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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】注射針
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
A61M37/00 514
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022089295
(22)【出願日】2022-05-31
(65)【公開番号】P2022188757
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021096972
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針生 渉
(72)【発明者】
【氏名】新津 貴利
(72)【発明者】
【氏名】西村 朋也
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038781(JP,A)
【文献】特開2021-023675(JP,A)
【文献】国際公開第2020/064085(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0306363(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0245445(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112516451(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基部から突出する突起を有する注射針であって、
前記突起は、先端部に開孔を有し且つ中空の第1突起と、先端部に開孔を有しない第2突起とを含んでおり、
前記第1突起及び前記第2突起は、前記シート基部の表面からの突出高さが5000μm以下である微細突起であり、
前記突起の突出方向において、前記シート基部の表面に近い方を低い側、前記シート基部の表面から遠い方を高い側という基準でみたときに、
前記第1突起の先端位置よりも低く且つ前記シート基部の表面よりも高い位置である中間位置に、穿刺深さ制御部を有し、
前記穿刺深さ制御部は、前記第2突起の先端位置よりも低い位置に位置している、注射針。
【請求項2】
シート基部から突出する突起を有する注射針であって、
前記突起は、先端部に開孔を有し且つ中空の第1突起と、先端部に開孔を有しない第2突起とを含んでおり、
前記第1突起及び前記第2突起は、前記シート基部の表面からの突出高さが5000μm以下である微細突起であり、
前記突起の突出方向において、前記シート基部の表面に近い方を低い側、前記シート基部の表面から遠い方を高い側という基準でみたときに、
前記第1突起の先端位置よりも低く且つ前記シート基部の表面よりも高い位置である中間位置に、穿刺深さ制御部を有し、
前記シート基部から突出する前記突起は、前記第1突起又は前記第2突起の周囲に配された第3突起を含んでおり、該第3突起は、その先端面が前記穿刺深さ制御部となっており、
前記穿刺深さ制御部は、前記第2突起の先端位置よりも低い位置に位置しているか、又は前記第2突起の先端位置と高さが同じ位置に位置している、注射針。
【請求項3】
シート基部から突出する突起を有する注射針であって、
前記突起は、先端部に開孔を有し且つ中空の第1突起と、先端部に開孔を有しない第2突起とを含んでおり、
前記第1突起及び前記第2突起は、前記シート基部の表面からの突出高さが5000μm以下である微細突起であり、
前記突起の突出方向において、前記シート基部の表面に近い方を低い側、前記シート基部の表面から遠い方を高い側という基準でみたときに、
前記第1突起の先端位置よりも低く且つ前記シート基部の表面よりも高い位置である中間位置に、穿刺深さ制御部を有し、
前記第2突起の周囲に前記穿刺深さ制御部が一体的に形成された複合第2突起を備え
前記穿刺深さ制御部は、前記第2突起の先端位置よりも低い位置に位置しているか、又は前記第2突起の先端位置と高さが同じ位置に位置している、注射針。
【請求項4】
前記第1突起の先端位置と前記穿刺深さ制御部の位置との高低差が1μm以上5000μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項5】
前記第1突起は、前記第2突起よりも高さが高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項6】
前記シート基部の平面視において、隣り合う前記突起の先端どうし間の距離が0.01mm以上10mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項7】
平面視したときに、1cm当たりの前記第1突起と前記第2突起との合計の数が10個以上500個以下である領域を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項8】
1cm当たりの前記第1突起の数N1に対する前記第2突起の数N2の比N2/N1は、0.01以上100以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項9】
前記第1突起の周囲を囲むように複数の前記第2突起が配されており、該複数の前記第2突起を囲むように複数の第3突起が配されており、該複数の前記第3突起の先端面が前記穿刺深さ制御部となっている、請求項1又は3に記載の注射針。
【請求項10】
前記第1突起の中空部に液状の薬剤が貯留されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の注射針と、該注射針における前記第1突起に薬剤を供給可能な薬剤供給器を備える、注射具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野、美容分野などにおいて、マイクロニードルなどとも呼ばれる微細な針状突起を備えた液注入具による薬剤等の液の経皮吸収が注目されている。この液注入具によれば、マイクロニードルを角質層などの皮膚における比較的浅い層に刺入させて体内に液を注入することが可能であり、通常の注射器に比べて被験者が感じる痛みが大幅に低減されることから、低侵襲的な液の投与手段として注目されている。
【0003】
特許文献1には、平面視円形状の基材シートの一面である上面から突出形成された針状且つ中空の第1突起部と、基材シートの上面における第1突起部の近傍から突出形成され且つ第1突起部より突出高さの低い中空の第2突起部とを有している微細突起具が記載されている。同文献には、第1突起部を先端側から皮膚に刺入させていった場合に、その近傍の第2突起部の先端が皮膚の表面に接触した時点で第1突起部の刺入が止まり、皮膚のより深い部位まで第1突起部が刺入することが防止されることが記載されている。第1突起部の先端部には開口部が形成されており、その開口部を介して第1突起部の中空部と外部とが連通している。また同文献には、第1突起部の先端部を皮膚に刺入し、該第1突起部の中空部に貯留された液状の薬剤を、該先端部の開口部から皮膚に注入することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、表面から突出する微小サイズの複数の針山が形成されたマイクロニードルシートが記載されている。同文献では、針山は、表面側から裏面側まで貫通する貫通孔が形成された貫通針山と、該貫通孔が形成されていないダミー針山とを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-38781号公報
【文献】国際公開第2021/177317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の微細突起具においては、該微細突起具が有する突起は、中空且つ開孔を有する第1突起部と、これよりも突出高さの低い第2突起部とから構成され、皮膚に刺入されるのは第1突起部のみであり、これよりも突出高さの低い第2突起部は、第1突起部の刺入深さを制限するストッパーとして機能する。そのため、同文献の微細突起具においては、突起が皮膚に押し当てられ、又は、刺入されることにより生じる血流促進効果は限定的であり、改善の余地があった。特に、皮膚に刺激を与えることができる突起としては第1突起しか開示されておらず、これの密度を高めたり、広範囲にわたり均一に血流促進効果を付与したりすることは開示されていない。
