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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】効率を向上させた走査磁石設計
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20231016BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H01J37/317 A
H01L21/265 603B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021506729
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019047407
(87)【国際公開番号】W WO2020041408
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】16/106,745
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンヴァーグ,ボ
(72)【発明者】
【氏名】アイズナー,エドワード
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-077049(JP,A)
【文献】特開平07-153406(JP,A)
【文献】特開平04-253149(JP,A)
【文献】特開平03-159044(JP,A)
【文献】特表2018-506134(JP,A)
【文献】特開2006-286342(JP,A)
【文献】米国特許第05393984(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0189913(US,A1)
【文献】Xu Liu et al.,Eddy current analysis and optimization of fast scanning magnet for a proton therapy system,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A,2017年,862,p1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/265
H01F 7/20
H01F 3/02
H05H 3/00-15/00
G21K 1/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを磁気によって走査するための走査磁石であって、
前記走査磁石は、ヨークと、スキャナコイルとを備え、
前記ヨークは、前記ヨーク内に画定されるチャネルを有しており、前記ヨークは、前記チャネルをビーム経路に沿って通過する前記イオンビームの入口を規定する第1面および出口を規定する第2面を有しており、前記ヨークは、前記第1面から前記第2面まで積み重ねられる複数のラミネーションを含み、前記ヨークにおいて、前記第1面および前記第2面と関連する前記複数のラミネーションの少なくとも一部は、1つ以上のスロット付きラミネーションを含み、前記1つ以上のスロット付きラミネーションは、前記チャネルに向かって延びる複数の歯を有しており、複数のスロットは前記複数の歯の間で画定されており、
前記スキャナコイルは、前記ヨークの周りに巻き付けられた第1ワイヤを含み、
前記走査磁石は、前記チャネル内に配置された1つ以上のライナを含み、前記1つ以上のライナは、グラファイトで構成され、前記ヨークおよび前記スキャナコイルを前記イオンビームから隔離し、
前記1つ以上のライナは、当該ライナ内に規定される1つ以上のライナスロットをさらに含み、前記1つ以上のライナスロットは、前記ビーム経路に垂直に延び、前記1つ以上のライナ内の渦電流を低減するようにさらに構成される、走査磁石。
【請求項2】
前記複数の歯は、前記複数のスロットに関連するスロット間隔およびスロット深度を規定し、前記スロット間隔および前記スロット深度は、前記複数の歯を介した前記ヨークからの磁束を、前記イオンビームが通過する領域に向かって導くように構成される、請求項1に記載の走査磁石。
【請求項3】
前記複数のラミネーションは、当該ラミネーション間に配置される絶縁層によって互いに電気的に絶縁され、前記スロット間隔は、前記絶縁層の厚さよりも大きいかまたは前記絶縁層の厚さと等しい、請求項2に記載の走査磁石。
【請求項4】
前記スロット間隔は、前記複数のラミネーションのうちの1つの厚さに等しい、請求項2に記載の走査磁石。
【請求項5】
前記ヨークは、第1半体および第2半体を含み、前記第1半体および第2半体は、互いに鏡像である、請求項1に記載の走査磁石。
【請求項6】
前記複数のスロットを含む前記複数のラミネーションの少なくとも一部は、前記ヨークの1つ以上の磁極エッジに関連する、請求項1に記載の走査磁石。
【請求項7】
前記磁極エッジに関連する前記複数のラミネーションの所定の部分はスロット付きラミネーションを含み、前記複数のラミネーションの残りの部分は前記複数のスロットに関連する平面領域を有する平面ラミネーションを含み、前記平面ラミネーションにおいて、前記平面領域はスロットを含まない、請求項6に記載の走査磁石。
【請求項8】
