(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】踏段チェーンの伸び検出装置
(51)【国際特許分類】
B66B 29/00 20060101AFI20231016BHJP
B66B 23/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B66B29/00 B
B66B23/02 B
(21)【出願番号】P 2022202015
(22)【出願日】2022-12-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久下 敬輔
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/016884(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/052507(WO,A1)
【文献】特開2016-210601(JP,A)
【文献】中国実用新案第210150558(CN,U)
【文献】特開2023-036392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
B65G 43/00-43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の踏段を循環経路に沿って移動させる踏段チェーンの伸びを検出する、踏段チェーンの伸び検出装置において、
前記循環経路に設けられた基準位置を通過する前記踏段を検出する第1センサと、
前記循環経路における前記基準位置と異なる位置に設けられた検出位置を通過する前記踏段の特定部位までの距離を検出する第2センサと、
前記踏段チェーンの伸び量を算出する演算部と、を備え、
前記第1センサが前記基準位置を通過する前記踏段を検出すると、前記第2センサが前記特定部位までの距離を検出し、前記演算部が前記第2センサで検出した前記特定部位までの距離に基づいて前記踏段チェーンの伸び量を算出する、踏段チェーンの伸び検出装置。
【請求項2】
前記特定部位は、前記検出位置における前記踏段の移動方向に対して傾斜している、請求項1に記載の踏段チェーンの伸び検出装置。
【請求項3】
前記第2センサは水平方向へ移動する前記踏段の前記特定部位までの距離を検出する、請求項1に記載の踏段チェーンの伸び検出装置。
【請求項4】
前記第2センサは、前記特定部位までの上下方向の距離を測定する、請求項1に記載の踏段チェーンの伸び検出装置。
【請求項5】
前記第2センサは、前記踏段の幅方向両側に設けられた前記踏段チェーンに対応してそれぞれ設けられ、
前記演算部は、前記踏段の幅方向両側にそれぞれ設けられた前記踏段チェーンの伸び量を算出する、請求項1に記載の踏段チェーンの伸び検出装置。
【請求項6】
前記演算部が算出した前記踏段チェーンの伸び量を、前記伸び量を算出した前記踏段チェーンの位置に対応付けて記憶する、請求項1に記載の踏段チェーンの伸び検出装置。
【請求項7】
前記特定部位は前記踏段の前輪と後輪との間に設けられている、請求項1に記載の踏段チェーンの伸び検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、踏段チェーンの伸び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアでは、踏段を循環移動させる踏段チェーンの伸びを検出する検出装置を設けることがある(下記特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-147414号公報
【文献】特開2017-88375号公報
【文献】特開2005-53669号公報
【文献】特開2021-123481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
踏段チェーンは、全体的に伸びる場合だけでなく、部分的に過剰に伸びる場合もある。踏段チェーンの部分的な伸びを検出するためには、踏段チェーンの複数箇所において伸びを検出する必要があり、これを簡便な構成により実現することが求められている。
【0005】
