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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】固体撮像素子および固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20231016BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231016BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20231016BHJP
【FI】
H10K30/60
H01L27/146 E
H10K39/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022101321
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2018528858の分割
【原出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2022130539
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 遥平
(72)【発明者】
【氏名】八木 巖
(72)【発明者】
【氏名】平田 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】茂木 英昭
(72)【発明者】
【氏名】坂東 雅史
(72)【発明者】
【氏名】榎 修
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519382(JP,A)
【文献】特開2015-201619(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199632(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0089443(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104979476(CN,A)
【文献】Juan WANG et al.,“Exciton blocking and dissociation by a p-type anode buffer in small molecule bulk heterojunction organic photovoltaic with small ratio donor of phosphorescent material”,Organic Electronics,2015年08月,Vol. 23,p.11-16,DOI: 10.1016/j.orgel.2015.04.004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-39/32
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた光電変換層とを備え、
前記光電変換層は、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層と、第2の半導体材料を含む励起子解離層とを有し、
前記第2の半導体材料は、前記第1の半導体材料と界面を形成すると共に、前記色素材料とは直接接していない
固体撮像素子。
【請求項2】
前記光電変換層は、前記励起子生成層と前記励起子解離層との間に、前記第1の半導体材料からなる第1の中間層を有する、請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記光電変換層は、前記第1の中間層と前記励起子解離層との間に、前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料を含む第2の中間層を有する、請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料は、互いに異なる極性を有する半導体材料である、請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記第1の半導体材料のバンドギャップは、前記色素材料のバンドギャップと同じ、または前記色素材料のバンドギャップよりも小さい、請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料は、エネルギー準位に差を有する、請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記色素材料、前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料は、有機材料である、請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
1または複数の固体撮像素子がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記固体撮像素子は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた光電変換層とを備え、
前記光電変換層は、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層と、第2の半導体材料を含む励起子解離層とを有し、
前記第2の半導体材料は、前記第1の半導体材料と界面を形成すると共に、前記色素材料とは直接接していない
固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機半導体材料を用いた光電変換層を備えた固体撮像素子およびこれを備えた固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を用いて構成されている固体撮像素子では、光電変換層は、一般に、p型有機半導体およびn型有機半導体を積層または混合して形成されている。これにより、効率の良い電荷生成および電荷輸送が可能となる。
【0003】
また、例えば、特許文献1では、有機光電変換膜を間に対向配置された陰極および陽極と有機光電変換膜との間に、それぞれ、キャリアブロッキング層(電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層)および電荷輸送層(電子輸送補助層および正孔輸送補助層)を有する有機光電変換素子が開示されている。この有機光電変換素子では、電荷ブロッキング層および電荷輸送層を設けることで、さらなる電荷の取り出し効率の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-22525号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、固体撮像素子には、電気特性の向上が求められている。また、固体撮像素子には、優れた応答性が求められている。
【0006】
電気特性を向上させることが可能な固体撮像素子および固体撮像装置を提供することが望ましい。また、応答性を向上させることが可能な固体撮像素子および固体撮像装置を提供することが望ましい。
【0007】
本開示の一実施形態の固体撮像素子は、第1電極と、第1電極と対向配置された第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられた光電変換層とを備えたものであり、光電変換層は、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層と、第2の半導体材料を含む励起子解離層とを有し、第2の半導体材料は、第1の半導体材料と界面を形成すると共に、色素材料とは直接接していない
【0008】
本開示の一実施形態の固体撮像装置は、複数の画素毎に、1または複数の上記本開示の一実施形態の固体撮像素子を備えたものである。
【0009】
本開示の一実施形態の固体撮像素子および一実施形態の固体撮像装置では、光電変換層を、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層と、第2の半導体材料を含む励起子解離層とから構成する。これにより、光を吸収する場(励起子生成層)と電荷が発生する場(励起子解離層)とを分離することが可能となる。
【0010】
本開示の一実施形態の固体撮像素子および一実施形態の固体撮像装置によれば、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層と、第2の半導体材料を含む励起子解離層とを有する光電変換層を設けることにより、光を吸収する場と電荷が発生する場とが分離される。よって、応答性を向上させることが可能となる。
【0011】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る有機光電変換部の断面構成を表す模式図である。
図2】本開示の第1の実施の形態に係る固体撮像素子の概略構成の一例を表す断面図である。
図3A図1に示した有機光電変換部のエネルギー準位の一例を表す図である。
図3B図1に示した有機光電変換部のエネルギー準位の他の例を表す図である。
図4図2に示した固体撮像装置の画素の構成を表す平面模式図である。
図5図2に示した固体撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図6図5に続く工程を表す断面図である。
図7図6に続く工程を表す断面図である。
図8図7に続く工程を表す断面図である。
図9】本開示の第2の実施の形態に係る有機光電変換部の断面構成を表す模式図である。
図10】本開示の第3の実施の形態に係る有機光電変換部の断面構成を表す模式図である。
図11】本開示の第4の実施の形態に係る有機光電変換部の断面構成を表す模式図である。
図12A図11に示した光電変換層を構成する各層のエネルギー準位の一例を表す図である。
図12B図11に示した光電変換層を構成する各層のエネルギー準位の他の例を表す図である。
図13A図11に示した光電変換層を構成する各層のエネルギー準位の他の例を表す図である。
図13B図11に示した光電変換層を構成する各層のエネルギー準位の他の例を表す図である。
図14】本開示の第5の実施の形態に係る固体撮像素子(有機光電変換部)の概略構成の一例を表す断面図である。
図15】本開示の第6の実施の形態に係る固体撮像素子(有機光電変換部)の概略構成の一例を表す断面図である。
図16図2に示した固体撮像素子を画素として用いた固体撮像装置の機能ブロック図である。
図17図16に示した固体撮像装置を用いた電子機器の概略構成を表すブロック図である。
図18】体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図19】本技術が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図20図19に示したカメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図21】車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
図22】撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
図23】実験1におけるドーピング濃度と保護層形成前後の暗電流の増加率との関係を表す特性図である。
図24】実験2におけるドーピング濃度と保護層形成前後の暗電流の増加率との関係を表す特性図である。
図25】実験3におけるドーピング濃度と保護層形成前後の暗電流の増加率との関係を表す特性図である。
図26】最小結合エネルギーと保護層形成前後の暗電流の増加率との関係を表す特性図である。
図27】実験例28~33における上部中間層の電子親和力と暗電流との関係を表す特性図ある。
図28】実験例28~33における上部中間層の電子親和力と量子効率との関係を表す特性図である。
図29】実験例34~37における上部中間層の電子親和力と暗電流との関係を表す特性図ある。
図30】実験例34~37における上部中間層の電子親和力と量子効率との関係を表す特性図である。
図31】光電変換層と上部電極との間の距離と保護層形成前後の暗電流の増加率(Jdk-Jdk,0)/Jdk,0との関係を表す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比等についても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1の実施の形態(上部電極と光電変換層との間に上部中間層を設けた第1の例)
1-1.固体撮像素子の構成
1-2.固体撮像素子の製造方法
1-3.作用・効果
2.第2の実施の形態(上部電極と光電変換層との間に上部中間層を設けた第2の例)
3.第3の実施の形態(上部電極と光電変換層との間に上部中間層を設けた第3の例)
4.第4の実施の形態(励起子生成層と励起子解離層とから構成される光電変換層を有する例)
4-1.有機光電変換部の構成
4-2.作用・効果
5.第5の実施の形態(励起子生成層と励起子解離層との間に中間層を設けた例)
6.第6の実施の形態(励起子生成層と励起子解離層との間に更に別の中間層を設けた例)
7.適用例
8.実施例
【0014】
<1.第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る固体撮像素子(固体撮像素子10)が備えた有機光電変換部20の断面構成を模式的に表したものである。図2は、図1に示した有機光電変換部20を備えた固体撮像素子10の断面構成を表したものである。固体撮像素子10は、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOSイメージセンサ等の固体撮像装置(固体撮像装置1;図14参照)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。
【0015】
(1-1.固体撮像素子の構成)
固体撮像素子10は、例えば、1つの有機光電変換部20Aと、2つの無機光電変換部32B,32Rとが縦方向に積層された、いわゆる縦方向分光型のものである。有機光電変換部20Aは、半導体基板30の第1面(裏面)30A側に設けられている。無機光電変換部32B,32Rは、半導体基板30内に埋め込み形成されており、半導体基板30の厚み方向に積層されている。有機光電変換部20Aは、下部電極21と光電変換層23Aとの間に下部中間層22が、光電変換層23Aと上部電極25との間に上部中間層24が設けられた構成を有する。
【0016】
