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特許7367135SGS高含有アブラナ科野菜の生産方法、並びに、飲食品の製造方法及び飲食品
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  • 特許-SGS高含有アブラナ科野菜の生産方法、並びに、飲食品の製造方法及び飲食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】SGS高含有アブラナ科野菜の生産方法、並びに、飲食品の製造方法及び飲食品
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/15 20180101AFI20231016BHJP
【FI】
A01G22/15
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022109888
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2019065132の分割
【原出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2022125293
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】染谷 雅敬
(72)【発明者】
【氏名】古屋 貴悦
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-211945(JP,A)
【文献】特開2019-41694(JP,A)
【文献】特開2017-60442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/15
A01G 22/25
A01H 6/20
A23L 33/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SGS高含有アブラナ科野菜の生産方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
栽培:ここで栽培されるのは、SGS高含有アブラナ科野菜であり、その栽培場所は、平均気温が30℃を超えない、かつ、
その栽培場所は、植物工場であり、かつ、
ここで調整されるのは、栽培後期における、平均気温が25℃を超える日数であり、
前記日数は、25%未満であり、
前記SGS高含有アブラナ科野菜は、ケールとダイコンの属間雑種であり、
前記属間雑種は、ケールを花粉親、ダイコンを柱頭親とした属間雑種である。
【請求項2】
請求項1の生産方法であって、
前記栽培の期間は、20日以上である。
【請求項3】
請求項1の生産方法であって、
前記栽培の期間は、40日以上である。
【請求項4】
請求項1の生産方法であって、
前記栽培の期間は、60日以上である。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの生産方法であって、
前記栽培の期間は、150日以下である。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの生産方法であって、更にそれを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
収穫:ここで収穫されるのは、SGS高含有アブラナ科野菜であり、
前記収穫の時期は、SGS高含有アブラナ科野菜のSGS濃度が、栽培の開始日を基準として2.0倍以上の時期である。
【請求項7】
アブラナ科野菜のSGS濃度を高める方法であって、それを構成するのは、少なくとも、
次の工程である:
栽培:ここで栽培されるのは、アブラナ科野菜であり、その栽培場所は、平均気温が30℃を超えない、かつ、
ここで調整されるのは、栽培後期における、平均気温が25℃を超える日数であり、
前記日数は、25%未満であり、
前記アブラナ科野菜は、ケールとダイコンの属間雑種であり、
前記属間雑種は、ケールを花粉親、ダイコンを柱頭親とした属間雑種である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、SGS高含有アブラナ科野菜の生産方法、並びに、飲食品の製造方法及び飲食品である。
【背景技術】
【0002】