前記複数のスロットは、前記ヨークからの磁束を磁極ギャップに導くように構成されたスロット長を有しており、これにより、前記スロット長は、前記ヨークの加熱を緩和するように構成される、請求項1に記載の走査磁石。
【請求項9】
前記複数のラミネーションは、櫛形構造を規定する、請求項1に記載の走査磁石。
【請求項10】
イオンビームを形成するように構成されるイオン源と、
質量分析器と、
前記イオンビームを磁気によって走査するように構成される走査磁石とを備え、
前記走査磁石は、ヨークと、スキャナコイルとを備え、
前記ヨークは、前記ヨーク内に規定されるチャネルを有しており、前記ヨークは、前記チャネルをビーム経路に沿って通過する前記イオンビームの入口を規定する第1面および出口を規定する第2面を有しており、前記ヨークは、前記第1面から前記第2面まで積み重ねられる複数のラミネーションを含み、前記ヨークにおいて、前記第1面および前記第2面と関連する前記複数のラミネーションの少なくとも一部は、1つ以上のスロット付きラミネーションを含み、前記1つ以上のスロット付きラミネーションは、前記チャネルに向かって延びる複数の歯を有しており、複数のスロットは前記複数の歯の間で規定されており、
前記スキャナコイルは、前記ヨークの周りに巻き付けられた第1ワイヤを含み、
前記走査磁石は、前記チャネル内に配置された1つ以上のライナを含み、前記1つ以上のライナは、グラファイトで構成され、前記ヨークおよび前記スキャナコイルを前記イオンビームから隔離し、
前記1つ以上のライナは、当該ライナ内に規定される1つ以上のライナスロットをさらに含み、前記1つ以上のライナスロットは、前記ビーム経路に垂直に延び、前記1つ以上のライナ内の渦電流を低減するようにさらに構成される、イオン注入システム。
【請求項11】
前記複数の歯は、前記複数のスロットに関連するスロット間隔およびスロット深度を規定し、前記スロット間隔および前記スロット深度は、前記複数の歯を介した前記ヨークからの磁束を、前記イオンビームが通過する領域に向かって導くように構成される、請求項10に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
前記複数のラミネーションは、当該ラミネーション間に配置される絶縁層によって互いに電気的に絶縁され、前記スロット間隔は、前記絶縁層の厚さよりも大きいかまたは前記絶縁層の厚さと等しい、請求項11に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
前記スロット間隔は、前記複数のラミネーションのうちの1つの厚さに等しい、請求項11に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
前記複数のスロットを含む前記複数のラミネーションの少なくとも一部は、前記ヨークの1つ以上の磁極エッジに関連する、請求項10に記載のイオン注入システム。
【請求項15】
前記磁極エッジに関連する前記複数のラミネーションの所定の部分はスロット付きラミネーションを含み、前記複数のラミネーションの残りの部分は前記複数のスロットに関連する平面領域を有する平面ラミネーションを含み、前記平面ラミネーションにおいて、前記平面領域はスロットを含まない、請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記複数のスロットは、前記ヨークからの磁束を磁極ギャップに導くように構成されたスロット長を有しており、これにより、前記スロット長は、前記ヨークの加熱を緩和するように構成される、請求項10に記載のイオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本出願は2018年8月21日に出願された「効率を向上させた走査磁石設計(SCANNING MAGNET DESIGN WITH ENHANCED EFFICIENCY)」というタイトルの米国特許出願第16/106,745号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本開示は、概してイオン注入システムに関する。より具体的には、イオンビームの走査の効率を向上させるように構成された走査磁石構成要素を有する走査装置に関する。
【0003】
〔背景〕
半導体デバイスの製造および他のイオン注入処理において、イオン注入システムは、半導体ウェハ、ディスプレイパネル、または他の種類のワークピースにイオンを付与するために使用される。半導体の場合、典型的なイオン注入システムまたはイオン注入装置は、n型ドープ領域もしくはp型ドープ領域を生成するために、またはワークピース内にパッシベーション層を形成するなどの他のバルク特性を修正するために、公知のレシピまたはプロセスを利用して、ワークピースにイオンビームを衝突させる。
【0004】
典型的には、ドーパント原子またはドーパント分子がイオン化され、分離され、時には加速または減速され、ビームに形成され、そしてワークピースに注入される。このドーパントイオンは、物理的に衝突してワークピースの表面に入り、続いてその結晶格子構造でワークピース表面の下に静止する。典型的なイオン注入装置は、(i)イオンビームを生成するためのイオン源と、(ii)ビーム内にイオンを向かわせるためおよび/またはビーム内においてイオンをフィルタリングする(例えば、質量分解)ための質量分析装置を有するビームラインアセンブリと、(iii)処理される1つ以上のウェハまたはワークピースを含むターゲットチャンバとを備える。
【0005】
