(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】持続可能な接着剤被覆を有するシート材料
(51)【国際特許分類】
D06M 23/16 20060101AFI20231016BHJP
D06M 15/09 20060101ALI20231016BHJP
D06M 15/11 20060101ALI20231016BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20231016BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20231016BHJP
C09J 101/08 20060101ALI20231016BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
D06M23/16 ZBP
D06M15/09
D06M15/11
C09J7/35
C09J7/21
C09J101/08
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021536153
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2019071695
(87)【国際公開番号】W WO2020043480
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】102018214839.2
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521087508
【氏名又は名称】クッフナー・ホールディング・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KUFNER HOLDING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ティム,クリストフ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-508463(JP,A)
【文献】特開2001-303446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0260014(US,A1)
【文献】特開平04-316682(JP,A)
【文献】特開2003-073644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
D06M10/00-16/00
19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意選択的に緯入れが施された編物若しくは織布、又は不織布に基づく基材と、該基材に塗工された接着剤
被覆とを有するヒートシール可能な布地シート材料であって、
接着剤
被覆は上側及び下側ドットの形態で塗工され、接着剤被覆の70~100重量%は再生可能な原料からなり、下側ドットは、バイオベースの高分子電解質複合体組成物を
変性されているデンプン、
流動助剤、並びに増粘剤、架橋
剤及び蛍光漂白剤
から選択される任意選択的な更なる成分と組み合わせることにより、最大100%の再生可能な原料で構成される接着剤組成物
からなることを特徴とする、ヒートシール可能な布地シート材料。
【請求項2】
接着剤組成物が、回転粘度計により測定された、8~30Pasの動的粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載のヒートシール可能な布地シート材料。
【請求項3】
バイオベースの高分子電解質複合体組成物が、キトサン、カルボキシメチルセルロース、及び有機酸を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートシール可能な布地シート材料。
【請求項4】
増粘剤が、無機増粘剤、及び有機増粘剤から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシール可能な布地シート材料。
【請求項5】
接着剤組成物が、多くと
も50重量%の高分子電解質複合体と、10~30重量%の流動助剤と、15~20重量%の変性デンプンと、任意選択的に、水及び漂白剤とを含有することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のヒートシール可能な布地シート材料。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のヒートシール可能な布地シート材料の、衣類用布及び産業用布地のための使用。