近年、市場で求められているのは、健康価値をもった野菜である。特許文献1に開示されているのは、十字花科(アブラナ科)植物の新芽であり、例示すると、ブロッコリースプラウトである。この新芽に多く含まれているのは、スルフォラファングルコシノレート(以下、「SGS」という。)である。SGSが代謝されると、スルフォラファンになる。特許文献2乃至5に開示されているのは、スルフォラファンの作用であり、具体的には、抗酸化作用、解毒作用、脂肪蓄積抑制作用、抗菌作用等である。
【0003】
そのような価値ある野菜の候補の一つは、アブラナ科野菜である。なぜなら、多くのアブラナ科野菜に含まれているのは、グルコシノレートだからである。前述のとおり、グルコシノレートの代謝物が奏するのは、様々な健康作用である。
【0004】
アブラナ科野菜中のグルコシノレートの含有量を高める方法は、僅かに開示されている。引用文献6に開示されているのは、スプラウトの栽培方法であり、そこで採用されているのは、発光ダイオードである。引用文献7に開示されているのは、野菜の生産方法であり、そこで採用されているのは、人工照明下での水耕栽培である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO97/09889
【文献】特開2006-109754号
【文献】国際公開WO01/045661
【文献】特開2010-126489号
【文献】国際公開WO2002/015722
【文献】特開2007-075073号
【文献】特開2015-192682号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、SGS高含有アブラナ科野菜中のSGS濃度の高位安定化である。すなわち、SGS高含有アブラナ科野菜に求められるのは、SGS濃度は、高く、かつ、安定している(ばらつきが小さい)ことである。SGS濃度が低く、或いは、高くても、ばらついていれば、SGS高含有アブラナ科野菜の健康価値は、訴求できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、SGS高含有アブラナ科野菜の栽培場所の気温がSGS濃度に与える影響である。すなわち、栽培場所の気温が所定の温度を超えないと、SGS濃度は高位安定化する。特に、栽培期間の後半の気温が重要である。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0008】
本発明に係るSGS高含有アブラナ科野菜の生産方法を構成するのは、少なくとも、栽培である。栽培において、SGS高含有アブラナ科野菜は栽培される。その栽培場所は、平均気温が30℃を超えない。
【0009】
本発明に係る飲食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、加工である。加工において、SGS高含有アブラナ科野菜は、加工される。加工されるSGS高含有アブラナ科野菜の栽培場所は、平均気温が30℃を超えない。
【0010】
本発明に係る飲食品が有するのは、SGS高含有アブラナ科野菜である。ここで、当該SGS高含有アブラナ科野菜の栽培場所は、平均気温が30℃を超えない。
【発明の効果】
【0011】
本発明が可能にするのは、SGS高含有アブラナ科野菜のSGS濃度の高位安定化である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】SGS高含有アブラナ科野菜の葉の概略図
図2】SGS高含有アブラナ科野菜の葉の写真
図3】本実施の形態に係る生産方法の流れ図
図4】本実施の形態に係る製造方法の流れ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<スルフォラファングルコシノレート(SGS)>
スルフォラファングルコシノレート(SGS)とは、グルコースおよびアミノ酸の誘導体であるグルコシノレートの1種であり、グルコラファニンとも呼ばれる。
【0014】
<SGS高含有アブラナ科野菜>
SGS高含有アブラナ科野菜とは、アブラナ科(Brassicacear)に属する野菜であって、そのSGS濃度が高いものである。アブラナ科野菜を例示すると、アブラナ属の野菜(ハクサイ、カブ、チンゲンサイ、コマツナ、タカナ、ミズナ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、メキャベツ、コールラビ、ケール等)、ダイコン属の野菜(ダイコン等)、オランダガラシ属の野菜(クレソン等)、キバナスズシロ属の野菜(ルッコラ等)、シロガラシ属の野菜(シロガラシ等)、セイヨウワサビ属の野菜(ホースラディッシュ等)、ワサビ属の野菜(ワサビ等)である。アブラナ科野菜は、アブラナ科に属する野菜同士であれば、その交雑種であってもよい。