(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機、冷凍装置及び車両
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20231016BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
F04C29/02 361Z
(21)【出願番号】P 2022542447
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2020119605
(87)【国際公開番号】W WO2022067742
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】522001448
【氏名又は名称】安徽威▲靈▼汽▲車▼部件有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANHUI WELLING AUTO PARTS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.418 Caihong Road,High-Tech District Hefei,Anhui 230031,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】520496327
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼威▲靈▼汽▲車▼部件有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG WELLING AUTO PARTS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building No.1, No.21 Gangqian Road, Beijiao Residential Council Industrial Park, Beijiao, Shunde Foshan, Guangdong 528311, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】江 国▲彪▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲開▼成
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 嘉▲暉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 江林
(72)【発明者】
【氏名】▲鐘▼ 升
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/02
F04B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を備え、前記筐体内に油分離構造と油貯蔵タンクが設けられるスクロール圧縮機であって、前記筐体内にさらに油排出通路が設けられ、前記油排出通路は油入り口と油排出口を有し、前記油排出口は前記油入り口の上方に位置し、前記油入り口は前記油分離構造の油排出穴に連通され、前記油排出口は前記油貯蔵タンクに連通され
、
前記筐体に冷媒出口が開けられ、前記油貯蔵タンクのタンク壁に排気穴が開けられ、前記排気穴は前記冷媒出口に連通され、
前記スクロール圧縮機は静止スクロールを更に備え、前記静止スクロールの前記油分離構造に向かう側壁に第1の連通溝と第2の連通溝が開けられ、前記油排出穴は前記第1の連通溝によって前記油入り口に接続され、前記排気穴は前記第2の連通溝によって前記冷媒出口に接続され、
前記スクロール圧縮機はシール部材を更に備え、前記シール部材は前記静止スクロールの前記油分離構造に向かう端面に密接して接続され、前記静止スクロールの前記油分離構造に向かう端面に両端を開放した凹溝が設けられ、前記凹溝と前記シール部材との囲みによって前記油排出通路を形成し、且つ前記凹溝の両端の開口はそれぞれ前記油排出口と前記油入り口として形成される、ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
筐体を備え、前記筐体内に油分離構造と油貯蔵タンクが設けられるスクロール圧縮機であって、前記筐体内にさらに油排出通路が設けられ、前記油排出通路は油入り口と油排出口を有し、前記油排出口は前記油入り口の上方に位置し、前記油入り口は前記油分離構造の油排出穴に連通され、前記油排出口は前記油貯蔵タンクに連通される、
前記筐体に冷媒出口が開けられ、前記油貯蔵タンクのタンク壁に排気穴が開けられ、前記排気穴は前記冷媒出口に連通され、
前記スクロール圧縮機は静止スクロールを更に備え、前記静止スクロールの前記油分離構造に向かう側壁に第1の連通溝と第2の連通溝が開けられ、前記油排出穴は前記第1の連通溝によって前記油入り口に接続され、前記排気穴は前記第2の連通溝によって前記冷媒出口に接続され、
前記スクロール圧縮機はシール部材を更に備え、前記シール部材は前記静止スクロールの前記油分離構造に向かう端面に密接して接続され、前記シール部材の前記油分離構造とは反対側を向いた端面に両端を開放した凹溝が設けられ、前記凹溝と前記静止スクロールの端面との囲みによって前記油排出通路を形成し、且つ前記凹溝の両端の開口はそれぞれ前記油排出口と前記油入り口を形成する、ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記油入り口から前記油排出口までの方向に沿って、前記油排出通路の流れ面積が次第に増加する、ことを特徴とする
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記油排出通路は少なくとも1つの湾曲部を有する湾曲通路である、ことを特徴とする
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記油貯蔵タンクのタンク壁に複数のリブが間隔をあけて設けられ、前記リブの一端が前記油貯蔵タンクのタンクトップに向かい、前記リブの他端が前記油貯蔵タンクのタンクボトムに向かう、ことを特徴とする
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記油排出口は前記油貯蔵タンクのタンクボトムの反対側を向いて設けられる、ことを特徴とする
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記油排出口は前記油貯蔵タンクのタンクボトムに向かって設けられ、且つ前記油貯蔵タンクのタンク壁に緩衝部が設けられ、前記緩衝部は前記油排出口の下方に位置して前記油貯蔵タンクのタンク壁との間に隙間が形成される、ことを特徴とする
請求項1又は2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記油排出通路は油排出管であり、前記油排出管は導入部と前記導入部に接続される排出部、前記導入部の前記排出部から遠いポートは前記油入り口を形成し、前記排出部の前記導入部から遠いポートは前記油排出口を形成する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
冷凍装置であって、
請求項1~8のいずれかに記載のスクロール圧縮機を備えることを特徴とする冷凍装置。
【請求項10】
車両であって、
請求項9に記載の冷凍装置を備えることを特徴とする冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は冷凍装置技術分野に関し、具体的にスクロール圧縮機、冷凍装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の記載は、本願に関連する背景情報を提供するだけであり、必ずしも従来の技術を構成するものではない。
【0003】