そこで、本発明の実施形態では、簡便な構成によって踏段チェーンの部分的な伸びを検出することができる踏段チェーンの伸び検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る踏段チェーンの伸び検出装置は、複数の前記踏段を循環経路に沿って移動させる踏段チェーンの伸びを検出する、踏段チェーンの伸び検出装置において、前記循環経路に設けられた前記基準位置を通過する前記踏段を検出する第1センサと、前記循環経路における前記基準位置と異なる位置に設けられた前記検出位置を通過する前記踏段の特定部までの距離を検出する第2センサと、前記踏段チェーンの伸び量を算出する演算部と、を備え、前記第1センサが前記基準位置を通過する前記踏段を検出すると、前記第2センサが前記特定部までの距離を検出し、前記演算部が前記第2センサで検出した前記特定部までの距離に基づいて前記踏段チェーンの伸び量を算出する、ものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の踏段チェーンの伸び検査装置を適用する乗客コンベアを概略的に示す側面図
【
図4】
図1の上階側の乗降口付近を拡大して示す側面図
【
図5】本発明の一実施形態の踏段チェーンの伸び検査装置の電気構成を示すブロック
【
図6】基準位置及び検出位置を通過する踏段の側面図
【
図7】本発明の変更例における基準位置及び検出位置を通過する踏段の側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態の踏段チェーンの伸び検出装置(以下、検出装置ということもある)について説明する。検出装置は乗客コンベア1に適用され、乗客コンベア1が有する踏段チェーン10の伸び量を検出する。
【0009】
本実施形態では、検出装置を適用する乗客コンベア1として、多数のステップ(以下、「踏段」ということがある)30が上階側の乗降口5と下階側の乗降口6との間で循環移動するエスカレータについて説明するが、本発明は、ステップが水平方向に移動する動く歩道に対しても適用することができる。
【0010】
なお、以下の説明において、トラス2の長手方向を前後方向、トラス2の幅方向を左右方向ということがある。また、前後方向や左右方向は下階から上階を見たときの方向を示し、上階側が前側、下階側が後側であるものとする。
【0011】
(1)乗客コンベア1
図1~
図3に示すように、乗客コンベア1の枠組みである前後方向(踏段30の移動方向)に延びるトラス2が、建屋の上階と下階に跨がって支持アングル3,4を用いて支持されている。
【0012】
乗客コンベア1は、上下階の乗降口5,6に位置し、踏段30が水平方向へ移動する水平部と、所定の傾斜角度で踏段30が直線移動する中間傾斜部と、水平部と中間傾斜部とをなだらかに繋ぐように曲線状に踏段30が移動する上下一対の曲線部とから構成されている。踏段30は、その両側に配置された無端状の踏段チェーン10によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス2内に配置されている。
【0013】
図2~
図4に示すように、踏段30は、左右一対の踏段フレーム303,303と、この踏段フレーム303の上面に形成されたクリート面304と、踏段フレーム303の後面に形成されたライザ面305とを備える。踏段フレーム303,303は、クリート面304に対して直線状に傾斜する傾斜部303aを有する側面形状が略三角形状をなしている。踏段フレーム303とクリート面304とライザ面305とは、アルミダイカストで一体に形成されている。
【0014】
クリート面304の表面、つまり、踏段30において乗客が搭乗する面には、踏段30の移動方向(前後方向)に沿って延びる複数本のクリート突条が所定間隔をあけて互いに平行に設けられ、隣接するクリート突条の間にクリート溝が形成されている。
【0015】
左右一対の踏段フレーム303の前端部には、踏段30の幅方向外方へ突出する支軸309が設けられ、この支軸309にベアリングを介して左右一対の前踏段ローラ301が設けられている。
【0016】
左右一対の踏段フレーム303の後下端部には、踏段フレーム303と一体に形成された取付部が踏段30の移動方向後方に向かって突出している。左右一対の取付部307の先端部の外側には、ベアリングを介して左右一対の後踏段ローラ302が設けられている。
【0017】
図1、
図3、
図4に示すように、踏段30の幅方向の両側には、支持部材20,21を介してトラス2に固定された左右一対の前案内レール22及び後案内レール23が踏段30の進行方向に沿って配設されている。前案内レール22は、踏段30に設けられた前踏段ローラ301が転動する転動面を備え、前踏段ローラ301を踏段30の進行方向に沿って案内する。後案内レール23は、踏段30に設けられた後踏段ローラ302が転動する転動面を備え、後踏段ローラ302を踏段30の進行方向に沿って案内する。
【0018】
上階側の機械室7内部には、踏段30を走行させる駆動装置11、左右一対の駆動スプロケット12、及び左右一対の手摺ベルトスプロケット(図示せず)が設けられている。