例示すると、アブラナ科に属する属間の属間雑種(アブラナ属の野菜×ダイコン属の野菜、アブラナ属の野菜×オランダガラシ属の野菜、アブラナ属の野菜×キバナスズシロ属の野菜等)や、アブラナ科に属する種間の種間雑種(B.oleracea×B.rapa等)である。一般的な市場で流通する多くのアブラナ科野菜のSGS濃度は、100mg/100g未満である。SGS高含有アブラナ科野菜のSGS濃度は、100mg/100g以上である。好ましくは、SGS高含有アブラナ科野菜は、アブラナ属の野菜とダイコン属の野菜の属間雑種であり、さらに好ましくは、ケールとダイコンの属間雑種であり、最も好ましくは、農林水産省品種登録出願番号第33291号(出願品種の名称:サンテヴェール48)である。
【0015】
<SGS高含有アブラナ科野菜のSGS濃度>
SGS高含有アブラナ科野菜のSGS濃度とは、SGS高含有アブラナ科野菜に含まれるSGSの濃度をいう。ここで、SGS高含有アブラナ科野菜中のSGS濃度は、別段の記載がない限り、新鮮重量(100g)あたりの含有量(mg)を指す。図1で示すのは、SGS高含有アブラナ科野菜の葉の概略である。図2で示すのは、SGS高含有アブラナ科野菜の葉の写真である。SGS濃度を測定する部位は、別段の記載がない限り、SGS高含有アブラナ科野菜の葉の先端部Pであり、この葉の長さ(葉長)Lは、10~15cmである。先端部とは、葉の先端l1から葉長Lのおおよそ4分の1までを指す。
【0016】
<本発明に係る生産方法>
図3が示すのは、本発明に係る生産方法(以下、「本生産方法」という。)の流れである。本生産方法を構成するのは、主に、定植(S10)、栽培(S20)、収穫(S30)である。
【0017】
<定植(S10)>
SGS高含有アブラナ科野菜の苗を定植する。SGS高含有アブラナ科野菜の苗を得る手段は特に限定されず、苗の状態で流通しているものであってもよく、種子の状態で流通しているものから得られるものであってもよく、組織培養や挿し芽等の栄養繁殖によって得られるものであってもよい。種子を発芽させて苗を得る場合においては、必要に応じ、定植の前に播種を行ってもよい。さらに、SGS高含有アブラナ科野菜の栽培を行う場所に直接播種を行い、間引きして残ったものを苗としてもよい。直接播種を行う場合は、SGS高含有アブラナ科野菜の本葉がおよそ5cmまで成長した時点を「定植日」とする。定植日は、定植後収穫までの期間においてSGS高含有アブラナ科野菜の栽培が可能となる時期であれば特に限定されないが、好ましくは、5月~10月であり、より好ましくは、7月~10月である。
【0018】
<栽培(S20)>
SGS高含有アブラナ科野菜を栽培する場所は、平均気温が30℃を超えない。SGS高含有アブラナ科野菜の栽培する施設は、野菜の栽培が可能な施設であれば特に限定されず、例示すると、圃場、ビニールハウス、植物工場等である。栽培を行う手段は特に限定されず、露地栽培であっても施設栽培であってもよく、土耕栽培であっても水耕栽培であってもよい。本工程が排除しないのは、植物の栽培において一般的に行われる作業の実施である。例示すると、施肥、農薬散布、病虫害の防除、葉かき、芽かき等である。
【0019】
<栽培前期と栽培後期>
本生産方法において、栽培期間は、2つに分けられる。具体的には、栽培前期及び栽培後期である。栽培前期とは、栽培の開始日(つまり、定植日と同義である。)から栽培の終了日(つまり、収穫日と同義である。)までの日数を2つに分けた場合の、前半部を指す。栽培後期とは、栽培の開始日から栽培の終了日までの日数を2つに分けた場合の、後半部を指す。栽培の開始日を1日目とし、栽培の終了日を最終日とする。栽培の開始日から栽培の終了日までの日数Nが偶数の場合、栽培前期の日数は、N/2とし、栽培後期の日数は、N/2とする。栽培の開始日から栽培の終了日までの日数Nが奇数の場合、栽培前期の日数は、(N-1)/2とし、栽培後期の日数は、(N-1)/2+1とする。
【0020】
好ましくは、栽培後期において、平均気温が25℃を超える日数は、25%未満であり、より好ましくは、15%未満である。栽培後期において、平均気温が25℃を超える日数が、40%以上になると、SGS濃度が低くなるので好ましくない。平均気温が25℃を超える日数を25%未満とするための具体的な手段は、特に限定されないが、例示すると、寒地栽培、寒冷地栽培又は高冷地栽培等の冷涼な気候の土地での栽培、定植時期や栽培期間の調節、或いは、温度管理可能な施設等での栽培である。ここで、寒地とは、年間平均気温が3℃から9℃の地域を指し、寒冷地とは、年間平均気温が9℃から12℃の地域を指し、高冷地とは、標高が500m以上の地域を指す。
