(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】体重増加抑制・低減用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20231016BHJP
A61K 31/36 20060101ALI20231016BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231016BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231016BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/36
A61P3/04
A61P43/00 121
A61K31/122
(21)【出願番号】P 2021501504
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2019007879
(87)【国際公開番号】W WO2020174669
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503172770
【氏名又は名称】株式会社えがお
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北野 忠男
(72)【発明者】
【氏名】松本 ▲祥▼幸
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 智
(72)【発明者】
【氏名】木野 正人
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-126411(JP,A)
【文献】特開平04-368326(JP,A)
【文献】JIEREN Yang et al.,Synergistic protectiveeffects of sesamin and vitamin E on myocardial damage in rats with metabolicsyndrome,Zhongyao Yaoli Yu Linchuang,2009年,25(5),pp.40-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミンまたはエピセサミンと、アスタキサンチンとを有効成分として含有し、
健常なヒトに対して用いられることを特徴とする
体重低減用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト(人)の体重の増加を抑制し、又は減少させるために用いられる体重増加抑制・低減用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人は、運動不足とカロリー摂取過多が多く、肥満になり易く減量や痩身に対するニーズが大きい。痩身や減量を確実に行うには、運動とカロリー制限を長期間行う必要がある。例えば絶食すると最初の数日で数キログラム減量できることが知られているが、健康によい方法とは言えない。また、カロリー制限することによって減量することも行われているが、数キログラム減量するには1ヶ月以上必要であり、強い空腹感に堪えなければならず、更に、糖不足に伴う脳や骨格筋を使った作業の質や効率が悪くなるという欠点があるため、継続して行うことが困難であった。そして、多くの場合リバウンドして、元の体重に戻るか、または体重増加になることが多かった。
【0003】
そこで、安全で摂取カロリーの制限なく、ジム等での特別な運動もせずに数週間という短期間でヒトに対して有意に減量効果が出る手段が求められているが、本発明者らが知る限りでは、現在に至るまでそのような科学的信憑性がある報告は見つけることが出来なかった。
【0004】
例えば、体脂肪を低減させるイソフラボン類、脂質や糖の吸収を抑制する食物繊維、腸内フローラの改善による肥満を予防する乳酸菌、また、代謝酵素を補うことで肥満を予防する酢、交感神経を刺激して脂肪分解を促進するカプサイシン等、更にはアミノ酸やペプチドや、低カロリー食品などにおいて、肥満解消効果があるとされる商品がある。
【0005】
また、特許文献1には、セサミン類を経口投与することで成長中のラットの体脂肪率で示される脂肪蓄積が非投与群のラットよりも少なかったことが記載されている。しかし、標準偏差が示されていない上、飼料摂取量はセサミン群の方が少ないので、セサミン自体の効果によるものか不明である。また、4週齢の若い成長過程にあるラットの体脂肪率を減らした効果が示唆されるのみであり、成長したラットや、老年のラットに対する効果は確認されていない。更に、この実験では体重が逆にセサミン群では増加しており、ヒトの体重の減少を示す実験結果は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