【0019】
図1、
図4に示すように、駆動装置11は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ14と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン15と、モータ14の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。
【0020】
駆動チェーン15は、左右一対の駆動スプロケット12に同軸状に固定された不図示の駆動大スプロケットと減速機の出力スプロケットとの間に架け渡されており、駆動大スプロケットを介して左右一対の駆動スプロケット12に減速機からの動力を伝達して駆動スプロケット12を回転させる。左右一対の駆動スプロケット12と左右一対の手摺ベルトスプロケットとは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。
【0021】
また、
図1、
図4に示すように、上階側の機械室7内部には、モータ14やディスクブレーキや後述する検出装置などを制御する制御装置13が設けられている。
【0022】
図1に示すように、下階側の機械室8内部には、左右一対の従動スプロケット16が設けられている。
【0023】
上階側の駆動スプロケット12と下階側の従動スプロケット16との間には、左右一対の無端の踏段チェーン10が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン10には、複数の踏段30の前輪を構成する前踏段ローラ301が等間隔に取り付けられている。
【0024】
図1に示すように、駆動装置11から回転力を受けて駆動スプロケット12が回転すると、踏段チェーン10が駆動スプロケット12と従動スプロケット16の間を循環移動する。これに伴って、踏段30に設けられた前踏段ローラ301及び後踏段ローラ302が、前案内レール22及び後案内レール23を走行すると共に、駆動スプロケット12の外周部にある凹部と従動スプロケット16の外周部にある凹部に係合して、踏段30が上下に反転する。踏段チェーン10に接続された複数の踏段30は、乗口から降口に向かって移動して乗客を搬送する往路と、往路の下方において降口から乗口に向かって移動する帰路とを交互に通って、上階側の乗降口5と下階側の乗降口6との間を所定の循環経路に沿って移動する。
【0025】
図4に示すように、踏段30の循環経路には、基準位置P1と、基準位置P1と異なる位置にある検出位置P2が設けられており、第1センサ71L,71R(
図5参照)によって基準位置P1を通過する踏段30を検出し、
図3、
図4に示すように、第2センサ72L,72Rによって検出位置P2を通過する踏段30を検出する。
【0026】
本実施形態では、基準位置P1及び検出位置P2が、上階側において踏段30が水平方向へ移動する水平部に設けられている。また、第1センサ71L,71R及び第2センサ72L,72Rによって隣接する踏段30を検出できるように、基準位置P1及び検出位置P2は互いに近接した位置、すなわち、隣接する踏段30の前後方向の距離より短い位置に設けられている。
【0027】
図1、
図3に示すように、トラス2の左右両側には、左右一対のスカートカード24と左右一対の欄干25が立設されている。左右一対のスカートカード24は、一方の乗降口から他方の乗降口まで踏段30の幅方向外側に設けられている。
【0028】
(2)乗客コンベア1の電気的構成
乗客コンベア1の電気的構成について、
図5を参照して説明する。
【0029】
上階側の機械室7内部に設けられている制御装置13には、インバータ回路40、電源回生ユニット41、リアクトル42、ノイズフィルタ43が接続されている。不図示の三相交流電源から供給された三相の交流電源は、高周波対策として設けられたノイズフィルタ43及びリアクトル42を経て、電源回生ユニット41に至る。電源回生ユニット41は、乗客コンベア1が下降運転した場合に発生するエネルギーを三相交流電源に回生する。電源回生ユニット41に接続されたインバータ回路40は、制御装置13からの駆動信号に基づいて、モータ14をインバータ制御するものであり、運転速度、上昇又は下降の方向を変更する。
【0030】
制御装置13は、制御部51、記憶部52及び通信部53を有する。記憶部52には、乗客コンベア1の動作を制御するためのプログラムとともに、本実施形態の検出装置による踏段チェーン10の伸び量を検出するためのプログラムが記憶されている。また、記憶部52には、後述する正規距離YL0,YR0や傾斜角度θなど、踏段チェーン10の伸び量の算出に必要な情報が記憶されている。
