(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】引き裂き可能なドレッシング構造
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20231016BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A61F13/02 310M
A61F13/00 301J
A61F13/02 310H
A61F13/02 310J
A61F13/02 380
A61F13/02 310D
(21)【出願番号】P 2021543169
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 US2020012560
(87)【国際公開番号】W WO2020159675
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-10
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0353662(US,A1)
【文献】特表2016-516462(JP,A)
【文献】実開昭63-059625(JP,U)
【文献】特表平09-502367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を有する非多孔質材料の第1のフィルムを含む第1の層と、
前記第1の層に隣接する第2の層であって、複数のスリットを有するマニホールドを含む、第2の層と、
前記第2の層に隣接し、隆起した特徴部を有する非多孔質材料の第2のフィルムを含む第3の層と、を含み、
前記複数の開口部のうちの少なくともいくつか、前記複数のスリットのうちのいくつか、及び前記隆起した特徴部のうちいくつかが、引き裂き線を画定するように整列されている、ドレッシング材。
【請求項2】
前記マニホールドが、ポリウレタン発泡体を含む、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項3】
前記第1のフィルムがポリウレタン材料を含み、
前記第2のフィルムがポリウレタン材料を含む、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項4】
前記複数の開口部及び前記複数のスリットが、前記第1の層及び前記第2の層を通って延びる複数の開窓部を形成して、整列された開口部とスリットとの対を作成することによって形成されており、
前記複数の開窓部のそれぞれが、1mm~5mmの長さを有する、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項5】
前記第1のフィルムが、接着剤コーティングされたフィルムである、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項6】
前記複数の開口部が、平行な行及び列で前記第1の層にわたって分布し、
前記行が、中心で約3mm離隔している、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項7】
前記複数の開口部が、平行な行及び列で前記第1の層にわたって分布し、
前記行が、中心で3mm離隔しており、
前記行のそれぞれの前記開口部が、中心で約3mm離隔している、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項8】
隣接する列の前記複数の開口部がオフセットされている、請求項
7に記載のドレッシング材。
【請求項9】
前記第2のフィルムが、接着剤コーティングされたフィルムであり、
前記第2のフィルムが、前記第2の層に積層されている、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項10】
前記第2のフィルムが、高通気性フィルムである、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項11】
前記複数の開口部のうちの少なくともいくつか、前記複数のスリットのうちのいくつか、及び前記隆起した特徴部のうちのいくつかが、円形パターンで整列されている、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項12】
前記複数の開口部のうちの少なくともいくつか、前記複数のスリットのうちのいくつか、及び前記隆起した特徴部のうちのいくつかが、線状パターンで整列されている、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項13】
前記複数の開口部が、垂直な列で前記第1の層にわたって分布している、請求項1に記載のドレッシング材。
【請求項14】
組織部位を治療するためのシステムであって、
創傷充填材であって、
非多孔質材料の第1のフィルムを含む第1の層、
前記第1の層に隣接する第2の層であって、前記第2の層が発泡体を含む、第2の層、
前記第2の層に隣接し、隆起した特徴を有する非多孔質材料の第2のフィルムを含む第3の層、並びに
前記第1の層及び前記第2の層を貫通して延びる複数の開窓部、を含む創傷充填材と、
前記第2の層の反対側の前記第3の層の外周上に配置されるように適合された複数の封止ストリップと、
前記創傷充填材に結合されるように適合された境界面と、を含む、システム。
【請求項15】
前記境界面を通して前記創傷充填材に流体連結されるように適合された陰圧源を更に含む、請求項
14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のフィルムがポリウレタン材料を含み、
前記発泡体がポリウレタン発泡体を含む、請求項
14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月28日に出願された「Tearable Dressing Structure」と題する米国仮特許出願第62/797,632号の優先権を主張するものであり、これはあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
添付の特許請求の範囲に記載の本発明は、一般に、組織処置システムに関し、特に、組織処置のためのドレッシング、及び組織処置のためにドレッシングを使用する方法に関するが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0003】
臨床研究及び臨床診療から、組織部位の近位における圧力を低下させることにより、その組織部位における新たな組織の成長を、増強及び加速させることができる点が示されている。この現象の用途は数多くあるが、創傷を治療するために特に有利であることが判明している。外傷であれ、手術であれ、又は別の原因であれ、創傷の病因とは関わりなく、転帰に関しては、創傷の適切なケアが重要である。創傷又は他の組織の減圧による処置は、一般に、「陰圧療法」と称され得るが、例えば、「陰圧創傷療法」、「減圧療法」、「真空療法」、「真空補助閉鎖」、及び「局所陰圧」を含む、他の名称によっても知られている。陰圧療法は、上皮組織及び皮下組織の移行、血流の改善、及び創傷部位における組織の微小変形などを含めた、いくつもの利益をもたらすことができる。これらの利益は全体として、肉芽組織の発達を促進し、治癒時間を短縮することができる。
【0004】
陰圧療法の臨床的利益は広く知られているが、治療システム、構成要素、及びプロセスを改善することにより、ヘルスケア提供者及び患者に利益をもたらすことができる。
【発明の概要】
【0005】
陰圧療法環境において組織を処置するための、新規かつ有用なシステム、装置、及び方法が、添付の特許請求の範囲に記載される。特許請求された主題を当業者が製造及び使用することを可能にする、例示的な実施形態も提示される。
【0006】
例えば、いくつかの実施形態では、ドレッシング又は創傷充填材は、材料の積層構造を含んでもよい。外側層はフィルム層を含んでもよく、そのうちの少なくとも1つは、組織部位に面するように構成されてもよい。例えば、外側層はポリウレタンフィルムを含んでもよい。外側層のうちの少なくとも1つは、表面上に形成された線状の穿孔部又は開窓部を有してもよい。穿孔部又は開窓部の寸法及び間隔は、様々であってもよい。外側層の別のものは、隆起した特徴部を有するフィルムを含んでもよい。外側層の間の1つ以上の中間間隔層は、ポリウレタン発泡体などのポリマー発泡体を含んでもよく、これはマニホールド流体であってもよく、空間及び湾曲に適合し得る圧縮性充填材を提供し、組織内方成長に対するバリアを提示することができる。中間発泡体層は、積層構造体の引き裂きを促進するために、第1の外側フィルム層の穿孔部又は開窓部と第2の外層の隆起した特徴部とを整列させる穿孔部又は開窓部を含んでもよい。
【0007】
より一般的には、いくつかの実施形態では、ドレッシング材は、複数の開口部を有する非多孔質材料の第1のフィルムを含む第1の層と、第1の層に隣接し、かつ複数のスリットを有するマニホールドを含む第2の層と、第2の層に隣接し、かつ隆起した特徴部を有する非多孔質材料の第2のフィルムを含む第3の層と、を含むことができる。複数の開口部のうちの少なくともいくつか、複数のスリットのうちのいくつか、及び隆起した特徴部のうちのいくつかは、引き裂き線を画定するように整列されていてもよい。いくつかの実施形態では、第1の層はポリウレタンフィルムを含んでもよく、第2の層はポリウレタン発泡体を含んでもよく、第3の層はポリウレタンフィルムを含んでもよい。
