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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20231016BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20231016BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20231016BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20231016BHJP
   B66B 13/26 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B1/06 Z
B66B3/00 M
B66B3/00 P
B66B11/02 P
B66B13/14 P
B66B13/26 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022203237
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗由美
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-028258(JP,A)
【文献】特開2007-230733(JP,A)
【文献】特開2008-273709(JP,A)
【文献】特開2011-002339(JP,A)
【文献】国際公開第2004/012142(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00ー 3/02
B66B 1/00- 1/52
B66B 11/00-11/08
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置され、三方枠の左右の枠を撮影範囲に含むカメラと、
前記カメラから、前記カメラにより撮影された撮影画像中の被写体までの距離を示す距離情報を取得する取得手段と、
前記撮影画像において前記三方枠の左枠が映るエリアに静止物を検知するための第1静止物検知エリアを設定し、前記撮影画像において前記三方枠の右枠が映るエリアに静止物を検知するための第2静止物検知エリアを設定する設定手段と、
前記撮影画像に設定された前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる色情報に一定以上の差があり、かつ、前記撮影画像に設定された前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる距離情報に一定以上の差がある場合、前記第1静止物検知エリアまたは前記第2静止物検知エリアから静止物を検知する検知手段と、
を備えることを特徴とする、エレベータシステム。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記撮影画像を多数のブロックで区切り、
前記第1静止物検知エリアに含まれる各ブロックの輝度値と前記第2静止物検知エリアに含まれる各ブロックの輝度値とに一定以上の差があり、かつ、前記第1静止物検知エリアに含まれる各ブロックに映る被写体までの距離と前記第2静止物検知エリアに含まれる各ブロックに映る被写体までの距離とに一定以上の差がある場合、前記第1静止物検知エリアまたは前記第2静止物検知エリアから静止物を検知することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記検知手段は、
前記第1静止物検知エリアに含まれる各ブロックの輝度値に基づく輝度分布と、前記第2静止物検知エリアに含まれる各ブロックの輝度値に基づく輝度分布とを比較し、これら2つの輝度分布の傾向に差がある場合、前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる色情報に一定以上の差があると判断し、
前記第1静止物検知エリアに含まれる各ブロックに映る被写体までの距離と前記第2静止物検知エリアに含まれる各ブロックに映る被写体までの距離とを順に比較し、予め設定された閾値以上の距離差を有するブロックが所定数以上存在した場合、前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる距離情報に一定以上の差があると判断することを特徴とする、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記検知手段は、