【請求項7】
家具、室内装飾材料、自動車、及び航空産業のための、請求項
6記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意選択的に緯入れが施された編物若しくは織布、又は不織布に基づく基材と、該基材に塗工された接着剤被覆とを有するヒートシール可能な布地シート材料、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
各種衣類の目に見えない枠組みである芯地は、長い間知られており(DE第10 2014 000417 A1号公報を参照のこと)、中でも、衣類の前部を補強し、又はカラー及びカフを補強するのに使用されている。これらの芯地は、通常、織布、編物又はさらに不織布の形態とすることのできる基材と、通常、グリッド状に該基材に塗工される接着剤組成物、通常、熱可塑性接着剤組成物とからなり、この接着剤組成物は、熱及び圧力が加えられた際に、衣類の表布との好ましい結合を提供する。一般的なグリッドは、1~200ドット/cm2、好ましくは、20~150ドット/cm2を使用する。
【0003】
このような芯地は、衣類を成形し、安定させるように設計されている。それらは、表布に結合されるため、完成した衣類の特性に決定的な影響を及ぼす。DE第10 2007 006568 A1号公報から公知であるように、外観、寸法安定性、柔らかさ、着用快適性並びにクリーニング、洗濯、アイロン掛け及び乾燥の間の手入れ特性は、使用される芯地の種類及び構造に決定的に依存する。
【0004】
ここで、衣類の特に重要な特性は、完成した衣類の外観、感触及び手入れ挙動である。
【0005】
衣類に加えて、このような芯地は、例えば、家具及び室内装飾品並びに自動車及び航空産業において、産業用布地としても使用される。
【0006】
通常、接着剤組成物は、DE第22 14 236号公報及び同第22 31 723号公報に記載されているように、下側及び上側ドットからなる二重ドットの形態で塗工される。この場合、粘性でペースト状の下側ドットは、例えば、ステンシルスクリーン印刷又は彫刻ローラにより、基材材料上に印刷され、上側ドットは、粉末状のホットメルト接着剤の形態で散布される。DE第22 31 723号公報によれば、上側及び下側ドットはそれぞれ、熱可塑性流動が異なる。下側ドットは、一方では、基板材料と上側ドットとの間の結合を形成する機能を有し、他方では、固定中に上側ドットが基板材料の背面に流れないようにする、いわゆるブリードスルー/バックリベット止めの機能を有する。上側ドットは、接着特性を決定的に決定し、芯地と表布との間の結合を確実にする。上側及び下側ドットのための各接着剤組成物の構造は、芯地の特性及び芯地と表布との複合材に顕著な影響を及ぼす。特に、表布に対する芯地の接着性、耐洗濯性及び複合材の布地感触は、材料の適切な選択により決定される。
【0007】
下側及び上側ドットは両方とも、通常、熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアクリラート、コポリエステル及び/又はコポリアミドから構成される。
【0008】
生産性の観点から、種々の要求が下側ドットの組成に課せられている。ペーストは、通常のポンプシステムで搬送可能でなければならず、可能な限りきれいに残留物がないように印刷可能でなければならない。このことは、ペーストが印刷版を通って又は印刷版から基材上にきれいに流れなければならず、印刷版上に堆積物が形成されてはならないことを意味する。というのは、該堆積物は、きれいでない印刷画像又はドットグリッドにつながることになるからである。この目的で、ペーストが可能な限り最も低い粘度及び固形分を有することが有利である。
【0009】
ペーストは、印刷プロセス後に良好な安定性を有するべきであり、すなわち、基材中への吸収が強すぎてはならず、理想的には、半球状の印刷ドットを形成すべきである。この目的で、ペーストがより高い粘度及びチキソトロピー粘度プロファイルを有するのが有利である。
【0010】
上側ドット上に散布された後、被覆された基材材料は、乾燥トンネルに通されて、下側ドットの溶媒成分を除去し、上側ドット及び下側ドット同士かつこれらを基材に結合させる、いわゆる、焼結を行う。ここで、ペーストが、可能な限り高い固形分を有する場合、エネルギー消費の点で有利である。複合材は、柔らかい布地感触によっても特徴付けられるべきである。
【0011】
