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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/02 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
H01Q13/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023013208
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0102870
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592127297
【氏名又は名称】国防科学研究所
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR DEFENSE DEVELOPMENT
【住所又は居所原語表記】160,Bugyseong-daero 488beon-gil,Yuseong-gu,Daejeon,34060,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】パク, ビョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】クォン, クン スプ
(72)【発明者】
【氏名】ホ, ジョン ワン
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110600877(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112886253(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1427148(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0238086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延長する中空型柱状の導波管と、
前記導波管の内周面から突出し、前記第1方向に延長する少なくとも1つのリッジと、
前記第1方向と交差する平面に沿って前記導波管の内周面から突出したアイリス構造体と、を含み、
前記リッジは、前記第1方向に沿って形成された少なくとも1つの陰刻構造を有し、
前記リッジは、前記陰刻構造を有する第1部分および前記第1部分の両側の第2部分を含み、
前記第1部分の前記導波管の放射方向への長さは、前記第2部分それぞれの前記放射方向への長さより小さい、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記リッジは、複数で提供される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1部分の少なくとも一部は、前記放射方向への長さが前記第2部分のうちいずれかに行くにつれて増加する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記陰刻構造を有する前記第1部分は、複数で提供される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記複数の第1部分それぞれの前記導波管の放射方向への長さは、互いに異なる、
請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数の第1部分それぞれの前記第1方向への長さは、互いに異なる、
請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アイリス構造体の前記導波管の放射方向への長さは、前記リッジの前記放射方向への長さよりも小さい、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記アイリス構造体の少なくとも一部は、前記導波管の放射方向への長さが前記第1方向に行くにつれて減少する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記アイリス構造体は、複数で提供される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記複数のアイリス構造体それぞれの前記導波管の放射方向への長さは、互いに異なる、
請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記複数のアイリス構造体それぞれの前記第1方向への長さは、互いに異なる、
請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
第1方向に延長する中空型柱状の導波管と、
前記導波管の内周面から突出し、前記第1方向に延長する少なくとも1つのリッジと、
前記第1方向と交差する平面に沿って前記導波管の内周面から突出したアイリス構造体と、を含み、
前記アイリス構造体の前記導波管の放射方向への長さは、前記リッジの前記導波管の放射方向への長さよりも小さく、
前記アイリス構造体の少なくとも一部分は、前記放射方向への長さが前記第1方向に行くにつれて減少する
ンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置は、無線で特定周波数を有する電磁波の形態として情報を遠くに伝達できる無線通信に必須の構成要素である。特に、軍事衛星のような通信衛星のアンテナ装置は、高利得およびビームステアリングのような機能が要求され、これにより、通信衛星に搭載されるアンテナ装置の配列設計が必須である。また、配列設計アンテナ装置のビームステアリングのためには、アンテナ装置の配列間隔が伝達する電磁波の波長の半分以下になることが有利であり、これにより、アンテナ装置の小型化が要求される。
【0003】
一方、アンテナ装置の導波管内にリッジ構造を適用する場合、小型化には適するが、小型化によるインピーダンス不整合問題が発生する。インピーダンス不整合問題は、定在波比(VSWR)および反射損失(return loss)のうち少なくとも1つに関連する電気的性能問題を発生させるので、アンテナ装置の動作に否定的な影響を及ぼす。これによって、アンテナ装置の導波管内にリッジ構造を適用しつつ、インピーダンス不整合問題を解決するための研究が活発に進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、インピーダンス整合のための細部構造を含むアンテナ装置を提供することを目的とする。
【0005】
本開示によって達成しようとする技術的課題は、前記の技術的課題に限定されず、以下の実施形態からさらに他の技術的課題が類推され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示される一実施形態に係るアンテナ装置は、第1方向に延長する中空型柱状の導波管および前記導波管の内周面から突出し、前記第1方向に延長する少なくとも1つのリッジを含み、前記リッジは、前記第1方向に沿って形成された少なくとも1つの陰刻構造を有し得る。
【0007】
開示される他の一実施形態に係るアンテナ装置は、第1方向に延長する中空型柱状の導波管、前記導波管の内周面から突出し、前記第1方向に延長する少なくとも1つのリッジ、および第1方向と交差する平面に沿って前記導波管の内周面から突出したアイリス構造体を含むことができる。
【0008】
その他の実施形態の具体的な事項は、詳細な説明および図面に含まれている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、リッジと共に適用された少なくとも1つのインピーダンス整合構造体を通じて、インピーダンス不整合問題を解決することができ、これによって、小型化された配列設計のアンテナ装置を提供することができる。
【0010】
また、本開示によると、3Dプリンティング工法のうちの1つである積層加工(additive manufacturing)方法を用いて、リッジおよびインピーダンス整合構造体を含むアンテナ装置を容易に製造することができる。
【0011】
発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、請求範囲の記載から当該技術分野の通常の技術者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係るアンテナ装置の導波管の多様な形態を説明するための概念図である。
図2】本開示の実施形態に係るアンテナ装置のリッジの長さに係る遮断周波数の変化を説明するためのグラフである。
図3a】本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。
図3b】本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。
図4a】本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。
図4b】本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。
図5a】本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。
図5b】本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。
図6a】本開示の実施形態に係るアンテナ装置の周波数に係る反射損失の変化を説明するためのグラフである。
図6b】本開示の実施形態に係るアンテナ装置の周波数に係る反射損失の変化を説明するためのグラフである。
図7a】本開示の実施形態に係るアンテナ装置の導波管の断面を説明するための斜視図である。
図7b】本開示の実施形態に係るアンテナ装置の導波管の断面を説明するための斜視図である。
図7c】本開示の実施形態に係るアンテナ装置の導波管の断面を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態において使用される用語は、本開示における機能を考慮しつつ、可能な限り現在広く使用される一般的な用語を選択したが、これは当該技術分野の通常の技術者の意図または判例、新たな技術の出現などによって変わり得る。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する説明の部分において詳細にその意味を記載するであろう。従って、本開示において使用される用語は、単純な用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本開示の全般にわたる内容に基づいて定義されなければならない。
