(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】粘着シートおよび粘着シートの利用方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231017BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20231017BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231017BHJP
B42D 15/00 20060101ALI20231017BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20231017BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/20
C09J201/00
B42D15/00 341B
G09F3/10 J
G09F3/00 D
(21)【出願番号】P 2020031947
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山崎 憲太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸哉
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-316256(JP,A)
【文献】特開2005-313535(JP,A)
【文献】特開2005-313534(JP,A)
【文献】特開平5-98240(JP,A)
【文献】特開2019-70102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0330549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 7/20
C09J 201/00
B42D 15/00
G09F 3/10
G09F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成された粘着剤層とを備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、前記粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有し、
前記粘着シートを被着体に貼着させた後に、当該被着体から剥離した際に、前記粘着剤組成物のうち前記粘着剤の硬化度が低い部分を前記被着体上に選択的に残存させることにより、前記被着体上に第1の情報を担持させるとともに、前記被着体から剥離された前記粘着シートに前記第1の情報に対応する第2の情報を担持させるように構成されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記第1の情報および前記第2の情報は、1次元コードまたは2次元コードである請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記第1の情報および前記第2の情報は、工程管理および物流管理のうちの少なくとも一方に用いるものである請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
基材と、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成され、前記粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有する粘着剤層とを備える粘着シートを被着体に貼着する貼着工程と、
前記被着体から前記粘着シートを剥離し、前記粘着剤組成物のうち前記粘着剤の硬化度が低い部分を前記被着体上に選択的に残存させることにより、前記被着体上に第1の情報を担持させるとともに、前記被着体から剥離された前記粘着シートに前記第1の情報に対応する第2の情報を担持させる剥離工程とを有することを特徴とする粘着シートの利用方法。
【請求項5】
前記第1の情報および前記第2の情報は、1次元コードまたは2次元コードである請求項4に記載の粘着シートの利用方法。
【請求項6】
前記第1の情報および前記第2の情報は、工程管理および物流管理のうちの少なくとも一方に用いるものである請求項4または5に記載の粘着シートの利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよび粘着シートの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、宅配便等の物流管理システムでは、配送先等の配送情報が記載された送り状、あるいは、配送情報を表すバーコードや文字を印字したラベルを、ダンボールやプラスチック製コンテナ等の輸送用容器に貼付することにより、物流の管理を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、工場内の生産ラインにおいて、資材の搬入作業の他、生産ラインを構成する各種設備の搬入作業等、多岐にわたる作業が計画的に組み込まれた作業工程をスケジュール管理する必要がある。このような工程管理においては、生産対象品それ自体、または、トレイやコンテナ等の搬送用容器にラベルを貼付し、ラベルに登録された識別情報と工程別チェック項目との対応関係を工程ごとに順次登録し、作業の進行状況を管理している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、物流過程・製造過程において、何らかの理由によりラベルが容器等から剥がれ落ちる可能性がある。このような剥がれが発生すると、配送情報・工程情報の読み取りが困難となり、物流管理や工程管理が煩雑になるという問題がある。最悪の場合には、荷物の配送において、配送先の判読が不能になり、配送不能になる可能性がある。