特許文献2には、貫通針山及びダミー針山の穿刺深さを制御することについて、何ら記載されていない。
【0007】
本発明は、皮膚に刺入する深さの制御が可能であり、液を注入可能であり、血流を効果的に促進可能な注射針に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シート基部から突出する突起を有する注射を提供するものである。
本発明の注射針は、前記突起として、先端部に開孔を有し且つ中空の第1突起と、先端部に開孔を有しない第2突起とを含む。
前記第1突起及び前記第2突起は、前記基材シートの表面からの突出高さが5000μm以下である微細突起である。
本発明の注射針は、前記突起の突出方向において、前記シート基部の表面に近い方を低い側、前記シート基部の表面から遠い方を高い側という基準でみたときに、第1突起の先端位置よりも低く且つ前記シート基部の表面よりも高い位置である中間位置に、穿刺深さ制御部を有する。
本発明の注射針は、以下(i)~(iii)のいずれか一つを満たす。
(i)前記穿刺深さ制御部は、前記第2突起の先端位置よりも低い位置に位置している。
(ii)前記シート基部から突出する前記突起は、前記第1突起又は前記第2突起の周囲に配された第3突起を含んでおり、該第3突起は、その先端面が前記穿刺深さ制御部となっており、前記穿刺深さ制御部は、前記第2突起の先端位置よりも低い位置に位置しているか、又は前記第2突起の先端位置と高さが同じ位置に位置している。
(iii)前記第2突起の周囲に前記穿刺深さ制御部が一体的に形成された複合第2突起を備え、前記穿刺深さ制御部は、前記第2突起の先端位置よりも低い位置に位置しているか、又は前記第2突起の先端位置と高さが同じ位置に位置している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の注射針によれば、皮膚に刺入する深さの制御が可能であり、液を注入可能であり、血流を効果的に促進可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る注射針の厚み方向に沿う断面図である。
図2図2は、図1に示す注射針の平面図である。
図3図3は、図1に示す注射針の使用状態を模式的に示す図であり、該注射針の第1突起が皮膚の角質層に刺入し、穿刺深さ制御部が皮膚に刺入せずに皮膚表面と接している様子を示す図である。
図4図4は、注射針における突起の先端径の測定方法を示す説明図である。
図5図5(a)~(e)は、図1に示す注射針における突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図6図6は、本発明の好ましい別の実施形態を示す断面図であり、図1相当図である。
図7図7は、図6に示す注射針の使用状態を模式的に示す図であり、図3相当図である。
図8図8は、図6に示す注射針における突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図9図9は、本発明の好ましい更に別の実施形態を示す断面図であり、図1相当図である。
図10図10は、図9に示す注射針の使用状態を模式的に示す図であり、図3相当図である。
図11図11は、図9に示す注射針における突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図12図12(a)は、複合第1突起及び複合第2突起の変形例を模式的に示す断面図であり、図12(b)は第2突起の変形例を模式的に示す断面図である。
図13図13(a)は、比較例1の注射針の厚み方向に沿う断面図であり、図13(b)は、比較例1の注射針における突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
図14図14(a)は、実施例5の注射針における突起の配置パターンを模式的に表す平面図であり、図14(b)は、実施例6の注射針における突起の配置パターンを模式的に表す平面図であり、図14(c)は、実施例7の注射針における突起の配置パターンを模式的に表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態を参照しながら説明する。
本発明の注射針1Aは、シート基部20から突出する突起を有する。
本発明の注射針1Aは、典型的には、全体として偏平なシート状の形状を有しており、シート基部2及び該シート基部2の一方の表面から突出する複数の突起を有している。
本発明の注射針1Aは、典型的には、突起が平面方向に分散した状態に配列された突起配置領域を有している。突起配置領域の形状は、正方形、長方形状等の四角形状、円形状、楕円形状、五角形、六角形等の多角形状等の任意の形状とすることができる。
【0012】
注射針1Aが有する突起は、先端部に開孔31aを有し且つ中空の第1突起31と、先端部に開孔を有しない第2突起32と、第1突起31及び第2突起32のいずれよりも高さが低い第3突起33とを含んでいることが好ましい。第1突起31は中空部31bを有する微細突起、いわゆるマイクロニードルとなっている。
第2突起32及び第3突起33は、中空であってもよいし、中実であってもよい。第1実施形態において、第2突起32及び第3突起33は、中実である。第2突起32及び第3突起33が中実であることによって、本発明の注射針1Aから薬剤を注入する際に、該注射針1A中に残存する薬剤を低減することができる。
また第3突起33は、その先端面が平坦、すなわち水平方向に延びる直線状、もしくは該第3突起部の突出方向に向けて凸の湾曲線となっていることが好ましい。
本発明の注射針は、第1突起31の先端位置よりも低く且つシート基部20の表面よりも高い位置である中間位置に、穿刺深さ制御部40を有することが好ましい。典型的には、第3突起33の先端面が穿刺深さ制御部40となっている。この一例を図1に示す。
穿刺深さ制御部40は、第1突起31の刺入深さを制御するものである。穿刺深さ制御部40は、第2突起32の先端位置よりも低い位置に位置していることが好ましい。
【0013】
本発明の注射針1Aにおいては、1つの第1突起31の周囲に、複数の第2突起32が形成されていることが好ましい。これらの第2突起32は、第1突起31からの距離を同じくすることが好ましい。
本発明の注射針1Aにおいては、1つの第1突起31の周囲に、複数の第3突起33が形成されていることが好ましい。これらの第3突起33は、第1突起31からの距離を同じくすることが好ましい。
より具体的には、第1方向Xにおいて第1突起31を挟むように一対の第2突起32,32が配されているとともに、第1方向Xと直交する第2方向Yにおいて第1突起31を挟むように一対の第2突起32,32が配されていることが好ましい。また第1方向Xにおいて第1突起31を挟むように一対の第3突起33,33が配されており、また第2方向Yにおいて第1突起31を挟むように一対の第3突起33,33が配されていることが好ましい。第3突起33は、第1突起31と第2突起32との間に配されていることが好ましい。この一例を図2に示す。なお、第2突起32の位置と第3突起33の位置とは逆であってもよい。即ち、第2突起32が、第1突起31と第3突起33との間に配されていてもよい。
本発明の注射針1Aにおいては、第1突起31、第2突起32及び第3突起33が所定の位置関係で配置された単位配置パターンを、第2突起32を、隣接する単位配置パターンと共有するようにして第1方向X及び第2方向Yに複数連続していることが好ましい。
本発明の注射針1Aにおいては、典型的には、第1突起31及び第2突起32は円錐状をなし、第3突起33は円柱状をなしている。更に典型的には、複数の第2突起32は互いに同形状同寸法であり、複数の第3突起33も互いに同形状同寸法である。
【0014】
