0080】
また、前記シェル層は、1つの層内異種の第4化合物が同時に存在したり、前記化学式4で表される異種の第4化合物がそれぞれ別個の層に存在する形態でありうる。
【0081】
前記化学式4で表される第4化合物は、前記第1化合物、前記第2化合物および/または前記第3化合物と物理的および/または化学的に結合した状態でありうる。また、前記第4化合物は、前記第1化合物、前記第2化合物および/または前記第3化合物と固溶体を形成した状態で存在することもできる。
【0082】
前記第4化合物は、リチウムとM4で表される元素が複合化された酸化物であるか、M4の酸化物として、前記酸化物は、例えば、Li、LiZr、LiTi、LiNi、Li、W、Zr、TiまたはB等でありうるが、上述した例は、理解を助けるために、便宜上記載したものに過ぎず、本願で定義された前記酸化物は、上述した例に制限されない。
【0083】
他の実施例において、前記第4化合物は、リチウムとM4で表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物であるか、リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物をさらに含むことができる。リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物は、例えば、Li(W/Ti)、Li(W/Zr)、Li(W/Ti/Zr)、Li(W/Ti/B)等でありうるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0084】
ここで、前記第4化合物は、前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。これによって、前記第4化合物の濃度は、前記2次粒子の最表面から前記2次粒子の中心部に向かって減少することができる。
【0085】
上述したように、前記第4化合物が前記2次粒子の表面部から前記2次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことによって、前記第1化合物の表面に存在する残留Liを追加的に減少させることができる。また、前記第4化合物により前記第1化合物の表面内側領域での結晶性が低くなるのを防止することができる。また、電気化学反応中に前記第4化合物により正極活物質の全体的な構造が崩壊されるのを防止することができる。
【0086】
追加的に、前記シェル層は、前記化学式4で表される少なくとも1つの第4化合物を含む第1シェル層と、前記化学式4で表される少なくとも1つの第4化合物を含み、前記第1シェル層に含まれた酸化物と異なる酸化物を含む第2シェル層とを含むことができる。
【0087】
リチウム二次電池
本発明のさらに他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活物質層は、本発明の多様な実施例による正極活物質を含むことができる。したがって、正極活物質は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明することとする。
【0088】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚みを有し得、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0089】
前記正極活物質層は、前記正極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造され得る。
【0090】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれ得る。上記した含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0091】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体等の導電性高分子等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0092】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0093】
前記正極は、上記した正極活物質を利用することを除いて、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的に、上記した正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって製造することができる。
【0094】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚み、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以後、正極の製造のための塗布時に優れた厚み均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0095】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0096】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を含む電気化学素子が提供され得る。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタ等であってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0097】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と前記負極との間に介在される分離膜および電解質とを含むことができる。ここで、前記正極は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成のみについて具体的に説明する。
【0098】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極および前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0099】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含むことができる。
【0100】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用され得る。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚みを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0101】
前記負極活物質層は、前記負極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造され得る。
【0102】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金等リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープし得る金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素等がすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0103】
前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80~99wt%で含まれ得る。
【0104】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の全体重量を基準として0.1~10wt%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙げられる。
【0105】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全体重量を基準として10wt%以下、好ましくは5wt%以下で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用され得る。
【0106】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥することによって製造されたり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造され得る。
【0107】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありかつ電解液含浸能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0108】
また、本発明において使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0109】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0110】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合の芳香環またはエーテル結合を含むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類等が使用され得る。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優秀に現れることができる。
【0111】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C等が使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0112】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的として例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5wt%で含まれ得る。
【0113】
上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)等の電気自動車分野等に有用である。
【0114】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形等になり得る。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0115】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよび/またはこれを含む電池パックが提供され得る。
【0116】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として用いられる。
【0117】
以下では、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。
【0118】
実験例1.