【0005】
このように、物流管理や工程管理等において用いられるラベルにおいて、ラベルが剥離された場合であっても、被着体側にラベルと同様の情報を担時可能な技術が求められていたが、大量に流通する汎用品で実現することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-212959号公報
【文献】特開2006-072601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、簡易な構成で、複数の部材に、対応するパターンを容易に形成することができ、これらの部材に形成された前記パターンを情報として用いることが可能な粘着シートを提供すること、当該粘着シートの利用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(6)に記載の本発明により達成される。
(1) 基材と、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成された粘着剤層とを備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、前記粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有し、
前記粘着シートを被着体に貼着させた後に、当該被着体から剥離した際に、前記粘着剤組成物のうち前記粘着剤の硬化度が低い部分を前記被着体上に選択的に残存させることにより、前記被着体上に第1の情報を担持させるとともに、前記被着体から剥離された前記粘着シートに前記第1の情報に対応する第2の情報を担持させるように構成されていることを特徴とする粘着シート。
【0009】
(2) 前記第1の情報および前記第2の情報は、1次元コードまたは2次元コードである上記(1)に記載の粘着シート。
【0010】
(3) 前記第1の情報および前記第2の情報は、工程管理および物流管理のうちの少なくとも一方に用いるものである上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
【0011】
(4) 基材と、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成され、前記粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有する粘着剤層とを備える粘着シートを被着体に貼着する貼着工程と、
前記被着体から前記粘着シートを剥離し、前記粘着剤組成物のうち前記粘着剤の硬化度が低い部分を前記被着体上に選択的に残存させることにより、前記被着体上に第1の情報を担持させるとともに、前記被着体から剥離された前記粘着シートに前記第1の情報に対応する第2の情報を担持させる剥離工程とを有することを特徴とする粘着シートの利用方法。
【0012】
(5) 前記第1の情報および前記第2の情報は、1次元コードまたは2次元コードである上記(4)に記載の粘着シートの利用方法。
【0013】
(6) 前記第1の情報および前記第2の情報は、工程管理および物流管理のうちの少なくとも一方に用いるものである上記(4)または(5)に記載の粘着シートの利用方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で、複数の部材に、対応するパターンを容易に形成することができ、これらの部材に形成された前記パターンを情報として用いることが可能な粘着シートを提供すること、当該粘着シートの利用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【
図2】粘着シートの製造方法の好適な実施形態(第1の方法)を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】粘着シートの製造方法の好適な実施形態(第1の方法)を示す模式的な縦断面図である。
【
図4】粘着シートの製造方法の好適な実施形態(第1の方法)を示す模式的な縦断面図である。
【
図5】粘着シートの製造方法の他の好適な実施形態(第2の方法)を示す模式的な縦断面図である。
【
図6】粘着シートの製造方法の他の好適な実施形態(第2の方法)を示す模式的な縦断面図である。
【
図7】粘着シートの製造方法の他の好適な実施形態(第2の方法)を示す模式的な縦断面図である。
【
図8】粘着シートを被着体に貼着した状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
【
図9】
図8に示す粘着シートを被着体から剥離しようとしている状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
【
図10】
図8に示す粘着シートを被着体から剥離した状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
【