注射針1Aは、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。具体的には、注射針を構成する基材が熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。典型的には、注射針1Aは、熱可塑性樹脂を含む基材シートを加熱により塑性変形させて形成されていることが好ましい。基材シートの加熱方法は、該基材シートの一部のみを加熱する方法であってもよいし、該基材シートの全体を加熱する方法であってもよい。基材シートの一部のみを加熱し、該基材シートを塑性変形させる方法としては、基材シートにおける突起の形成予定位置に、超音波振動を加えつつ加工針を刺入する方法や、基材シートにおける突起の形成予定位置に、加熱された加工針を刺入する方法等が挙げられる。基材シートの全体を加熱し、該基材シートを塑性変形させる方法としては、例えばヒーター等の加熱器具により該基材シートの全体を加熱しつつ、該基材シートにおける突起の形成予定位置に、加工針を刺入する方法等が挙げられる。
第2突起32及び第3突起33を中実とするためには、例えば、加工針を基材シートに刺入することにより形成された中空の第2突起又は第3突起の中空部分に、該突起の形成樹脂又はそれ以外の他の樹脂を充填してもよい。
【0015】
本発明の注射針1Aは、第1突起31に開孔31aを有していることが好ましい。これにより、本発明の注射針1Aは、薬剤等の液の経皮吸収に利用可能な液注入具となる。
典型的には、第1突起31の先端部には開孔31aが形成されており、その開孔31aを介して第1突起31の中空部31bと外部とが連通している。開孔31aは、第1突起31を形成するシート基部2を厚み方向に貫通する貫通孔であり、円錐状の第1突起31の先端部に位置していることが好ましい。第1突起31の中空部31bは、開孔31aから外部に吐出される液の貯留部又は通路として機能する。ここで第1突起31の先端部とは、シート基部2表面から第1突起31の先端までの突起高さH1の中間位置よりも先端側の領域を意味する。
注射針1Aを薬剤の経皮吸収に使用する場合には、第1突起31の先端部を皮膚Sに刺入し、該第1突起31の中空部31bに貯留された液状の薬剤Lを、該先端部の開孔31aから皮膚Sに注入する。このように第1突起31の中空部31bが薬剤の貯留部として機能するのは、典型的には、外部から薬剤の供給が無い場合である。
外部から薬剤の供給がある場合、例えば、注射針1Aと共にアプリケーター等の薬剤供給器(図示せず)を併用する場合には、中空部31bは薬剤の通路として機能する。薬剤供給器は、注射針1Aの背面側にシート状部材を配置し、注射針1Aの背面と該シート状部材との間に薬剤収容空間を形成してなり、該シート状部材を押圧することで、第1突起31に薬剤を供給するものであってもよい(特開2020-096790号公報〔0011〕参照)。
【0016】
注射針1Aは第1突起31に加えて、第2突起32を有することが好ましい。
第2突起32の高さH2が穿刺深さ制御部40の高さH3よりも高い場合、該注射針1Aを皮膚に押し付け、第1突起31を先端側から皮膚に刺入させていったときに、第2突起32も皮膚に刺入される。第2突起32が皮膚に刺入されることにより、第2突起32が皮膚を刺激し血流促進作用を及ぼす。したがって、この構成を有する注射針1Aによれば、第1突起31によって液を皮膚に注入可能であるとともに、第2突起32によって血流を促進可能である。特許文献1の微細突起具のように、該微細突起具が備える突起が、皮膚に液を注入できる第1突起部のみである場合と異なり、注射針1Aにおいては、第1突起31と第2突起32の両方で広く皮膚を刺激することができる。そのため、特許文献1の微細突起具において、広く皮膚を刺激する目的で第1突起部だけを増やした場合と異なり、注射針1Aを肌に適用するにあたり、部分的に肌に刺入しない突起があったとしても、それが必ずしも開孔がある第1突起とは限らないため、液漏れの発生確率を抑えることができる。
【0017】
注射針1Aを皮膚に押し付けたときに、第2突起32は、皮膚に刺入されずに、皮膚に押し付けられるのみであってもよい。典型的には、第2突起32の高さH2と、シート基部2の表面から穿刺深さ制御部40までの距離H3が、等しい場合である。この場合も、第2突起32が皮膚を刺激し血流促進作用を及ぼすことができる。
また注射針1Aは、第1突起31及び第2突起32に加えて、穿刺深さ制御部40を有することが好ましい。上述のように、注射針1Aにおいては、第3突起33の先端面が穿刺深さ制御部40であることが好ましく、第1突起31及び第2突起32を先端側から皮膚に刺入させていった場合に、穿刺深さ制御部40が皮膚の表面に接触することによって、第1突起31及び第2突起32の刺入が止まり、皮膚のより深い部位まで第1突起31及び第2突起32が刺入することが防止される。つまり、穿刺深さ制御部40は、第1突起31及び第2突起32の刺入深さを制限するストッパーとして機能する。
これらの構成を有する一例を図3に示す。
血流促進効果の有無は、各種公知の方法で判定できるが、例えば、皮膚にフレア反応が生じるか否かで判断したり、レーザ血流計(LSFG)により血流分布を可視化したりして判断することができる。
【0018】
このように注射針1Aは、第1突起31及び第2突起32の皮膚への刺入深さが制御可能になされていることにより、皮膚の任意の深さに薬剤を経皮吸収させることができるとともに、血流を効果的に促進させることができる。そのため、注射針1Aによれば、薬剤の種類等に応じて第1突起31の刺入深さを調節することで、薬剤の効果を最大限に発揮させることが可能である。また、目的とする血流促進作用の程度に応じて第2突起32の刺入深さを調節することで、血流促進作用を効果的に生じさせることが可能である。
さらに、皮膚Sの表層部である角質層S11、もしくは角質層よりも内側に位置する層S12に第1突起31及び第2突起32を刺入させ、真皮S2や皮膚Sよりも深い部位である皮下組織Uには第1突起31及び第2突起32を刺入させないようにすることで、従来の注射器に比して経皮吸収に伴う痛みが大幅に低減され得る。一般に皮膚Sは、皮膚Sの表層部を構成する角質層S11を含む表皮S1と、表皮S1よりも内側に位置する真皮S2と、真皮S2よりも内側に位置する皮下組織(図示せず)とを含む。表皮S1における角質層S11よりも内側に位置する層S12には、典型的には、角質層S11に近い順に、顆粒層、有棘層、基底層が含まれ、該基底層の内側に真皮S2が位置する。
【0019】
穿刺深さ制御部40がない注射針を備えた注射器を用いて薬剤の経皮吸収を行った場合には、注射針が角質層を超えて角質層よりも内側に位置する部位S12や真皮S2、皮下組織にまで刺入するため、注射針を挿入された人は、該注射針の刺入による痛みに耐えなければならなかった。しかし、注射針1Aによれば、注射針を挿入された人が感じる痛みを低減させながら薬剤の経皮吸収及び血流促進を実施し得る。
低侵襲の経皮吸収及びや痛みの抑制等の観点から、穿刺深さ制御部40は、第1突起31及び第2突起32の先端を真皮、皮下組織Uに達しないように制御するものであることが好ましく、角質層よりも内側に位置する部位S12にも達しないように制御できるものであることがより好ましい。第1突起31及び第2突起32の刺入深さは、第1突起31及び第2突起32それぞれ先端と、その近傍の穿刺深さ制御部との高さ方向Zの距離に一致するので、この高さ方向Zの距離を適宜調整することで、前記効果がより確実に奏されるようになる。本発明における「低侵襲」とは、注射針を皮膚に押し付けた際に、角層、角質層よりも内側に位置する部位は傷つくものの、真皮、皮下組織は傷つかない状態であることをいう。
【0020】
本発明の注射針1Aは、血流促進効果を第2突起32に、血流促進効果及び液の注入を第1突起31によるものとしており、第1突起31及び第2突起32の役割を異ならせている。これにより、血流促進効果を得ることを目的として、液を注入可能な突起を多数設けた場合と比較して、液の注入量を効率よく抑えることができる。特に、一つの薬剤の貯留部から、液を注入可能な複数の突起に送液する場合には、皮膚への刺入の程度が各突起によって異なりやすいところ、本発明の注射針1Aによれば薬剤を均一に注入でき、漏れを防ぎ、注入できる皮下の深さも均一にできる。また、液が注入される範囲も有効な最低限の範囲に抑えることができる。第2突起32は皮膚に注射針1Aを垂直に刺入するためのガイド/指標としたり、第2突起32により肌の変形を束縛したりすることで第1突起31を刺入させやすくする効果もある。また、例えば特に注射針1Aの外周部に第2突起を配置することで、注射針を用いるときに、該注射針1Aが不可避的に皮膚に対して垂直とならず、該皮膚に対して傾いて刺入してしまう場合、該注射針1Aの外周に配置された突起は肌への刺入が方向によっては不十分になることがあるが、該注射針1Aの内周に配置された第1突起は肌への刺入が十分になりやすく薬剤を皮膚S内に漏れずに注入できる。即ち、本発明の注射針1Aは、液の注入量や、液が注入される範囲を容易に制御することができるとともに、薬剤を効率的に注入できる。