製造例1.正極活物質の製造
(1)実施例1
共沈法(co-precipitation method)により球形のNi0.91Co0.08Mn0.01(OH)水酸化物前駆体を合成した。具体的に、90L級の反応器で硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを91:8:1のモル比で混合した1.5Mの複合遷移金属硫酸水溶液に25wt%のNaOHと30wt%のNHOHを投入した。反応器内のpHは11.5を維持し、この際の反応器の温度は60℃に維持し、不活性ガスであるNを反応器に投入して、製造された前駆体が酸化しないようにした。合成撹拌の完了後、Filter press(F/P)装備を利用して洗浄および脱水を進めて、Ni0.91Co0.08Mn0.01(OH)水酸化物前駆体を収得した。
【0119】
次に、合成された前駆体にLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.01)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当り2℃で昇温して、10時間の間熱処理して、リチウム複合酸化物を収得した。
【0120】
次に、前記リチウム複合酸化物とCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、焼成して、最終的に正極活物質を製造した。具体的に、前記リチウム複合酸化物とCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、400℃まで分当たり2℃で昇温して、5時間の間熱処理した後、自然冷却して、正極活物質を得た。
【0121】
前記Co含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)は、それぞれ前記リチウム複合酸化物、Co含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)の混合物に対して0.3mol%になるように混合した。
【0122】
前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表1に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
(2)実施例2
前記Co含有原料物質(Co(PO)を前記リチウム複合酸化物、Co含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)の混合物に対して0.5mol%になるように混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表2に示した。
【0125】
【表2】
【0126】
(3)実施例3
前記W含有原料物質(WO)を前記リチウム複合酸化物、Co含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)の混合物に対して1.0mol%になるように混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表3に示した。
【0127】
【表3】
【0128】
(4)実施例4
合成された前駆体にZr含有化合物(ZrO)0.05モル%を追加的に混合したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表4に示した。
【0129】
【表4】
【0130】
(5)実施例5
前記リチウム複合酸化物とCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、熱処理した後、同一焼成炉にTi含有化合物(TiO)0.2モル%を追加的に混合した後、O雰囲気を維持しつつ、400℃まで分当たり2℃で昇温して、5時間の間熱処理したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表5に示した。
【0131】
【表5】
【0132】
(6)比較例1
前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合せず、400℃まで分当たり2℃で昇温して、5時間の間熱処理したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表6に示した。
【0133】
【表6】
【0134】
(7)比較例2
前記リチウム複合酸化物にW含有原料物質(WO)のみを混合した後、焼成したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表7に示した。
【0135】
【表7】
【0136】
(8)比較例3
前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)のみを混合した後、焼成したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表8に示した。
【0137】
【表8】
【0138】
(9)比較例4
前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合せず、700℃まで分当たり2℃で昇温して、5時間の間熱処理したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表9に示した。
【0139】
【表9】
【0140】
(10)比較例5
前記リチウム複合酸化物にW含有原料物質(WO)のみを混合した後、700℃まで分当たり2℃で昇温して、5時間の間熱処理したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表10に示した。
【0141】
【表10】
【0142】
(11)比較例6
前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)のみを混合した後、700℃まで分当たり2℃で昇温して、5時間の間熱処理したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表11に示した。
【0143】
【表11】
【0144】
(12)比較例7
前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、700℃まで分当たり2℃で昇温して、5時間の間熱処理したことを除いて、実施例1と同一に正極活物質を製造した。前記正極活物質の組成に対するICP分析結果は、下記の表12に示した。
【0145】
【表12】
【0146】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造例1によって製造された正極活物質それぞれ92wt%、人造黒鉛4wt%、PVDFバインダー4wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmのアルミニウム薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0147】
前記正極に対してリチウムフォイルを対電極(counter electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)を分離膜とし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で存在する電解液を使用してコイン電池を製造した。
【0148】
実験例1.正極活物質のXRD分析
製造例1によって製造された正極活物質に対してX線回折(XRD)分析を行って、正極活物質のNioccおよび前記正極活物質の表面中、コーティング物質を確認した。XRD分析は、Cu Kαradiation(1.540598Å)を利用したBruker D8 Advance回折計(diffractometer)を利用して行った。