前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアにおいて前記乗りかごに乗車する利用者の腕が映るエリアを、前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアの他のエリアよりも小さいサイズのブロックで区切ることを特徴とする、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記検知手段は、
前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアにおいて前記乗りかごに乗車する利用者の腕が映るエリアに含まれる各ブロックに対して設定する前記距離差の閾値を、前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアの他のエリアに含まれる各ブロックに対して設定する前記距離差の閾値よりも小さくすることを特徴とする、
請求項3に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記取得手段は、
前記撮影画像に生じるぼけに基づき前記カメラから被写体までの距離を計算し、前記距離情報を取得することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記取得手段は、
前記カメラに取り付けられた距離センサにより計測された前記距離情報を取得することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記乗りかごのドアの戸開閉動作を制御するエレベータ制御装置をさらに備え、
前記エレベータ制御装置は、
前記検知手段から静止物を検知した旨の検知結果を受けると、前記ドアの戸閉動作を禁止して、前記ドアの戸開状態を維持する、あるいは、前記ドアを反転戸開させることを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータのドアに人や物が挟まれるのを防ぐために、種々様々な技術が考案されている。例えば、カメラを用いてエレベータ近辺にいる利用者を検知し、当該エレベータのドアの戸開閉制御を実施する技術が考案されている。
【0003】
このような技術においては、カメラにより撮影される画像の時系列的な変化を利用者の動きとして検知することで、エレベータ近辺にいる利用者を検知しているため、静止物(例えば、エレベータのドア近辺に立っている利用者等)を検知することができないといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6092433号公報
【文献】特許第5133053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、エレベータ近辺の静止物を検知することが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、取得手段と、設定手段と、検知手段と、を備える。前記カメラは、乗りかご内に設置され、三方枠の左右の枠を撮影範囲に含む。前記取得手段は、前記カメラから、前記カメラにより撮影された撮影画像中の被写体までの距離を示す距離情報を取得する。前記設定手段は、前記撮影画像において前記三方枠の左枠が映るエリアに静止物を検知するための第1静止物検知エリアを設定し、前記撮影画像において前記三方枠の右枠が映るエリアに静止物を検知するための第2静止物検知エリアを設定する。前記検知手段は、前記撮影画像に設定された前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる色情報に一定以上の差があり、かつ、前記撮影画像に設定された前記第1静止物検知エリアおよび前記第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる距離情報に一定以上の差がある場合、前記第1静止物検知エリアまたは前記第2静止物検知エリアから静止物を検知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
図2図2は、同実施形態に係る検知エリアを説明するための図である。
図3図3は、同実施形態に係る撮影画像をブロック単位で区切った状態を示す図である。
図4図4は、同実施形態に係る検知処理部の機能構成例を示すブロック図である。
図5図5は、同実施形態に係る色情報比較部と距離情報比較部により実行される処理を説明するための図である。
図6図6は、同実施形態に係る色情報比較部により実行される処理を説明するための図である。
図7図7は、同実施形態に係る距離情報比較部により実行される処理を説明するための図である。