有機光電変換部20Aと、無機光電変換部32B,32Rとは、互いに異なる波長域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。例えば、有機光電変換部20Aは、緑(G)の色信号を取得する。無機光電変換部32B,32Rは、吸収係数の違いにより、それぞれ、青(B)および赤(R)の色信号を取得する。これにより、固体撮像素子10では、カラーフィルタを用いることなく一つの画素において複数種類の色信号を取得可能となっている。
【0017】
なお、本実施の形態では、無機光電変換部32B,32Rにおける光電変換によって生じる電子および正孔の対のうち、電子を信号電荷として読み出す場合(n型半導体領域を光電変換層とする場合)について説明する。また、図中において、「p」「n」に付した「+(プラス)」は、p型またはn型の不純物濃度が高いことを表し、「++」はp型またはn型の不純物濃度が「+」よりも更に高いことを表している。
【0018】
半導体基板30の第2面(表面)30Bには、例えば、フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD1,FD2,FD3と、縦型トランジスタ(転送トランジスタ)Tr1と、転送トランジスタTr2と、アンプトランジスタ(変調素子)AMPと、リセットトランジスタRSTと、多層配線40とが設けられている。多層配線40は、例えば、配線層41,42,43を絶縁層44内に積層した構成を有している。
【0019】
なお、図面では、半導体基板30の第1面30A側を光入射側S1、第2面30B側を配線層側S2と表している。
【0020】
有機光電変換部20Aは、上記のように、下部電極21、下部中間層22、光電変換層23A、上部中間層24および上部電極25が、半導体基板30の第1面30Aの側からこの順に積層された構成を有している。本実施の形態では、上部電極25は、例えば、固体撮像素子10ごとに分離形成されている。下部電極21、下部中間層22、光電変換層23A、および上部中間層24は、複数の固体撮像素子10に共通した連続層として設けられている。半導体基板30の第1面30Aと下部電極21との間には、例えば、固定電荷を有する層(固定電荷層)26と、絶縁性を有する誘電体層27と、層間絶縁層28とが設けられている。上部電極25の上には、保護層29が設けられている。保護層29の上方には、平坦化層やオンチップレンズ等の光学部材(いずれも図示せず)が配設されている。
【0021】
半導体基板30の第1面30Aと第2面30Bとの間には、貫通電極34が設けられている。有機光電変換部20Aは、この貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampと、フローティングディフュージョンFD3とに接続されている。これにより、固体撮像素子10では、半導体基板30の第1面30A側の有機光電変換部20Aで生じた電荷を、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面30B側に良好に転送し、特性を高めることが可能となっている。
【0022】
貫通電極34は、例えば、固体撮像素子10の各々に、有機光電変換部20Aごとに設けられている。貫通電極34は、有機光電変換部20AとアンプトランジスタAMPのゲートGampおよびフローティングディフュージョンFD3とのコネクタとしての機能を有すると共に、有機光電変換部20Aにおいて生じた電荷(ここでは電子)の伝送経路となるものである。貫通電極34の下端は、例えば、下部第1コンタクト35を介して、多層配線40の配線層41内の接続部41Aに接続されている。接続部41Aと、アンプトランジスタAMPのゲートGampとは、下部第2コンタクト45により接続されている。接続部41Aと、フローティングディフュージョンFD3とは、下部第3コンタクト46により接続されている。貫通電極34の上端は、例えば、上部コンタクト36を介して上部電極25に接続されている。
【0023】
フローティングディフュージョンFD3の隣には、図2に示したように、リセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されていることが好ましい。これにより、フローティングディフュージョンFD3に蓄積された電荷を、リセットトランジスタRSTによりリセットすることが可能となる。
【0024】
貫通電極34は、半導体基板30を貫通すると共に、例えば、分離溝50により半導体基板30とは分離されている。貫通電極34は、例えば、半導体基板30と同じ半導体、例えばシリコン(Si)により構成され、n型またはp型の不純物が注入される(図2では例えばp+)ことにより抵抗値が低減されていることが好ましい。また、貫通電極34の上端部および下端部には、高濃度不純物領域(図2では例えばp++)が設けられ、上部コンタクト36との接続抵抗および下部第1コンタクト35との接続抵抗が更に低減されていることが好ましい。貫通電極34は、金属または導電性材料により構成されていてもよい。金属または導電性材料を用いることにより、貫通電極34の抵抗値をさらに低減すると共に、貫通電極34と下部第1コンタクト35、下部第2コンタクト45および下部第3コンタクト46との接続抵抗をさらに低減することが可能となる。貫通電極34を構成する金属または導電性材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等が挙げられる。
【0025】
図2に示したように、分離溝50の外側面51、内側面52および底面53は、例えば絶縁性を有する誘電体層27により被覆されている。誘電体層27は、例えば、分離溝50の外側面51を被覆する外側誘電体層27Aと、分離溝50の内側面52を被覆する内側誘電体層27Bとを有している。外側誘電体層27Aと内側誘電体層27Bとの間には、空洞54が設けられていることが好ましい。即ち、分離溝50は環状または輪状であり、空洞54は分離溝50と同心円をなす環状または輪状である。これにより、貫通電極34と半導体基板30との間に生じる静電容量を低減させ、変換効率を高めると共に遅延(残像)を抑えることが可能となる。
【0026】
また、分離溝50の外側面51の半導体基板30内には、貫通電極34と同じ導電型(n型またはp型)の不純物領域(図2ではp+)が設けられていることが好ましい。更に、分離溝50の外側面51、内側面52および底面53と、半導体基板30の第1面30Aとに、固定電荷層26が設けられていることが好ましい。具体的には、例えば、分離溝50の外側面51の半導体基板30内にp型の不純物領域(図2のp+)を設けると共に、固定電荷層26として負の固定電荷を有する膜を設けることが好ましい。これにより、暗電流を低減することが可能となる。
【0027】
本実施の形態の固体撮像素子10では、上部電極25側から有機光電変換部20Aに入射した光は、光電変換層23Aを構成する色素材料によって吸収される。また、光電変換層23Aは、色素材料に対して、少なくとも電子供与体となる材料および電子受容体となる材料のどちらか一方を用いて構成されている。これにより、色素材料の光吸収によって生じる励起子は、色素材料と電子供与体との界面、または、色素材料と電子受容体との界面において解離して電荷を発生させる。界面で生じた電荷(電子および正孔)は、電荷の濃度差による拡散や、下部電極21と上部電極25との仕事関数の差による内部電界や、下部電極21と上部電極25との間に電圧を印加することによって、それぞれ対応する電極へ運ばれ、光電流として検出される。また、下部電極21と上部電極25との間に生じる内部電界を制御することによって、電子および正孔の輸送方向を制御することができる。
【0028】
以下、各部の構成や材料等について説明する。
【0029】
有機光電変換部20Aは、選択的な波長域(例えば、495nm~570nm)の一部または全部の波長域に対応する緑色光を吸収して、電子-正孔対を発生させる光電変換素子である。
【0030】
下部電極21は、半導体基板30内に形成された無機光電変換部32B,32Rの受光面と正対して、これらの受光面を覆う領域に設けられている。下部電極21は、光透過性を有する導電材料(透明導電材料)を用いて形成され、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)により構成されている。但し、下部電極21の構成材料としては、このITOの他にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO)系材料、あるいは亜鉛酸化物(ZnO)にドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。酸化亜鉛系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)添加のガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウム(In)添加のインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。また、この他にも、インジウムタングステン酸化物(IWO)、CuI、InSbO、ZnMgO、CuInO、MgIN、CdO、ZnSnO等を用いてもよい。固体撮像素子10を1つの画素として用いる固体撮像装置1では、下部電極21は、画素毎に分離されていてもよいし、各画素に共通の電極として形成されていてもよい。
【0031】
下部中間層22は、下部電極21からの電荷の注入を抑制する電荷注入ブロック層として機能するものである。例えば、下部中間層22は、下部電極21がアノードとして用いられる場合には、下部電極21からの電子の注入を抑制する電子注入ブロック層として機能するものである。その場合には、下部中間層22を形成する材料としては、例えば、フェナンスロリン系化合物、アルミニウムキノリン系化合物、オキサジアゾール系化合物およびシロール系化合物等が挙げられる。下部中間層22の積層方向の膜厚(以下、単に厚みという)は、例えば5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0032】
下部電極21がカソードとして用いられる場合には、下部中間層22は下部電極21からの正孔の注入を抑制する正孔注入ブロック層として機能する。その場合には、下部中間層22を構成する材料としては、例えば、ナフタレンジイミド系材料や、ピリジン、ピリミジンまたはトリアジンを含む材料が挙げられ、より具体的にはB3PyMPM(bis-4,6-(3,5-di-3-pyridylphenyl)-2-methylpyrimi-dine)等が挙げられる。また、下部中間層22は有機半導体に限らず、ZnO、TiO、InGaZnO等の酸化物半導体を用いて形成するようにしてもよい。下部中間層22の厚みは、例えば5nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0033】
光電変換層23Aは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。光電変換層23Aは、上記のように、光を吸収する色素材料と、色素材料に対して電子受容体あるいは電子供与体の少なくとも一方とを用いて形成されている。光電変換層23Aは、この色素材料と電子受容体、色素材料と電子供与体、あるいは色素材料、電子受容体および電子供与体を混合して設けられたものであり、層内に、色素材料と電子受容体、色素材料と電子供与体、あるいはその両方の接合面が形成された、いわゆるバルクヘテロ構造を有するものである。光電変換層23Aは、光を吸収した際に生じる励起子が電子と正孔とに分離する場を提供するものである。具体的には、色素材料と電子供与体との界面、または、色素材料と電子受容体との界面、あるいは、その両方の界面において励起子が電子と正孔とに分離する。
【0034】
光電変換層23Aを構成する材料としては、例えば、キナクリドン、塩素化ホウ素サブフタロシアニン、ホウ素化ホウ素サブフタロシアニンペンタセン、ベンゾチエノベンゾチオフェン、フラーレンおよびそれらの誘導体が挙げられる。光電変換層23Aは、上記有機半導体材料を2種以上組み合わせて構成されている。上記有機半導体材料は、その組み合わせによってp型半導体またはn型半導体として機能する。
【0035】
なお、光電変換層23Aを構成する有機半導体材料(第1の有機半導体材料)は特に限定されない。上記した有機半導体材料以外には、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、およびフルオランテンあるいはそれらの誘導体のうちのいずれか1種が好適に用いられる。あるいは、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体やそれらの誘導体を用いてもよい。加えて、金属錯体色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フェニルキサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、ロダシアニン系色素、キサンテン系色素、大環状アザアヌレン系色素、アズレン系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、アントラセンおよびピレン等の縮合多環芳香族および芳香環あるいは複素環化合物が縮合した鎖状化合物、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基を結合鎖として持つキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール等の二つの含窒素複素環、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基により結合したシアニン系類似の色素等を好ましく用いることができる。なお、上記金属錯体色素としては、ジチオール金属錯体系色素、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、またはルテニウム錯体色素が好ましいが、これに限定されるものではない。光電変換層23Aの厚みは、例えば50nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0036】
上部中間層24は、上部電極25からの電荷の注入を抑制する電荷注入ブロック層として機能するものである。上部中間層24を形成する材料としては、分子内にハロゲン原子を含まない有機半導体材料を用いることが好ましいが、分子内にハロゲン原子を含む有機半導体材料(第2の有機半導体材料)を用いる場合には、上部中間層24内における第2の有機半導体材料の濃度が0.05体積%未満であることが好ましい。