【0008】
他の例示的実施形態では、陰圧で組織部位を処置するためのドレッシングは、第1の複数の開窓部を含む発泡体層と、第2の複数の開窓部を含む第1のフィルムと、複数の隆起した特徴部を含む第2のフィルムと、を備えてもよい。第1のフィルムは、発泡体層の第1の側部に隣接して配置されてもよく、第2のフィルムは、発泡体層の第2の側部に隣接して配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の複数の開窓部及び第2の複数の開窓部が整列されていてもよい。
【0009】
なお更なる例示的実施形態では、ドレッシング材を製造する方法は、第1のフィルムを発泡体層の第1の側部に積層することと、第1のフィルム及び発泡体層を通して複数の開窓部を作成することと、複数の隆起した特徴部を含む第2のフィルムを発泡体層の第2の側部に積層することと、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第2のフィルムの複数の隆起した特徴部の少なくとも一部分は、複数の開窓部の少なくとも一部分と整列されている。いくつかの実施形態では、複数の開窓部を作成することは、開窓部を平行な行及び列に形成することを含んでもよい。いくつかの更なる実施形態では、複数の開窓部を作成することは、開窓部を幾何学的形状を有するパターンに形成することを含んでもよい。
【0010】
更に更なる例示的実施形態では、組織部位を処置するためのシステムは、創傷充填材、複数の封止ストリップ、及び境界面を含み得る。創傷充填材は、非多孔質材料の第1のフィルムを含む第1の層と、第1の層に隣接し、かつ発泡体を含む第2の層と、第2の層に隣接し、かつ隆起した特徴部を有する非多孔質材料の第2のフィルムを含む第3の層と、第1の層及び第2の層を通って延びる複数の開窓部と、を含むことができる。複数の封止ストリップは、第2の層の反対側の第3の層の外周上に配置されるように適合されてもよい。境界面は、創傷充填材に結合されるように適合されてもよい。システムは、境界面を通して創傷充填材に流体連結されるように適合された陰圧源を更に含んでもよい。
【0011】
特許請求される主題を製造及び使用する目的、利点、及び好ましい態様が、例示的実施形態の以下の詳細な説明と併せて添付図面を参照することによって最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】いくつかの例示的実施形態に関連し得る詳細を示している、組織境界面の一例の組立図である。
【0013】
【
図2】
図1の組織境界面のいくつかの実施形態に関連し得る層の流体開口部の例示的構成の概略図である。
【0014】
【
図3】
図1の組織境界面のいくつかの実施形態に関連し得る別の層の隆起した特徴部の例示的構成の概略図である。
【0015】
【
図4】層の弛緩状態に関連し得る詳細を示している、
図1の組織境界面のいくつかの実施形態に関連し得る別の層の一部上に重ね合わされた、
図3の例示的な層の一部分の概略図である。
【0016】
【
図5】層の伸張状態に関連し得る詳細を示している、
図4に示した重ね合わせ層の概略図である。
【0017】
【
図6】重ね合わせ層の部分を引き裂くことに関連し得る詳細を示している、
図1の組織境界面のいくつかの実施形態に関連する重ね合わせ層の概略図である。
【0018】
【
図7】重ね合わせ層の部分を引き裂くことに関連し得る詳細を示している、
図1の組織境界面のいくつかの実施形態に関連する重ね合わせ層の別の概略図である。
【0019】
【
図8】いくつかの例示的な実施形態による、
図1の組織境界面を組み込むことができるドレッシングの一例の組立図である。
【0020】
【
図9】本明細書による陰圧処置を提供することが可能な治療システムの例示的実施形態の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的実施形態の以下の説明は、添付の特許請求の範囲に記載されている主題を当業者が作製及び使用することを可能にする情報を提供するものであるが、当該技術分野において既に周知の特定の詳細を省略している場合がある。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定ではなく例示として解釈されるべきである。
【0022】
例示的な実施形態はまた、添付の図面に示される様々な要素間の空間的関係又は様々な要素間の空間的方位(orientation)を参照して本明細書に記載され得る。一般に、そのような関係又は方位は、治療を受ける位置にある患者と整合する又はその患者に対する基準系を想定している。しかしながら、当業者には認識されるはずであるように、この基準系は厳密な規定というよりは、むしろ単に説明上の便宜的なものである。
【0023】
図1は、組織部位に適用するための組織境界面100の一例の組立図である。組織境界面100は、一般に、組織部位に部分的又は完全に接触するように適合させることができる。組織部位が、例えば創傷である場合、組織境界面100は、部分的に若しくは完全に創傷を塞いでもよく、又は創傷の上に配置されてもよい。組織境界面100は、第1の側部105及び第2の側部115を有し得る。組織境界面100は、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130は、第2の層120が第1の層110及び第3の層130に隣接しかつ接触するように積層されてもよい。第2の層120はまた、いくつかの実施形態では、第1の層110、第3の層130、又はその両方に積層又は結合されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の層110は、創傷及び周囲の創傷周囲領域などの組織部位に対して配置されるように適合されてもよい。
【0024】
組織境界面100は、多くの形態を取り得るものであり、実施されている処置のタイプ、あるいは組織部位の性質及びサイズなどの、様々な要因に応じて、多くのサイズ、形状、又は厚さを有し得る。組織境界面100は、
図1に正方形を実質的に有するように全体的に示されているが、組織境界面100及び含まれる層は、組織部位の特定の解剖学的要求に基づいて、任意の数の異なる形状であってもよい。例えば、組織境界面100及び含まれる層は、正方形、矩形、楕円形、円形、六角形、又は他の形状を有してもよい。例えば、組織境界面100のサイズ及び形状は、深く不規則な形状の組織部位の、輪郭に適合され得る。組織境界面100の表面のうちのいずれか又は全ては、凹凸のプロファイル、粗いプロファイル、又はギザギザのプロファイルを有し得る。
【0025】
用語「組織部位」とは、この文脈では、限定するものではないが、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、真皮組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、若しくは靭帯を含めた、組織上又は組織内部に位置する、創傷、欠損、又は他の処置標的を広範に指す。創傷は、例えば、慢性の、急性の、外傷性の、亜急性の、及び裂開した創傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病潰瘍、圧迫潰瘍、又は静脈不全潰瘍など)、弁状創、及び移植組織を含み得る。用語「組織部位」はまた、必ずしも創傷部又は欠損部ではなく、代わりに、追加的組織の成長を追加又は促進することが望ましいであろう、任意の組織の領域を指す場合もある。
【0026】
第1の層110は、流体の流れを制御又は管理するための手段を含み得るか、又はそのような手段から本質的になるものとすることができる。いくつかの実施形態では、第1の層110は、液体不透過性材料を含み得るか、又はそのような材料から本質的になるものとすることができる。例えば、第1の層110は、非多孔質ポリマーフィルムを含み得るか、又はそのような非多孔質ポリマーフィルムから本質的になるものとすることができる。第1の層110はまた、いくつかの実施形態では、平滑な表面テクスチャ又は艶消しの表面テクスチャも有し得る。いくつかの実施形態では、表面高さの変動を、許容可能な公差に制限することができる。例えば、第1の層110の表面は、1センチメートルにわたって高さの変動が0.2ミリメートルに制限されている、実質的に平坦な表面を有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の層110は、ポリマーフィルムを含み得るか、又はそのようなポリマーフィルムから本質的になるものとすることができる。いくつかの実施形態では、第1の層110は、親水性ポリマーフィルムを含み得るか、又は親水性ポリマーフィルムから本質的になり得るが、追加的又は代替的な実施形態では、第1の層110は、疎水性ポリマーフィルムを含み得るか、又は疎水性ポリマーフィルムから本質的になるものとすることができる。いくつかの実施形態では、第1の層110は、ポリウレタンフィルムを含み得るか、又はポリウレタンフィルムから本質的になるものとすることができる。例えば、第1の層110は、Expopack Advanced Coatings,Wrexham,United Kingdomから市販されているInspire 2301又はInspire 2327ポリウレタンフィルムを含んでもよい。いくつかの用途では、第1の層110は、高い水蒸気透過率(MVTR)を有してもよい。