【0021】
栽培期間は、SGS高含有アブラナ科野菜の種類によって異なるため特に限定されないが、好ましくは、20日以上であり、より好ましくは、40日以上であり、さらに好ましくは、60日以上である。栽培期間が150日を超えると、SGS高含有アブラナ科野菜の茎が木質化して硬くなるため、好ましくない。
【0022】
<平均気温>
平均気温とは、1日あたりの平均気温を指す。つまり、「平均気温が30℃を超えない」とは、1日あたりの平均気温が30℃を超えないことを指す。すなわち、仮に1日の中で30℃を超える時間帯があったとしても、1日あたりの平均気温が30℃を越えていなければ、30℃を超えない平均気温である。気温の具体的な測定手段は、公知の方法であれば良く、特に限定されない。
【0023】
<収穫(S30)>
収穫において、SGS高含有アブラナ科野菜を収穫する。SGS高含有アブラナ科野菜を収穫する手段は、公知のものであればよく特に限定されない。収穫されたSGS高含有アブラナ科野菜のSGS濃度は、SGS高含有アブラナ科野菜の種類によって異なるため特に限定されないが、好ましくは、栽培の開始日を基準として2.0倍以上である。好ましくは、200mg/100g以上であり、より好ましくは、300mg/100g以上であり、さらに好ましくは、400mg/100g以上である。
【0024】
<本発明に係る製造方法>
図4が示すのは、本発明に係る製造方法(以下、「本製造方法」という。)の流れである。本製造方法を構成するのは、主に、加工(S10)である。
【0025】
<加工(S10)>
加工において、SGS高含有アブラナ科野菜を加工する。SGS高含有アブラナ科野菜は、平均気温が30℃を超えない場所で栽培されたものである。好ましくは、寒地、寒冷地又は高冷地で栽培されたものである。加工の手段は、公知のものであれば特に限定されず、例示すると、加熱、細断、破砕、粉砕、搾汁、固液分離、乾燥、抽出、配合、混合等である。SGS高含有アブラナ科野菜を加工して得られるのは、飲食品である。飲食品を例示すると、飲料、食品又はサプリメント等である。
【実施例
【0026】
<人工気象室での栽培試験>
ケールを花粉親、ダイコンを柱頭親とした属間雑種(品種登録出願番号第33291号、出願品種の名称:サンテヴェール48)の培養苗を、人工気象室(日本医科器械製作所製)の内部で栽培した。栽培は、水耕栽培とし、培養液の基本組成は、OATハウス肥料シリーズ(OATアグリオ株式会社製)のA処方とした。日長は、明期15時間、暗期9時間とした。低温区では、明期25℃、暗期15℃(平均気温約21℃)で6週間栽培を行った。高温区では、明期25℃、暗期15℃で2週間栽培した後、明期35℃、暗期25℃(平均気温31℃)で4週間栽培を行った。
【0027】
<SGS濃度の測定>
低温区と高温区について、SGS濃度の測定を行った。4株分を反復して測定し、その平均値を算出した。測定サンプルは、熱水で酵素(ミロシナーゼ)を失活させてからペースト状になるまで破砕し、100℃に設定したウォーターバスで30分間抽出を行った後、10,000×g、10分間、4℃で遠心分離を行った。遠心分離後の上澄みを0.2μmのフィルターで濾過し、HPLCで定量した。HPLCの詳細な測定条件は、以下のとおりである。
【0028】
<HPLC測定条件>
装置:ACQUITY UPLC H-Classシステム(Waters社製)
カラム:ACQUITYCSH C18(Φ2.1×100mm, 1.7μm)(Waters社製)
カラム温度:30℃
サンプル注入量:10μL
移動相A:超純水:トリフルオロ酢酸=99.95:0.05(v:v)
移動相B:メタノール:トリフルオロ酢酸=99.95:0.05(v:v)
グラジエント:5分間 移動相B割合0%を維持
10分間で移動相B割合0→10%のリニアグラジエント
5分間で移動相B割合10→100%のリニアグラジエント
5分間 移動相B割合100%を維持
2分間で移動相B割合100→0%のリニアグラジエント
5分間 移動相B割合0%を維持
流速:0.1mL/min
検出波長:235nm
【0029】
【表1】
【0030】
表1が示すのは、低温区と高温区のSGS濃度である。表1からわかることは、低温区の方がSGS濃度は高くなることである。すなわち、平均気温が30℃を超えない環境で栽培することで、SGS濃度は高くなる。
【0031】
<圃場での栽培試験>
<定植>