【0014】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特別に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0015】
明細書全体において記載された「a、b、およびcのうち少なくとも1つ」の表現は、「a単独」、「b単独」、「c単独」、「aおよびb」、「aおよびc」、「bおよびc」、または「a、b、およびcすべて」を包括することができる。
【0016】
実施形態を説明することにおいて、本開示が属する技術分野においてよく知られており、本開示と直接的に関連のない技術内容に関しては説明を省略する。これは、不必要な説明を省略することにより、本開示の要旨を曖昧にせず、より明確に伝達するためである。
【0017】
同様の理由により、添付図面において一部の構成要素は、誇張または省略されるか、概略的に図示された。また、各構成要素の大きさは、実際の大きさを全的に反映するものではない。各図面において、同一または対応する構成要素には同一の参照番号を与えた。
【0018】
本開示の利点および特徴、そして、それらを達成する方法は、添付される図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すれば明確になるであろう。しかし、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態として具現され得、単に本実施形態は、本開示が完全なものとし、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示は請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0019】
以下において、本開示の実施形態を添付した図面を参照して、詳細に説明する。
【0020】
図1は、本開示の実施形態に係るアンテナ装置の導波管の多様な形態を説明するための概念図である。
【0021】
図1を参照すると、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、第1方向に延長する中空型柱状の導波管110を含むことができ、導波管110は多様な形態を有し得る。このとき、図1は、導波管110を第1方向と直交する平面に切った断面を図示する。例えば、導波管110は、中空型多角柱または中空型円柱状を有し得る。
【0022】
実施形態によると、導波管110は複数で提供され得る。このとき、複数の導波管110は、一定の間隔を有するアレイ形態で配列され得る(即ち、配列設計され得る)。アレイ形態で配列された複数の導波管110との間の間隔は、例えば、アンテナ装置が伝達する電磁波の波長の半分以下であり得る。
【0023】
また、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、導波管110の内周面111(または内壁)から突出した少なくとも1つのリッジ120をさらに含むことができる。リッジ120は、導波管110の内周面111に沿って第1方向に延長され得る。リッジ120は、図1に係る断面的観点において、長方形状の断面を有し得る。
【0024】
実施形態によると、リッジ120は複数で提供され得る。このとき、リッジ120それぞれの放射方向(即ち、導波管110の内周面111から導波管110の中心軸に向かう方向)への長さは、実質的に同一であり得る。例えば、アンテナ装置が2つのリッジ120を含む場合、2つのリッジ120は、互いに向き合うように提供され得る。また、例えば、アンテナ装置が3つのリッジ120を含む場合、3つのリッジ120は、互いに約120度の角度をなすように提供され得る。また、例えば、アンテナ装置が4つのリッジ120を含む場合、4つのリッジ120は、互いに約90度をなすように提供され得る。このとき、リッジ120それぞれは、リッジ120のうち他の1つと向き合い得る。
【0025】
実施形態によると、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、導波管110の一端部から第1方向に延長し、第1方向に行くにつれて半径が増加する(即ち、コーン(corn)形状を有する)ホーン(horn)部分をさらに含むことができる。即ち、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、リッジホーンアンテナ(ridged horn antenna)であり得る。
【0026】
図2は、本開示の実施形態に係るアンテナ装置のリッジの長さに係る遮断周波数の変化を説明するためのグラフである。
【0027】
このとき、横軸は、アンテナ装置の導波管の半径に対するリッジの放射方向への長さの比率(即ち、正規化されたリッジの長さ(normalized ridge length))を意味し、縦軸は、リッジのないアンテナ装置の遮断周波数に対するリッジを含むアンテナ装置の基本モード(fundamental mode)の遮断周波数の比率(即ち、正規化された遮断周波数(normalized cut-off frequency))を意味する。
【0028】
図2は、4つのリッジおよび中空型円柱状の導波管を含むアンテナ装置に対して測定されたものである。このとき、リッジそれぞれの導波管の円周方向(即ち、第1方向と交差する平面上において導波管の外周面または内周面に沿って回転する方向)への長さは、導波管の半径の約0.1倍であり得る。
【0029】
