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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20231016BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231016BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022543836
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031095
(87)【国際公開番号】W WO2022038669
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
(72)【発明者】
【氏名】金森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-18863(JP,A)
【文献】特開2019-176554(JP,A)
【文献】特開2020-72621(JP,A)
【文献】特開2011-62051(JP,A)
【文献】特開2000-350474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータのモータ駆動装置であって、
交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、
前記コンバータに接続されたキャパシタと、
正側端子および負側端子を有するスイッチング回路を1つのパッケージに収納し、そのスイッチング回路の正側端子および負側端子を、前記各相巻線に接続される複数の出力端子と共に、正側端子、各出力端子、負側端子の順に当該パッケージの一側面に沿って配列してなる第1モジュールであって、前記キャパシタと前記各相巻線の一端との間の通電を制御する第1インバータと、
正側端子および負側端子を有するスイッチング回路を前記第1モジュールのパッケージと同じ形状の1つのパッケージに収納し、そのスイッチング回路の正側端子および負側端子を、前記各相巻線に接続される複数の出力端子と共に、正側端子、各出力端子、負側端子の順に当該パッケージの一側面に沿って配列してなる第2モジュールであって、前記キャパシタと前記各相巻線の他端との間の通電を制御する第2インバータと
前記第1および第2モジュールが取付けられる回路基板と、
前記回路基板に設けられ、前記第1および第2モジュールの各々の前記負側端子と前記キャパシタの負側端子とを接続する第1導電部材と、
を備え、
前記第1および第2モジュールは、各々の前記正側端子、前記各出力端子、前記負側端子の配列順の方向が互いに逆向きとなって各々の前記負側端子が互いに接近するように、互いに180度回転した状態で前記回路基板に配置され、
前記第1導電部材は、前記回路基板上の前記第1および第2モジュールの相互間に配置され前記第1および第2モジュールの各々の前記負側端子が接続される導電パターンを含むとともに、その導電パターンにおける前記各々の負側端子の接続位置の間と前記キャパシタの負側端子とを導通させる導電部材を含む、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記第1モジュールの前記正側端子と前記キャパシタの正側端子とを接続する第2導電部材と、
前記第1および第2モジュールの各々の前記正側端子を互いに接続する第3導電部材と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記回路基板に配置され前記第1および第2インバータを制御する制御部、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記制御部の動作用電圧のグランド電位が、前記第1および第2モジュールの各々の前記負側端子の電位と共通である、
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記第1導電部材の前記導電部材バスバーであり、
前記第2導電部材は、バスバーまたはリード線であり、
前記第3導電部材は、バスバーまたはリード線である、
ことを特徴とする請求項に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記キャパシタが配置されるキャパシタ基板、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記第1モジュールと前記第2モジュールのそれぞれは、各々の前記スイッチング回路を駆動する駆動回路を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータのモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機等を駆動するモータとして、複数の相巻線を有する永久磁石同期モータ(DCブラシレスモータともいう)が使用される。この永久磁石同期モータの一例として、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するオープン巻線モータ(Open-Winding Motor)が知られている。