スクロール圧縮機は、高効率、低騒音、安定運転の容積式圧縮機であり、第3世代の車載圧縮機として、自動車の空調システムに広く使用されていて、近年、新エネルギー車の開発に伴い、空調のスクロール圧縮機の騒音、振動及び耐久性等に対する自動車の要求がさらに高くなる。スクロール圧縮機の使用中に、摩擦対が作動する際に発生する騒音を低減するために、スクロール圧縮機内の摩擦対を潤滑するための冷凍油を提供する必要がある。従来の技術では、
図1に示すように、スクロール圧縮機内には、スクロール圧縮機の圧縮室30から排出される冷媒と油の混合流体を分離するための油分離構造100が設けられ、そして、油分離構造100の下方に油貯蔵タンク12が設けられ、油分離構造100によって分離された冷凍油を貯蔵し、同時に、油貯蔵タンク12とスクロール圧縮機の油戻り通路20との間に絞り油戻り構造40が設けられ、油貯蔵タンク12のタンクボトムに絞り油戻り構造40に接続される油戻り穴121が開けられ、その結果、油貯蔵タンク12内の冷凍油は、最終的に絞り油戻り構造40を通ってスクロール圧縮機の油戻り通路20に戻され、これにより、スクロール圧縮機内の各摩擦対を潤滑する。
【0004】
しかしながら、実際の使用中に、油分離構造100の油排出穴1017は油貯蔵タンク12に面して設けられるため、油分離構造100から排出された流体は油貯蔵タンク12内の冷凍油を洗い流し、油貯蔵タンク12内の冷凍油は衝撃によりかき回され、油貯蔵タンク12と絞り油戻り構造40を接続する貫通穴が冷凍油によって完全に沈められることができず、冷媒は絞り油戻り構造40からスクロール圧縮機の吸気側に直接漏れ、冷媒の漏れによりスクロール圧縮機の冷凍量が低下する。なお、冷媒が絞り油戻り構造40から漏れると、絞り油戻り構造40の流体供給空間を占有し、絞り油戻り構造40を通って油戻り通路20に供給する冷凍油が減少し、且つ冷凍油をかき回すと、冷媒が再混合されて冷凍油に溶解することになり、油貯蔵タンク12内の冷凍油の割合が減少し、それにより、戻り油中の冷凍油の割合が更に減少し、摩擦対が効果的に潤滑できなくなり、スクロール圧縮機の消費電力が増加し、圧縮効率が低下し、深刻な場合には機能障害が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の実施例は、スクロール圧縮機の摩擦対の不十分な潤滑により、スクロール圧縮機の消費電力が増加し、圧縮効率が低下するという従来の技術における技術的問題を解決することを主旨として、スクロール圧縮機、冷凍装置及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的問題を解決するために、本願の実施例に用いられる技術的解決手段は以下の通りであり、
スクロール圧縮機であって、筐体を備え、筐体内に油分離構造と油貯蔵タンクが設けられ、筐体内にさらに油排出通路が設けられ、油排出通路は油入り口と油排出口を有し、油排出口は油入り口の上方に位置し、油入り口は油分離構造の油排出穴に連通され、油排出口が油貯蔵タンクに連通される。
【0007】
いくつかの実施例において、筐体に冷媒出口が開けられ、油貯蔵タンクのタンク壁に排気穴が開けられ、排気穴は冷媒出口に連通される。
【0008】
いくつかの実施例において、沿油入り口から油排出口までの方向に沿って、油排出通路の流れ面積は徐々に増加する。
【0009】
いくつかの実施例において、油排出通路は少なくとも1つの湾曲部を有する湾曲通路である。
【0010】
いくつかの実施例において、油貯蔵タンクのタンク壁に複数のリブが間隔をあけて設けられ、リブの一端は油貯蔵タンクのタンクトップに向かい、リブの反対する他端は油貯蔵タンクのタンクボトムに向かう。
【0011】
いくつかの実施例において、油排出口は油貯蔵タンクのタンクボトムの反対側を向いて設けられる。
【0012】
いくつかの実施例において、油排出口は油貯蔵タンクのタンクボトムに向かって設けられ、且つ油貯蔵タンクのタンク壁に緩衝部が設けられ、緩衝部は油排出口の下方に位置して油貯蔵タンクのタンク壁との間に隙間が形成される。
【0013】
いくつかの実施例において、油排出通路は油排出管であり、油排出管は導入部と導入部に接続される排出部を備え、導入部の排出部から遠いポートに油入り口が形成され、排出部の導入部から遠いポートに油排出口が形成される。
【0014】
いくつかの実施例において、スクロール圧縮機は静止スクロールを更に備え、静止スクロールの油分離構造に向かう側壁に第1の連通溝と第2の連通溝が開けられ、油排出穴は第1の連通溝を介して油入り口に接続され、排気穴は第2の連通溝を介して冷媒出口に接続される。
【0015】
いくつかの実施例において、スクロール圧縮機はシール部材を更に備え、シール部材は静止スクロールの油分離構造に向かう端面に密接して接続され、静止スクロールの油分離構造に向かう端面に両端に開口がある凹溝が設けられ、凹溝と静止スクロールの端面との囲みによって油排出通路を形成し、且つ凹溝の両端の開口にそれぞれ油排出口と油入り口が形成される。
【0016】
いくつかの実施例において、スクロール圧縮機はシール部材を更に備え、シール部材は静止スクロールの油分離構造に向かう端面に密接して接続され、シール部材の油分離構造の反対側を向かう端面に両端に開口がある凹溝が設けられ、凹溝と静止スクロールの端面との囲みによって油排出通路を形成し、且つ凹溝の両端の開口にそれぞれ油排出口と油入り口が形成される。
【0017】
いくつかの実施例において、筐体は油分離ハウジングを備え、油分離ハウジングは静止スクロールの油分離構造に向かう端面に合わせて接続される接続面を有し、接続面に両端に開口がある凹溝が設けられ、静止スクロールの端面は接続面に密接して静止スクロールの端面と凹溝との囲みによって油排出通路を形成し、凹溝の両端の開口に油入り口と油排出口がそれぞれ形成される。
【0018】
いくつかの実施例において、油分離ハウジング内にさらに凹溝を収容するための収容溝が設けられ、収容溝の内壁面と凹溝の外壁面との囲みによって油貯蔵タンクが形成される。
【0019】
いくつかの実施例において、油分離ハウジング内にさらに析出した冷媒が流れるための接続通路が設けられ、接続通路の入口と出口はそれぞれ油排出口と排気穴に接続され、接続通路の通路壁は油貯蔵タンクのタンク壁に接続される。
【0020】
いくつかの実施例において、接続通路の通路壁に油遮断部が設けられ、油遮断部と油排出口の端面との間に隙間が形成される。
【0021】
いくつかの実施例において、油分離構造は油分離ハウジング内に設けられる油分離室を備え、油排出穴と冷媒出口はいずれも油分離室の室壁に設けられ、油分離室の室壁にさらに油分離入口が設けられ、静止スクロールに混合流体出口が設けられ、油分離入口は混合流体出口に接続される。
【0022】
本願の実施例に用いられる他の技術的解決手段は以下の通りであり、
冷凍装置であって、上記のスクロール圧縮機を備える。
【0023】
本願の実施例に用いられる他の技術的解決手段は以下の通りであり、
車両であって、上記の冷凍装置を備える。
【発明の効果】
【0024】
本願によるスクロール圧縮機の上記1つまたは複数の技術的解決手段は少なくとも以下のような技術的効果の1つを有し、本願によるスクロール圧縮機は、筐体の内部に油排出通路が設けられ、油排出通路の油入り口と油分離構造の油排出穴を連通させるとともに、油排出通路の油排出口と油貯蔵タンクを連通させ、このように、油分離構造から排出された冷凍油はまず油入り口から油排出通路内に入り、次に、油排出通路の油排出口から油貯蔵タンク内に流入する。油排出通路の油排出口は油入り口の上方に設けられ、油排出通路に入った冷凍油は重力方向に逆らって流れ、油排出口から排出され、このようにして、冷凍油の流出圧力と流出速度を効果的に下げることができ、このように、油排出口から排出された冷凍油の流速と圧力は低下し、冷凍油の排出時に油貯蔵タンク内の既存の冷凍油への衝撃力が低減され、これにより、油貯蔵タンク内の冷凍油を安定に保持することができ、油が入って油貯蔵タンク内の冷凍油がかき回されることがなく、油貯蔵タンクの有効な油貯蔵体積及び油貯蔵量は増加され、同時に、油貯蔵タンク内の冷凍油を安定に保持することによって、油戻り穴が常に冷凍油によって沈められることを確保し、冷媒が油戻り穴から油戻り通路内に漏れることを避け、スクロール圧縮機の十分な油戻りを確保し、スクロール圧縮機の摩擦対が効果的に潤滑されることを確保し、これにより、スクロール圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。