【0021】
経皮吸収に伴う痛みが大幅に低減させる、または第1突起31から皮膚S内に薬剤を確実に注入する観点から、第1突起31の先端位置と穿刺深さ制御部40の位置との高低差は、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。前記高低差は、即ち、第1突起31の突出高さH1と、シート基部2の表面から穿刺深さ制御部40までの距離H3との差H1-H3である。
また、前記差H1-H3は、真皮を必要以上に傷つけない観点から、好ましくは5000μm以下、更に好ましくは4000μm以下である。
また、前記差H1-H3は、好ましくは1μm以上5000μm以下、更に好ましくは5μm以上4000μm以下である。
第2突起32による血流促進効果に伴う痛みを大幅に低減させたり、肌の弾性による第2突起の穿刺不良を抑制し、十分に第2突起を肌に刺入したりすることができる観点から、第2突起32の突出高さH2は、シート基部2の表面から穿刺深さ制御部40までの距離H3以上、即ちH2≧H3であることが好ましく、H2>H3であることがより好ましい。
同様の観点から、差H2-H3は、好ましくは0以上、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは400μm以上である。
また、前記差H2-H3は、皮膚を必要以上に傷つけない観点から、好ましくは5000μm以下、更に好ましくは4000μm以下である。
また、前記差H2-H3は、好ましくは0以上5000μm以下、より好ましくは100μm以上5000μm以下、更に好ましくは400μm以上4000μm以下である。
【0022】
血流促進効果が一層確実に奏されるようにしたり、第1突起31が確実に穿刺されるようにし、刺入不足により生じる薬剤の漏れを抑制したりする観点から、第1突起31は第2突起32よりも高さが高いことが好ましい。より具体的には、第1突起31の突出高さH1と第2突起32の突出高さH2との差H1-H2は、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。
また、前記差H1-H2は、液の注入のし易さと血流促進効果とを両立させやすくする観点から、好ましくは5000μm以下、更に好ましくは4000μm以下である。
また、前記差H1-H2は、好ましくは1μm以上5000μm以下、更に好ましくは5μm以上4000μm以下である。
【0023】
第1突起31の突出高さH1は、第1突起31を皮膚に押し付けた際に皮膚の変形により刺入が阻害されることを抑制し、穿刺性を良好にするとともに薬剤を皮膚S内に確実に注入する観点から、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上である。
また、第1突起31の突出高さH1は、低侵襲の観点から、好ましくは5000μm以下、更に好ましくは4000μm以下である。
また、第1突起31の突出高さH1は、穿刺性の向上と低侵襲性を両立する観点から、好ましくは10μm以上5000μm以下、更に好ましくは20μm以上4000μm以下である。
【0024】
第2突起32の突出高さH2は、皮膚に押し付けることで皮膚に刺激を与え、血流を促進する観点から、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上である。
また、第2突起32の突出高さH2は、低侵襲の観点から、好ましくは5000μm以下、更に好ましくは4000μm以下である。
また、第2突起32の突出高さH2は、血流促進の向上及びの観点から、好ましくは10μm以上5000μm以下、更に好ましくは20μm以上4000μm以下である。
シート基部2の表面から穿刺深さ制御部40までの距離H3は、好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。
また、距離H3は、第1突起31の穿刺性の向上の観点から、好ましくは4000μm以下、更に好ましくは3000μm以下である。
また、距離H3は、好ましくは5μm以上4000μm以下、更に好ましくは10μm以上3000μm以下である。
【0025】
第1突起31の先端径は、現実的には、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。
また、第1突起31の先端径は、皮膚の弾力により刺入が阻害されることを抑制する観点から、好ましくは300μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
また、第1突起31の先端径は、好ましくは1μm以上300μm以下、更に好ましくは5μm以上100μm以下である。
第2突起32の先端径は、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。
また、第2突起32の先端径は、血流促進効果の向上の観点から、好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
また、第2突起32の先端径は、好ましくは1μm以上300μm以下、更に好ましくは5μm以上200μm以下である。
【0026】
第3突起33の先端径は、第1突起31が必要以上に刺入することを妨げるストッパーとして働く観点から好ましくは2μm以上、更に好ましくは10μm以上である。
第2突起32の先端径は、第1突起31の先端径以上であってもよいし、第1突起31の先端径以下であってもよい。
また、第3突起33の先端径は、第1突起、第2突起等の密集密度を向上する観点から、好ましくは2000μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
また、第3突起33の先端径は、好ましくは2μm以上2000μm以下、更に好ましくは10μm以上100μm以下である。
第3突起33の先端径は、第1突起31の先端径以上であってもよいし、第1突起31の先端径以下であってもよい。
第1~第3突起31~33の先端径は下記方法により測定される。
【0027】
〔注射針における突起の先端径の測定方法〕
測定対象の突起部(第1突起31、第2突起32又は第3突起33)の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて図4に示すように観察する。次に、図4に示すように、両側辺1a,1bの内の一側辺1aにおける直線部分に沿って仮想直線ILaを延ばし、他側辺1bにおける直線部分に沿って仮想直線ILbを延ばす。そして、先端側にて、一側辺1aが仮想直線ILaから離れる箇所を第1先端点1a1として求め、他側辺1bが仮想直線ILbから離れる箇所を第2先端点1b1として求める。このようにして求めた第1先端点1a1と第2先端点1b1とを結ぶ直線の長さLを測定する。測定した該直線の長さを、測定対象の突起部の先端径とする。
【0028】
第1突起31は、上述のように、先端部に開孔31aを有することが好ましい。そして、該開孔31aは、該第1突起31の先端には形成されておらず、該第1突起31の側面に形成されていることが好ましい。開孔31aがこのような位置に形成されていると、第1突起31を皮膚に穿刺する際に開孔31aが潰れ難く、開孔31aを通して皮膚の内部に注射針1Aから薬剤等の液を安定的に供給することができる。
【0029】
第1突起31は、突起配置領域内の任意の位置に配することができるが、第2突起32よりも該突起配置領域の内側、即ち、該突起配置領域の図心側に位置していることが好ましい。こうすることにより、注射針1Aを皮膚に押し付けたときに、第1突起31に荷重がかかりやすくなり、第1突起31を皮膚に穿刺しやすくなる。また、第1突起31は、第2突起32に囲まれていることも好ましい。こうすることにより、第1突起31が穿刺される部位が、第2突起32の微弱刺激により血流促進され免疫誘導された領域に囲まれることになり、第1突起31によって注入される薬剤の薬効を向上させることができると考えられる。また、注射針1Aを使用する際に、該注射針1Aが不可避的に皮膚に対して垂直とならず、該皮膚に対して傾けて刺入されることがあり、この場合、第1突起31が前記図心側に位置していることで、該注射針1Aが皮膚に対してどの方向に傾いていても安定して第1突起31を皮膚に刺入することができ、刺入が不十分な際に薬剤が漏れてしまうことを効果的に抑制することができる。これらの効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、第2突起32は、突起配置領域の最外側に位置していることが好ましい。
