(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】テルペノイドアミノアルコール誘導体を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/84 20060101AFI20231016BHJP
C07C 29/00 20060101ALI20231016BHJP
C07C 35/18 20060101ALI20231016BHJP
C07C 215/44 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C07C209/84
C07C29/00
C07C35/18
C07C215/44
(21)【出願番号】P 2022129165
(22)【出願日】2022-08-15
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521064406
【氏名又は名称】旭富製藥科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 振益
(72)【発明者】
【氏名】李 豊旭
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110143847(CN,A)
【文献】特表2006-524247(JP,A)
【文献】特開2008-169204(JP,A)
【文献】特表平09-510207(JP,A)
【文献】特開2003-252836(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109734554(CN,A)
【文献】米国特許第04433183(US,A)
【文献】Tetrahedron Letters,2013年,Vol.54, No.1,p. 52-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/84
C07C 29/00
C07C 35/18
C07C 215/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を精製する方法であって、
下記式V’で表される粗テルペノイドアミノアルコール誘導体を提供する工程、
【化1】
前記式V’で表される粗テルペノイドアミノアルコール誘導体の酸/塩基結晶化処理を行って、下記式V”で表される有機酸塩を得る工程、並びに
【化2】
前記式V”で表される有機酸塩を
、NaOH
と、トルエン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びジメトキシエタンから選ばれる少なくとも1つの溶媒と反応して、精製した式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を得る工程、を含み、
式中、R、R
1及びR
2が、それぞれ独立して、置換又は無置換C1-C6アルキルである、方法。
【請求項2】
前記テルペノイドアミノアルコール誘導体が、下記式Vで表され、
【化3】
前記有機酸塩が、下記式VI又はVIIで表される、請求項1に記載の方法。
【化4】
【化5】
【請求項3】
前記酸/塩基結晶化処理は、塩基とする前記式V’で表される粗テルペノイドアミノアルコール誘導体と有機酸とを、有機溶媒又は有機/水溶液に混合することで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機酸は、L-酒石酸、D-酒石酸、酢酸、クエン酸、カンファースルホン酸、マンデル酸、(+)-ジ-tert-ブチル酒石酸、(+)-ジエチル酒石酸、メタンスルホン酸、又はそれらの組合せである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
混合物における前記有機酸と前記塩基の比率は、1:1~1:3である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
混合物における前記有機酸と前記塩基の比率は、1:1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒は、イソプロピルアルコールである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記有機/水溶液は、アセトン/H
2O溶液である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記酸/塩基結晶化処理が、-5℃~30℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記温度は、5℃~15℃の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記精製した式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体をイソプロピルアルコール又はアセトン/H
2O溶液で洗浄する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法であって、
請求項1に記載の方法により、下記式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を精製する工程、
【化6】
[式中、R
1及びR
2が、それぞれ独立して、置換又は無置換C1-C6アルキルである。]
前記精製した式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体をH
2O
2で酸化して、反応混合物を生成する工程、及び
前記反応混合物のコープ脱離を行って、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを得る工程を含む、方法。
【請求項13】
前記酸化は、イソプロピルアルコール又はアセトン/H
2O溶液に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化は、50℃~70℃の温度で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化をNa
2SO
3及びH
2Oでクエンチする工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
コープ脱離後、前記反応混合物を蒸留する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
下記式I及びIIで表される中間体を含む混合物を提供する工程、及び
【化7】
【化8】
前記混合物をアルコール中のジメチルアミンと反応して、前記式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を得る工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物の反応は、50℃~60℃の温度で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルコールは、メタノールである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