【0025】
本願による冷凍装置は、上記のスクロール圧縮機を使用することによって、スクロール圧縮機の筐体内に油排出通路が設けられ、油排出通路は冷凍油が重力方向に逆らって流れるようにガイドするため、冷凍油が油貯蔵タンク内に流入する際の流出速度と流出圧力を下げ、冷凍油の排出時に油貯蔵タンク内の既存の冷凍油への衝撃力が低減され、油貯蔵タンク内の冷凍油を安定に保持し、油貯蔵タンクの有効な油貯蔵体積は増加され、油戻り穴が常に冷凍油によって沈められ、冷媒が油戻り穴からスクロール圧縮機の油戻り通路内に直接漏れることを避け、スクロール圧縮機の十分な油戻りを確保し、スクロール圧縮機の圧縮効率を向上させ、冷凍装置の冷凍能力が最適化される。
【0026】
本願による車両は、上記の冷凍装置を使用することによって、車両の冷凍中に、冷凍装置の冷凍量及び冷凍効率を常に高いレベルに維持することができるため、車両内の冷却時間を効果的に短縮することができ、車両の冷却速度を上げ、車の使用体験を向上させる。
【0027】
本願の実施例の技術的解決手段をより明確的に説明するために、以下、実施例または例示的な技術の叙述に使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかで、以下で説明する図面はただ本願のある実施例だけであり、当業者にとって、創造的な作業なしに更にこれらの図面に基づいてその他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来の技術のスクロール圧縮機の断面図である。
【
図2】本願の一実施例によるスクロール圧縮機の断面図である。
【
図3】
図2に示すスクロール圧縮機の部分断面図である。
【
図4】本願の他の実施例によるスクロール圧縮機の部分断面図である。
【
図5】
図4に示すスクロール圧縮機のシール部材とスクロール圧縮機の静止スクロールを組み立てる場合の構造模式図である。
【
図7】
図4に示す構造における静止スクロールの構造模式図である。
【
図8】S3/S2とブローバイガス量との間の関係模式図である。
【
図9】S4/S3と冷凍油が油排出口から流出する場合の出口流速との間の関係模式図である。
【
図10】S5/S2と、油排出通路の油排出口と油入り口との圧力差rPとの間の関係模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願が解決しようとする技術的問題、技術的解決手段及び有益な効果をより明らかに理解しやすくするために、以下、
図1~10及び実施例を参照して、本願を更に詳細的に説明する。理解すべきこととして、ここで説明される具体的な実施例は本願を解釈することのみに使用され、本願を限定するためのものではない。
【0030】
説明する必要があることとして、本願の説明では、素子が他の素子に「固定」または「設置」されると呼ばれる場合、他の素子に直接位置することができるか、この他の素子に間接的に位置することもできる。1つの素子が他の素子に「接続」されると呼ばれる場合、他の素子に直接接続されるか、この他の素子に接続されることができる。
【0031】
理解する必要があることとして、「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等という用語で指示する方位または位置関係は図面に示される方位または位置関係であり、本願を容易に説明し、説明を簡素化するためだけのものであり、言われる装置または素子は特定の方位を有し、特定の方位で構造と操作される必要があることを指示したり暗示したりするのではななく、したがって、本願を制限するものとして理解されるべきではない。
【0032】
なお、「第1」、「第2」という用語は、説明目的でのみ使用され、相対的な重要性を示したり暗示したり、示された技術的機能の数を暗黙的に示したりするものとして理解することはできない。それにより、「第1」、「第2」で定義された特徴には、1つまたは複数のこの特徴が明示的または暗黙的に含まれる場合がある。本願の説明では、「複数」は、特に明記しない限り、2つ又は2つ以上を意味する。
【0033】
本願の明細書に説明される「一実施例」、「いくつかの実施例」または「実施例」を参照するのは、本願の1つまたは複数の実施例に該実施例を組み合わせて説明する特定の特徴、構造または特点を含むことを意味する。これにより、他の方式で別途に特にされていない限り、本明細書の様々な場所における「一実施例において」、「いくつかの実施例において」、「他のいくつかの実施例において」、「別のいくつかの実施例において」などの句の出現は、必ずしもすべて同じ実施例を参照するとは限られないが、「すべてではないが1つまたは複数の実施例」を意味する。なお、1つまたは複数の実施例において、任意の適切な方式で特定の特徴、構造または特性を組み合わせることができる。
【0034】
本願に記載の技術的解決手段を説明するために、以下、具体的な図面及び実施例を組み合わせて詳細に説明する。
【0035】
図2~7に示すように、本願による一実施例はスクロール圧縮機を提供し、
図2に示すように、該スクロール圧縮機は、筐体10、吸気口50、圧縮機構70、駆動機構80及び冷媒出口14等を備えるが、これらに制限されない。
【0036】
圧縮機構70は、可動スクロール18、静止スクロール15及び自転防止構造を備えるが、これらに制限されなく、静止スクロール15はエンドプレートと固定渦巻きを備えることができ、可動スクロール18はエンドプレートと可動渦巻きを備えることができ、固定渦巻きと可動渦巻きは噛み合って接合するので、固定渦巻きと可動渦巻きとの間にスクロール圧縮機の圧縮室30(即ちスクロール圧縮機の作業室)が画定される。自転防止装置は、可動スクロール18の自転を制限すると同時に、可動スクロール18が静止スクロール15に対して回転並進運動を行うことを許可するために使用される。駆動機構80は、ステーターとローターからなるモーター及びクランクシャフトを備えることができるが、これらに制限されなく、クランクシャフトはローターと一体的に回転することができ、クランクシャフトの上端には可動スクロール18を駆動するのに適した偏心ピンを設けることができ、ローターは偏心ピンによって可動スクロール18の回転を駆動する。吸気口50は筐体10に開けられ、外部作動回路の冷媒供給口(例えばシステム蒸発器の出口など)に接続され、筐体10内にさらに吸気室60が設けられ、吸気室60は吸気口50と圧縮室30に連通され、筐体10の外部作動回路(例えばシステム蒸発器など)からの低圧冷媒(作動流体)は吸気口50から吸入され、吸気室60を通って圧縮機構70に入り、圧縮される。筐体10内に油分離構造100と油貯蔵タンク12が設けられ、圧縮室30から排出された冷媒と冷凍油の混合流体は油分離構造100に供給されて油とガスを分離し、冷媒出口14は筐体10に開けられ、油分離構造100によって分離された高圧冷媒は冷媒出口14からスクロール圧縮機の外部作動回路(例えばシステム蒸発器の入り口等)に排出され、油分離構造100によって分離された冷凍油が油排出穴1017から排出されて油貯蔵タンク12内に流入して貯蔵される。油貯蔵タンク12内に油貯蔵領域が形成され、油貯蔵領域とは、本実施例のスクロール圧縮機を使用する場合、油貯蔵タンク12内に実際に冷凍油を貯蔵した領域を指し、油貯蔵タンク12のタンク壁に冷凍油を排出するための油戻り穴121が開けられ、油戻り穴121は油排出領域内に位置し、具体的に、油戻り穴121は油貯蔵タンク12のタンクボトムに設けられることができるが、これに制限されなく、筐体10内にさらに油戻り通路20が開けられ、油戻り通路20は油戻り穴121に連通され、油戻り通路20と油貯蔵タンク12との間に絞り油戻り構造40が設けられ、油貯蔵タンク12内の冷凍油が絞り油戻り構造40を流れて油戻り通路20内に供給され、スクロール圧縮機の各摩擦対を潤滑するために使用される。