様々なタイプのイオン注入装置は、ワークピース内で達成されるべき所望の特性に基づいて、注入されるべきイオンのドーズ量およびエネルギーをそれぞれ変化させることができる。例えば、高電流イオン注入装置は、典型的には高ドーズ量の注入に使用され、中電流から低電流のイオン注入装置は、低ドーズ量の用途に使用される。さらに、イオンのエネルギーを変化させることもできる。当該エネルギーは、一般に、例えば半導体デバイスにおける接合深度(junction depth)を制御するために、ワークピース内にイオンが注入される深さを概ね決定する。典型的には、高エネルギーから中エネルギーの注入装置では、イオンビームがワークピースに衝突するまでのイオンビームの経路(注入装置のビームラインとも呼ばれる)は十分に長い。しかしながら、低エネルギーの注入装置では、イオンビームに関連する低エネルギーに少なくとも部分的に起因して、通常、ビームラインははるかに短い。このため、ビームラインが長くなると、低エネルギーのイオンビームは、伝送(トランスミッション)を失う傾向にある。
【0006】
イオンビームは、いわゆる「2-D機械的走査」システムにおいて静止していてもよい。この場合、ワークピースは、注入時に静止ビームを通過して2次元で機械的に走査される。ワークピースのこのような走査は、多くの場合、静止イオンビームを通してワークピースを一様に移動させるための、複雑な機構を有する。2-D機械的走査システムの1つの代替案は、静止ワークピースに対してイオンビームを走査またはディザリング(dither)することである。この場合、いわゆる「2-D走査システム」において、電気偏向プレートまたは電磁石が、制御された方法でイオンビームの経路を変更する。しかしながら、このような走査装置は、多くの場合、ビームラインに沿った位置の多くの部分の妨げとなる。さらに、2-D走査システムの場合には、ビームを最適に走査するためにイオンビームを収束させる必要がさらに生じることが多い。しかしながら、このような集束光学系の実装は、集束光学系に関するイオンビームの移動に起因して従来制限されており、イオンビーム集束の実装は困難となっている。
【0007】
一方、いわゆる「ハイブリッド走査」イオン注入システムは、時には走査リボン、または単にリボンビームと呼ばれる走査イオンビームを介してワークピースを移動(translate)させる。イオンビームの走査は、通常、走査要素を用いてスポットイオンビーム又はペンシルイオンビームを偏向させることによって行われる。走査要素は、イオンビームを電気的な力または磁力にさらす、電気的要素または磁気的要素であり得る。電気的な力または磁力によって、イオンの運動方向が変化し、スポットビームが、後続のビームライン光学系と平行化され得る走査されたリボンビーム内に効果的に広げられる。
【0008】
電気的な走査板とは対照的に、イオンビームの磁気走査は高電流のイオン注入装置では有利である。走査磁石における磁界は、高電流イオンビーム中に存在する自己中和ビームプラズマのイオンビームを剥がさないからである。高電流注入装置は大きなアクセプタンスを有するため、スキャナが非常に大きい。更に、スキャナの電力要求はスキャナサイズと共に増加するので、磁気走査磁石に対する電力要求は高くなり得る。
【0009】
〔概要〕
本開示は、イオン注入システムのための磁気スキャナを提供することによって、従来技術の様々な制限を克服する。これにより、磁気スキャナのサイズおよび効率が有利に改善される。したがって、本開示は、より効率的な走査磁石を提供することによって、電力要件および動作コストを有利に低減する。したがって、以下では、本開示のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。本概要は、本発明の広範な概要ではない。この要約は、本発明の主要な点または重要な要素を特定することを意図しているわけでもないし、本発明の範囲を規定することを意図しているわけでもない。本概要の目的は、後述するより詳細な説明の序文として、本開示のいくつかの概念を簡略化された形式で提示することにある。
【0010】
本開示は、概してイオン注入システムに関し、より詳細には、真空中でイオンビームを走査するための改良された走査磁石に関する。本開示によれば、イオンビームを生成するように構成されるイオン源を備えるイオン注入システムが提供される。当該イオン源は、例えば、スポットイオンビームまたは静的リボンビームを生成するように構成されてもよい。前記イオン注入システムは、イオンビームを質量分解するように構成される質量分析器または質量分解磁石をさらに備える。質量分解開口部(mass resolving aperture)は質量分析器の下流にさらに配置される。そして当該質量分解開口部は、イオンビーム由来の望ましくない種類をフィルタリングするように構成される。
【0011】
本開示の1つの例示的な態様によれば、走査磁石は、質量分解磁石または質量分析磁石の下流に配置されるが、いくつかの代替の構成では、走査磁石を、質量分析磁石の前に配置することもできる。この実施例では、走査磁石は、イオンビームの走査またはディザリングのために、質量分解磁石の下流のペンシルまたは「スポット」イオンビームの経路を制御するように構成される。一実施例によれば、前記走査磁石は、その内部に画定(規定)されるチャネルを有するヨークを備える。前記ヨークは、例えば、鉄製であり、前記イオンビームの入口を規定する第1面(first side)および出口を規定する第2面(second side)を有している。前記ヨークは、前記第1面から前記第2面まで積み重ねられる(stacked)複数のラミネーション(積層体:lamination)を含む。この場合、前記第1面および前記第2面と関連する(associated with)前記複数のラミネーションの少なくとも一部は、1つ以上のスロット付きラミネーション(slotted lamination)を含む。当該スロット付きラミネーションは、当該ラミネーションに画定される複数のスロットを有する。さらに、少なくとも前記ヨークの周りに巻き付けられた第1ワイヤを含むスキャナコイルが提供される。