図8図8は、同実施形態に係るエレベータシステムにより実行される静止物を検知する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を直下方向、もしくは、乗場15側あるいは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置される。カメラ12は、例えば車載カメラなどの小型の監視用カメラであり、広角レンズもしくは魚眼レンズを有し、180度以上の視野角で乗りかご11内および乗場15を含む撮影対象を広範囲に撮影する。カメラ12は、後述する三方枠を撮影範囲に含む。カメラ12は、1秒間に数コマ(例えば、30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。
【0010】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13が戸開しているときには乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。また、以下の説明において、単に「ドア」と述べた場合には、かごドア13と乗場ドア14の両方を含むものとする。なお、本実施形態においては、かごドア13および乗場ドア14が、2枚戸両開きのドアである場合を想定するが、これに限定されず、かごドア13および乗場ドア14は、他のタイプのドア(例えば、2枚戸片開きのドアなど)であっても構わない。
【0011】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0012】
画像処理装置20は、記憶部21と、制御部22とを備えている。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存するとともに、制御部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。
【0013】
制御部22は、カメラ12の撮影画像を用いて、乗りかご11内や乗場15にいる利用者や物体を検知する。この制御部22を機能的に分けると、距離情報取得部23と、検知エリア設定部24と、検知処理部25とで構成される。
【0014】
距離情報取得部23は、カメラ12の撮影画像を利用して、当該カメラ12から当該撮影画像に映る被写体(人または物)までの距離を計算する。被写体までの距離を画像から計算する技術としては、例えば符号化開口技術を利用することができる。詳しい説明については既知の技術のため省略するが、符号化開口技術は、被写体の位置に応じて画像に生じるぼけを解析することによって当該被写体までの距離を計算する技術である。
【0015】
距離情報取得部23は、上記した符号化開口技術を利用して、カメラ12の撮影画像に映る被写体までの距離を計算し、当該被写体までの距離を示すデプスマップを作成し、これを距離情報として取得する。
【0016】
なお、ここでは、距離情報取得部23が、上記した符号化開口技術に基づき、カメラ12から撮影画像に映る被写体までの距離を計算して距離情報を取得する場合について説明したが、これに限定されず、距離情報取得部23は、例えば、カメラ12から撮影画像に映る被写体までの距離を示す距離情報を、当該カメラ12に取り付けられた距離センサから取得してもよい。カメラ12に取り付けられた距離センサは、例えば、投光部と受光部からなる反射型の距離センサであり、当該距離センサから対象物までの距離を計測可能なセンサである。上記したように、距離センサはカメラ12に取り付けられているため、当該距離センサから対象物までの距離は、カメラ12から撮影画像に映る被写体までの距離と近似した距離を示すことになる。このため、距離情報取得部23は、距離センサにより計測された対象物までの距離を示す距離情報を、カメラ12から撮影画像に映る被写体までの距離を示す距離情報として取得してもよい。
【0017】
検知エリア設定部24は、カメラ12の撮影画像上で、利用者(エレベータを利用する人)や物体を検知するための検知エリアを設定する。具体的には、検知エリア設定部24は、図2に示すように、乗場15の出入口付近の床面(が映るエリア)に第1検知エリアE1を設定し、三方枠16(が映るエリア)に第2検知エリアE2を設定する。第2検知エリアE2に関し、検知エリア設定部24は、三方枠16の左枠16A(が映るエリア)に第2検知エリアE2aを設定し、三方枠16の右枠16B(が映るエリア)に第2検知エリアE2bを設定する。三方枠16は、乗場ドア14の周囲に配置される枠であり、乗りかご11側から見て左手に位置する左枠16Aと、乗りかご11側から見て右手に位置する右枠16Bと、図2には図示されない上枠との3つの枠により構成される。
【0018】