例えば、MVTRは、いくつかの実施形態では、38℃及び相対湿度(RH)10%において、ASTM E96/E96MのUpright Cup Methodによる直立カップ技術を使用して測定された、24時間当たり少なくとも250グラム毎平方メートルであり得る。例えば、第1の層110は、2600g/m2/24時間のMVTR(直立カップ技術)及び約30ミクロンの厚さを有する、INSPIRE2301を含み得る。他の好適なポリマーフィルムとしては、ポリエチレン、アクリル、ポリオレフィン(環状オレフィンコポリマーなど)、ポリアセテート、ポリアミド、ポリエステル、コポリエステル、PEBAXブロックコポリマー、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫物、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、スチレン系、シリコーン、フルオロポリマー、及びアセテートが挙げられ得る。20ミクロン~100ミクロンの厚さが、多くの用途に関して好適であり得る。フィルムは、透明、色付きとすることができ、又は印刷することもできる。第1の層110がポリエチレンフィルムを含んでもよいいくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムに積層するのに好適なより極性の高いフィルムとしては、ポリアミド、コポリエステル、アイオノマー、及びアクリルが挙げられる。ポリエチレンと極性フィルムとの接合を補助するために、エチレン酢酸ビニル又は変性ポリウレタンなどの、タイ層を使用することができる。エチルメチルアクリレート(EMA)フィルムもまた、一部の構成に関して、好適な疎水性及び溶着の特性を有し得る。いくつかの実施形態では、第1の層110の疎水性は、液体によりコーティングされるか若しくはプラズマコーティングされるものなどの、シリコーン及びフルオロカーボンなどの他の材料の疎水性コーティングを使用して、更に強化することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1の層110は、組織境界面100の第1の側部105上に露出され得る接着剤コーティングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、接着剤コーティングは、低粘着性の薬剤受容可能な接着剤を含んでもよい。例えば、接着剤コーティングは、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、又は低粘着性アクリル接着剤を含んでもよい。場合によっては、接着剤コーティングは、第1の層110の高MVTRを維持し得る、1平方メートル当たり25グラム~1平方メートル当たり100グラムなどの低コーティング重量を有してもよい。接着剤コーティングの厚さは、高いMVTRも維持しながら、組織部位との良好な封止を提供する必要性をバランスさせるように調整され得る。接着剤コーティングはまた、第1の層110の高いMVTRを維持するために、第1の層110上にパターンコーティングされてもよい。接着剤コーティングは、組織境界面100の配置を微細化し、組織境界面100を組織部位に封止する間に使用者にとって有用であり得る、適用中に組織境界面100を適所に保持するのを支援することができる。
【0029】
第1の層110はまた、第2の層120を含めた他の層に積層、接着、又は溶着するためにも好適であり得る。例えば、第1の層110は、第2の層120に火炎積層されてもよい。第1の層110はまた、不織布又はメッシュのホットメルト材料を使用して第2の層120に固定されてもよい。例えば、不織布又はメッシュのホットメルト材料は、第1の層110がホットメルト材料の上に適用された状態で、第2の層120の表面に適用されてもよい。次いで、第1の層110を第2の層120に結合するために、熱及び圧力を適用して、不織布又はメッシュホットメルト材料を溶融することができる。いくつかの実施形態では、第1の層110は、熱、高周波(RF)溶着、又は、超音波溶着などの熱を発生させるための他の方法を使用して、発泡体であり得る第2の層120に溶着するように適合させることができる。RF溶着は、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、及びアクリレートなどの、より極性の高い材料に関して、特に好適であり得る。ポリエチレンなどの、より極性の低いフィルム材料のRF溶着を容易にするために、犠牲極性境界面を使用することができる。いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第1の層110は、第2の層120に接着するための表面上に接着剤コーティングを有するフィルムを含み得る。
【0030】
図1の例に示されるように、第1の層110は、第1の層110にわたって均一に分布し得る1つ以上の開口部140を有してもよい。開口部140は、双方向性かつ圧力応答性とすることができる。例えば、開口部140のそれぞれは、一般に、液体の流れを実質的に低減するために通常は無歪みであって、圧力勾配に応答して拡張又は開放することが可能な、弾性の通路を含み得るか、又はそのような通路から本質的になるものとすることができる。開口部140は、開窓部又は穿孔部の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、開口部140は、第1の層110内に開窓部を含み得るか、又はそのような開窓部から本質的になるものとすることができる。開窓部は、第1の層110から材料を除去することによって形成されていてもよく、変形しない縁部をもたらし得る。いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、開口部140は、第1の層110内に穿孔部を含み得るか、又はそのような穿孔部から本質的になるものとすることができる。穿孔部は、第1の層110から材料を除去することによって形成することができる。例えば、穿孔部は、第1の層110を切断することによって形成されてもよい。除去された材料の量及び結果として生じる穿孔部の寸法は、変形される縁部をもたらし得る、開窓部と比べて桁外れに大きくてもよい。更に、いくつかの実施形態では、穿孔部は、第1の層110のフィルム材料を機械的にスリット加工し、次いで、制御された一軸及び/又は二軸延伸によって形成されてもよい。
【0031】
例えば、開口部140のいくつかの実施形態は、第1の層110内の1つ以上のスリット、スロット、又はスリットとスロットとの組み合わせを含み得るか、又はこれらから本質的になるものとすることができる。いくつかの実施例では、開口部140は、6ミリメートル未満の長さ及び1ミリメートル未満の幅を有する線状スロットを含み得るか、又はこれらからなるものとすることができる。長さは少なくとも2ミリメートルであってもよく、いくつかの実施形態では、幅は少なくとも0.4ミリメートルであってもよい。約3ミリメートルの長さ及び約0.8ミリメートルの幅は、多くの用途に特に好適であり得、約0.1ミリメートルの公差も許容可能であり得る。このような寸法及び公差は、例えば、レーザーカッター、超音波、又は他の熱手段によって達成され得る。直線状のスリット又はスロットは、それらの長さに沿って端から端まで約2~4ミリメートル離隔していてもよい。
【0032】
第2の層120は一般に、圧力下で組織境界面100にわたって流体を収集又は分配するための手段を提供するマニホールド又はマニホールド層を含むか、又はマニホールド又はマニホールド層から本質的になるものとする。例えば、第2の層120は、供給源から陰圧を受け取り、複数の開口を介して組織境界面100にわたって陰圧を分配するように適合させることができ、このことは、組織部位にわたって流体を収集して、供給源に向けて流体を引き込む効果を有し得る。
【0033】
いくつかの例示的実施形態では、第2の層120は、流体の分配又は収集を改善するために相互接続することが可能な、複数の経路を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の層120は、相互接続された流体経路を有する多孔質材料を含んでもよいか、又はそのような多孔質材料から本質的になるものとすることができる。例えば、多孔性発泡体、連続気泡発泡体、網状発泡体、多孔質組織集合体、及びガーゼ又はフェルトのマットなどの他の多孔質材料は、一般に、相互接続された流体通路を形成するように適合された細孔、縁、及び/又は壁を含む。液体、ゲル、及び他の発泡体もまた、開口及び流体経路を含み得るか、又は含むように硬化させることもできる。
【0034】
いくつかの実施形態では、第2の層120は、ポリウレタン発泡体などのポリマー発泡体を含み得るか、又はそのようなポリマー発泡体から本質的になるものとすることができる。例えば、第2の層120は、処方される療法の必要性に応じて変化し得る、孔径及び自由容積を有する、網状発泡体を含み得るか、又はそのような編状発泡体から本質的になるものとすることができる。例えば、少なくとも90%の自由容積を有する網状発泡体は、多くの治療用途に関して好適であり得るものであり、400~600ミクロンの範囲の平均孔径(1インチ当たり40~50個の細孔)を有する発泡体は、一部のタイプの治療に関して特に好適であり得る。第2の層120の引張強度も、処方される療法の必要性に応じて変動し得る。第2の層120の25%圧縮荷重撓みは、少なくとも0.35ポンド毎平方インチとすることができ、65%圧縮荷重撓みは、少なくとも0.43ポンド毎平方インチとすることができる。いくつかの実施形態では、第2の層120の引張強度は、少なくとも10ポンド毎平方インチとすることができる。第2の層120は、少なくとも2.5ポンド毎平方インチの引裂強度を有し得る。いくつかの実施形態では、第2の層120は、ポリエステル又はポリエーテルなどのポリオールと、トルエンジイソシアネートなどのイソシアネートと、アミン及びスズ化合物などの重合調整剤とから構成されている、発泡体とすることができる。いくつかの例では、第2の層120は、両方ともSan Antonio,TexasにあるKinetic Concepts,Inc.から入手可能なGRANUFOAM(商標)ドレッシング又はV.A.C.VERAFLO(商標)ドレッシングで見られるような網状ポリウレタン発泡体であってもよい。
