(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 50/22 20200101AFI20231016BHJP
B62J 11/00 20200101ALI20231016BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20231016BHJP
B62K 21/12 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B62J50/22
B62J11/00
B62J45/00
B62K21/12
(21)【出願番号】P 2021158297
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸祐
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-65422(JP,A)
【文献】特開2013-60083(JP,A)
【文献】特開2021-62643(JP,A)
【文献】特開2016-60369(JP,A)
【文献】特開2019-156383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 50/22
B62J 11/00
B62J 45/00
B62K 21/12
B62J 11/19
B62J 17/086
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(FW)及び後輪(RW)と、
左右方向に延在し、前記前輪(FW)を転舵する回動自在なハンドル(41)と、
情報表示面(71)を有する情報表示装置(70)と、
前記情報表示装置(70)を支持する情報表示装置支持部材(80)と、
外部機器にエネルギを供給可能なエネルギ供給ユニット(90)と、を備える鞍乗型車両(1)であって、
前記情報表示装置(70)の前記情報表示面(71)は、前記鞍乗型車両(1)の状態に関する情報を表示し、
前記情報表示装置(70)は、前記情報表示面(71)が前後方向において前後方向一方側の第1方向を向くようにして、前記ハンドル(41)よりも前方に配置されており、
前記情報表示装置支持部材(80)は、前記ハンドル(41)とは連動せず、前記ハンドル(41)よりも前方で前後方向において前記第1方向を向く第1面(82a)を有し、
前記エネルギ供給ユニット(90)は、前記情報表示装置支持部材(80)に支持され、且つ、前記外部機器と接続するコネクタ(92a)が設けられたコネクタ設置部(92)を有し、
前記コネクタ設置部(92)は、前記情報表示装置支持部材(80)の前記第1面(82a)に配置され、前記情報表示装置支持部材(80)の前記第1面(82a)から前記第1方向側に露出しており、
前記コネクタ(92a)は、左右方向を向いている、鞍乗型車両(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両(1)であって、
前記ハンドル(41)の右側部分には、前記前輪(FW)を制動するブレーキレバー(46)が設けられており、
前記コネクタ(92a)は、左側を向いている、鞍乗型車両(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両(1)であって、
前記情報表示装置(70)は、前後方向から見て、前記鞍乗型車両(1)の左右方向の中央を示す左右方向中央仮想線(VCL)と交差するように配置されており、
前記コネクタ設置部(92)は、
前記情報表示装置(70)の下方で、左右方向において前記情報表示装置(70)
の左端部から右端部までの間の位置に配置されている、鞍乗型車両(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗型車両(1)であって、
前記コネクタ設置部(92)は、左右方向において前記左右方向中央仮想線(VCL)と交差する位置に配置されている、鞍乗型車両(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両(1)であって、
前記コネクタ設置部(92)は、前記情報表示装置(70)よりも下方に配置されている、鞍乗型車両(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の鞍乗型車両(1)であって、
前記情報表示装置支持部材(80)の前記第1面(82a)には、前後方向他方側の第2方向に窪んだ凹部(82b)が形成されており、
前記凹部(82b)は、前記第1面(82a)が前記第2方向に屈曲して前後方向及び左右方向に延在する上壁部(82b2)と、前記上壁部(82b2)よりも下方で前記第1面(82a)が前記第2方向に屈曲して前後方向及び左右方向に延在する下壁部(82b3)と、を有し、
前記コネクタ設置部(92)は、上下方向において前記上壁部(82b2)と前記下壁部(82b3)との間に配置され、少なくとも一部が前記第1面(82a)から前記凹部(82b)に向かって露出しており、少なくとも一部が上下方向から見て前記上壁部(82b2)及び前記下壁部(82b3)と重なる位置に配置されている、鞍乗型車両(1)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の鞍乗型車両(1)であって、
前記コネクタ(92a)は、前記鞍乗型車両(1)の直立状態において、左右方向に対して下方へ所定角度傾斜して、左右方向を向いている、鞍乗型車両(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の鞍乗型車両(1)であって、
前記コネクタ(92a)は、前記鞍乗型車両(1)の直立状態において、車両前後方向に前記第1方向側へ所定角度傾斜して、左右方向を向いている、鞍乗型車両(1)。
【請求項9】
前輪(FW)を転舵するハンドル(41)と、
外部機器にエネルギを供給可能なコネクタ(92a)と、
前記コネクタを支持するコネクタ支持部材(80)と、を備える鞍乗型車両(1)であって、
前記コネクタ支持部材(80)は、
前記ハンドル(41)とは連動せず、且つ、前記ハンドル(41)よりも前方に配置されており、
車両後方を向く第1面(82a)を有し、
前記コネクタ(92a)は、前記第1面(82a)に、車両左右方向又は左右方向斜め後方を向いて配置されることを特徴とする鞍乗型車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鞍乗型車両において、スマートフォン等の外部機器に電力を供給するためのコネクタが設けられた電力供給ユニットを備えるものが知られている。例えば、特許文献1には、外部機器へ電力供給可能な端子ユニットがハンドルカバーに設置された鞍乗型車両が記載されている。また、例えば、特許文献2には、車体に固定されたライトステーに取り付けられたアシストライトユニットに、外部機器へ電力供給可能な接続部が設けられた鞍乗型車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-172162号公報