【0012】
一実施例によれば、前記ヨークは、第1半体(first half)および第2半体を含み、前記第1半体および第2半体は、互いに略鏡像である。別の実施例では、複数のラミネーションの少なくとも一部は、前記ヨークの1つ以上の磁極エッジ(pole edge)に関連している。例えば、1つ以上の磁極エッジに関連する前記複数のラミネーションの所定の部分は、前記1つ以上のスロット付きラミネーションを含む。この場合、前記複数のラミネーションの残りの部分は複数のスロットに関連する平面領域を有する略平面ラミネーションを含み、平面領域はスロットを含まない。別の実施例では、前記1つ以上の磁極エッジに関連する1つ以上のスロット付きラミネーションは、前記複数のラミネーションの一部の長さを、前記走査磁石の動作に関連する磁束に対して横方向に概ね減少させる。
【0013】
別の実施例において、前記複数のスロットは前記ヨークからの磁束を磁極ギャップ(pole gap)に導くように構成されたスロット長を有する一方、前記複数のラミネーション内の渦電流を最小化し、これにより前記ヨークの過剰な加熱を引き起こさない。前記複数のラミネーションは、例えば、櫛形構造のようにスロットが付けられている。さらに別の例では、前記ヨークから出る磁束は、磁界クランプ内に導かれる。これにより、磁界クランプは、磁界クランプラミネーションをさらに含み、磁界クランプラミネーションの一部はスロット付きであってもよい。
【0014】
さらに別の例では、1つ以上のライナ(例えば、1つ以上のグラファイトライナ部材)は、一般に、前記磁極ギャップの内部領域を裏打ちする。これにより、前記1つ以上のライナは、一般に、前記走査磁石を、イオンビームの直接的な衝突から保護する。当該1つ以上のライナは、例えば、その中に画定された1つ以上のライナスロットを備える。これにより、当該1つ以上のライナスロットは、前記1つ以上のライナ内の渦電流を概ね低減するように構成され、損失および反磁性効果を最小限に抑える。
【0015】
前述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下で十分に説明され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を備える。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用され得る様々な方法のうちのいくつかを示す。本開示の他の物体、利点、および新規な特徴は、以下の本開示の詳細な説明を図面と併せて考慮することによって明らかになるのであろう。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示の様々な態様による例示的なイオン注入システムを示す。
【0017】
図2Aは、本開示の1つ以上の態様による例示的な走査磁石を示す。
【0018】
図2Bは、本開示のさらなる態様を示す、図2Aの走査磁石の吹き上げ部分である。
【0019】
図3は、本開示の種々の実施例による走査磁石の例示的なヨークの斜視図である。
【0020】
図4は、本開示のさらなる例示的な態様による走査磁石ヨークのスロット付きラミネーションの半体の平面図である。
【0021】
図5は、本開示の種々の実施例による走査磁石の別の例示的なヨークの斜視図である。
【0022】
図6は、本開示の別の例示的な態様による走査磁石ヨークの平面ラミネーションの半体の平面図である。
【0023】
図7A図7Cは、ラミネーションの様々な構成の斜視図である。
【0024】
図8は、本開示の一態様による例示的なラミネーションの斜視図である。
【0025】
図9は、本開示の別の態様による例示的なライナの斜視図である。
【0026】
〔詳細な説明〕
本開示は、概して、イオンビームのイオン注入および走査に関する。より詳細には、改善された走査磁石が、イオンビームの走査の効率を高めるために提供される。以下、図面を参照して本開示を説明する。図面において、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指すために使用される。これらの態様の説明は単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の説明において、説明の目的で、本開示の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、本開示は、これらの特定の詳細なしに実施されてもよいことは当業者には明らかであろう。
【0027】
次に、本開示のより良い理解を得るために図面を参照すると、例示的なイオン注入システム100が図1に概略的に示されている。図1において、この例示的なイオン注入システムは、本開示の1以上の態様を実施するのに適している。イオン注入システム100は、一例として示されているが、本開示は高エネルギーシステム、高電流システム、または他の注入システムなど、様々な他の種類のイオン注入装置およびイオン注入システムを使用して実施することができる。そしてこのようなシステムのすべてが本開示の範囲内に入ると考えられることに留意されたい。
