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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/42 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
H01H33/42 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022544886
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2020031764
(87)【国際公開番号】W WO2022044063
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 慧
(72)【発明者】
【氏名】丸島 敬
(72)【発明者】
【氏名】網田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 朋寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀光
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-005462(JP,A)
【文献】特開平11-053998(JP,A)
【文献】特開昭58-102423(JP,A)
【文献】特開2018-129120(JP,A)
【文献】実開昭55-077319(JP,U)
【文献】特開2001-118474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の容器に収容された第1の可動接点と、
前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、
少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、
第2の容器に収容された第2の可動接点と、
前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、
少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、
第3の容器に収容された第3の可動接点と、
前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、
少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、
前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態と開路状態との間で変化させるクランクシャフトと、
前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、
前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転方向と同方向に回転する緩衝機構クランクレバーの前記回転方向への移動を止めることで前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、を備える、
開閉装置。
【請求項2】
前記第1の伝達機構は、
前記第1の可動接点に接続された第1の操作ロッドと、
前記クランクシャフトに接続され、前記クランクシャフトの回転に伴って回転する第1のクランクレバーと、
前記第1のクランクレバーの回転運動を前記第1の操作ロッドの運動に変換する第1の絶縁操作ロッドと、を含み、
前記第2の伝達機構は、
前記第2の可動接点に接続された第2の操作ロッドと、
前記クランクシャフトに接続され、前記クランクシャフトの回転に伴って回転する第2のクランクレバーと、
前記第2のクランクレバーの回転運動を前記第2の操作ロッドの運動に変換する第2の絶縁操作ロッドと、を含み、
前記第3の伝達機構は、
前記第3の可動接点に接続された第3の操作ロッドと、
前記クランクシャフトに接続され、前記クランクシャフトの回転に伴って回転する第3のクランクレバーと、
前記第3のクランクレバーの回転運動を前記第3の操作ロッドの運動に変換する第3の絶縁操作ロッドと、を含む、
請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
第1の容器に収容された第1の可動接点と、
前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、
少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、
第2の容器に収容された第2の可動接点と、
前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、
少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、
第3の容器に収容された第3の可動接点と、
前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、
少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、
前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態と開路状態との間で変化させるクランクシャフトと、
前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、
前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、を備え、
前記クランクシャフトは、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点にそれぞれ対応して設けられ、太さがそれぞれ一定である第1のクランクロッド、第2のクランクロッド、及び第3のクランクロッドを備え、
前記第1のクランクロッドと前記第2のクランクロッドは第1のカップリングを介して接続され、前記第2のクランクロッドと前記第3のクランクロッドは第2のカップリングを介して接続されており、
前記第3のクランクロッドの回転軸周りの断面二次モーメントは、前記第2のクランクロッドの回転軸周りの断面二次モーメントよりも小さく、前記第2のクランクロッドの回転軸周りの断面二次モーメントは、前記第1のクランクロッドの回転軸周りの断面二次モーメントよりも小さい、
開閉装置。
【請求項4】
第1の容器に収容された第1の可動接点と、
前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、
少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、
第2の容器に収容された第2の可動接点と、
前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、
少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、
第3の容器に収容された第3の可動接点と、
前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、
少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、
前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態と開路状態との間で変化させるクランクシャフトと、
前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、
前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、を備え、
前記クランクシャフトの回転軸周りの断面2次モーメントは、前記操作機構から遠い位置であるほど小さい傾向にある、
開閉装置。
【請求項5】
前記緩衝機構の位置を調整する位置調整機構を更に備える、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項6】
第1の容器に収容された第1の可動接点と、
前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、
少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、
第2の容器に収容された第2の可動接点と、
前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、
少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、
第3の容器に収容された第3の可動接点と、