【文献】特開2003-154889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の鞍乗型車両は、ハンドルと連動するハンドルカバーに端子ユニットが設置されているので、鞍乗型車両の運転者がハンドルを操作すると、端子ユニットもハンドルと連動する。そのため、端子ユニットの接続端子に接続される配線部材等が、ハンドルと連動して変位して、ハンドルやその他の鞍乗型車両の部材と当接したり干渉したりする恐れがあり、レイアウトに制限があった。
【0005】
一方、特許文献2の鞍乗型車両は、車体に固定されたライトステーに車体に固定されたライトステーに取り付けられたアシストライトユニットに接続部が設けられているので、鞍乗型車両の運転者がハンドルを操作しても、接続部はハンドルと連動しない。しかしながら、特許文献2の鞍乗型車両は、アシストライトユニットの側部に接続部が設けられているので、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者から接続部が視認しにくい、という課題があった。
【0006】
本発明は、外部機器と接続するコネクタに接続される配線部材等が、ハンドルやその他の鞍乗型車両の部材と当接したり干渉したりすることを抑制しレイアウトの制限を少なくしつつ、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者から視認しやすい位置にコネクタを配置できる鞍乗型車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、
前輪及び後輪と、
左右方向に延在し、前記前輪を転舵する回動自在なハンドルと、
情報表示面を有する情報表示装置と、
前記情報表示装置を支持する情報表示装置支持部材と、
外部機器にエネルギを供給可能なエネルギ供給ユニットと、を備える鞍乗型車両であって、
前記情報表示装置の前記情報表示面は、前記鞍乗型車両の状態に関する情報を表示し、
前記情報表示装置は、前記情報表示面が前後方向において前後方向一方側の第1方向を向くようにして、前記ハンドルよりも前方に配置されており、
前記情報表示装置支持部材は、前記ハンドルとは連動せず、前記ハンドルよりも前方で前後方向において前記第1方向を向く第1面を有し、
前記エネルギ供給ユニットは、前記情報表示装置支持部材に支持され、且つ、前記外部機器と接続するコネクタが設けられたコネクタ設置部を有し、
前記コネクタ設置部は、前記情報表示装置支持部材の前記第1面に配置され、前記情報表示装置支持部材の前記第1面から前記第1方向側に露出しており、
前記コネクタは、左右方向を向いている。
【0008】
本発明の第2は、
前輪を転舵するハンドルと、
外部機器にエネルギを供給可能なコネクタと、
前記コネクタを支持するコネクタ支持部材と、を備える鞍乗型車両であって、
前記コネクタ支持部材は、
前記ハンドルとは連動せず、且つ、前記ハンドルよりも前方に配置されており、
車両後方を向く第1面を有し、
前記コネクタは、前記第1面に、車両左右方向又は左右方向斜め後方を向いて配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部機器と接続するコネクタに接続される配線部材等が、ハンドルやその他の鞍乗型車両の部材と当接したり干渉したりすることを抑制しレイアウトの制限を少なくしつつ、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者から視認しやすい位置にコネクタを配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の自動二輪車の左側面図である。
【
図2】
図1の自動二輪車のハンドル周辺を上方から見た図である。
【
図5】
図1の自動二輪車における電力供給ユニットを示す図であり、(a)は、電力供給ユニットの斜視図であり、(b)は、カバー部材を取り外した状態で見た電力供給ユニットの斜視図であり、(c)は、(b)のC矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の鞍乗型車両の一実施形態である自動二輪車について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、自動二輪車の運転者から見た方向に従って記載し、各図面には、自動二輪車の前方をFr、後方をRr、上方をU、下方をD、左方をL、右方をRとして示す。
【0012】
図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム10と、前輪FW及び後輪RWと、車体フレーム10に搭載されたパワーユニット21及び燃料タンク22と、を備える。パワーユニット21は、不図示のエンジンとクラッチと変速機構とを有する。パワーユニット21のエンジン、クラッチ、及び変速機構は、同一のケースに収容されて一体化されている。そして、クラッチが接続状態のとき、パワーユニット21は、エンジンの動力を、変速機構を介して出力軸から出力する。なお、クラッチが解放状態のとき、パワーユニット21の出力軸からエンジンの動力は出力されない。燃料タンク22には、ガソリンや軽油等の燃料が貯留される。パワーユニット21のエンジンは、燃料タンク22に貯留された燃料によって動力を発生させる。本実施形態の自動二輪車1は、車体フレーム10に搭載されたパワーユニット21のエンジンの動力によって後輪RWが回転駆動する自動二輪車、すなわち後輪RWを駆動輪とする自動二輪車である。
【0013】
車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、左右一対のダウンフレーム12と、左右一対のメインフレーム13と、左右一対のシートフレーム14と、を備える。
【0014】
ヘッドパイプ11は、車体フレーム10の前端部に設けられており、前方下向きに延在するパイプ状の部材である。ヘッドパイプ11には、後述する転舵ユニット40のステムシャフト42が挿通する。
【0015】
左右一対のダウンフレーム12は、パワーユニット21の前方及び下方と、パワーユニット21の後方の下側領域を取り囲むように延在する。左右一対のダウンフレーム12は、前端がヘッドパイプ11に連結しており、ヘッドパイプ11から下方に向かって延在し、パワーユニット21の下方で屈曲して後方に向かって延在し、パワーユニット21の後方で屈曲して後方上向きに向かって延在する。
【0016】