【0037】
スクロール圧縮機が作動する場合、モーターが通電されると、ローターが回転し、クランクシャフトを同期して回転させ、クランクシャフトが偏心ピンによって可動スクロール18の回転並進運動を連動し、それと同時に、冷媒である作動流体は吸気口50から圧縮機構70の吸気室60に入り、可動スクロール18が回転並進し続けるに伴って、該冷媒が吸気室60から圧縮室30内に吸入され、このとき、圧縮室30内に入った冷媒が圧縮されて圧力が増加する。冷媒が所定の圧縮比に達するまで圧縮されると、冷媒が圧縮室30から排出され、例えば静止スクロール15に混合流体出口153が開けられ、冷媒が該混合流体出口153から排出され、冷媒の圧縮中に、摩擦対を潤滑するための冷凍油が冷媒によって載せられて圧縮室30内に入る。このため、静止スクロール15の混合流体出口153から排出された流体は冷媒と冷凍油の混合流体であり、冷媒と冷凍油を分離するように、排出された後に処理する必要があり、このように、冷媒と冷凍油の混合流体が油分離構造100に供給されて冷媒と冷凍油を分離し、分離された冷媒が冷媒出口14を介してスクロール圧縮機から排出され、分離された冷凍油が油貯蔵タンク12に入り、次に油戻り穴121を通って絞り油戻り構造40にさらに流入し、油戻り通路20に入って摩擦対を潤滑し、これにより、冷凍油のリサイクルを実現する。
【0038】
本願の一実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、上記スクロール圧縮機の筐体10内にさらに油排出通路13が設けられ、油排出通路13は油分離構造100の油排出穴1017から排出された冷凍油が油貯蔵タンク12に入るようにガイドするために使用される。具体的に、油排出通路13は対向して設けられる油入り口131と油排出口132を有し、油排出口132は油入り口131の上方に位置し、具体的に、本実施例において、油排出口132は油入り口131の上方に位置するのは、重力方向に沿って、油排出口132が油入り口131の真上または斜め上に位置することを指し、冷凍油が油入り口131から油排出通路13内に流入した後、冷凍油は、油排出口132から排出されるまで、重力方向に逆らって流れる必要がある。油入り口131は油分離構造100の油排出穴1017に連通され、油入り口131は油分離構造100の油排出穴1017から排出された冷凍油を流入するために使用され、油排出口132は油貯蔵タンク12に連通され、油排出口132は冷凍油を油貯蔵タンク12内に導入するために使用される。
【0039】
さらに、本実施例において、油排出口132は油貯蔵タンク12の油貯蔵領域の上方に位置し、このように、油排出口132が油貯蔵領域の上方に位置するように設定されることによって、油排出口132が常に油貯蔵タンク12内の冷凍油液面の上方に位置するのを確保し、このように、油貯蔵タンク12内の冷凍油貯蔵量の増加に伴って、油排出口132が冷凍油によって常に沈まれることがなく、これにより、油排出口132が冷凍油内に伸び入れて冷凍油を排出することを避け、冷凍油の排出時に気泡が発生して、冷凍油がかき回されたり、気泡が油戻り穴121を通って絞り油戻り構造40内に入り、絞り油戻り構造40の内部空間を占有したりすることを回避する。
【0040】
本願の実施例によるスクロール圧縮機は、筐体10の内部に油排出通路13が設けられ、油排出通路13の油入り口131とスクロール圧縮機の油分離構造100の油排出穴1017を連通させ、油排出通路13の油排出口132とスクロール圧縮機の油貯蔵タンク12を連通させることによって、油分離構造100の油排出穴1017から排出された冷凍油はまず油入り口131から油排出通路13内に入り、次に、油排出通路13の油排出口132から油貯蔵タンク12内に流入し、本実施例において、冷凍油の流動経路が
図2、
図3及び
図4の点線の矢印に示される。油排出通路13の油排出口132は重力方向に沿って油入り口131の上方に設けられ、油排出通路13の冷凍油が重力方向に逆らって流れるため、冷凍油の圧力を効果的に下げ、冷凍油の流出速度を低下させることができ、このように、油排出口132から排出された冷凍油流速及び圧力が低下し、冷凍油の排出時に油貯蔵タンク12内の既存の冷凍油の衝撃力が低減され、これにより、油貯蔵タンク12内の冷凍油を安定に保持することができ、油の流入によって油貯蔵タンク12内の冷凍油がかき回されないことを確保し、その結果、油貯蔵タンク12の有効油貯蔵体積及び油貯蔵量も増加し、同時に、油貯蔵タンク12内の冷凍油を安定に保持することによって、油戻り穴121が常に冷凍油によって沈まれることを確保し、冷媒が油戻り穴121から油戻り通路20内に直接漏れることを避け、スクロール圧縮機の十分な油戻りを確保し、スクロール圧縮機の摩擦対が効果的に潤滑されることを確保し、さらにスクロール圧縮機の圧縮効率を向上させる。
【0041】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、筐体10に冷媒出口14が開けられ、油分離構造100によって分離された冷媒は冷媒出口14から排出され、さらに、冷凍油が油排出通路13を流れた後、その流速と圧力が低下するため、冷凍油に溶解した冷媒の一部が析出するため、油貯蔵タンク12のタンク壁に析出した冷媒を排出する排気穴122が開けられ、該排気穴122は筐体10上の冷媒出口14に連通され、冷凍油から析出して油貯蔵タンク12内に入った冷媒は、排気穴122を通って合流し、冷媒出口14から排出され、本実施例において、冷媒の流動経路は
図2、
図3及び
図4の実線の矢印に示される。本実施例において、冷凍油が油排出通路13を流す場合、冷凍油の圧力が低下し、その結果、冷凍油に溶解した冷媒が析出し、析出した冷媒は排気穴122から排出され、冷媒が油貯蔵タンク12内に留まるため、油貯蔵タンク12の内部圧力が増加し、その結果、析出した冷媒が再び冷凍油に溶解し、さらに重要なものとして、冷媒を排出するための排気穴122を設けることによって、油排出通路13の油入り口131での圧力Pkが常に油排出口132での圧力Pd’より高くなることを確保し、即ち油排出通路13の油排出口132と油入り口131との間に圧力差(Pk-Pd’>0)を形成し、圧力差の作用下で、冷凍油が油排出通路13の油排出口132から排出されることができることを確保し、このように、冷凍油が重力方向に逆らって流れる場合でも、依然として順調に油排出口132から流出することができ、中断または逆流の状況を避ける。
【0042】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、排気穴122と油戻り穴121は重力方向に沿って上下に間隔をあけて設けられ、油排出通路13は排気穴122と油戻り穴121との間に設けられ、且つ油入り口131が油戻り穴121に密接して設けられ、油排出口132が排気穴122に密接して設けられ、即ち油入り口131は油戻り穴121の上方に位置し、排気穴122は油排出口132の上方に位置する。このように、排気穴122を油排出口132の上方に設けるため、油排出口132から噴出した冷凍油が油貯蔵タンク12のタンク壁に沿って流れる場合、排気穴122内に入ることを避け、排気穴122を通って冷媒と一緒に排出される。
【0043】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、油排出通路13の油入り口131から油排出口132までの方向に沿って、油排出通路13の流れ面積が次第に増加し、即ち冷凍油の流れ方向に沿って、油排出通路13の流れ面積が次第に増加する。このように、冷凍油が油排出通路13に沿って流れる過程では、流れ面積が次第に増加するに伴って、冷凍油の流速が次第に低下し、冷凍油が油排出口132から排出されるときの速度が下げ、これにより、冷凍油が油排出口132から排出されるときに液面への衝撃をさらに減少することができ、冷凍油の流速が遅くなり、流れ過程における析出量を更に増加させ、さらに油貯蔵タンク12内に入った冷凍油に溶解した冷媒量をさらに減らし、スクロール圧縮機の油戻り通路20内に入る冷凍油の割合を増やすことができる。