前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、
少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、
前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態と開路状態との間で変化させるクランクシャフトと、
前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、
前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、を備え、
前記緩衝機構の位置を調整する位置調整機構を更に備え、
前記緩衝機構は、
前記クランクシャフトに設けられ、前記クランクシャフトの回転に伴って回転するローラ部材と、
前記ローラ部材と接触して前記クランクシャフトの回転運動によるエネルギーを吸収する緩衝部材と、
前記緩衝部材を支持する支持部材と、を更に備え、
前記位置調整機構は、
前記支持部材に設けられた歯とかみ合い、前記ローラ部材に対する前記緩衝部材の相対的な位置関係を調整するためのねじ部を備える、
開閉装置。
【請求項7】
第1の容器に収容された第1の可動接点と、
前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、
少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、
第2の容器に収容された第2の可動接点と、
前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、
少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、
第3の容器に収容された第3の可動接点と、
前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、
少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、
前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態と開路状態との間で変化させるクランクシャフトと、
前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、
前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、を備え、
前記緩衝機構の位置を調整する位置調整機構を更に備え、
前記緩衝機構は、
前記クランクシャフトに設けられ、前記クランクシャフトの回転に伴って回転するローラ部材と、
前記ローラ部材と接触して前記クランクシャフトの回転運動によるエネルギーを吸収する緩衝部材と、
前記緩衝部材を支持する支持部材と、
前記クランクシャフトに対する相対的な位置関係が保たれ、前記支持部材が固定される架台と、を更に備え、
前記位置調整機構は、
前記支持部材と前記架台との間または前記支持部材と前記緩衝部材との間のうち少なくともいずれか一方に介在され、前記ローラ部材に対する前記緩衝部材の相対的な位置関係を調整するためのスペーサを備える、
開閉装置。
【請求項8】
第1の容器に収容された第1の可動接点と、
前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、
少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、
第2の容器に収容された第2の可動接点と、
前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、
少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、
第3の容器に収容された第3の可動接点と、
前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、
少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、
前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態と開路状態との間で変化させるクランクシャフトと、
前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、
前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、を備え、
前記操作機構は、前記クランクシャフトに動力を供給する動力源と、
前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝器と、を備え、
前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点が閉路状態から開路状態に変化する開路動作における前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点の開路位置を0%、閉路位置を100%として百分率で示される前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点の可動接点位置を規定した場合に、
15%以上25%以下の任意の可動接点位置が、前記緩衝器による前記クランクシャフトの制動開始位置に設定されている、
開閉装置。
【請求項9】
前記緩衝器及び前記緩衝機構のうち、前記第1の可動接点及び前記第3の可動接点の間で先に前記制動開始位置に到達する可動接点に近い位置に配置された方が、遠い位置に配置された方よりも先に前記クランクシャフトの回転運動の緩衝を開始する、
請求項8に記載の開閉装置。
【請求項10】
第1の容器に収容された第1の可動接点と、
前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、
少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、
第2の容器に収容された第2の可動接点と、
前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、
少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、
第3の容器に収容された第3の可動接点と、
前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、
少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、
前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態と開路状態との間で変化させるクランクシャフトと、
前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、
前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、を備え、
前記操作機構は、前記クランクシャフトに動力を供給する動力源と、
前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝器を備え、
前記緩衝器の制動力の最大値は、前記緩衝機構の制動力の最大値の50%以上70%である、
開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3相のそれぞれに設けられた可動接点を1本のシャフトを介して一つの駆動装置にて動かす構成の開閉装置が知られている。例えば、シャフトは複数の部品から構成され、継ぎ手をもって構成される。特に継ぎ手部分には、電流が通電しないよう絶縁物が用いられる。また、動力伝達性の向上と部品点数の低減を狙い、シャフト間をスプラインとして結合させ、回転運動に伴うトルクを密に伝達する構造も開示されている。
【0003】
開閉装置が開路動作する際、各相の可動接点を1本のシャフトで動かすためにシャフトを回転させると、シャフトがねじれて各相の可動接点間で異なる遅れが発生し、接点の動きにずれが生じることがある。そして、シャフトを制動して各相の可動接点の動作を停止させる際に、3相のうち、操作機構に近い第1の相の可動接点は操作機構の制動に伴い速やかに減速するが、操作機構から遠い第2の相、第3の相の可動接点は慣性により運動を続け、減速が遅れることがある。この結果、第1の相の可動接点が開路位置に到達して停止するものの、第2の相、第3の相の可動接点は開路位置を超えて、跳ね返るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-5462号公報