左右一対のメインフレーム13は、パワーユニット21の上方と、パワーユニット21の後方の上側領域を取り囲むように延在する。左右一対のメインフレーム13は、前端がヘッドパイプ11に連結しており、ヘッドパイプ11から後方に向かって延在し、パワーユニット21の後方で屈曲して後方下向きに延在する。そして、左右一対のメインフレーム13の後端はそれぞれ、左右それぞれのダウンフレーム12におけるパワーユニット21の後方で屈曲して後方上向きに向かって延在する部分に連結する。そして、左側のメインフレーム13の後端が左側のダウンフレーム12に連結する連結点、及び、右側のメインフレーム13の後端が右側のダウンフレーム12に連結する連結点には、それぞれ、後述する左右一対のスイングアーム25の前端部を回動自在に軸支するスイングアームピボット15が形成されている。したがって、車体フレーム10には、スイングアームピボット15が左右一対設けられている。
【0017】
左右一対のシートフレーム14は、前端がメインフレーム13に連結して、前後方向に延在する。左右一対のシートフレーム14の前端は、メインフレーム13におけるパワーユニット21の後方で屈曲して後方下向きに向かって延在する部分の上端近傍に連結する。左右一対のシートフレーム14は、メインフレーム13から後方に向かって延在し、ダウンフレーム12の後端と連結して、ダウンフレーム12の後端よりも後方まで前後方向に延在する。
【0018】
パワーユニット21は、前後方向から見て、左右のダウンフレーム12及びメインフレーム13の間、且つ、左右方向から見て、ダウンフレーム12とメインフレーム13とによって囲まれた領域に配置される。ダウンフレーム12には、パワーユニットマウント12aが形成されている。メインフレーム13には、パワーユニットマウント13aが形成されている。パワーユニット21は、ボルトやナット等の締結部材によって、直接、又は、ゴム等の弾性部材を介して、パワーユニットマウント12a、13aに固定されている。
【0019】
燃料タンク22は、パワーユニット21より上方に配置され、メインフレーム13に固定されている。本実施形態では、燃料タンク22は、メインフレーム13の上部に配置されている。
【0020】
自動二輪車1は、運転者が着座可能なシート23を備える。シート23は、燃料タンク22の後部から後方に向かって前後方向に延在し、シートフレーム14の上方に配置されている。シート23は、左右一対のシートフレーム14に固定されている。なお、シート23は、運転者に加えて、運転者の後方に同乗者が着座可能であってもよい。
【0021】
自動二輪車1は、蓄電ユニット24を備える。蓄電ユニット24は、例えばリチウムイオンバッテリや鉛バッテリ等の二次電池を有する。蓄電ユニット24は、左側のシートフレーム14の車幅方向外側に配置されている。蓄電ユニット24は、左側のシートフレーム14に固定されている。蓄電ユニット24に蓄電された電力は、ハーネスを介して、自動二輪車1の電装部品に供給される。
【0022】
自動二輪車1は、後輪RWの左右両側に配置され、前後方向に延在する左右一対のスイングアーム25を備える。左右一対のスイングアーム25は、後端部で後輪RWを支持している。左右のスイングアーム25の前端部は、車体フレーム10に形成された左右のスイングアームピボット15にそれぞれ軸支されている。左右一対のスイングアーム25はそれぞれ、スイングアームピボット15を支点軸として、上下に回動可能となっている。左右一対のスイングアーム25は、後輪RWを車体フレーム10に連結するための骨組みとしての機能を有すると同時に、後輪RWに入力された衝撃を吸収する緩衝装置の一部としての機能も有する。
【0023】
自動二輪車1は、後輪RWに入力された衝撃を吸収する緩衝装置の一部としての機能する不図示のリアサスペンションを備える。リアサスペンションは、上端部が車体フレーム10に連結し、下端部がスイングアーム25に連結する。リアサスペンションは、例えば、円筒形状を有するダンパーユニットと、当該ダンパーユニットを取り囲むように巻回されたコイルスプリングと、を備える。後輪RWに入力された衝撃は、スイングアーム25を介して、リアサスペンションで減衰される。
【0024】
自動二輪車1は、パワーユニット21の出力軸に連結し、パワーユニット21の出力軸と一体に回転するドライブスプロケット26と、後輪RWと一体に回転するドリブンスプロケット27と、ドライブスプロケット26とドリブンスプロケット27とに掛け回されるチェーン28と、を備える。パワーユニット21の回転動力は、ドライブスプロケット26及びチェーン28を介してドリブンスプロケット27に伝達され、後輪RWは、ドリブンスプロケット27に伝達されたパワーユニット21の回転動力によって回転駆動する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、自動二輪車1は、前輪FWの左右両側に配置され、下方に向かうにしたがって前方に傾斜して上下方向に延在する円筒形状を有する左右一対のフロントフォーク30を備える。左右一対のフロントフォーク30は、下端部で前輪FWを支持している。左右一対のフロントフォーク30は、前輪FWを車体フレーム10に連結するための骨組みとしての機能を有すると同時に、前輪FWに入力された衝撃を吸収する緩衝装置としての機能も有する。
【0026】
フロントフォーク30は、中空円筒形状を有するアウターチューブ31と、アウターチューブ31よりも小径の中空円筒形状を有し、アウターチューブ31の中空内部に挿入可能なインナーチューブ32と、を備える。本実施形態では、アウターチューブ31は、前輪FWに支持されており、インナーチューブ32は、下端部がアウターチューブ31の中空内部に挿入され、上端部がアウターチューブ31から上方に突出している。フロントフォーク30は、アウターチューブ31の中空内部に挿入されるインナーチューブ32の長さが変化することによって、望遠鏡のように伸縮する。フロントフォーク30の内部には、フォークオイルが封入されている。前輪FWから入力された衝撃荷重は、フロントフォーク30が伸縮する際のフォークオイルの粘性抵抗によって減衰される。
【0027】
自動二輪車1は、車体フレーム10に対して回動自在に支持され、左右一対のフロントフォーク30を支持する転舵ユニット40を備える。
【0028】
転舵ユニット40は、左右方向に延在し前輪FWを転舵する回動自在なバー形状のハンドル41と、車体フレーム10のヘッドパイプ11に挿通されるステムシャフト42と、左右のフロントフォーク30の上端部同士を連結固定するトップブリッジ43と、トップブリッジ43よりも下方で左右のフロントフォーク30を連結固定するアンダーブラケット44と、を備える。したがって、左右のフロントフォーク30は、トップブリッジ43とアンダーブラケット44とに固定される。
【0029】
トップブリッジ43の上面には、上方に突出したハンドルブラケット43aが一体に形成されている。ハンドル41は、トップブリッジ43のハンドルブラケット43aに固定されている。
【0030】