【0037】
例えば、上部中間層24は、上部電極25がカソード電極として用いられる場合には、上部電極25からの正孔の注入を抑制する正孔注入ブロック層として機能するものである。その場合には、上部中間層24を形成する材料としては、例えば、ナフタレンジイミド系材料や、ピリジン、ピリミジンまたはトリアジンを含む材料が挙げられ、より具体的にはB3PyMPM(bis-4,6-(3,5-di-3-pyridylphenyl)-2-methylpyrimi-dine)等が挙げられる。上部中間層24の厚みは、例えば5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0038】
また、上部中間層24は、例えば、上部電極の実効的な仕事関数を制御する目的として用いてもよい。この場合、上部中間層24を形成する材料としては、例えば、酸化モリブデン(MoO,MoO)、酸化タングステン(WO)およびHAT-CN (1,4,5,8,9,11-Hexaazatriphenylenehexacarbonitrile)等が挙げられる。上記材料を用いて上部中間層24を形成することにより、上部電極25がアノードとして機能するように電荷の読出し方向を制御することが可能となる
【0039】
なお、上部電極25がアノードとして用いられる場合には、上部中間層24と光電変換層23Aとの間に電子注入ブロック層を設けてもよい。電子注入ブロック層の材料としては、例えば、フェナンスロリン系化合物、アルミニウムキノリン系化合物、オキサジアゾール系化合物およびシロール系化合物等が挙げられる。電子注入ブロック層の厚みは、例えば5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0040】
有機光電変換部20Aには、下部中間層22、光電変換層23Aおよび上部中間層24以外の他の層を設けるようにしてもよい。他の層としては、例えば、キャリア注入ブロック性を高めるために、下部中間層22と光電変換層23Aの間、または上部中間層24と光電変換層23Aの間に、新たなキャリア注入ブロック層を設けるようにしてもよい。上記電子注入ブロック層がキャリア注入ブロック層の一具体例である。
【0041】
上部電極25は、下部電極21と同様の光透過性を有する導電材料(透明導電材料)を用いて形成されている。具体的には、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO)系材料、あるいは、ドーパントを添加した酸化亜鉛系材料が挙げられる。酸化亜鉛系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)添加のガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウム(In)添加のインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。また、この他にも、インジウムタングステン酸化物(IWO)、CuI、InSbO、ZnMgO、CuInO、MgIN、CdO、ZnSnO等を用いてもよい。上部電極25の厚みは、例えば10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0042】
なお、有機光電変換部20Aを構成する各層の材料として複数の材料を挙げたが、本実施の形態の有機光電変換部20Aが、例えば、図3Aおよび図3Bに示したようなエネルギー準位となるように各層の材料を選択することが好ましい。
【0043】
例えば、上部電極25をカソードとして用いる場合には、図3Aに示したように、上部電極25の仕事関数(WF)と、上部中間層24の電子親和力EA1と、光電変換層23Aに含まれる電子受容体材料の電子親和力EA2とが、EA2≦EA1≦WFの大小関係となることが好ましい。これにより、光電変換層23Aで生じた信号電荷(ここでは、電子)の取り出し効率(量子効率)の向上と暗電流の低減とを両立させることが可能となる。また、上部中間層24のイオン化ポテンシャル(IP1)は、上部電極25の仕事関数(WF)および光電変換層23Aに含まれる電子供与体材料のイオン化ポテンシャル(IP2)よりも大きな材料を用いることが好ましい。これにより、上部電極25からの正孔の注入を効率よく抑制することが可能となる。
【0044】
例えば、上部電極25をアノードとして用いる場合には、図3Bに示したように、上部中間層24の電子親和力EA1が上部電極25の仕事関数(WF)よりも大きな材料を用いることが好ましい。これにより、光電変換層23Aで生じた信号電荷(ここでは、正孔)の取り出し効率(量子効率)の向上と暗電流の低減を両立させることが可能となる。
【0045】
固定電荷層26は、正の固定電荷を有する膜でもよいし、負の固定電荷を有する膜でもよい。負の固定電荷を有する膜の材料としては、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン等が挙げられる。また上記以外の材料としては酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウム膜、酸窒化ハフニウム膜または酸窒化アルミニウム膜等を用いてもよい。
【0046】
固定電荷層26は、2種類以上の膜を積層した構成を有していてもよい。それにより、例えば負の固定電荷を有する膜の場合には、正孔蓄積層としての機能をさらに高めることが可能である。
【0047】
誘電体層27の材料は特に限定されないが、例えば、シリコン酸化膜、TEOS、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等によって形成されている。
【0048】
層間絶縁層28は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン(SiON)等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。
【0049】
保護層29は、光透過性を有する材料により構成され、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコン等のうちのいずれかよりなる単層膜、あるいはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。この保護層29の厚みは、例えば、100nm~30000nmである。
【0050】
半導体基板30は、例えば、n型のシリコン(Si)基板により構成され、所定領域にpウェル31を有している。pウェル31の第2面30Bには、上述した縦型トランジスタTr1,転送トランジスタTr2,アンプトランジスタAMP,リセットトランジスタRST等が設けられている。また、半導体基板30の周辺部には、ロジック回路等からなる周辺回路(図示せず)が設けられている。
【0051】
無機光電変換部32B,32Rは、それぞれ、半導体基板30の所定領域にpn接合を有する。無機光電変換部32B,32Rは、シリコン基板において光の入射深さに応じて吸収される光の波長が異なることを利用して縦方向に光を分光することを可能としたものである。無機光電変換部32Bは、青色光を選択的に検出して青色に対応する信号電荷を蓄積させるものであり、青色光を効率的に光電変換可能な深さに設置されている。無機光電変換部32Rは、赤色光を選択的に検出して赤色に対応する信号電荷を蓄積させるものであり、赤色光を効率的に光電変換可能な深さに設置されている。なお、青(B)は、例えば450nm~495nmの波長域、赤(R)は、例えば620nm~750nmの波長域にそれぞれ対応する色である。無機光電変換部32B,32Rはそれぞれ、各波長域のうちの一部または全部の波長域の光を検出可能となっていればよい。
【0052】
無機光電変換部32Bは、例えば、正孔蓄積層となるp+領域と、電子蓄積層となるn領域とを含んで構成されている。無機光電変換部32Rは、例えば、正孔蓄積層となるp+領域と、電子蓄積層となるn領域とを有する(p-n-pの積層構造を有する)。無機光電変換部32Bのn領域は、縦型トランジスタTr1に接続されている。無機光電変換部32Bのp+領域は、縦型トランジスタTr1に沿って屈曲し、無機光電変換部32Rのp+領域につながっている。
【0053】
縦型トランジスタTr1は、無機光電変換部32Bにおいて発生し、蓄積された、青色に対応する信号電荷(本実施の形態では電子)を、フローティングディフュージョンFD1に転送する転送トランジスタである。無機光電変換部32Bは半導体基板30の第2面30Bから深い位置に形成されているので、無機光電変換部32Bの転送トランジスタは縦型トランジスタTr1により構成されていることが好ましい。
【0054】
転送トランジスタTr2は、無機光電変換部32Rにおいて発生し、蓄積された、赤色に対応する信号電荷(本実施の形態では電子)を、フローティングディフュージョンFD2に転送するものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0055】
アンプトランジスタAMPは、有機光電変換部20Aで生じた電荷量を電圧に変調する変調素子であり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0056】
リセットトランジスタRSTは、有機光電変換部20AからフローティングディフュージョンFD3に転送された電荷をリセットするものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0057】
下部第1コンタクト35、下部第2コンタクト45、下部第3コンタクト46および上部コンタクト36は、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料、または、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属材料により構成されている。
【0058】
図4は、本開示に係る技術を適用し得る複数の光電変換部(例えば、上記無機光電変換部32B,32Rおよび有機光電変換部20A)が積層された単位画素Pを有する固体撮像装置(例えば、固体撮像装置1)の構成例を示した平面図である。即ち、図4は、例えば図14に示した画素部1aを構成する単位画素Pの平面構成の一例を表したものである。
【0059】
単位画素Pは、R(Red)、G(Green)およびB(Blue)のそれぞれの波長の光を光電変換する赤色光電変換部(図2における無機光電変換部32R)、青色光電変換部(図2における無機光電変換部32B)および緑色光電変換部(図2における有機光電変換部20A)(図4では、いずれも図示せず)が、例えば、受光面(図2における光入射側S1)側から、緑色光電変換部、青色光電変換部および赤色光電変換部の順番で3層に積層された光電変換領域1100を有する。更に、単位画素Pは、RGBのそれぞれの波長の光に対応する電荷を、赤色光電変換部、緑色光電変換部および青色光電変換部から読み出す電荷読み出し部としてのTr群1110、Tr群1120およびTr群1130を有する。固体撮像装置1では、1つの単位画素Pにおいて、縦方向の分光、即ち、光電変換領域1100に積層された赤色光電変換部、緑色光電変換部および青色光電変換部としての各層で、RGBのそれぞれの光の分光が行われる。
【0060】
Tr群1110、Tr群1120およびTr群1130は、光電変換領域1100の周辺に形成されている。Tr群1110は、赤色光電変換部で生成、蓄積されたRの光に対応する信号電荷を画素信号として出力する。Tr群1110は、転送Tr(MOSFET)1111、リセットTr1112、増幅Tr1113および選択Tr1114で構成されている。Tr群1120は、青色光電変換部で生成、蓄積されたBの光に対応する信号電荷を画素信号として出力する。Tr群1120は、転送Tr1121、リセットTr1122、増幅Tr1123および選択Tr1124で構成されている。Tr群1130は、緑色光電変換部で生成、蓄積されたGの光に対応する信号電荷を画素信号として出力する。Tr群1130は、転送Tr1131、リセットTr1132、増幅Tr1133および選択Tr1134で構成されている。
【0061】
転送Tr1111は、ゲートG、ソース/ドレイン領域S/DおよびFD(フローティングディフュージョン)1115(となっているソース/ドレイン領域)によって構成されている。転送Tr1121は、ゲートG、ソース/ドレイン領域S/D、および、FD1125によって構成される。転送Tr1131は、ゲートG、光電変換領域1100のうちの緑色光電変換部(と接続しているソース/ドレイン領域S/D)およびFD1135によって構成されている。なお、転送Tr1111のソース/ドレイン領域は、光電変換領域1100のうちの赤色光電変換部に接続され、転送Tr1121のソース/ドレイン領域S/Dは、光電変換領域1100のうちの青色光電変換部に接続されている。
【0062】
リセットTr1112、1132および1122、増幅Tr1113、1133および1123ならびに選択Tr1114、1134および1124は、いずれもゲートGと、そのゲートGを挟むような形に配置された一対のソース/ドレイン領域S/Dとで構成されている。
【0063】
FD1115、1135および1125は、リセットTr1112、1132および1122のソースになっているソース/ドレイン領域S/Dにそれぞれ接続されると共に、増幅Tr1113、1133および1123のゲートGにそれぞれ接続されている。リセットTr1112および増幅Tr1113、リセットTr1132および増幅Tr1133ならびにリセットTr1122および増幅Tr1123のそれぞれにおいて共通のソース/ドレイン領域S/Dには、電源Vddが接続されている。選択Tr1114、1134および1124のソースになっているソース/ドレイン領域S/Dには、VSL(垂直信号線)が接続されている。
【0064】
本開示に係る技術は、以上のような固体撮像装置に適用することができる。
【0065】
(1-2.固体撮像素子の製造方法)
本実施の形態の固体撮像素子10は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0066】
図5図8は、固体撮像素子10の製造方法を工程順に表したものである。まず、図5に示したように、半導体基板30内に、第1の導電型のウェルとして例えばpウェル31を形成し、このpウェル31内に第2の導電型(例えばn型)の無機光電変換部32B,32Rを形成する。半導体基板30の第1面30A近傍にはp+領域を形成する。
【0067】