【文献】特開平11-53998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、開路動作において、複数の可動接点を開路位置で精度よく停止させることができる開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の開閉装置は、第1の可動接点と、第1の伝達機構と、第1の容器と、第2の可動接点と、第2の伝達機構と、第2の容器と、第3の可動接点と、第3の伝達機構と、第3の容器と、クランクシャフトと、操作機構と、緩衝機構と、を持つ。第1の可動接点は、第1の容器に収容されている。第1の伝達機構は、前記第1の可動接点に接続されている。第1の容器は、少なくとも前記第1の可動接点を収容する。第2の可動接点は、第2の容器に収容されている。第2の伝達機構は、前記第2の可動接点に接続されている。第2の容器は、少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられている。第3の可動接点は、第3の容器に収容されている。第3の伝達機構は、前記第3の可動接点に接続されている。第3の容器は、少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられている。クランクシャフトは、前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態から開路状態に変化させる。操作機構は、前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる。緩衝機構は、前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の開閉装置1の概要を示す図。
図2】補助緩衝機構60の概要を示す図。
図3】閉路位置から開路位置に移動する各可動接点のストロークカーブを示す図。
図4】比較装置における閉路位置から開路位置に移動する際の各可動接点のストロークカーブを示す図。
図5】第2の実施形態の開閉装置2の概要を示す図。
図6】第3の実施形態の開閉装置の補助緩衝機構60の概要を示す図。
図7】第4の実施形態の開閉装置の補助緩衝機構60の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の開閉装置を、図面を参照して説明する。本願において、直交座標系のZ方向、X方向、及びY方向が以下のように定義される。Z方向は鉛直方向であって、+Z方向は上方向である。X方向は水平方向であって、これを開閉装置の左右方向と定義する。+X方向は開閉装置の右方向である。Y方向は水平方向かつX方向に直交する方向であって、これを開閉装置の前後方向と定義する。+Y方向は前方向である。なお、本明細書でいう「前方」などの用語は、説明の便宜上、開閉装置から見た1つの方向を基準とした視点で表現されたものである。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態の開閉装置について説明する。図1は、第1の実施形態の開閉装置1の概要を示す図、図2は、補助緩衝機構60の概要を示す図である。図1においては、開閉装置1を平面視した状態を示す。開閉装置1は、たとえば、第1の相10と、第2の相20と、第3の相30と、クランクシャフト40と、操作機構50と、補助緩衝機構60と、を備える。
【0010】
第1の相10は、例えば、第1の容器11と、第1の対向接点12と、第1の可動接点13と、第1の操作ロッド14と、第1の絶縁操作ロッド15と、第1のクランクレバー16と、第1のシール部材17と、を備える。第1の容器11内には、絶縁媒体Gが封入され、外部の大気とは隔離され、密閉されている。第1の容器11は、Y方向に長い中空の容器である。第1の容器11には、第1の対向接点12、第1の可動接点13、第1の操作ロッド14、第1の絶縁操作ロッド15、及び第1のクランクレバー16が収納されている。第1の容器11の長手方向の一端部の近傍位置には、貫通穴が形成されており、この貫通穴に第1のシール部材17が取り付けられている。第1の操作ロッド14、第1の絶縁操作ロッド15、及び第1のクランクレバー16によって、第1の伝達機構18が構成される。
【0011】
第1の対向接点12は、第1の容器11の内側であって、第1の容器11の長手方向の他端側において固定されて設けられている。第1の対向接点12は、第1の容器11の長手方向の一端方向(-Y方向)に向けて突出している。
【0012】
第1の可動接点13は、第1の容器11の他端方向(+Y方向)が開口する凹型形状をなしており、その開口部断面はO型となっている。第1の可動接点13の凹部の開口幅(X方向の開口幅)は、第1の対向接点12の幅(X方向の幅)と略同一である。例えば、第1の可動接点13が第1の容器11の他端方向に移動することにより、第1の対向接点12と第1の可動接点13が接触し、第1の可動接点が閉路状態となる。第1の可動接点13が第1の容器11の一端側に移動することにより、第1の対向接点12と第1の可動接点13が別離し、第1の可動接点13が開路状態となる。
【0013】
第1の可動接点13は、第1の操作ロッド14の他端部において、第1の操作ロッド14と一体となって設けられて、第1の操作ロッド14に接続されている。第1の操作ロッド14は、第1の容器11の長手方向に沿った長尺の部材である。第1の操作ロッド14は、例えば、図示しないベアリングによって両端部を支持されて、第1の容器11の長手方向に直線運動する。
【0014】
第1の操作ロッド14の一端部には、第1の絶縁操作ロッド15の他端部がピン結合によって接続されている。第1の操作ロッド14は、第1の絶縁操作ロッド15に対して、相対的に回転可能である。第1の絶縁操作ロッド15の一端部には、第1のクランクレバー16がピン結合によって接続されている。第1の絶縁操作ロッド15の一端部は、第1のクランクレバー16の回転に伴って、第1の絶縁操作ロッド15と第1のクランクレバー16を接続するピン周りに回転する。第1の絶縁操作ロッド15は、第1のクランクレバー16の回転運動を第1の操作ロッド14の運動(直線運動)に変換する。
【0015】
第1のクランクレバー16は、クランクシャフト40に嵌合して接続されており、クランクシャフト40の回転に伴って回転する。第1の容器11に設けられた貫通穴には、クランクシャフト40が貫通している。貫通穴に設けられている第1のシール部材17は、クランクシャフト40が貫通する貫通穴を閉塞し、第1の容器11内の気密性を維持する。クランクシャフト40は、図示しないボールベアリングなどの軸受けによって支持されており、自在に回転する。
【0016】
第2の相20は、例えば、第2の容器21と、第2の対向接点22と、第2の可動接点23と、第2の操作ロッド24と、第2の絶縁操作ロッド25と、第2のクランクレバー26と、第2のシール部材27と、を備える。第3の相30は、例えば、第3の容器31と、第3の対向接点32と、第3の可動接点33と、第3の操作ロッド34と、第3の絶縁操作ロッド35と、第3のクランクレバー36と、第3のシール部材37と、を備える。第2の相20及び第3の相30は、いずれも第1の相10と同様の構成を有する。第2の容器21は、第1の容器11に並べられ、第3の容器31は、第2の容器21に並べられている。第2の操作ロッド24、第2の絶縁操作ロッド25、及び第2のクランクレバー26によって、第2の伝達機構28が構成され、第3の操作ロッド34、第3の絶縁操作ロッド35、及び第3のクランクレバー36によって、第3の伝達機構38が構成される。
【0017】
クランクシャフト40は、例えば、第1のクランクロッド41と、第2のクランクロッド42と、第3のクランクロッド43と、操作機構側カップリング44と、第1のカップリング45と、第2のカップリング46と、緩衝機構側カップリング47と、を備える。クランクシャフト40は、第1の伝達機構18、第2の伝達機構28、及び第3の伝達機構38を動作させて、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33を閉路状態と開路状態との間で変化させる。第1のクランクロッド41、第2のクランクロッド42、及び第3のクランクロッド43は、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33に対応して設けられている。第1のクランクロッド41、第2のクランクロッド42、及び第3のクランクロッド43は、いずれも長尺の部材であり、互いに略同一の径を有する。
【0018】
第1のクランクロッド41は、第1の容器11を貫通し、第2のクランクロッド42は、第2の容器21を貫通し、第3のクランクロッド43は、第3の容器31を貫通する。第1のクランクロッド41の長手方向中央部には、第1のクランクレバー16が嵌合され、第2のクランクロッド42の長手方向中央部には、第2のクランクレバー26が嵌合され、第3のクランクロッド43の長手方向中央部には、第3のクランクレバー36が嵌合されている。
【0019】