なお、第1検知エリアE1は、乗場15から乗りかご11に向けて移動する利用者(つまり、乗りかご11に乗車する利用者)、または、乗りかご11から乗場15に向けて移動する利用者(つまり、乗りかご11から降車する利用者)を検知するための検知エリアであり、利用者検知エリアE1と称されてもよい。また、第2検知エリアE2a,E2bは、乗りかご11付近の静止物を検知するための検知エリアであり、第1静止物検知エリアE2aおよび第2静止物検知エリアE2bと称されてもよい。なお、以下の説明において、単に「静止物検知エリアE2」と述べた場合、第1静止物検知エリアE2aと第2静止物検知エリアE2bの両方を含むものとする。
【0019】
なお、本実施形態においては、検知エリア設定部24が、2種類の検知エリアE1,E2を設定する場合を想定したが、これに限定されず、検知エリア設定部24は、例えば乗りかご11内の出入口付近の床面等にさらに検知エリアを設定してもよい。
【0020】
検知処理部25は、検知エリア設定部24により設定された検知エリア毎に、人または物を検知する検知処理を実行する。
具体的には、まず、検知処理部25は、図3に示すように、カメラ12の撮影画像を多数のブロックに区切る処理を実行する。ここでは、1つのブロックのサイズ(以下、ブロックサイズと表記)が、例えば、撮影画像を構成する16(=4×4)個の画素を含むサイズに設定された場合を想定するが、これに限定されず、ブロックサイズは、例えば、撮影画像を構成する4(=2×2)個の画素を含むサイズ等、任意のサイズに設定することが可能である。
【0021】
検知処理部25は、利用者検知エリアE1においては、当該利用者検知エリアE1に含まれる各ブロックの色情報の変化(例えば、輝度値の変化)に着目して、人または物の動き(つまり、移動体)を検知する。一方、静止物検知エリアE2においては、検知処理部25は、当該静止物検知エリアE2に含まれる各ブロックの色情報(例えば、輝度値)と、カメラ12から各ブロックに映る被写体(人または物)までの距離を示す距離情報とに着目して、静止物(例えば、静止している人や物)を検知する。なお、この静止物を検知する処理(以下、静止物検知処理と表記)については後述するため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0022】
エレベータ制御装置30は、乗りかご11に設置される各種機器類(行先階ボタンや照明等)の動作を制御する。
エレベータ制御装置30は、戸開閉制御部31と、通知部32と、を備えている。
戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着した時のかごドア13の戸開閉動作を制御する。より詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着した時にかごドア13を戸開し、例えば所定時間経過後にかごドア13を戸閉する。戸開閉制御部31は、かごドア13の全戸開中または戸閉動作中に、画像処理装置20(検知処理部25)により人または物が検知された場合、かごドア13の戸閉動作を禁止して、かごドア13が全戸開中の場合は戸開状態を維持し(かごドア13の戸開時間を延長し)、かごドア13が戸閉動作中の場合は反転戸開を行う。通知部32は、画像処理装置20(検知処理部25)により人または物が検知された場合、利用者に注意を喚起するためのメッセージを通知する。
【0023】
図4は、検知処理部25の機能構成例を示すブロック図である。なお、ここでは、主に、静止物検知処理に関わる機能構成について説明する。図4に示すように、検知処理部25は、色情報比較部25aと、距離情報比較部25bと、静止物検知部25cと、を備えている。
【0024】
色情報比較部25aは、三方枠16の左枠16A(が映るエリア)に設定された第1静止物検知エリアE2aに含まれる各ブロックの色情報と、三方枠16の右枠16B(が映るエリア)に設定された第2静止物検知エリアE2bに含まれる各ブロックの色情報とに、一定以上の差があるか否かを判定する。
【0025】
より詳しくは、まず、色情報比較部25aは、左枠16Aに対応する第1静止物検知エリアE2aに含まれる各ブロックの輝度値に基づき、第1静止物検知エリアE2aに含まれる各ブロックの輝度分布を示す第1輝度分布情報を生成する。同様に、色情報比較部25aは、右枠16Bに対応する第2静止物検知エリアE2bに含まれる各ブロックの輝度値に基づき、第2静止物検知エリアE2bに含まれる各ブロックの輝度分布を示す第2輝度分布情報を生成する。
【0026】
色情報比較部25aは、第1輝度分布情報により示される第1静止物検知エリアE2aの各ブロックの輝度分布と、第2輝度分布情報により示される第2静止物検知エリアE2bの各ブロックの輝度分布とを比較し、これら2つの輝度分布の傾向に差があるか否かを判定する。なお、輝度分布の傾向に差があるか否かは、既知の類似度判定方法に基づき判定され、当該判定の結果を示す第1結果情報は、静止物検知部25cに出力される。
