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特許7367114光学用スチレン系樹脂組成物、成形品および導光体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】光学用スチレン系樹脂組成物、成形品および導光体
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20231016BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20231016BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20231016BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C08L25/08
C08K5/05
G02B1/04
F21V8/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022071868
(22)【出願日】2022-04-25
(62)【分割の表示】P 2017042212の分割
【原出願日】2017-03-06
(65)【公開番号】P2022090115
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】藤松 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】宮島 悠平
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173033(JP,A)
【文献】特開2010-211977(JP,A)
【文献】国際公開第2013/151055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/00-25/18
C08K 3/00-13/08
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂、(B)C6以上のアルコールを含み、(C)フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を含むスチレン系樹脂組成物であって、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂の含有量が80~99.90質量%であり、光路長2mmにおける初期の全光線透過率が85%以上であり、キセノン耐光試験前後(500時間)の黄色度の変化量ΔYI(Xe)が10以下であり、
前記C6以上のアルコールの炭素数は、C6~C20のアルコールであり、
前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記C6以上のアルコールの含有量は、0.001~0.09質量%であり、
前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記リン系酸化防止剤の含有量が、0.001~1質量%であり、
前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、0~1質量%である、る、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
光路長115mmにおける初期の分光透過率は、78%以上である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
キセノン耐光試験前の黄色度初期YIが3.0以下である、請求項1または請求項2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
100℃耐熱試験前後(1000時間)の黄色度の変化量ΔYI(heat)が3以下である、請求項1~請求項3の何れかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記C6以上のアルコールは、C8~C20のアルコールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~請求項4の何れかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記C6以上のアルコールは、1-オクタノールまたは2-エチルヘキサノールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~請求項5の何れかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、0.001~1質量%である、請求項1~請求項6の何れかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂中の前記スチレン系単量体単位および前記(メタ)アクリル酸単量体単位の合計含有量100質量%に対し、前記スチレン系単量体単位の含有量は70~99質量%であり、前記(メタ)アクリル酸系単量体単の含有量は30~1質量%である、請求項1~請求項7の何れかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
紫外線吸収剤およびアミン系光安定剤の少なくとも一方を含む、請求項1~請求8の何れかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
【請求項11】
請求項10に記載の成形品からなる導光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色相および透明性に優れ、耐光性に優れたスチレン系樹脂組成物、成形品、導光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学製品は、光源とその他の部材によって形成される。光学部材には、様々な透明材料が用いられる。光学部材の一つである光導光体(以下、導光体ともいう)は、レンズ状、ブロック状、板状、フィルム状、繊維状、棒状、中空状、また、湾曲させたりらせん状にしたりなど様々な形に造形されたものもあり、その形状は様々である。例えば板状のものは導光板として広く知られる。これらの導光体は照明やテレビ、モニター、ディスプレイ、パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーション、モバイル機器、看板、棚板、伝送など様々な用途で、屋内、屋外に限らず、自動車や電車、航空機などの車両などの環境においても、広く用いられている。