第1のクランクロッド41の回転軸方向の一端側には、操作機構側カップリング44が取り付けられている。第1のクランクロッド41の他端側には、第2のクランクロッド42が接近している。第1のクランクロッド41の他端側と第2のクランクロッド42の一端側は、第1のカップリング45により互いに結合されている。第2のクランクロッド42の回転軸方向の他端側には、第3のクランクロッド43が接近している。第2のクランクロッド42の他端側と第3のクランクロッド43の一端側は第2のカップリング46により互いに結合されている。第3のクランクロッド43の他端側には、緩衝機構側カップリング47が取り付けられている。
【0020】
クランクシャフト40の一端側には、操作機構50が近接して設けられている。操作機構50は、例えば、回転軸51と、操作機構クランクレバー52と、中間ロッド53と、中間レバー54と、連結リンク55と、内蔵ばね56と、緩衝器57と、を備える。操作機構50は、第1の伝達機構18側に配置され、クランクシャフト40を回転運動させる。
【0021】
回転軸51は、クランクシャフト40と同軸であり、操作機構側カップリング44を介して第1のクランクロッド41の一端側と結合されている。回転軸51は、操作機構クランクレバー52に取り付けられている。操作機構クランクレバー52は、回転軸51と同軸周りの回転運動を行う。操作機構クランクレバー52は、中間ロッド53とピン結合されている。中間ロッド53は、長尺の部材であり、その長手方向に往復運動可能となる可動範囲を有する。中間ロッド53は、その長手方向に対する往復運動によって操作機構クランクレバー52及び回転軸51を回転させる。
【0022】
中間ロッド53には、中間レバー54が接続されている。中間レバー54は、中間ロッド53の往復運動による可動範囲に対応し、回転軸51に平行となる軸周りの回転範囲を有する。
【0023】
連結リンク55は、2枚の板状部材を備える。連結リンク55は、これらの板状部材によって中間レバー54を挟み込んで連結リンク55に接続されている。連結リンク55は、中間レバー54の回転運動に対して、上下方向(Z方向)に対する往復運動の可動範囲をもって中間レバー54に接続されている。
【0024】
内蔵ばね56は、連結リンク55に付勢力を付加し、連結リンク55、中間レバー54、中間ロッド53、及び操作機構クランクレバー52、及び回転軸51を介してクランクシャフト40に動力を供給する。内蔵ばね56は、常時は、その付勢力が抑えられており、図示しない制御装置によって開閉装置1の動作指令が出力された場合に、内蔵ばね56の付勢力が解放されて、連結リンク55に付加される。連結リンク55に付加した付勢力は、中間レバー54、及び中間ロッド53を介して操作機構クランクレバー52に伝達され、操作機構クランクレバー52及び回転軸51を回転させ、回転軸51の回転に伴ってクランクシャフト40が回転する。内蔵ばね56が付加した付勢力は、クランクシャフト40を回転させる動力となってクランクシャフト40に伝達される。内蔵ばね56は、動力源の一例である。
【0025】
緩衝器57は、例えば、第1の可動接点13、第2の可動接点23、または第3の可動接点33のいずれかが、緩衝器57により制動を開始する位置(以下、「制動開始位置」)に到達した場合に、回転軸51を介してクランクシャフト40の回転動作を制動させ始める。制動開始位置については、後に説明する。
【0026】
クランクシャフト40の他端側には、補助緩衝機構60が近接して設けられている。補助緩衝機構60は、例えば、緩衝機構クランクレバー61と、ダンパローラ62と、ダンパ63と、を備える。ダンパ63は、ダンパヘッド64と、ダンパシリンダ65と、ダンパピストン66と、を備える。補助緩衝機構60は、第3の伝達機構38側に配置され、クランクシャフトの回転運動を緩衝する。補助緩衝機構60は、緩衝機構の一例である。
【0027】
緩衝機構クランクレバー61は、緩衝機構側カップリング47を介して第3のクランクロッド43の他端側と結合されている。緩衝機構クランクレバー61の回転軸は、クランクシャフト40と同軸であり、緩衝機構クランクレバー61の回転方向は、クランクシャフト40の回転方向と同方向である。
【0028】
緩衝機構クランクレバー61の他端側先端部には、ダンパローラ62が取り付けられている。クランクシャフト40が回転すると、緩衝機構クランクレバー61は、クランクシャフト40の回転をダンパローラ62に伝達する。ダンパローラ62は、クランクシャフト40の回転に伴ってクランクシャフト40周りの回転方向Wに回転移動する。ダンパローラ62は、ローラ部材の一例である。
【0029】
第3の相30の側方には、ダンパ63が配置されている。ダンパ63は、いわゆるオイルダンパであり、ダンパ63におけるダンパシリンダ65の内部の空間には、油が封入されているとともに、ダンパピストン66が備えられている。ダンパヘッド64は、緩衝機構クランクレバー61の可動範囲に配置されている。ダンパヘッド64は、ダンパピストン66と一体となっており、ダンパヘッド64の往復運動は内部のダンパピストン66の動きとして伝達される。ダンパ63は、ダンパヘッド64がダンパローラ62と係合(接触)して、クランクシャフト40の回転運動によるエネルギーをダンパシリンダ65によって吸収する。ダンパ63は、緩衝部材の一例である。
【0030】
次に、第1の実施形態の開閉装置1の開路動作について説明する。開閉装置1は、開路動作を行うことにより、最終的に、第1の容器11の内部で第1の対向接点12から第1の可動接点13を別離させる。第2の容器21、第3の容器31の内部でも同様に、第2の対向接点22、第3の対向接点32から第2の可動接点23、第3の可動接点33をそれぞれ別離させる。
【0031】
操作機構50において、内蔵ばね56の付勢力によって連結リンク55が作動する。連結リンク55は、上下方向(Z方向)に向かって運動する。連結リンク55の動きにより、中間レバー54が回転運動し、中間レバー54の回転運動により、中間レバー54に接続された中間ロッド53を、操作機構クランクレバー52を引っ張る方向に移動させる。中間ロッド53の運動により、操作機構クランクレバー52がクランクシャフト40周りに回転する。操作機構クランクレバー52の回転運動は、回転軸51を介して操作機構側カップリング44へと伝達され、第1のクランクロッド41をも同様に回転させる。
【0032】
第1のクランクロッド41の回転運動により、第1のクランクレバー16が回転して、第1の絶縁操作ロッド15の運動を誘起する。第1の絶縁操作ロッド15は、一端部が第1のクランクレバー16と結合されたピン周りに回転し、他端部が第1の操作ロッド14と結合されたピン周りに回転して、第1の操作ロッド14を第1の容器11の一端側に引っ張るように運動する。
【0033】
第1の絶縁操作ロッド15の運動により、第1の操作ロッド14が運動し、第1の容器11の長手方向に沿って第1の容器11の一端側から他端側に向けて直線状に運動する。第1の操作ロッド14の運動により、第1の可動接点13が第1の容器11の一端側に向けて直線運動する。第1の可動接点13の運動により第1の可動接点13は、第1の対向接点12から別離される。
【0034】
第1のクランクロッド41の回転運動は、第1のカップリング45を通して、第2のクランクロッド42に伝達されて第2のクランクロッド42が回転する。第2のクランクロッド42は、第1のクランクロッド41のねじれ、第1のクランクロッド41と第1のカップリング45のセレーションの僅かなかみ合わせ、第1のカップリング45のねじれ、第2のクランクロッド42のねじれの分、第1のクランクロッド41より遅れて回転を始める。第2のクランクロッド42が回転することにより、第2のクランクレバー26、第2の絶縁操作ロッド25、第2の操作ロッド24、第2の可動接点23が運動して、第2の可動接点23が第2の対向接点22から別離する。
【0035】
第2のクランクロッド42の回転運動は、第2のカップリング46を通して、第3のクランクロッド43に伝達されて第3のクランクロッド43が回転する。第3のクランクロッド43は、第2のクランクロッド42のねじれ、第2のクランクロッド42と第2のカップリング46のセレーションの僅かなかみ合わせ、第2のカップリング46のねじれ、第3のクランクロッド43のねじれの分、第2のクランクロッド42より遅れて回転を始める。第3のクランクロッド43が回転することにより、第3のクランクレバー36、第3の絶縁操作ロッド35、第3の操作ロッド34、第3の可動接点33が運動して、第3の可動接点33が第3の対向接点32から別離する。
【0036】
第3のクランクロッド43の回転運動は、第3のクランクロッド43に結合された緩衝機構側カップリング47を介して補助緩衝機構60の緩衝機構クランクレバー61に伝達される。緩衝機構クランクレバー61は、伝達された回転運動に応じて、図2に示すように、クランクシャフト40を軸とした反時計回りとなる回転方向Wに向けて回転する。緩衝機構クランクレバー61が回転方向Wに向けて回転すると、ダンパローラ62は、ダンパヘッド64に向けて移動してダンパヘッド64と接近する。ダンパローラ62は、動作の終盤でダンパヘッド64に係合(接触)し、ダンパヘッド64をダンパシリンダ65の方向に移動させてダンパシリンダ65の中で押し込んでいく。