【0027】
距離情報比較部25bは、三方枠16の左枠16A(が映るエリア)に設定された第1静止物検知エリアE2aに含まれる各ブロックの距離情報と、三方枠16の右枠16B(が映るエリア)に設定された第2静止物検知エリアE2bに含まれる各ブロックの距離情報とに、一定以上の差があるか否かを判定する。
【0028】
より詳しくは、距離情報比較部25bは、左枠16Aに対応する第1静止物検知エリアE2aに含まれる各ブロックに映る被写体(人または物)までの距離と、右枠16Bに対応する静止物検知エリアE2bに含まれる各ブロックに映る被写体(人または物)までの距離とを順に比較し、予め設定された閾値以上の距離差を有するブロックが所定数以上存在するか否かを判定する。この判定の結果を示す第2結果情報は、静止物検知部25cに出力される。
【0029】
静止物検知部25cは、色情報比較部25aから得られる第1結果情報と、距離情報比較部25bから得られる第2結果情報とに基づき、静止物検知エリアE2に静止物があるか否かを判定する。
【0030】
静止物検知部25cは、第1結果情報および第2結果情報が共に一定以上の差があることを示す場合、つまり、第1結果情報が2つの静止物検知エリアE2a,E2bに含まれる各ブロックの色情報に一定以上の差があることを示し、かつ、第2結果情報が2つの静止物検知エリアE2a,E2bに含まれる各ブロックの距離情報に一定以上の差があることを示す場合、静止物検知エリアE2から静止物を検知する。より詳しくは、静止物検知部25cは、第1結果情報が2つの静止物検知エリアE2a,E2bの各ブロックの輝度分布の傾向に差があることを示し、かつ、第2結果情報が上記した距離差を有するブロックが所定数以上存在することを示す場合、第1静止物検知エリアE2aまたは第2静止物検知エリアE2bの一方に静止物があることを検知する。
【0031】
一方、静止物検知部25cは、第1結果情報および第2結果情報のうちの少なくとも一方が一定以上の差がないことを示す場合、静止物検知エリアE2に静止物がないことを検知する。
【0032】
ここで、具体的な状況を想定して、色情報比較部25aと距離情報比較部25bとにより実行される処理について説明する。ここでは、図5に示すように、三方枠16の左枠16A付近には人や物が位置せずに、三方枠16の右枠16B付近にのみ人が立ち、ドアを手(腕)で押さえている状況を想定する。
【0033】
以下では、まず、色情報比較部25aにより実行される処理について説明する。
図5に示す状況の場合、第1静止物検知エリアE2aに含まれる各ブロックには三方枠16の左枠16Aのみが映っており、各ブロックの輝度値は互いに近似した値を示すため(より詳しくは、いずれのブロックも左枠16Aの色に応じた輝度値を示すため)、これら各ブロックの輝度分布は、図6(a)に示すように、ある1つの値とその周囲の値のみが分布した一極集中型の分布を示す。一方、第2静止物検知エリアE2bに含まれる各ブロックには、三方枠16の右枠16Bと、当該右枠16B付近に立つ人とが映っており、各ブロックの輝度値は種々様々な値を示すため(例えば、右枠16Bの色や、当該右枠16B付近に立つ人が着ている洋服の色に応じた種々様々な値を示すため)、これら各ブロックの輝度分布は、図6(b)に示すように、広範囲に亘って種々様々な値が分布した離散型の分布を示す。
【0034】
このように、静止物検知エリアE2に含まれる各ブロックの輝度分布は、三方枠16付近に人や物が位置しない場合は一極集中型の分布を示すのに対し、三方枠16付近に人や物が位置する場合は離散型の分布を示す傾向がある。色情報比較部25aは、2つの静止物検知エリアE2a,E2bにそれぞれ含まれる各ブロックの輝度分布に上記した傾向の差が見られるか否かを判定し、当該判定の結果を示す第1結果情報を生成・出力する。
【0035】
次に、距離情報比較部25bにより実行される処理について説明する。
カメラ12から、静止物検知エリアE2に含まれる各ブロックに映る被写体(人または物)までの距離は、基本的に、静止物検知エリアE2の上部に位置するブロックほど近くなり(つまり、小さな値を示し)、下部に位置するブロックほど遠くなる(つまり、大きな値を示す)傾向がある。また、カメラ12から、静止物検知エリアE2に含まれる各ブロックに映る被写体(人または物)までの距離は、人または物が映っているブロックほどその厚み分だけカメラ12に近づくため小さな値を示し、人または物が映っていないブロックほど大きな値を示す傾向がある。
【0036】