図11】被着体に残存した粘着剤組成物を着色する状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図12】被着体から剥離された粘着シートを着色する状態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[粘着シート]
まず、本発明の粘着シートについて説明する。
図1は、本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0017】
粘着シート1は、基材10と、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成された粘着剤層20とを備えている。粘着剤層20は、粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有し、粘着シート1を被着体100に貼着させた後に、被着体100から剥離した際に、粘着剤組成物のうち粘着剤の硬化度が低い部分を被着体100上に選択的に残存させることができるように構成されている。
【0018】
このように、粘着剤組成物のうち粘着剤の硬化度が比較的低い部分が選択的に被着体100上に残存すること(言い換えると、糊残り23を生じること)により、被着体100に所定のパターン(第1のパターン)が形成される。その一方で、被着体100上に粘着剤組成物が残存すること、言い換えると、粘着シート1から粘着剤組成物の一部が被着体100に移行することで、被着体100から剥離した粘着シート1には、被着体100に形成されたパターン(第1のパターン)に対応するパターン(第2のパターン)が形成される。第1のパターンと第2のパターンとは、互いに補完する関係であるということができ、反転したパターンであるとも言うことができる。
【0019】
そして、第1のパターンが形成された被着体100は、当該第1のパターンにより、第1の情報が担持されたものとなり、第2のパターンが形成された粘着シート1は、当該第2のパターンにより、第2の情報が担持されたものとなる。
【0020】
これにより、簡易な構成で、複数の部材(すなわち、粘着シート1および被着体100)に、対応するパターンを容易に形成することができ、これらの部材に形成された前記パターンを情報として用いることが可能な粘着シート1を提供することができる。
【0021】
その結果、例えば、対応する情報である第1の情報および第2の情報を用いて、前記複数の部材の管理、被着体100の工程管理、物流管理等を好適に行うことができる。
【0022】
粘着シート1において、基材10は、後述するような基材本体11と印刷層12とを有するものであってもよいが、
図1では、これらの図示は省略している(
図8~
図12についても同様)。
【0023】
第1の情報および第2の情報として表される内容としては、特に限定されず、例えば、種々の文字、記号、符号、点、線、図形、もしくはそれらの2種以上の組合せを含むものであり、任意の内容にすることができる。
【0024】
第1の情報および第2の情報は、1次元コードまたは2次元コードであるのが好ましい。
【0025】
これにより、第1の情報および第2の情報の、面積あたりの情報密度を高くすることができる。
【0026】
1次元コードは、横方向にしか情報を持たない表示方式のコードであり、縞模様状の線の太さによって数値や文字を表すバーコードが挙げられる。
【0027】
2次元コードは、水平方向と垂直方向に情報を持つ表示方式のコードであり、小さな正方形を上下左右に配列させたマトリックス式(マトリックスコード)と、1次元バーコードを上下に複数重ねたスタック式(スタックコード)がある。マトリックス式の2次元コードとしては、例えば、QR(Quick Response)コード(登録商標)、SP(Super)コード、CP(Computer Purpose)コードが挙げられる。また、スタック式の2次元コードとしては、例えば、PDF(Portable Data File)417が挙げられる。
【0028】
粘着シート1は、粘着剤層20において、粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有するものであれば、例えば、粘着剤層20(粘着剤組成物)の材料、および、パターンの形成方法(粘着剤の硬化度が異なる部位を形成する方法)等については、特に限定されない。
【0029】
本実施形態の粘着シート1では、粘着剤層20において、粘着剤の硬化度が互いに異なる部位として、粘着剤の硬化度が比較的高い部分である硬化部分21、および、粘着剤の硬化度が比較的低い部分である非硬化部分22が所定のパターンで配置されており、これにより、所定のパターンが形成されている。
【0030】
(基材)
基材10は、粘着剤層20を支持する支持体となる。
【0031】
基材10の構成材料は、特に限定されないが、例えば、紙、プラスチック、金属等を用いることができる。
【0032】
また、基材10の構成材料は、例えば、粘着シート1の製造方法に応じて選択することもできる。より具体的には、例えば、後に詳述するような方法を用いて粘着シート1を製造する場合、基材10に要求される紫外線C波(UVC)の透過性に応じて、基材10の構成材料を選択することができる。
【0033】
また、基材10は単層構造であってもよいし、複数の層が積層されてなる多層構造であってもよい。また、基材10の組成は厚さ方向に一定であってもよいし、徐々に変化する傾斜構造であってもよい。