【0028】
図1に示すイオン注入システム100(イオン注入装置とも呼ばれる)は、端末機102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備える。イオン注入システム100では、当該端末機は、高電圧電源110によって給電されるイオン源108を備える。したがって、イオン源108は、イオンビーム112を生成し、当該イオンビームをビームラインアセンブリ104に向けるように動作可能である。イオン源108は、例えば、抽出され、イオンビーム112に形成される、荷電イオンを生成する。このイオンビームは、ビームラインアセンブリ104内の名目ビーム経路114に沿って、エンドステーション106に向けられる。イオンビーム112は、以下「ペンシル」または「スポット」イオンビームとも呼ばれる比較的狭い形状(プロファイル)(例えば、名目ビーム経路114に沿って見たときにほぼ円形の断面)、あるいは、以下「リボン」イオンビームとも呼ばれる細長い形状(例えば、名目ビーム経路に沿って見たときにほぼ楕円形の断面)を有することができることに留意されたい。
【0029】
イオンビーム112は同種の荷電粒子を含むので、同種の荷電粒子が互いに反発した場合には、当該イオンビームは「ブローアップ」するか、または半径方向外向きに拡張する傾向を有し得ることが理解される。イオンビーム112のブローアップは、低エネルギーで高電流のイオンビーム(例えば、当業者には高パーベアンスを有することが理解されるであろうイオンビーム)において激しくなり得ることがさらに理解されるのであろう。イオンビーム112では、多くの同種の荷電粒子が比較的ゆっくりと同じ方向に移動している。そのため、ほとんど粒子運動量を伴わない粒子の間に十分な反発力が存在し、これらの粒子が名目ビーム経路114の方向に移動するのを維持する。
【0030】
本開示の別の態様によれば、ビームラインアセンブリ104は、質量分析器116(質量分解磁石とも呼ばれる)を備える。質量分析器116は、本実施例では概ね約90°の角度に形成され、1以上の磁石(図示せず)を備える。当該1つ以上の磁石は、通常質量分析器内に双極子磁場を確立する。イオンビーム112が質量分析器116に入ると、前記双極子磁場に対応して、イオンビーム112は磁界を介して曲げられ、不適切な電荷-質量比のイオンが概ね拒絶される。より詳細には、電荷質量比が大きすぎるまたは小さすぎるイオンは、質量分析器116の側壁に偏向させられる。このようにして、質量分析器116は主に、イオンビーム112内の所望の電荷質量比を有するイオンのみを通過させる。この場合、イオンビームは、質量分解開口部118を通って質量分析器から出る。質量分解開口部118は、例えば、イオンビーム112からの望ましくない種類をフィルタリングするようにさらに構成される。
【0031】
例えば、イオンビーム112は、質量分解開口部118を通過した後、概ね発散する。従って、質量分析器116の下流には、集束および/またはステアリング要素120がさらに設けられてもよい。質量分析器116の下流では、集束およびステアリング要素が質量分析されたイオンビーム112を受け入れ、イオンビームを選択的に集束およびステアリングするように構成される。集束および/またはステアリング要素120は例えば、双極磁石または他の多極磁石(図示せず)などを含んでいてもよく、イオンビーム112の伝播方向を横断する両方の次元において集束特性を有するように設計することができる。この場合、この集束はビームサイズの拡張を妨げる。従って、真空封入部、開口部等のようなビームライン内の制限部を通るイオンビームの良好な透過を提供することができる。
【0032】
本開示によれば、走査磁石122は、質量分析器116の下流にさらに配置される。例えば、電流波形は、電源124を介して走査磁石122に選択的に印加され得る。この場合、印加された電流波形は、長期に亘ってイオンビーム112を前後に磁気的に走査するように動作可能であり、従って、単一ビーム走査平面(例えば、X軸に沿って)に沿ってイオンビームを「拡散」し、走査イオンビーム126を画定する。当該走査イオンビームは、印加された電流波形のサイクルにわたって時間平均したときに、細長いビームとして見ることができる。より具体的に説明すると、イオンビーム112の走査は、積層された鉄製のヨーク128の周囲に巻き付けられた1以上の走査ワイヤ(図示せず)に電流を流すことによって達成される。
【0033】
エンドステーション106は、走査磁石122の下流に配置される。この場合、当該エンドステーションは、ワークピース支持体130を備え、ワークピース支持体130の上に、シリコンウエハなどの1以上のワークピース132が配置または取り付けられる。ワークピース支持体130は、一例ではイオンビーム112の方向に対して略垂直に配向されたターゲット面に存在する。あるいは、ウェハ支持体130は、図示され説明された角度とは実質的に異なる角度で配向されてもよい。ワークピース支持体130は、例えば、概ね静止している。一代替例では、ワークピース支持体130は、さらに、イオンビーム112を介してワークピースを移動させることができる機械的アームまたは回転ディスクの形態をとることができる。
【0034】