このため、図5に示す状況の場合、カメラ12から、第1静止物検知エリアE2aに含まれる各ブロックまでの距離は、図7に示すように、当該第1静止物検知エリアE2aの上部に位置するブロックほど近くなり、下部に位置するブロックほど遠くなる。一方、カメラ12から、第2静止物検知エリアE2bに含まれる各ブロックまでの距離は、図7に示すように、当該第2静止物検知エリアE2bの上部に位置し、かつ、人が映っているブロックほど近くなり、当該第2静止物検知エリアE2bの下部に位置し、かつ、人が映っていないブロックほど遠くなる。なお、図7では、濃い色(例えば、黒色)が付された部分ほどカメラ12からブロックまでの距離が近いことを示し、薄い色(例えば、白色)が付された部分ほどカメラ12からブロックまでの距離が遠いことを示している。
【0037】
距離情報比較部25bは、2つの静止物検知エリアE2a,E2bにそれぞれ含まれる各ブロックに上記した距離差を有するブロックが所定数以上存在するか否かを判定し、当該判定の結果を示す第2結果情報を生成・出力する。より詳しくは、距離情報比較部25bは、2つの静止物検知エリアE2a,E2bに含まれる各ブロックを、各静止物検知エリアE2a,E2bの上部に位置するブロックから下部に位置するブロックに向かって順に走査し、例えば複数のブロック行に亘って、予め設定された閾値以上の距離差を有するブロックが存在した場合、当該距離差を有するブロックが所定数以上存在したことを示す第2結果情報を生成する。
【0038】
なお、上記した距離差に関する閾値は、図5に示すように三方枠16付近に立つ人を静止物として検知するために、当該人の厚み程度の値、例えば100mm~200mmのいずれかの値に設定されることが望ましい。これによれば、例えば、三方枠16に貼り付けられることがある薄型のミラーやポスター等を静止物として検知せずに、人や物等、ドアに挟まれる恐れがある静止物のみを適切に検知することが可能である。
【0039】
次に、図8のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステムにより実行される静止物検知処理の手順の一例について説明する。
検知処理部25は、カメラ12により撮影された撮影画像であって、距離情報取得部23により取得された距離情報を有する撮影画像を取得すると(ステップS1)、取得した撮影画像を予め定められたサイズのブロックで区切る処理を実行する(ステップS2)。なお、距離情報取得部23により取得された距離情報を有する撮影画像は「距離画像」と称されてもよい。
【0040】
検知処理部25の色情報比較部25aは、取得した撮影画像上に設定された2つの静止物検知エリアE2a,E2bの各ブロックの色情報に一定以上の差があるか否かを判定し、当該判定の結果を示す第1結果情報を生成する(ステップS3)。
【0041】
ステップS3の処理についてより詳しく説明すると、まず、色情報比較部25aは、取得した撮影画像において三方枠16の左枠16Aが映るエリアに設定された第1静止物検知エリアE2aの各ブロックの色情報(輝度値)に基づき、当該第1静止物検知エリアE2aの各ブロックの輝度分布を示す第1輝度分布情報を生成する。続いて、色情報比較部25aは、取得した撮影画像において三方枠16の右枠16Bが映るエリアに設定された第2静止物検知エリアE2bの各ブロックの色情報(輝度値)に基づき、当該第2静止物検知エリアE2bの各ブロックの輝度分布を示す第2輝度分布情報を生成する。その後、色情報比較部25aは、生成した第1輝度分布情報により示される左枠16Aに対応する第1静止物検知エリアE2aの各ブロックの輝度分布と、生成した第2輝度分布情報により示される右枠16Bに対応する第2静止物検知エリアE2bの各ブロックの輝度分布とを比較し、これら2つの輝度分布の傾向に差があるか否かを判定して、2つの静止物検知エリアE2a,E2bの各ブロックの色情報に一定以上の差があるか否かを判定し、当該判定の結果を示す第1結果情報を生成する。
【0042】
上記したステップS3の処理が実行された後、検知処理部25の距離情報比較部25bは、取得した撮影画像上に設定された2つの静止物検知エリアE2a,E2bの各ブロックの距離情報に一定以上の差があるか否かを判定し、当該判定の結果を示す第2結果情報を生成する(ステップS4)。
【0043】