図2を参照すると、リッジの放射方向への長さが長くなるほど、遮断周波数が小さくなり得る。例えば、正規化されたリッジの長さが約0.7ないし約0.8であるとき(即ち、リッジの放射方向への長さが導波管の半径の約0.7倍ないし約0.8倍であるとき)、正規化された遮断周波数は、約0.5ないし0.7であり得る。従って、リッジの放射方向への長さが長くなるほど、アンテナ装置が容易に小型化され得る。これによって、小型化されたアンテナ装置は、ビームステアリング時に所望しないグレーティングローブ(grating lobe)を容易に抑制することができる。
【0030】
図3aおよび図3bは、本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。
【0031】
図3aおよび図3bを参照すると、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、第1方向D1に延長する中空型柱状の導波管110、導波管110の内周面111から導波管110の放射方向に突出し、第1方向D1に延長するリッジ120を含むことができる。このとき、リッジ120は、第1方向D1に沿って形成された少なくとも1つの陰刻構造を含み得る。陰刻構造は、リッジ120の一部分に導波管110の中心軸に向かう方向の面が凹んで陥入した構造であり得る。実施形態によると、陰刻構造は凹状の溝、リッジ120のリセス部、およびリッジ120の凹部のいずれかで称され得る。
【0032】
リッジ120は、陰刻構造を有する第1部分121および第1部分121の一側の第2部分122を含むことができる。第1部分121の放射方向への長さは、第2部分122の放射方向への長さよりも小さくなり得る。例えば、第2部分122の放射方向への長さは、導波管110の半径の約0.6倍ないし約0.9倍であり得、第1部分121の放射方向への長さは、第2部分122の放射方向への長さよりも導波管110の半径の約0.05倍ないし約0.3倍程度小さくなり得る。
【0033】
実施形態によると、陰刻構造を有する第1部分121は複数で提供され得る。第1部分121は、第1方向D1に互いに離隔され得る。第1部分121の放射方向への長さは、互いに異なり得る。実施形態によると、第1部分121の放射方向への長さは、第1方向D1に行くにつれて増加し得る。第1部分121それぞれの放射方向への長さは、例えば、導波管110の半径の約0.3倍ないし約0.85倍であり得る。第1部分121の第1方向D1への長さは、互いに異なり得る。実施形態によると、第1部分121の第1方向D1への長さは、第1方向D1に行くにつれて減少し得る。第1部分121それぞれの第1方向D1への長さは、例えば、導波管110の半径の約1.1倍ないし約1.8倍であり得る。
【0034】
本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、例えば、3Dプリンティング工法を用いて製造され得る。より具体的には、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、積層加工(additive manufacturing)方法を用いて製造され得る。このとき、積層加工の方向は、例えば、第1方向D1の反対方向であり得る。これにより、図3bを参照すると、リッジ120の第1部分121それぞれの導波管110の中心軸に向かう方向の面の少なくとも一部分は、曲面形状を有し得る。換言すると、リッジ120の第1部分121それぞれの少なくとも一部分は、放射方向への長さが第2部分122に近づくにつれて増加する(即ち、第1方向D1に行くにつれて減少する)部分であり得る。放射方向への長さが変化するリッジ120の一部分は、積層加工過程において導波管110内部の構造を支持することができ、これにより、本開示の実施形態に係るアンテナ装置の製造が容易になり得る。
【0035】
図4aおよび図4bは、本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。以下において、説明の便宜のために、図3aおよび図3bを参照して説明したものと実質的に同一の事項に関する説明を省略し、相違点に関して詳細に説明する。
【0036】
図4aおよび図4bを参照すると、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、第1方向D1に延長する中空型柱状の導波管110、導波管110の内周面111から導波管110の放射方向に突出し、第1方向D1に延長するリッジ120、および第1方向D1と交差する平面に沿って導波管110の内周面111から突出したアイリス(iris)構造体130a、130bを含むことができる。
【0037】
アイリス構造体130a、130bそれぞれは、例えば、導波管110の内周面111に沿って延長するリング形状を有し得る。アイリス構造体130a、130bは、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bを含むことができる。第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bは、第1方向D1に互いに離隔され得る。
【0038】
第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bそれぞれの放射方向への長さは、リッジ120の放射方向への長さよりも小さくなり得る。例えば、リッジ120の放射方向への長さは、導波管110の半径の約0.6倍ないし約0.9倍であり得、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bそれぞれの放射方向への長さは、導波管110の半径の約0.2倍ないし約0.6倍であり得る。