コンピュータ、マイクロプロセッサ、または他の制御システムを含むことができるシステムコントローラ134がさらに提供される。システムコントローラ134は、端末機102、ビームラインアセンブリ104、および走査磁石122のうちの1以上を制御するように動作可能である。したがって、イオン注入システム100は、所望のイオン注入を容易にするために、イオン注入における所望のドーズ量、電流、および/またはエネルギーに基づいて、ならびに線量測定システム136によって提供されるような1以上の測定された特性に基づいて、システムコントローラ134を介して調整することができる。
【0035】
従来のイオン注入システム用の走査磁石は、積層シリコン鋼磁心を用いて製造される。従来の積層鋼磁心によって磁束を導く場合、効率を高めるために、通常、適切なラミネーションおよび積層方向を選ぶことに多くの注意が払われる。従来の積層鋼磁心は、例えば、Glavishの米国特許第5393984号および5311028号からに記載されている。例えば、正しい配向は、誘導電流が最小化されるように、磁力線が積層表面に平行に走ることを意味する。しかしながら、これは積層磁心技術の制限内で達成される。当該積層磁心技術では、平坦で薄い薄板が積層された層として組み立てられる。例えば、ラミネーションが同じ形状を有するようなヨークおよび磁極を構成することが好都合である。当該ラミネーションは、例えば、単一のツールによって薄いSi鋼板から形成され得る。この場合、従来のラミネーションは、1つの好ましい共通の積層方向を指示するので、任意の方向に容易に配向することができない。
【0036】
また、一般に、積層されたラミネーションアセンブリを後加工することは困難である。なぜなら、このラミネーションの厚さは比較的小さく、積層されたラミネーションの機械加工は、ラミネーションの形状を有害に変える可能性があるからである。さらに、ラミネーションの機械加工は、ラミネーション材料の意図しない遷移(transition)によってラミネーション同士の短絡をラミネーション同士の間に引き起こすこともある。ラミネーションを機械加工するための様々な技術が存在するが、そのような技術は典型的には高価であり、商業的にはほとんど望ましくない。
【0037】
例えば、磁束が磁極ギャップの中心にある積層磁極片を出ると、磁束または磁界の方向は通常変わらない。なぜなら、Maxwell方程式の境界条件は、境界の両側の磁界の接線成分が連続であることを規定しているからである。しかし、磁極の端部(エッジ)では、磁束の方向は、例えば、磁極の形状に基づいて変化し得る。なぜなら、磁束の大部分は、低リラクタンス磁極を通過するが、磁束のより小さい部分は、磁極の外側の体積内の高リラクタンス経路に沿って通過するからである。より具体的には、図2Aの例示的な走査磁石200に示されるように、入口204および出口206における磁界202は、走査磁石のヨーク208から外に向けられる傾向があり、直角に、すなわち、H≒0で磁極面と出会う。しかし、磁極の隅では、磁場は一般に磁極表面に対して垂直ではない。図2Aのヨーク208の出口206の拡大図210図2Bに示す。図2Aおよび図2Bでは、出口における磁界202は、走査磁石200のラミネーション214の積層面212に対して略接線方向(例えば、磁力線202C)である磁界よりもヨークの形状に対してより垂直な方向(例えば、磁力線202A)にある。
【0038】
図2Aの走査磁石200にエネルギーが加えられる、例えば、電流がファラデーの法則を介してヨーク208内に誘導される。このとき、時間依存性の磁界が、図2Bのラミネーション214内の任意のループの内側に時間依存性の電圧を誘導する。ラミネーション214は導電性であるので、このラミネーションの内側を流れる電流はループ電圧を打ち消すために逆磁場を作る傾向があり、従って、反磁性電流と呼ばれる。反磁性電流は磁力線に垂直な方向に流れ、例えば、ラミネーション214は、積層面212と平行に配向される。さらに、導電性媒体内部の時間的に変化する電磁場の強さは、表面から指数関数的に減衰し、導電性媒体は従来、「表皮深さ(skin depth)」δによって特徴付けられる。ここで、δは電磁場が媒体の表面における電場強度の1/eに達する深さに等しい。磁場に平行に配向された積層面212を有するラミネーション214の配向により、電流の流れを可能にするためのラミネーション214の有効面積または断面は、通常、導体内の磁場の表皮深さのオーダーに、最小化される。ラミネーション214の厚さが表皮深さδのオーダーである場合、反磁性電流は図2Aの磁気ヨーク208を通る磁極ギャップ216内の磁界の誘導を可能にするために、効果的に最小化される。
【0039】
ラミネーション214における誘導電流は、例えば、当該ラミネーションの接線磁界(例えば、図2Bの磁力線202C)と垂直磁界(例えば、磁力線202A)との間の角度が顕著である場合に大きくなる。反磁性電流が流れることが許される場合、走査磁石200内の正味の磁束は減少する。さらに、このラミネーションの材料は有限の抵抗を有するので、そのような誘導電流は例えば、ヨーク208の抵抗加熱を引き起こす可能性がある。
【0040】
したがって、過剰な加熱を緩和するために、本開示は、図3に示される走査磁石300を提供する。ここで、当該走査磁石は複数のラミネーション304(例えば、nが1よりも大きい正の整数である任意の数のラミネーション)を有するヨーク302を備える。ラミネーション304の数nは、走査磁石300の所望の特性に基づいて選択されてもよく、本実施例は非限定的な例として考慮されない。