【0035】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第2の層120は親水性であってもよく、また、組織部位から流体を吸い上げることができる一方で、組織部位に陰圧を分配し続けることができる。第2の層120のウィッキング特性は、毛細管流又は他のウィッキング機構によって組織部位から流体を引き離すことができる。好適であり得る親水性材料の一例は、San Antonio,TexasにあるKinetic Concepts,Inc.から入手可能なV.A.C.WHITEFOAM(商標)ドレッシングなどのポリビニルアルコールの連続気泡発泡体である。他の親水性発泡体としては、ポリエーテルから作製されたものを挙げることができる。親水性特性を呈し得る他の発泡体としては、親水性を付与するように処理又はコーティングされている、疎水性発泡体が挙げられる。
【0036】
第2の層120の厚さも、処方される療法の必要性に応じて変動し得る。例えば、第2の層120の厚さは、周辺組織の張力を低減するために減少されてもよい。第2の層120の厚さはまた、第2の層120及び組織境界面100の適合性に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、約4ミリメートル~12ミリメートルの範囲の厚さが好適であり得、いくつかのより具体的な実施形態では、第2の層120は、6ミリメートル~10ミリメートルの厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、第2の層120は、部分的に又は完全に不透明であってもよく、又は別の方法で、第2の層120が光路の少なくとも一部を遮断し得るようなものであってもよい。
【0037】
図1の例に示されるように、第2の層120は、第2の層120にわたって均一に分布し得る複数のスリット150を含んでもよい。スリット150は、第2の層120の一部又は全体の厚さを通って開窓部又は裂け目の形態であってもよい。例えば、第2の層120は、微細に切断された線状開窓部の形態のスリット150を有する網状ポリウレタン発泡体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、スリット150は、場合によっては互いにオフセットされ得る平行な列に配置されてもよい。いくつかの追加の実施形態では、スリット150は、平行及び垂直の両方の列に配置されてもよい。スリット150は、第1の層110内の開口部140の少なくとも一部に対応するか、又はそれと整列されていてもよい。いくつかの実施例では、スリット150は、1ミリメートル~6ミリメートルの長さ及び1ミリメートル未満の幅を有する線状開窓部を含み得るか、又はこれらからなるものとすることができる。いくつかの実施形態では、約3ミリメートルの長さは、多くの用途に特に好適であり得、約0.1ミリメートルの公差も許容可能であり得る。スリット150は、いくつかの例において、スリット150の隣接する列の間で、それらの長さに沿って端から端まで約2ミリメートル~4ミリメートル離隔されてもよい。
【0038】
第2の層120のスリット150は、様々な機構を用いて形成されてもよい。例えば、スリット150は、ナイフ又は他のブレードを使用して形成されて、第2の層120内に微細な切り込みを形成してもよい。そのような場合、スリット150は、ナイフ又は他の形態のブレードで切断中に第2の層120の材料がほとんど除去されないので、スリット150は実質的に無視できる幅を有し得る。他の実施形態では、スリット150は、レーザー切断を使用して形成されてもよく、その結果、場合によっては0.3mm~0.5mmの幅を有するスリット150が生じ得る。レーザー切断を使用することにより、第2の層120の材料を蒸発させて、第2の層120の材料のかなりの量を残すことなく、スリット150を形成することができる。他の実施形態では、超音波切断を使用して、第2の層120内にスリット150を形成してもよい。
【0039】
第3の層130は、治療環境と局所的外部環境との間などの2つの環境間の封止を提供し得る材料から、構築することができる。例えば、第3の層130は、組織境界面100の第1の層110及び第2の層120の上に封止層を提供するように適合されてもよく、第3の層130の材料は、組織部位で陰圧を維持することが可能であり得る。第3の層130は、概して、軟質の可撓性材料から形成されたフィルム層を含み得るか、又はそれから本質的になるものとすることができる。いくつかの実施形態では、第3の層130は、高通気性である薄膜から構成されてもよい。例えば、第3の層130は、組織部位で陰圧を維持するための封止を提供することができるエラストマーフィルムを含んでもよい。第3の層130は、いくつかの実施形態において、高い水蒸気透過率(MVTR)を有してもよい。いくつかの例示的な実施形態では、第3の層130は、水蒸気に対して透過性を有するが、液体に対しては不透過性であるポリウレタンフィルムとすることができる。例えば、第3の層130は、第3の層130の延伸能力を高めるために、エラスタンと共重合したポリウレタンから形成されたフィルムを含んでもよい。いくつかの追加の実施形態では、第3の層130は、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、又はコポリエステルフィルムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第3の層130のフィルムは、25~50ミクロンの範囲の厚さを有してもよい。
【0040】
第3の層130は、第1の側部160及び第2の側部165と、を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の側部160は、第2の層120の上側に面する側に接着するための接着剤コーティングを含んでもよい。例えば、接着剤コーティングは、医学的に許容可能なアクリル接着剤であってもよい。第3の層130はまた、複数の隆起した特徴部170を含んでもよい。例えば、隆起した特徴部170は、第3の層130の第2の側部165上に複数のエンボス加工された突出部として形成されてもよい。いくつかの実施形態では、隆起した特徴部170は、一連の平行な列に配置された複数の隆起した特徴部の形態であってもよい。例えば、隆起した特徴部170は、複数のテクスチャ加工された隆起した半球を含んでもよく、0.5ミリメートル~5ミリメートルの範囲の直径を有してもよい。隆起した特徴部170の他の形状及びサイズもまた、適用可能であり得る。隆起した特徴部170は、行内で約1ミリメートル~5ミリメートル離隔していてもよく、左右に約1ミリメートル離隔されてもよい。隆起した特徴部170は、第3の層130のフィルムの通気性を更に高めることができる。
【0041】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第3の層130は、隆起した特徴部170並びに複数の穿孔部を有する材料を含んでもよい。例えば、第3の層130は、Maplewood,Minnesotaの3Mによって供給されるTranspore(商標)外科用テープであってもよい。このような実施形態では、陰圧を維持するために、組織境界面100の他の層の周囲に封止された環境を提供するために、追加の封止層が組織境界面100の第2の側部115上の第3の層130の上に含まれてもよい。
【0042】
第1の層110、第2の層120、第3の層130、又は様々な組み合わせは、適用前又はその場で組み立てられてもよい。いくつかの実施形態では、組織境界面100は、例えば、第1の層110が第2の層120に積層され、第3の層130もまた、第1の層110の反対側の第2の層120に積層された状態のその組み立てられた、スタック構成で、製造及び/又は提供されてもよい。場合によっては、第1の層110は、第2の層120に積層されてもよく、次いで、第1の層110の開口部140及び第2の層120のスリット150を形成するために、穿孔部又は開窓部が積層された層の両方を通って作製されてもよい。いくつかの代替的な実施形態では、開口部140は、第1の層110内に最初に作製されてもよく、スリット150は、第1の層110及び第2の層120がスタック構成で一緒に積層される前に、第2の層120内で別々に作製されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、組織境界面100の層は、同一の広がり(coextensive)を有することができる。例えば、
図1の実施形態に示されるように、第1の層110は、第2の層120の縁部と同一平面上にあってもよく、第3の層130の縁部は、第1の層110と第3の層130との間に第2の層120の縁部を露出させる。いくつかの代替的実施形態では、組織境界面100の層のうちの1つ以上は、互いに同一の広がりを有さなくてもよい。組織境界面層の積層スタックは、組織境界面100が組織境界面100のスタック層を通して同時に引き裂くことによってサイズ決めされることを可能にし得る。
