(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】交流電場を用いたウイルス感染の抑制
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
A61N1/32
(21)【出願番号】P 2021500622
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 IB2019055852
(87)【国際公開番号】W WO2020012364
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-08-26
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノア・カイナン
(72)【発明者】
【氏名】タリ・ボロシン-セラ
(72)【発明者】
【氏名】モシェ・ギラディ
(72)【発明者】
【氏名】エイロン・ディー・キルソン
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0266283(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0281934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制する方法であって、
前記対象領域に期間にわたって交流電場を印加するステップを備え、前記交流電場が周波数及び電場強度を有し、前記対象領域に期間にわたって交流電場を印加している際に前記交流電場が前記対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制
し、
前記交流電場が25kHzから1MHzの間の周波数を有し、
前記交流電場が1V/cm RMSから5V/cm RMSの間の電場強度を有し、
前記期間が2日間から14日間の間である、方法。
【請求項2】
対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制する方法であって、
前記対象領域に期間にわたって交流電場を印加するステップを備え、前記交流電場が周波数及び電場強度を有し、前記対象領域に期間にわたって交流電場を印加している際に前記交流電場が前記対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制し、
前記交流電場が25kHzから1MHzの間の周波数を有し、
前記交流電場が1V/cm RMSから5V/cm RMSの間の電場強度を有し、
前記期間が1時間から48時間の間である、方法。
【請求項3】
前記対象領域が生体内の領域であり、前記交流電場が前記生体にとって安全である、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象領域に腫瘍が無い、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象領域に抗ウイルス剤を送達して、前記交流電場を印加するステップが行われている際に治療に有効な量の抗ウイルス剤が前記対象領域に存在しているようにするステップを更に備える請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記交流電場が50kHzから500kHzの間の周波数を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記交流電場が200kHzの周波数を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記交流電場が1.2V/cm RMSの電場強度を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記期間が48時間である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記交流電場が、前記期間中に少なくとも二つの方向の間で繰り返して切り替えられる向きを有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記交流電場の向きが1秒に1回切り替えられる、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記交流電場が、前記期間中に第一方向と第二方向との間で繰り返して切り替えられる向きを有し、前記第一方向が前記第二方向に垂直である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記交流電場が容量結合電極を介して前記対象領域に印加される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、2018年7月10日出願の米国仮出願第62/695925号の優先権を主張し、その全体が参照として本願に組み込まれる。