この特性プロファイルに対応する下側ドットは、通常、1種以上の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、コポリエステル及び/又はコポリアミドポリマー、流動助剤、例えば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、グリセロール、有機又は無機増粘剤、例えば、ポリアクリラート、ポリウレタン、メチルセルロース、エチルセルロース、ベントナイト、ケイ酸、水並びに任意選択的に、慣用の補助剤、例えば、蛍光漂白剤及び架橋剤から構成される。
【0012】
ここで使用される材料は、主に、化石原料から出発して製造される。持続可能な製品及び/又は再生可能な原料から製造された製品に対する要求が増加している過程で、再生可能な原料からすべて又は部分的に製造されたポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル及びポリウレタンは、現在、例えば、Dynacoll Terra(Evonik)、Platamid Rnew(Arkema)、Impranil Eco(Covestro)の商品名で市販されている。ここで使用されるバイオベースの原料は、通常使用される化石原料と同一である(drop in、天然と同一に相当する)。これらは,例えば、ひまし油から得られるカルボン酸である。ひまし油は、ポリアミド重合のためのモノマー合成において石油由来カルボン酸の代わりに使用される(例えば、Vestamid terra(Evonik)、Paltamid Rnew(Arkema))。
【0013】
さらに、エタノール及びコハク酸は、炭水化物から製造される。これらの炭水化物は、ポリウレタン(例えば、Impranil Eco(Covestro))の製造に使用することができるポリエチレン、ポリエチレングリコール及び他のポリアルコールの製造のための出発材料として役立つ。
【0014】
これらの製品を芯地用の通常の接着剤組成物に使用することにより、最大約50%の含量しか、接着剤組成物において達成することができない。ここでの欠点は、一方では、一般的な散乱粉末に必要な特性、例えば、融点及び粘度を有する製品の利用可能性が依然として限定されていることであり、他方では、化石原料から製造される従来製品と比較して、再生可能な原料から製造される製品の価格が一般的に著しく高いことである。したがって、これらの製品を、低コストの大量生産物品、例えば、衣類用の芯地に使用すること自体、確立することができていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の1つの目的は、その接着剤組成物が可能な限り高い割合の再生可能な原料から製造される芯地を提供し、このような芯地材料が著しく高いコストにつながらなくすることである。同時に、所望の特性、例えば、表布との芯地の十分な接着性、耐洗濯性及び耐クリーニング性、布地感触及び接着剤被覆の低いブリードスルー、言い換えればバックリベット留めが維持されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、再生可能な原料から高比率で製造され、上記要求を満たす低コストの接着剤組成物を使用することができることが見出された。したがって、本発明によれば、少なくとも70%、そして好ましくは全てが再生可能な原料からなる接着剤組成物が開示される。この組成物は、任意選択的に緯入れが施された編物若しくは織布、又は不織布に基づく基材に、好ましくは、ドット又はグリッド状に塗工され、一方で、ヒートシール可能なシート材料が得られる。
【発明の効果】
【0017】
当該布地シート材料と再生可能な原料からの対応する仕上げ化学品とを組み合わせた結果が、90~100%の再生可能な原料から構成されるヒートシール可能な布地シート材料である。この材料は、特に、衣類用の芯地として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の接着剤組成物は、従来のプロセスにより、単一ドットとして又は二重ドットの形態、好ましくは、グリッド状で基材に塗工することができる。二重ドットとしての塗工が好ましい。その場合、下側ドットは、本発明の接着剤組成物からなり、上側ドットは、従来の材料、例えば、ポリアミド(例えば、Platamid(登録商標))又はさらにポリ乳酸粉末から作製することができる。しかしながら、散布可能なあらゆる従来の粉末材料を使用することができ、下側ドット上に散布することができる。
【0019】