ステムシャフト42は、アンダーブラケット44と一体に形成されている。ステムシャフト42は、左右のフロントフォーク30の左右方向中間点で、アンダーブラケット44の上面から上方に向かって後方に傾斜して上下方向に延在している。トップブリッジ43には、左右のフロントフォーク30の左右方向中間点に挿通孔43bが形成されている。ステムシャフト42は、車体フレーム10のヘッドパイプ11を挿通して、トップブリッジ43の上面から挿通孔43bに挿通されるボルト等の締結部材43cによって、上端部がトップブリッジ43に固定される。
【0031】
したがって、自動二輪車1の運転者がハンドル41を回動させると、転舵ユニット40は、ステムシャフト42(車体フレーム10のヘッドパイプ11)を軸に一体に回動する。このとき、転舵ユニット40のトップブリッジ43及びアンダーブラケット44に固定された左右のフロントフォーク30と、左右のフロントフォーク30の下端部に支持された前輪FWも、ステムシャフト42(車体フレーム10のヘッドパイプ11)を軸に転舵ユニット40と一体に回動する。このようにして、ハンドル41は、前輪FWを転舵する。これにより、自動二輪車1の運転者は、走行時にハンドル41を回動することによって前輪FWを転舵して、自動二輪車1を左右方向に旋回させることができる。
【0032】
左右方向に延在するハンドル41の左端部には、左側ハンドルグリップ41aが設けられている。自動二輪車1の運転者は、走行時において、左手で左側ハンドルグリップ41aを握持する。左右方向に延在するハンドル41の右端部には、アクセルグリップ41bが設けられている。自動二輪車1の運転者は、走行時において、右手でアクセルグリップ41bを握持する。そして、自動二輪車1の運転者は、走行時において、右手で握持したアクセルグリップ41bを操作することによって、自動二輪車1を加速させることができる。
【0033】
ハンドル41の左側部分には、クラッチレバー45が設けられている。クラッチレバー45は、自動二輪車1の走行時において、自動二輪車1の運転者が左手を左側ハンドルグリップ41aから離すことなく操作可能なように、左側ハンドルグリップ41aの前方を左右方向に延在するように設けられている。自動二輪車1の運転者によってクラッチレバー45が操作されていない状態のとき、パワーユニット21のクラッチは接続状態に維持される。自動二輪車1の運転者によってクラッチレバー45が操作されたとき、パワーユニット21のクラッチは解放状態となる。
【0034】
ハンドル41の右側部分には、ブレーキレバー46が設けられている。ブレーキレバー46は、自動二輪車1の走行時において、自動二輪車1の運転者が右手をアクセルグリップ41bから離すことなく操作可能なように、アクセルグリップ41bの前方を左右方向に延在するように設けられている。自動二輪車1の運転者によってブレーキレバー46が操作されたとき、前輪FW又は後輪RWに設けられたブレーキユニットが動作して、前輪FW又は後輪RWを制動する。ブレーキユニットの動作及び制動は前輪FWと後輪RW共でもよいしどちらか一方でも構わない。
【0035】
自動二輪車1は、転舵ユニット40の前方と、転舵ユニット40の前方から燃料タンク22の近傍までの左右側面と、を覆うフロントカウル60を備える。フロントカウル60は、転舵ユニット40の前方で左右方向に延在して転舵ユニット40の前方を覆う前部60aと、前部60aの左端部から後方に向かって湾曲し、転舵ユニット40の左側方を覆って燃料タンク22の近傍まで延在する左側部60bと、前部60aの右端部から後方に向かって湾曲し、転舵ユニット40の右側方を覆って燃料タンク22の近傍まで延在する右側部60cと、を有する。したがって、フロントカウル60は、上方から見て、略U字状を有する。フロントカウル60は、車体フレーム10に固定されている。加えて、本実施形態では、フロントカウル60は、左側部60b及び右側部60cの後端部が、それぞれ燃料タンク22に固定されている。
【0036】
フロントカウル60の前部60aには、前照灯61が取り付けられている。前照灯61は、前述した蓄電ユニット24に蓄電された電力によって点灯する。フロントカウル60の前部60aには、前部60aから上方に延出するようにして、上下方向及び左右方向に延在するウインドスクリーン62が取り付けられている。ウインドスクリーン62は、上方に向かって後方に傾斜して上下方向に延在するようにフロントカウル60の前部60aに取り付けられている。
【0037】
図3に示すように、自動二輪車1は、自動二輪車1の状態に関する情報を表示する情報表示面71を有する情報表示装置70を備える。本実施形態では、情報表示装置70は、所定の厚みを有する平板形状を有し、一方の平板面が情報表示面71となっている。情報表示面71が表示する自動二輪車1の状態に関する情報は、例えば、自動二輪車1の車速、パワーユニット21のエンジンの回転速度、パワーユニット21の内部を循環するオイルの温度、パワーユニット21の変速機構において噛合している変速段、燃料タンク22に貯留する燃料の残量、自動二輪車1の現在位置を含むナビゲーション情報等が挙げられるが、これらに限定されない。情報表示面71は、例示したこれらの情報のうちの1つ又は複数を表示してもよいし、例示したこれらの情報以外の情報を表示してもよいし、現在時刻等、自動二輪車1の状態に関する情報以外の情報を表示してもよい。本実施形態では、情報表示装置70は、液晶ディスプレイや有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode:OLED)ディスプレイ等のディスプレイ装置である。なお、情報表示装置70は、メータ等の計器類と警告灯及び/又は表示灯とを有するメータパネルであってもよい。
【0038】
情報表示装置70は、情報表示面71が前後方向において後方を向くようにして、ハンドル41よりも前方に配置されている。本実施形態では、情報表示装置70は、情報表示面71が上向きに傾斜して後方を向くように配置されている。情報表示装置70は、前後方向から見て、自動二輪車1の左右方向の中央を示す左右方向中央仮想線VCLと交差するように配置されている。本実施形態では、情報表示装置70は、自動二輪車1の左右方向中央部分に、すなわち情報表示装置70の左右方向中央が自動二輪車1の左右方向中央仮想線VCLと略一致するように配置されている。
【0039】
自動二輪車1は、情報表示装置70を支持する情報表示装置支持部材80を備える。
【0040】
情報表示装置支持部材80は、車体フレーム10のヘッドパイプ11に固定されている。したがって、自動二輪車1の運転者がハンドル41を回動させても、情報表示装置支持部材80は、ハンドル41とは連動せず、車体フレーム10に対して変位しない。
【0041】
情報表示装置支持部材80は、車体フレーム10のヘッドパイプ11と連結してヘッドパイプ11の前方に延出する連結部81と、連結部81から上方及び左右方向に延出し、車体フレーム10のヘッドパイプ11よりも前方で上下方向及び左右方向に延在する延在部82と、上下方向及び左右方向に延在する延在部82の上縁部から後方に屈曲して上方に延出し、上方に向かって後方に傾斜して上下方向及び左右方向に延在する支持部83と、を有する。