【0030】
第1突起31、第2突起32及び第3突起33の配置パターンは特に制限されない。
穿刺深さを正確に制御する観点から、隣り合う一対の第3突起33の間に、第1突起31及び第2突起32のいずれか一方又は両方が配された配列(以下「第1配列」という。)を有することが好ましい。穿刺深さ制御部を有する複合突起(複合第1突起51又は複合第2突起52)間に、穿刺深さ制御部を有しない第1突起31及び第2突起32のいずれか一方又は両方が配された配列(以下「第2配列」という。)を有することも好ましい。
第1配列における第3突起33間に位置する突起、又は第2配列における複合突起間に位置する突起は、第1突起31のみ、第2突起32のみ、第1突起31及び第2突起32の両方のいずれでもよく、第3突起33間又は複合突起間に位置する突起の本数は、1本以上4本以下が好ましく、1本又は2本がより好ましい。
【0031】
例えば、図5(a)、(b)及び(e)に示す配置パターンは、第1配列として、第1方向Xに並んだ第1配列、第2方向Yに並んだ第1配列、並びに第1方向X及び第2方向Yの両方向に対して傾斜する方向、より具体的には角度45度に傾斜する方向に並んだ第1配列を含んでいる。図5(d)及び(c)に示す配置パターンは、第1配列として、第3突起33間に、第1又は第2突起31,32である複数の突起が配された第1配列を含んでいる。図8(a)及び図11(a)に示す配置パターンは、第2配列として、第1方向Xに並んだ第2配列、及び第2方向Yに並んだ第2配列を含んでいる。図8(c)及び図11(b)に示す配置パターンは、第2配列として、第1方向Xに並んだ第2配列、第2方向Yに並んだ第2配列、並びに第1方向X及び第2方向Yの両方向に対して傾斜する方向、より具体的には角度45度に傾斜する方向に並んだ第2配列を含んでいる。
第1配列又は第2配列は、突起配置領域に複数存在することが好ましく、突起配置領域の平面方向に分散した状態に複数存在することが好ましい。
【0032】
穿刺深さを正確に制御する観点から、少なくとも3本以上の第3突起33が、第1突起31又は第2突起32の周囲を囲むように配された配列(以下「第3配列」という。)、又は、第2突起32若しくは第3突起33である少なくとも3本以上の突起が第1突起31の周囲を囲むように配された配列(以下「第4配列」という。)を有することも好ましい。穿刺深さ制御部を有する少なくとも3本以上の複合突起(複合第1突起51又は複合第2突起52)が、穿刺深さ制御部を有しない第1突起31又は第2突起32の周囲を囲むように配された配列(以下「第5配列」という。)を有することも好ましい。
第3配列における第3突起33に囲まれた突起、又は第5配列における複合突起に囲まれた突起は、第1突起31のみ、第2突起32のみ、第1突起31及び第2突起32の両方のいずれでもよい。第3配列又は第5配列に関し、第3突起33又は複合突起に囲まれた突起の本数は、1本以上4本以下が好ましく、1本又は2本がより好ましい。第4配列に関し、第2又は第3突起32,33に囲まれた第1突起31の本数は、1本以上10本以下が好ましく、1本以上5本以下がより好ましい。
例えば、図5(a)、(b)及び(e)に示す配置パターンは、第3突起33に、第1又は第2突起31,32である1本の突起が囲まれた第3配列を含んでいる。図5(c)及び(d)に示す配置パターンは、第3突起33に、第1又は第2突起31,32である複数の突起が囲まれた第3配列を含んでいる。
第3配列、第4配列、又は第5配列は、突起配置領域に複数存在することが好ましく、突起配置領域の平面方向に分散した状態に複数存在することが好ましい。
【0033】
第1突起31、第2突起32及び第3突起33の配置パターンは、例えば、図5(a)に示すように、第1方向X及び第2方向Yにおいて第1突起31を挟むように一対の第2突起32,32が配されており、各第2突起32を、第1方向X又は第2方向Yに挟むように第3突起33が配されていてもよい。また図5(b)に示すように、第1突起31の周囲を囲むように第2突起32及び第3突起33が配されており、該第2突起32は、該第3突起33よりも外側に配されていてもよい。また図5(c)に示すように、第1突起31の周囲を囲むように第2突起32及び第3突起33が配されており、該第2突起32は、該第3突起33よりも内側に配されていてもよい。また図5(d)に示すように、第2突起32の周囲を囲むように第1突起31及び第3突起33が配されており、該第3突起33は、該第1突起31よりも外側に配されていてもよい。また図5(e)に示すように、第2突起32の周囲を囲むように第1突起31及び第3突起33が配されており、該第3突起33は、該第1突起31よりも内側に配されていてもよい。なお、図5(a)~(e)においては、第1突起31を右上がりのハッチングで示し、第2突起32を右下がりのハッチングで示し、第3突起33をドットのハッチングで示している。
【0034】
シート基部2の平面視において、隣り合う突起の先端どうし間の距離Dは、隣接する突起を皮膚に押し当てた際に皮膚の変形が干渉して第1突起が刺入されにくくすることを抑制する観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上、更に好ましくは0.1mm以上、殊更好ましくは0.5mm超である。
また、前記距離Dは、隣接する突起により誘起される血流向上効果が隙間なく適用範囲に得られるようにする観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
また、前記距離Dは、好ましくは0.01mm以上10mm以下、より好ましくは0.1mm以上5mm以下、更に好ましくは0.5mm超3mm以下である。
隣り合う突起とは、頂点間の距離が最も短い2つの突起であり、一の突起が突起間の距離が同じ複数の他の突起に囲まれている場合は、該一の突起と該他の突起とである。前記距離Dは、第1突起31及び第2突起32のみを隣り合う突起を構成する突起として計測する。即ち、先端面が穿刺深さ制御部40である第3突起33が存在しても、該第3突起33を無視して前記距離Dを計測する。
【0035】
注射針1Aのシート基部2の厚みTは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上である。
また、厚みTは、注射針1Aを皮膚に押し当てやすくする観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは500μm以下である。
また、厚みTは、好ましくは5μm以上2000μm以下、より好ましくは10μm以上1000μm以下、更に好ましくは20μm以上500μm以下である(図1参照)。
【0036】
シート基部2の厚みTは、以下の方法により測定することができる。
<シート基部の厚みの測定方法>
注射針1Aのシート基部2を、SEM又はマイクロスコープを用いて、図1に示すように所定倍率拡大した状態で観察する。次に、図1に示すように、シート基部2における突起が突出している側の面から、該面とは反対側の面までの、該シート基部2の厚み方向Zに沿う距離を測定する。このようにして測定された距離を、基部の厚みTとする。
【0037】
注射針1Aは、第1突起31を1つのみ有していてもよいが、複数有することが好ましい。
更に、注射針1Aは、平面視したときに、1cm当たりの第1突起31の数N1又は第2突起の数N2が以下の通りになる領域を有することが好ましい。
第1突起31の数N1又は第2突起の数N2は、液を効率的に注入できるようにする観点からは、好ましくは1個以上、より好ましくは5個以上、更に好ましくは10個以上である。
また、第1突起31の数N1又は第2突起の数N2は、液の注入量や、液が注入される範囲を容易に制御することができるようにする観点から、好ましくは400個以下、より好ましくは300個以下、更に好ましくは200個以下である。
また、第1突起31の数N1又は第2突起の数N2は、これらの両立の観点から、好ましくは1個以上400個以下、より好ましくは5個以上300個以下、更に好ましくは10個以上200個以下である。