【0044】
無論、他のいくつかの実施例において、油入り口131から油排出口132まで、油排出通路13の流れ面積が変わらなくてもよく、即ち冷凍油の流れ方向に沿って、油排出通路13の流れ面積が変わらなく、このように、油排出通路13に沿った抵抗が存在するため、冷凍油が油排出通路13を流れる場合、その流速も同様に次第に遅くなる可能性がある。
【0045】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、上記の油排出通路13は1つの湾曲部を少なくとも有する湾曲通路であり、油排出通路13は湾曲部を有する湾曲通路として設定され、冷凍油が高速で油排出通路13に流入し、湾曲部が曲がると通路壁に衝撃し、冷凍油の流動中に受けられる局所抵抗が増加し、これにより、冷凍油の流速と圧力を更に低減させる可能性がある。このように、湾曲部を有する油排出通路13を設けることによって、湾曲部の面積を合理的に利用することができ、冷凍油が油排出通路13内に留まる時間を長くさせ、冷凍油に溶解した冷媒をより多く析出させるだけでなく、油排出通路13の局所抵抗を増加し、冷凍油の流速と圧力を効果的に下げることができる。
【0046】
さらに、本実施例において、油排出通路13は1つの湾曲部が設けられる「L」字型通路であり、且つ「L」字型通路の湾曲部をフィレットし、通路壁への冷凍油の過度の衝撃と通路の摩損を避ける。無論、他のいくつかの実施例において、上記の油排出通路13は複数の湾曲部が設けられる「S」形通路等、または他の1つまたは複数の湾曲部を有する通路であってもよく、ここで油排出通路13の具体的な設定形式を一意に限定しない。
【0047】
本願の他の実施例において、
図2及び
図3に示すように、油貯蔵タンク12のタンク壁に間隔をあけて複数のリブ123が設けられ、リブ123の一端が油貯蔵タンク12のタンクトップに向かい、リブ123の反対側の他端が油貯蔵タンク12のタンクボトムに向かい、即ち複数のリブ123はいずれも重力方向に沿って油貯蔵タンク12の一端から反対側の他端に延びる。油貯蔵タンク12のタンク壁に複数のリブ123を設けることによって、該リブ123は油排出口132から排出された冷凍油が油貯蔵タンク12に入るようにガイドするために使用でき、油排出口132から排出された油は油貯蔵タンク12内の冷凍油を洗い流すことを避ける一方で、該リブ123は冷凍油の熱を更に吸収するために使用でき、油貯蔵タンク12内に入った冷凍油の温度を下げることもでき、これにより、冷媒の析出量を増加する。
【0048】
さらに、本実施例において、
図2及び
図3に示すように、油排出口132とは反対側を向いているリブ123の一端は油貯蔵タンク12のタンクボトムまで延び、即ち油貯蔵タンク12内に冷凍油が貯蔵された場合、油排出口132とは反対側を向いているリブ123の一端は冷凍油液面の下方まで延び、このように油排出口132から噴出された冷凍油を油貯蔵タンク12内の冷凍油と合流するように直接ガイドし、冷凍油の入りによる油貯蔵タンク12内の冷凍油液面の洗い流しを最大限に低減する。
【0049】
よりさらに、本実施例において、複数のリブ123は、油貯蔵タンク12のタンク壁に一体成形することができるが、これに限定されなく、加工プロセスが簡単であり、成形作製に便利である。
【0050】
本願の他の実施例において、
図2及び
図3に示すように、油排出口132が油貯蔵タンク12のタンクボトムの反対側を向いて設けられ、即ち油貯蔵タンク12内に冷凍油が貯蔵された場合、油排出口132が冷凍油液面の反対側を向いて設けられ、このように、油排出通路13の設置は、冷凍油の流出方向を変えることができ、油排出口132から排出される冷凍油は冷凍油液面に直接面しないため、冷凍油液面を直接洗い流さなく、これにより、油貯蔵タンク12内の既存の冷凍油への油排出口132から排出される冷凍油の衝撃を減少し、油貯蔵タンク12内の既存の冷凍油の安定性を維持するために保証を提供する。
【0051】
さらに、本実施例において、油排出口132は重力方向に沿って排気穴122の下方に位置し、油排出口132から排出される冷凍油は、油貯蔵タンク12のタンク壁に沿って流れる場合、排気穴122内に入り、排気穴122から冷媒とともに排出されることを避ける。本実施例において、排気穴122内に冷凍油の流出を留めるための弁構造を設けることもでき、冷凍油の流出速度が大きくなりすぎて排気穴122に噴出して排出される。
【0052】
無論、他のいくつかの実施例において、排気穴122は油排出口132の下方に設けられてもよく、このとき、排気穴122内に冷凍油の流出を止めるための弁を設ける必要があり、冷凍油が排気穴122から流出することを避ける。
【0053】
選択的に、本願の他の実施例において、油排出口132は油貯蔵タンク12のタンクボトムの反対側を向いて設けられなくてもよく、即ち油排出口132が油貯蔵タンク12のタンクボトムに向かって設けられ、このとき、油貯蔵タンク12の油貯蔵領域と油排出口132との間即ち冷凍油液面と油排出口132との間に緩衝部(図示せず)を設けることができ、且つ緩衝部と出油池12のタンク壁との間に冷凍油が流れるための隙間が形成される。このように、油排出口132から排出された冷凍油が緩衝部に衝撃した後油貯蔵タンク12内に落ち、緩衝部の設置により、冷凍油の衝撃力をさらに緩衝することができ、油排出口132が冷凍油液面に向かっても、油貯蔵タンク12内の既存の冷凍油への洗い流しの影響も相対的に小さい。
【0054】
さらに、本実施例において、緩衝部は油貯蔵タンク12のタンク壁に突設される緩衝バッフルであり、緩衝バッフルの側壁と油貯蔵タンク12のタンク側壁は間隔をあけて設けられ冷凍油が流れるための隙間を形成する。或いは、緩衝部は油貯蔵タンク12のタンク壁に突設されるオリフィス板であり、オリフィス板に複数の貫通穴が開けられ、冷凍油はオリフィス板上の貫通穴を介して流出する。
【0055】
本願の他の実施例において、
図2に示すように、上記の油排出通路13は油排出管として設けられ、油排出管は導入部133と導入部133に接続される排出部134を備え、導入部133の排出部134から遠いポートに油入り口131が形成され、排出部134の導入部133から遠いポートに油排出口132が形成される。このように、油排出通路13にパイプライン通路を使用し、適切なパイプラインを選択してスクロール圧縮機の筐体10内に設けることによって、上記の油排出通路13を形成することができ、油排出通路13の構造が相対的に簡単であり、製作成形が容易である。
【0056】
さらに、本実施例において、排出部134と導入部133はある角度で接続され、接続角の位置で油排出通路13の湾曲部を形成し、具体的に、本実施例において、導入部133と排出部134との間の接続角は鋭角、直角または鈍角である。
【0057】
よりさらに、本実施例において、排出部134は油貯蔵タンク12のタンク壁を貫通し、その結果、油排出口132が油貯蔵タンク12内に伸び、即ち排出部134が油貯蔵タンク12のタンク壁に挿入接続されて、排出口132が油貯蔵タンク12内に伸びることを確保する。または、導入部133は油貯蔵タンク12のタンク壁を貫通し、即ち導入部133が油貯蔵タンク12のタンク壁に挿入接続され、導入部133が排出部134に接続される部分は油貯蔵タンク12内に伸び、排出部134全体は油貯蔵タンク12内に位置し、このように、油貯蔵タンク12の上部の非油貯蔵空間を合理的に利用し、油排出通路13の設置が占有する空間をできるだけ減少することができる。
【0058】
図4~7に示すように、本願の他の実施例において、上記の実施例の代替手段として、本実施例によるスクロール圧縮機の静止スクロール15の油分離構造100に向かう側壁に第1の連通溝151と第2の連通溝152が開けられ、