また、同じく図5に示したように、貫通電極34および分離溝50の形成予定領域に、半導体基板30の第1面30Aから第2面30Bまで貫通する不純物領域(p+領域)を形成する。更に、貫通電極34の上端部および下端部の形成予定領域には高濃度不純物領域(p++領域)を形成する。
【0068】
半導体基板30の第2面30Bには、同じく図5に示したように、フローティングディフュージョンFD1~FD3となるn+領域を形成したのち、ゲート絶縁層33と、縦型トランジスタTr1、転送トランジスタTr2、アンプトランジスタAMPおよびリセットトランジスタRSTの各ゲートを含むゲート配線層37とを形成する。これにより、縦型トランジスタTr1、転送トランジスタTr2、アンプトランジスタAMPおよびリセットトランジスタRSTを形成する。更に、半導体基板30の第2面30B上に、下部第1コンタクト35、下部第2コンタクト45、下部第3コンタクト46、接続部41Aを含む配線層41~43および絶縁層44からなる多層配線40を形成する。
【0069】
半導体基板30の基体としては、例えば、半導体基板30と、埋込み酸化膜(図示せず)と、保持基板(図示せず)とを積層したSOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。埋込み酸化膜および保持基板は、図5には図示しないが、半導体基板30の第1面30Aに接合されている。イオン注入後、アニール処理を行う。
【0070】
次いで、半導体基板30の第2面30B側(多層配線40側)に支持基板(図示せず)または他の半導体基体等を接合して、上下反転する。続いて、半導体基板30をSOI基板の埋込み酸化膜および保持基板から分離し、半導体基板30の第1面30Aを露出させる。以上の工程は、イオン注入およびCVD(Chemical Vapor Deposition)等、通常のCMOSプロセスで使用されている技術にて行うことが可能である。
【0071】
次いで、図6に示したように、例えばドライエッチングにより半導体基板30を第1面30A側から加工し、輪状あるいは環状の分離溝50を形成する。分離溝50の深さは、図6の矢印D50Aに示したように、半導体基板30を第1面30Aから第2面30Bまで貫通してゲート絶縁層33に達することが好ましい。更に、分離溝50の底面53での絶縁効果をより高めるためには、分離溝50は、図6の矢印D50Bに示したように、半導体基板30およびゲート絶縁層33を貫通して多層配線40の絶縁層44に達することが好ましい。図6には、分離溝50が半導体基板30およびゲート絶縁層33を貫通している場合を表している。
【0072】
続いて、図7に示したように、分離溝50の外側面51、内側面52および底面53と、半導体基板30の第1面30Aとに、例えば負の固定電荷層26を形成する。負の固定電荷層26として、2種類以上の膜を積層してもよい。それにより、正孔蓄積層としての機能をより高めることが可能となる。負の固定電荷層26を形成したのち、外側誘電体層27Aおよび内側誘電体層27Bを有する誘電体層27を形成する。このとき、誘電体層27の膜厚および成膜条件を適切に調節することで、分離溝50内において、外側誘電体層27Aと内側誘電体層27Bとの間に空洞54を形成する。
【0073】
次に、図8に示したように、層間絶縁層28を形成する。続いて、層間絶縁層28上に、下部電極21、下部中間層22、光電変換層23A、上部中間層24、上部電極25および保護層29を形成する。また、上部コンタクト36を形成し、貫通電極34の上端に接続する。最後に、平坦化層等の光学部材およびオンチップレンズ(図示せず)を配設する。以上により、図2に示した固体撮像素子10が完成する。
【0074】
固体撮像素子10では、有機光電変換部20Aに、オンチップレンズ(図示せず)を介して光が入射すると、その光は、有機光電変換部20A、無機光電変換部32B,32Rの順に通過し、その通過過程において緑、青、赤の色光毎に光電変換される。以下、各色の信号取得動作について説明する。
【0075】
(有機光電変換部20Aによる緑色信号の取得)
固体撮像素子10へ入射した光のうち、まず、緑色光が、有機光電変換部20Aにおいて選択的に検出(吸収)され、光電変換される。
【0076】
有機光電変換部20Aは、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampとフローティングディフュージョンFD3とに接続されている。よって、有機光電変換部20Aで発生した電子-正孔対のうちの電子が、ここでは、上部電極25側から取り出され、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面30B側へ転送され、フローティングディフュージョンFD3に蓄積される。これと同時に、アンプトランジスタAMPにより、有機光電変換部20Aで生じた電荷量が電圧に変調される。
【0077】
また、フローティングディフュージョンFD3の隣には、リセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD3に蓄積された電荷は、リセットトランジスタRSTによりリセットされる。
【0078】
ここでは、有機光電変換部20Aが、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPだけでなくフローティングディフュージョンFD3にも接続されているので、フローティングディフュージョンFD3に蓄積された電荷をリセットトランジスタRSTにより容易にリセットすることが可能となる。
【0079】
これに対して、貫通電極34とフローティングディフュージョンFD3とが接続されていない場合には、フローティングディフュージョンFD3に蓄積された電荷をリセットすることが困難となり、大きな電圧をかけて上部電極25側へ引き抜くことになる。そのため、光電変換層23Aがダメージを受けるおそれがある。また、短時間でのリセットを可能とする構造は暗時ノイズの増大を招き、トレードオフとなるため、この構造は困難である。
【0080】
(無機光電変換部32B,32Rによる青色信号,赤色信号の取得)
続いて、有機光電変換部20Aを透過した光のうち、青色光は無機光電変換部32B、赤色光は無機光電変換部32Rにおいて、それぞれ順に吸収され、光電変換される。無機光電変換部32Bでは、入射した青色光に対応した電子が無機光電変換部32Bのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、縦型トランジスタTr1によりフローティングディフュージョンFD1へと転送される。同様に、無機光電変換部32Rでは、入射した赤色光に対応した電子が無機光電変換部32Rのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、転送トランジスタTr2によりフローティングディフュージョンFD2へと転送される。
【0081】
(1-3.作用・効果)
有機半導体材料を用いた固体撮像素子では、前述したように、効率の良い電荷生成および電荷輸送を可能とするために、光電変換層は、p型およびn型の有機半導体材料を含んで形成されている。光電変換層に用いられているある有機半導体材料がp型半導体またはn型半導体として機能するかは、その有機半導体材料のエネルギー準位と、共に用いられている材料のエネルギー準位との相対関係によって決まる。
【0082】
有機半導体では、HOMOとLUMOの準位差がバンドギャップ(Eg)に相当し、HOMOと真空準位とのエネルギー差をイオン化ポテンシャル(I)、LUMOと真空準位とのエネルギー差を電子親和力(χ)と呼ぶ。例えば、光電変換層に含まれる2種類の有機半導体材料のうち、一の有機半導体材料が他の有機半導体材料よりも高い電子親和力を有する場合には、一の有機半導体材料は、他の有機半導体材料よりも高い電子求引性を有する。このため、一の有機半導体材料はn型半導体として機能することとなり、他の有機半導体材料はp型半導体として機能する。有機半導体材料にn型の性質を持たせる方法としては、例えば、分子構造内に電気陰性度の大きなハロゲン原子を導入する方法がある。例えば、上述した塩素化ホウ素サブフタロシアニンは、キナクリドンと一緒に用いた場合には、n型半導体として機能する。
【0083】
また、前述したように、さらに電荷の取り出し効率を向上させるために光電変換層と一対の電極との間に、それぞれ電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層が設けられた有機光電変換素子が報告されている。このような構成の有機光電変換素子では、正孔ブロッキング層は、光電変換層で生じた電荷(電子)を取り出しやすくするために、光電変換層内でn型半導体として機能する有機半導体材料よりも深いLUMOの値(高い電子親和力)を有する材料を用いて形成することが望ましい。このため、一般に、正孔ブロッキング層の材料にも、分子内にハロゲン原子を含む有機半導体材料が用いられている。
【0084】
ところが、一対の電極間に設けられた有機半導体層の材料として分子内にハロゲン原子を含む材料(有機半導体材料)を用いた場合、上部電極の形成時や保護膜の形成時に用いる紫外線等に有機半導体層が晒されることにより、有機半導体材料の分子内に含まれるハロゲン原子が脱離する場合がある。脱離したハロゲン原子は、上部電極側に拡散する。このとき、上部電極が、電極材料がITOをはじめとする、インジウムを含む金属酸化物によって構成されている場合、脱離したハロゲン原子と金属酸化物が反応して金属元素が溶出してしまう虞がある。溶出した金属元素は固体撮像素子の製造過程において光電変換層中へと熱拡散する。光電変換層中に拡散した金属元素は、暗電流特性の悪化の原因となる。
【0085】
上記のハロゲン原子の脱離は、上部電極の直下にある(上部電極に接する)層で最も発生しやすいと考えられる。
【0086】
これに対して本実施の形態では、光電変換層23Aと上部電極25との間に、分子内にハロゲン原子を有する有機半導体材料の濃度が0体積%以上0.05体積%未満である上部中間層24を設けるようにした。これにより、上部電極25の形成時における上部電極25を構成する金属酸化物および有機光電変換部20Aを構成する有機材料(例えば、上部中間層24を構成する有機半導体材料)の変性を抑制することが可能となる。
【0087】
以上、本実施の形態では、光電変換層23Aと上部電極25との間に、分子内にハロゲン原子を有する有機半導体材料の濃度が0体積%以上0.05体積%未満である上部中間層24を設けるようにしたので、上部電極25の形成時における上部電極25を構成する金属酸化物および上部中間層24を構成する有機半導体材料の変性が抑制される。よって、例えば、暗電流特性が改善され、優れた電気特性を有する固体撮像素子10を提供することが可能となる。
【0088】
次に、第2~第6の実施の形態について説明する。以下では、上記第1の実施の形態と同様に構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0089】
<2.第2の実施の形態>
図9は、本開示の第2の実施の形態に係る固体撮像素子を構成する有機光電変換部20Bの断面構成を模式的に表したものである。本実施の形態の固体撮像素子は、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、1つの有機光電変換部20Bと、2つの無機光電変換部32B,32R(図2参照)とが縦方向に積層された、いわゆる縦方向分光型のものである。本実施の形態では、光電変換層23Bは、分子内に1または2以上のハロゲン原子を有する有機半導体材料を用いて構成されたものである。
【0090】
上記第1の実施の形態において述べた一対の電極間に設けられ、分子内にハロゲン原子を含む材料を用いて構成された有機半導体層からのハロゲン原子の脱離は、光電変換層23Bが分子内にハロゲン原子を有する有機半導体材料を用いて形成されている場合にも発生する。この場合には、光電変換層23Bを構成する材料として、分子内に含まれる1または2以上のハロゲン原子のうち最も小さな結合エネルギーを有するハロゲン原子の結合エネルギーが5.4eV以上の有機半導体材料を用いることで、上部電極25の形成時における上部電極25を構成する金属酸化物および光電変換層23Bを構成する有機半導体材料の変性を抑制することが可能となる。
【0091】
なお、本実施の形態における光電変換層23Bの材料としては、分子内にハロゲン原子を1つ以上有する以外は、例えば、上記第1の実施の形態における光電変換層23Aの材料と同様に、キナクリドン、塩素化ホウ素サブフタロシアニン、ペンタセン、ベンゾチエノベンゾチオフェン、フラーレンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0092】
このように、本実施の形態では、光電変換層23Bを、分子内に1または2以上のハロゲン原子を有すると共に、分子内において最も小さな結合エネルギーを有するハロゲン原子の結合エネルギーが5.4eV以上である有機半導体材料を用いて形成するようにした。これにより、有機光電変換部20Bは、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0093】
<3.第3の実施の形態>
図10は、本開示の第3の実施の形態に係る固体撮像素子を構成する有機光電変換部20Cの断面構成を模式的に表したものである。本実施の形態の固体撮像素子は、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、1つの有機光電変換部20Bと、2つの無機光電変換部32B,32R(図2参照)とが縦方向に積層された、いわゆる縦方向分光型のものである。本実施の形態では、光電変換層23Bと上部電極25との間の距離が5nm以上となるようにしたものである。
【0094】
光電変換層23を構成する材料として分子内にハロゲン原子を含む材料を用いた場合、上記第1の実施の形態のように、上部中間層24内の分子内のハロゲン原子を有する有機半導体材料の濃度が0体積%であったとしても、上部電極25や保護層29の形成時の紫外線等の照射によって光電変換層23においてハロゲン原子の脱離が発生して上部電極25や固体撮像素子10を構成する有機材料を変性させる虞がある。
【0095】
これに対して、本実施の形態では、分子内にハロゲン原子を有する有機半導体材料を含む光電変換層23と、上部電極25との間に、分子内にハロゲン原子を含まない材料を用いて形成すると共に、5nm以上の厚みを有する上部中間層24Bを設けるようにした。上部中間層24を構成する材料としては、例えば、分子内にピリジン骨格、ピリミジン骨格またはトリアジン骨格を含む材料が挙げられる。具体的には、例えば、B3PyMPM(bis-4,6-(3,5-di-3-pyridylphenyl)-2-methylpyrimi-dine)およびB4PyMPM等が挙げられる。