ステップS4の処理についてより詳しく説明すると、まず、距離情報比較部25bは、取得した撮影画像において三方枠16の左枠16Aが映るエリアに設定された第1静止物検知エリアE2aの各ブロックに映る被写体までの距離と、取得した撮影画像において三方枠16の右枠16Bが映るエリアに設定された第2静止物検知エリアE2bの各ブロックに映る被写体までの距離とを順に比較する。なお、ここでは、第1静止物検知エリアE2aの各ブロックと、当該各ブロックの比較対象となる第2静止物検知エリアE2bの各ブロックとが、乗場ドア14の中心から当該乗場ドア14に対して垂直な方向に延びる線を境に左右対称の位置関係にあり、左右対称の位置関係にある2つのブロックに映る被写体までの距離が順に比較されるものとする。距離情報比較部25bは、上記した比較の結果、予め設定された閾値以上の距離差を有するブロックが所定数以上存在するか否かを判定して、2つの静止物検知エリアE2a,E2bの各ブロックの距離情報に一定以上の差があるか否かを判定し、当該判定の結果を示す第2結果情報を生成する。
【0044】
上記したステップS4の処理が実行された後、検知処理部25の静止物検知部25cは、上記したステップS3の処理により生成された第1結果情報と、上記したステップS4の処理により生成された第2結果情報とが共に、一定以上の差があることを示すか否かを判定する(ステップS5)。
【0045】
上記したステップS5の処理において、第1結果情報と第2結果情報とのうちの少なくとも一方が、一定以上の差があることを示さないと判定された場合(ステップS5のNo)、静止物検知部25cは、静止物検知エリアE2に静止物がないことを検知し(ステップS6)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0046】
一方、上記したステップS5の処理において、第1結果情報と第2結果情報とが共に、一定以上の差があることを示すと判定された場合(ステップS5のYes)、静止物検知部25cは、静止物検知エリアE2から静止物を検知し(ステップS7)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0047】
なお、上記したステップS7の処理の後に、静止物検知部25cは、静止物検知エリアE2から静止物を検知した旨の検知結果をエレベータ制御装置30に出力する。エレベータ制御装置30は、静止物検知部25c(検知処理部25)から静止物を検知した旨の検知結果を受けると、かごドア13の戸閉を禁止し、かごドア13の全戸開を維持する、あるいは、かごドア13を反転戸開させる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るエレベータシステムにおいては、撮影画像において三方枠16の左枠16Aが映るエリアに設定した第1静止物検知エリアE2aと、撮影画像において三方枠16の右枠16Bが映るエリアに設定した第2静止物検知エリアE2bとのそれぞれから得られる色情報に一定以上の差があり、かつ、第1静止物検知エリアE2aと第2静止物検知エリアE2bとのそれぞれから得られる距離情報に一定以上の差がある場合に、静止物検知エリアE2から静止物を検知する。このように、本実施形態に係るエレベータシステムにおいては、画像の色情報の変化(換言すると、複数の画像の時系列的な変化)に基づき人または物を検知する利用者検知エリアE1とは別に、2つの静止物検知エリアE2a,E2bを設定し、1つの画像における2つの静止物検知エリアE2a,E2bの色情報と距離情報との違いに基づき人または物を検知するため、複数の画像の時系列的な変化に着目しただけでは検知することができなかった静止物を検知することが可能である。
【0049】
なお、上記したように、2つの静止物検知エリアE2a,E2bは、撮影画像において三方枠16の左枠16Aと右枠16Bとが映るエリアに設定されるため、例えば、ドアが閉まることを防ぐために乗場15から乗りかご11に向けて腕を伸ばす利用者、あるいは、乗りかご11から乗場15に向けて腕を伸ばす利用者も、その腕の一部が2つの静止物検知エリアE2a,E2bのどちらかに入ってさえいれば、静止物として検知することが可能である。つまり、本実施形態に係るエレベータシステムにおいては、上記した利用者の腕等、シル上を通過するように位置する静止物も検知することが可能である。
【0050】
また、本実施形態に係るエレベータシステムにおいて、静止物検知部25cは、色情報に関わる第1結果情報と距離情報に関わる第2結果情報とが共に、一定以上の差があることを示す場合にのみ、静止物検知エリアE2から静止物を検知する。これによれば、以下のような誤検知の発生を抑制することが可能である。
【0051】
例えば、三方枠16の左右の枠16A,16Bの双方に人や物が位置しないにも関わらず、外光等の影響を受けて撮影画像の一部が明るく映ってしまい、2つの静止物検知エリアE2a,E2bの各ブロックの輝度分布に一定以上の差が生じてしまうことがある。静止物検知部25cが、第1結果情報と第2結果情報とのうちの少なくとも一方に基づいて、静止物検知エリアE2から静止物を検知してしまうと、上記した外光等の影響による輝度分布の違いを、静止物として検知してしまう誤検知が発生してしまう。しかしながら、本実施形態に係る静止物検知部25cは、第1結果情報と第2結果情報とが共に、一定以上の差があることを示す場合にのみ、静止物検知エリアE2から静止物を検知するため、上記した誤検知の発生を抑制することが可能であり、精度の高い静止物検知を実現することが可能である。