【0003】
このオープン巻線モータ(モータと略称する)を駆動するモータ駆動装置は、交流電源電圧を直流電圧に変換するコンバータ、このコンバータの出力電圧を平滑するキャパシタ、このキャパシタとモータの各相巻線の一端との間の通電を制御する第1インバータ、上記キャパシタとモータの各相巻線の他端との間の通電を制御する第2インバータを備え、これら第1および第2インバータを適宜にスイッチングすることでモータを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-48997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなモータ駆動装置を小型化するために第1および第2インバータを1枚の基板上に搭載することが考えられる。このような基板上で、かつ同じ直流部のキャパシタに共通に接続されている各インバータの相互間の通電路には極めて小さい寄生インダクタンスが発生する。この寄生インダクタンスの影響で一方のインバータのスイッチング動作が、他方のインバータのスイッチング用の駆動信号にノイズとなって重畳し、その重畳に伴いインバータが誤動作することがある。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、各インバータを基板上に適切に配置することで通電路の寄生インダクタンスを低減して各インバータの誤動作を防止できるモータ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のモータ駆動装置は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータのモータ駆動装置であって、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータとこのコンバータに接続されたキャパシタと;正側端子および負側端子を有するスイッチング回路を1つのパッケージに収納し、そのスイッチング回路の正側端子および負側端子を、前記各相巻線に接続される複数の出力端子と共に、正側端子、各出力端子、負側端子の順に当該パッケージの一側面に沿って配列してなる第1モジュールであって、前記キャパシタと前記各相巻線の一端との間の通電を制御する第1インバータと;正側端子および負側端子を有するスイッチング回路を前記第1モジュールのパッケージと同じ形状の1つのパッケージに収納し、そのスイッチング回路の正側端子および負側端子を、前記各相巻線に接続される複数の出力端子と共に、正側端子、各出力端子、負側端子の順に当該パッケージの一側面に沿って配列してなる第2モジュールであって、前記キャパシタと前記各相巻線の他端との間の通電を制御する第2インバータと;前記第1および第2モジュールが取付けられる回路基板と、前記回路基板に設けられ、前記第1および第2モジュールの各々の前記負側端子と前記キャパシタの負側端子とを接続する第1導電部材と;を備える。前記第1および第2モジュールは、各々の前記正側端子、前記各出力端子、前記負側端子の配列順の方向が互いに逆向きとなって各々の前記負側端子が互いに接近するように、互いに180度回転した状態で前記回路基板に配置される。前記第1導電部材は、前記回路基板上の前記第1および第2モジュールの相互間に配置され前記第1および第2モジュールの各々の前記負側端子が接続される導電パターンを含むとともに、その導電パターンにおける前記各々の負側端子の接続位置の間と前記キャパシタの負側端子とを導通させる導電部材を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の構成を示すブロック図。
図2】同実施形態における回路基板を表面側から視た図。
図3】同実施形態における回路基板を裏面側から視た図。
図4】各IPMの配置が同実施形態と異なる場合に駆動信号に重畳するノイズの波形を参考として示す図。
図5】同実施形態におけるノイズが低減された駆動信号の波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態のモータ駆動装置について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、3相交流電源1に例えば全波整流回路等のコンバータ2が接続され、そのコンバータ2の正側出力端(+)および負側出力端(-)にキャパシタ基板10のキャパシタ(電解キャパシタ)11が接続されている。コンバータ2は、3相交流電源1の3相交流電圧を直流電圧に変換し出力する。キャパシタ11は、コンバータ2の出力電圧を平滑する。図1中にはキャパシタ11は1個で示しているが、モータ駆動装置の容量に合わせて、複数のキャパシタを並列接続したり、直列接続したり、さらにはその組み合わせで構成してもよい。