このような用途の中には、始めに組み込まれた部材を交換することなく使用することも想定され、樹脂材料を長期に渡り、劣化、変色せずに使用できることが求められる。光学用途にはアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂が広く用いられているが、近年光源のLED化が進み、光源に含まれる紫外線が少なくなり、紫外線による劣化、変色のため敬遠されていたスチレン系樹脂の利用もされてきている。例えば特許文献1には、導光板にスチレン系樹脂が使用されることが記載されている。
光源のLED化が進む中でも、長期間劣化、変色することなく使用できる材料は求められる。一例として、照明器具において、内蔵される光源の光以外にも、照明器具自体は自身以外から発せられた光にも曝される。代表的なものは太陽光であり、紫外線を含んでいるため樹脂部材を劣化、変色させる要因となる。また、内蔵される光源の光強度が強くなると、劣化、変色を促進させる要因となる。
光学用途の中には、高温環境の下で使用される部材もあり、これらの部材には、高い耐熱性が要求される。高耐熱性の材料として、ポリカーボネートが知られているが、スチレン系樹脂においても、特定の成分を共重合することで耐熱性を高めた特殊なスチレン系樹脂が知られている(特許文献2)。
しかしながら、スチレン系樹脂を高温環境の下で、光学部材として適用するにあたり、これまでのスチレン系樹脂では、劣化、変色に対して十分な性能を有するものではないものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-170186号公報
【文献】特開2000-103922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、色相および透明性に優れ、長期間の光暴露によっても色相の変化が小さいスチレン系樹脂組成物、成形品、導光体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、色相および透明性に優れ、(A)スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂、(B)エーテル化合物および/またはC6以上のアルコールを含み、(C)フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を含むスチレン系樹脂組成物であって、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂の含有量が80質量%以上であり、光路長2mmにおける初期の全光線透過率が85%以上であり、キセノン耐光試験前後(500時間)の黄色度の変化量ΔYI(Xe)が10以下である、スチレン系樹脂組成物。
が提供される。
【0006】
本発明者らは、長期間使用時に発生する変色を抑制すべく鋭意検討を行い、スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂に対し、エーテル化合物および/またはC6以上のアルコールを添加することで透明性が向上し、さらにフェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を添加することで黄変による色相変化を抑制できることを見出した。
【0007】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す種々の実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、光路長115mmにおける初期の分光透過率は、78%以上である。
好ましくは、キセノン耐光試験前の黄色度初期YIが3.0以下である。
好ましくは、100℃耐熱試験前後(1000時間)の黄色度の変化量ΔYI(heat)が3以下である。
好ましくは、前記C6以上のアルコールは、C8~C20のアルコールから選ばれる少なくとも1種である。
好ましくは、前記C6以上のアルコールは、1-オクタノールまたは2-エチルヘキサノールから選ばれる少なくとも1種である。
好ましくは、前記エーテル化合物は下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルである、
【化1】
(Rはアルキル基またはアリール基であり、RはHまたはアルキル基またはアリール基であり、RはHまたはアルキル基またはアリール基であり、nは整数でアルキレンオキサイド単位の付加数を表す)。
好ましくは、前記エーテル化合物は下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである、
【化2】
(Rは炭素原子数8~18のアルキル基n=1~15の整数である)。
好ましくは、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記エーテル化合物の含有量は、0.001~5質量%である。
好ましくは、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対するC6以上のアルコールの含有量は、0.001~5質量%である。
好ましくは、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、0.001~1質量%である。
好ましくは、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対する前記リン系酸化防止剤の含有量が、0.001~1質量%である。
好ましくは、前記スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂中の前記スチレン系単量体単位および前記(メタ)アクリル酸単量体単位の合計含有量100質量%に対し、前記スチレン系単量体単位の含有量は70~99質量%であり、前記(メタ)アクリル酸系単量体単の含有量は30~1質量%である。
好ましくは、紫外線吸収剤およびアミン系光安定剤の少なくとも一方を含む。
好ましくは、上記スチレン系樹脂組成物からなる成形品である。
好ましくは、上記成形品からなる導光体である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
<<スチレン系樹脂組成物>>
スチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂、エーテル化合物および/またはC6以上のアルコール(B)、フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤(C)を少なくとも含む。また、スチレン系樹脂組成物は、本発明の特徴を損ねない範囲で、これらの成分に加えてその他の各種添加剤を含んでもよい。