【0038】
注射針1Aは、第2突起を1つのみ有していてもよいし、複数有していてもよいが、第1突起31を複数有することが好ましい。
注射針1Aは、平面視したときに、1cm当たりの第1突起31と第2突起32の合計の数N1+N2が以下の通りになる領域を有することが好ましい。
前記合計の数N1+N2は、注射針1Aを適用した範囲全体にフレア反応を起こし血流促進効果を実現しやすくする観点、及び液を効率的に注入できるようにする観点から、好ましくは2個以上、より好ましくは5個以上、更に好ましくは10個以上、殊更好ましくは20個以上、特に好ましくは30個以上である。
前記合計の数N1+N2は、液の注入量や、液が注入される範囲を容易に制御することができるようにする観点から、好ましくは500個以下、より好ましくは300個以下、更に好ましくは200個以下、殊更好ましくは200個未満である。
前記合計の数N1+N2は、これらの両立の観点から、好ましくは10個以上500個以下、より好ましくは20個以上300個以下、更に好ましくは30個以上200個未満である。
【0039】
1cm当たりの第1突起31の数N1に対する第2突起の数N2の比N2/N1は、液を注入する第1突起31の周辺に効率的にフレア反応を起こし、血流促進効果が得られる観点、及び注射針1Aを皮膚に押し付けたときに、皮膚に穿刺されない第1突起31が生じることを防ぎ、第1突起31が確実に穿刺されるようにすることで注液確率を向上できる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.5以上、殊更好ましくは1以上、特に好ましくは2.4以上である。
前記比N2/N1は、小さな穿刺圧力で穿刺が可能となるとともに、第1突起の1本あたりの注液量を少なくし、液を効率的に注入できるようにする観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは10以下である。
前記比N2/N1は、これらの両立の観点から、好ましくは0.01以上100以下、より好ましくは1以上50以下、更に好ましくは2.4以上10以下である。
【0040】
注射針1Aを平面視したときの、1cm当たりの第1突起31の数は、以下の方法により測定することができる。
<1cm当たりの第1突起の数の測定方法>
1cm当たりの第1突起31の数は、微細突起3が平面方向に分散した状態に複数配列された突起配置領域内に含まれる第1突起31の数(個)を、該突起配置領域の全面積(cm)で除することによって算出することができる。突起配置領域の全面積は、注射針1Aを平面視した状態において、該領域の外縁に配された各突起の頂点を結ぶ仮想線で囲まれた領域の面積とする。注射針1A突起の数が、2個以下の場合、注射針1Aを平面視した状態において、1cm四方の正方形状の領域に含まれる第1突起31の数を数えることによって測定することができる。
【0041】
本発明の注射針を用いることで、第1突起、第2突起が配置される広い範囲において血流促進効果が得られるとともに、薬剤を皮膚内に確実に注入できるようになる。
薬剤が皮膚内に注入され、薬剤が注入された周囲の血流が向上することで、薬剤が皮膚に吸収されやすくなり、吸収できない薬剤が皮膚外に流れ出すことを抑制できるとともに、薬剤の効果が得られやすくなるものと、本発明者らは考察している。
【0042】
次に、本発明の注射針の別の実施形態について説明する。これらの実施形態については、先に述べた実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態についての説明が適宜適用され、同じ部材には同じ符号を付してある。これらの例を、図6図8及び図9図11に示す。
【0043】
本発明の注射針は、第1突起31のシート基部方向に第3突起並びに穿刺深さ制御部40が一体的に形成された複合第1突起51を備えていることが好ましい。複合第1突起51を備える注射針(以下、「注射針1B」とも言う。)の一例について説明する。注射針1Bでは、第1突起31は、基部側部分の外周部に穿刺深さ制御部40が一体成形されている。より詳細には、基部側部分に拡径部41が形成されており、該拡径部41の上端部に、第1突起31の径方向の外方に張り出した段部が形成されている。そして、その段部が穿刺深さ制御部40となっている。
複合第1突起51の段部の張り出し長さL1は、第1突起31が必要以上に刺入することを妨げるストッパーとして働く観点から好ましくは0.002mm以上、より好ましくは0.01mm以上である。
【0044】
また、前記長さL1は、第1突起31と第2突起32の密集密度を向上し、微細突起具を適用する広い範囲で血流促進効果を得る観点から好ましくは2mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。
また、前記長さL1は、好ましくは0.002mm以上2mm以下、より好ましくは0.01mm以上0.1mm以下である。
前記長さL1は、段部の内側端部と外側端部との間の距離を、高さ方向と直交する平面に沿って測定した直線距離であり、図6示すように、内側端部及び外側端部それぞれと、第1突起の中心線CLに対して45°をなす接線P1,P2との2接点間の距離である。
【0045】
注射針1Bにおいても、複合第1突起51及び第2突起32を先端側から皮膚に刺入させていった場合に、穿刺深さ制御部40が皮膚の表面に接触することによって、複合第1突起51及び第2突起32の刺入が止まり、皮膚のより深い部位まで複合第1突起51及び第2突起32が刺入することが防止される。複合第1突起51においては、第1突起31の周囲に穿刺深さ制御部40が一体的に形成されているので、皮膚のより深い部位まで複合第1突起51が刺入されることをより確実に防止することができる。この例を図7に示す。
【0046】
複合第1突起51及び第2突起32の配置パターンは特に制限されない。例えば、図8(a)に示すように、第1方向X及び第2方向Yにおいて複合第1突起51を挟むように一対の第2突起32,32が配されていてもよい。また図8(b)に示すように、複合第1突起51の周囲を囲むように第2突起32が配されていてもよい。また図8(c)に示すように、第2突起32の周囲を囲むように複合第1突起51が配されていてもよい。なお、図8(a)及び(b)においては、複合第1突起51を右上がりのハッチングで示し、第2突起32を右下がりのハッチングで示している。
【0047】
本発明の注射針は、第2突起32の周囲に穿刺深さ制御部40が一体的に形成された複合第2突起52を備えていることが好ましい。複合第2突起52を備える注射針(以下、「注射針1C」とも言う。)の一例について説明する。注射針1Cでは、第2突起32は、基部側部分の外周部に穿刺深さ制御部40が一体成形されている。より詳細には、基部側部分に拡径部41が形成されており、該拡径部41の上端部に、第2突起32の径方向の外方に張り出した段部が形成されている。そして、その段部が穿刺深さ制御部40となっている。この例を図9に示す。
複合第2突起52の段部の張り出し長さL2は、第2突起32が必要以上に刺入することを妨げるストッパーとして働く観点から好ましくは0.002mm以上、より好ましくは0.01mm以上である。
また、前記長さL2は、第1突起31と第2突起32の密集密度を向上し、注射針を適用する広い範囲で血流促進効果を得る観点から好ましくは2mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。
また、前記長さL2は、好ましくは0.002mm以上2mm以下、より好ましくは0.01mm以上0.1mm以下である。
前記長さL2は、前記長さL1と同じ手段で測定することができる。
【0048】
注射針1Cにおいても、第1突起31及び複合第2突起52を先端側から皮膚に刺入させていった場合に、穿刺深さ制御部40が皮膚の表面に接触することによって、第1突起31及び複合第2突起52の刺入が止まり、皮膚のより深い部位まで第1突起31及び複合第2突起52が刺入することが防止される。複合第2突起52においては、第2突起32の周囲に穿刺深さ制御部40が一体的に形成されているので、皮膚のより深い部位まで複合第2突起52が刺入されることをより確実に防止することができる。この例を図10に示す。
【0049】