【0031】
制御部51は、記憶部52に記憶されたプログラムを読み込んで、不図示の操作盤からの操作等に基づいて乗客コンベア1の運転及び停止の切り替えや、上昇運転及び下降運転の切り替えなどを行い乗客コンベア1の動作を制御するとともに、踏段チェーン10の伸び量を算出する演算部として機能する。
【0032】
制御部51は、算出された踏段チェーン10の伸び量が所定量を超える場合、通信部53を用いて外部の監視盤へ警告信号を出力する。
【0033】
(3)検出装置
次に、検出装置の構成について、
図3~
図5を参照して説明する。
【0034】
本実施形態の検出装置は、左右一対の第1センサ71L,71Rと、左右一対の第2センサ72L,72Rを有し、左右の踏段チェーン10の伸び量をそれぞれ別々に検出する。
【0035】
具体的には、第1センサ71L、71Rは、近接センサや反射型の光電センサ等からなり、踏段30の所定箇所(例えば、後踏段ローラ302)を検出することで、基準位置P1を通過する踏段30を検出する。第1センサ71L,71Rは、制御部51に接続され、基準位置P1を通過する踏段30を検出すると検出信号を制御部51に送信する。
【0036】
第1センサ71L,71Rは左右一対の後踏段ローラ302に対応して左右一対設けられ、左側の後踏段ローラ302と右側の後踏段ローラ302とをそれぞれ別々に検出する。
【0037】
第2センサ72L,72Rは、TOF(Time of Flight)センサ等の距離センサからなる。第2センサ72L,72Rは、第2センサ72L,72Rから検出位置P2を通過する踏段30の特定部位までの距離を検出する。特定部位とは踏段30の所定部分である。検出位置P2における踏段30の移動方向に対して傾斜する部分に特定部位を設定することが好ましい。本実施形態では踏段フレーム303の傾斜部303aの下面を特定部位としている。なお、特定部位は踏段30の任意の部分に設定することができるが、凹凸や湾曲などのない平面部分に特定部位を設定することが好ましい。
【0038】
図3に示すように、第2センサ72L,72Rは左右の踏段フレーム303の傾斜部303aの下面に対向して、左右一対設けられている。つまり、左側の第2センサ72Lは、左側の踏段フレーム303の傾斜部303aの下面に対向して設けられ、第2センサ72Lから左側の傾斜部303aの下面までの上下方向の距離YL2を検出する。右側の第2センサ72Rは、右側の踏段フレーム303の傾斜部303aの下面に対向して設けられ、第2センサ72Rから左側の傾斜部303aの下面までの上下方向の距離YR2を検出する。
【0039】
図5に示すように、第2センサ72L,72Rは、制御部51に接続されている。第2センサ72L,72Rは、制御部51から送信された指令信号を受信すると、第2センサ72L,72Rから検出位置P2を通過する踏段30の特定部位(本実施形態では、傾斜部303aの下面であり、前輪の前踏段ローラ301と後輪の後踏段ローラ302の間)までの距離YL2,YR2を検出し、検出した距離YL2,YR2を制御部51に送信する。
【0040】
制御部51は、左側の第1センサ71Lから検出信号が入力されると左側の第2センサ72Lへ指令信号を送信する。制御部51からの指令信号に基づいて左側の第2センサ72Lが距離YL2を検出し、検出した距離YL2が制御部51に入力されると、制御部51は距離YL2に基づいて左側の踏段チェーン10の伸び量を算出する。また、制御部51は、右側の第1センサ71Rから検出信号が入力されると右側の第2センサ72Rへ指令信号を送信する。制御部51からの指令信号に基づいて右側の第2センサ72Rが距離YR2を検出し、検出した距離YR2が制御部51に入力されると、制御部51は距離YR2に基づいて右側の踏段チェーン10の伸び量を算出する。なお、第2センサ72L,72Rが検出した距離YL2,YR2から左右の踏段チェーン10の伸び量を算出する方法については後述する。
【0041】
そして、制御部51は、踏段30が循環経路を少なくとも1周する間、踏段30が基準位置P1を通過する毎に、検出位置P2を通過する踏段30の特定部位(傾斜部303aの下面)までの距離YL2,YR2を検出し、基準位置P1及び検出位置P2を通過する踏段30同士を繋ぐ部分10A毎に踏段チェーンの伸び量BL,BRを算出する。
【0042】
制御部51は、部分10A毎に踏段チェーンの伸び量BL,BRを算出すると、伸び量を検出した踏段チェーン10の位置と、その位置における伸び量BL,BRを対応付けて記憶する。
【0043】