【0041】
本実施例では、当業者には理解されるように、ヨーク302は互いにほぼ鏡像である第1半体306Aおよび第2半体306Bを備えることに留意されたい。さらに、明確にするために完全には示されていないが、1以上のスキャナコイルまたはワイヤ308はヨーク302の様々な部分の周りに巻き付けられてもよい。当該スキャナコイルまたはワイヤ308は、任意の形状であってもよく、様々な設計基準に基づいて設計されてもよい。例えば、スキャナコイル308は、ヨーク302の1以上の部分に巻き付けられた単純なコイル(明瞭さのために点線として図3に概略的に示されている)を含んでもよい。あるいは当業者には理解されるように、ベッドステッドコイルまたは他のコイル(図示せず)を代替的または追加的に含んでもよい。走査磁石300は、例えば、真空中または大気中であってもよい。しかしながら、本開示は、ヨーク302内の熱蓄積を最小化するので、走査磁石300が、熱の伝導および冷却が特に困難である真空中にある場合に特に有益である。
【0042】
一例では、複数のラミネーション304の少なくとも部分310は、図3のヨーク302の磁極エッジ312(例えば、図2Aの入口204および出口206)と関連し、スロット付きラミネーション314を備える。この場合、当該スロット付きラミネーションは、複数の歯316を含み、当該歯316は、当該歯間で、複数のスロット318を概ね画定する。
【0043】
例えば、図4は、スロット付きラミネーション314を含む例示的なラミネーション304を示す。図3のヨーク302のそれぞれの磁極エッジ310に関連する複数のラミネーション304のうちの1以上は、例えば、図4のスロット付きラミネーション314を備えていてもよい。一実施例では、複数のラミネーション304のすべてが、図3に図示されるようなスロット付きラミネーション314を備える。図5は、図3の走査磁石300の代替構成として、代替ヨーク320を有する走査磁石300の一例を図示する。この場合、磁極エッジ310に関連する複数のラミネーション304のうちの任意の数のラミネーション304は、スロット付きラミネーション314を含んでもよい。一方、代替ヨーク320の中央部321に関連する複数のラミネーションのうちの残りの数のラミネーションは、それぞれ、図6に図示されるように、略平面ラミネーション322を含んでいてもよく、その結果、略平面ラミネーションは、その中に画定されるスロットを有さない領域323を有する。
【0044】
従って、再び図3を参照すると、例えば、図1のイオンビーム112を磁気的に走査するために走査磁石300を設けることができる。その結果、図3の走査磁石は、当該走査磁石内に画定されるチャネル324を有するヨーク302を備える。本実施例では、複数の歯316は、チャネル324に向かって内向きに延びる。チャネル324は、例えば、図3に示されるように、ヨーク302によって完全に囲まれていてもよい。あるいは、チャネル324は、実質的にC字形または他の形状(図示せず)であってもよい。この場合、当該ヨークは、全ての側でチャネルを完全には包囲しない。任意の形状のヨーク302が、本開示の範囲内にあると考えられることに留意されたい。図3のヨーク302の第1面326Aおよび第2面326Bは、例えば、それぞれ、図1のイオンビーム112のための入口328Aおよび出口328Bを概ね画定する。この場合、当該ヨークの第1面から第2面まで、互いに対して概ね積層される複数のラミネーション304を備える。
【0045】
本開示によれば、例えば、図3のスロット付きラミネーション314は、上述したように、大きな誘導電流を概ね防止するように構成される。例えば、それぞれの磁極エッジ310に関連するスロット付きラミネーション314は、走査磁石300の動作に関連する磁束に対して横断する方向において、複数のラミネーション304の一部の長さを概ね減少させる。例えば、電流の流れのバルクは、複数のラミネーション304の外層に沿っている。結果として、電流の流れは、表皮深さδをはるかに超える深さで著しく減少する。複数のラミネーション304の各々の表皮深さδは、その中に渦電流が形成される厚さである。結果として、この表皮深さは、動作周波数の平方根に反比例する。
【0046】
本開示によれば、例えば、図3のスロット付きラミネーション314は、上述したように、大きな誘導電流を概ね防止するように構成される。例えば、それぞれの磁極エッジ310に関連するスロット付きラミネーション314は、走査磁石300の動作に関連する磁束に対して横断する方向において、複数のラミネーション304の一部の長さを概ね減少させる。例えば、電流の流れのバルクは、複数のラミネーション304の外層に沿っている。結果として、電流の流れは、表皮深さδをはるかに超える深さで著しく減少する。複数のラミネーション304の各々の表皮深さδは、その中に渦電流が形成される厚さである。結果として、この表皮深さは、動作周波数の平方根に反比例する。
【0047】