【0034】
また、基材10は、例えば、無色透明であってもよいし、着色されたものであってもよい。
【0035】
基材10が着色されたものであると、例えば、基材10に印刷層を設けた場合に、被着体100の条件によらず、当該印刷層の視認性・識別性を向上させることができる。
【0036】
また、基材10が着色されていることにより、第1のパターンの視認性・識別性を向上させることができるだけでなく、粘着シート1を被着体100から剥離した際の、粘着剤層20の硬化部分21と非硬化部分22とのコントラストの差をより大きくすることができ、第2のパターンの視認性・識別性も向上させることができる。
【0037】
特に、第1のパターン、第2のパターンが、バーコード、QRコード(登録商標)のような細かいパターンである場合であっても、読み取り精度をより好適に向上させることができる。
【0038】
基材10の厚さは、特に制限されないが、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、30μm以上200μm以下であるのがより好ましい。
【0039】
基材10には、例えば、図示しない印刷層が設けられていてもよい。
基材10に形成される印刷層のパターンは、特に限定されず、例えば、種々の文字、記号、符号、点、線、図形、もしくはそれらの2種以上の組合せを含むものであり、任意の内容にすることができる。また、例えば、複数個の粘着シート1について、同一のパターンの印刷層を設けてもよいし、異なるパターンの印刷層を設けてもよい。
【0040】
(粘着剤層)
粘着剤層20は、粘着シート1を被着体100に貼着する際に、被着体100に接触、接合する部位である。
【0041】
粘着剤層20は、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成される。
そして、粘着剤層20には、粘着剤の硬化度が互いに異なる部位、具体的には、硬化部分21および非硬化部分22が所定のパターンで配置されている。これにより、第1のパターンおよび第2のパターンの形成が可能になっている。
【0042】
粘着剤層20において、硬化部分21と非硬化部分22とを所定のパターンで配置する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱を付与することにより硬化反応し得る熱硬化型粘着剤組成物を用いて粘着剤組成物層を形成し、当該粘着剤組成物層を所定のパターンで加熱する方法、電磁波を照射することにより硬化反応し得る電磁波硬化型粘着剤組成物を用いて粘着剤組成物層を形成し、当該粘着剤組成物層に電磁波を所定のパターンで照射する方法が挙げられる。
【0043】
電磁波としても、粘着剤組成物に硬化反応(例えば、架橋反応)を引き起こさせることができるものであれば特に限定されるものではなく、紫外線、レーザー等が挙げられる。
【0044】
また、粘着剤組成物層への電磁波の照射方法も特に限定されるものではなく、電磁波をビーム状にして粘着剤組成物層に照射し、該電磁波ビームを所定のパターンで走査させてもよいし、所定のパターンで遮蔽層(印刷層)が形成されたマスクを用い、該マスクの空隙部分を通じて粘着剤組成物層に電磁波を照射してもよい。
【0045】
中でも、粘着剤層20の形成に用いる粘着剤組成物としては、紫外線の照射により硬化反応(架橋反応)し得る紫外線硬化型粘着剤組成物が好ましく、紫外線C波(UVC)の照射により硬化反応(架橋反応)し得る紫外線C波硬化型粘着剤組成物がより好ましい。
【0046】
以下の説明では、粘着剤層20が、紫外線C波の照射により硬化反応(架橋反応)し得る紫外線C波硬化型粘着剤組成物を用いて形成されたものである場合について中心的に説明する。
【0047】
本明細書において、紫外線C波とは、200nm以上280nm未満の波長領域の紫外線である。紫外線C波は、太陽光線に含まれているが、オゾン層により吸収されるため、地表に到達する太陽光線には、実質的に含まれていない。
【0048】
具体的には後述するが、本実施形態では、粘着剤層20の硬化に紫外線C波を用いることで、粘着剤層20に、硬化部分(架橋部分)21と非硬化部分(非架橋部分)22とによるパターンを好適に形成することができる。また、紫外線C波は、波長が短くエネルギーが高いため、粘着剤層20の硬化(硬化部分21の形成)をより効率よく短時間で行うことができる。
【0049】
また、紫外線C波は、地上での太陽光線には実質的に含まれていないため、積層体50や粘着シート1の保存時や粘着シート1の使用時等において、粘着剤層20の特に非硬化部分22(非架橋部分)が、意図せず硬化(架橋)反応してしまうことを効果的に防止することができる。
【0050】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物としては、例えば、紫外線C波の照射による架橋反応に寄与する紫外線C波反応性基を備えたポリマーを含むものを用いることができる。
【0051】
また、紫外線C波硬化型粘着剤組成物としては、例えば、粘着性を呈するポリマーに加えて、紫外線C波の照射による架橋反応に寄与する紫外線C波反応性基を備えた低分子化合物を含むものを用いることができる。
【0052】
紫外線C波反応性基は、紫外線C波の照射によって励起されて硬化反応(架橋反応)の引き金となるラジカルを発生させる。
【0053】