【0037】
ダンパヘッド64は、ダンパシリンダ65に設けられたダンパピストン66と一体となっている。このため、ダンパローラ62がダンパヘッド64をダンパシリンダ65内に押し込む際、ダンパシリンダ65内の油中をダンパピストン66が運動することで、ダンパ63が制動力を発生させる。
【0038】
ダンパ63が制動力を発生させることにより、回転運動する第3のクランクロッド43が減速する。続いて、第2のクランクロッド42が第3のクランクロッド43に遅れて減速し、さらに第1のクランクロッド41が第2のクランクロッド42に遅れて減速する。最後は、操作機構50に設けられた緩衝器57の制動力が、連結リンク55を介して作用し、クランクシャフト40を制動し、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33が開路位置に到達して開路状態に至る。
【0039】
次に、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33が閉路位置から開路位置まで移動する際のストロークカーブを機構解析で求めた結果について説明する。この機構解析において、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33の位置(以下、「可動接点位置」)は、それらの開路位置を0%とし、閉路位置を100%として百分率で示される位置として規定される。
【0040】
図3は、閉路位置から開路位置に移動する際の各可動接点のストロークカーブを示す図である。第1のストロークカーブS1は、第1の可動接点13のストロークカーブを示し、第2のストロークカーブS2は、第2の可動接点23のストロークカーブを示し、第3のストロークカーブS3は、第3の可動接点33のストロークカーブを示す。指令受取時間t0は、制御装置によって出力された動作指令を受け取った時間である。
【0041】
また、可動接点位置には、制動開始位置が設定されている。制動開始位置は、例えば、15%以上25%以下の任意の可動接点位置、この機構解析では20%の位置に設定される。制動開始位置は、例えば、補助緩衝機構60におけるダンパピストン66のストローク長や緩衝器57及び補助緩衝機構60の制動力に基づいて定められる。
【0042】
この機構解析では、緩衝器57及び補助緩衝機構60によってクランクシャフト40を制動させる場合に想定している。図3では、緩衝器57及び補助緩衝機構60のそれぞれによってクランクシャフト40に付加する制動力の時間変化を合わせて示す。第1の制動力曲線B1は、緩衝器57によってクランクシャフト40に付加される制動力の時間変化を示し、第2の制動力曲線B2は、補助緩衝機構60によってクランクシャフト40に付加される制動力の時間変化を示す。
【0043】
機構解析の結果によると、第1の可動接点13及び第3の可動接点33の間で、先に制動開始位置に到達するのは第1の可動接点13である。このため、緩衝器57及び補助緩衝機構60のうち、第1の可動接点13に近い位置に配置された緩衝器57の方が、第1の可動接点13に遠い位置に配置された補助緩衝機構60よりも先にクランクシャフト40の回転運動の緩衝を開始させる。そのために、緩衝器57がクランクシャフト40の制動を開始する制動開始タイミング(以下、「第1の制動開始タイミング」)t1は、補助緩衝機構60がクランクシャフト40の制動を開始する制動開始タイミング(以下、「第2の制動開始タイミング」)t2よりも先に設定されている。
【0044】
第1の制動開始タイミングt1は、第2の制動開始タイミングt2よりも遅いタイミングに設定してもよいし、第1の制動開始タイミングt1は、第2の制動開始タイミングt2を同じタイミングに設定してもよい。特に、第1の可動接点13及び第3の可動接点33の間で、先に制動開始位置に到達するのが第3の可動接点33である場合には、第1の制動開始タイミングt1は、第2の制動開始タイミングt2よりも遅いタイミングに設定するのが好適である。
【0045】
この機構解析では、緩衝器57及び補助緩衝機構60の制動力は、図3に示す第1の制動力曲線B1及び第2の制動力曲線B2に示すように変化する。緩衝器57がクランクシャフト40の制動を終了する制動終了タイミング(以下、「第1の制動終了タイミング」)t3は、補助緩衝機構60がクランクシャフト40の制動を終了する制動終了タイミング(以下、「第2の制動終了タイミング」)t4よりも後のタイミングに設定される。
【0046】
緩衝器57によって付加される制動力は、補助緩衝機構60によって付加される制動力よりも大きく、緩衝器57によって付加される制動力が主となってクランクシャフト40が制動させられる。第1の制動終了タイミングt3は、第2の制動終了タイミングt4よりも先のタイミングに設定されてもよいし、第1の制動終了タイミングt3と第2の制動終了タイミングt4を同じタイミングに設定してもよい。
【0047】
この機構解析によれば、緩衝器57及び補助緩衝機構60によってクランクシャフト40に付加される制動力のうち、緩衝器57によって付加される制動力が占める割合の最大値を100%とした場合の67%程度へすることにより、跳ね返りを好適に抑制することができる。開閉装置1におけるクランクシャフト40、緩衝器57、補助緩衝機構60の組み立てばらつきや弾性変形等を考慮すると、緩衝器57によって付加される制動力が占める割合を50%~70%の範囲内で設定することが好適である。
【0048】
続いて、第1の実施形態の開閉装置1において、補助緩衝機構60を設けた効果について、比較対象となる開閉装置(以下、「比較装置」)との違いを考慮しながら説明する。比較装置は、開閉装置1から補助緩衝機構60を除外した開閉機構である。
【0049】
図4は、比較装置における閉路位置から開路位置に移動する際の各可動接点のストロークカーブを示す図である。図4は、比較装置における各可動接点のストロークカーブを示している。図4においては、緩衝器57によってクランクシャフト40に付加される制動力の時間変化を合わせて示す。
【0050】
第1のストロークカーブS11は、第1の可動接点13のストロークカーブを示し、第2のストロークカーブS12は、第2の可動接点23のストロークカーブを示し、第3のストロークカーブS13は、第3の可動接点33のストロークカーブを示す。制動力曲線B11は、緩衝器57によってクランクシャフト40に付加される制動力の時間変化を示す。
【0051】
比較装置において、操作機構50によってクランクシャフト40を回転させると、クランクシャフト40に生じるねじれ剛性により、クランクシャフト40の第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33の間でストロークにばらつきが発生していた。これに対して、開閉装置1では、補助緩衝機構60が設けられていることにより、特にばらつきを抑えたい第1の制動開始タイミングt1以降の時間において、ばらつき低減効果を得ることができた。
【0052】
比較装置においては、補助緩衝機構60が設けられていないことから、クランクシャフト40に付加される制動力、特に、緩衝器57から遠い位置にある第2のクランクロッド42及び第3のクランクロッド43に付加される制動力が小さくなるケースが生じた。この場合、図4に示す第2のストロークカーブS12、及び第3のストロークカーブS13から分かるように、第2のクランクロッド42及び第3のクランクロッド43にそれぞれ接続された第2の可動接点23及び第3の可動接点33が開路位置を超えて運動するオーバーストロークが発生していた。
【0053】
図4に示すように、第1のストロークカーブS11、第2のストロークカーブS12、及び第3のストロークカーブS13の間でずれが大きいことは、開路動作時に第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33の間でばらつきが大きいことを示す。第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33の間でばらつきが大きくなると、第1の容器11と第2の容器21と第3の容器31の内にそれぞれ配置され、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33の動作とそれぞれ連動して、容積が圧縮される圧縮室(図示せず)に圧力差が生じていた。これにより圧縮室に圧力の差が生じていた。圧縮室における圧力の差が生じると、電極(接点)へのガスの吹付流量が安定せず、開路動作の際の遮断性能が低下することがあった。
【0054】