【0149】
(1)正極活物質のNiocc測定
X線回折パターンのリートベルト解析(Reitveld refinement)を通じて製造例1によって製造された正極活物質のLi 3aサイトに挿入されたNi金属の占有率(または含量;occupancy)を測定した。測定結果は、下記の表13に示した。
【0150】
【表13】
【0151】
前記表13の結果を参考にすると、前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した場合、前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)またはW含有原料物質(WO)のみを混合した場合に比べてLi 3aサイトに挿入されたNiの占有率が増加することを確認することができる。また、実施例1および比較例7を参照すると、前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、相対的に低い温度で熱処理することによって、前記Li 3aサイトに挿入されたNiの占有率を向上させることができる。
【0152】
このように、前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、相対的に低い温度で熱処理することによって、前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)またはW含有原料物質(WO)のみを単独で混合した後、熱処理したり、Co含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、相対的に高い温度で熱処理した場合に比べて、前記Li 3aサイトに挿入されたNiの占有率が増加したことは、前記リチウム複合酸化物の結晶格子内タングステンがドープされることにより前記Li 3aサイトにWが挿入されることに伴うものでありうる。
【0153】
(2)正極活物質の表面中、コーティング物質分析
Bruker社のEVA programを使用して測定されたXRD raw dataから下記の表14および表15に記載された酸化物をスクリーニングする方法で製造例1によって製造された正極活物質の表面中、コーティング物質(すなわち、第2化合物)の含量を定量的に分析した。
【0154】
前記方法によって分析された正極活物質の表面中、コーティング物質の分析結果は、下記の表14~表16に示した。
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
【0157】
【表16】
【0158】
前記表14の結果を参考にすると、リチウム複合酸化物である前記第1化合物の表面のうち少なくとも一部にコーティング層として存在する前記第2化合物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物は、cubicまたはrhombohedral結晶構造を有することを確認することができる。
【0159】
前記表14~表16の結果を参考にすると、比較例6および比較例7による正極活物質とは異なって、実施例1~実施例5による正極活物質の場合、前記リチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co(PO)およびW含有原料物質(WO)を混合した後、相対的に低い温度で熱処理することにより、本願で第2化合物と定義された酸化物中、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物(Co、LiCoOおよびP)の割合が13mol%以下であることを確認することができた。
【0160】
しかも、比較例6および比較例7による正極活物質とは異なって、実施例1~実施例5による正極活物質の場合、前記第2化合物中、前記第1酸化物であるLiCo(PO)、LiPOおよびLiCoOのうち空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物(r1)であるLiCoOと、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3m以外の空間群に属する結晶構造を有する化合物(r2)であるLiCo(PO)およびLiPOとの比(r1/r2=LiCoO(mol%)/LiCo(PO)(mol%)+LiPO(mol%))が、0.03以下であることを確認することができる。
【0161】
また、比較例6および比較例7による正極活物質とは異なって、実施例1~実施例5による正極活物質の場合、前記第2化合物中、前記第2酸化物であるCo(PO、CoおよびPうち空間群Fd-3m、R3cまたはR-3mに属する結晶構造を有する化合物(s1)であるCoおよびPと、空間群Fd-3m、R3cまたはR-3m以外の空間群に属する結晶構造を有する化合物(s2)であるCo(POとの比(s1/s2=Co(mol%)+P(mol%)/Co(PO(mol%))が、0.24以下であることを確認することができる。
【0162】
一方、比較例3による正極活物質の場合、W含有原料物質(WO)を混合せずに熱処理したことを除いて、実施例1による正極活物質と同じ方法で製造されることにより、第2化合物と定義された酸化物が類似した組成で存在することを確認することができた。
【0163】
実験例2.正極活物質の未反応リチウムの測定
製造例1によって製造された正極活物質に対する未反応リチウムの測定は、pH滴定(pH titration)によりpH4になるまで使用された0.1MのHClの量で測定した。まず、製造例1によって製造された正極活物質それぞれ5gをDIW 100mlに入れ、15分間撹拌した後、フィルタリングし、フィルタリングされた溶液50mlを取った後、これに0.1MのHClを加えて、pHの変化に応じたHClの消耗量を測定して、Q1およびQ2を決定し、これを通じて、未反応LiOHの含量を計算した。
【0164】
M1=23.95(LiOH Molecular weight)
M2=73.89(LiCO Molecular weight)
SPL Size=(Sample weight×Solution Weight)/Water Weight
LiOH(wt%)=[(Q1-Q2)×C×M1×100]/(SPL Size×1000)
【0165】
前記計算式を通じて測定された前記正極活物質中に存在するリチウム不純物の含量の測定結果は、下記の表17に示した。
【0166】
【表17】
【0167】
(2)リチウム二次電池の電気化学的特性の評価
製造例2によって製造されたリチウム二次電池を電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を利用して25℃、電圧範囲3.0V~4.3V、0.1C~5.0Cの放電レートを適用して充放電実験を実施して、初期充電容量、初期放電容量、初期可逆効率および放電容量比(C-rate)を測定した。
【0168】
また、上述した方法で製造されたリチウム二次電池を25℃の温度で3.0V~4.4Vの駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充放電を実施した後、初期容量に対する50サイクル目の放電容量の比(サイクル容量保持率;capacity retention)を測定した。
【0169】
一方、製造例2によって製造されたリチウム二次電池の初期抵抗は、電気化学インピーダンス分光法(EIS;Electrochemical Impedance Spectroscopy)を利用して周波数(10kHz~0.01Hz)の範囲内で測定した。
【0170】
前記測定結果は、下記の表18に示した。
【0171】
【表18】
【0172】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正および変更させることができ、これも、本発明の権利範囲内に含まれるといえる。