紫外線C波反応性基としては、例えば、ベンゾフェノン構造を有する官能基、ベンジル構造を有する官能基、o-ベンゾイル安息香酸エステル構造を有する官能基、チオキサントン構造を有する官能基、3-ケトクマリン構造を有する官能基、2-エチルアントラキノン構造を有する官能基、カンファーキノン構造を有する官能基等が挙げられるが、ベンゾフェノン構造を有する官能基が好ましい。
【0054】
これにより、紫外線C波に対する反応性をより優れたものとしつつ、紫外線C波以外の刺激に対する安定性をより優れたものとすることができる。
【0055】
透明性の観点から、紫外線C波硬化型粘着剤組成物は、粘着性を有するポリマーとしてアクリル系ポリマーを含んでいることが好ましい。
【0056】
アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーの重合体または共重合体である。
アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、特に、アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーとして、アルキル基の炭素数が1以上8以下のアルキル(メタ)アクリレートを含んでいることが好ましい。アルキル基の炭素数が1以上8以下のアルキル(メタ)アクリレートの中でも、特に、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートおよびブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物中に含まれるポリマーが紫外線C波反応性基を備えるものである場合、紫外線C波反応性基は、通常、前記ポリマーの側鎖に導入されている。
【0058】
特に、アクリル系ポリマーが紫外線C波反応性基を有するものである場合、アクリル系ポリマー全体に対する紫外線C波反応性基の割合は、0.1質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0059】
これにより、紫外線C波硬化型粘着剤組成物のポットライフをより長くしつつ、粘着剤層20の粘着性をより優れたものとすることができる。
【0060】
このような紫外線C波反応性基を呈するアクリル系ポリマーとしては、例えば、BASF社から商品名「acResin(登録商標)」が市販されている。「acResin(登録商標)UV」としては、「acResin(登録商標)A250 UV」、「acResin(登録商標)A260 UV」、「acResin(登録商標)A204 UV」、「acResin(登録商標)UV 3532」が挙げられる。
【0061】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物として、粘着性を呈するポリマーに加えて、紫外線C波反応性基を備えた低分子化合物を含むものを用いる場合、当該低分子化合物は、架橋剤として含有させることができる。
【0062】
当該架橋剤としては、例えば、ベンゾフェノン構造を有するモノマー、ベンジル構造を有するモノマー、o-ベンゾイル安息香酸エステル構造を有するモノマー、チオキサントン構造を有するモノマー、3-ケトクマリン構造を有するモノマー、2-エチルアントラキノン構造を有するモノマー、カンファーキノン構造を有するモノマー等が挙げられる。
【0063】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物中における前記架橋剤の含有量は、前記ポリマー100質量部に対して、5質量部以上25質量部以下であるのが好ましく、6質量部以上23質量部以下であるのがより好ましい。
【0064】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物は、上述した成分の他、必要に応じて、分散剤、粘着付与剤、酸化防止剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、軟化剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤および帯電防止剤等のその他の成分が配合されていてもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物は、紫外線C波の照射により硬化する性質を有するものであればよいが、ホットメルト粘着剤組成物であるのが好ましい。
【0066】
これにより、基材10との密着性に優れた粘着剤層20をより好適に形成することができる。
【0067】
ここで、ホットメルト粘着剤組成物とは、加熱することにより溶融して展延塗工可能となり、冷却することにより粘着性と凝集力とを発現するタイプの粘着剤組成物をいう。
【0068】
紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物としては、例えば、ベンゾフェノン基含有アクリル系ホットメルト粘着剤組成物が、BASF社から商品名「acResin(登録商標)」として市販されている。また、アクリル系ホットメルト粘着剤組成物が、Henkel社から商品名「LOCTITE DURO-TAK(登録商標) UV 4606」として市販されている。
【0069】
粘着剤層20の厚さは、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましい。
【0070】