【0044】
図2は、いくつかの実施形態に関連し得る更なる詳細を示している、第1の層110の一例の概略図である。
図2の例に示されるように、開口部140はそれぞれ、長さD
1を有する1つ以上の線状スロットから本質的になってもよく、この長さは約3ミリメートルである。
図2は、開口部140の均一な分布パターンの一例を更に示す。
図2では、開口部140は、第1の層110と実質的に同一の広がりを有し、平行な行及び列の格子内で第1の層110にわたって分布し、この中でスロットはまた互いに平行である。いくつかの実施形態では、
図2の例に示されるように、列は距離D
2離隔されてもよく、これは中心で約3ミリメートルであってもよく、各列内の開口部140は距離D
3離隔されてもよく、これは中心で約3ミリメートルであってもよい。隣接する列の開口部140は、整列されても又はオフセットされてもよい。例えば、隣接する列は、
図2に示されるようにオフセットされてもよく、そのため、開口部140は交互の列で整列され、距離D
4分離され、これは約6ミリメートルである。開口部140の間隔は、いくつかの実施形態では、治療要件に従って様々であってもよく、開口部140の密度を増加させることができる。
図2には示されていないが、第1の層110の開口部140は、様々な異なるパターンで配置されてもよい。例えば、いくつかの代替的実施形態では、開口部140は、垂直な列を有する格子内に配置されてもよい。いくつかの更なる実施形態では、開口部140は、正方形、円、らせん、又は他の幾何学的形状における第1の層110(及び組織境界面100の他の層)の引き裂きを促進するために、幾何学的パターン又は形状で配置されてもよい。例えば、第2の層120のスリット150は、第1の層110の開口部140の配置に対応する列又は幾何学的パターンで配置されてもよい。
【0045】
図3は、第3の層130の一例の概略図であり、いくつかの実施形態に関連し得る更なる詳細を示す。第3の層130の第1の側部160は、いくつかの実施例では接着剤コーティングを有し得る。
図3に示すように、隆起した特徴部170は、均一な分布パターンで配置されてもよく、隆起した特徴部170は、第3の層130と実質的に同一の広がりを有してもよい。
図2の第1の層110の開口部140と同様に、隆起した特徴部170は、平行な行及び列の格子内で第3の層130にわたって配置されてもよい。隆起した特徴部170の列は、隆起した特徴部170の列と第1の層110の開口部140の列とを概ね整列させる(このことは組織境界面100の引き裂きを容易にし得る)ために、第1の層110の開口部140の列の間隔に対応して離隔配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の層110の開口部140及び第2の層120のスリット150と共に、隆起した特徴部170は、組織境界面100の複数の方向の引き裂き及びサイズ調整を容易にするために、平行及び垂直の列の両方に配置されてもよい。隆起した特徴部170はまた、正方形、円、又はらせんなどの幾何学的パターン若しくは形状で配置されてもよく、その結果、隆起した特徴部170は、このような形状及びパターンにおける組織境界面100の引き裂き及びサイズ調整を容易にするために、このような幾何学的パターンで配置された第1の層110の開口部140及び第2の層120のスリット150と整列することができる。
【0046】
図4は、いくつかの実施形態による、第2の層120及び第3の層130の一例の概略図である。
図4の代表的な図では、第3の層130は部分的に除去されて、第2の層120の一部を露出させ、第3の層130の残りの部分が第2の層120に接着又は積層されている。
図4は、スリット150を有する第2の層120の部分、及び隆起した特徴部170を有する第3の層130の部分を示し、第2の層120及び第3の層130は弛緩状態又は非伸張状態にある。図示された弛緩状態では、スリット150は、第2の層120の発泡体材料の性質に起因して観察するのが困難であり得る。第3の層130の隆起した特徴部170の列の少なくとも一部は、第2の層120のスリット150の列と整列されていてもよく、又は重なり合って、第2の層120及び第3の層130の均等かつ整列した引き裂きを容易にすることができる。
【0047】
図5は、いくつかの例示的な実施形態による更なる詳細を示している、
図4の第2の層120及び第3の層130の例示的な部分の概略図である。
図5の代表的な図では、第3の層130の一部分が除去されて、第2の層120の一部分が露出している。具体的には、
図5は、非弛緩状態又は伸張状態の第2の層120の部分を示す。
図5に示されるように、伸張されると、第2の層120のスリット150は、著しくより視認可能となり得る。そのため、第2の層120の一部を少なくともわずかに伸張させることによって、スリット150の1つ以上の列が容易に識別可能であり得、これは、組織境界面100をサイズ調整する目的で第2の層120を引き裂くための適切な点を決定するのに役立ち得る。このような可視化はまた、第3の層130の隆起した特徴部170の列を、組織境界面100がそれに沿って引き裂かれ得るスリット150の列と整列させることができる。第3の層130の隆起した特徴部170と第2の層120のスリット150の列とのこのような整列は、第2の層120及び第3の層130の引き裂き縁部と、組織境界面100の全体とが実質的に同一平面上にあることを確実にすることができる。
【0048】
図6は、いくつかの例示的な実施形態による、組織境界面100のトップに面する又は第2の側部115から見ることができるいくつかの詳細を示している、組織境界面100の例示的な部分の概略図である。より具体的には、
図6は、組織境界面100の一例が、第3の層130、第2の層120、及び下にある第1の層110を、組織境界面100の所望の引き裂き線610に沿って引き裂くことによってどのようにサイズ調整され得るかを示す。例えば、引き裂き線610は、第1の層110の開口部140の列の少なくとも一部分、第2の層120のスリット150の列の一部分と、第3の層130の隆起した特徴部170の列の一部分とが整列している場所に存在してもよい。しかしながら、個々の開口部140、スリット150、及び隆起した特徴部170は、開口部140、スリット150、及び隆起した特徴部170のそれぞれの列に沿って、必ずしも、第1の層110と第2の層120と第3の層130との間で互いに整列する必要はない。加えて、開口部140、スリット150、及び隆起した特徴部170の全ての列が引き裂き線に対応する必要はない。
図6の例に示すように、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130の部分は、開口部140の列、スリット150の列、及び隆起した特徴部170の列に対応する引き裂き線610に沿って引き裂くことができる。第1の層110、第2の層120、及び第3の層130の部分のこのような引き裂き及び分離を通して、組織境界面100の層は、対応する組織部位にサイズ調整され得る。
【0049】
図7は、いくつかの例示的な実施形態による、組織境界面100の第1の側部105から見ることができる更なる詳細を示している、
図6の組織境界面100の例示的な部分の概略図である。より具体的には、
図7の組織境界面100の第1の側部105の図は、第1の層110が、第1の層110の開口部140の列と整列し得る組織境界面100の引き裂き線610に沿ってどのように引き裂かれ得るかを示す。
図6及び7によって集合的に示されるように、組織境界面100は、第1の層110の開口部140の列、第2の層120のスリット150の列、及び第3の層130の隆起した特徴部170の列に対応して整列し得る引き裂き線610に沿って引き裂かれ得る。
【0050】
図8は、いくつかの例示的な実施形態による、
図1の組織境界面100の実施形態を組み込んでもよいドレッシング800の組立図である。例えば、ドレッシング800は、ドレッシング800及び関連する組織境界面100を陰圧療法で使用することを可能にするか、又は特に容易にすることができる追加の構成要素と共に、組織境界面100を含んでもよい。
図8に示されるように、ドレッシング800は、積層された形成で、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130を含むことができる組織境界面100を含んでもよい。
【0051】
図8に示されるように、いくつかの実施形態では、ドレッシング800は、組織境界面100の外周部の周りに位置付けられ、組織部位の周囲の表皮などの取付表面に封止されて、組織境界面100の縁部の周りに有効な封止を提供するために、複数の封止ストリップ805を含むことができる。封止ストリップ805は、第3の層130の外周部に適用されてもよい。例えば、封止ストリップ805の4つの個々の区分は、第3の層130を表皮に封止するために使用されてもよく、封止ストリップ805の4つの区分のそれぞれは、第3の層130の4つの縁部のうちの1つに適用される。いくつかの実施形態では、封止ストリップ805は、その上にアクリル接着剤などの接着剤を有する、ポリウレタンストリップなどのポリマーストリップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、封止ストリップ805は、更に、又は代替的に、ゲル層などの追加の層を含んでもよい。
【0052】