【0002】
ウイルスは、小型の細胞内偏性寄生体である。ウイルスが含む核酸は、ウイルス複製のために宿主細胞の合成機構をプログラムするのに必要なゲノム情報を含み、これは最も単純なウイルスの場合には防御タンパク質膜である。
【0003】
細胞を感染させるために、ウイルスは、細胞表面に取り付き、細胞内に侵入して、転写又は翻訳のためにそのゲノムをウイルス又は宿主の機構にアクセス可能にするのに十分に脱殻しなければならない。ウイルスの増殖は一般的に細胞の損傷又は死をもたらす。増殖感染は、子孫ウイルスの形成をもたらす。
【0004】
細胞が有糸分裂している際に細胞が特定の周波数範囲の交流電場(AEF,alternating electric field)に晒されると、AEFが有糸分裂過程を乱して、アポトーシスを生じさせることができることが以前から示されている。特許文献1及び特許文献2(各文献はその全体が参照として本願に組み込まれる)に記載されているように、この現象を用いて腫瘍(例えば、膠芽細胞腫、中皮腫等)を治療することができる。腫瘍治療に関して、この交流電場は、TTフィールド(腫瘍治療電場,tumor treating field)と称される。TTフィールド治療が腫瘍治療に適している理由の一つは、TTフィールドは有糸分裂中の細胞分裂を選択的に乱すが、分裂していない細胞には一見して何ら作用しないからである。また、腫瘍細胞は人体中の他の細胞よりもはるかに頻繁に分裂するので、TTフィールドを患者に印加することで、他の細胞を傷付けずに腫瘍細胞を選択的に攻撃する。特許文献3(その全体が参照として本願に組み込まれる)に記載されているように、同じ現象が細菌を破壊するのに有用であることも示されている。この場合も、この手法が細菌を破壊するのに適している理由の一つは、細菌細胞が人体中の他の細胞よりもはるかに高速に分裂するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7016725号明細書
【文献】米国特許第7565205号明細書
【文献】米国特許第9750934号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制する第一方法を対象としている。第一方法は、或る期間にわたって対象領域に交流電場を印加するステップを備え、交流電場は或る周波数及び或る電場強度を有し、その期間にわたって交流電場が対象領域に印加されている際に、交流電場が、対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制する。
【0007】
第一方法の一部例では、対象領域は、生体内の領域であり、交流電場は生体にとって安全なものである。場合によっては、対象領域に腫瘍は無い。
【0008】
第一方法の一部例は、対象領域に抗ウイルス剤を送達して、印加するステップが行われている間に治療に有効な量の抗ウイルス剤が対象領域に存在するようにするステップを更に備える。
【0009】
第一方法の一部例では、交流電場は50kHzから500kHzの間の周波数を有する。第一方法の一部例では、交流電場は25kHzから1MHzの間の周波数を有する。第一方法の一部例では、交流電場は略200kHzの周波数を有する。
【0010】
第一方法の一部例では、交流電場は、1V/cm RMS(二乗平均平方根)から5V/cm RMSの間の電場強度を有する。第一方法の一部例では、交流電場は、略1.2V/cm RMSの電場強度を有する。
【0011】
第一方法の一部例では、期間は1時間から48時間の間である。第一方法の一部例では、期間は2日間から14日間の間である。第一方法の一部例では、期間は略48時間である。
【0012】
第一方法の一部例では、交流電場は、期間中に少なくとも二つの方向の間で繰り返して切り替えられる向きを有する。場合によっては、交流電場の向きは略1秒に1回切り替えられる。
【0013】
第一方法の一部例では、交流電場は、期間中に第一方向と第二方向との間で繰り返して切り替えられる向きを有し、第一方向は第二方向に略垂直である。
【0014】
第一方法の一部例では、交流電場は、容量結合電極を介して対象領域に印加される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】二つのin vitro(インビトロ、生体外)実験で用いられた皿の概略図である。
【
図2】本開示の態様な実施形態において電極にAC(交流)電圧を印加するのに用いられるAC電圧発生器の概略図である。
【