【0096】
このように、本実施の形態では、光電変換層23と上部電極25との間に、5nm以上の厚みを有する上部中間層24Bを設け、その材料として分子内にハロゲン原子を含まない有機半導体材料を用いるようにした。これにより、有機光電変換部20Cは、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0097】
なお、本技術は、第1の実施の形態と第2の実施の形態を、第1の実施の形態と第3の実施の形態を、第1の実施の形態、第2の実施の形態および第3の実施の形態を組み合わせた構成としてもよい。
【0098】
<4.第4の実施の形態>
図11は、本開示の第4の実施の形態に係る固体撮像素子を構成する有機光電変換部60の断面構成を模式的に表したものである。本実施の形態の固体撮像素子は、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOSイメージセンサ等の固体撮像装置(固体撮像装置1;図16参照)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。
【0099】
(4-1.有機光電変換部の構成)
本実施の形態の固体撮像素子は、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、1つの有機光電変換部60と、2つの無機光電変換部32B,32R(図2参照)とが縦方向に積層された、いわゆる縦方向分光型のものである。有機光電変換部60は、半導体基板30の第1面(裏面)30A側に設けられている。無機光電変換部32B,32Rは、半導体基板30内に埋め込み形成されており、半導体基板30の厚み方向に積層されている。
【0100】
本実施の形態の有機光電変換部60は、一対の電極(下部電極61および上部電極64)と、この一対の電極の間に設けられた励起子ブロック層62と、光電変換層63とを有する。本実施の形態では、光電変換層63は、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層63Aと、第2の半導体材料を含む励起子解離層63Bとの2層によって構成されている。
【0101】
本実施の形態の固体撮像素子では、上部電極64側から有機光電変換部60に入射した光は、光電変換層63の励起子生成層63Aで吸収される。これによって生じた励起子は、励起子解離層63Bに移動し、電子と正孔とに解離する。ここで発生した電荷(電子および正孔)は、キャリアの濃度差による拡散や、陰極(ここでは、下部電極61)と陽極(ここでは、上部電極64)との仕事関数の差による内部電界によって、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流として検出される。また、下部電極61と上部電極64との間に電位を印加することによって、電子および正孔の輸送方向を制御することができる。
【0102】
以下、各部の構成や材料等について説明する。
【0103】
有機光電変換部60は、選択的な波長域(例えば、495nm~570nm)の一部または全部の波長域に対応する緑色光を吸収して、電子-正孔対を発生させる光電変換素子である。
【0104】
下部電極61は、例えば、図2に示した半導体基板30内に形成された無機光電変換部32B,32Rの受光面と正対して、これらの受光面を覆う領域に設けられている。下部電極61は、光透過性を有する導電材料(透明導電材料)を用いて構成され、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)により構成されている。但し、下部電極61の構成材料としては、このITOの他にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO)系材料、あるいは亜鉛酸化物(ZnO)にドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。酸化亜鉛系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)添加のガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウム(In)添加のインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。また、この他にも、アルミニウム(Al)、CuI、InSbO、ZnMgO、CuInO、MgIN、CdO、ZnSnO等を用いてもよい。固体撮像素子10を1つの画素として用いる固体撮像装置1では、下部電極61は、画素毎に分離されていてもよいし、各画素に共通の電極として形成されていてもよい。
【0105】
励起子ブロック層62は、例えば、励起子生成層63Aにおいて発生した励起子が下部電極61によって失活されるのを防ぐためのものである。励起子ブロック層62Aを形成する材料としては、例えば、有機光電変換部60を構成する各層のエネルギー準位の関係を、後述する図12Aおよび図12Bに示した構成とする場合には、電子輸送性材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、Bathocuproine(BCP)、2,9-Bis(naphthalen-2-yl)-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline(NBphen)、2,2’,2’’-(1,3,5-Benzinetriyl)-tris(1-phenyl-1-H-benzimidazole)(TPBi)、(8-Quinolinolato)lithium(Liq)、2-(4-tert-Butylphenyl)-5-(4-biphenylyl)-1,3,4-oxadiazole(PBD)、1,3-Bis[5-(4-tert-butylphenyl)-2-[1,3,4]oxadiazolyl]benzene(OXD-7)、3-(Biphenyl-4-yl)-5-(4-tert-butylphenyl)-4-phenyl-4H-1,2,4-triazole(TAZ)、4,4'-Bis(4,6-diphenyl-1,3,5-triazin-2-yl)biphenyl(BTB)、Bis-4,6-(3,5-di-4-pyridylphenyl)-2-methylpyrimidine(B4PyMPM)等が挙げられる。また、例えば、有機光電変換部60を構成する各層のエネルギー準位の関係を、後述する図13Aおよび図13Bに示した構成とする場合には、正孔輸送性材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、トリアリールアミン誘導体(TPD,NPB,TAPC等)、カルバゾール誘導体(CBP,TCTA等)、フルオレン誘導体(BSBF等)が挙げられる。励起子ブロック層62Aの厚みは、例えば1nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0106】
光電変換層63は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。光電変換層63は、上記のように、励起子生成層63Aおよび励起子解離層63Bの2層によって構成されている。励起子生成層63Aは、色素材料および第1の半導体材料を含む層であり、この色素材料と第1の半導体材料とによって構成されるバルクヘテロ接合界面を有する。有機光電変換部60に入射した光は、このバルクヘテロ接合界面における色素材料に吸収され、第1の半導体材料にエネルギー移動することによって第1の半導体材料上に励起子が発生する。励起子解離層63Bは、第2の半導体材料を含んで構成されたものである。励起子解離層63Bでは、励起子生成層63Aから拡散してきた励起子が電荷(電子および正孔)に解離する。なお、励起子生成層63Aおよび励起子解離層63Bの位置関係は、例えば、光入射側S1側に励起子解離層63Bを配置することが好ましい。励起子生成層63Aにおいて生成される励起子の密度は光入射面側に多く、光電変換効率を向上させるためには、生成された励起子が励起子解離層63Bに移動する距離(拡散距離)が短い方が好ましいからである。
【0107】
励起子生成層63Aを構成する色素材料および第1の半導体材料では、例えば、第1の半導体材料は、色素材料のバンドギャップと同程度、あるいは、それよりも小さいバンドギャップを有することが好ましい。これにより、色素材料から第1の半導体材料へのエネルギー移動が促進される。第1の半導体材料および第2の半導体材料は、p型半導体またはn型半導体であり、互いに異なる極性を有する半導体材料である。また、第1の半導体材料および第2の半導体材料は、エネルギー準位に差を有することが好ましい。これにより、励起子解離層63Bにおいて発生した電荷(電子および正孔)を速やかに下部電極61および上部電極64へ輸送することが可能となる。
【0108】
図12A図12B図13Aおよび図13Bは、励起子生成層63Aおよび励起子解離層63Bと、これらを構成する色素材料、第1の半導体材料および第2の半導体材料のエネルギー準位の組み合わせを表したものである。例えば、正孔を信号電荷として用いる場合には、図12Aに示したように、励起子生成層63Aを構成する第1の半導体材料は、励起子解離層63Bを構成する第2の半導体材料よりも深いHOMO準位および深いLUMO準位を有することが好ましい。このようなエネルギー準位の組み合わせの場合には、第1の半導体材料はn型半導体、第2の半導体材料はp型半導体となる。色素材料のエネルギー準位は、例えば、図12Aに示したように、色素材料および第1の半導体材料のLUMO準位が互いに等しくなっていてもよいし、図12Bに示したように、色素材料および第1の半導体材料のHOMO準位が互いに等しくなっていてもよい。
【0109】
信号電荷として電子を用いる場合には、図13Aに示したように、励起子生成層63Aを構成する第1の半導体材料は、励起子解離層63Bを構成する第2の半導体材料よりも浅いHOMO準位および浅いLUMO準位を有することが好ましい。このようなエネルギー準位の組み合わせの場合には、第1の半導体材料はp型半導体、第2の半導体材料はn型半導体となる。色素材料のエネルギー準位は、例えば、図13Aに示したように、色素材料および第1の半導体材料のLUMO準位が互いに等しくなっていてもよいし、図13Bに示したように、色素材料および第1の半導体材料のHOMO準位が互いに等しくなっていてもよい。
【0110】
色素材料、第1の半導体材料および第2の半導体材料として用いられる材料は、有機材料であることが好ましく、例えば、図12Aに示したエネルギー準位の組み合わせの場合には、それぞれ、以下の材料が挙げられる。色素材料としては、可視光領域における極大吸収波長の線吸収係数が高いものが好ましい。これにより、有機光電変換部60における可視光領域の光の吸収能を高めることができ、且つ分光形状をシャープにすることが可能となる。このような材料としては、例えば、一般式(1)で表わされるサブフタロシアニンあるいはその誘導体が挙げられる。具体的には、例えばFSubPcOCが挙げられる。第1の半導体材料(n型半導体)としては、例えば、一般式(2)または一般式(3)で表わされるフラーレンまたはその誘導体が挙げられる。第2の半導体材料(p型半導体)としては、例えば、一般式(4)で表わされるチオフェンまたはその誘導体が挙げられる。なお、本開示では、フラーレンは、有機半導体材料として扱う。
【0111】
【化1】
(R1~R12は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖,分岐,または環状アルキル基、チオアルキル基、チオアリール基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、フェニル基、カルボキシ基、カルボキソアミド基、カルボアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、シアノ基およびニトロ基からなる群から選択され、且つ、隣接した任意のR1~R12は縮合脂肪族環または縮合芳香環の一部であってもよい。前記縮合脂肪族環または縮合芳香環は、炭素以外の1または複数の原子を含んでいてもよい。Mはホウ素または2価あるいは3価の金属である。Xはアニオン性基である。)
【0112】
【化2】
(R13,R14は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、直鎖,分岐または環状のアルキル基、フェニル基、直鎖または縮環した芳香族化合物を有する基、ハロゲン化物を有する基、パーシャルフルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、シリルアルキル基、シリルアルコキシ基、アリールシリル基、アリールスルファニル基、アルキルスルファニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルフィド基、アルキルスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、カルボキソアミド基、カルボアルコキシ基、アシル基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、カルコゲン化物を有する基、ホスフィン基、ホスホン基あるいはそれらの誘導体である。n,mは0または1以上の整数である。)
【0113】
【化3】
(R15,R16は、各々独立して水素原子または式(4’)で表わされる置換基である。R17は、芳香環基あるいは置換基を有する芳香環基である。)
【0114】