【0052】
本実施形態においては、検知処理部25が、撮影画像を全ての同じサイズのブロックで区切る場合を想定したが、これに限定されず、検知処理部25は、例えば、撮影画像に設定された第1静止物検知エリアE2aおよび第2静止物検知エリアE2bにおいて乗りかご11に乗車する利用者の腕が映るエリアを、第1静止物検知エリアE2aおよび第2静止物検知エリアE2bの他のエリアよりも小さいサイズのブロックで区切るとしてもよい。具体的には、検知処理部25は、上記した利用者の腕が映るエリアを、4(=2×2)個の画素を含むサイズのブロックで区切り、その他のエリアを、16(=4×4)個の画素を含むサイズのブロックで区切るとしてもよい。これによれば、検知処理部25は、第1静止物検知エリアE2aおよび第2静止物検知エリアE2bにおいて利用者の腕が映るエリアの色情報と距離情報とを、全て同じサイズのブロックで区切った場合よりも細かく比較することができるため、利用者の腕をより正確に検知することが可能である。
【0053】
また、本実施形態においては、距離差に関する閾値として、第1静止物検知エリアE2aおよび第2静止物検知エリアE2bの各ブロックに同じ値が設定される場合を想定したが、これに限定されず、例えば、第1静止物検知エリアE2aおよび第2静止物検知エリアE2bにおいて乗りかご11に乗車する利用者の腕が映るエリアの各ブロックに対して設定される距離差の閾値を、第1静止物検知エリアE2aおよび第2静止物検知エリアE2bの他のエリアの各ブロックに対して設定される距離差の閾値よりも小さくしてもよい。具体的には、上記した利用者の腕が映るエリアに対して設定される距離差に関する閾値は、利用者の腕の厚み程度の値、例えば50mmに設定されてもよい。これによれば、検知処理部25は、例えば、ドアが閉まることを防ぐために乗りかご11から乗場15に向けて伸ばされた利用者の腕等、三方枠16付近に利用者の腕のみが位置しているような場合においても、当該利用者の腕を正確に検知することが可能である。
【0054】
さらに、本実施形態に係るエレベータシステムは、利用者がいない状態であり、かつ、ドアが全開状態の時にカメラ12により撮影された画像を、基準画像として記憶部21に予め記憶しておいてもよい。これによれば、検知処理部25は、例えば、第1静止物検知エリアE2aと第2静止物検知エリアE2bとの両方に静止物(人または物)が位置するような場合においても、撮影画像と基準画像とを比較することにより、当該静止物を検知することが可能である。
【0055】
以上説明した一実施形態によれば、エレベータ近辺の静止物を検知することが可能なエレベータシステムを提供することが可能である。
【0056】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、14…乗場ドア、15…乗場、16…三方枠、16A…左枠、16B…右枠、20…画像処理装置、21…記憶部、22…制御部、23…距離情報取得部、24…検知エリア設定部、25…検知処理部、25a…色情報比較部、25b…距離情報比較部、25c…静止物検知部、30…エレベータ制御装置、31…戸開閉制御部、32…通知部、E1…利用者検知エリア、E2…静止物検知エリア、E2a…第1静止物検知エリア、E2b…第2静止物検知エリア。
【要約】
【課題】エレベータ近辺の静止物を検知すること。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、取得手段と、設定手段と、検知手段と、を備える。取得手段は、カメラから、カメラにより撮影された撮影画像中の被写体までの距離を示す距離情報を取得する。設定手段は、撮影画像において三方枠の左枠が映るエリアに静止物を検知するための第1静止物検知エリアを設定し、撮影画像において三方枠の右枠が映るエリアに静止物を検知するための第2静止物検知エリアを設定する。検知手段は、第1静止物検知エリアおよび第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる色情報に一定以上の差があり、かつ、第1静止物検知エリアおよび第2静止物検知エリアからそれぞれ得られる距離情報に一定以上の差がある場合、第1静止物検知エリアまたは第2静止物検知エリアから静止物を検知する。
【選択図】 図1
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