ケールを花粉親、ダイコンを柱頭親とした属間雑種(品種登録出願番号第33291号、出願品種の名称:サンテヴェール48)の培養苗を、栃木県那須塩原市のカゴメ株式会社所有の圃場に定植した。区分1は、2017年5月30日に定植し、2017年8月30日まで栽培した。区分2は、2017年5月30日に定植し、2017年9月19日まで栽培した。区分3は、2017年6月19日に定植し、2017年9月19日まで栽培した。区分4は、2017年7月28日に定植し、2017年9月19日まで栽培した。区分5は、2017年8月25日に定植し、2017年10月18日まで栽培した。各区分における栽培期間の日数、栽培前期の日数、栽培後期の日数は、表2に示すとおりである。栽植設定は、天面70cm、株間80cm、畝間120cmとした。試験規模は、30株とした。
【0032】
【表2】
【0033】
<栽培>
定植した苗を土耕にて栽培した。施肥設計は、基肥を窒素16kg/10a、リン酸18.8kg/a、カリウム16kg/aとし、追肥を窒素10kg/a、リン酸5.0kg/a、カリウム5.0kg/aとした。
【0034】
<SGS濃度の測定>
栽培の開始日におけるSGS濃度を把握するため、同じ培養方法で得た培養苗のSGS濃度を測定した。測定サンプルは、葉長5cmの葉の全量を用いた。任意の2株分について測定し、その平均値を算出した。
【0035】
栽培の終了日におけるSGS濃度を把握するため、区分1から区分5の栽培終了日におけるSGS濃度を測定した。測定サンプルは、葉長15cmの葉の先端部約0.5gとし、任意の3株分を混合したものについて測定した。
【0036】
測定は、前述と同様の方法で行った。
【0037】
<気温の測定>
栽培期間における気温は、データロガー(ティアンドデイ社製、TR-72Ui)を用いて測定した。データロガーを設置した場所は、圃場内部とし、畝の上部からの高さが30cmの位置とした。データロガーの上部及び側部は、アルミホイルで遮光し、直射日光があたらないようにした。気温は、1時間ごとに測定し、午前0時から午後12時までのデータの平均値を算出して、1日あたりの平均気温とした。
【0038】
【表3】
【0039】
栽培前期及び栽培後期における平均気温が25℃を超える日数及びその割合を表3に示す。尚、区分1から区分5の全ての栽培期間において、平均気温が30℃を超える日は無かった。表3からわかることは、以下のとおりである。区分1では、栽培後期において平均気温が25℃を超える日数が40%以上であり、栽培の終了日におけるSGS濃度は、栽培の開始時点を基準として、2.0倍以下である。具体的には、200mg/100g未満である。他方、区分2から区分5では、栽培後期において平均気温が25℃を超える日数が25%未満であり、栽培の終了日におけるSGS濃度は、栽培の開始時点を基準として、2.0倍以上である。具体的には、200mg/100g以上である。
【0040】
つまり、栽培後期において平均気温が25℃を超える日数を考慮せずに栽培を行うと、区分1乃至5のSGS濃度のアブラナ科野菜が生産されるが、栽培後期において平均気温が25℃を超える日数が25%未満となるように栽培を行うことで、区分2乃至5のSGS濃度のアブラナ科野菜が生産される。すなわち、SGS濃度が高く、かつ、安定したアブラナ科野菜が生産可能となる。
【0041】
さらに、区分1及び区分2の比較からわかることは、以下のとおりである。区分1及び区分2は、定植日が同じであることから、栽培期間を調節することで、栽培後期において25℃を超える平均気温の日数を調節することが可能である。
【0042】
さらに、区分1及び区分3の比較からわかることは、以下のとおりである。区分1及び区分3は、栽培期間が同じであることから、栽培期間を同じにするだけでは、グルコシノレートを高く、かつ、安定させることはできない。
【0043】
さらに、区分1、区分4及び区分5の比較からわかることは、以下のとおりである。区分4及び区分5は、区分1に比べて栽培期間が短いが、栽培期間が短い場合においても、栽培後期において平均気温が25℃を超える日数を25%未満とすることで、グルコシノレートを高く、かつ、安定させることが可能である。
【0044】
気温がSGS濃度に影響する理由は、推察ではあるが、高温によるSGS代謝経路の変化である。具体的には、SGSを合成する代謝経路が阻害される、又は、SGSを分解する代謝経路が促進される。特に、栽培後期における気温が重要な理由は、推察ではあるが、収穫前の一定期間に高温に晒されることが、SGS濃度の低下に繋がることである。ただし、作用はこれに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明が有用な分野は、野菜の生産である。
図1
図2
図3
図4