これに対して、開閉装置1では、図3示すように、第1のストロークカーブS11、第2のストロークカーブS12、及び第3のストロークカーブS13のいずれもが開路位置を超えることはなかった。このため、補助緩衝機構60を設けることにより、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33のいずれにおいても、オーバーストロークを抑制することができた。
【0055】
第1の容器11、第2の容器21、及び第3の容器31に封入される絶縁媒体Gは、例えば、六フッ化硫黄の気体(SF6ガス)である。これに対して、近年、SF6を代替する媒体(気体)として、空気や二酸化炭素ガスなどの代替ガスの適用が考えられている。開閉装置1において、絶縁媒体Gとして空気や二酸化炭素ガスを用いる場合、圧縮室の圧力差が大きく表れる。これは断熱圧縮の一般的な式を介して説明することができる。
【0056】
下記(1)式において、初期圧力P0、初期体積V0とした時、現在の圧力をP、現在の体積をVとする。ピストンを用いて内部の体積を初期圧力P0から現在の圧力Pへと変化させた時、ガスにより異なる値をとる比熱比γを用いて(1)式で表すことができる。
P=P0×(V/V0)^γ ・・・(1)
絶縁媒体Gに用いられる代表的な媒体の物性値として、SF6の比熱比γは1.1、二酸化炭素の比熱比γは1.3、空気の比熱比γは1.4をとる。このため、二酸化炭素ガスや空気などでは体積の差が比熱比γの乗数で大きく拡大され、圧縮室の容積の差が圧力の差へと大きく表れる。
【0057】
この点、第1の実施形態の開閉装置1では、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33の間でストロークカーブを揃えることができる。したがって、開路動作において、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33を開路位置で精度よく停止させることができる。さらに、第1の相10、第2の相20、及び第3の相30の間における圧縮室の圧力(ガス吹付圧力)の差を小さくできるので、電極(接点)へのガスの吹付流量が一致させて、遮断性能が安定させることができる。
【0058】
さらに、第1の実施形態の開閉装置1では、図4に示すストロークカーブに示される比較装置に見られた第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点のオーバーストロークや跳ね返りが抑制される。このため、過渡回復電圧に対する耐圧を維持することができ、再点弧を抑制することができる。
【0059】
さらに、第1の実施形態の開閉装置1では、第1の伝達機構18側に緩衝器57が設けられ、第3の伝達機構38側に補助緩衝機構60が設けられることにより、クランクシャフト40を制動する際のねじりが抑制される。したがって、クランクシャフト40の機械的耐力を上昇させることができる。
【0060】
さらに、第1の実施形態の開閉装置1では、操作機構50に含まれた緩衝器57と、補助緩衝機構60の双方によって、クランクシャフト40において緩衝されるエネルギーが分散される。したがって、クランクシャフト40における第1のクランクロッド41、第2のクランクロッド、及び第3のクランクロッド43の機械的耐力を向上させることができる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の開閉装置について説明する。第2実施形態以降の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分については同一の符号を付し、説明を省略することがある。第2の実施形態の開閉装置2は、第1の実施形態の開閉装置1と比較して、クランクシャフト70の構成が主に異なるため、この相違点を中心に説明する。
【0062】
図5は、第2の実施形態の開閉装置2の概要を示す図である。図5においては、開閉装置2を平面視した状態を示す。第2の実施形態の開閉装置2において、クランクシャフト70は、例えば、第1のクランクロッド71と、第2のクランクロッド72と、第3のクランクロッド73と、操作機構側カップリング74と、第1のカップリング75と、第2のカップリング76と、緩衝機構側カップリング77と、を備える。
【0063】
クランクシャフト70は、第1の伝達機構18、第2の伝達機構28、及び第3の伝達機構38を動作させて、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33を閉路状態から開路状態に変化させる。第1のクランクロッド71、第2のクランクロッド72、及び第3のクランクロッド73は、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33に対応して設けられている。第1のクランクロッド71、第2のクランクロッド72、及び第3のクランクロッド73は、いずれも一定の太さを有する長尺の部材であり、互いに略同一の長さを有する。
【0064】
第1のクランクロッド71は、第1の容器11を貫通し、第2のクランクロッド72は、第2の容器21を貫通し、第3のクランクロッド73は、第3の容器31を貫通する。第1のクランクロッド71の長手方向中央部には、第1のクランクレバー16が嵌合され、第2のクランクロッド72の長手方向中央部には、第2のクランクレバー26が嵌合され、第3のクランクロッド73の長手方向中央部には、第3のクランクレバー36が嵌合される。
【0065】
第1のクランクロッド71の一端側には、操作機構側カップリング74が取り付けられている。第1のクランクロッド71の他端側と第2のクランクロッド72の一端側は、第1のカップリング75により結合され、第2のクランクロッド72の他端側と第3のクランクロッド73の一端側は第2のカップリング76により結合されている。第3のクランクロッド73の他端側には、緩衝機構側カップリング77が取り付けられている。
【0066】
第3のクランクロッド73の回転軸周りの断面二次モーメントは、第2のクランクロッド72の回転軸周りの断面二次モーメントよりも小さい。第2のクランクロッド72の回転軸周りの断面二次モーメントは、第1のクランクロッド71の回転軸周りの断面二次モーメントよりも小さい。
【0067】
クランクシャフト70のより具体的な構造を説明する。第1のクランクロッド71を回転軸に沿って、X方向に断面係数を算出したとき、その最小値を第1のクランクロッド71の最小断面係数(以下、「第1の最小断面係数」)Iaとする。同様に、第2のクランクロッド72を回転軸に沿って、X方向に断面係数を算出したときの最小値を第2のクランクロッド72の最小断面係数(以下、「第2の最小断面係数」)Ibとし、第3のクランクロッド73を回転軸に沿って、X方向に断面係数を算出したときの最小値を第3のクランクロッド73の最小断面係数(以下、「第3の最小断面係数」)Icとする。
【0068】
開閉装置2において、第1の最小断面係数Ia、第2の最小断面係数Ib、及び第3の最小断面係数Icは、下記(2)式で示す関係にある。第1の最小断面係数Ia、第2の最小断面係数Ib、及び第3の最小断面係数Icは、下記(3)式または下記(4)式で示す関係にあってもよい。
Ia>Ib> Ic ・・・(2)
Ia≧Ib> Ic ・・・(3)
Ia>Ib≧ Ic ・・・(4)
【0069】
操作機構側カップリング74、第1のカップリング75、第2のカップリング76の相互それぞれの太さ(外径)は、接続する2本のロッドのうち、太い方のロッドよりも一回り大きな径とし、操作機構側カップリング74、第1のカップリング75、第2のカップリング76相互の間で異なる太さとされている。この場合、操作機構側カップリング74、第1のカップリング75、第2のカップリング76の太さは、この順で順次細くなる。操作機構側カップリング74、第1のカップリング75、第2のカップリング76の相互それぞれの太さは、同径でもよい。
【0070】
第2の実施形態の開閉装置2において、第1のクランクレバー16は、第1のクランクロッド71の回転に伴い、第1のクランクロッド71の断面係数に基づく慣性モーメントをもって回転する。同様に、第2のクランクレバー26は、第2のクランクロッド72の回転に伴い、第2のクランクロッド72の断面係数に基づく慣性モーメントをもって回転し、第3のクランクレバー36は、第3のクランクロッド73の回転に伴って、第3のクランクロッド73の断面係数に基づく慣性モーメントをもって回転する。
【0071】