図7に示すように、第1の連通溝151が油入り口131に密接して設けられ、第2の連通溝152は冷媒出口14に密接して設けられ、油排出穴1017は第1の連通溝151によって油入り口131に接続され、排気穴122は第2の連通溝152によって冷媒出口14に接続される。静止スクロール15に第1の連通溝151と第2の連通溝152が開けられることによって、油排出穴1017から排出される冷凍油は第1の連通溝151を介して油排出通路131の油入り口131に流入し、油貯蔵タンク12の排気穴122から排出される冷媒は第2の連通溝152から排出され、このように、スクロール圧縮機の筐体10内に冷凍油または冷媒の流動をガイドする追加のパイプまたはパイプラインを設ける必要がなく、スクロール圧縮機の従来の構造を合理的に利用し、本実施例によるスクロール圧縮機の全体構造を簡素化させる。
【0059】
本実施例において、
図5及び
図6に示すように、スクロール圧縮機はシール部材16を更に備え、シール部材16は静止スクロール15の油分離構造100に向かう端面(即ち静止スクロール15の可動スクロール18とは反対側を向いた一側の壁面)に密接して接続され、且つ、シール部材16の形状は静止スクロール15の端面の形状とほぼ同じであり、シール部材16のサイズは静止スクロール15の側壁面のサイズとほぼ同じであり、スクロール圧縮機の全体の外観がより美しくなるのを確保する。さらに、静止スクロール15の油分離構造100に向かう端面に凹溝17が設けられ、凹溝17の両端に開口が設けられ、凹溝17とシール部材16との囲みによって上記の油排出通路13を形成し、且つ凹溝17の一端の開口は上記油排出通路13の油排出口132として形成され、凹溝17の他端の開口は油排出通路13の油入り口131として形成される。このように、シール部材16を静止スクロール15の端面に密接して接続するように設定することによって、シール部材16と静止スクロール15の端面を密着して接続し、凹溝17の溝壁の端面はシール部材16に当接され、筐体30内に油排出通路13を形成することができ、油排出通路13の設置形態が簡単である。
【0060】
選択的に、上記の凹溝17はシール部材16に設けられてもよく、即ちシール部材16の油分離構造100とは反対側を向いた端面に両端を開放した凹溝17が設けられ、凹溝17と静止スクロール15の端面との囲みによって上記の油排出通路13を形成し、且つ凹溝17の両端の開口はそれぞれ油排出通路13の油入り口131と油排出口132として形成される。このように、シール部材16を静止スクロール15の端面に密接して接続するように設定することによって、シール部材16と静止スクロール15の端面を密着して接続し、凹溝17の溝壁の端面はシール部材16に当接され、同様に、筐体30内に油排出通路13を形成することもできる。
【0061】
本実施例において、シール部材16は、静止スクロール15の側壁面に密着される密封ガスケット等であってもよいが、これに制限されない。
【0062】
説明する必要があることとして、上記の2つの実施例において、油戻り穴121と排気穴122はいずれもシール部材16を貫通し、シール部材16の設置により冷凍油及び冷媒の通常の排出に影響を及ぼす。
【0063】
本願の他の実施例において、上記の実施例の他の代替手段として、
図4に示すように、スクロール圧縮機の筐体10は油分離ハウジング101を備え、油分離ハウジング101は接続面1011を有し、接続面1011は静止スクロール15の油分離構造100に向かう端面に合わせて接続され、接続面1011と静止スクロール15の端面との合わせ接続とは、接続面1011の形状は静止スクロール15の端面の形状と同じまたは類似し、接続面1011のサイズは静止スクロール15の端面のサイズとほぼ同じであることを指す。さらに、接続面1011に両端を開放した凹溝が設けられ、具体的に、接続面1011は静止スクロール15とは反対側を向いて該凹溝17が凹んでおり、静止スクロール15の端面は接続面1011に密接し、静止スクロール15の端面と凹溝17との囲みによって上記の油排出通路13を形成し、凹溝17の一端の開口は上記油排出通路13の油排出口132として形成され、凹溝17の他端の開口は上記油排出通路13の油入り口131として形成される。油分離ハウジング101の接続面1011に凹溝17が開けられることによって、油分離ハウジング101の接続面1011は静止スクロール15の端面に密接する場合、凹溝17の溝壁の端面は静止スクロール15の端面に当接され、上記の油排出通路13を形成することができ、油排出通路13のこのような設置形態も相対的に簡単である。
【0064】
本実施例において、
図4に示すように、油分離ハウジング101内にさらに凹溝17を収容するための収容溝1012が設けられ、収容溝1012の内壁面と凹溝17の外壁面との囲みによって上記の油貯蔵タンク12を形成し、油戻り穴121と排気穴122はいずれも油分離ハウジング101に開けられる。このように、上記の油排出通路13を設置するための個別な油分離ハウジング101を設置することによって、油分離ハウジング101は独立して成形設置され、着脱がより容易であり、油排出通路13、油貯蔵タンク12及び排気穴122等の検査、修理、及び維持等により便利である。
【0065】
本実施例において、
図4に示すように、油分離ハウジング101内にさらに接続通路1013が設けられ、該接続通路1013は析出した冷媒が流れるために使用され、接続通路1013の入口は油排出口132に接続され、接続通路1013の出口は排気穴122に接続され、油排出通路13の油排出口132から排出された冷媒が接続通路1013を流れた後排気穴122から排出される。接続通路1013の設置は、排気穴122と油排出通路13の油排出口132との間の間隔距離を増加し、油排出口132から排出された冷凍油が排気穴122に侵入するのを防ぐことができる一方で、接続通路1013の通路壁は油貯蔵タンク12のタンク壁に連通され、析出した冷媒が接続通路1013の通路壁に接触され、このように、接続通路1013は析出した冷媒を更に冷却することもでき、冷媒に混合されたガス状の冷凍油が通路壁面に凝縮して油貯蔵タンク12内に戻り、これにより、冷凍油が冷媒とともに排出されるのをより防止する。
【0066】
本実施例において、
図4に示すように、接続通路1013の通路壁面に油遮断部1014が設けられ、油遮断部1014は油排出口132から流出した冷凍油が接続通路1013を通って排気穴122に流入するのを止めるために使用される。本実施例において、油遮断部1014が油排出口132に密接して設けられ、且つ油遮断部1014と油排出口132の端面との間に隙間が形成され、油排出口132から流出した冷凍油が順調に排出されることを確保する。このように、油遮断部1014は冷凍油が接続通路1013に入ることを効果的に止めることができ、且つ冷凍油と析出した冷媒はいずれも油遮断部1014と油排出口132の端面との間の隙間を通って正常に排出されることができ、このように、油遮断部1014を設置することによって冷凍油が排気穴122に入ることを効果的に止めることができるだけでなく、冷凍油と冷媒の正常な排出に影響を及ぼさない。
【0067】
さらに、本実施例において、油遮断部1014の油排出口132に面する一面に油遮断面1015が形成され、油遮断面1015は油排出口132の端面に間隔を開けて設けられ、即ち油遮断部1014と油排出口132の端面との間に隙間を留めるのを確保する。具体的に、油排出口132は部分的にまたは完全に該油遮断面1015によって遮断されることができ、油排出口132から排出された冷凍油が油遮断面1015に衝撃してから油貯蔵タンク12内に落ち戻すことを確保する。
【0068】
よりさらに、本実施例において、油遮断部1014は接続通路1013の通路壁に一体成形されるリブ状構造である。
【0069】
本実施例において、
図4に示すように、上記の油分離構造100は、油分離ハウジング101内に設けられる油分離室1016を備え、油排出穴1017と冷媒出口14はいずれも油分離室1016の室壁に設けられ、このように、油排出穴1017は第1の連通溝151に接続され、油排出穴1017から排出された冷凍油は第1の連通溝151を通って油排出通路13の油入り口131に入る。