なお、光電変換層63を構成する材料は特に限定されない。上記した材料以外には、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、およびフルオランテンあるいはそれらの誘導体が挙げられる。あるいは、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体やそれらの誘導体を用いてもよい。加えて、金属錯体色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フェニルキサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、ロダシアニン系色素、キサンテン系色素、大環状アザアヌレン系色素、アズレン系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、アントラセンおよびピレン等の縮合多環芳香族および芳香環あるいは複素環化合物が縮合した鎖状化合物、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基を結合鎖として持つキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール等の二つの含窒素複素環、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基により結合したシアニン系類似の色素等を好ましく用いることができる。なお、上記金属錯体色素としては、ジチオール金属錯体系色素、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、またはルテニウム錯体色素が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0115】
励起子生成層63Aの厚みは、例えば、50nm以上300nm以下であることが好ましい。励起子解離層63Bの厚みは、例えば、5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0116】
なお、光電変換層63と下部電極61との間、および光電変換層63と上部電極64との間には、他の層例えば、バッファ膜が設けられていてもよい。この他、例えば、下部電極61側から順に、下引き膜、正孔輸送層、電子ブロッキング膜 、光電変換層63、正孔ブロッキング膜、バッファ膜、電子輸送層および仕事関数調整膜等が積層されていてもよい。
【0117】
上部電極64は、下部電極61と同様の光透過性を有する導電膜により構成されている。固体撮像素子10を1つの画素として用いた固体撮像装置1では、この上部電極64が画素毎に分離されていてもよいし、各画素に共通の電極として形成されていてもよい。上部電極64の厚みは、例えば、10nm~200nmである。
【0118】
(4-2.作用・効果)
近年、CCDイメージセンサ、あるいはCMOSイメージセンサ等の固体撮像装置では、高い色再現性、高フレームレートおよび高感度が求められている。これらを実現するためには、優れた分光形状、高い応答性および高い外部量子効率(EQE)が求められる。
【0119】
例えば、有機光電変換膜と、シリコンバルク分光を行う無機光電変換部との積層構造を有する撮像素子(固体撮像素子)では、有機光電変換膜は、一般に、p型半導体またはn型半導体として機能する2種類の材料によって構成されている。有機光電変換膜は、膜内にp型半導体とn型半導体とによって形成されるバルクヘテロ接合界面(P/N界面)を有する。光吸収により有機光電変換膜内に生じた励起子は、このバルクヘテロ接合界面においてキャリア(電子と正孔)に解離(分離)する。バルクヘテロ接合界面で生じたキャリアのうち、電子はn型半導体によって一方の電極へ輸送され、正孔はp型半導体によって他方の電極へ輸送される。
【0120】
2種類の材料(2元系)によって構成された有機光電変換膜を備えた固体撮像素子において、高い応答性を実現するためには、p型半導体およびn型半導体の両方が高い電荷輸送特性を有する必要がある。従って、優れた分光形状、高い応答性および高い外部量子効率を実現するためには、p型半導体およびn型半導体のどちらか一方は、シャープな分光特性と高い電荷移動度の両方を有する必要がある。しかしながら、一般に、固体膜においてシャープな分光形状を有する材料は、高い電荷輸送特性を有していない傾向がある。このため、2種類の材料によって優れた分光形状、高い応答性および高い外部量子効率を実現することは非常に難しい。
【0121】
そこで、シャープな分光形状を有する材料(例えば、色素材料)を別途用意し、この色素材料と、高い電荷輸送特性を有するp型半導体およびn型半導体との3種類の材料(3元系)を混合した有機光電変換膜を備えた固体撮像素子が考えられる。上記3種類の材料を混合して形成された有機光電変換膜における光電変換機構は、例えば3つの経路(経路A,経路Bおよび経路C)が想定される。3種類の材料が混合されている有機光電変換膜では、まず、色素材料が光を吸収して励起状態となる。この励起状態の色素材料は、その後3つの経路(経路A,経路Bおよび経路C)をたどり得る。
【0122】
経路Aでは、励起状態の色素材料からエネルギーがn型半導体に移動し、n型半導体が励起状態となる。続いて、n型半導体とp型半導体との間で励起子解離が起こり、p型半導体上に正孔が、n型半導体上に電子が生成する。正孔および電子は、それぞれ電界によって対応する電極へと輸送される。なお、色素材料のエネルギーがp型半導体に移動する経路も考えられるが、一般に、p型半導体は色素材料よりも広いバンドギャップを有する場合が多い。このため、色素材料からp型半導体へエネルギー移動が起こる可能性は低い。
【0123】
経路Bでは、色素材料とp型半導体との間で励起子解離が起こり、色素材料上に電子が、p型半導体上に正孔が生成する。色素材料上の電子は、安定化のためにn型半導体へと移動する。p型半導体上の正孔およびn型半導体へ移動した電子は、経路Aと同様に、それぞれ電界によって対応する電極へと輸送される。
【0124】
経路Cでは、色素材料とn型半導体との間で励起子解離が起こり、色素材料上に正孔が、n型半導体上に電子が生成する。色素材料上の正孔は、安定化のためにp型半導体へと移動する。n型半導体上の電子およびp型半導体へ移動した正孔は、経路Aと同様に、それぞれ電界によって対応する電極へと輸送される。
【0125】
このように、3種類の材料を混合して形成した有機光電変換膜内では、上記経路A,経路Bおよび経路Cの反応が全て起こり得る。しかしながら、一般に、色素材料のキャリア輸送性能は低い。このため、経路Bおよび経路Cのように、色素材料上に正孔または電子が発生すると、そのキャリア輸送性能の低さから、期待される光電変換効率や応答性が得られない虞がある。
【0126】
これに対して、本実施の形態では、光電変換層63を、色素材料とp型半導体またはn型半導体とからなる励起子生成層63Aと、n型半導体またはp型半導体からなる励起子解離層63Bとの2層から構成するようにした。これにより、光を吸収する場(励起子生成層63A)と電荷が発生する場(励起子解離層63B)とが分離された構造、即ち、色素材料と電荷輸送性材料(第2の半導体材料)とが直接接しない構造となるため、上記2つの経路のうち、経路Aが選択されるようになる。
【0127】
以上のように、本実施の形態では、励起子生成層63Aおよび励起子解離層63Bからなる光電変換層63を設けるようにしたので、キャリア輸送性能の低い色素材料上での励起子解離の発生が低減される。よって、キャリア輸送性能の高いp型半導体とn型半導体との間での励起子解離が起こりやすくなるため、応答性を向上させることが可能となる。また、光電変換効率を向上させることが可能となる。
【0128】
また、複数の材料を混合した固体膜を形成する場合には、各材料間の相溶性によって混合の様子が変化する。複数の材料からなる固体膜を光電変換層として用いる場合には、キャリアの伝達パス(パーコレーション)が機能するように、固体膜は、ある程度の相分離構造をとっていることが好ましい。しかしながら、各材料間の相溶性が高い場合には、固体膜は各材料が均質に混合された層となり、各材料間の相溶性が低い場合には、固体膜は大きく相分離し、どちらも光電変換層としては望ましくない。このように、光電変換層を3種類の材料を混合して形成する場合に、3種類全ての相溶性を制御して、理想的な相分離構造を構築することは難しい。
【0129】
これに対して、本実施の形態では、上記のように、光電変換層63を構成する各層(励起子生成層63Aおよび励起子解離層63B)は、2種類以下の材料によって構成されるため、好ましい相分離構造を構築することが容易となる。また、材料の組み合わせの自由度が向上する。
【0130】
更に、光電変換層63を2種類以下の材料からなる2層構造(励起子生成層63Aおよび励起子解離層63B)としたので、光電変換層63を、例えば蒸着法を用いて形成する際に用意する蒸着源、電源および制御盤等の製造装置および製造方法を大幅に簡略化することが可能となる。
【0131】
なお、励起子生成層63Aおよび励起子解離層63Bは、本開示の効果を得られる限り、上記材料以外の材料を含んで構成されていてもよい。
【0132】
<5.第5の実施の形態>
図14は、本開示の第5の実施の形態に係る固体撮像素子を構成する有機光電変換部70の断面構成を模式的に表したものである。有機光電変換部70は、一対の電極(下部電極61および上部電極64)と、この一対の電極の間に設けられた光電変換層73とを有する。本実施の形態では、光電変換層73が、励起子生成層73Aと、励起子解離層73Bと、励起子生成層73Aと励起子解離層73Bとの間に設けられた中間層73C(第1の中間層)とから構成されている点が、上記第4の実施の形態とは異なる。
【0133】
中間層73Cは、励起子生成層73Aを構成する色素材料と、励起子解離層73Bを構成する第2の半導体材料との接触を防ぐためのものである。中間層73Cは、例えば、第1の半導体材料を用いて構成されている。中間層73Cの厚みは、色素材料と第2の半導体材料との接触を防ぐことができればよく、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0134】
前述したように、色素材料は、一般にキャリア輸送性が低い。これに対して、本実施の形態では、上記のように、励起子生成層73Aと励起子解離層73Bとの間に、第1の半導体材料からなる中間層73Cを設けるようにした。このように、色素材料と第2の半導体材料との界面が形成されないようにすることにより、色素材料上での励起子の解離を防ぐことが可能となる。よって、上記第4の実施の形態の効果に加えて、さらに応答性および光電変換効率を向上させることが可能となるという効果を奏する。
【0135】
<6.第6の実施の形態>
図15は、本開示の第6の実施の形態に係る固体撮像素子を構成する有機光電変換部80の断面構成を模式的に表したものである。有機光電変換部80は、一対の電極(下部電極61および上部電極64)と、この一対の電極の間に設けられた光電変換層83とを有する。本実施の形態では、光電変換層83が、励起子生成層83A、励起子解離層83Bおよび中間層83Cを有し、さらに励起子解離層83Bと中間層83Cとの間に中間層83D(第2の中間層)が設けられている点が、上記第2,第5の実施の形態とは異なる。なお、中間層83Cは、上記第5の実施の形態における中間層63Cと同様の構成を有するものである。
【0136】
中間層83Dは、第1の半導体材料と第2の半導体材料とを含んで構成されたものである。中間層83Dは、第1の半導体材料と第2の半導体材料とによって構成されるバルクヘテロ接合界面を有する。中間層83Dの厚みは、例えば、5nm以上50nm以下である。
【0137】
本実施の形態では、励起子解離層83Bと中間層83Cとの間に、第1の半導体材料と第2の半導体材料とから構成される中間層83Dを設けるようにしたので、励起子が解離して電荷が生成される界面の面積が増加する。これにより、励起子から電荷への分離速度が向上し、上記第5の実施の形態の効果に加えて、さらに応答性を向上させることが可能となるという効果を奏する。
【0138】
<7.適用例>
(適用例1)
図16は、上記第1~第6の実施の形態において説明した有機光電変換部20(または有機光電変換部60,70,80)を備えた固体撮像素子(例えば、固体撮像素子10)を各画素に用いた固体撮像装置(固体撮像装置1)の全体構成を表したものである。この固体撮像装置1は、CMOSイメージセンサであり、半導体基板30上に、撮像エリアとしての画素部1aを有すると共に、この画素部1aの周辺領域に、例えば、行走査部131、水平選択部133、列走査部134およびシステム制御部132からなる周辺回路部130を有している。
【0139】
画素部1aは、例えば、行列状に2次元配置された複数の単位画素P(固体撮像素子10に相当)を有している。この単位画素Pには、例えば、画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素からの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、行走査部131の各行に対応した出力端に接続されている。
【0140】
行走査部131は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素部1aの各単位画素Pを、例えば、行単位で駆動する画素駆動部である。行走査部131によって選択走査された画素行の各単位画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通して水平選択部133に供給される。水平選択部133は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0141】
列走査部134は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、水平選択部133の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この列走査部134による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線135に出力され、当該水平信号線135を通して半導体基板30の外部へ伝送される。
【0142】
行走査部131、水平選択部133、列走査部134および水平信号線135からなる回路部分は、半導体基板30上に直に形成されていてもよいし、あるいは外部制御ICに配設されたものであってもよい。また、それらの回路部分は、ケーブル等により接続された他の基板に形成されていてもよい。
【0143】
システム制御部132は、半導体基板30の外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータ等を受け取り、また、固体撮像装置1の内部情報等のデータを出力するものである。システム制御部132はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に行走査部131、水平選択部133および列走査部134等の周辺回路の駆動制御を行う。
【0144】
(適用例2)
上述の固体撮像装置1は、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話等、撮像機能を備えたあらゆるタイプの電子機器に適用することができる。図17に、その一例として、電子機器2(カメラ)の概略構成を示す。この電子機器2は、例えば、静止画または動画を撮影可能なビデオカメラであり、固体撮像装置1と、光学系(光学レンズ)310と、シャッタ装置311と、固体撮像装置1およびシャッタ装置311を駆動する駆動部313と、信号処理部312とを有する。