痩身に関する売らんが為の怪しげな宣伝や報告が氾濫する中、最も現在求められているものは、科学的信憑性が高く、更にマウスに効いてもヒトには効かないものは少なからず存在するので、マウスなどの実験動物ではなく、実際のヒトに対して短期間に痩身や減量の有意な効果が出る手段が求められている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ヒトの体重の増加を抑制し、減少させる効果に優れた体重増加抑制・減少用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ヘマトコッカス藻抽出物とゴマリグナンを含有する食品の安全性試験で得られたデータを解析した結果、被験者の体重が僅か2週間で有意に低下していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の体重増加抑制・減少用組成物は、ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体と、前記ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体よりも抗酸化力価の高い抗酸化物質とを有効成分として含有し、ヒトに対して用いられることを特徴とする。
【0011】
本発明の体重増加抑制・減少用組成物においては、前記ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が、セサミンまたはエピセサミンであることが好ましい。
【0012】
また、前記ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体よりも抗酸化力価の高い抗酸化物質が、アスタキサンチンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体(以下「DOBO誘導体」と略記する場合がある)は、酸化され易く、保管中にも酸素が存在すると酸化されて変質してしまうので、体内でも活性酸素により酸化変性が起こると考えられる。本発明では、DOBO誘導体よりも酸化され易い抗酸化物質を混合配合することで、DOBO誘導体を変質させることなく体内に摂取することができ、ヒトに対して優れた体重増加抑制・減少効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、DOBO誘導体としては、例えば、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン、2-(3,4-メチレンオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-3,7ジオキシサビシクロ[3.3.0]オクタン、2,6-ビス-(3メトキシフェニル)-3, 7ジオキシサビシクロ[3.3.0]オクタン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4ヒドロキシフェノキシ)-3, 7ジオキシサビシクロ[3.3.0]オクタンなどが挙げられ、本発明では、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの化合物は、配糖体の形であってもよく、また光学活性体であってもよい。
【0015】
また、DOBO誘導体としては、DOBO誘導体を含む原料から抽出された抽出物などを用いることもできる。上記DOBO誘導体を含む原料としては、例えば胡麻油、胡麻粕、胡麻油 製造過程の副産物、胡麻種子、五加皮、桐木、白果樹 皮、ヒハツ、細辛等を挙げることができる。また、DOBO誘導体を含む原料から抽出された抽出物における、DOBO誘導体の含有率は、一般に0.1重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは5.0重量%以上であり、特にセサミンとエピセサミンの含有量の合計が0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上が望ましい。
【0016】
また、DOBO誘導体よりも抗酸化力価の高い抗酸化物質としては、例えば、アスタキサンチン、カロテン、フコキサンチン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスコルビン酸、トコフェロール等が挙げられ、本発明では、これらの1種又は2種以上を用いることができる。特に好ましくは、アスタキサンチンが用いられる。
【0017】
本発明において用いることのできるアスタキサンチンは特に限定されず、天然アスタキサンチンおよび合成アスタキサンチンの少なくともいずれかを用いることができる。天然のアスタキサンチンとしては、例えば、ヘマトコッカスなどの藻類;ファフィアなどの酵母類;エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類;イカ、タコなどの頭足類;種々の魚介類;アドニスなどの植物類;Paracoccus sp.N81106、Brevundimonas sp.SD212、Erythrobacter sp.PC6などのバクテリア類;Gordonia sp.KANMONKAZ-1129などの放線菌;Schizochytriuym sp.KH105などのラビリンチュラ類;アスタキサンチン産生遺伝子組み換え生物体;などから得られるアスタキサンチンを挙げることができ、好ましくはヘマトコッカスなどの微細藻類から抽出されるアスタキサンチン、より好ましくはヘマトコッカス藻から抽出されるアスタキサンチンである。また、合成アスタキサンチンとしては、例えば、AstaSana(DSM社)、Lucantin Pink(登録商標)(BASF社)などを挙げることができる。また、天然由来の他のカロテノイドを化学的に変換して得た合成アスタキサンチンとしては、例えば、AstaMarine(PIVEG社)などを挙げることができる。