【0010】
<<スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂>>
本発明のスチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体を共重合して得ることができる。
【0011】
スチレン系単量体は、芳香族ビニル系モノマーであり、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の単独または2種以上の混合物であり、好ましくは、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンの単独または2種以上の混合物であり、より好ましくは、スチレンである。
(メタ)アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸モノマーであり、好ましくはメタクリル酸である。
【0012】
また、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体は、本発明の特徴を損ねない範囲で、他の単量体と共重合してもよい。ここで、他の単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、または無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。
【0013】
これらのモノマーの中には、輸送や貯蔵の際の安全な取扱いを目的として、重合禁止剤が一定量含まれる。例えば、スチレン系単量体であるスチレンには4-tertブチルカテコール(以下TBCということがある)が含まれる。また、メタクリル酸の中にはハイドロキノンモノメチルエーテル(以下MEHQということがある)が含まれる。
50ppm以下の重合禁止剤を含むスチレン系単量体を使用することが好ましく、より好ましくは30ppmであり、より好ましくは20ppm以下であり、より好ましくは15ppm以下である。
500ppm以下の重合禁止剤を含む(メタ)アクリル酸系単量体を使用することが好ましく、より好ましくは400ppm以下、より好ましくは300ppm以下である。
これらの禁止剤は多く含まれる程、色相が黄色みを帯びる傾向となる他、得られた成形品の透明性を損なうなど、本願で目的とする光学特性を損なうことがある。
【0014】
スチレン系単量体中のTBC濃度の測定は次の方法で行った。分液ロートに50mlのスチレン系単量体を入れ、10mlの1N水酸化ナトリウムを加えて約2分間振とうした。2層に静置分離後、下層の液を抜き取り、分光光度計を用いて吸光度(波長486nm)を測定し、あらかじめ作成しておいた検量線より濃度を算出した。
【0015】
(メタ)アクリル酸単量体中のMEHQ濃度の測定は次の方法で行った。分液ロートに50mlの(メタ)アクリル酸系単量体を入れ、10mlの1N水酸化ナトリウムを加えて約2分間振とうした。2層に静置分離後、下層の液を抜き取り、分光光度計を用いて吸光度を測定し、あらかじめ作成しておいた検量線より濃度を算出した。
【0016】
スチレン系樹脂組成物100質量%に対するスチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂の含有量は、80質量%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。また、当該樹脂の含有量は、例えば、80~99.90質量%であり、好ましくは90~99.85質量%であり、より好ましくは95~99.80質量%である。また、当該樹脂の含有量は、具体的には例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、97.8、98.99、99.09、99.29、99.39、99.59、99.6、99.69、99.7、99.74、99.79、99.84、99.89、質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂中のスチレン系単量体単位および(メタ)アクリル酸単量体単位の合計含有量100質量%に対し、スチレン系単量体単位の含有量は、好ましくは70~99質量%であり、より好ましくは80~99質量%であり、さらに好ましくは90~99質量%であり、(メタ)アクリル酸系単量体単の含有量は好ましくは30~1質量%であり、より好ましくは20~1質量%であり、さらに好ましくは10~1質量%である。
【0018】
スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂中の(メタ)アクリル酸系単量体単位含有量の測定は室温で実施する。スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解後、水酸化カリウム0.1mol/Lエタノール溶液にて中和滴定を行い、終点を検出し、水酸化カリウムエタノール溶液の使用量より、(メタ)アクリル酸系単量体単位の質量基準の含有量を算出する。なお、電位差自動滴定装置を使用することができ、京都電子工業株式会社製AT-510により測定を行うことができる。スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂中の(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量は、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂の重合時における原料のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体との組成比によって調整することができる。
【0019】
スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン系共重合体の重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0020】
スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤などの重合助剤、その他の重合助剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0021】
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0022】
スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂の重量平均分子量は15万~70万であり、16万~70万であることが好ましく、16万~40万又は18万~50万であることがさらに好ましい。15万未満では成形品の強度が不十分となり、70万を超えると成形性が著しく低下する。スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂の重量平均分子量は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0023】
<<添加剤B:エーテル化合物・C6以上のアルコール>>
本発明のスチレン系樹脂組成物は、エーテル化合物および/またはC6以上のアルコールを必須成分として含有する。透明性が向上するからである。好ましくは、エーテル化合物およびC6以上のアルコールを併用する。
【0024】
スチレン系樹脂組成物100質量%に対するエーテル化合物の含有量は、好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.005~2質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.2質量%である。
また、スチレン系樹脂組成物100質量%に対するC6以上のアルコールの含有量は、好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.005~1質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.1質量%である。
エーテル化合物および/またはC6以上のアルコールを上記含有量で添加した場合、透明性が向上するからである。スチレン系樹脂組成物100質量%に対するエーテル化合物およびC6以上のアルコールの含有量は、それぞれ、具体的には例えば、0.001、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
スチレン系樹脂組成物に含有される上記エーテル化合物は、好ましくは下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。
【化1】
(Rはアルキル基またはアリール基であり、RはHまたはアルキル基またはアリール基であり、RはHまたはアルキル基またはアリール基であり、nは整数でエチレンオキサイド単位の付加数を表す)
【0026】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、一般的には、上記一般式(1)のRで表される置換基を有するアルコールに、アルケンオキサイドを付加することで合成される。このようにして得られたポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、通常アルキレンオキサイド単位の付加数に分布を有する。アルキレンオキサイド単位の平均付加数は1~50が好ましく、より好ましくは1~30、より好ましくは1~15であり、より好ましくは4~12である。具体的には、R=Hのエチレンオキサイド単位、R=CHのプロピレンオキサイド単位等があるが、本願で得られる効果に対しては、エーテル結合部分が重要であるため、アルキレンオキサイド中のRは多様なアルキル基またはアリール基を適用できる。また、エチレンオキサイドとともにプロピレンオキサイドを付加するなど、複数種類のアルキレン単位を含むものであってもよい。
【0027】
スチレン系樹脂組成物に含有される上記エーテル化合物は、より好ましくは、下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【化2】
(Rは炭素原子数8~18のアルキル基、nは1~15の整数である)
【0028】
スチレン系樹脂組成物に含有される上記エーテル化合物は、さらに好ましくは、下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【化3】
(Rは炭素原子数10~14のアルキル基、nは4~12の整数である)
【0029】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、具体的には、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンカプリルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルエーテル)、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ポリオキシエチレンドデシルエーテル)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミスチルエーテル(ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル)、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル(ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル)、ポリオキシエチレンヘプタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、好ましくは、ポリオキシエチレンカプリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミスチルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルであり、より好ましくは、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミスチルエーテルであり、さらに好ましくは、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである。エーテル化合物は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0030】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル含有量の測定は次の方法で行う。樹脂組成物5gを精秤し、THFに溶解する。溶解後、メタノール及び少量の塩酸でポリマー分を再沈処理し、ろ過により再沈物を除去する。ろ液を濃縮し、最終的に10mlメタノール溶液の濃縮液とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの定量を行う。なお、定量はポリオキシアルキレンアルキルエーテル濃度既知のメタノール溶液を3点作成し、検量線を作成することで行う。
HPLC機種:日本ウォーターズ株式会社製 allianceシステム2695セパレーションモジュール