第1突起31及び複合第2突起52の配置パターンは特に制限されない。例えば、図11(a)に示すように、第1方向X及び第2方向Yにおいて第1突起31を挟むように一対の複合第2突起52,52が配されていてもよい。また図11(b)に示すように、第1突起31の周囲を囲むように複合第2突起52が配されていてもよい。また図11(c)に示すように、の複合第2突起52の周囲を囲むように第1突起31が配されていてもよい。なお、図9(a)及び(b)においては、第1突起31を右上がりのハッチングで示し、複合第2突起52を右下がりのハッチングで示している。
【0050】
次に、上述した各実施形態に共通する事項について説明する。
上述した各実施形態の注射針1A,1B,1Cは、材料のハンドリング性、該注射針の強度及び加工性、第1突起31及び第2突起32に硬さを確保し、液を注入しやすくするとともに血流促進効果を得る向上させる観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。注射針は熱可塑性樹脂を含む基材シートから形成されていることがより好ましい。
基材シートは熱可塑性樹脂を主な構成材料として含んでいることが好ましい。主な構成材料とは、微細突起具の基材シートの全質量中50%以上が熱可塑性樹脂の質量であることを意味し、熱可塑性樹脂の質量が100%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等又はこれらの組み合わせが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ脂肪酸エステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクタン、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、ナイロン等が挙げられる。
生分解性の観点から、ポリ脂肪酸エステルが好ましく用いられる。ポリ脂肪酸エステルとしては、具体的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0051】
注射針1A,1B,1Cの全質量に対する、該注射針1A,1Bに含まれる熱可塑性樹脂の質量の割合は、注射針の成型性、寸法安定性を向上する観点から好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上である。
また、熱可塑性樹脂の質量の割合は、注射針に例えば機能剤を添加して各種効果を持たせる観点から好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下、更に好ましくは96%以下である。
また、熱可塑性樹脂の質量の割合は、好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは70%以上98%以下、更に好ましくは90%以上96%以下である。
ここで、各種機能剤として、抗菌剤、殺菌剤、保湿剤、流動改善剤、帯電防止剤、着色剤等を用いることができる。
【0052】
本発明をその好ましい各実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されず適宜変更可能である。
例えば、第1実施形態において、第2突起32及び第3突起33は中実であったが、第2突起32及び第3突起33は中空であってもよい。また第2実施形態において、複合第2突起52は中実であったが、複合第2突起52は中空であってもよい。注射針1A,1B,1Cにおいて、第1突起31以外の突起は、中実であることが好ましい。こうすることにより、第1突起31の開孔31aから吐出されるべき液が、他の突起の内部に貯留されることを防ぐことができるので、液を効率的に注入することができる。
【0053】
また注射針1A~1Cでは、突起はアレイ状(単数又は複数の列状)に配されているが、アレイ状以外に、複数の突起が円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、六角形状、星形状等の任意の環状形状をなすように並んだ配置等、任意の配置であってもよい。
また注射針1Aでは、第3突起33は円柱形状であったが、第3突起33は先端が平坦な円錐台形状であってもよいし、先端面が湾曲した円錐形状であってもよい。また第3突起33の平面視形状は得に制限されず、円形状、楕円形、正方形状、長方形状、六角形状、星形状等であってもよい。
【0054】
また本発明の注射針は、第1突起31と第2突起32と複合第1突起51と複合第2突起52とを有していてもよいし、第1突起31と第2突起32と複合第1突起51とを有していてもよいし、第1突起31と第2突起32と複合第2突起52とを有していてもよいし、第1突起31と複合第1突起51と複合第2突起52とを有していてもよいし、複合第1突起51と複合第2突起52とを有していてもよい。
【0055】
また複合第1突起51は、図12(a)に示すように、複数の第1突起31の周囲に穿刺深さ制御部40が一体的に形成されることに形成されていてもよい。また複合第2突起52は、図12(a)に示すように、複数の第2突起32の周囲に穿刺深さ制御部40が一体的に形成されることに形成されていてもよい。
また第2突起32は、図12(b)に示すように、断面視形状が、欠円形状であってもよい。
また本発明の注射針は、第1突起31及び第2突起32をそれぞれ、1つずつ有していてもよいし、複数有していてもよい。
【0056】
前述した本発明の実施態様に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
シート基部から突出する突起を有し、
前記突起は、先端部に開孔を有し且つ中空の第1突起と、先端部に開孔を有しない第2突起とを含んでおり
第1突起の先端位置よりも低く且つ前記シート基部の表面よりも高い位置である中間位置に、穿刺深さ制御部を有する、注射針。
【0057】
<2>
前記穿刺深さ制御部は、第2突起の先端位置よりも低い位置に位置している、前記<1>に記載の注射針。
<3>
穿刺深さ制御部は、第1突起の刺入深さを制御するものである、前記<1>又は前記<2>に記載の注射針。
<4>
第1突起の先端位置と前記穿刺深さ制御部の位置との高低差が1μm以上5000μm以下である、前記<1>~前記<3>のいずれか1に記載の注射針。
<5>
第1突起の先端位置と前記穿刺深さ制御部の位置との高低差が5μm以上である、前記<1>~前記<4>のいずれか1に記載の注射針。
<6>
第1突起の先端位置と前記穿刺深さ制御部の位置との高低差が4000μm以下である、前記<1>~前記<5>のいずれか1に記載の注射針。
【0058】
<7>
第1突起は、第2突起よりも高さが高い、前記<1>~前記<6>のいずれか1に記載の注射針。
<8>
第1突起の周囲に前記穿刺深さ制御部が一体的に形成された複合第1突起を備える、前記<1>~前記<7>のいずれか1に記載の注射針。
<9>
第2突起の周囲に前記穿刺深さ制御部が一体的に形成された複合第2突起を備える、前記<1>~前記<8>のいずれか1に記載の注射針。
<10>
前記シート基部から突出する前記突起は、第1突起又は第2突起の周囲に配された第3突起を含んでおり、第3突起は、その先端面が前記穿刺深さ制御部となっている、前記<1>~前記<9>のいずれか1に記載の注射針。
【0059】
<11>
前記シート基部の平面視において、隣り合う前記突起の先端どうし間の距離が0.01mm以上10mm以下である、前記<1>~前記<10>のいずれか1に記載の注射針。
<12>
前記シート基部の平面視において、隣り合う前記突起の先端どうし間の距離が0.1mm以上、好ましくは0.5mm超である、前記<1>~前記<11>のいずれか1に記載の注射針。
<13>
前記シート基部の平面視において、隣り合う前記突起の先端どうし間の距離が5mm以下、好ましくは3mm未満である、前記<1>~前記<12>のいずれか1に記載の注射針。
【0060】
<14>
第1突起以外の突起は、中実である、前記<1>~前記<13>のいずれか1に記載の注射針。
<15>
前記注射針は、熱可塑性樹脂を含む、前記<1>~前記<14>のいずれか1に記載の注射針。
<16>
前記注射針の全質量に対する、該注射針に含まれる熱可塑性樹脂の質量の割合が50%以上100以下である、前記<1>~前記<15>のいずれか1に記載の注射針。
<17>
前記開孔は、第1突起の先端には形成されておらず、該第1突起の側面に形成されている、前記<1>~前記<16>のいずれか1に記載の注射針。