下側ドットとしての接着剤組成物を、上側ドットとしての再生可能な原料(例えば、Platamid 2667(Arkema)-60%の再生可能な原料)から比例的に調製される市販の接着剤粉末と組み合わせる場合、接着剤被覆の全ての所望の特性を、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%の再生可能な原料の比率で達成することができる。
【0020】
接着剤組成物は、好ましくは、バイオベースの高分子電解質複合体組成物と炭水化物、例えば、任意選択的に変性されているデンプンとの組み合わせを含有し、加えて、植物性流動助剤を含有することができる。上記成分に加えて、他の成分、例えば、増粘剤、架橋剤、可塑剤、流動助剤及び/又は蛍光漂白剤を使用することができる。
【0021】
高分子電解質複合体は、反対に帯電した粒子の会合複合体である。これらは、例えば、異なる電荷を有し、静電相互作用により複合体を形成するポリマー(ポリアニオン及びポリカチオン)とすることができる。
【0022】
高分子電解質複合体組成物は、好ましくは、カチオン性及びアニオン性バイオポリマー、例えば、完全脱アセチル化又は部分脱アセチル化されたキトサン、アルカリリグニン、多糖類、例えば、アルギン酸、ペクチン、アラビアゴム及びカルボキシメチルセルロース又はデンプン及びセルロース等を含有する。他の成分としては、酒石酸、コハク酸、クエン酸又は他の生体利用可能な酸及び水を挙げることができる。pH値は、1~6、好ましくは、1.5~5、より好ましくは、1.8~4の範囲にある。
【0023】
このような組成物は、例えば、WO第2018/038671号公報から公知である。同文献の内容は、参照により本明細書の記載の一部とする。この公報では、繊維材料用のバインダーとしての生分解性組成物の使用が扱われているが、この組成物を接着剤ドット用の材料として、特に、二重ドット被覆の下側ドットについても使用するのは明らかではなかった。これは、説明したように、このような接着剤被覆が基材に塗工した後に基材と良好な結合を形成しなければならず、また、洗濯挙動、特に、感触に関して良好な特性を有していなければならないためである。例えば、WO第2018/038671号公報から公知の組成物を使用するのは不可能である。配合物を印刷すると、組成物が布地中に強く沈み、印刷ステンシルが短時間後に乾燥ペーストで覆われてしまい、きれいな印刷が妨げられるであろう。別の欠点は、組成物の固形分が低いこと、及び得られる芯地の感触が硬いことである。
【0024】
したがって、該組成物は、所望の特性が得られるように改変される。例えば、動的粘度は、好ましくは、8~30Pas、特に好ましくは、8~20Pas、特に、10~15Pasの範囲に調整される。ここで、粘度は、回転粘度計(例えば、Haake VT2 plus)により測定される。これは、好ましくは、無機又は有機増粘剤、例えば、ベントナイト、ヒュームドシリカ又は沈降シリカ、デンプン又はセルロース誘導体を使用することにより行われる。本発明の組成物は、良好な接着性及び良好な耐洗濯性をもたらすことが示された。
【0025】
驚くべきことに、炭水化物、例えば、化学変性されたデンプン及び植物性流動助剤との組み合わせにおいて、上記欠点を排除することができることが認識された。下側ドット組成物は、容易に搬送可能であり、良好に被覆し、得られた芯地は、バックリベット留めを示さない。デンプン誘導体は、水溶性であるが、対応する接着剤組成物は、十分な耐洗濯性を有する。耐洗濯性をさらに改善するために、適切な架橋剤の添加が可能である。
【0026】
本発明の使用のためのデンプンは、種々の作物から得ることができ、デンプン型アミロースとアミロペクチンの割合は、種及び品種に応じて変化する。好ましいデンプン植物は、可能な限り最も高いアミロペクチン含量を有するものである。最も重要なデンプン生産植物は、ジャガイモ、トウモロコシ及び小麦である。
【0027】
デンプンは、物理的、酵素的又は化学的プロセスにより変性させることができる。ここで、溶解度、膨潤能力、分散性、押出性及び薄膜形成等の特性は、構造変化により影響を受ける。しかしながら、変性デンプン製品の特性は、変性の種類だけでなく、原料自体によっても決まる。
【0028】
デンプン分子の遊離OH基で起こるエーテル化及びエステル化反応は、デンプンの化学変性のための好ましい方法である。エーテル化は、3つの基本的な方法:すなわち、ハロゲン化アルキルを用いるWilliamsonエーテル合成、活性化オレフィンのMichael付加、又はエポキシドとの反応により行われる。いずれの反応も、通常、塩基触媒反応である。
【0029】