図8の例に示されるように、いくつかの実施形態では、ドレッシング800は、使用前に組織境界面100の第1の側部105を保護するための剥離ライナー810を含んでもよい。剥離ライナー810はまた、例えば、ドレッシング800の展開を支援するための剛性を提供してもよい。剥離ライナー810は、例えば、流延用紙、フィルム、又はポリエチレンであってもよい。更に、いくつかの実施形態では、剥離ライナー810は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又は同様の極性半結晶性ポリマーなどのポリエステル材料であってもよい。剥離ライナー810のための極性半結晶性ポリマーの使用は、ドレッシング800のしわ又は他の変形を実質的に妨げることができる。例えば、極性半結晶性ポリマーは、高度に配向されてもよく、かつ、ドレッシング800の構成要素と接触させたときに、又は温度若しくは環境変化、又は滅菌を受けたときに生じ得る、軟化、膨潤、又は他の変形に対して耐性であり得る。更に、組織境界面100の第1の側部105上の第1の層110に接触するように構成された剥離ライナー810の側部に、剥離剤が配置されてもよい。例えば、剥離剤はシリコーンコーティングであってもよく、剥離ライナー810の手による取り外し及びドレッシング800を損傷又は変形させることなく取り外しを容易にするのに好適な剥離因子を有してもよい。いくつかの実施形態では、剥離剤は、例えば、フルオロカーボン又はフルオロシリコーンであってもよい。他の実施形態では、剥離ライナー810は、コーティングされていなくてもよく、ないしは別の方法で剥離剤なしで使用されてもよい。
【0053】
図8はまた、流体導体820及びドレッシング境界面830の一例を示す。
図8の例に示されるように、流体導体820は、一方の端部でドレッシング境界面830に流体結合することが可能な、可撓性の管とすることができる。ドレッシング境界面830は、
図8の例に示されるような、組織境界面100の上部、又は第2の側部115の開口の上に配置されることにより、流体導体820と組織境界面100との間に流体経路を提供することが可能な、エルボ形コネクタとすることができる。例えば、このような開口は、ユーザーによって切断又は引き裂かれる第3の層130内の中央に配置された開口であってもよい。いくつかの実施形態では、流体導体820はまた、点滴療法で使用するための流体送達導管を含んでもよい。更に、いくつかの実施形態では、ドレッシング境界面830は、陰圧を連通させるための導管及び流体送達導管などの複数の流体導管を含んでもよい。例えば、ドレッシング境界面830は、San Antonio,TexasのKCIから入手可能な、V.A.C.VERAT.R.A.C.(商標)Pad又はSENSAT.R.A.C.(商標)Padであってもよい。
【0054】
組織境界面100の個々の構成要素、より一般的にはドレッシング800は、例えば、流体管理に悪影響を及ぼすことなく、溶剤若しくは非溶剤接着剤で、又は熱溶着で互いに接着されるか、又は別の方法で互いに固定されてもよい。組織境界面100のいくつかの実施形態では、1つ以上の構成要素が抗菌剤で更に処理されてもよい。例えば、第1の層110、第2の層120、及び/又は第3の層130は、抗菌剤でコーティングされてもよい。いくつかの実施例では、流体導体820、ドレッシング境界面830、又はドレッシング800の他の部分は、1つ以上の抗菌剤で追加的に又は代替的に処理されてもよい。好適な剤としては、例えば、金属銀、PHMB、ヨウ素、又はその錯体、並びにポビドンヨウ素、銅金属化合物、クロルヘキシジン、又はこれらの材料のいくつかの組み合わせなどの混合物を挙げることができる。追加的に又は代替的に、組織境界面100の構成要素のうちの1つ以上は、クエン酸及びコラーゲンを含み得る混合物でコーティングされてもよく、これはバイオフィルム及び感染を低減することができる。
【0055】
更なる実施形態では、ドレッシング800は、個々の層及び構成要素の異なる組み合わせを備えてもよい。例えば、組織境界面100は、組織部位に適用するための独立型の製品として提供されてもよい。いくつかの更なる実施形態では、ドレッシング800の個々の層は省略されてもよい。より具体的には、いくつかの代替的な実施形態では、組織境界面100の1つ以上の層は、省略されてもよいか、又は別の層で置換されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組織境界面100は、第1の層110及び第2の層120のみを含んでもよく、第3の層130のフィルムは省略されてもよい。このような実施形態では、第1の層110及び第2の層120を含む組織境界面100は、第1の層110及び第2の層120の上に適用されるカバーなどの追加の封止層が組織部位に適用されてもよい。他の実施形態では、組織境界面100は、2つの有開窓部フィルム層の間に挟まれた発泡体層を含んでもよい。例えば、このような実施形態は、開口部140を有する第1の層110を含んでもよく、第2の層120は、ポリマー発泡体を含み、スリット150と、第1の層110と同一の層などの開口部を有する追加のフィルム層と、を備えてもよい。このような実施形態では、発泡体層及び2つの周囲フィルム層は、積み重ねられ、互いに積層されてもよく、その後、レーザー切断、超音波、又はナイフ若しくは他のブレードを使用した切断など、前述した切断技術のいずれかを使用して、開窓部が層の3つ全てを通って一度に形成されてもよい。
【0056】
使用中、組織境界面100は、切断又は引き裂きを介して特定の領域又は解剖学的領域にサイズ調整されてもよい。剥離ライナー810(含まれる場合)は、組織境界面100の第1の側部105から除去されてもよい。組織境界面100は次に、組織境界面100の複数の層を通して形成され得る1つ以上の引き裂き線に沿って、任意のツール又は器具を使用して、又は使用せずに、手で引き裂かれてもよい。例えば、引き裂き線は、第1の層110の開口部140の列、第2の層120のスリット150の列、及び第3の層130の隆起した特徴部170の列に対応するか、又はこれらと整列することができ、これにより組織境界面100の層を通して完全な引き裂き又は切断を形成する。引き裂き線は、開口部140、スリット150、及び隆起した特徴部170によって形成される、円、正方形などの任意のパターン又は形状に従って、組織境界面100の層を通して作製されてもよい。したがって、一旦サイズ調整されると、組織境界面100は、円、正方形、矩形などの表面積を有してもよい。組織境界面100は、第1の層110、第2の層120、及び第3の層130などの個々の層が互いに分離されるか、又はばらばらに壊れることなく、適切な大きさに引き裂き又は切断され得る。
【0057】
組織境界面100が組織部位の領域にサイズ調整及び/又は成形されると、組織境界面100は、組織部位、特に表面組織部位及び隣接する表皮の内部、上方、上に配置されるか、又は他の方法で近接して配置され得る。第1の層110は、第2の層120と組織部位との間に介在してもよい。例えば、第1の層110は、第2の層120と表皮との間の直接接触を防止するために、表面創傷(創傷の縁部を含む)及び損傷していない表皮の上に配置されてもよい。表面創傷の処置又は表面創傷上の組織境界面100の配置は、組織境界面100を身体の表面に直接隣接して配置すること、又は身体の表面の少なくとも一部の上に延ばすことを含む。第2の層120は、第1の層110と第3の層130との間に配置されてもよく、第3の層130は、穿孔部を欠くために、第1の層110、第2の層120、及び組織部位の上の閉塞層又はドレープとして機能することができる。次いで、封止ストリップ805を、組織境界面100の第3の層130の周りに配置し、隣接する表皮などの組織部位を取り囲む取付表面に封止して、組織部位の周りの空気シールを可能にしてもよい。
【0058】
組織境界面100の幾何学的形状及び寸法は、特定の用途又は解剖学的構造に適合するように変化し得る。例えば、組織境界面100の幾何学的形状又は寸法は、肘又は踵などの困難な解剖学的表面に対する有効かつ確実な封止を、組織部位及びその周囲において提供するように、適合させることができる。したがって、組織境界面100は、外部環境から実質的に隔離された、組織部位に近接する封止された治療環境を提供することができる。いくつかの用途において、充填材もまた、組織部位と組織境界面100の第1の層110との間に配置されてもよい。例えば、組織部位が表面創傷である場合、創傷充填材が創傷の内部から創傷周囲まで適用されてもよく、第1の層110は創傷周囲及び創傷充填材の上に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、充填材は、連続気泡発泡体などのマニホールドであってもよい。充填材は、いくつかの実施形態では、第2の層120と同じ材料を含むか、又はそれから本質的になることができる。既に構成されていない場合、ドレッシング境界面830は、第3の層130に形成された開口の上に配設されてもよい。流体導体820は、ドレッシング境界面830に、及び封止された治療環境内の圧力を低減することができる、陰圧源に流体連結されてもよい。
【0059】