(4)踏段チェーン10の伸び量を算出する方法
次に、踏段チェーン10の伸び量を算出する方法について、主に
図6を参照して説明する。
【0044】
左右の踏段チェーン10において基準位置P1を通過する踏段30と検出位置P2を通過する踏段30とを繋ぐ部分10Aに伸びがない場合、第1センサ71Lが基準位置P1において踏段30を検出した時に検出位置P2を通過する踏段30は
図6において二点鎖線で示す位置にある。踏段チェーン10に伸びがない時に第2センサ72Lによって検出される第2センサ72Lから左側の傾斜部303aの下面までの距離(正規距離ということもある)はYL0となり、第2センサ72Rによって検出される第2センサ72Rから右側の傾斜部303aの下面までの距離(正規距離ということもある)はYR0となる。
【0045】
そして、例えば、左側の踏段チェーン10の上記部分10Aに伸び量BLの伸びが生じると、基準位置P1を通過する踏段30の左端部と検出位置P2を通過する踏段30の左端部の間隔が伸び量BLだけ広くなる。その結果、第1センサ71Lが基準位置P1において踏段30を検出した時に検出位置P2を通過する踏段30の左端部は、
図6において破線で示す位置から実線で示す位置へ、伸び量BLだけ下階側(後側)へ移動する。検出位置P2を通過する踏段30の左端部が下階側へ伸び量BLだけ移動すると、第2センサ72Lによって検出される第2センサ72Lから傾斜部303aまでの距離YL2が正規距離YL0より長くなる。踏段30の移動方向と踏段チェーン10の伸びる方向とは一致するため、検出位置P2における踏段30の移動方向に対する傾斜部303aの下面の角度を傾斜角度θとすると、伸び量BL、正規距離YL0、及び距離YL2との間には、下記式(1)が成り立つ。
【0046】
BL=(YL2-YL0)/tanθ 式(1)
【0047】
また、右側の踏段チェーン10の上記部分10Aに伸び量BRの伸びが生じた場合も、左側の踏段チェーン10に伸びが生じた場合と同様、第2センサ72Rによって検出される第2センサ72Rから右側の傾斜部303aまでの距離YR2が正規距離YR0より長くなり、傾斜角度θ、伸び量BR、正規距離YR0、及び距離YR2との間には、下記式(2)が成り立つ。
【0048】
BR=(YR2-YR0)/tanθ 式(2)
【0049】
制御部51は、左側の第2センサ72Lにおいて検出された距離YL2が入力されると、入力された距離YL2と、記憶部52に記憶された正規距離YL0及び傾斜角度θを読み出し、上記式(1)に基づいて伸び量BLを算出する。
【0050】
また、制御部51は、右側の第2センサ72Rにおいて検出された距離YR2が入力されると、入力された距離YR2と、記憶部52に記憶された正規距離YR0及び傾斜角度θを読み出し、上記式(2)に基づいて伸び量BRを算出する。
【0051】
(5)効果
本実施形態では、基準位置P1に第1センサ71L,71R、検出位置P2に第2センサ72L,72Rを設けることで、踏段30の移動方向や移動速度の影響を受けることなく、簡便な構成によって精度良く踏段チェーンの部分的な伸びを検出することができる。
【0052】
本実施形態では、第2センサ72L,72Rが検出位置P2において水平方向へ移動する踏段30の特定部位までの距離を測定するため、第2センサ72L,72Rが検出した距離YL2,YR2から伸び量BL,BRを算出しやすくなる。
【0053】
本実施形態では、踏段30に対する第2センサ72L,72Rの取付角度が踏段チェーンの伸び量BL,BRの算出に影響を与えるが、第2センサ72L,72Rが踏段30の特定部位までの上下方向の距離を測定するため、第2センサ72L、72Rをトラス2内に精度良く設置しやすく、伸び量BL,BRを精度良く算出することができる。
【0054】
本実施形態では、左右の踏段チェーン10に対応して第2センサ72L,72Rが左右一対設けられているため、左右の踏段チェーン10をそれぞれ別々に伸び量BL,BRの算出することができるとともに、左右の踏段チェーン10の伸び量BL,BRの差から踏段30の左右方向への傾きを検出することもできる。
【0055】
本実施形態では、制御部51が算出した踏段チェーン10の伸び量BL,BRを、伸び量BL,BRを算出した踏段チェーン10の位置に対応づけて記憶部52に記憶するため、乗客コンベア1の点検時などに踏段チェーン10の部分的に伸びた位置を容易に特定することができる。
【0056】
(6)変更例