デンプンのエステル化は、活性化試薬としてのアミン又はアミドを添加し、又は添加することなく、有機酸もしくは無機酸又はそれらの誘導体を使用して行うことができる。有機エステルとして特に重要なものは、酢酸デンプンである。酢酸デンプンは、無水酢酸から、又は酢酸ビニルのエステル交換により調製される。無機デンプンエステルとして、硫酸、硝酸及びリン酸といった無機酸の誘導体が特に興味深い。
【0030】
本発明の接着剤組成物において、化学変性トウモロコシデンプン、例えば、有機又は無機酸、例えば、リン酸を使用することによるエーテル化又はエステル化デンプン、特に好ましくは、トウモロコシデンプンの無機エステル誘導体、及び特に具体的には、トウモロコシデンプンの一リン酸エステルが、所望の特性を達成するのに適した成分であることが示される。
【0031】
好ましくは、流動助剤が、接着剤組成物に使用される。これらの流動助剤は、被覆ペーストの一成分として幾つかの機能を果たす:すなわち、水を保持することにより被覆を湿潤に保つことは、ペーストがステンシル上で乾燥するのを防ぎ、ステンシル表面を潤滑する。流動助剤は、ステンシル表面上に薄膜を形成し、この薄膜は、ペースト残留物の蓄積を防ぐと同時に、ドクターブレードのための潤滑剤として作用することができ、又はペーストのレオロジー挙動に影響を及ぼす(チキソトロピー挙動を向上させる)。チキソトロピー挙動の向上は、ペーストの良好な搬送性、良好な印刷性、及び基材中への被覆ドットのより少ない浸み込みを確保する。
【0032】
一般的な水性ペースト組成物においては、吸湿性化合物、例えば、(ポリ)グリコールが、通常、流動助剤として使用される。ここで、例えば、グリセロール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコールが挙げられる。
【0033】
好ましくは、本発明の接着剤組成物は、最大約50重量%、好ましくは、最大約45重量%の高分子電解質複合体と、10~30重量%、好ましくは、15~25重量%、より好ましくは、25重量%の流動助剤と、15~20重量%、好ましくは、15~18重量%、より好ましくは、16重量%の変性デンプンとを含有し、水、及び任意選択的に、漂白剤を含有することができる。
【0034】
本発明の接着剤組成物は、セルロース系布地上、及び他の全ての一般的な繊維種、例えば、ポリエステル又はポリアミド上で使用することができるので、下側ドットに一般的に使用される石油系プラスチックポリマーペーストを、高い割合の再生可能な原料を用いた製品により置き換えることができる。
【0035】
本発明のヒートシール可能なシート材料は、このようなシート材料が使用される種々の布地用途、例えば、衣類、特に、アウターウェアに、カラー及びカフを補強するのに使用することができるのみならず、自動車及び航空産業、又は家具もしくは室内装飾品にも使用することができる。本発明のシート材料は、布地材料に対する良好な接着値を特徴とし、この接着値は、繰り返し洗濯された後でも劣化しない。
【0036】
男性のアウターウェア(より重い布地、例えば、185g/m2;97/3のウール/エラスタン布地)における一般的な接着値は、10N/5cmより大きく、又は理想的には、>15N/5である。女性用アウターウェア(より軽い布地、例えば、95g/m2、100%の綿布地)では、接着値は、理想的には、10N/5cmより大きい。
【0037】
これらの接着値は、特許請求された接着剤組成物を使用する場合にも達成され、同時に、良好な感触が達成され、該組成物の加工性は、印刷ステンシルの目詰まり等の問題を引き起こさない。同様に、基材に塗工された接着剤組成物の基材材料へのブリードスルー又は浸み込みは観察されない。
【実施例】
【0038】
本発明を下記例によりさらに例証する。
【0039】
例において与えられる、対応するパラメーターは下記のように決定した。
【0040】
接着性の測定
各接着性測定について、芯地布地の4つの20×5cmストリップを切り出す。これらの4つのストリップを試験表布の25×7cmストリップ上に、それぞれの場合について指定された固定条件(温度、時間/速度、圧力)を使用し、上側2cmが表布に接着せず、この点で、試験ストリップを表布から引き離すことができるように積層する。この積層体を室温に冷却した後、表布をバネバランスに取り付け、試験ストリップを垂直に引き離す。4つの測定値の平均値を接着性として得る。
【0041】
バックリベット留めの測定
各バックリベット留め測定について、芯地布地の4つの20×5cmストリップを切り出す。各場合において、1つの試験ストリップを、被覆側を下向きにして、表布上に配置する。2つの芯地/表布の組み合わせを、それぞれ芯地の被覆側が上側になるように、互いの上に置く。これらの4つのストリップ(表布-芯地-芯地-表布)同士を特定の条件下で固定する。2つの芯地-表布複合材の分離力又は2つの芯地裏面同士の接着性を接着試験と同様の方法でバネバランスにより求め、バックリベット留めの値を得る。