図3】第一実験について対照に対する相対的感染効率を示す。
【
図4】第二実験について対照に対する相対的感染効率を示す。
【
図5】
図5A、
図5Bはそれぞれ例示的な実施形態における被験体の身体上の電極の位置決めについての正面図、背面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して多様な実施形態を説明するが、図面中において同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0017】
本発明者は、驚くべきことに、交流電場がウイルス感染を抑制するためにも使用可能であることを示したものである。この結果は、AEFは有糸分裂中の細胞分裂を乱すことに関して論じられてきたものであるので、驚くべきものである。しかしながら、腫瘍細胞や細菌とは異なり、ウイルスは有糸分裂によって複製するものではない。
【0018】
以下、AEFがウイルス感染を抑制することができることを実証している二つのin vitro実験を説明する。これらの実験では、サーモフィッシャーサイエンティフィック社から入手したHEK293FTヒト胎児腎臓細胞のレンチウイルス感染を測定するためにノボキュア(登録商標)社のInovitro(登録商標)試験装置を用いた。
【0019】
Inovitro(登録商標)試験装置は、8個の皿状の容器を含み、各容器は培養物を保持するための形状及び寸法にされていて、
図1がこれらの皿のうち一つを代表する概略図である。各皿30はセラミック側壁31と底部パネル32を含み、これらが共に皿を形成する。複数の電極41~44が、培養物が容器内に配置された際に複数の電極41~44間の電圧の印加が培養物を介する電場を誘起する位置においてセラミック側壁31の外面上に配置される。より具体的には、(a)電極41と電極42との間のAC電圧の印加が第一方向で培養物を介する交流電場を誘起し、(b)電極43と電極44との間のAC電圧の印加が第二方向で培養物を介する交流電場を誘起する。
図1の実施形態では、セラミック側壁上の電極41~44の配置位置に起因して、第二方向は第一方向に垂直である。電極の一方の組(例えば、電極41と電極42)が小さな角度(例えば、10°未満)でずれていると、第二方向が第一方向に略垂直となることに留意されたい。
【0020】
次に、
図2を参照すると、AC電圧発生器20が、第一電極対41、42及び第二電極対43、44に印加される信号を発生させる。AC電圧発生器20は、第一電極対41、42の間に選択周波数でAC電圧を1秒間にわたって印加し、次いで、第二電極対43、44の間に同じ周波数でAC電圧を1秒間にわたって印加し、これら二つのステップの流れを実験期間にわたって繰り返す。装置は熱センサ(図示せず)も含み、AC電圧発生器20は、皿30の検知温度が高くなり過ぎると、電極に印加されているAC電圧の振幅を減少させる。
【0021】
第一実験では、緑色蛍光タンパク質(GFP,green fluorescent protein)をコードするレンチウイルスに腎臓細胞を晒した。この実験では、ダーマコン(登録商標)社のトランスレンチウイルスパッケージングキットをリン酸カルシウムトランスフェクション試薬TLP5916とプレシジョンレンチORF REPコントロールDNA OHS5832と共に用いた。感染の多重度は5であり、200kHzのAEFを1.2V/cm RMSの電場強度で培養物に48時間にわたって印加した。AEFの方向を上述のように1秒毎に切り替えた。対照実験は、AEFを印加しないこと以外は全く同じ条件にした。48時間後に、GFPの存在に基づいて感染細胞を特定した(つまり、GFPの存在が、細胞が感染したこと意味する)。感染効率を、フローサイトメトリー分析によって、ウイルスにコードされたGFPを表す細胞の%として測定した。AEF処理培養物中の感染細胞の割合は30%であり、対照培養物中の感染細胞の割合は47%であった。次いで、(対照に対する)相対的感染効率を計算した。結果は
図3に示されていて、200kHzのAEFについて、相対的感染レベルは、対照細胞(100±5.4%、p<0.01、スチューデントのt検定)と比較して64±0.5%であった。
【0022】
48時間後の観察で、AEF処理培養物と対照の両方について実験中に細胞が分裂していたことと、AEF処理細胞と対照との間において細胞の総数に対する顕著な影響がないことが明らかとなった。このことについて考えられる一つの説明は、AEFが27℃以上で印加可能であって、比較的短い(48時間)処理期間と低電場高度を組み合わせて用いたからである。
【0023】