これにより、粘着シート1の被着体100への貼着時の作業性がより優れたものになるとともに、被着体100に貼着された粘着シート1を当該被着体100から剥離した際に、剥離した痕跡をより好適に識別することができる。
【0071】
(剥離ライナー)
粘着剤層20には、剥離ライナー30が貼り合わせられていてもよい。
【0072】
剥離ライナー30は、少なくとも粘着シート1の製造時において、粘着剤層20を保護する機能を有している。また、剥離ライナー30は、少なくとも粘着シート1の保存時においても、粘着剤層20を保護する機能を有していてもよい。
【0073】
剥離ライナー30の構成材料は、例えば、粘着シート1の製造方法に応じて選択することもできる。より具体的には、例えば、後に詳述するような方法を用いて粘着シート1を製造する場合、剥離ライナー30に要求される紫外線C波(UVC)の透過性に応じて、剥離ライナー30の構成材料を選択することができる。
【0074】
剥離ライナー30は、粘着剤層20に対して剥離性を有する。そして、粘着シート1は、被着体100へ貼着する際には、剥離ライナー30が粘着剤層20から剥離された状態になっている。
【0075】
剥離ライナー30には、剥離処理が施されていてもよい。剥離処理に用いる剥離処理剤としては、例えば、シリコーン、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂等が挙げられる。
【0076】
剥離ライナー30の厚さは、特に限定されないが、10μm以上150μm以下であるのが好ましく、20μm以上130μm以下であるのがより好ましい。
【0077】
後に詳述するように、粘着シート1は、粘着シート1を被着体100から剥離した後に、被着体100上に残存する粘着剤組成物(言い換えると、糊残り23)、および、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位のうちの少なくとも一方に、選択的に着色材料を付着させて用いられることが好ましい。
【0078】
これにより、被着体100上に担持された第1の情報、粘着シート1に担持された第2の情報の視認性・識別性を、より向上させることができる。
【0079】
このような場合、前記着色材料は、着色剤を含む材料で構成された着色層62を有する着色シート60を、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)、および、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位のうちの少なくとも一方に接触させた後、剥離することにより、当該部位に付着・残存するものであるのが好ましい。
【0080】
これにより、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)、および、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位のうちの少なくとも一方に、簡便な方法で、選択的に着色材料を付着させることができる。
【0081】
[粘着シートの製造方法]
次に、粘着シートの製造方法について説明する。
【0082】
本発明の粘着シートは、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、例えば、以下に示すような方法(第1の方法、第2の方法)により好適に製造することができる。
【0083】
《第1の方法》
図2~
図4は、粘着シートの製造方法の好適な実施形態(第1の方法)を示す模式的な縦断面図である。
【0084】
第1の方法は、紫外線C波を実質的に透過しない基材10と、紫外線C波により硬化する粘着剤組成物層20’と、紫外線C波を透過するライナー本体31および紫外線C波を実質的に透過しない印刷層32を有する剥離ライナー30とがこの順に重ね合わされた積層体50を準備する積層体準備工程と、積層体50に対し、紫外線C波を含む光線を剥離ライナー30側から照射することにより粘着剤組成物層20’を部分的に硬化させる硬化工程とを有する。
【0085】
第1の方法では、粘着剤組成物層20’の硬化反応(架橋反応)に、紫外線、特に、紫外線C波を含む光線を用いている。
【0086】
特に、本実施形態では、紫外線C波を含む光線を、剥離ライナー30側から粘着剤組成物層20’に照射することにより、粘着剤組成物層20’のうち、印刷層32が設けられていない部位に選択的に紫外線C波が入射し、粘着剤組成物層20’には、印刷層32が設けられていない部位に対応するパターン(印刷層32の反転パターン)で硬化部分(架橋部分)21が形成され、それ以外の部位が、非硬化部分(非架橋部分)22となる。これにより、粘着剤組成物層20’は、硬化部分(架橋部分)21と非硬化部分(非架橋部分)22とを有する粘着剤層20となる(
図4参照)。
【0087】
本明細書において、「紫外線C波を実質的に透過しない」とは、波長が200nm以上280nm未満の紫外線C波の透過率が3%以下であることをいうが、特に、前記紫外線C波の透過率が1%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。
【0088】
本明細書において、「紫外線C波を透過する」または「紫外線C波透過性を有する」とは、紫外線C波の透過率が30%以上であることを指す。
【0089】
以下、各工程について説明する。
<積層体準備工程>
積層体準備工程では、