【0018】
なお、本発明において、抗酸化力価は、ORAC(oxygen radical absorption capacity assay)やFRAP(ferric reducing antioxidant power)などの方法で測定することができる。例えばDOBO誘導体の1つであるセサミンの抗酸化力価は、0.0012×109M-1s-1である。また、DOBO誘導体よりも抗酸化力価の高い抗酸化物質の1つであるリコピンの抗酸化力は、3.4×109M-1s-1であり、アスタキサンチンの抗酸化力価は、5.4×109M-1s-1である。
【0019】
本発明の体重増加抑制・減少用組成物の有効摂取量は、DOBO誘導体の摂取量として、成人(中学生以上)1日当たり1~1000mg、好ましくは10~500mg、更に好ましくは30~150mgである。また、OBO誘導体よりも抗酸化力価の高い抗酸化物質の摂取量として、成人(中学生以上)1日当たり0.005~500mg、好ましくは0.002~10mg、更に好ましくは1.2~3mgである。なお、小学生以下の子供であれば、上記の半量程度が適当である。
【0020】
本発明の体重増加抑制・減少用組成物の摂取期間は、特に限定されないが、ある程度の効果を得る上で、例えば1週間~12箇月くらいが適用され、好ましくは0.1~3箇月くらいが適用される。また、特に副作用を与えるものではないので、更に長期間にわたって投与することもできる。
【実施例】
【0021】
<試験例1>
下記表1に示す1粒当たりの配合組成からなる、本発明の体重増加抑制・減少用組成物に係る錠剤を作成し、この錠剤を用いて、下記表2に示す試験要領により、20歳から60歳代の男女、合計11名に1日5錠ずつ摂取させて、身体所見の判定、理学検査及び臨床検査の判定を行った。上記錠剤には、セサミンとアスタキサンチンが配合されている。
【0022】
試験は第三者の試験機関にて運営、管理し、研究対象者の選択、検査結果の確認、集計及び統計解析を行った。一般の医療機関にて身体所見の判定、理学検査及び臨床検査の判定、研究対象者の管理、研究実施体制の整備を行った。
【0023】
本試験は安全性の確認試験が目的で行った試験のため、実験者も被験者も痩身や減量を全く意識せずに行われた。表2に示す如く被験者には日常と変わらぬ生活をするよう指導し、日常行っている以外の新たな運動は行わないように制限した。
【0024】
表3に体重と有害事象の結果データを示す。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
表3から対象食品摂取2週目で男性群及び男女合わせた全体でも事前検査と比較して有意に体重が低下した。本試験は最初から痩身のための試験では無かったためサンプル数は11名で適当であるが、女性は性周期があり、男性に比べて便秘し易い女性も被験者に入れていたこともあり、4週目や摂取終了後の男女合わせた全体での有意差(P<0.05)は出無かった。しかし、全体での4週目も摂取終了後2週目も0.05<P<0.1であり事前計測体重よりも減少していることが示唆された。
【0029】
本結果の作用機序は不明であるが、従来の実験においては、セサミンは酸化され易いため、セサミンだけでは短期間でのヒトを用いた実験で有意な差を出すことが困難であったと思われる。今回の実験により、明確なヒト減量効果が得られた理由は、アスタキサンチンは抗酸化力がセサミンよりも大きく、セサミンと配合することで、ヒト体内において活性酸素によりセサミンが酸化する前にアスタキサンチンが酸化されてセサミンの酸化を防止しているためと思われる。考えられる仮説として、セサミン等のDOBO誘導体は脱共役剤として熱産生により基礎代謝を亢進して体重が減少した可能性が考えられる。このDOBO誘導体の効果を充分に発揮させるためにはDOBO誘導体よりも大きな抗酸化力を持った抗酸化剤を混合配合する必要があることが判明した。
<試験例2>
試験例1の表1に示した1粒当たりの配合組成からなる、本発明の体重増加抑制・減少用組成物に係る錠剤を用いて、成人男性12人(年齢20歳以上64歳以下)を被験者にして、1日2粒もしくは5粒を2週間連続摂取させて、体重に与える影響を検討した。
【0030】
その結果、全員が所定のスケジュールを完了し、予定された錠剤の摂取率は全員100%であった。それぞれの被験者の体重を測定し、摂取開始時からの体重の変化量を算出した結果を表4,5に示す。表4は、1日2粒摂取した被験者の結果、表5は、1日5粒摂取した被験者の結果を示す。
【0031】
【0032】
【0033】
上記表4に示されるように、1日2粒摂取群では、摂取開始1週間目、2週間目それぞれで、体重の減少が摂取前と比較して有意であった。また、摂取終了1週目は摂取終了時(摂取開始後2週間目)と比較して体重が増加していたが、有意な変化ではなかった(p = 0.40)。
【0034】
上記表5に示されるように、1日5粒摂取群では、摂取開始1週間目に体重が減少していたが有意な変化ではなかった。また2週間目では摂取前と比較して有意に体重が減少していた。また、摂取終了1週目は摂取終了時(摂取開始2週間目)と比較して体重が増加していたが、有意な変化ではなかった(p = 0.78)。
【0035】
以上の結果から、本発明の体重増加抑制・減少用組成物に係る上記錠剤は、1日2粒もしくは5粒を2週間連続摂取することにより、体重を減少させる効果があると判断された。