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:東ソー株式会社製 TSKgel ODS-120T 4.6mm(ID)×15cm(L)
移動相:メタノール/水=80/20(体積比)にリン酸0.2質量%添加
流量:1.0ml/分
カラムオーブン温度:40℃
検出器温度:30℃
【0031】
スチレン系樹脂組成物に含有される上記C6以上のアルコールは、炭素数が6以上の有機基を有するアルコール化合物である。有機基は、好ましくは直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは直鎖のアルキル基である。炭素数は、好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、例えば好ましくは6~20であり、より好ましくは8~12である。また、上記C6以上のアルコールは、好ましくは第一級アルコールである。
【0032】
C6以上のアルコールは、具体的には、1-ヘキサノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-イコサノール等である。C6以上のアルコールは、好ましくは、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノールであり、より好ましくは、1-オクタノール、2-エチルヘキサノールである。C6以上のアルコールは、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0033】
C6以上のアルコール含有量の測定は次の方法で行う。樹脂組成物0.5gを精秤し、クロロホルムに溶解する。内部標準としてエイコサンを入れ、10mLのクロロホルム溶液となるよう調整する。この調整液をガスクロマトグラフィー(以下GCと記載)によって定量する。定量は濃度既知のアルコールと内部標準であるエイコサンのピーク面積比を予め測定しておき、樹脂組成物のクロロホルム溶液の測定ピーク面積比から算出する。
GC装置:島津 GC-14A
検出器:FID型検出器
カラム : ジーエルサイエンス社製3mm(ID)×2m(L)
充填剤 : PEG-20M、UniportB 25%、60/80mesh
カラム温度 : 175℃
キャリアガス : 窒素
【0034】
<<添加剤C:リン系酸化防止剤・フェノール系酸化防止剤>>
本発明のスチレン系樹脂組成物は、上記量の添加剤Bに加えて、リン系酸化防止剤および/またはフェノール系酸化防止剤を必須成分として含有する。耐光性が向上し、黄変による色相変化を抑制でき、さらに透明性の低下を低減できるからである。好ましくは、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤を併用する。
【0035】
スチレン系樹脂組成物100質量%に対するリン系酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.8質量%である。
また、スチレン系樹脂組成物100質量%に対するフェノール系酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.8質量%である。
リン系酸化防止剤および/またはフェノール系酸化防止剤を上記含有量で添加した場合、耐光性が向上し、黄変による色相変化を抑制でき、さらに透明性の低下を低減できるからである。スチレン系樹脂組成物100質量%に対するリン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の含有量は、それぞれ、具体的には例えば、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
リン系酸化防止剤は、三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン系酸化防止剤は、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4'-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス-[2-メチル-4,6-ビス-(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エチルフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。耐加水分解性に優れたものが好ましく、そのようなリン系酸化防止剤は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカンであり、特に好ましくは、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイトである。リン系酸化防止剤は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0037】
フェノール系酸化防止剤は、基本骨格にフェノール性水酸基を持つ酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス〔(ドデシルチオ)メチル〕-o-クレゾール、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、DL-α-トコフェロール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス-[3,3-ビス-(4'-ヒドロキシ-3'-tert―ブチルフェニル)-ブタン酸]-グリコールエステル等が挙げられる。好ましくは、フェノール系酸化防止剤は、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。フェノール系酸化防止剤は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
【0038】
上記のようにリン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤には非常に多様なものがその中でも、リン系酸化防止剤が、以下に示す(C-1)~(C-4)の中から選ばれる少なくとも1種であり、フェノール系酸化防止剤が、以下に示す(C-5)~(C-8)の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、リン系酸化防止剤が(C-1)であり、フェノール系酸化防止剤が(C-5)であることがより好ましい。
【0039】
・リン系酸化防止剤
(C-1)トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト
(C-2)2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス
(C-3)ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(C-4)3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン
【0040】
・フェノール系酸化防止剤
(C-5)オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(C-6)3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
(C-7)エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕
(C-8)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
【0041】
リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の両者として作用する化合物(例えば、分子内にフォスファイト構造及びフェノール構造の両者を含む化合物、より具体的には例えば前述の住友化学(株)製スミライザーGP等)(以下、リン系-フェノール系-酸化防止剤ともいう)を用いることも可能である。このような化合物は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤のそれぞれが含まれているものと考える。例えば、スチレン系樹脂組成物100質量%に対してリン系-フェノール系-酸化防止剤が0.1質量%含まれている場合には、スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、リン系酸化防止剤0.1質量%、及びフェノール系酸化防止剤0.1質量%が含まれていると考える。
【0042】
添加剤B、添加剤C、その他の添加剤等の添加方法としては、スチレン系樹脂の重合工程、脱揮工程、造粒工程で添加混合する方法や成形加工時の押出機や射出成形機などで添加混合する方法、上記添加剤を高濃度に調整した樹脂組成物を無添加のスチレン系樹脂によって目的の含有量に希釈混合する方法などが挙げられ、特に限定されることではない。
【0043】
<<その他の添加剤>>
スチレン系樹脂組成物には、本発明の無色透明性を損なわない範囲でミネラルオイルを含有しても良い。また、ステアリン酸、エチレンビスステアリルアミド等の内部潤滑剤や、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系安定剤(アミン系光安定剤)、帯電防止剤、外部潤滑剤等の添加剤が含まれていても良い。また、外部潤滑剤としては、エチレンビスステアリルアミドが好適であり、含有量としては樹脂組成物中に30~200ppmであることが好ましい。
【0044】
紫外線吸収剤は、紫外線による劣化や着色を抑制する機能を有するものであって、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系、サリシレート系、シアノアクリレート系、蓚酸アニリド系、マロン酸エステル系、ホルムアミジン系などの紫外線吸収剤が挙げられる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、アミン(ヒンダードアミン)等の光安定剤を併用してもよい。アミン系(ヒンダードアミン系)の光安定剤を併用することで、より高い劣化、変色抑制効果が得られる。
【0045】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6'-tert-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール]等が挙げられる。中でも好適なのは2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールである。
【0046】
アミン系(ヒンダードアミン系)光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。中でも好適なのはビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートである。
【0047】
スチレン系樹脂組成物100質量%に対する紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.8質量%である。
また、スチレン系樹脂組成物100質量%に対するアミン系光安定剤の含有量は、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.01~1質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.8質量%である。
紫外線吸収剤および/またはアミン系光安定剤を上記含有量で添加した場合、耐光性が向上し、黄変による色相変化を抑制でき、さらに透明性の低下を低減できるからである。スチレン系樹脂組成物100質量%に対する紫外線吸収剤およびアミン系光安定剤の含有量は、それぞれ、具体的には例えば、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0048】
本発明のスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は共重合する(メタ)アクリル酸の量や、(B)エーテル化合物および/またはC6以上のアルコールの量、(C)フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤の量、その他の添加剤の量や、スチレン系樹脂組成物中に残存する未反応モノマーや溶剤の量、スチレンの二量体、三量体成分を含めた低分子量成分などの量に依存する。ビカット軟化温度の測定は、JIS K7206に従い、荷重50N、昇温速度50℃/分の条件下で行う。ビカット軟化温度は95℃~165℃であることが好ましく、100~165℃であることがより好ましく、110~165℃であることがより好ましく、120~165℃であることがより好ましく、130~165℃であることがより好まく、140~165℃であることがより好ましい。ビカット軟化温度が高い程、例えば車載などの、より高い温度環境に曝される可能性のある用途においても使用することができるようになる。
【0049】