【0010】
キャパシタ11の正側端子と負側端子に、互いに同一の回路基板20上に搭載された第1インバータ21および第2インバータ22が接続され、その第1インバータ21の出力端と第2インバータ22の出力端との間にモータ3が接続されている。モータ3は、互いに非接続状態の複数の相巻線Lu,Lv,Lwを有する例えば圧縮機駆動用の三相永久磁石同期モータいわゆるオープン巻線モータ(Open-Winding Motor)である。
【0011】
第1インバータ21は、スイッチ素子Tu+,Tu-のU相直列回路、スイッチ素子Tv+,Tv-のV相直列回路、スイッチ素子Tw+,Tw-のW相直列回路をブリッジ接続してなるスイッチング回路21a、およびそのスイッチング回路21aを駆動する駆動回路21bを矩形状のパッケージに収納してなるモジュールいわゆるIPM(Intelligent Power Module)であり、キャパシタ11とモータ3の相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の通電を制御する。スイッチング回路21aは、U相直列回路・V相直列回路・W相直列回路のそれぞれ正側端子に導通する正側端子P、U相直列回路の負側端子Nu、V相直列回路のNv、W相直列回路の負側端子Nwを有し、正側端子Pと負側端子Nu,Nv,Nwとの間に印加されるキャパシタ11の電圧を所定周波数の交流電圧に変換し、それをスイッチ素子Tu+,Tu-の相互接続点である出力端子Ou、スイッチ素子Tv+,Tv-の相互接続点である出力端子Ov、スイッチ素子Tw+,Tw-の相互接続点である出力端子Owから出力する。これら出力端子Ou,Ov,Owにモータ3の相巻線Lu,Lv,Lwのそれぞれ一端が接続される。
【0012】
第2インバータ22は、スイッチ素子Tu+,Tu-のU相直列回路、スイッチ素子Tv+,Tv-のV相直列回路、スイッチ素子Tw+,Tw-のW相直列回路をブリッジ接続してなるスイッチング回路22a、およびそのスイッチング回路22aを駆動する駆動回路22bを矩形状のパッケージに収納してなり、第1インバータ21と同じ構成のIPMであり、キャパシタ11とモータ3の相巻線Lu,Lv,Lwの他端との間の通電を制御する。スイッチング回路22aは、U相直列回路・V相直列回路・W相直列回路のそれぞれ正側端子に導通する正側端子P、U相直列回路の負側端子Nu、V相直列回路のNv、W相直列回路の負側端子Nwを有し、正側端子Pと負側端子Nu,Nv,Nwとの間に印加されるキャパシタ11の電圧を所定周波数の交流電圧に変換し、それをスイッチ素子Tu+,Tu-の相互接続点である出力端子Ou、スイッチ素子Tv+,Tv-の相互接続点である出力端子Ov、スイッチ素子Tw+,Tw-の相互接続点である出力端子Owから出力する。これら出力端子Ou,Ov,Owにモータ3の相巻線Lu,Lv,Lwのそれぞれ他端が接続される。なお、必要に応じて第1および第2インバータ21,22に異なる定格の素子を備えたものでもよい。
【0013】
第1および第2インバータ21,22のことを、以下、IPM21,22という。
このIPM21,22を制御するMCU(Micro Computer Unit)23が回路基板20に搭載されている。MCU23は、正側電源端子23aと負側電源端子23bに印加される直流の動作用電圧Eにより動作し、回路基板20外の例えば空気調和機のコントローラから指令される目標温度を満足するようなモータ3の回転速度を目標回転速度として演算し、モータ3の回転速度がその目標回転速度となるよう、IPM21,22のスイッチング回路21a,22aに対するスイッチング用の駆動信号25,26のオン,オフデューティを制御する。MCU23の動作用電圧Eのグランド電位Gは、IPM21,22に対するスイッチング用の駆動信号を生成する際の基準電位として、IPM21,22のスイッチング回路21a,22aの負側端子Nu,Nv,Nwの電位と共通である。MCU23の動作用電圧Eは、コンバータ2の出力を降圧して生成してもよいし、交流電源1から直接生成してもよい。
【0014】
IPM21,22が取付けられる回路基板20の表面側(上面側)およびキャパシタ11が取付けられるキャパシタ基板10の表面側の外観を図2に示し、回路基板20の裏面側(下面側)およびキャパシタ基板10の裏面側の外観を図3に示す。
【0015】
[回路基板20の表面側の構成]