リモネンのエポキシ化を行って、前記混合物を提供する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペノイドアミノアルコール誘導体を精製する方法、及びテルペノイドアミノアルコール誘導体からp-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールは、カンナビジオール調製の中間体であり、いくつの治療上の応用を有し、例えば、抗関節炎薬又は神経保護性の抗酸化剤として役に立つ(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2000, 97, 9561 and Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1998, 95, 8268)。
【0003】
(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールは、本来、(+)-リモネンからO2-増感型光化学反応により一段階で合成されていたが、標的化合物を反応混合物から単離することが困難であるため、その収率が悪かった(Justus Liebigs Ann. Chem. 1964, 674, 93)。なお、(+)-リモネンから(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールへの化学合成について、いくつのアプローチが報告されている。例えば、以下のスキーム1に示すように、(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを得るため、エポキシ誘導体を生成するための環内部分の酸化である工程(A)、求核剤による開環である工程(B)、並びに酸化及び脱離反応である工程(C)、を含有するプロセスが記載されている(米国特許第4,433,183号、Aust. J. Chem., 1980, 33, 451、及びTetrahedron Letters 2013, 54, 52-54)。
【0004】
スキーム1(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの合成
【0005】
具体的には、1:1のジアステレオマー混合物(式I及び式II)は、(+)-リモネン(すなわち、工程A)のエポキシ化により得られる。このような反応混合物は、直接にエポキシドの開環反応(すなわち、工程B)を経て、位置-及び立体-選択性を行い、約40%収率の第三級アルコール(式IV)、未反応のシス異性体(式I)及び微量の第二級アルコール(式III)を得る。次の酸化反応(すなわち、工程C)では、Xがフェニルスルフィド(SPh)である場合、蒸留により精製プロセスが提案され、Xがフェニルセレニド(SePh)又はNMe2(Me:メチル)である場合、精製プロセスが不要である。しかしながら、上記2つの状況のいずれにも、エネルギーの浪費及び反応効率の低下が必然的に引き起こされる。
【0006】
よって、(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの調製においては、中間体の効率的かつ経済的で安全な精製プロセスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
上記に基づいて、本発明は、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの調製用中間体を精製する方法を提供する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、下記式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を精製する方法を提供する。
【0008】
【化1】
式中、R
1及びR
2が、それぞれ独立して、置換又は無置換C1-C6アルキルである。
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、当該方法は、上記式V’で表される粗テルペノイドアミノアルコール誘導体を提供する工程、当該式V’で表される粗テルペノイドアミノアルコール誘導体の酸/塩基結晶化処理を行って、下記式V”で表される有機酸塩を得る工程、並びに
【化2】
当該式V”で表される有機酸塩をNaOH、トルエン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジエチルエーテル、及びジメトキシエタン(DME)から選ばれる少なくとも1つの溶媒と反応して、精製した式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を得る工程を含み、式中、Rは、それぞれ独立して、置換又は無置換C1-C6アルキルである。
【0010】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、テルペノイドアミノアルコール誘導体は、以下の式Vで表されてもよい。
【0011】
【0012】
いくつの実施形態において、有機酸塩は下記式VI又はVIIで表されてもよい。
【0013】
【0014】
【0015】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理は、塩基とする式V´で表される粗テルペノイドアミノアルコール誘導体と有機酸とを、有機溶媒又は有機/水溶液に混合することで行われる。
【0016】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理において、有機酸は、L-酒石酸、D-酒石酸、酢酸(HOAc)、クエン酸、カンファースルホン酸、マンデル酸、(+)-ジ-tert-ブチル酒石酸、(+)-ジエチル酒石酸、メタンスルホン酸、又はそれらの組合せであり得る。本発明のいくつの実施形態において、当該有機酸はL-酒石酸、D-酒石酸、又はそれらの組合せである。
【0017】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理において、混合物における有機酸と塩基の比率が、1:1~1:3である。本発明のいくつの実施形態において、当該混合物における有機酸と塩基の比率が1:1であり得る。
【0018】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理において、有機溶媒がイソプロピルアルコールであってもよく、有機/水溶液がアセトン/H2O溶液であってもよい。
【0019】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理が、-5℃~30℃の温度で行われる。本発明のいくつの実施形態において、当該酸/塩基結晶化処理が、5℃~15℃の温度範囲で、例えば、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、又は約14℃で行われてもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態において、当該酸/塩基結晶化処理が約10℃の温度で行われる。
【0020】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、当該方法は、精製したテルペノイドアミノアルコール誘導体をイソプロピルアルコール又はアセトン/H2O溶液で洗浄することにより、固体のテルペノイドアミノアルコール誘導体を得る工程をさらに含む。
【0021】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法も提供され、当該p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法は、上述の精製方法により、式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を精製する工程、精製した式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体をH2O2で酸化して、反応混合物を生成する工程、及び当該反応混合物のコープ脱離(Cope elimination)を行って、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを得る工程、を含む。