ここで、第3のクランクロッド73の回転軸周りの断面二次モーメントは、第2のクランクロッド72の回転軸周りの断面二次モーメントよりも小さく、第2のクランクロッド72の回転軸周りの断面二次モーメントは、第1のクランクロッド71の回転軸周りの断面二次モーメントよりも小さい関係にある。このため、第3のクランクレバー36にかかる慣性モーメントは、第2のクランクレバー26にかかる慣性モーメントより小さく、第2のクランクレバー26にかかる慣性モーメントは、第1のクランクレバー16にかかる慣性モーメントより小さい。したがって、第2のクランクロッド42及び第3のクランクロッド43が回転を始める際の第1のクランクロッド41及び第2のクランクロッド42に対する遅れを少なくすることができる。さらに、操作機構50に近い側の第1のクランクロッド41には、3相分の回転トルクが付与されるが、補助緩衝機構60に近い側の第3のクランクロッド43に接続された第3のクランクレバー36にかかる慣性モーメントが小さいため、第3のクランクロッド43が付与する回転トルクを軽減することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の開閉装置について説明する。第3の実施形態の開閉装置は、第1の実施形態の開閉装置1と比較して、補助緩衝機構60の構成が主に異なるため、この相違点を中心に説明する。
【0073】
図6は、第3の実施形態の開閉装置の補助緩衝機構60の概要を示す図である。第3の実施形態の開閉装置の補助緩衝機構60は、第1の実施形態と同様に、緩衝機構クランクレバー61と、ダンパローラ62と、ダンパ63と、を備える。ダンパ63は、ダンパヘッド64と、ダンパシリンダ65と、ダンパピストン66と、を備える。これらの点は、第1の実施形態と共通である。
【0074】
補助緩衝機構60は、さらに、架台81と、補助緩衝機構支え82と、スペーサ83と、固定ボルト84と、第1ナット85と、第2ナット86と、を備える。架台81は、ダンパシリンダ65の上方に固定的に配置されている。架台81は、クランクシャフト40に対する相対的な位置関係が保たれている。
【0075】
架台81には、補助緩衝機構支え82が吊り下げられている。架台81と補助緩衝機構支え82の間には、スペーサ83が介在されている。補助緩衝機構支え82は、スペーサ83を挟み、固定ボルト84を用いて架台81に固定されている。補助緩衝機構支え82と架台81の間の幅は、介在されるスペーサ83の厚さや枚数などによって調整可能とされている。スペーサ83は、例えば、ダンパローラ62に対するダンパ63の相対的な高さ位置関係を調整するために設けられる。スペーサ83は、位置調整機構の一例である。
【0076】
補助緩衝機構支え82の下部には、ダンパシリンダ65が貫通する通し穴が形成されている。通し穴の前後位置には、第1ナット85及び第2ナット86がそれぞれ固定されている。第1ナット85及び第2ナット86の開口部は、補助緩衝機構支え82の通し穴と同心状に配置されている。
【0077】
ダンパシリンダ65の側面には、第1ナット85及び第2ナット86とかみ合うねじ部67が設けられている。ダンパシリンダ65は、補助緩衝機構支え82に形成された通し穴に貫通され、第1ナット85及び第2ナット86にねじ込まれることにより、ダンパ63は、補助緩衝機構支え82に支持されて固定される。補助緩衝機構支え82、第1ナット85、及び第2ナット86は、ダンパ63を支持する支持部材の一例である。
【0078】
第1ナット85及び第2ナット86にねじ込まれたダンパシリンダ65を回転させると、ねじ部67が第1ナット85及び第2ナット86に沿って移動し、ねじ部67の移動に伴ってダンパシリンダ65が前進または後退する。ねじ部67は、第1ナット85及び第2ナット86に設けられた歯とかみ合い、ダンパローラ62に対するダンパ63の相対的な位置関係を調整するために設けられる。ねじ部67がかみ合う歯は、第1ナット85及び第2ナット86に設けられていてもよい。ねじ部67がかみ合う歯は、例えば、補助緩衝機構支え82の通し穴に設けられていてもよい。ねじ部67は、位置調整機構の一例である。
【0079】
第3の実施形態の開閉装置において、開路動作時に緩衝機構クランクレバー61が回転運動するにつれ、ダンパローラ62がダンパ63のダンパヘッド64へと近づき、やがてダンパローラ62はダンパヘッド64に接触する。ダンパローラ62がダンパヘッド64に接触すると、ダンパシリンダ65内に設けられ、ダンパヘッド64が接続されたダンパピストン66が油中で動くことでエネルギーの散逸が図られる。ダンパシリンダ65は、ねじ部67と第1ナット85及び第2ナット86により強固に締結されることで、制動力の反力は補助緩衝機構支え82を介して架台81によって支えられて受け止められる。
【0080】
第3の実施形態の開閉装置において、補助緩衝機構60は、第1ナット85及び第2ナット86を備え、ダンパシリンダ65の側面にねじ部67が設けられている。このため、ダンパシリンダ65を第1ナット85及び第2ナット86に対して相対的に回転させることにより、ダンパローラ62に対するとダンパ63の位置を容易に調整することができる。この場合、第1ナット85及び第2ナット86は設けられていなくてもよい。
【0081】
さらに、第3の実施形態の開閉装置において、補助緩衝機構60は、架台81と補助緩衝機構支え82との間に介在されたスペーサ83を備えている。スペーサ83の厚みや枚数を変えて、架台81と補助緩衝機構支え82の間の幅を調整することにより、補助緩衝機構支え82に支持されるダンパ63の高さ位置を変えることができる。したがって、スペーサ83の厚み等を調整することにより、ダンパローラ62に対するダンパシリンダ65(ダンパ63)の位置を調整することができる。ダンパローラ62に対するダンパ63の位置を調整することにより、ダンパローラ62と、ダンパヘッド64が接触するタイミングを調整することができる。
【0082】
さらに、ダンパローラ62に対するダンパ63の位置の調整は、厚みの異なるスペーサ83を設けたり、スペーサ83の数を調整したりするのみで実行することができる。したがって、製造や組み立てにより生じる誤差を簡便に調整し、適切な制動位置、制動力を発生させることができる。
【0083】
さらに、ダンパ63におけるダンパシリンダ65が貫通する補助緩衝機構支え82は、第1ナット85及び第2ナット86によって前後より挟み込まれる。このため、ダンパシリンダ65の全体を強固に固定することができる。このため、補助緩衝機構支え82に支持されるダンパ63の位置を安定させるとともに、ダンパローラ62を介してダンパ63に伝達されるクランクシャフト40を制動する際のエネルギーを確実に吸収することができる。
【0084】
(第4の実施形態)
次に、第3の実施形態の開閉装置について説明する。第4の実施形態の開閉装置は、第1の実施形態の開閉装置1と比較して、補助緩衝機構60の構成が主に異なるため、この相違点を中心に説明する。
【0085】
図7は、第4の実施形態の開閉装置の補助緩衝機構60の概要を示す図である。第4の実施形態の開閉装置の補助緩衝機構60は、第1の実施形態と同様に、緩衝機構クランクレバー61と、ダンパローラ62と、ダンパ63と、を備える。ダンパ63は、ダンパヘッド64と、ダンパシリンダ65と、ダンパピストン66と、架台81と、補助緩衝機構支え82と、スペーサ83と、固定ボルト84と、を備える。これらの点は、第3の実施形態と共通である。
【0086】
補助緩衝機構60は、さらに、下スタッド90aと、上スタッド90bと、第1下ナット91aと、第2下ナット91bと、第3下ナット91cと、第1上ナット91dと、第2上ナット91eと、第3上ナット91fと、固定用板92と、下部スペーサ93と、下固定ボルト94aと、上固定ボルト94bと、を備える。
【0087】
補助緩衝機構支え82の下方において、ダンパシリンダ65の前方には、固定用板92が配置されている。固定用板92は、ダンパシリンダ65の下方において下スタッド90aを介し、ダンパシリンダ65の上方において上スタッド90bを介して、補助緩衝機構支え82に接続される。
【0088】
下スタッド90aは、第1下ナット91a及び第2下ナット91bで挟み込まれるように固定されている。下スタッド90aは、さらに固定用板92に差し込まれ、第3下ナット91cで固定されている。上スタッド90bは、第1上ナット91d及び第2上ナット91eで挟み込まれるように固定されている。上スタッド90bは、さらに固定用板92に差し込まれ、第3上ナット91fで固定されている。下スタッド90a及び上スタッド90bは、ナット91a~91fによって固定されていることにより、補助緩衝機構支え82に対する固定用板92のY方向の位置、さらには、ダンパシリンダ65に対する固定用板92のY方向の位置を調整することができる。
【0089】
ダンパシリンダ65と固定用板92の間に、下部スペーサ93が介在されている。ダンパシリンダ65と固定用板92の間の幅は、介在される下部スペーサ93の厚さや枚数などによって調整可能とされている。下部スペーサ93は、例えば、ダンパローラ62に対するダンパ63の相対的な前後方向の位置関係を調整するために設けられる。下部スペーサ93は、位置調整機構の一例である。
【0090】
第4の実施形態の開閉装置において、補助緩衝機構60は、ダンパシリンダ65の前方に配置された固定用板92を備えている。クランクシャフト40に制動力を付加した際に、ダンパシリンダ65内で制動力の反力が発生する。発生した反力は、ダンパシリンダ65の前方に配置された固定用板92に働く。固定用板92は、下スタッド90a及び上スタッド90bによって補助緩衝機構支え82に接続されている。このため、ダンパシリンダ65内で発生した反力は、固定用板92を介して補助緩衝機構支え82に伝達される。したがって、ダンパシリンダ65内で発生した反力を確実に吸収することができる。