【0042】
洗濯後の耐洗濯性又は接着性の測定
4つの20×5cm試験ストリップをそれぞれ、上記されたように表布に固定する。洗濯前の接着性を求める。試験ストリップを標準的な家庭用洗濯機中において特定の温度で洗濯し、ついで、室温で乾燥させる。必要に応じて、洗濯を数回行う。最後の洗濯及び乾燥の後、接着性を測定する。各洗濯回数後の4つの測定値の平均値を洗濯後の耐洗濯性又は接着性として得る。最初の接着性と比較した接着性の変化を耐洗濯性の尺度とする。
【0043】
耐劣化性の測定
未固定/乾燥
芯地の6つの20×5cm試験ストリップを測定毎に切り出す。4つの試験ストリップを加熱キャビネット中において、60℃で4週間保存する。残り2つの試験ストリップを貯蔵期間の開始時に試験面布に固定し、初期接着性を求める。4週間の貯蔵期間の終了時に、試験ストリップを表布上に固定し、接着性を上記のようにして求める。初期接着性と比較した接着性の変化を耐劣化性の尺度とする。
【0044】
未固定/湿潤
芯地の6つの20×5cm試験ストリップを測定毎に切り出す。4つの試験ストリップを、エキシケーター中において、60℃の水浴上で4週間保存する。残り2つの試験ストリップを貯蔵期間の開始時に試験表布に固定し、初期接着性を求める。4週間の貯蔵期間の終了時に、試験ストリップを室温で乾燥させ、表布上に固定し、接着性を上記のようにして求める。初期接着性と比較した接着性の変化を耐劣化性の尺度とする。
【0045】
固定後乾燥又は湿潤
芯地の6つの20×5cm試験ストリップを測定毎に切断し、特定の固定条件下で各試験表布に積層する。2つのサンプルの接着性を冷却直後に求める。残り4つのサンプルを上記されたように湿潤又は乾燥状態で4週間保存し、接着性を貯蔵期間の完了後に求める。初期接着性と比較した接着性の変化を、耐劣化性の尺度とする。
【0046】
例1
下記接着剤組成物を調製した。
【0047】
グリッド被覆用下側ドットの組成物:
高分子電解質複合体組成物 46.88重量%
(OC-Biobinder(商標)OAK-Organoclick-100%再生可能な原料:
キトサン、カルボキシメチルセルロース、クエン酸、水)
変性デンプン(一リン酸による変性) 15.62重量%
(Aric 4574-Agrana- >95%再生可能な原料)
植物性プロピレングリコール 25.00重量%
(Radianol 4710-Oleon- 100%再生可能な原料)
水 12.50%
動粘度:13Pas
【0048】
散布粉末としての上側ドット用組成物:
コポリアミド(80~200μm)(Platamid 2667-Arkema-再生可能な原料の比率 60重量%)
【0049】
下側/上側ドット比:5/5(重量)
【0050】
全接着剤組成物における再生可能な原料の比率:80%
【0051】
この接着剤組成物を綿布地に58g/m2の坪量で塗工する。ペーストドットをステンシルスクリーン印刷により塗工する(Cp52/0.5、Cp52=52個の任意/ランダムに配置された(コンピュータ)ドット/100mm2 0.5=ドットの直径(mm))。コポリアミド粉末を慣用の方法でまだ湿っているペーストドット上に散布し、過剰分を吸引除去し、ついで、シート材料を180℃で乾燥させる。
【0052】
接着値
塗工重量:18g/m2-定着温度:155℃、15s、20N/cm2(Kannegiesser CV 1000 CFベルト定着プレス)
100%綿試験布地に対する接着性:11N/5cm
97/3 ウール/エラスタン試験布地に対する接着性:11N/5cm
バックリベット留め 0N/5cm
【0053】
洗濯後の耐洗濯性/接着性:
塗工重量:18g/m2-定着温度:155℃、15s、20N/cm2(Kannegiesser CV 1000 CFベルト定着プレス)
30℃での3回洗濯後の100%綿試験布地(女性のアウターウェア;95g/m2)に対する接着性:10N/5cm
30℃での3回洗濯後の97/3 ウール/エラスタン試験布地(男性のアウターウェア;185g/m2)に対する接着性:9N/5cm
60℃での3回洗濯後の100%綿試験布地に対する接着性:9N/5cm
【0054】
耐劣化性:
塗工重量:18g/m2-定着温度:155℃、15s、20N/cm2(Kannegiesser CV 1000 CFベルト定着プレス)
100%綿試験布地に固定されたサンプル
0週間:11N/5cm
4週間60℃/乾燥:11N/5cm