【0145】
光学系310は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像装置1の画素部1aへ導くものである。この光学系310は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置311は、固体撮像装置1への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部313は、固体撮像装置1の転送動作およびシャッタ装置311のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部312は、固体撮像装置1から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリ等の記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタ等に出力される。
【0146】
更に、上記第1~第6の実施の形態において説明した有機光電変換部20(または有機光電変換部60,70,80)を備えた固体撮像素子10は、下記電子機器(カプセル型内視鏡10100および車両等の移動体)にも適用することが可能である。
【0147】
(適用例3)
<体内情報取得システムへの応用例>
図18は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る、カプセル型内視鏡を用いた患者の体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【0148】
体内情報取得システム10001は、カプセル型内視鏡10100と、外部制御装置10200とから構成される。
【0149】
カプセル型内視鏡10100は、検査時に、患者によって飲み込まれる。カプセル型内視鏡10100は、撮像機能及び無線通信機能を有し、患者から自然排出されるまでの間、胃や腸等の臓器の内部を蠕動運動等によって移動しつつ、当該臓器の内部の画像(以下、体内画像ともいう)を所定の間隔で順次撮像し、その体内画像についての情報を体外の外部制御装置10200に順次無線送信する。
【0150】
外部制御装置10200は、体内情報取得システム10001の動作を統括的に制御する。また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信されてくる体内画像についての情報を受信し、受信した体内画像についての情報に基づいて、表示装置(図示せず)に当該体内画像を表示するための画像データを生成する。
【0151】
体内情報取得システム10001では、このようにして、カプセル型内視鏡10100が飲み込まれてから排出されるまでの間、患者の体内の様子を撮像した体内画像を随時得ることができる。
【0152】
カプセル型内視鏡10100と外部制御装置10200の構成及び機能についてより詳細に説明する。
【0153】
カプセル型内視鏡10100は、カプセル型の筐体10101を有し、その筐体10101内には、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、給電部10115、電源部10116、及び制御部10117が収納されている。
【0154】
光源部10111は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、撮像部10112の撮像視野に対して光を照射する。
【0155】
撮像部10112は、撮像素子、及び当該撮像素子の前段に設けられる複数のレンズからなる光学系から構成される。観察対象である体組織に照射された光の反射光(以下、観察光という)は、当該光学系によって集光され、当該撮像素子に入射する。撮像部10112では、撮像素子において、そこに入射した観察光が光電変換され、その観察光に対応する画像信号が生成される。撮像部10112によって生成された画像信号は、画像処理部10113に提供される。
【0156】
画像処理部10113は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサによって構成され、撮像部10112によって生成された画像信号に対して各種の信号処理を行う。画像処理部10113は、信号処理を施した画像信号を、RAWデータとして無線通信部10114に提供する。
【0157】
無線通信部10114は、画像処理部10113によって信号処理が施された画像信号に対して変調処理等の所定の処理を行い、その画像信号を、アンテナ10114Aを介して外部制御装置10200に送信する。また、無線通信部10114は、外部制御装置10200から、カプセル型内視鏡10100の駆動制御に関する制御信号を、アンテナ10114Aを介して受信する。無線通信部10114は、外部制御装置10200から受信した制御信号を制御部10117に提供する。
【0158】
給電部10115は、受電用のアンテナコイル、当該アンテナコイルに発生した電流から電力を再生する電力再生回路、及び昇圧回路等から構成される。給電部10115では、いわゆる非接触充電の原理を用いて電力が生成される。
【0159】
電源部10116は、二次電池によって構成され、給電部10115によって生成された電力を蓄電する。図18では、図面が煩雑になることを避けるために、電源部10116からの電力の供給先を示す矢印等の図示を省略しているが、電源部10116に蓄電された電力は、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び制御部10117に供給され、これらの駆動に用いられ得る。
【0160】
制御部10117は、CPU等のプロセッサによって構成され、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び、給電部10115の駆動を、外部制御装置10200から送信される制御信号に従って適宜制御する。
【0161】
外部制御装置10200は、CPU,GPU等のプロセッサ、又はプロセッサとメモリ等の記憶素子が混載されたマイクロコンピュータ若しくは制御基板等で構成される。外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100の制御部10117に対して制御信号を、アンテナ10200Aを介して送信することにより、カプセル型内視鏡10100の動作を制御する。カプセル型内視鏡10100では、例えば、外部制御装置10200からの制御信号により、光源部10111における観察対象に対する光の照射条件が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、撮像条件(例えば、撮像部10112におけるフレームレート、露出値等)が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、画像処理部10113における処理の内容や、無線通信部10114が画像信号を送信する条件(例えば、送信間隔、送信画像数等)が変更されてもよい。
【0162】
また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信される画像信号に対して、各種の画像処理を施し、撮像された体内画像を表示装置に表示するための画像データを生成する。当該画像処理としては、例えば現像処理(デモザイク処理)、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)、並びに/又は拡大処理(電子ズーム処理)等、各種の信号処理を行うことができる。外部制御装置10200は、表示装置の駆動を制御して、生成した画像データに基づいて撮像された体内画像を表示させる。あるいは、外部制御装置10200は、生成した画像データを記録装置(図示せず)に記録させたり、印刷装置(図示せず)に印刷出力させてもよい。
【0163】
以上、本開示に係る技術が適用され得る体内情報取得システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部10112に適用され得る。これにより、より鮮明な術部画像を得ることができるため、検査の精度が向上する。
【0164】
(適用例4)
<4.内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0165】
図19は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0166】
図19では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0167】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0168】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0169】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0170】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0171】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0172】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0173】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0174】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0175】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0176】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0177】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0178】
図20は、図19に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0179】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0180】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0181】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0182】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0183】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0184】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0185】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0186】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0187】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0188】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0189】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0190】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0191】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0192】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0193】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0194】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0195】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、検出精度が向上する。
【0196】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0197】
(適用例5)
<移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0198】
図21は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0199】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図21に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0200】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0201】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0202】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0203】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0204】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0205】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0206】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0207】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0208】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図21の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0209】