【0061】
<18>
第1突起31の突出高さH1と第2突起32の突出高さH2との差H1-H2が1μm以上5000μm以下である、前記<1>~前記<17>のいずれか1に記載の注射針。<19>
第1突起31の突出高さH1と第2突起32の突出高さH2との差H1-H2が5μm以上である、前記<1>~前記<18>のいずれか1に記載の注射針。
<20>
第1突起31の突出高さH1と第2突起32の突出高さH2との差H1-H2が4000μm以下である、前記<1>~前記<19>のいずれか1に記載の注射針。
【0062】
<21>
第1突起の先端径が1μm以上300μm以下である、前記<1>~前記<20>のいずれか1に記載の注射針。
<22>
第1突起の先端径が5μm以上である、前記<1>~前記<21>のいずれか1に記載の注射針。
<23>
第1突起の先端径が50μm以下である、前記<1>~前記<22>のいずれか1に記載の注射針。
<24>
第2突起の先端径は、第1突起の先端径以上である、前記<1>~前記<23>のいずれか1に記載の注射針。
【0063】
<25>
第1突起31の突出高さが10μm以上5000μm以下である、前記<1>~前記<24>のいずれか1に記載の注射針。
<26>
第1突起31の突出高さが20μm以上である、前記<1>~前記<25>のいずれか1に記載の注射針。
<27>
第1突起31の突出高さが4000μm以下である、前記<1>~前記<26>のいずれか1に記載の注射針。
【0064】
<28>
前記シート基部の表面から前記穿刺深さ制御部までの距離が5μm以上4000μm以下である、前記<1>~前記<27>のいずれか1に記載の注射針。
<29>
前記シート基部の表面から前記穿刺深さ制御部までの距離が10μm以下である、前記<1>~前記<28>のいずれか1に記載の注射針。
<30>
前記シート基部の表面から前記穿刺深さ制御部までの距離が3000μm以下である、前記<1>~前記<29>のいずれか1に記載の注射針。
<31>
第1突起及び第2突起をそれぞれ複数有する、前記<1>~前記<30>のいずれか1に記載の注射針。
<32>
第1突起を挟むように一対の第2突起が配されている、前記<1>~前記<31>のいずれか1に記載の注射針。
<33>
平面視したときに、1cm当たりの第1突起と第2突起との合計の数が10個以上500個以下である領域を有する、前記<1>~前記<32>のいずれか1に記載の注射針。
<34>
平面視したときに、1cm当たりの第1突起と第2突起との合計の数が、20個以上、好ましくは30個以上である領域を有する、前記<1>~前記<33>のいずれか1に記載の注射針。
<35>
平面視したときに、1cm当たりの第1突起と第2突起との合計の数が、300個以下、好ましくは200個以下である領域を有する、前記<1>~前記<34>のいずれか1に記載の注射針。
<36>
1cm当たりの第1突起31の数N1に対する第2突起の数N2の比N2/N1は、0.01以上100以下である、前記<1>~前記<35>のいずれか1に記載の注射針。
<37>
1cm当たりの第1突起31の数N1に対する第2突起の数N2の比N2/N1は、1以上、好ましくは2.4以上である、前記<1>~前記<36>のいずれか1に記載の注射針。
<38>
1cm当たりの第1突起31の数N1に対する第2突起の数N2の比N2/N1は、50以下、好ましくは10以下である、前記<1>~前記<37>のいずれか1に記載の注射針。
【実施例
【0065】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0066】
〔実施例1〕
図1に示す注射針1Aと同様の構成かつ図5(a)と同じ配置を有する注射針を製造した。注射針の各突起の寸法、シート基部の寸法、1cm当たりの第1突起の数、隣り合う第1突起又は第2突起の先端どうし間の距離は、表1に示すとおりである。注射針は、熱可塑性樹脂であるポリ乳酸100%からなる基材シートに超音波振動を印可した加工針による突起形成加工を施して形成した。
〔実施例2〕
図1に示す注射針1Aと同様の構成かつ図5(d)と同じ配置を有する注射針を製造した。各要素を表1に示すとおりにしたほかは実施例1と同じである。
〔実施例3〕
図9に示す注射針1Cと同様の構成かつ図11(a)と同じ配置を有する注射針を製造した。各要素を表1に示すとおりにしたほかは実施例1と同じである。
〔実施例4〕
図6に示す注射針1Bと同様の構成かつ図8(a)と同じ配置を有する注射針を製造した。各要素を表1に示すとおりにしたほかは実施例1と同じである。
〔実施例5〕
図1に示す注射針1Aと同様の構成かつ図5(f)と同じ配置を有する注射針を製造した。各要素を表1に示すとおりにしたほかは実施例1と同じである。
〔実施例6〕
図1に示す注射針1Aと同様の構成かつ図14(a)と同じ配置を有する注射針を製造した。各要素を表1に示すとおりにしたほかは実施例1と同じである。
〔実施例7〕
図1に示す注射針1Aと同様の構成かつ図14(b)と同じ配置を有する注射針を製造した。各要素を表1に示すとおりにしたほかは実施例1と同じである。
〔比較例1〕
第1突起31及び第3突起33を有する注射針を製造した(図13(a)及び(b)参照)。各要素を表1に示すとおりにし、突起31,33を図13(b)のように配置したほかは実施例1と同じである。
【0067】
〔フレア反応の評価〕
実施例1~7及び比較例1の注射針について、フレア反応を以下の方法により評価した。
実施例1~7及び比較例1の注射針を、それぞれ、被験者の皮膚に貼付し、約5Nの荷重で10秒間押し付けた。10秒間押し付けた後、微細突起具を剥がし、該微細突起具を押し付けた箇所を、マイクロスコープにより30倍の倍率で観察し、以下の基準によりフレア反応の範囲を評価した。評価結果を表1に示す。
A:フレア反応専有面積が、70%以上
B:フレア反応専有面積が、30%以上70%未満
C:フレア反応専有面積が、10%以上30%未満
D:フレア反応専有面積が、0%以上10%未満
フレア反応専有面積は、以下の式により算出した。
フレア反応専有面積(%)=フレア反応が起こった面積/突起配置領域の面積×100
突起配置領域の面積は、該領域に含まれる最も外側に配置された突起31,32,33によって囲まれた面積とした。
【0068】
〔薬剤の注入性の評価〕
実施例1~7及び比較例1の注射針について、薬剤の注入性を以下の方法により評価した。
実施例1~7及び比較例1の注射針を、それぞれ、シリンジ(Hamilton Company製、GASTIGHT#1710)に取り付け、摘出豚皮に対して反動をつけて2N以上の荷重で垂直から10°傾けて穿刺し、薬液を1μL/秒の注入速度で100μLの注入を行った。注入後、注射器を豚皮から抜き取り、豚皮内に入らず、あふれたり、漏れたりした薬剤をウェスでふき取った。薬液の注入前後での摘出豚皮重量を測定し、薬液注入前の豚皮との重量差を薬液の注入量とし、注入量/投薬量×100を注入割合(%)として以下の基準で評価を行った。なお、注射針の穿刺深さについては、穿刺深さ制御部にて第1突起の穿刺が抑制されていることを確認した。
評価結果を表1に示す。
A:注入割合75%以上100%以下
B:注入割合50%以上75%未満
C:注入割合25%以上50%未満
D:注入割合0%以上25%未満
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、比較例1の注射針は、フレア反応の評価はBであるが、薬剤の注入性の評価がDである。つまり、比較例1の注射針は、血流促進効果を得ることができる一方で、液を注入することが困難であることが分かる。なお、比較例1の注射針は、薬剤の注入性の評価において、該注射針の刺入が甘くなってしまうことがあり、刺入が甘いところの開口部(薬液注入部)から、大部分の薬剤が漏れてしまい注入が困難だった。
比較例1の注射針に対し、実施例1~7の注射針は、フレア反応の評価がA、B又はCであり、薬剤の注入性の評価がA又はBである。つまり、実施例1~7の注射針は、液を容易に注入することができるとともに、血流促進効果を得ることができることが分かる。
【符号の説明】
【0071】
1A~1 注射針
20 シート基部
31 第1突起
32 第2突起
33 第3突起
40 穿刺深さ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14