【0070】
さらに、油分離室1016の室壁にさらに油分離入口1019が設けられ、油分離入口1019は静止スクロール15に設けられる混合流体出口153に接続され、スクロール圧縮機の圧縮室30から排出された冷媒と冷凍油の混合流体は油分離室1016に入り、油分離処理を行うために使用され、本実施例において、混合流体の流動経路は
図4の破線の矢印で示される。このように、静止スクロール15の混合流体出口153から排出された混合流体は油分離室1016に直接入り、分離された冷凍油は油排出穴1017を通って油排出通路13の油入り口131に入り、分離された冷媒は冷媒出口14から排出される。
【0071】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、上記の油分離構造100は油分離室1016内に設けられる油分離挿管11を更に備え、油分離挿管11は吸気端111と排気端112を有し、油分離挿管11の吸気端111は油排出穴1017が位置する一側に向かって設けられ、油分離挿管11の排気端112は冷媒出口14に連通され、混合流体は油分離入口1019から油分離室1016内に入った後螺旋状で流れて油分離室1016の室壁及び油分離挿管11に衝撃し、これにより、冷媒と冷凍油の分離を実現する。
【0072】
さらに、本実施例において、上記の冷媒出口14の流れ面積S1、油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2、及び油排出穴1017の流れ面積S3は、0.05≦S2/S1≦0.5、0.02≦S3/S1≦0.3という割合関係を満たす。冷媒出口14の流れ面積S1、油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2及び油排出穴1017の流れ面積S3は0.05≦S2/S1≦0.5、0.02≦S3/S1≦0.3という割合関係を満たすように設定することによって、即ち、油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2と冷媒出口14の流れ面積S1との比を0.05~0.5の範囲にし、油排出穴1017の流れ面積S3と冷媒出口14の流れ面積S1との比を0.02~0.3の範囲にするように設計する。このように、冷媒出口14の流れ面積は油分離挿管11の吸気端111の流れ面積より大きく、冷媒出口14の流れ面積は油排出穴1017の流れ面積より大きく、このように、分離された冷媒は速い速度で冷媒出口14から排出されることができ、これにより、油分離室1016内の圧力をタイムリに下げ、油排出穴1017から排出された冷凍油に作用する圧力を減少し、これにより、油排出穴1017から排出された冷凍油の流速を低下させ、油貯蔵タンク12内の冷凍油が常に油戻り穴121に沈まれるのを確保するために保証を提供する。
【0073】
いくつかの具体的な実施例において、上記の油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2と冷媒出口14の流れ面積S1との間の比、即ちS2/S1は0.05、0.1、0.2、0.3、0.4または0.5等であってもよく、上記の油排出穴1017の流れ面積S3と冷媒出口14の流れ面積S1との間の比、即ちS3/S1は0.02、0.05、0.08、0.1、0.15、0.2、0.25または0.3等であってもよい。
【0074】
さらに、本実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2と油排出穴1017の流れ面積S3は0.08≦S3/S2≦0.8という割合関係を満たし、即ち油排出穴1017の流れ面積S3と油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2との比を0.08~0.8の範囲にするように設計する。具体的に、
図8に示すように、S3/S2とブローバイガス量q
3(即ち油戻り穴121からスクロール圧縮機の油戻り通路20内に漏れる冷媒の量)との間の関係を示し、図から容易に分かるように、S3/S2の増加に伴い、ブローバイガス量が次第に増加し、このように、0.08~0.8の範囲内でS3とS2との比を選択して設計し、部品の製造誤差を考慮することを前提として、ブローバイガス量が相対的に小さく、冷凍油の戻り体積に悪影響を与えなく、即ちこの範囲内で、油貯蔵タンク12の油戻り穴121から漏れるブローバイガス量は戻り油中の冷凍油の割合にほとんど影響を及ぼさない。
【0075】
いくつかの具体的な実施例において、上記油排出穴1017の流れ面積S3と油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2との間の比、即ちS3/S2は0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8等であってもよい。
【0076】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、油排出通路13の油排出口132の流れ面積S4と油排出穴1017の流れ面積S3は1≦S4/S3≦7という割合関係を満たし、即ち油排出通路13の油排出口132の流れ面積S4と油排出穴1017の流れ面積S3の比を1~7の範囲内にするように設計する。このように、油排出通路13の油排出口132の流れ面積S4は油排出穴1017の流れ面積S3より大きく、冷凍油が油排出口132から流出する場合、流れ面積が突然に増加し、流速がさらに遅くなり、油排出口132から排出された冷凍油の油貯蔵タンク12内の冷凍油液面への衝撃を更に減少することに役に立つ。
【0077】
具体的に、
図9に示すように、S4/S3と冷凍油が油排出口132から流出する出口流速との間の関係を示し、図から容易に分かるように、S4/S3の増加に伴い、出口流速が次第に低下し、このように、1~7の範囲内でS4とS3との比を選択して設計し、部品の製造誤差を考慮することを前提として、油排出通路13の油排出口132から流出した冷凍油の流速が小さく、冷凍油の戻り体積に悪影響を与えなく、即ちこの範囲内で、油貯蔵タンク12の油戻り穴121から漏れるブローバイガス量は戻り油中の冷凍油の割合にほとんど影響を及ぼさない。
【0078】
いくつかの具体的な実施例において、上記油排出通路13の油排出口132の流れ面積S4と油排出穴1017の流れ面積S3との間の比、即ちS4/S3は1、2、3、4、0.4、5、6または7等であってもよい。
【0079】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、排気穴122の流れ面積S5と油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2は0.015≦S5/S2≦1という割合関係を満たし、即ち排気穴122の流れ面積S5と油分離挿管11の吸気端111の流れ面積S2の比を0.015~1の範囲内にするように設計する。具体的に、
図10に示すように、S5/S2とPk-Pd’(油排出通路13の油排出口132と油入り口131との間の圧力差rP)との間の関係を示し、図から容易に分かるように、S5/S2の取る値は0.015~1の範囲内であり、いずれも圧力差rPが零より大きいのを満たし、即ち冷凍油内から析出した冷媒が圧力作用下で排気穴122から排出されるのを確保することができ、且つ、圧力差rPが大きいほど、冷凍油の油排出通路13内での流れ速度は速くなるため、圧力差rPが冷媒排出要件を満たすことを前提として、S5/S2の比を大きくしすぎないように設計し、これにより、油排出通路13内の冷凍油が過圧の作用で加速して流れるのを防ぎ、冷凍油が油排出通路13に沿って流れて減速するのを確保し、油排出通路13の油排出の安定性を確保でき、なお、上記取る値範囲内でS5/S2の比を選択することによって、排気穴122の穴径を大きすぎて設計するため、油排出通路13の油排出口132から排気穴122を介して溢れるのを避ける。