本発明のスチレン系樹脂組成物の曇り度は、2mm厚みの成形品で、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。曇り度の測定は、JIS K7136に準拠し測定する。曇り度は厚さ2mmの板状成形品を使用し、測定できる。このような板状成形品は、射出成形や圧縮成形、押出成形など、様々な方法によって得ることができるが、より好ましくは射出成形である。
【0050】
本発明のスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(以下MFRとも記載する)は共重合する(メタ)アクリル酸の量や、(B)エーテル化合物および/またはC6以上のアルコールの量、(C)フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤の量、その他の添加剤の量や、スチレン系樹脂組成物中に残存する未反応モノマーや溶剤の量、スチレンの二量体、三量体成分を含めた低分子量成分などの量に依存する。MFRの測定は、JIS K7210に従い、温度200℃、荷重49Nの条件下で行う。MFRは、0.4~30g/10分であることが好ましい。高い転写性や流動長の長い成形品を得られるなどの、良好な成形性に寄与する。
【0051】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形等、目的に応じた成形方法で成形することができ、その形状は制限されるものではない。得られた成形品は、導光体等の成形品内部に光を透過させることによって機能する光学用部材として用いることができる。例えば板状成形品であれば、導光板等に加工することができる。導光板等の光学部材では、光の透過する距離(光路長)が長いため、透過率が高く、色相に優れた材料であることが好ましい。
【0052】
光路長2mmにおける初期の全光線透過率、初期T(2mm)は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。全光線透過率の測定は、JIS K7361-1に準拠し測定する。全光線透過率は厚さ2mmの板状成形品を使用し、測定できる。このような板状成形品は、射出成形や圧縮成形、押出成形など、様々な方法によって得ることができるが、より好ましくは射出成形である。
【0053】
光路長115mmにおける初期の分光透過率、初期T(115mm)は、好ましくは78%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは82%以上である。
また、初期T差(115mm)は、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。なお、「初期T差(115mm)」とは下記の式に基づいて算出される。
初期T差(115mm)=(添加剤Bおよび/または添加剤Cありの例での「初期T(115mm)」)-(添加剤Bなし且つ添加剤Cなしの例での「初期T(115mm)」)
【0054】
初期YI値は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。YIは厚さ2mmの板状成形品を使用し、測定できる。このような板状成形品は、射出成形や圧縮成形、押出成形など、様々な方法によって得ることができるが、より好ましくは射出成形である。
また、キセノン耐光試験前後(500時間)の黄色度の変化量ΔYI(Xe)は、10.0以下であり、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは7.0以下である。
また、100℃耐熱試験前後(1000時間)の黄色度の変化量ΔYI(heat)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下である、さらに好ましくは2.0以下である。
【0055】
導光板は、板状の成形品の端面(側面)から光を入射し、成形品の後面(非発光面)に形成された反射パターンにより、成形品の前面(発光面)に光を導き、面発光させる機能を持った部材である。反射パターンは、スクリーン印刷法、射出成形法、レーザー法やインクジェット法などの方法によって形成することができる。板状の成形品から導光板に加工する際、光の入射面或いは端面全面を研磨処理して、鏡面とすることが好ましい。また、出射光の均一性を高めるために、板状成形品の前面(発光面)にプリズムパターン等を設けることができる。板状成形品の前面あるいは後面のパターンは、板状成形品の成形時に形成させることができ、例えば射出成形では金型形状、押出成形ではロール転写などによって、パターンを形成させることができる。
また、板状に限らず、レンズ状、ブロック状、板状、フィルム状、繊維状、棒状、中空状、また、湾曲させたりらせん状にしたりなど様々な形に造形されたものでも同様に適用できる。本願では、これらを総称として導光体という。これらの導光体の中には、樹脂や無機化合物などの粒子に代表される、光拡散剤を含んでも良い。
【0056】
(スチレン系樹脂PS-1-0~PS-5-1の製造)
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1-1~表1-3に示す条件によりスチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1-1~表1-3に記載の添加濃度(原料スチレン及びメタクリル酸の合計量に対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1-1~表1-3に記載の重合開始剤は次の通り
重合開始剤-1 :1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製パーヘキサCを使用した。)
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1-1~表1-3の温度となるよう調整した。
続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1-1~表1-3に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1-1~表1-3に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼン、アルコールの一部を分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。
使用した添加剤Bは次の通りである。
B-1:1-オクタノール
B-2:2-エチルヘキサノール
B-3:エマルゲン109P
なお、15ppmのTBCが含まれるスチレン、および250ppmのMEHQが含まれるメタクリル酸を使用した。
【0057】
【表1-1】
【0058】