図2に示すように、IPM21は、パッケージの一側面から突出して同パッケージの下面側に屈曲する形状の正側端子P・出力端子Ou,Ov,Ow・負側端子Nu,Nv,Nwを順次に配列してなり、これら端子の先端が回路基板20に並ぶ複数の挿通孔(スルーホールともいう)31~37に挿入されることにより、パッケージの下面が回路基板20と若干の隙間を存した状態で回路基板20に取付けられる。
【0016】
回路基板20の表面において、正側端子P・出力端子Ou,Ov,Owが挿入される挿通孔31~34の近傍に、後述する接続用端子111~114を挿入接続するための挿通孔41~44が形成され、その挿通孔41~44の位置から挿通孔31~34の位置にかけてそれぞれ帯状の導電パターン51~54が形成されている。これら導電パターン51~54に、挿通孔31~34内の正側端子P・出力端子Ou,Ov,Owがそれぞれハンダ付け接続される。
【0017】
回路基板20の表面において、負側端子Nu,Nv,Nwが挿入される挿通孔35~37の隣り位置に、後述する接続用端子93を挿入接続するための挿通孔91が形成され、その挿通孔35~37の位置から挿通孔91の位置にかけて後述のバスバー203と共に第1導電部材をなす例えば帯状の導電パターン92が形成されている。この導電パターン92に、挿通孔35~37内の負側端子Nu,Nv,Nwがそれぞれハンダ付け接続される。
【0018】
一方、IPM22は、上記IPM21と同じく、パッケージの一側面から突出して同パッケージの下面側に屈曲する正側端子P・出力端子Ou,Ov,Ow・負側端子Nu,Nv,Nwを順位配列してなり、これら端子の先端が回路基板20に並ぶ複数の挿通孔61~67に挿入されることにより、パッケージが回路基板20に取付けられる。
【0019】
挿通孔61~67は、上記挿通孔91を中心にして上記IPM21用の挿通孔31~37とは反対側の位置に、かつ挿通孔31~37の配列方向と同じ方向に、形成されている。そして、IPM22の負側端子Nu,Nv,Nwが挿入される挿通孔65~67の位置から挿通孔91の位置にかけて上記導電パターン92が延長され、その導電パターン92に挿通孔65~67内の負側端子Nu,Nv,Nwがそれぞれハンダ付け接続される。なお、以上の説明においてIPM21,22の各端子Nu~Pは一定間隔で直線状に設けられたパッケージを例として示したが、これらの端子は千鳥状に配置されたものや、各端子間の間隔が一定でない場合もある。
【0020】
回路基板20の表面において、IPM22の正側端子P・出力端子Ou,Ov,Owが挿入される挿通孔61~64の近傍に、裏面側の後述する接続用端子121~124を挿入接続するための挿通孔71~74が形成され、その挿通孔71~74の位置から挿通孔61~64の位置にかけてそれぞれ帯状の導電パターン81~84が形成されている。これら導電パターン81~84に、挿通孔61~64内の正側端子P・出力端子Ou,Ov,Owがそれぞれハンダ付け接続される。
【0021】
このIPM21とIPM22の配置に関し、IPM21,22が挿通孔91および導電パターン92を間に挟んで互いに180度回転して左右にずれた状態、つまりIPM21,22の各々の負側端子Nu,Nv,Nwが互いに接近する状態が保持される。このIPM21,22の配置により、IPM21,22の各々の負側端子Nu,Nv,Nwが互いに接近させることができる。逆にIPM21,22の各々の正側端子Pは、最も離れたところ、すなわち、回路基板20上の左側端と右側端に位置する。ここでは、IPM21,22の各々の負側端子Nu,Nv,Nwが、ほぼ横1列に横並びとなる様に回路基板20に取り付けたが、IPM21,22の各々の負側端子Nu,Nv,Nwが、上下に並ぶように取り付けてもよい。この場合は、IPM21の負側端子Nu,Nv,Nwの各々がIPM22の負側端子Nw,Nu,Nvに対向する位置となる。この配置では、図2のように回路基板20の表面から見るとIPM21の負側端子とIPM22の負側端子が上下方向に重なり、IPM22がIPM21の右上側にずれた位置関係となる。
【0022】
なお、これらのIPM21,22は、運転中の発熱量が大きいため、実際には各々のパッケージの上面にアルミニウム製等の熱伝導率の高いヒートシンクが固着される。ヒートシンクは、IPM21,22に対してそれぞれ別体でもよいし、両方を共通に冷却する一体型でもよい。
【0023】
[キャパシタ基板10の表面側の構成]
図2に示すように、キャパシタ11は、正側端子11aおよび負側端子11bを有し、これら端子の先端がキャパシタ基板10の挿通孔12a,12bに挿入されることにより、キャパシタ基板10に取付けられる。
【0024】
キャパシタ基板10の表面において、挿通孔12aの近傍に、裏面側の後述する接続用端子16a,17aを挿入接続するための挿通孔13a,14aが形成され、その挿通孔13a,14aの位置から挿通孔12aの位置にかけて導電パターン15aが形成されている。