図22は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0210】
図22では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0211】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0212】
なお、図22には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0213】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0214】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0215】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0216】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0217】
<8.実施例>
(実施例1)
まず、下部電極としてITO電極付ガラス基板をUV/オゾン(O)洗浄を行ったのち、この基板を有機蒸着室に移動し室内を1×10-5Pa以下に減圧した。続いて、基板ホルダーを回転させながら、ハロゲン原子を含まない光電変換層を形成した。続いて、同様に、ハロゲン含有分子をドーパント(ゲスト)として上部中間層を形成した。具体的には、実験1では、ホスト材料として下記式(5)で表されるナフタレンジイミド系材料を用い、ゲスト材料として下記式(6)で表されるサブフタロシアニン系材料を用い、ゲスト材料のドーピング濃度(体積%)を0、0.01、0.05、0.1、1、10、100とした(実験例1~7)。実験2では、ホスト材料として式(5)の材料を用い、ゲスト材料として下記式(7)で表されるサブフタロシアニン系材料を用い、ゲスト材料のドーピング濃度(体積%)を0、0.01、0.05、0.1、1、10、100とした(実験例8~14)。実験3では、ホスト材料として式(5)の材料を用い、ゲスト材料として下記式(8)で表されるヘキサアザトリフェニレン系材料を用い、ゲスト材料のドーピング濃度(体積%)を0、0.01、0.05、0.1、1、10、100とした(実験例15~21)。次に、スパッタリング法を用いて上部中間層上に上部電極としてITOを形成したのち、CVD法を用いてITO上に保護層として窒化シリコン(SiN)膜を形成した。
【0218】
【化4】
【0219】
表1~3は、それぞれ、実験例1~7、実験例8~14および実験例15~21において用いたホスト材料、ゲスト材料およびその濃度(体積%)、上部中間層の膜厚(nm)および保護層形成前後における暗電流の増加率(%)をまとめたものである。図23図25は、それぞれ、実験1~3におけるドーピング濃度と保護層形成前後の暗電流の増加率との関係を表したものである。保護層形成前の暗電流をJdk,0、保護層形成後の暗電流をJdkとした場合、ゲスト材料の種類によらずドーピング濃度が0.05体積%以上の場合において保護層形成前後の暗電流の増加率(Jdk-Jdk,0)/Jdk,0が上昇した。このことから、保護層形成後の暗電流増加を抑制するためには、上部中間層に含まれるハロゲン含有分子は0.05体積%未満にすることが好ましいことが明らかとなった。
【0220】
【表1】
【0221】
【表2】
【0222】
【表3】
【0223】
(実施例2)
まず、下部電極としてITO電極付ガラス基板をUV/オゾン(O)洗浄を行ったのち、この基板を有機蒸着室に移動し室内を1×10-5Pa以下に減圧した。続いて、基板ホルダーを回転させながら、光電変換層として、電子供与体材料、電子受容体材料および色素材料を膜厚比4:2:4、総膜厚230nmとなるように真空共蒸着により形成した。次に、ハロゲン原子を含まない上部中間層を真空蒸着により形成したのち、実施例1と同様に、上部電極および保護層を順に形成した。ここでは、色素材料として、下記式(9)で表されるサブフタロシアニン系材料(実験例22)、式(6)の材料(実験例23)、下記式(10)で表されるサブフタロシアニン系材料(実験例24)、式(7)の材料(実験例25)、下記式(11)で表されるサブフタロシアニン系材料(実験例26)および下記式(12)で表されるサブフタロシアニン系材料(実験例27)を用いた。電子供与体材料、電子受容体材料および上部中間層は同一材料を用いた。
【0224】
【化5】
【0225】
表4は、それぞれ、実験例22~27において用いた色素材料、上部中間層の材料、色素材料の分子内におけるハロゲン原子の最小結合エネルギー(eV)および保護層形成前後における暗電流の増加率(%)をまとめたものである。図26は、最小結合エネルギーと保護層形成前後の暗電流の増加率との関係を表したものである。保護層形成前後の暗電流の増加率の色素材料依存性を調べたところ、色素材料の分子中に含まれるハロゲンを有する結合のうち、ハロゲン原子の最小結合エネルギーと暗電流増加率との間に相関が見られた。これより、光電変換層中にハロゲン含有分子が存在するとき、ハロゲン原子を有する結合のうち最小の結合エネルギーが5.4eV以上である場合に、保護層形成後の暗電流増加が抑制されることが明らかとなった。なお、結合解離エネルギーは、下記式(1)で表される反応のエネルギー変化を計算することで算出した。計算手法は密度汎関数法を用いた。汎関数はB3LYPを用い、基底関数は6-31G**を使用した。
【0226】
【数1】
【0227】
【表4】
【0228】
(実施例3)
まず、下部電極としてITO電極付ガラス基板をUV/オゾン(O)洗浄を行ったのち、この基板を有機蒸着室に移動し室内を1×10-5Pa以下に減圧した。続いて、基板ホルダーを回転させながら、光電変換層として、電子供与体材料、電子受容体材料および色素材料を膜厚比4:2:4、総膜厚230nmとなるように真空共蒸着により形成した。次に、ハロゲン原子を含まない上部中間層を真空蒸着により形成したのち、実施例1と同様に、上部電極および保護層を順に形成した。ここでは、上部中間層の材料として、式(5)の材料(実験例28)、下記式(13)で表されるナフタレンジイミド系材料(実験例29)、下記式(14)で表されるナフタレンジイミド系材料(実験例30)、下記式(15)で表されるナフタレンジイミド系材料(実験例31)、下記式(16)で表されるナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(実験例32)、下記式(17)で表されるナフタレンジイミド系材料(実験例33)、酸化モリブデン(MoO)(実験例34)、酸化タングステン(WO)(実験例35)、下記式(18)で表されるヘキサアザトリフェニレン系材料(実験例36)および式(5)の材料(実験例37)を用いた。電子供与体材料、電子受容体材料および色素材料は同一材料を用いた。
【0229】
【化6】
【0230】
表5は、それぞれ、実験例28~37における上部電極の仕事関数、上部中間層および光電変換材料の電子親和力(eV),暗電流の相対値および量子効率の相対値をまとめたものである。図27は、実験例28~33における上部中間層の電子親和力と暗電流との関係を表したものである。図28は、実験例28~33における上部中間層の電子親和力と量子効率との関係を表したものである。図29は、実験例34~37における上部中間層の電子親和力と暗電流との関係を表したものである。図30は、実験例34~37における上部中間層の電子親和力と量子効率との関係を表したものである。
【0231】
本実施例では、保護層形成後の暗電流相対値および量子効率相対値の上部中間層依存性を調べた。なお、量子効率は、励起波長560nm、強度10μW/cmの緑色光を照射し評価を行った。上部電極の仕事関数は紫外線光電子分光法を用いて取得した。上部中間層および光電変換層の各材料の電子親和力は、紫外線光電子分光法によって得られたイオン化ポテンシャルと吸収分光測定から得られる光学バンドギャップを差し引くことで算出した。その結果、上部電極がカソードの場合において、上部電極の仕事関数をWF、上部中間層の電子親和力をEA1、光電変換材料のうち最も小さな電子親和力を持つ材料の電子親和力をEA2とした場合に、EA2≦EA1≦WFを満たす上部中間層を用いた場合に、低い暗電流と高い量子効率とを両立できることが明らかとなった。また、上部電極がアノードの場合においては、EA1>WFにおいて低い暗電流と高い量子効率とを両立できることが明らかとなった。
【0232】
【表5】
【0233】
(実施例4)
まず、下部電極としてITO電極付ガラス基板をUV/オゾン(O)洗浄を行ったのち、この基板を有機蒸着室に移動し室内を1×10-5Pa以下に減圧した。続いて、基板ホルダーを回転させながら、光電変換層として、電子供与体材料、電子受容体材料および分子内にハロゲン原子を含む色素材料を膜厚比4:2:4、総膜厚230nmとなるように真空共蒸着により形成した。次に、ハロゲン原子を含まない上部中間層を真空蒸着により形成した。このとき、上部中間層の膜厚を3nm(実験例38)、5nm(実験例39)、7nm(実験例40)、10nm(実験例41)、15nm(実験例42)および20nm(実験例43)とした。続いて、実施例1と同様に、上部電極および保護層を順に形成した。ここでは、色素材料として式(7)の材料を用い、上部中間層の材料として式(5)の材料を用いた。また、電子供与体材料および電子受容体材料も全ての実験例において同一材料を用いた。
【0234】
表6は、それぞれ、実験例38~43における色素材料、上部中間層の材料、上部中間層の膜厚(nm)および保護層形成前後における暗電流の増加率(%)をまとめたものである。図31は、上部中間層の膜厚、即ち、光電変換層と上部電極との間の距離と保護層形成前後の暗電流の増加率(Jdk-Jdk,0)/Jdk,0との関係を表したものである。実施例4の結果から、上部中間層にハロゲン含有分子が含まれていない場合でも、光電変換層にハロゲン含有分子が含まれているときには、少なからず上部電極や保護層形成時にハロゲン原子の脱離が発生して暗電流の増加を招くことがわかった。これは、例えば、上部電極や保護層形成時に発生する紫外線が光電変換層へ浸透するためと想定される。
【0235】
【表6】
【0236】
保護層形成前後の暗電流増加率の上部中間層の膜厚に対する依存性を調べたところ、膜厚5nm以上、即ち、上部電極からハロゲン含有分子を含む光電変換層までの距離が5nm以上とすることによって保護層形成後の暗電流増加が抑制されることが明らかとなった。
【0237】
以上、第1~第6の実施の形態および適用例並びに実施例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記第1の実施の形態では、固体撮像素子10として、緑色光を検出する有機光電変換部20と、青色光,赤色光をそれぞれ検出する無機光電変換部32B,32Rとを積層させた構成としたが、本開示内容はこのような構造に限定されるものではない。即ち、有機光電変換部において赤色光あるいは青色光を検出するようにしてもよいし、無機光電変換部において緑色光を検出するようにしてもよい。
【0238】
また、これらの有機光電変換部および無機光電変換部の数やその比率も限定されるものではなく、2以上の有機光電変換部を設けてもよいし、有機光電変換部だけで複数色の色信号が得られるようにしてもよい。更に、有機光電変換部および無機光電変換部を縦方向に積層させる構造に限らず、基板面に沿って並列させてもよい。
【0239】
更にまた、上記第1の実施の形態では、裏面照射型の撮像装置の構成を例示したが、本開示内容は表面照射型の撮像装置にも適用可能である。また、本開示の固体撮像素子(および撮像装置)では、上記実施の形態で説明した各構成要素を全て備えている必要はなく、また逆に他の層を備えていてもよい。
【0240】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0241】
なお、本開示は、以下のような構成であってもよい。
(1)
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた光電変換層とを備え、
前記光電変換層は、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層と、第2の半導体材料を含む励起子解離層とを有し、
前記第2の半導体材料は、前記第1の半導体材料と界面を形成すると共に、前記色素材料とは直接接していない
固体撮像素子。
(2)
前記光電変換層は、前記励起子生成層と前記励起子解離層との間に、第1の半導体材料からなる第1の中間層を有する、前記(1)に記載の固体撮像素子。
(3)
前記光電変換層は、前記第1の中間層と前記励起子解離層との間に、前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料を含む第2の中間層を有する、前記(2)に記載の固体撮像素子。
(4)
前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料は、互いに異なる極性を有する半導体材料である、前記(1)乃至(3)のうちのいずれか1つに記載の固体撮像素子。
(5)
前記第1の半導体材料のバンドギャップは、前記色素材料のバンドギャップと同じ、または前記色素材料のバンドギャップよりも小さい、前記(1)乃至(4)のうちのいずれか1つに記載の固体撮像素子。
(6)
前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料は、エネルギー準位に差を有する、前記(1)乃至(5)のうちのいずれか1つに記載の固体撮像素子。
(7)
前記第2の半導体材料は、前記第1の半導体材料と界面を形成すると共に、前記色素材料とは直接接していない、前記(1)乃至(6)のうちのいずれか1つに記載の固体撮像素子。
(8)
前記色素材料、前記第1の半導体材料および前記第2の半導体材料は、有機材料である、前記(1)乃至(7)のうちのいずれか1つに記載の固体撮像素子。
(9)
1または複数の固体撮像素子がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記固体撮像素子は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた光電変換層とを備え、
前記光電変換層は、色素材料および第1の半導体材料を含む励起子生成層と、第2の半導体材料を含む励起子解離層とを有し、
前記第2の半導体材料は、前記第1の半導体材料と界面を形成すると共に、前記色素材料とは直接接していない
固体撮像装置。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31