【0042】
延在部82は、ハンドル41よりも前方で上下方向及び左右方向に延在して後方を向く後面82aを有する。支持部83は、上方に向かって後方に傾斜して上下方向及び左右方向に延在して後方上向きの支持面83aを有する。
【0043】
情報表示装置70は、情報表示面71が前後方向において後方を向くように、情報表示装置支持部材80に取り付けられる。本実施形態では、情報表示装置70は、情報表示面71が後方上向きとなるように、情報表示装置支持部材80の支持部83の支持面83aに固定されている。
【0044】
延在部82には、左方向及び右方向に突出する突出部821が左右一対形成されている。左右の突出部821には、それぞれフロントカウル60の左側部60b及び右側部60cが連結されている。したがって、フロントカウル60は、車体フレーム10及び燃料タンク22に加えて、情報表示装置支持部材80にも支持されている。
【0045】
自動二輪車1は、蓄電ユニット24に蓄電された電力を外部機器に供給可能な電力供給ユニット90を備える。電力供給ユニット90は、蓄電ユニット24に蓄電された電力を、所定の電圧及び電流に変換して、外部機器に供給する。外部機器は、一例として、スマートフォン等の携帯通信端末や加熱式たばこ等の電子機器が挙げられるが、任意の外部機器であってよい。
【0046】
図5に示すように、電力供給ユニット90は、略直方体形状を有するメインユニット91と、略直方体形状のメインユニット91の任意の一面であるコネクタ設置部形成面91aに形成されたコネクタ設置部92と、メインユニット91のコネクタ設置部形成面91aとは異なる任意の一面に形成された受電部93と、を有する。本実施形態では、受電部93は、メインユニット91のコネクタ設置部形成面91aと対向する面に形成されている。
【0047】
受電部93には、蓄電ユニット24と電気的に接続するハーネス等の配線部材が接続され、蓄電ユニット24に蓄電された電力が電力供給ユニット90に供給される。メインユニット91には、外部機器への電力供給制御を行う不図示の制御IC(Integrated Circuit)、及び、蓄電ユニット24から供給された電力を所定の電圧及び電流に変換する不図示の電力変換装置が内蔵されている。
【0048】
コネクタ設置部92には、コネクタ92aが設けられる。コネクタ設置部92は、コネクタ設置部形成面91aにおいてメインユニット91からフランジ状に延出する台座部92bを有する。コネクタ92aは、台座部92bに形成され、台座部92bに対して垂直な方向に電力供給ユニット90の外側を向いている。
【0049】
本実施形態では、コネクタ92aは、USB(Universal Serial Bus) Type-C形状のレセプタクルである。なお、コネクタ92aの形状は限定されず任意の形状を有していてよく、コネクタ92aは、例えば、Lightning(登録商標)コネクタ形状のレセプタクルであってもよいし、家庭用又は業務用の電気機器の電力線に設けられる差込プラグが差込可能なコンセントであってもよい。
【0050】
コネクタ設置部92は、コネクタ92aを取り囲むように台座部92bから電力供給ユニット90の外側に突出した嵌合部92cと、を有する。
【0051】
電力供給ユニット90は、コネクタ92a及び嵌合部92cを覆うことができるカバー部材94を備える。コネクタ92aに外部機器が接続されていないとき、カバー部材94は、コネクタ設置部92に係止されてコネクタ92a及び嵌合部92cを覆っている。そして、コネクタ92aに外部機器が接続する際には、カバー部材94のコネクタ設置部92との係止を全部又は一部解除して、コネクタ92a及び嵌合部92cを露出させる。
【0052】
蓄電ユニット24に蓄電された電力を電力供給ユニット90から外部機器に供給する場合、例えば、外部機器をUSB Type-C形状の差込プラグを有する配線部材に接続し、当該配線部材の差込プラグを嵌合部92cに嵌合してコネクタ92aに差し込むことによって、当該配線部材を介して外部機器を電力供給ユニット90に電気的に接続する。これにより、蓄電ユニット24に蓄電された電力を電力供給ユニット90から外部機器に供給可能となる。
【0053】
図3及び
図4に示すように、電力供給ユニット90は、情報表示装置支持部材80の延在部82に支持されている。情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aには、前方に窪んだ凹部82bと、凹部82bの右側に隣接して後方に突出した凸部82cと、が形成されている。
【0054】
凹部82bは、右端部が自動二輪車1の左右方向中央仮想線VCLの近傍に位置し、左側に向かうにしたがって前方への窪み深さが浅くなるように形成されている。凹部82bは、底壁部82b1と、上壁部82b2と、下壁部82b3と、を有する。底壁部82b1は、左端部で後面82aが前方に屈曲し、右側に向かって前方に傾斜して上下方向及び左右方向に延在する。上壁部82b2は、後面82aが前方に屈曲して前後方向及び左右方向に延在し、底壁部82b1の上端部に接続している。下壁部82b3は、上壁部82b2よりも下方で上壁部82b2と対向しており、後面82aが前方に屈曲して前後方向及び左右方向に延在し、底壁部82b1の下端部に接続している。
【0055】
凸部82cは、左端部が自動二輪車1の左右方向中央仮想線VCLの近傍に位置し、右側に向かうにしたがって後方への突出高さが低くなるように形成されている。凸部82cは、凸壁部82c1と、上壁部82c2と、下壁部82c3と、を有する。凸壁部82c1は、右端部で後面82aが後方に屈曲し、左側に向かって後方に傾斜して上下方向及び左右方向に延在する。上壁部82b2は、後面82aが後方に屈曲して前後方向及び左右方向に延在し、凸壁部82c1の上端部に接続している。下壁部82c3は、上壁部82c2よりも下方で上壁部82c2と対向しており、後面82aが後方に屈曲して前後方向及び左右方向に延在し、凸壁部82c1の下端部に接続している。
【0056】
情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aには、凸壁部82c1の左端部から前方に屈曲して上下方向及び前後方向に延在し、底壁部82b1の右端部に接続している段差部82dが形成されている。段差部82dは、凸壁部82c1の左端部から前方に屈曲して上壁部82c2の左端部と下壁部82c3の左端部とを接続し、さらに、上壁部82b2の右端部と下壁部82b3の右端部とを接続する。
【0057】