【0025】
キャパシタ基板10の表面において、挿通孔12bの近傍に、裏面側の後述する接続用端子16b,17bを挿入接続するための挿通孔13b,14bが形成され、その挿通孔13b,14bの位置から挿通孔12bの位置にかけて導電パターン15bが形成されている。
【0026】
[回路基板20の裏面側の構成]
図3に示すように、回路基板20は、両面回路基板となっており、裏面にMCU23が半田付け接続されている。なお、MCU23は多数の端子を備え、これら端子のそれぞれが基板上の導電パターンに接続されている。これら端子および導電パターンの存在については図面上では省略している。回路基板20の裏面において、IPM21の正側端子Pが挿入される挿通孔31の近傍に接続用端子111が配置されている。この接続用端子111は、挿通孔31の近傍に存する挿通孔41に挿入され、その挿入先端が表面側の導電パターン51にハンダ付け接続されることにより、IPM21の正側端子Pと導通する。
【0027】
回路基板20の裏面において、IPM21の出力端子Ou,Ov,Owが挿入される挿通孔32~34の近傍に接続用端子112~114が配置されている。これら接続用端子112~114は、挿通孔32~34にそれぞれ挿入され、その挿入先端が表面側の導電パターン52~54にそれぞれハンダ付け接続されることにより、IPM21の出力端子Ou,Ov,Owとそれぞれ導通する。
【0028】
また、回路基板20の裏面において、IPM21の正側端子Pが挿入される挿通孔61の近傍に接続用端子121が配置されている。この接続用端子121は、挿通孔61の近傍に存する挿通孔71に挿入され、その挿入先端が表面側の導電パターン81にハンダ付け接続されることにより、IPM22の正側端子Pと導通する。
【0029】
回路基板20の裏面において、IPM22の出力端子Ou,Ov,Owが挿入される挿通孔62~64の近傍に接続用端子122~124が配置されている。これら接続用端子122~124は、挿通孔62~64にそれぞれ挿入され、その挿入先端が表面側の導電パターン82~84にそれぞれハンダ付け接続されることにより、IPM22の出力端子Ou,Ov,Owとそれぞれ導通する。
【0030】
回路基板20の裏面において、IPM21,22の相互間に存する挿通孔91に接続用端子93が挿入されている。この接続用端子93は、挿通孔91への挿入先端が表面側の導電パターン92にハンダ付け接続されることにより、IPM21の負側端子Nu,Nv,Nwと導通するとともにIPM22の負側端子Nu,Nv,Nwとも導通する。
【0031】
前述の接続用端子93,111,112~114、121,122~124は、螺子端子台が望ましいが、端子に流れる電流が小さければ圧着端子でもよい。
【0032】
[キャパシタ基板10の裏面側の構成]
図3に示すように、キャパシタ基板10の裏面において、キャパシタ11の正側端子11aが挿入される挿通孔12aの近傍に接続用端子16a,17aが配置されている。この接続用端子16a,17aは、挿通孔12aの近傍に存する挿通孔13a,14aにそれぞれ挿入され、その挿入先端が表面側の導電パターン15aにハンダ付け接続されることにより、キャパシタ11の正側端子11aと導通する。
【0033】
キャパシタ基板10の裏面において、キャパシタ11の負側端子11bが挿入される挿通孔12bの近傍に接続用端子16b,17bが配置されている。この接続用端子16b,17bは、挿通孔12bの近傍に存する挿通孔13b,14bにそれぞれ挿入され、その挿入先端が表面側の導電パターン15bにハンダ付け接続されることにより、キャパシタ11の負側端子11bと導通する。
【0034】
[回路基板20の裏面側およびキャパシタ基板10の裏面側の配線]
図3に示すように、キャパシタ基板10の接続用端子16aに第2導電部材たとえばバスバー(a bus-ber)201の一端が螺子100の螺合により固定され、そのバスバー201の他端が回路基板20の接続用端子111に螺子100の螺合により固定される。バスバー201は、導電性の金属を板状に形成したもので、板厚が大きくて剛性が高い。このバスバー201を通してキャパシタ11の正側端子とIPM21の正側端子Pとが導通する。
【0035】
回路基板20における接続用端子111に第3導電部材たとえばリード線202の一端がバスバー201の一端と共に上記螺子100の螺合により固定され、そのリード線202の他端が回路基板20における接続用端子121に螺子100の螺合により固定される。このリード線203を通してIPM21の正側端子PとIPM21の正側端子Pとが導通する。
【0036】