【0039】
第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bの放射方向への長さは、互いに異なり得る。例えば、第1アイリス構造体130aの放射方向への長さは、第2アイリス構造体130bの放射方向への長さよりも大きくなり得る。実施形態によると、アイリス構造体130a、130bの放射方向への長さは、第1方向D1に行くにつれて減少し得る。また、実施形態によると、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bの第1方向D1への長さは、互いに異なり得る。
【0040】
本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、積層加工方法を用いて製造され得る。このとき、積層加工の方向は、例えば、第1方向D1の反対方向であり得る。これにより、図4bを参照すると、アイリス構造体130a、130bそれぞれの少なくとも一部分は、放射方向への長さが第1方向D1に行くにつれて減少し得る。放射方向への長さが変化するアイリス構造体130a、130bの一部分は、積層加工過程において導波管110内部の構造を支持することができ、これにより、本開示の実施形態に係るアンテナ装置の製造が容易になり得る。
【0041】
図5aおよび図5bは、本開示の実施形態に係るアンテナ装置を説明するための断面斜視図である。以下において、説明の便宜のために、図3a、図3b、図4a、および図4bを参照して説明したものと実質的に同一の事項に関する説明を省略し、相違点に関して詳細に説明する。
【0042】
図5aおよび図5bを参照すると、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、第1方向D1に延長する中空型柱状の導波管110、導波管110の内周面111から導波管110の放射方向に突出し、第1方向D1に延長するリッジ120、および第1方向D1と交差する平面に沿って導波管110の内周面111から突出したアイリス構造体130a、130bを含むことができる。このとき、リッジ120は、第1方向D1に沿って形成された少なくとも1つの陰刻構造を有し得る。陰刻構造は、リッジ120の一部分に導波管110の中心軸に向かう方向の面が凹んで陥入した構造であり得る。
【0043】
リッジ120は、陰刻構造を有する第1部分121および第1部分121の一側の第2部分122を含むことができる。アイリス構造体130a、130bは、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bを含むことができる。第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bは、第1方向D1に互いに離隔され得る。第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bそれぞれは、リッジ120の第2部分122の側面から導波管110の円周方向に延長され得る。リッジ120の第1部分121は、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bの間に提供され得、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bそれぞれと第1方向D1に離隔され得る。
【0044】
リッジ120の第1部分121の放射方向への長さは、リッジ120の第2部分122の放射方向への長さよりも小さくなり得る。一例として、リッジ120の第1部分121の放射方向への長さは、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bそれぞれの放射方向への長さよりも小さくなり得る。他の一形態として、リッジ120の第1部分121の放射方向への長さは、第1アイリス構造体130aの放射方向への長さよりも小さく、第2アイリス構造体130bの放射方向への長さよりも大きくなり得る。他の一例として、リッジ120の第1部分121の放射方向への長さは、第1アイリス構造体130aおよび第2アイリス構造体130bそれぞれの放射方向への長さよりも大きくなり得る。
【0045】
本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、積層加工方法を用いて製造され得る。このとき、積層加工の方向は、例えば、第1方向D1の反対方向であり得る。これにより、図5bを参照すると、リッジ120の第1部分121の導波管110の中心軸に向かう方向の面の少なくとも一部分は、曲面形状を有し得る。換言すると、リッジ120の第1部分121の少なくとも一部分は、放射方向への長さが第2部分122に近づくにつれて増加する(即ち、第1方向D1に行くにつれて減少する)部分であり得る。また、アイリス構造体130a、130bそれぞれの少なくとも一部分は、放射方向への長さが第1方向D1に行くにつれて減少し得る。
【0046】
図6aおよび図6bは、本開示の実施形態に係るアンテナ装置の周波数に係る反射損失の変化を説明するためのグラフである。
【0047】
このとき、横軸は、サンプリング周波数(sampling frequency)に対する測定周波数の比率(即ち、正規化周波数(normalized frequency))を意味し、縦軸は、反射損失(return loss)を意味する。反射損失の単位はdBである。