情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aには、電力供給ユニット90のメインユニット91及び受電部93が挿通可能で電力供給ユニット90のコネクタ設置部92が挿通不可能な挿通孔82eが設けられている。挿通孔82eは、後面82aに形成された段差部82dに設けられている。
【0058】
電力供給ユニット90は、左後方からメインユニット91及び受電部93を挿通孔82eに挿通して情報表示装置支持部材80の延在部82に取り付けられる。そして、電力供給ユニット90は、メインユニット91及び受電部93が情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aから右側に向かって前方に突出し、コネクタ設置部92が情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aから左側に向かって後方に突出して、情報表示装置支持部材80の延在部82に固定される。
【0059】
したがって、コネクタ設置部92は、情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aに配置され、情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aから後方に露出している。さらに、コネクタ設置部92は、段差部82dから左側に向かって後面82aの後方に露出しており、台座部92bに対して垂直な方向に電力供給ユニット90の外側を向くコネクタ92aは、左側を向いている。本明細書等において、コネクタ92aが左側を向いているとは、コネクタ92aが左右方向と平行に左側を向いている状態に限らず、左右方向に対する傾斜角が前後方向及び/又は上下方向に0[度]から45[度]の範囲内でコネクタ92aが左側を向いている状態をいう。
【0060】
このように、電力供給ユニット90は、ハンドル41とは連動しない情報表示装置支持部材80に支持されており、情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aに配置されるコネクタ設置部92は、ハンドル41よりも前方に位置し、コネクタ92aは、左右方向を向いている。これにより、自動二輪車1の運転者がハンドル41を操作しても、コネクタ92aはハンドル41と連動せず、さらに、コネクタ92aに接続する配線部材等はハンドル41の前方でコネクタ92aから左右方向に延出するので、自動二輪車1の運転者がハンドル41を操作したときに、コネクタ92aに接続される配線部材等が、ハンドル41やその他の自動二輪車1の部材と当接したり干渉したりすることを抑制できる。また、コネクタ設置部92は、ハンドル41よりも前方で後方を向く情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aに配置され、情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aから後方に露出している。これにより、コネクタ設置部92及びコネクタ92aは、自動二輪車1に乗車した状態の運転者から視認しやすい位置に配置されるので、自動二輪車1の運転者が、乗車した状態で容易にコネクタ92aに配線部材等を接続することができる。したがって、コネクタ92aに接続される配線部材等が、ハンドル41やその他の自動二輪車1の部材と当接したり干渉したりすることを抑制しレイアウトの制限を少なくしつつ、自動二輪車1に乗車した状態の運転者から視認しやすい位置にコネクタ92aを配置できる。
【0061】
さらに、コネクタ92aは、左側を向いているので、左方からコネクタ92aに配線部材等を接続する。このように、前輪FWを制動するブレーキレバー46がハンドル41の右側部分に設けられているのに対し、コネクタ92aは、左側を向いているので、自動二輪車1に乗車した状態の運転者は、右手でブレーキレバー46を操作しながら、左手で左方から配線部材等をコネクタ92aに容易に接続することができる。これにより、自動二輪車1に乗車した状態の運転者は、右手でブレーキレバー46を操作して自動二輪車1が前進しない状態を維持し、安全な状態で、左手で配線部材等をコネクタ92aに接続することが容易となる。
【0062】
また、情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aから後方に露出するコネクタ設置部92は、左右方向において情報表示装置70と重なる位置に配置されている。
【0063】
これにより、自動二輪車1に乗車した状態の運転者から視認しやすく、且つ、配線部材等を接続しやすい位置にコネクタ92aを配置できる。
【0064】
さらに、本実施形態では、段差部82dは、自動二輪車1の左右方向中央仮想線VCLの近傍に形成されており、情報表示装置支持部材80の延在部82の後面82aから後方に露出するコネクタ設置部92は、左右方向において、自動二輪車1の左右方向中央仮想線VCLと交差する位置に配置されている。
【0065】
これにより、自動二輪車1に乗車した状態の運転者からより視認しやすく、且つ、配線部材等をより接続しやすい位置にコネクタ92aを配置できる。
【0066】
また、電力供給ユニット90は、情報表示装置支持部材80において支持部83よりも下方に位置する延在部82に取り付けられており、コネクタ設置部92は、情報表示装置70よりも下方に配置されている。
【0067】
これにより、コネクタ92aに接続される配線部材を情報表示装置70よりも下方に配索させることができるので、自動二輪車1に乗車した状態の運転者からの情報表示装置70の視認性を妨げることなく、電力供給ユニット90を設けることができる。さらに、コネクタ設置部92の上方は、情報表示装置70によって保護されるので、雨や砂塵等が上方からコネクタ92aに侵入することを抑制できる。
【0068】
また、コネクタ設置部92は、上下方向において、段差部82dから左側に向かって後面82aの後方に露出している。すなわち、コネクタ設置部92は、上下方向において凹部82bの上壁部82b2と下壁部82b3との間に配置され、段差部82dから凹部82bに向かって露出している。そして、コネクタ設置部92は、少なくとも一部が上下方向から見て凹部82bの上壁部82b2及び下壁部82b3と重なる位置に配置されている。
【0069】
したがって、自動二輪車1に乗車した状態の運転者は、凹部82bの位置を視認することで、コネクタ92aの概略位置を認識できるので、コネクタ92aの位置の把握が容易となる。さらに、コネクタ設置部92は、上下方向において凹部82bの上壁部82b2と下壁部82b3との間に配置され、少なくとも一部が上下方向から見て凹部82bの上壁部82b2及び下壁部82b3と重なる位置に配置されているので、少なくとも一部が上壁部82b2と下壁部82b3とによって囲まれた領域に配置される。これにより、コネクタ設置部92の上方及び下方は、凹部82bの上壁部82b2及び下壁部82b3によって保護されるので、コネクタ92aを上方及び下方の障害物等から保護できる。