【0080】
いくつかの具体的な実施例において、上記排気穴122の流れ面積S5と油分離挿管11の吸気端111の流れ面積との比、即ちS5/S2は0.015、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08または1.0等であってもよい。
【0081】
本願の他の実施例において、
図2、
図3及び
図4に示すように、油分離ハウジング101内にさらに整流室1018が設けられ、且つ整流室1018が油分離室1016に密接して設けられ、整流室1018は混合流体が油分離室1016に入る前に冷媒と冷凍油の混合流体に対して第1段階の減圧及び減速処理を行うために使用される。本実施例において、混合流体入口1020は静止スクロール15上の混合流体出口153と整流室1018に連通され、これにより、圧縮室30から排出された混合流体を整流室1018内に導入し、スクロール圧縮機の圧縮室30から排出された混合流体は、まず混合流体入口1020から整流室1018に入り、次に整流室1018から排出された混合流体は油分離入口1019から油分離室1016内に入り油とガスの分離を行い、具体的に、整流室1018が設けられる場合、混合流体の流動経路は
図2と
図4の破線矢印に示される。
【0082】
本実施例において、油分離入口1019は重力方向に沿って混合流体入口1020の上方に設けられ、油分離入口1019から整流室1018内に入った混合流体が整流室1018内に流れずに、油分離入口1019から油分離室1016内に直接入り、即ち混合流体の短い流れを避け、これにより、整流室1018が混合流体を確実且つ効果的に整流及び減圧することができるのを避ける。使用時、油分離ハウジング101に開けられる混合流体入口1020と静止スクロール15に開けられる混合流体出口153を接続させることによって、スクロール圧縮機の圧縮室30から排出された冷媒と冷凍油の混合流体は混合流体入口1020から整流室1018内に入り、整流室1018は排出された混合流体を整流することができ、混合流体の流速が低下し、圧力脈動が弱められ、これにより、混合流体の第1段階の減圧を実現し、このように、整流室1018によって整流された混合流体が油分離室1016内に入り油分離処理を行う場合、第1段階の減圧の後、混合流体の圧力が大幅に減少し、油分離室1016内の室壁及び油分離挿管11に衝撃する場合、混合流体の圧力が大幅に低下するため、混合流体の圧力脈動が弱められ、流速が低下し、油分離室1016の室壁及び油分離挿管11への混合流体の衝撃力が低下し、衝撃雑音が低下し、油分離挿管11の衝撃損失が減少し、耐用年数が長くなる。
【0083】
さらに、本実施例において、
図4に示すように、整流室1018は流線型壁面1021を有する室であり、具体的に、該流線型壁面1021は混合流体入口1020の側部に設けられ、混合流体入口1020から流入した混合流体は流線型壁面1021のガイドによって整流室1018内で流れ、このように、混合流体は流線型壁面1021に沿って流れ、流体の流れがより順調であり、これにより、整流室1018の内壁面への混合流体の衝撃を更に減少することができ、整流室1018の消音及び騒音低減効果をより効果的に向上させる。
【0084】
よりさらに、本実施例において、
図5及び
図6に示すように、スクロール圧縮機にシール部材16が設けられる場合、シール部材16の混合流体入口1020に面する位置がくり抜かれ、これにより、シール部材16の混合流体入口1020に面する位置で混合流体入口1020を回避する譲り空間161が形成され、混合流体の排出がシール部材16によって遮断されないことを確保し、混合流体が混合流体入口1020から整流室1018内に入ることができることを確保する。
【0085】
本願の他の実施例において、上記の油分離ハウジング101及びシール部材16はいずれも強い抗衝撃能力の材料から製造され、油分離ハウジング101及びシール部材16が混合流体、冷媒または冷凍油の衝撃によって変形しないことを確保し、これにより、油分離ハウジング101及びシール部材16の使用寿命を延長させる。
【0086】
本願の他の実施例において、上記の冷媒出口14は拡径口として設けられ、即ち冷媒出口14は冷媒の流れ方向に沿ってその流れ面積が次第に増加し、その結果、冷媒出口14の少なくとも一部はホーン状に形成され、冷媒が冷媒出口14内で流れる場合、流速が次第に低下し、これにより、気流が冷媒出口14の出口で減速及び減圧され、ある程度で整流の役割を果たし、さらに、冷媒をより安定的にさせ、冷媒が冷媒出口14に沿って流れて排出する過程では筐体10への衝撃が低下する。
【0087】
説明する必要があることとして、本願の実施例において、冷媒出口14は拡径口として設けられる場合、上記の冷媒出口14の流れ面積S1とは冷媒出口14の入口端の流れ面積を指す。
【0088】
本願の他の実施例は冷凍装置(図示せず)をさらに提供し、該冷凍装置は上記のスクロール圧縮機を備える。
【0089】
本実施例の冷凍装置は、上記のスクロール圧縮機を使用することによって、スクロール圧縮機の筐体10内に油排出通路13が設けられるため、油排出通路13は冷凍油が重力方向に逆らって流れるようにガイドすることができ、これにより、冷凍油が油貯蔵タンク12内に入る時の流出速度と流出圧力を低下させ、冷凍油の排出時に油貯蔵タンク12内の既存の冷凍油への衝撃力を減少することができ、これにより、油貯蔵タンク12内の冷凍油を安定的に保持し、油貯蔵タンク12の有効油貯蔵体積を増加し、且つ冷凍油が常に油貯蔵タンク12の油戻り穴121に沈まれ、冷媒が直接油戻り穴121からスクロール圧縮機の油戻り通路20内に漏れるのを避け、スクロール圧縮機の戻り油が十分であり、スクロール圧縮機の圧縮効率が向上し、冷凍装置の冷凍能力が最適化される。
【0090】
本願の他の実施例は車両をさらに提供し、該車両は上記の冷凍装置を備える。
【0091】
本実施例による車両は、上記の冷凍装置を使用することによって、車両の冷凍中に、冷凍装置の冷凍量及び冷凍効率を常に高いレベルに維持することができるため、車両内の冷却時間を効果的に短縮することができ、車両の冷却速度を上げ、車の使用体験を向上させる。
【0092】
説明する必要があることとして、本実施例において、上記車両の具体的なタイプは限られなく、例えば、該車両は従来の燃料車両または新エネルギー車両であることができ、所謂新エネルギー車両は、純粋な電気自動車、長距離電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池電気自動車、水素エンジン車両などが含まれるが、これらに限定されなく、本実施例はこれを特に制限しない。
【0093】
以上は本願の選択可能な実施例だけであり、本願を制限するためのものではない。当業者にとって、本願は様々な変更及び変化が可能である。本願の精神と原則から逸脱しない限り、行ったいずれの修正、等価置換、改善等は、いずれも本願の請求項の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10-筐体、100-油分離構造、101-油分離ハウジング、1011-接続面、1012-収容溝、1013-接続通路、1014-油遮断部、1015-油遮断面、1016-油分離室、1017-油排出穴、1018-整流室、1019-油分離入口、1020-混合流体入口、1021-流線型壁面、11-油分離挿管、111-吸気端、112-排気端、12-油貯蔵タンク、121-油戻り穴、122-排気穴、123-リブ、13-油排出通路、131-油入り口、132-油排出口、133-導入部、134-排出部、14-冷媒出口、15-静止スクロール、151-第1の連通溝、152-第2の連通溝、153-混合流体出口、16-シール部材、161-譲り空間、17-凹溝、18-可動スクロール、20-油戻り通路、30-圧縮室、40-絞り油戻り構造、50-吸気口、60-吸気室、70-圧縮機構、80-駆動機構。