キャパシタ基板10の接続用端子16bに第1導電部材たとえばバスバー203の一端が螺子100の螺合により固定され、そのバスバー203の他端が回路基板20の接続用端子93に螺子100の螺合により固定される。バスバー203は、導電性の金属を板状かつL字形に形成したもので、板厚が大きくて剛性が高い。このバスバー203を通してキャパシタ11の負側端子とIPM21の負側端子負側端子Nu,Nv,NwおよびIPM22の負側端子負側端子Nu,Nv,Nwとが導通する。このため、バスバー201,203で回路基板20を支持させてもよい。
【0037】
[まとめ]
以上のように、1枚の回路基板20において、IPM21,22を挿通孔91および導電パターン92を間に挟んで互いに180度回転した状態で配置することにより、IPM21,22の各々の負側端子Nu,Nv,Nwを互いに接近させることができる。この接近により、IPM21,22の各々の負側端子Nu,Nv,Nwを挿通孔91および導電パターン92を介した回路基板20上の一箇所に集約させることができる。この集約により、IPM21,22の相互間の負側通電路に存する寄生インダクタンスを低減することができる。そして、このように配置することで、IPM21,22において互いに離れている各負側端子Nuの相互間距離も、IPM21の正側端子PとIPM21の正側端子Pの相互間距離よりも短くすることができる。なお、IPM21の正側端子PとIPM22の正側端子Pの相互間の配線や導通路における寄生インピーダンスは、ノイズの発生を生じさせることがないため、その距離が長くとも問題は生じない。
【0038】
MCU23の動作用電圧Eのグランド電位Gは、IPM21,22に対するスイッチング用の駆動信号を生成する際の基準電位として、IPM21,22のスイッチング回路21a,22aの負側端子Nu,Nv,Nwの電位Gと共通である。このとき、IPM21,22の相互間の負側通電路に存する寄生インダクタンスが大きいと、通流電流と寄生インダクタンスによって、寄生インダクタンス両端に電位差が発生する。この電位差がIPM21,22の駆動回路21b,22bのグランド電位を変動させる。その結果、MCU23からIPM21,22に供給されるスイッチング用の駆動信号25,26に大きなノイズが重畳するという不具合を生じる。例として図4に示すように、IPM21,22のいずれかのスイッチ素子Tu+に供給されるスイッチング用の駆動信号Duがオフで、そのまま変化がない状態において、他方のIPM22,21のいずれかのスイッチ素子がスイッチング動作すると、そのタイミングでIPM21,22のいずれかのスイッチ素子Tu+に供給されるスイッチング用の駆動信号Duに大きなノイズが重畳する。このノイズが大きくなり、駆動信号がオンのレベルにまで電圧が上がってしまうと、本来オフであるべきタイミングでスイッチ素子Tu+がオンしてしまう誤動作が発生する。このような誤動作の結果、最悪の場合、上下のスイッチング素子が短絡してしまい、大電流が流れてIPMを破壊してしまう可能性がある。
【0039】
本実施形態では、IPM21,22の各々の負側端子Nu,Nv,Nwを挿通孔91および導電パターン92を介した回路基板20上の一箇所に集約させ、これによりIPM21,22の相互間の負側通電路に存する寄生インダクタンスを低減させたので、MCU23からIPM21,22に供給されるスイッチング用の駆動信号に重畳するノイズを低減することができる。これにより図5に示すように、IPM21,22のいずれかのスイッチ素子Tu+に供給されるスイッチング用の駆動信号Duは、他方のIPM22,21のスイッチング素子が動作しても大きなノイズは重畳しない。これにより、ノイズによるIPM21,22の誤動作を防ぐことができる。
【0040】
また、キャパシタ基板10と回路基板20とを剛性の高いバスバー201,203で接続する構成なので、キャパシタ基板10および回路基板20を強固に一体化させることができる。
【0041】
[変形例]
上記実施形態では、第2導電部材としてバスバー201を用い、第3導電部材としてリード線202を用い、第1導電部材として導電パターン92およびバスバー203を用いる構成としたが、必ずしもそうする必要はなく、バスバーに代えてリード線を用いる構成およびリード線に代えてバスバーを用いる構成を採用してもよい。
【0042】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形例は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…3相交流電源、2…コンバータ、3…オープン巻線モータ、Lu,Lv,Lw…相巻線、10…キャパシタ基板、11…キャパシタ、20…回路基板、21…IPM(第1インバータ)、22…IPM(第2インバータ)、23…MCU,92…導電パターン(第1導電部材)、201…バスバー(第2導電部材)、202…リード線(第3導電部材)、203…バスバー(第1導電部材)
図1
図2
図3
図4
図5