第二のin vitro実験は、第一実験で用いた200kHzのAEFの代わりに100kHzのAEFを用いた点を除いては全て第一実験と同じであった。第二実験の結果は以下の通りである。AEF処理培養物中の感染細胞の割合は51%であり、対照培養物中の感染細胞の割合は64%であった。次いで、(対照に対する)相対的感染効率を計算した。結果は
図4に示されていて、100kHzのAEFについて、相対的感染レベルは、対照細胞(100±3.7%、p<0.01 p<0.0005、スチューデントのt検定)と比較して80±2%であった。
【0024】
上記二つのin vitro実験では、AEFの周波数は100kHz又は200kHzであった。しかしながら、代替実施形態では、AEFの周波数は50kHzから500kHzの間の他の周波数となり得る。他の実施形態では、AEFの周波数は25kHzから1MHzの間の他の周波数となり得る。他の実施形態では、AEFの周波数は1MHzから10MHzの間の他の周波数となり得る。更に他の実施形態では、AEFの周波数は10MHzから100MHzの間の他の周波数となり得る。最適な周波数は、使用目的に応じて、所与の種類の宿主細胞と、宿主細胞を感染させている又は感染させたい所与の種類のウイルスとの組み合わせに対してそれぞれ実験的に決定され得る。好ましくは、選択された周波数が対象領域に悪影響を与えるような加熱を生じさせないように注意する。
【0025】
上記二つのin vitro実験では、AEFの電場強度は1.2V/cm RMSであった。しかしながら、代替実施形態では、異なる電場強度を使用し得て、例えば、0.2V/cm RMSから1V/cm RMSの間、1V/cm RMSから5V/cm RMSの間、又は、5V/cm RMSから25V/cm RMSの間となり得る。最適な電場強度は、使用目的に応じて、所与の種類の宿主細胞と、宿主細胞を感染させている又は感染させたい所与の種類のウイルスとの組み合わせに対してそれぞれ実験的に決定され得る。
【0026】
上記二つのin vitro実験では、AEFを48時間にわたって印加した。しかしながら、代替実施形態では、異なる期間を使用し得て、例えば、1時間から48時間の間や、2日間から14日間の間となり得る。一部実施形態では、AEFの印加が周期的に繰り返され得る。例えば、AEFが毎日2時間の期間にわたって印加され得る。
【0027】
上記二つのin vitro実験では、AEFの方向は、二つの直交する方向の間で1秒間隔で切り替えられた。しかしながら、代替実施形態では、AEFの方向をより高速(例えば、1msから1000msの間の間隔)又はより低速(例えば、1秒から100秒の間の間隔)で切り替え得る。
【0028】
上記二つのin vitro実験では、2D(2次元)空間内で互いに90°離した二つの電極対に交互の順でAC電圧を印加することによって、AEFの方向が二つの直交する方向の間で切り替えられた。しかしながら、代替実施形態では、電極対を再配置することによって直交しない二つの方向の間や、(追加の電極対が設けられるものとして)三つ以上の方向の間でAEFの方向が切り替えられ得る。例えば、AEFの方向が三方向の間で切り替えられ得て、各方向は各電極対の配置位置によって決められる。任意選択的に、三つの電極対は、結果としての電場が3D(3次元)空間内で互いに90°離れるようにして配置され得る。他の実施形態では、電極を対で配置する必要が無くなり得る。例えば、特許文献2(参照として本願に組み込まれる)に記載の電極配置を参照されたい。他の代替実施形態では、電場の方向を切り替える必要が全く無くなり得て、この場合、第二電極対43、44(
図1参照)を省くことができる。
【0029】
上記二つのin vitro実験では、導電性の電極41~44がセラミック側壁31の外面に配置され、側壁31のセラミック材が誘電体として機能するので、電場が培養物に容量結合されていた。しかしながら、代替実施形態では、電場を容量結合無しで培養物に直接印加することができる(例えば、
図1に示される構成を変更して、導電性の電極が側壁の外面の代わりに側壁の内面に配置されるようにすることによって)。
【0030】
上記二つのin vitro実験では、HEK293FTヒト胎児腎臓細胞を皿30(
図1参照)内の対象領域に配置し、細胞を感染させるのにレンチウイルスを使用し、対象領域に交流電場を印加することで、対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制した。代替実施形態では、異なる種類の細胞及び/又は異なる種類のウイルスが使用され得る。
【0031】
これらの結果は、生体である被験体の対象領域にAEFを印加することでin vivo(インビボ,生体内)に関しても適用可能である。対象領域に交流電場を印加することが、その対象領域内の細胞がウイルスに感染することを抑制する。このことは、被験体の皮膚上又は皮下に電極を配置して、選択された電極の組の間のAC電圧の印加が被験体の身体の対象領域に電場を印加するようにすることによって達成可能である。例えば、問題となっているウイルスが典型的には肺に定着する場合、