【0022】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、精製したテルペノイドアミノアルコール誘導体の酸化は、イソプロピルアルコール又はアセトン/H2O溶液に、50℃~70℃の温度範囲で行われてもよい。
【0023】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法は、酸化をNa2SO3及びH2Oでクエンチし、そしてコープ脱離後、反応混合物を蒸留する工程をさらに含む。
【0024】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法は、下記式I及びIIで表される中間体を含む混合物を提供する工程、及び
【化6】
【化7】
当該混合物をアルコール中のジメチルアミンと反応して、精製プロセスに用いられる式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体を得る工程、をさらに含む。
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合物の反応は、50℃~60℃の温度範囲で行われてもよい。
【0026】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、混合物を反応させるためのアルコールは、メタノール(MeOH)のような低級炭素数を有するアルコールであり得る。
【0027】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法は、リモネンのエポキシ化を行って、混合物を提供する工程をさらに含む。
【0028】
本発明には、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールをさらに調製するために、高純度の中間体を得るための効率的な方法が提供されている。本発明の実施形態によれば、式V’で表される中間体は、エネルギーのかかる蒸留プロセスや、未精製の反応物質を進行中のプロセスに用いることなしで、容易に精製・単離され得る。したがって、本発明の方法は、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの調製効率を改善することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、添付の図を参照するしながら、以下の実施形態の説明を読んで、より完全に理解され得る。
【0030】
【
図1】式VIで表される有機酸塩の粉末X線回折パターンを表す。
【
図2】式VIIで表される有機酸塩の粉末X線回折パターンを表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の実施例は、本発明を説明するために使用される。当業者は、本明細書の開示に基づいて、本発明のほかの利点や効果を容易に想到し得る。また、本発明は、様々な実施例で述べたように、実施又は適用し得る。本発明の範囲に違反しない限り、様々な局面や応用にその内容を実施するために、その実施例を修正や変更することが可能である。
【0032】
さらに、本明細書で使用される場合には、単数形の「一(a)」、「一(an)」及び「当該(the)」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。「または」という用語は、文脈に明らかに示されない限り、「および/または」という用語と交互に使用し得る。
【0033】
本発明は、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの調製用中間体を精製する方法に関するものである。本発明の少なくとも1つの実施形態において、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの調製用中間体は、下記式V’で表されるテルペノイドアミノアルコール誘導体である。
【0034】
【化8】
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、置換又は無置換C1-C6アルキルである。
【0035】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、式V’におけるR1及びR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、又はsec-ブチルであり得る。本発明の別の実施形態において、テルペノイドアミノアルコール誘導体は下記式Vで表される。
【0036】
【0037】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、テルペノイドアミノアルコール誘導体を精製する方法は、粗テルペノイドアミノアルコール誘導体を提供する工程、当該粗テルペノイドアミノアルコール誘導体の酸/塩基結晶化処理を行って有機酸塩を得る工程、並びに当該有機酸塩をNaOH、トルエン、CPME、ジエチルエーテル、及びDMEから選ばれる少なくとも1つの溶媒と反応して、精製したテルペノイドアミノアルコール誘導体を得る工程、を含む。
【0038】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、粗テルペノイドアミノアルコール誘導体は、トルエン溶液であり得る。
【0039】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理により得られた有機酸塩は、下記式V”で表される。
【0040】
【化10】
式中、Rは、置換又は無置換C1-C6アルキルである。
【0041】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、式V’’に示されているR基は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又は任意的にヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン、シアノ、C1-C4アルコキシ、C1-C4アルキル-カルボニル、若しくはC1-C4アルコキシ-カルボニルで置換されているアルキルであり得るが、これらに限定されていない。
【0042】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理により得られた有機酸塩は下記式VI又はVIIで表される。
【0043】
【0044】
【0045】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理は、塩基とする粗テルペノイドアミノアルコール誘導体、又は粗テルペノイドアミノアルコール誘導体を含むトルエン溶液と、有機酸とを、有機溶媒又は有機/水溶液に混合することで行われる。
【0046】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理は、粗テルペノイドアミノアルコール誘導体をL-酒石酸、アセトン、及び水を含む配合物に加えることで行われ、それにより、式VIで示される有機酸塩が得られる。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸/塩基結晶化処理は、低温で行われる。本発明のいくつの実施形態において、当該低温は、-5℃~30℃の範囲であってもよく、例えば、当該温度は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃であってもよい。
【0048】
また、本発明は、精製したテルペノイドアミノアルコール誘導体からp-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを調製する方法に関するものである。
【0049】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、当該調製方法は、精製したテルペノイドアミノアルコール誘導体をH2O2で酸化して、反応混合物を生成する工程、及び当該反応混合物のコープ脱離を行って、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを得る工程、を含む。
【0050】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、酸化は、50℃~70℃の温度範囲で行われ、例えば、当該温度は、約50℃~約60℃、約55℃~70℃、又は約55℃~約60℃であり得る。
【0051】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、当該調製方法は、反応混合物を約20℃~約30℃に冷却する工程、および当該酸化をNa2SO3及びH2Oでクエンチする工程、をさらに含む。本発明のいくつの実施形態において、当該調製方法は、コープ脱離後、当該反応混合物を蒸留して、固体のp-メンタ-2,8-ジエン-1-オールを得る工程、をさらに含んてもよい。
【0052】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、本発明の方法に用いられるテルペノイドアミノアルコール誘導体は、下記式I及びIIで表される中間体を含む混合物をアルコール中のジメチルアミンと反応させる工程により提供され得る。
【0053】
【0054】
【0055】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、上記混合物の反応は、50℃~60℃の温度範囲で行われ、当該アルコールはメタノール(MeOH)であり得る。
【0056】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、式I及びIIで表される中間体を含む混合物は、リモネンのエポキシ化を行うことにより提供される。
【0057】
いくつの実施形態において、リモネンのエポキシ化は、酸化剤を用いて低温で行われる。本発明の少なくとも1つの実施形態において、当該酸化剤は、酢酸中の過酢酸(HOAc)であり、当該低温は、約0℃である。いくつの実施形態において、エポキシド調製用のCHCl3中の酸化剤として、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)が選択され得る。
【0058】
本発明においては、式Vのテルペノイドアミノアルコール誘導体は、式I及びIIのエポキシド中間体をジメチルアミンと直接に反応することで得られる。したがって、式Vのテルペノイドアミノアルコール誘導体は、L-酒石酸やD-酒石酸を1:1の比率で用いて、容易に精製されることにより、式VI及びVIIで示される安定な有機酸塩を生成することができる。
【0059】
さらに、トルエン中のNaOHで塩ブレイクを行うことで、エネルギーコストのかかる蒸留プロセスや未精製の反応物質を進行中のプロセスに用いることなしで、高純度(例えば、約97%の純度)の式Vを得ることができる。よって、これは、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの調製プロセスの効率を改善することに有用である。
【0060】
多くの実施例を用いて本発明を説明する。下記実施例は、本発明の範囲の制限として取り扱われるべきものではない。
【実施例】
【0061】
実施例1:式I及び式IIの中間体の調製
H2O(223kg)、Na2WO4・H2O(10kg)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB、10.4kg)、45%NaOH(aq)(2.9kg)、H2SO4(3.2kg)、H3PO4(5.2kg)、リモネン(650kg)、及びジクロロメタン(1625kg)をタンクに混合・撹拌した後、50%H2O2(372kg)を当該反応混合物に加えた。反応完了後、クエンチングのためにNa2S2O3(82kg)及びH2O(390kg)を加えて、相分離になった。有機相を減圧下で濃縮し、下記式I及びIIで示される粗中間体を含む混合物(711kg)を、更なる精製なしで、次の工程に向けて集めた。
【0062】
【0063】
【0064】
実施例2:式Vの調製及び精製
反応タンクに式I及びIIの粗中間体の混合物をジメチルアミン(520kg)水溶液及びMeOH(650kg)と混合した後、約50℃~60℃のタンク内温度に24時間加熱した。その後、反応混合物を濃縮し、抽出のためにトルエン(195kg)及びH2O(390kg)を加えた。別のトルエン(195kg)で水相を抽出した後、2つの有機相を合わせた。さらに、更なる反応に用いられるために、有機相の濃縮後、残留物(すなわち、式Vの粗化合物)を回収した。
【0065】
L-酒石酸(260kg)、H
2O(260kg)、及びアセトン(1,500kg)を反応タンクに配合した後、式Vの粗化合物を加え、その中に、L-酒石酸と式Vの粗化合物の比率が1:1であった。その後、アセトン及びH
2Oを加えることで、式VIの固体有機酸塩(471kg)を得た。式VIの有機酸塩の粉末X線回折パターンは、
図1に示した。
【0066】
あるいは、L-酒石酸(1g)、H
2O(1g)、及びアセトン(5.5g)を反応タンクに配合した後、式Vの粗化合物を加え、その中に、L-酒石酸と式Vの粗化合物の比率が1:1であった。その後、アセトン及びH
2Oを加えることで、式VIIの固体有機酸塩(3g)を得た。式VIIの有機酸塩の粉末X線回折パターンは、
図2に示した。
【0067】
その後、式VIの有機酸塩(471kg)、H2O(825kg)、45%NaOH(223kg)及びトルエンを混合し、1時間攪拌したところ、相分離になった。H2O(130kg)とトルエン(130kg)で有機相及び水相を再抽出した。さらに、有機相(520kg)を合わせて濃縮した後、イソプロピルアルコール(IPA)(130kg)で洗浄することで、97%純度で260kgの残留物1(すなわち、精製した式Vの化合物)を得た。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
実施例3:(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オールの調製
実施例2に得られた残留物1(260kg)の酸化反応は、IPA(189kg)中のH2O2(293kg)でおよそ60℃で行われた。その後、反応混合物を約25℃に冷却し、Na2SO3(50kg)及びH2O(150kg)で反応をクエンチした。濾過及び蒸留により、320kgの残留物を獲得した。その後、(+)-p-メンタ-2,8-ジエン-1-オール(110kg)は、コープ脱離後に得られ、蒸留により精製された。
【0072】
本発明のいくつの実施形態は上記のように詳しく説明しているが、当業者であれば、本発明の示唆及び利点を逸脱しなく、上記に示されている実施形態に様々な修飾や変更をすることが可能である。かかる修飾や変更は、添付の特許請求の範囲に掲げるように、本発明の範囲に包含されている。