4週間60℃/湿潤:10N/5cm
97/3 ウール/エラスタン試験布地に固定されたサンプル
0週間:11N/5cm
4週間60℃/乾燥:10N/5cm
4週間60℃/湿潤:9N/5cm
60℃/乾燥で4週間後の固定されていないサンプル
100%綿試験布地に対する接着性 10N/5cm
97/3 ウール/エラスタン試験布地に対する接着性 10N/5cm
60℃/湿潤で4週間後の固定されていないサンプル
100%綿試験布地に対する接着性 10N/5cm
97/3 ウール/エラスタン試験布地に対する接着性 9N/5cm
【0055】
比較例1
ペーストドット組成物 :
高分子電解質複合体組成物 96.00重量%
(OC-Biobinder(商標)OAK-Organoclick-100%再生可能な原料)
増粘剤としてのシリカゲル 4.00重量%
(HDK N 20-Wacker)
動粘度:15Pas
【0056】
上側ドット(散布粉末)
コポリアミド(80~200μm)(Platamid 2667-Arkema-再生可能な原料の比率 60重量%)
【0057】
下側/上側ドット比:5/5(重量)
【0058】
接着剤組成物の再生可能な原料の比率:80重量%
【0059】
この接着剤組成物を綿布地に58g/m2の坪量で塗工する。ペーストドットをステンシルスクリーン印刷により塗工する(Cp52/0.5)。コポリアミド粉末をまだ湿っているペーストドット上に散布し、過剰分を吸引除去し、ついで、シート材料を180℃で乾燥させる。
【0060】
塗工重量:15g/m2-定着温度:155℃、15s、20N/cm2(Kannegiesser CV 1000 CFベルト定着プレス)
100%綿試験布地(例1におけるのと同様)に対する接着性:10N/5cm
97/3 ウール/エラスタン試験布地(例1におけるのと同様)に対する接着性:11N/5cm
【0061】
耐洗濯性:
60℃での3回洗濯後の100%綿試験布地に対する接着性:8N/5cm
60℃での3回洗濯後の97/3 ウール/エラスタン試験布地に対する接着性:9N/5cm
【0062】
比較例1のシート材料は、硬くて強張った感触を有し、綿布地内へのドットのブリードスルー又は浸み込みも観察された。特に欠点は、ステンシル上での組成物の急速な乾燥であり、これにより、被覆パターンの欠陥及び不規則な塗工がもたらされる。これは、この組成物が不良な結果をもたらすことを示す。それは、この組成物が、変性デンプンを含有せず、また、流動助剤を含有しないためである。
【0063】
例2
例1からのペーストドット組成物及び従来のコポリアミド粉末(Mp.118~128℃-Schaettifix 5130)を用いた25g/m2 PES不織布の被覆
接着性:
塗工重量:10g/m2-定着温度:127℃、15s、20N/cm2(Kannegiesser CV 1000 CFベルト定着プレス)
100%綿試験布地(例1におけるのと同様)に対する接着性:5N/5cm-不織布は破れる
97/3 ウール/エラスタン試験布地に対する接着性:5N/5cm-不織布は破れる
【0064】
耐洗濯性:
40℃での3回洗濯後の100%綿試験布地に対する接着性:5N/5cm-不織布は破れる
40℃での3回洗濯後の97/3 ウール/エラスタン試験布地に対する接着性:5N/5cm-不織布は破れる
【0065】
この例は、綿試験布地に対するペーストドットの接着性が、芯地又は被覆されたPES不織布自体より高いことを示す。
【0066】
例3
例1のペーストドット組成物及びコポリアミド粉末(80~200μm)(Platamid 2667-Arkema-再生可能な原料の比率 60重量%)による50g/m2オーガニックコットン布地の被覆
塗工重量:13g/m2-下側/上側ドット比:4/6(重量)-定着温度:150℃、15s、20N/cm2(Kannegiesser CV 1000 CFベルト定着プレス)
全接着剤組成物における再生可能な原料の比率:75重量%
100%綿試験布地(例1におけるのと同様)に対する接着性:15N/5cm-不織布は破れる
97/3% ウール/エラスタン試験布地(例1におけるのと同様)に対する接着性:12N/5cm-不織布は破れる
【0067】
耐洗濯性:
40℃での3回洗濯後の100%綿試験布地(例1におけるのと同様)に対する接着性:11N/5cm-不織布は破れる
40℃での3回洗濯後の97/3% ウール/エラスタン試験布地に対する接着性:12N/5cm-不織布は破れる
【0068】
この例も、接着剤組成物が不織布に対する高い接着性を有することを示す。この接着は、不織布は破れるまで維持される。