図5A及び
図5Bに示されるように電極51~54が配置され得る。一部実施形態では、電極が被験体の身体に容量結合される(例えば、導電板と、その導電板と被験体の身体との間に位置する誘電体層とを含む電極を用いることによって)。しかしながら、代替実施形態では、誘電体層が省かれ得て、この場合、導電板が被験体の身体と直接接触するようになる。
【0032】
AC電圧発生器20(
図2参照)が、第一電極対51、52の間に選択周波数(例えば、200kHz)でAC電圧を第一期間(例えば、1秒間)にわたって印加し、電気力線の主成分が被験体の身体の横軸に平行となるAEFを誘起する。次いで、AC電圧発生器20が、第二電極対53、54の間に同じ周波数(又は異なる周波数)でAC電圧を第二期間(例えば、1秒間)にわたって印加し、電気力線の主成分が被験体の身体の矢状軸に平行となるAEFを誘起する。次いで、この二段階の方法を処置期間にわたって繰り返す。任意選択的に、熱センサ(図示せず)が電極に含まれ得て、AC電圧発生器20が、電極において検知された温度が高くなり過ぎると電極に印加されているAC電圧の振幅を減少させるように構成され得る。一部実施形態では、一対以上の追加の電極対が加えられ、本方法に関与するものとなり得る。例えば、
図5A及び
図5Bに示される追加の電極対55、56が追加され、AC電圧発生器20がこれら二つの電極にAC電圧を印加すると、電気力線の主成分が被験体の身体の縦軸に平行となるAEFを誘起する。このin vivo実施形態のパラメータ(例えば、周波数、電場強度、期間、方向切り替え速度、電極の配置位置)のいずれもin vitro実施形態に関して上述したように変更可能である。しかしながら、交流電場が全ての時点において被験体にとって安全であることを保証するように注意しなければならない。
【0033】
in vivoに関して、AEFは、腫瘍が無い対象領域(例えば、或る人間の肺)に適用され得る。代わりに、AEFは、腫瘍を含む対象領域(例えば、別の人間の肺)に適用され得る。
【0034】
上記実施形態のいずれかにおいて、AEFの印加を対象領域への抗ウイルス剤の送達と組み合わせて、AEFの印加が行われている間に治療に有効な量の抗ウイルス剤が対象領域に存在するようにし得る。
【0035】
AEFはウイルス感染を抑制することができるので、AEFの印加は、新しい細胞の感染による損傷(細胞機能の変更、細胞の死や形質転換)を防止し、ウイルスの増殖と拡散を止め、感染者の健康に関する予期せぬ問題を回避することができる。
【0036】
AEF型の抗ウイルス治療は、感染していない健常な個々人を脅威的な感染から保護するのにも使用され得て、これは、感染者に密に接触する医療スタッフの場合等(特に、ウイルス疾患の急性期において、感染粒子が血液、皮膚病変、唾液等に発見され、直接接触又は間接接触(例えば、小滴やエアロゾルを介する)によって移り得る場合)である。
【0037】
AEF型の抗ウイルス保護は、身体本来の防衛機能を欠いているので極度に日和見感染し易くなっているという免疫系が抑制された個々人(先天性免疫不全、臓器移植、癌等の場合)によっても使用され得る。
【0038】
また、ウイルス感染の抑制は、進行中のウイルス疾患の進行具合にとっても極めて重要なものとなり得る。ヒト免疫不全ウイルス(HIV,human immunodeficiency virus)は、人体内で、特にリンパ節において、長期期間にわたって臨床的に休眠状態にあるが、その期間中にウイルスが存続して複製するというウイルスの一例である。時間と共に、感受性免疫細胞の数は減少して、感染とAIDS(後天性免疫不全症候群,acquired immune deficiency syndrome)が発達する。連続的なウイルス感染サイクルを休止させることで、その拡散を抑え、疾患の進行を防ぐ。
【0039】
更に、AEF型の抗ウイルス治療は、追加の抗ウイルス薬と組み合わせることで更に高い効果を示す可能性がある。
【0040】
本発明は特定の実施形態を参照して開示されているものであるが、特許請求の範囲に定められる本発明の要旨及び範囲から逸脱せずに、開示の実施形態に対する多数の修正、置換、変更が可能なものである。従って、本発明は、開示の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の文言及びその均等物によって定められる完全な範囲を有するものである。
【符号の説明】
【0041】
30 皿
31 セラミック側壁
32 底部パネル
41、42、43、44、51、52、53、54、55、56 電極