いくつかの更なる実施形態では、組織境界面100の設計及び原理はまた、組織部位を処置するためのドレッシング800又は治療システムの他の態様に組み込まれてもよい。例えば、組織境界面100の積層された層状設計は、引き裂かれ、カスタマイズ可能な様式でサイズ調整され得る薄型流体導管の形態で提供されてもよい。このような導管は、ドレッシング境界面830を陰圧源に結合するための流体導体820に加えて、又はその代わりに使用されてもよい。組織境界面100の層の開口部140、スリット150、及び隆起した特徴部170は、患者への特定の用途に応じて、そのような薄型導管の長さをカスタマイズするのに特に有用であり得る。例えば、組織境界面100のいくつかの特定の実施形態は、形成されるより長い薄型流体導管を可能にするために、より長いストリップ又はロールに形成されてもよい。更に、いくつかの実施形態では、組織境界面100は、流体導管を形成するためにカスタムサイズ調整を容易にするために、組織境界面100のそれぞれの層を通る開窓部又は他の開口部の特定のパターンを含んでもよい。例えば、組織境界面100は、複数の平行かつ垂直な開窓部の列を有する部分、並びに同心円のパターンで開窓部を有する追加の部分を含んでもよい。同心円を有する組織境界面100の部分は、追加の流体導管又は場合によっては組織ドレッシングのいずれかが、カスタマイズされた薄型流体導管に流体連結され得る、境界面又はランディングパッドに形成されてもよい。
【0060】
図9は、本明細書による、組織部位に陰圧療法を提供することが可能な治療システム900の例示的実施形態の簡略化機能ブロック図である。治療システム900は、陰圧源905などの、陰圧の発生源又は供給部と、1つ以上の分配構成要素とを含み得る。分配構成要素は、好ましくは着脱可能であり、使い捨て可能、再使用可能、又はリサイクル可能とすることもできる。ドレッシング800などのドレッシング、及び容器915などの流体容器は、治療システム900のいくつかの例に関連し得る分配構成要素の例である。容器915は、組織部位から引き出された滲出液及び他の流体を処理するために使用することが可能な、容器、キャニスタ、パウチ、又は他の貯留構成要素を表している。
図9の例に示されるように、ドレッシング800は、組織境界面100を含み得るか、又は組織境界面100から本質的になるものとすることができる。いくつかの実施形態では、ドレッシング800は、カバー925を更に含んでもよい。
【0061】
カバー925を含むドレッシング800の実施形態では、カバー925は、追加の細菌障壁及び物理的外傷からの保護を提供し得る。カバー925はまた、2つの構成要素間、又は、治療環境と局所的外部環境との間などの2つの環境間において、蒸発損失を低減させ、流体封止を提供することが可能な材料から、構築することもできる。カバー925は、例えば、所与の陰圧源に関して、組織部位における陰圧を維持するために適切な封止を提供することが可能な、エラストマーのフィルム若しくは膜を含み得るか、又はそのようなフィルム若しくは膜から成るものとすることができる。カバー925は、いくつかの用途において、高い水蒸気透過率(MVTR)を有してもよい。例えば、MVTRは、いくつかの実施形態では、38℃及び相対湿度(RH)10%において、ASTM E96/E96MのUpright Cup Methodによる直立カップ技術を使用して測定された、24時間当たり少なくとも250グラム毎平方メートルであり得る。いくつかの実施形態では、24時間当たり最大5,000グラム毎平方メートルのMVTRが、有効な通気性及び機械的特性をもたらし得る。いくつかの実施形態では、取付デバイスを使用して、カバー925を、無傷の表皮、ガスケット、又は別のカバーなどの取付表面に取り付けることができる。例えば、取付デバイスは、組織部位の周囲の表皮にカバー925を接合するように構成されている、アクリル接着剤などの医学的に許容可能な感圧接着剤とすることができる。取付デバイスの他の例としては、両面テープ、糊、ヒドロコロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル、又はオルガノゲルを挙げることができる。
【0062】
いくつかの例示的実施形態では、カバー925は、水蒸気に対して透過性であるが液体に対しては不透過性である、ポリウレタンフィルムなどのポリマードレープとすることができる。かかるドレープは、典型的には、25~50ミクロンの範囲の厚さを有する。透過性材料に関しては、透過性は一般に、所望の陰圧を維持することが可能であるように、十分に低くするべきである。カバー925は、例えば、以下の材料のうちの1つ以上を含み得る:親水性ポリウレタンなどのポリウレタン(PU)、セルロース誘導体、親水性ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水性アクリル、親水性シリコーンエラストマーなどのシリコーン、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、エチレン酢酸ビニル(EVA)、コポリエステル、及びポリエーテルブロックポリアミドコポリマー。そのような材料は、例えば、3M Company(Minneapolis Minnesota)から市販のTegaderm(登録商標)ドレープ;Avery Dennison Corporation(Pasadena,California)から市販のポリウレタン(PU)ドレープ;例えばArkema S.A.(Colombes,France)製の、ポリエーテルブロックポリアミドコポリマー(PEBAX);並びに、Expopack Advanced Coatings(Wrexham,United Kingdom)から市販のInspire2301及びInspire2327ポリウレタンフィルムとして、市販されている。いくつかの実施形態では、カバー925は、2600g/m2/24時間のMVTR(直立カップ技術)及び約30ミクロンの厚さを有する、INSPIRE2301を含み得る。
【0063】
治療システム900はまた、コントローラ930などの、レギュレータ又はコントローラも含み得る。更に、治療システム900は、動作パラメータを測定して動作パラメータを示すフィードバック信号をコントローラ930に提供する、センサを含んでもよい。例えば、
図9に示されるように、治療システム900は、コントローラ930に接続されている、第1のセンサ935及び第2のセンサ940を含み得る。
【0064】
治療システム900のいくつかの構成要素は、センサ、処理ユニット、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示デバイス、又は治療を更に促進するユーザー境界面、などの他の構成要素内に収容されるか、又はそれらと併せて使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、陰圧源905を、コントローラ930及び他の構成要素と共に、治療ユニット内に組み込むことができる。
【0065】
一般に、治療システム900の構成要素は、直接又は間接的に結合させることができる。結合としては、流体、機械的、熱的、電気的、若しくは化学的結合(化学結合など)、又は、文脈によっては、結合のいくつかの組み合わせを挙げることができる。
【0066】
陰圧源905などの陰圧供給部は、陰圧の空気のリザーバとすることができ、あるいは、例えば、真空ポンプ、吸引ポンプ、多くのヘルスケア施設で利用可能な壁面吸引ポート、又はマイクロポンプなどの、手動若しくは電動のデバイスとすることもできる。「陰圧」とは、一般に、封止治療環境の外部の局所的環境における周囲圧力などの局所的周囲圧力よりも低い圧力を指す。多くの場合、局所的周囲圧力はまた、組織部位が位置している大気圧でもあり得る。あるいは、この圧力は、組織部位における、組織に関連する静水圧よりも、低い場合もある。別途指示のない限り、本明細書で記述される圧力の値は、ゲージ圧である。陰圧の増加とは、典型的には、絶対圧力の減少を指すのに対して、陰圧の減少は、典型的には、絶対圧力の増加を指す。陰圧源905によって提供される陰圧の量及び性質は、治療要件に応じて変化し得るが、圧力は一般に、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の、一般に粗い真空(rough vacuum)とも称される、低真空(low vacuum)である。一般的な治療範囲は、-50mmHg(-6.7kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0067】
コントローラ930などのコントローラは、陰圧源905などの、治療システム900の1つ以上の構成要素を動作させるようにプログラムされたマイクロプロセッサ又はコンピュータであってもよい。コントローラ930は、治療システム900の1つ以上の動作パラメータを制御することができ、動作パラメータとしては、例えば、陰圧源905に適用される電力、陰圧源905によって生成される圧力、又は組織境界面100に分配される圧力を挙げることができる。コントローラ930はまた、好ましくは、フィードバック信号などの1つ以上の入力信号を受信するように構成されており、それらの入力信号に基づいて1つ以上の動作パラメータを修正するようにプログラムされている。
【0068】
第1のセンサ935及び第2のセンサ940などのセンサは、一般に、物理的現象又は特性を検出又は測定するように動作可能な任意の装置として当該技術分野において公知であり、一般に、検出又は測定された現象又は特性を示す信号を提供する。例えば、第1のセンサ935及び第2のセンサ940は、治療システム900の1つ以上の動作パラメータを測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、第1のセンサ935は、空気経路内の圧力を測定し、測定された圧力を示す信号に測定値を変換するように構成された変換器であってもよい。第2のセンサ940は、いくつかの実施形態では、電圧又は電流などの、陰圧源905の動作パラメータを、任意選択的に測定することができる。