【表1-2】
【0059】
【表1-3】
【0060】
(実施例1~25、比較例1~6、参考例1~5)
表2に示す含有量にて、スチレン系樹脂PS-1-0~PS-5-1と、添加剤C、添加剤Dおよび添加剤Eをスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してペレットを得た。表2において示すペレットに含まれる添加剤C、添加剤Dおよび添加剤Eは次の通りである。
C-1:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 168)
C-5:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製 Irganox 1076)
C-9:6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン(住友化学株式会社製 スミライザーGP)
D-1:2-(2H-ベンゾトリアゾール―2―イル)-p-クレゾール(BASFジャパン株式会社製 チヌビンP)
E-1:ビス(2,2,6,6―テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(城北化学工業株式会社製 JF-90)
【0061】
次に、以下の方法で黄色度及び透過率の評価を行った。
【0062】
1.試験片の作製
(試験片の作製)
得られたペレットを用いて、シリンダー温度250℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、127×127×2mm厚みの板状成形品を成形した。この板状成形品からメガロテクニカ株式会社製ゲート加工機GCPB-500を用いて115×85×2mm厚みに切削、研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を得た。
【0063】
2.各種光学評価方法
以下に示す全光線透過率やYIなどの光学測定の数値は、光路長2mmの測定値、光路長115mmの測定値である。光路長2mmとは、上記研磨後の板状成形品を用いて、測定器の光が通過する距離が2mmとなる様に試験片を設置して測定する事であり、光路長115mmとは、同様に115mmとなる様に試験片を設置して測定する事を示す。
(光路長2mmにおけるYIの測定)
研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。
(光路長2mmにおける透過率の測定)
研磨後の板状成形品について、日本電色工業株式会社製濁度計NDH5000を用いて、全光線透過率を測定した。
(光路長115mmにおける透過率の測定)
研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、波長350nm~800nmの分光透過率を測定した。ここで、表2に示す分光透過率とは、波長380nm~780nmの平均透過率を表す。
【0064】
3.初期光学評価
得られた板状成形品を用いて、上記の方法で初期の光学評価を実施した。光路長2mmにおけるYIを「初期YI」とし、光路長2mmにおける全光線透過率を「初期T(2mm)」とした。また、光路長115mmにおける透過率を「初期T(115mm)」とした。
(初期T差(115mm)の算出)
また、下記式に基づいて「初期T差(115mm)」を算出した。
初期T差(115mm)=(添加剤Bおよび/または添加剤Cありの例での「初期T(115mm)」)-(添加剤Bなし且つ添加剤Cなしの例での「初期T(115mm)」)
【0065】
4.キセノン(Xe)耐光試験
(キセノン(Xe)耐光試験手順)
成形、切削研磨により得られた板状成形品に対して、アトラス社製ウエザオメータCi4000を用いて、キセノン耐光試験を行った。条件は、ブラックパネル温度55℃、340nmにおける放射照度0.3W/mとした。
(光学測定)
キセノン耐光試験後の板状成形品について、上記の方法で測定を実施した。光路長2mmにおけるYIを「YI(Xe)」とした。また、光路長115mmにおける透過率を「T(Xe)(115mm)」とした。
【0066】
(キセノン耐光試験前後黄色度変化量ΔYI(Xe)の算出)
キセノン耐光試験前後(500時間)の黄色度の変化量「変化量ΔYI(Xe)」は、光路長2mmにおける初期YIとキセノン耐光試験後YI(Xe)の差を下記式に基づいて算出した。
変化量ΔYI(Xe)=(YI(Xe))-(初期YI)
【0067】
5.耐熱試験
(耐熱試験手順)
成形、切削研磨により得られた板状成形品を、100℃(乾燥)の環境下に1000時間曝露した。
(光学測定)
耐熱試験後の板状成形品について、上記の方法で測定を実施した。光路長2mmにおけるYIを「YI(heat)」とした。
【0068】
(耐熱試験前後黄色度変化量ΔYI(heat)の算出)
100℃耐熱試験前後(1000時間)の黄色度の変化量「変化量ΔYI(heat)」は、初期YIとキセノン耐光試験後YI(heat)の差を下記式に基づいて算出した。
変化量ΔYI(heat)=(YI(heat))-(初期YI)
【0069】
PS-3に関する一例では、添加剤Bなし且つ添加剤Cなしである参考例3を基準(初期T差(115mm)=0)としており、添加剤Bあり(B-1を0.1質量%添加、C-5を0.1質量%、C-1を0.1質量%添加)の実施例3の場合は初期T差(115mm)が4であり、添加剤Bなし(C-5を0.1質量%、C-1を0.1質量%添加)の比較例4の場合の初期T差(115mm)は1である。この値は、添加剤Bの透明性向上効果の程度を示しており、この値が大きいほど透明性が向上していることを意味している。
【0070】
表2に各樹脂組成物の特性を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例の成形品は、初期の透過率とYI値に優れ、500時間のキセノン耐光試験前後におけるYI変化量が小さく、長期の光照射安定性にも優れていた。また、添加剤Bとしてエーテル化合物およびC6以上のアルコールを併用した場合には透明性向上の効果がより高く、また添加剤Cとしてリン系酸化防止剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤を併用した場合には長期の光照射安定性が優れており、また熱安定性も優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のスチレン系樹脂、成形品、導光体は高い耐熱性が要求され、長期に渡って使用する用途において利用可能である。例えば、自動車、電車などの車両や、航空機などの照明、カバー、レンズ、表示材などへの適用が好ましい。