【0070】
本実施形態では、段差部82dは、下方に向かって右側に傾斜している。そして、台座部92bに対して垂直な方向に電力供給ユニット90の外側を向くコネクタ92aは、自動二輪車1の直立状態において、左右方向に対して下方へ所定角度傾斜して、左側を向いている。すなわち、コネクタ92aは、自動二輪車1の直立状態において、左下方を向いている。所定角度は、例えば、3[度]から10[度]の任意の角度である。
【0071】
このように、コネクタ92aは、自動二輪車1の直立状態において、左右方向に対して下方へ所定角度傾斜しているので、降雨時における雨等によってコネクタ92aが被水することを抑制できる。
【0072】
さらに、本実施形態では、段差部82dは、前方に向かって左側に傾斜している。そして、台座部92bに対して垂直な方向に電力供給ユニット90の外側を向くコネクタ92aは、自動二輪車1の直立状態において、車両前後方向に後方側へ所定角度傾斜して、左側を向いている。すなわち、コネクタ92aは、自動二輪車1の直立状態において、左後方を向いている。所定角度は、例えば、10[度]から30[度]の任意の角度である。
【0073】
このように、コネクタ92aは、自動二輪車1の直立状態において、車両前後方向に後方側へ所定角度傾斜している、すなわち、自動二輪車1に運転者が乗車した状態において、左右方向に対して運転者に向かって所定角度傾斜しているので、自動二輪車1に乗車した状態の運転者がコネクタ92aに配線部材等を接続する作業が容易となる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0075】
例えば、本実施形態では、コネクタ92aは、左側を向いているものとしたが、コネクタ92aは、右側を向いていてもよい。このとき、コネクタ92aが右側を向いているとは、コネクタ92aが左右方向と平行に右側を向いている状態に限らず、左右方向に対する傾斜角が前後方向及び/又は上下方向に0[度]から45[度]の範囲内でコネクタ92aが右側を向いている状態をいう。
【0076】
また、例えば、本実施形態では、自動二輪車1は、蓄電ユニット24に蓄電された電力を外部機器に供給可能な電力供給ユニット90を備えるものとしたが、自動二輪車1は、電力供給ユニット90に代えて、外部機器にエネルギを供給可能なエネルギ供給ユニットを備えていてもよい。エネルギ供給ユニットは、外部機器に電力以外の任意のエネルギを供給可能であってよく、例えば、外部機器に水素を供給可能であってもよい。
【0077】
また、例えば、本実施形態では、自動二輪車1は、エンジンを有するパワーユニット21と、ガソリンや軽油等の燃料が貯留される燃料タンク22と、を備え、燃料タンク22に貯留された燃料によってエンジンが発生する動力で後輪RWが駆動するものとしたが、自動二輪車1は、エンジンを有するパワーユニット21及び燃料タンク22に代えて、駆動用モータを有するパワーユニットと、駆動用モータに供給される電力を蓄電可能な駆動用バッテリを備え、駆動用バッテリに蓄電された電力によって駆動モータが発生する動力で前輪FW及び/又は後輪RWが駆動するものであってもよい。この場合、自動二輪車1は、蓄電ユニット24が省略され、電力供給ユニット90は駆動用バッテリに蓄電された電力を外部機器に供給可能であってもよい。
【0078】
また、例えば、本実施形態では、本発明の鞍乗型車両として自動二輪車について説明したが、鞍乗型車両は、自動二輪車に限らず、鞍乗型の自動三輪車や自動四輪車、いわゆるバギーであってもよい。
【0079】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0080】
(1) 前輪(前輪FW)及び後輪(後輪RW)と、
左右方向に延在し、前記前輪を転舵する回動自在なハンドル(ハンドル41)と、
情報表示面(情報表示面71)を有する情報表示装置(情報表示装置70)と、
前記情報表示装置を支持する情報表示装置支持部材(情報表示装置支持部材80)と、
外部機器にエネルギを供給可能なエネルギ供給ユニット(電力供給ユニット90)と、を備える鞍乗型車両(自動二輪車1)であって、
前記情報表示装置の前記情報表示面は、前記鞍乗型車両の状態に関する情報を表示し、
前記情報表示装置は、前記情報表示面が前後方向において前後方向一方側の第1方向(後方向)を向くようにして、前記ハンドルよりも前方に配置されており、
前記情報表示装置支持部材は、前記ハンドルとは連動せず、前記ハンドルよりも前方で前後方向において前記第1方向を向く第1面(後面82a)を有し、
前記エネルギ供給ユニットは、前記情報表示装置支持部材に支持され、且つ、前記外部機器と接続するコネクタ(コネクタ92a)が設けられたコネクタ設置部(コネクタ設置部92)を有し、
前記コネクタ設置部は、前記情報表示装置支持部材の前記第1面に配置され、前記情報表示装置支持部材の前記第1面から前記第1方向側に露出しており、
前記コネクタは、左右方向を向いている、鞍乗型車両。
【0081】
(1)によれば、鞍乗型車両の運転者がハンドルを操作しても、コネクタはハンドルと連動せず、さらに、コネクタに接続する配線部材等はハンドルの前方でコネクタから左右方向に延出するので、自動二輪車の運転者がハンドルを操作したときに、コネクタに接続される配線部材等が、ハンドルやその他の鞍乗型車両の部材と当接したり干渉したりすることを抑制できる。また、コネクタ設置部は、ハンドルよりも前方で前後方向において第1方向を向く情報表示装置支持部材の第1面に配置され、情報表示装置支持部材の第1面から後方に露出しているので、コネクタ設置部は、鞍乗型車両に乗車した運転者から視認しやすい位置に配置される。このように、コネクタに接続される配線部材等が、ハンドルやその他の鞍乗型車両の部材と当接したり干渉したりすることを抑制しレイアウトの制限を少なくしつつ、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者から視認しやすい位置にコネクタを配置できる。
【0082】
(2) (1)に記載の鞍乗型車両であって、
前記ハンドルの右側部分には、前記前輪を制動するブレーキレバー(ブレーキレバー46)が設けられており、
前記コネクタは、左側を向いている、鞍乗型車両。
【0083】
(2)によれば、前輪を制動するブレーキレバーがハンドルの右側部分に設けられているのに対し、コネクタは、左側を向いているので、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者は、右手でブレーキレバーを操作しながら、左手で左方から配線部材等をコネクタに容易に接続することができる。これにより、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者は、右手でブレーキレバーを操作して鞍乗型車両が前進しない状態を維持し、安全な状態で、左手で配線部材等をコネクタに接続することが容易となる。