【0069】
操作時に、組織部位内に、組織部位の上に、組織部位上に、又は他の方式で組織部位の近位に、組織境界面100を配置することができる。任意に、カバー925を組織境界面100上に配置して、組織部位の近傍の取付表面に封止することができる。例えば、カバー925は、組織部位の周辺の無傷の表皮に封止することができる。それゆえ、ドレッシング800は、実質的に外部環境から隔離された、組織部位に近位の封止治療環境を提供することができ、陰圧源905は、封止治療環境における圧力を低下させることができる。
【0070】
密閉療法環境内などの、別の構成要素又は場所における圧力を低下させるために陰圧源を使用する流体力学は、数学的に複雑となる恐れがある。しかしながら、陰圧療法に適用可能な流体力学の基本原理は、当業者には一般に周知であり、圧力を低下させるプロセスは、例えば、本明細書では例示的に、陰圧を「送達する」、「分配する」、又は「発生させる」として説明することができる。
【0071】
一般に、滲出液及び他の流体は、流体経路に沿って、より低い圧力に向けて流れる。したがって、「下流」という用語は、典型的には、陰圧源に比較的より近い、又は陽圧源からより遠く離れている流体経路内のものを意味する。逆に、「上流」という用語は、陰圧源から比較的より遠く離れているか、又は陽圧源により近いものを意味する。同様に、かかる基準系における流体の「入口」又は「出口」の観点から特定の特徴を説明することが便利であり得る。この向きは、一般に、本明細書における様々な特徴及び構成要素を説明する目的のために想定される。しかしながら、流体経路はまた、一部の用途では、陰圧源を陽圧源に置き換えることなどによって逆転させることもでき、この説明上の規定は、限定的な規定として解釈されるべきではない。
【0072】
封止治療環境において、組織境界面100を介して組織部位にわたって印加される陰圧は、組織部位における巨大歪み及び微小歪みを誘発することができる。陰圧はまた、組織部位から滲出液及び他の流体を除去することもでき、それらを容器915内に収集することができる。例えば、組織境界面100を通して印加される陰圧は、第1の層110の開口部140にわたって陰圧差を生じさせることができ、これは、開口部140をそれらの静止状態から開放又は拡張することができる。例えば、開口部140が第1の層110を通る実質的に閉鎖された開窓部を含んでもよいいくつかの実施形態では、開窓部にわたる圧力勾配は、第1の層110の隣接する材料を歪ませることができ、また、ダックビル弁の動作と同様に、開窓部の寸法を増大させて、それらを通る液体移動を可能にすることができる。開口部140を開口することにより、開口部140を通り、第2の層120を通り、第3の層130を通って容器915内へと排出及び他の液体移動を可能にすることができる。圧力の変化はまた、第2の層120を拡張及び収縮させることができ、第1の層110は、第2の層120の移動によって引き起こされる刺激から表皮を保護することができる。第1の層110はまた、第2の層120への組織の曝露を実質的に低減又は防止することができ、これは、第2の層120への組織の成長を抑制することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、コントローラ930は、第1のセンサ935などの1つ以上のセンサから、データを受信及び処理することができる。コントローラ930はまた、組織境界面100に送達される圧力を管理するために、治療システム900の1つ以上の構成要素の動作を制御することもできる。いくつかの実施形態では、コントローラ930は、所望の標的圧力を受信するための入力を含み得るものであり、組織境界面100に印加されることになる標的圧力の設定及び入力に関するデータを処理するように、プログラムすることができる。いくつかの例示的実施形態では、標的圧力は、組織部位における治療に関して所望される標的陰圧として操作者によって設定され、次いで、コントローラ930に入力として提供される、固定圧力値とすることができる。標的圧力は、組織部位を形成している組織のタイプ、(存在する場合には)負傷又は創傷のタイプ、患者の病状、及び主治医の選好に基づいて、組織部位ごとに変化し得る。所望の標的圧力を選択した後、コントローラ930は、その標的圧力に基づいて、陰圧源905を1つ以上の制御モードで動作させることができ、組織境界面100における標的圧力を維持するために、1つ以上のセンサからフィードバックを受信することができる。
【0074】
陰圧源905が取り外されるか、又はオフにされる場合、組織境界面100の第1の層110の開口部140にわたる圧力差は消散することができ、開口部140が静止状態に移動し、排出物又は他の液体が第1の層110を通って組織部位に戻ることができる速度を防止又は低減することができる。
【0075】
本明細書に記載されるシステム、装置、及び方法は、著しい利点をもたらし得る。例えば、組織部位に適用するためのいくつかのドレッシング及び組織境界面は、1つ以上の切断又はサイズ調整ツールを必要とすることに加えて、良好な嵌合及び封止を達成するために適切にサイズ調整及び適用される時間及びスキルを必要とする場合がある。対照的に、組織境界面100のいくつかの実施形態は、単純なサイズ調整及び切断工程を用いて組織部位に適用することができ、したがって、いくつかの以前のドレッシングと比較して時間及び労力の量が削減される。例えば、組織境界面100は、はさみ又はメスの使用を必要とせずに、手で引き裂くことができる。重要なことに、組織境界面100の複数の層は、一度で引き裂くことができ、したがって、個々の層を別々にサイズ調整し、層間の潜在的なサイズ調整不整合に関連する課題を回避することができる。したがって、組織境界面100は、より複雑なサイズ調整プロトコルを必要とし得る他のドレッシングの多くの利点を提供しながら、容易に切断され、組織部位(創傷周囲を含む)に適用され得る完全一体型ドレッシングを提供することができる。そのような利益としては、良好なマニホールド、有益な肉芽形成、及び末梢組織の浸軟からの保護を挙げることができる。組織境界面100はまた、組織部位において有意な空間に適合し、これを占有してもよく、これは、中程度の深さ及び中レベルから高レベルの滲出液を有する創傷に対して特に有利であり得る。加えて、組織境界面100は、他のフィルム層内に多孔質発泡体材料を含有することによって、組織内部成長の機会を低減しつつ、肉芽形成を促進することができる。結果として、組織境界面100は、例えば、最大7日間、長期装用時間のために装用され得る。
【0076】
組織境界面100のいくつかの実施形態の設計はまた、大きな予め切断された部分のみを含み得るドレッシング材など、市販されているいくつかの他のドレッシング材と比較して、組織境界面100のよりカスタム又は特別に調整されたサイズを達成することを可能にし得る。例えば、第1の層110の複数の開口部140、第2の層120のスリット150、及び第3の層130の隆起した特徴部170は、特定の位置で組織境界面100を通して1つ以上の引き裂き線が作製されることを可能にしてもよく、したがって、組織境界面100のサイズは、組織境界面が適用される組織部位の面積又はサイズに密接に対応することを可能にする。複数の特定の線に沿って組織境界面100を引き裂くことが可能であることによって提供される可撓性はまた、無駄なドレッシング材をより少なくすることができる。例えば、ユーザーは、組織境界面100のサイズを調整して、治療される組織部位に適切な嵌合を達成するために、組織境界面100を介して複数の又は反復された引き裂きを行うことができる。
【0077】
いくつかの例示的な実施形態において示されているが、当業者であれば、本明細書に記載されたシステム、装置、及び方法は、添付の特許請求の範囲内に入る様々な変更及び修正が容易に可能であることを認識するであろう。更には、「又は(or)」などの用語を使用する様々な代替形態の説明は、文脈によって明らかに必要とされない限り、相互排他性を必要とするものではなく、また、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、文脈によって明らかに必要とされない限り、対象を単一の例に限定するものではない。構成要素はまた、販売、製造、組み立て、又は使用の目的のために、様々な構成で組み合わせるか、又は削除することもできる。例えば、いくつかの構成では、製造又は販売のために、組織境界面110、容器915、又は任意の他の開示された構成要素は、他の構成要素から分離することができる。他の例示的な構成では、コントローラ930はまた、他の構成要素とは独立して製造され、構成され、組み立てられ、又は販売されてもよい。
【0078】
添付の特許請求の範囲は、上述の主題の新規かつ発明的な態様を記載するものであるが、特許請求の範囲はまた、具体的には詳細に列挙されていない追加的主題も包含し得る。例えば、新規かつ発明的な特徴を、当業者には既知であるものから区別するために、必要とされない場合には、特定の特徴、要素、又は態様を、特許請求の範囲から省略することができる。いくつかの実施形態の文脈において説明される特徴、要素、及び態様はまた、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲から逸脱することなく、省略するか、組み合わせるか、又は、同じ目的、均等の目的、若しくは同様の目的を果たす代替的特徴によって置き換えることもできる。