ラミネーションに関連する電流の流れおよび損失をより良く理解するために、図7A図7Cが、背景として提供される。図7Aに示すように、表皮深さδよりも著しく大きい積層厚さWを有する厚いラミネーション330が提供される。このような厚いラミネーション330は、例えば、主磁界Bによって短絡される循環電流Jを受けることがある。その結果、当該ラミネーションの磁極を通る正味の磁束が生じず、大きな損失を受けることがある。非常に薄いラミネーション332は、図7Bに示されており、厚さWは、表皮深さδよりも著しく小さい。この場合、非常に薄いラミネーション332は、当該ラミネーションの両側の2つの電流が相殺されるので、循環電流が流れない(J=0)ことがある。この場合、磁束は、低損失でラミネーション304を通って導かれ得る。図7Cに示すように、別のラミネーション334では、横磁界Bにおいて循環反磁性電流が流れるがラミネーション304において損失を伴う。
【0048】
したがって、本開示によれば、図8の単純化されたスロット付きラミネーション336に示されるように、複数のスロット318は、スロット間隔338と、スロット深度340を有する。当該スロット間隔338およびスロット深度340は、磁束342をヨーク302から磁極ギャップ344まで(例えば、イオンビームが通過し、磁界または走査磁界が制御される領域)案内するように構成される。さらに、当該複数のスロットは、前記ヨークの過剰な加熱を引き起こさないように十分に短い。例えば、図3および図4の複数のラミネーション304は、櫛形構造体に類似するようにスロットが設けられている。
【0049】
例えば、磁束342は、磁場(これは磁束密度とも呼ばれる)の積分であり、磁極を離れる磁力線は、磁束と解釈され得る。スロット間隔338は、例えば、ラミネーション334の厚さWに関連する。1つの有利な例では、スロット間隔338は、例えば、ラミネーション334の厚さWのオーダーである。その結果、スロット318は、図3の複数のラミネーション304間に配置される絶縁体(例えば、約0.1mm-図示せず)と同程度の厚さである。しかしながら、実際には、スロット間隔338をこのような小さなサイズ(例えば、約0.1mm)に制御することは困難であり得る。したがって、図8のスロット間隔338の増大は、ラミネーション334(例えば、鋼)の厚さWを増大させることによって対応することができる。その結果、磁極エッジのリラクタンスを増加させず、また図3の走査磁石300の光学特性を変化させることなく、ほぼ一定の充填率(例えば、絶縁体に対する鋼の比率)を維持することが可能である。
【0050】
さらに別の例において、図9は1以上のライナ346を示しており、当該1以上のライナは、図3の磁極ギャップ344の内部領域348の内側を概ね覆う(裏打ちする)ように構成される。1以上のライナ346は、例えば、グラファイトで構成される。これにより、当該1以上のライナは、図1の走査磁石122を、イオンビーム112からの直接的なイオンビームの衝突から保護する。一実施例では、1以上のライナ346のうちの1以上は、その中に画定される1以上のライナスロット350をさらに備える。一実施例では、1以上のライナスロット350は、1以上のライナ346内の渦電流を概ね減少させるようにさらに構成され、これにより損失および反磁性効果を最小限に抑える。
【0051】
さらに、本開示は、磁界クランプ(図示せず)を使用することによってフリンジ場の長さを低減するように構成されるイオン注入装置用の様々な双極子設計を企図することに留意されたい。走査磁石300に関して上述したのと同様に、磁界が磁界クランプ積層体の表面に対して非接線方向の角度で磁界クランプに入る場合、当該磁界クランプは、損失を最小限に抑えるために積層され、スロットが形成されてもよい。このような実施はすべて、本開示の範囲内に入ると考えられる。
【0052】
本開示は1以上の特定の好ましい実施形態に関して示され、説明されてきたが、本明細書および添付の図面を読んで理解すると、同等の変更および修正が当業者に想起されることは明らかである。特に、上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用されるターム(「手段」への言及を含む)は別段の指示がない限り、本明細書に示される本開示の例示的な実施形態において機能を実行する開示される構造と構造的に同等ではないにもかかわらず、説明される構成要素の指定された機能を実行する(すなわち、機能的に同等である)任意の構成要素に対応することが意図される。加えて、本開示の特定の特徴はいくつかの実施形態のうちの1つのみに関して開示されているが、そのような特徴は任意の所与のまたは特定の用途に対して所望され、有利であり得るように、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本開示の様々な態様による例示的なイオン注入システムを示す。
図2A】本開示の1つ以上の態様による例示的な走査磁石を示す。
図2B】本開示のさらなる態様を示す、図2Aの走査磁石の吹き上げ部分である。
図3】本開示の種々の実施例による走査磁石の例示的なヨークの斜視図である。
図4】本開示のさらなる例示的な態様による走査磁石ヨークのスロット付きラミネーションの半体の平面図である。
図5】本開示の種々の実施例による走査磁石の別の例示的なヨークの斜視図である。
図6】本開示の別の例示的な態様による走査磁石ヨークの平面ラミネーションの半体の平面図である。
図7A】ラミネーションの様々な構成の斜視図である。
図7B】ラミネーションの様々な構成の斜視図である。
図7C】ラミネーションの様々な構成の斜視図である。
図8】本開示の一態様による例示的なラミネーションの斜視図である。
図9】本開示の別の態様による例示的なライナの斜視図である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9