【0084】
(3) (1)又は(2)に記載の鞍乗型車両であって、
前記情報表示装置は、前後方向から見て、前記鞍乗型車両の左右方向の中央を示す左右方向中央仮想線(左右方向中央仮想線VCL)と交差するように配置されており、
前記コネクタ設置部は、左右方向において前記情報表示装置と重なる位置に配置されている、鞍乗型車両。
【0085】
(3)によれば、情報表示装置は、前後方向から見て、鞍乗型車両の左右方向中央仮想線と交差するように配置されており、コネクタ設置部は、左右方向において情報表示装置と重なる位置に配置されているので、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者から視認しやすく、且つ、配線部材等を接続しやすい位置にコネクタを配置できる。
【0086】
(4) (3)に記載の鞍乗型車両であって、
前記コネクタ設置部は、左右方向において前記左右方向中央仮想線と交差する位置に配置されている、鞍乗型車両。
【0087】
(4)によれば、コネクタ設置部は、左右方向において左右方向中央仮想線と交差する位置に配置されているので、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者からより視認しやすく、且つ、配線部材等をより接続しやすい位置にコネクタを配置できる。
【0088】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、
前記コネクタ設置部は、前記情報表示装置よりも下方に配置されている、鞍乗型車両。
【0089】
(5)によれば、コネクタ設置部は、情報表示装置よりも下方に配置されているので、コネクタに接続される配線部材を情報表示装置よりも下方に配索させることができる。これにより、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者からの情報表示装置の視認性を妨げることなく、電力供給ユニットを設けることができる。さらに、コネクタ設置部の上方は、情報表示装置によって保護されるので、雨や砂塵等が上方からコネクタに侵入することを抑制できる。
【0090】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、
前記情報表示装置支持部材の前記第1面には、前後方向他方側の第2方向に窪んだ凹部(凹部82b)が形成されており、
前記凹部は、前記第1面が前記第2方向に屈曲して前後方向及び左右方向に延在する上壁部(上壁部82b2)と、前記上壁部よりも下方で前記第1面が前記第2方向に屈曲して前後方向及び左右方向に延在する下壁部(下壁部82b3)と、を有し、
前記コネクタ設置部は、上下方向において前記上壁部と前記下壁部との間に配置され、少なくとも一部が前記第1面から前記凹部に向かって露出しており、少なくとも一部が上下方向から見て前記上壁部及び前記下壁部と重なる位置に配置されている、鞍乗型車両。
【0091】
(6)によれば、コネクタ設置部は、上下方向において凹部の上壁部と下壁部との間に配置され、少なくとも一部が第1面から凹部に向かって露出している。これにより、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者は、凹部の位置を視認することで、コネクタの概略位置を認識できるので、コネクタの位置の把握が容易となる。
さらに、コネクタ設置部は、上下方向において凹部の上壁部と下壁部との間に配置され、少なくとも一部が上下方向から見て凹部の上壁部及び下壁部と重なる位置に配置されている。したがって、少なくとも一部が上壁部と下壁部とによって囲まれた領域に配置される。これにより、コネクタ設置部の上方及び下方は、凹部の上壁部及び下壁部によって保護されるので、コネクタを上方及び下方の障害物等から保護できる。
【0092】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、
前記コネクタは、前記鞍乗型車両の直立状態において、左右方向に対して下方へ所定角度傾斜して、左右方向を向いている、鞍乗型車両。
【0093】
(7)によれば、コネクタは、鞍乗型車両の直立状態において、左右方向に対して下方へ所定角度傾斜しているので、降雨時における雨等によってコネクタが被水することを抑制できる。
【0094】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の鞍乗型車両であって、
前記コネクタは、前記鞍乗型車両の直立状態において、車両前後方向に前記第1方向側へ所定角度傾斜して、左右方向を向いている、鞍乗型車両。
【0095】
(8)によれば、コネクタは、鞍乗型車両の直立状態において、車両前後方向に第1方向側へ所定角度傾斜しているので、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者がコネクタに配線部材等を接続する作業が容易となる。
【0096】
(9) 前輪(前輪FW)を転舵するハンドル(ハンドル41)と、
外部機器にエネルギを供給可能なコネクタ(コネクタ92a)と、
前記コネクタを支持するコネクタ支持部材(情報表示装置支持部材80)と、を備える鞍乗型車両(自動二輪車1)であって、
前記コネクタ支持部材は、
前記ハンドルとは連動せず、且つ、前記ハンドルよりも前方に配置されており、
車両後方を向く第1面(後面82a)を有し、
前記コネクタは、前記第1面に、車両左右方向又は左右方向斜め後方を向いて配置される、鞍乗型車両。
【0097】
(9)によれば、鞍乗型車両の運転者がハンドルを操作しても、コネクタはハンドルと連動せず、さらに、コネクタに接続する配線部材等はハンドルの前方でコネクタから左右方向に延出するので、自動二輪車の運転者がハンドルを操作したときに、コネクタに接続される配線部材等が、ハンドルやその他の鞍乗型車両の部材と当接したり干渉したりすることを抑制できる。また、コネクタは、車両後方を向く第1面に、車両左右方向又は左右方向斜め後方を向いて配置されるので、コネクタは、鞍乗型車両に乗車した運転者から視認しやすい位置に配置される。このように、コネクタに接続される配線部材等が、ハンドルやその他の鞍乗型車両の部材と当接したり干渉したりすることを抑制しレイアウトの制限を少なくしつつ、鞍乗型車両に乗車した状態の運転者から視認しやすい位置にコネクタを配置できる。
【符号の説明】
【0098】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
41 ハンドル
46 ブレーキレバー
70 情報表示装置
71 情報表示面
80 情報表示装置支持部材(コネクタ支持部材)
82a 後面(第1面)
82b 凹部
82b2 上壁部
82b3 下壁部
90 電力供給ユニット(エネルギ供給ユニット)
92 コネクタ設置部
92a コネクタ
FW 前輪
RW 後輪
VCL 左右方向中央仮想線