【0091】
第4の実施形態の開閉装置において、補助緩衝機構60は、ダンパシリンダ65と固定用板92との間に介在された下部スペーサ93を備えている。下部スペーサ93の厚みを変更したり枚数を変えたりして、ダンパシリンダ65と固定用板92の間の幅を調整することにより、補助緩衝機構支え82に支持されるダンパ63の前後方向の位置を変えることができる。したがって、下部スペーサ93の厚み等を調整することにより、ダンパローラ62に対するダンパ63の位置を調整することができる。ダンパローラ62に対するダンパ63の位置を調整することにより、ダンパローラ62と、ダンパヘッド64が接触するタイミングを調整することができる。
【0092】
さらに、ダンパローラ62に対するダンパ63の位置の調整は、厚みの異なる下部スペーサ93を設けたり、下部スペーサ93の数を調整したりするのみで実行することができる。したがって、製造や組み立てにより生じる誤差を簡便に調整し、適切な制動位置、制動力を発生させることができる。
【0093】
第4の実施形態の開閉装置では、ダンパローラ62に対するダンパ63の位置を調整するために、第3の実施形態で示した第1ナット85、第2ナット86、ダンパシリンダ65の側面におけるねじ部67を設ける代わりに、下部スペーサ93を用いている。このため、補助緩衝機構60を組み立てる際の組み立て性を向上させることができる。
【0094】
上記各実施形態において、補助緩衝機構60において、クランクシャフト40が閉路動作を行う際に、クランクシャフト40に付勢力を付加する復帰ばねが設けられていてもよい。補助緩衝機構60に復帰ばねが設けられ、例えば、復帰ばねの力を十分強くすることで、閉路動作の動き出しのアシストになり、閉路ストロークにおける第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33のばらつきを小さくすることができる。
【0095】
また、上記各実施形態においては、操作機構50における内蔵ばね56が動力源となってクランクシャフト40に動力を付加するが、内蔵ばね56以外の駆動源などが動力源となり、クランクシャフト40に動力を付加してもよい。例えば、操作機構50の駆動源は油圧、リニア駆動、モーター駆動を含む電磁気力を利用したものでもよい。
【0096】
また、上記の各実施形態では、緩衝部材となるダンパ63としてオイルダンパを用いているが、緩衝部材は、オイルダンパではなく、例えば、ガスダンパでもよいし電磁的な機構でもよいし、回転ダンパなどでもよい。また、伝達機構における操作ロッドや絶縁操作ロッドなどの各部品は1つの部品からなることを限定するものではなく、適切に一体化させることで複数の部品からなってもよい。例えば、伝達機構は、3節ではなく4節であってもよい。
【0097】
また、上記の各実施形態においては、第1の可動接点13、第2の可動接点23、及び第3の可動接点33は、凹型形状をなし、第1の対向接点12、第2の対向接点22、及び第3の対向接点33は、凸型をなしている。可動接点及び対向接点の形状は、上記の形状以外にも、閉路時にそれぞれの接点が接触可能な形状でもよい。例えば、可動接点が凸型形状であり、対向接点が凹型形状であってもよく、可動接点及び対向接点がいずれも平面形状であってもよい。
【0098】
また、上記の各実施形態において、クランクシャフト40は、第1のクランクロッド41、第2のクランクロッド42、及び第3のクランクロッド43を第1のカップリング45及び第2のカップリング46で結合しているが、クランクシャフトは、1本、2本、または4本以上のロッドでもよい。クランクシャフトが1本のロッドである場合、例えば、第2の実施形態のように、第1の相10、第2の相20、第3の相30のそれぞれに対応するクランクロッドの断面二次モーメントの大きさを変える場合に、径の異なる柱体が接続された階段状のロッドを用いてもよい。あるいは、クランクシャフトは、操作機構50から遠い位置であるほどクランクシャフトの回転軸周りの断面2次モーメントが小さい傾向にあるロッド、例えば、操作機構50から遠くなるほど径が小さくなるテーパが付されたロッドを用いてもよい。
【0099】
「小さい傾向にある」とは、例えば、一律的に小さくなる態様の他、傾向として小さくなるが、途中の一部では、大きくなる部分はあるものの、全体的に見て小さくなるも態様を含む。「小さい傾向にある」とは、例えば、操作機構50から遠い位置にあるほどクランクシャフトの回転軸周りの断面2次モーメントが徐々に小さくなる態様や、クランクシャフトの一部、特にクランクレバーが取り付けられている位置から離れた位置において、部分的に操作機構50から遠い位置となる点で断面2次モーメントが大きくなる突起のような点があるが、全体的には操作機構50から離れるほど小さくなるクランクシャフトを含む。
【0100】
また、上記の各実施形態では、操作機構50とクランクシャフト40を結合する操作機構側カップリング44を用いているが、操作機構側カップリング44を用いることなく、操作機構50、例えば回転軸51に直接クランクシャフト40を結合するようにしてもよい。同様に、補助緩衝機構60とクランクシャフト40を結合する緩衝機構側カップリング47を用いているが、緩衝機構側カップリング47を用いることなく、補助緩衝機構60、例えば。緩衝機構クランクレバー61に直接クランクシャフト40を結合するようにしてもよい。
【0101】
また、上記の各実施形態では、補助緩衝機構60は、第3の伝達機構38の外側(X方向右側)に配置されているが、操作機構50よりも第3の伝達機構38側に設けられていればどの位置に設けられていてもよい。例えば、補助緩衝機構60は、第2の伝達機構28と第3の伝達機構38の間に配置されていてもよい。また、各実施形態における各要素は、適宜組み合わされてもよい。
【0102】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1の容器に収容された第1の可動接点と、前記第1の可動接点に接続された第1の伝達機構と、少なくとも前記第1の可動接点を収容する第1の容器と、第2の容器に収容された第2の可動接点と、前記第2の可動接点に接続された第2の伝達機構と、少なくとも前記第2の可動接点を収容し、前記第1の容器に並べられた第2の容器と、第3の容器に収容された第3の可動接点と、前記第3の可動接点に接続された第3の伝達機構と、少なくとも前記第3の可動接点を収容し、前記第2の容器に並べられた第3の容器と、前記第1の伝達機構、前記第2の伝達機構、及び前記第3の伝達機構を動作させて、前記第1の可動接点、前記第2の可動接点、及び前記第3の可動接点を閉路状態から開路状態に変化させるクランクシャフトと、前記第1の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトを回転運動させる操作機構と、前記第3の伝達機構側に配置され、前記クランクシャフトの回転運動を緩衝する緩衝機構と、持つことにより、開路動作において、複数の可動接点を開路位置で精度よく停止させることができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
1,2…開閉装置、10…第1の相、11…第1の容器、12…第1の対向接点、13…第1の可動接点、14…第1の操作ロッド、15…第1の絶縁操作ロッド、16…第1のクランクレバー、17…第1のシール部材、18…第1の伝達機構、20…第2の相、21…第2の容器、22…第2の対向接点、23…第2の可動接点、24…第2の操作ロッド、25…第2の絶縁操作ロッド、26…第2のクランクレバー、27…第2のシール部材、28…第2の伝達機構、30…第3の相、31…第3の容器、32…第3の対向接点、33…第3の可動接点、34…第3の操作ロッド、35…第3の絶縁操作ロッド、36…第3のクランクレバー、37…第3のシール部材、38…第3の伝達機構、40,70…クランクシャフト、41,71…第1のクランクロッド、42,72…第2のクランクロッド、43,73…第3のクランクロッド、44,74…操作機構側カップリング、45,75…第1のカップリング、46,76…第2のカップリング、47,77…緩衝機構側カップリング、50…操作機構、56…内蔵ばね、57…緩衝器、60…補助緩衝機構、61…緩衝機構クランクレバー、62…ダンパローラ、63…ダンパ、64…ダンパヘッド、65…ダンパシリンダ、66…ダンパピストン、67…ねじ部、81…架台、82…補助緩衝機構支え、83…スペーサ、84…固定ボルト、85…第1ナット、86…第2ナット、92…固定用板、93…下部スペーサ、G…絶縁媒体、W…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7