【0048】
図6aは、図3aおよび図3bを参照して説明した陰刻構造の個数および図4aおよび図4bを参照して説明したアイリス構造体の個数の和が2つである場合(即ち、2段インピーダンス整合構造体)に対して測定されたものであり、図6bは、図5aおよび図5bを参照して説明したように、陰刻構造の個数およびアイリス構造体の個数の和が3つである場合(即ち、3段インピーダンス整合構造体)に対して測定されたものである。
【0049】
図6aおよび図6bを参照すると、2段インピーダンス整合構造体の場合、グラフのピークが2つであり、3段インピーダンス整合構造体の場合、グラフのピークが3つである。これにより、約15dBの反射損失に基づいて、3段インピーダンス整合構造体の場合(約20%)が2段インピーダンス整合構造体の場合(約8%)よりも帯域幅が大きくなり得る。換言すると、インピーダンス整合構造体の個数(即ち、段数)が増加するほど、本開示の実施形態に係るアンテナ装置の反射損失が減り、これによって帯域幅が大きくなり得る。
【0050】
これにより、本開示の実施形態に係るアンテナ装置は、高出力のパワー送出が可能であることは無論のこと、インピーダンス整合構造体の個数増加による広帯域特性を有し得るので、軍事衛星の通信用配列アンテナ装置またはレーダー/電子戦システムのアンテナ装置に使用され得る。本開示の実施形態に係るアンテナ装置を含む軍事衛星は、周波数帯域拡大および高次変調方式の適用を通じて伝送容量が増加され得、これにより、劣悪な電波環境においても優れた通信品質を維持することができ、監視偵察、指揮統制、精密打撃システム間の情報交換および戦術機動間の指揮統制を保障することができる。
【0051】
図7a、図7b、および図7cは、本開示の実施形態に係るアンテナ装置の導波管の断面を説明するための斜視図である。以下において、説明の便宜のために、図3a、図3b、図4a、図4b、図5a、および図5bを参照して説明したものと実質的に同一の事項に関する説明を省略し、相違点に関して詳細に説明する。
【0052】
図7a、図7b、および図7cを参照すると、第1方向に延長する導波管110および導波管110の内周面111から導波管110の放射方向に突出した4つのリッジ120を含むアンテナ装置が図示される。このとき、リッジ120それぞれは、第1方向D1に沿って形成された少なくとも1つの陰刻構造を有し得る。換言すると、リッジ120それぞれは、陰刻構造を有する第1部分121および第1部分121の一側の第2部分122を含むことができる。このとき、リッジ120それぞれの陰刻構造は、導波管110の中心軸に基づいて対称的に提供され得る。換言すると、リッジ120のうちいずれかの第1部分121は、リッジ120のうちいずれかに向い合うリッジ120のうち、他の1つの第1部分121と互いに向き合い得る。アンテナ装置は、第1方向D1と交差する平面に沿って導波管110の内周面111から突出したアイリス構造体130をさらに含むことができる。陰刻構造およびアイリス構造体130それぞれは、回路的にインダクタまたはキャパシタの役割をすることができ、これにより、アンテナ装置の小型化によるインピーダンス不整合問題が解決され得る。
【0053】
本実施形態で説明する特定の例示は、いかなる方法においても技術的範囲を限定するものではない。明細書の簡潔さのために、アンテナ関連構成の他の機能的な側面の記載は省略され得る。また、図面に図示された構成要素間の線の連結または連結部材は、機能的な連結および/または物理的または回路的連結を例示的に示したものとして、実際の装置においては代替可能であるか、追加の多様な機能的な連結、物理的な連結、または回路連結として示され得る。
【0054】
本明細書(特に、特許請求の範囲)において、「前記」の用語およびこれと類似した指示用語の使用は、単数および複数すべてに該当するものであり得る。また、範囲(range)を記載した場合、前記範囲に属する個別的な値を含むものとして(これに反する記載がなければ)、詳細な説明に前記範囲を構成する各個別的な値を記載したものと同様である。最後に、方法を構成する段階に関して、明白に手順を記載するか反する記載がなければ、前記段階は、適当な順序で行われ得る。必ずしも、前記段階の記載順序に限定されるものではない。すべての形態または例示的な用語(例えば、など)の使用は、単に技術的思想を詳細に説明するためのものであって、特許請求の範囲によって限定されない以上、前記形態または例示的な用語によって範囲が限定されるものではない。また、当該技術分野の通常の技術者は、多様な修正、組み合わせ、および変更が付加された特許請求の範囲またはその均等物の範疇内から、設計条件およびファクターによって構成され得ることが分かる。
【要約】
【課題】本開示は、インピーダンス整合のための細部構造を含むアンテナ装置を提供する。
【解決手段】本開示によると、第1方向に延長する中空型柱状の導波管および前記導波管の内周面から突出し、前記第1方向に延長する少なくとも1つのリッジを含み、前記リッジは、前記第1方向に沿って形成された少なくとも1つの陰刻構造を有するアンテナ装置、および前記導波管、前記リッジ、および前記第1方向と交差する平面に沿って前記導波管の内周面から突出したアイリス構造体を含むアンテナ装置が提供される。
【選択図】図3
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c