次に変更例について説明する。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。以下では複数の変更例について説明するが、上記の実施形態に対して、以下に説明する複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、以下に説明する変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。また、以下の変更例の他にも様々な変更が可能である。
【0057】
(6-1)変更例1
図7に示すように、第2センサ72Lと異なる位置に踏段30の左側の特定部位(踏段フレーム303の傾斜部303aの下面)までの距離を検出する第3センサ73Lを設け、第1センサ71Lが基準位置P1を通過する踏段30を検出すると、検出位置P2を通過する踏段30について、踏段30の移動方向に異なる複数の位置において踏段30の特定部位までの距離を検出してもよい。
【0058】
踏段チェーン10に伸びがない時に第3センサ73Lによって検出される第3センサ73Lから傾斜部303aの下面までの距離を正規距離YL0’とすると、踏段30が傾斜せずクリート面304が水平を保っている場合、第2センサ72Lが検出する踏段30の特定部位までの距離YL2と正規距離YL0との距離差ΔYL2(ΔYL2-YL0)と、第3センサ73Lが検出する踏段30の特定部位までの距離YL3と正規距離YL0’との距離差ΔYL3(ΔYL3-YL0’)が等しくなる。
【0059】
前踏段ローラ301や後踏段ローラ302の破損などによって踏段30が傾斜すると、上記の距離差ΔYL2と距離差ΔYL3とが相違する。つまり、クリート面304の前側(
図7の右側)が低くなるように踏段30が傾斜すると、距離差ΔYL3が距離差ΔYL2より小さくなる。クリート面304の後側(
図7の左側)が低くなるように踏段30が傾斜すると、距離差ΔYL2が距離差ΔYL3より小さくなる。
【0060】
本変更例では、第2センサ72Lに加え第3センサ73Lを設けることで、踏段チェーン10の伸び量だけでなく、上記の距離差ΔYL2と距離差ΔYL3に基づいて踏段30の傾きも検出することができる。
【0061】
なお、本変更例において、踏段30の右側に第2センサ72Rと異なる位置において踏段30の左側の特定部位までの距離を検出する第3センサ73Rを設け、踏段30の傾きを検出してもよい。
【0062】
(6-2)変更例2
上記の実施形態では、踏段30が水平方向へ移動する水平部に基準位置P1及び検出位置P2を設けたが、中間傾斜部など踏段30の循環経路の任意の位置に基準位置P1及び検出位置P2を設けてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、乗口から降口に向かって踏段30が移動する往路側に基準位置P1及び検出位置P2を設けたが、降口から乗口に向かって踏段30が移動する帰路側に基準位置P1及び検出位置P2を設けてもよい。
【0064】
(6-3)変更例3
上記の実施形態では、第1センサ71L,71Rを左右一対設けたが、左右いずれか一方に第1センサを設けたり、踏段30の中央部に第1センサを設けたりすることで基準位置P1を通過する踏段30を検出してもよい。
【0065】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…乗客コンベア、2…トラス、10…踏段チェーン、11…駆動装置、12…駆動スプロケット、13…制御装置、14…モータ、15…駆動チェーン、16…従動スプロケット、21…支持部材、22…前案内レール、23…後案内レール、30…踏段、50…制御装置、51…制御部、52…記憶部、53…通信部、71L…第1センサ、71R…第1センサ、72L…第2センサ、72R…第2センサ、301…前踏段ローラ、302…後踏段ローラ、303…踏段フレーム、303a…傾斜部、304…クリート面、305…ライザ面、307…取付部、309…支軸、P1…基準位置、P2…検出位置
【要約】 (修正有)
【課題】簡便な構成によって踏段チェーンの部分的な伸びを検出することができる踏段チェーンの伸び検出装置を提供する。
【解決手段】本発明の踏段チェーンの伸び検出装置は、循環経路に設けられた基準位置P1を通過する踏段30を検出する第1センサ71Lと、循環経路における基準位置P1と異なる位置に設けられた検出位置P2を通過する踏段30の特定部位303aまでの距離を検出する第2センサ72Lと、踏段チェーン10の伸び量を算出する演算部と、を備え、第1センサ71Lが基準位置P1を通過する踏段30を検出すると、第2センサ72Lが特定部位までの距離を検出し、演算部が第2センサ72Lで検出した特定部位303aまでの距離に基づいて踏段チェーン10の伸び量を算出する。
【選択図】
図4