図2に示すように、紫外線C波を実質的に透過しない基材10と、基材10の一方の面側に設けられ、紫外線C波により硬化する粘着剤組成物層20’と、粘着剤組成物層20’に接触する剥離ライナー30とを有する積層体50を準備する。剥離ライナー30は、紫外線C波を透過するライナー本体31と、紫外線C波を実質的に透過しない印刷層32とを有している。
【0090】
積層体準備工程では、上記のような積層体50を準備すればよいが、例えば、基材10の一方の面側に、紫外線C波により硬化する紫外線C波硬化型粘着剤組成物を塗工して粘着剤組成物層20’を形成する粘着剤組成物層形成工程と、粘着剤組成物層20’上に、剥離ライナー30(印刷層32が設けられていないライナー本体31)を貼り合わせる貼り合わせ工程と、剥離ライナー30の粘着剤組成物層20’に対向する面とは反対の面側に、印刷層32を形成する印刷工程とを有していてもよい。
【0091】
これにより、積層体50をより効率よく得ることができ、粘着シート1の生産性をより優れたものとすることができる。特に、印刷層32が設けられていない状態の積層体を保管しておくことにより、粘着シート1の生産性をより優れたものとすることができる。また、印刷層32が設けられていない状態の積層体を保管しておくことにより、例えば、顧客のニーズに応じたパターンの印刷層32を好適に形成することができる。また、異なるパターンの印刷層32の形成にも好適に対応することができる。
【0092】
なお、印刷層32は、粘着剤組成物層20’への貼り合わせ前に、ライナー本体31に形成してもよい。また、粘着剤組成物層20’は、剥離ライナー30上に形成し、その後、基材10と接合してもよい。また、図示の構成では、印刷層32は、積層体50において剥離ライナー30の外表面(粘着剤組成物層20’に対向する面とは反対側の面)に設けられているが、その少なくとも一部がライナー本体31の内部に設けられたもの(例えば、ライナー本体31の内部に含浸したもの等)であってもよいし、積層体50において剥離ライナー30の粘着剤組成物層20’に対向する面側に設けられていてもよい。
【0093】
基材10は、全体として、その厚さ方向に、紫外線C波を実質的に透過しないものであればよく、例えば、基材10の一方の面側から照射された紫外線C波を、基材10の一部または全体で反射または吸収することにより、他方の面側に透過させないものであればよい。なお、基材10は、その厚さ方向の一部が紫外線C波の透過性を有する材料で構成されていてもよい。
【0094】
基材10の構成材料としては、例えば、紙、プラスチック、金属等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
特に、基材10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0096】
これにより、基材10の透明性を高めることができる。したがって、基材10に対して印刷層を設けた際の粘着シート1の審美性をより優れたものとすることができる。また、基材10と当該基材10に設けられる印刷層(特に、紫外線硬化型インクを用いて形成される印刷層)との密着性をより優れたものとすることができる。また、種々の外観の粘着シート1を好適に製造することができる。また、基材10と粘着剤組成物層20’(粘着剤層20)との密着性をより優れたものとすることができる。
【0097】
基材10がポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成されたものである場合、基材中におけるポリエチレンテレフタレートの含有率は、50質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0098】
基材10が多層構造である場合、例えば、少なくとも1層を、紫外線C波を実質的に透過しない材料で構成されたものとすることができる。より具体的には、例えば、基材本体が紫外線C波を透過する材料からなる場合であっても、その少なくとも一方の面に金属を蒸着させることにより、基材10に紫外線C波不透過性(反射性)を付与することができる。金属の材料としては、例えば、アルミニウム等が挙げられる。
【0099】
また、例えば、基材10の主成分が紫外線C波を透過するものであっても、紫外線C波を吸収する紫外線吸収剤を添加することにより、基材10に紫外線C波不透過性を付与することができる。
【0100】
粘着シート1の保存時または使用時において、通常、基材10側が表面に露出した状態となる。紫外線C波は、地上での太陽光にはほとんど含まれていないものの、基材10が、紫外線C波を実質的に透過しないことで、保存時や使用時において、基材10を透過して粘着剤層20に達した光により、粘着剤層20の特に非硬化部分22(非架橋部分)が意図せず硬化(架橋)してしまうことを効果的に防止することができる。
【0101】
また、紫外線硬化型インクを用いて基材10に印刷層を形成する場合において、粘着剤層20(粘着剤組成物層20’)の形成後に当該印刷層(基材10)を形成しても、紫外線硬化型インクの硬化に用いる紫外線中に含まれる紫外線C波は、基材10により透過することが好適に防止されるため、粘着剤層20(粘着剤組成物層20’)が意図せず硬化(架橋)してしまうことを効果的に防止することができる。
【0102】
基材10に粘着剤組成物層20’(粘着剤層20)が積層されている状態で、紫外線硬化型インクを用いて基材10上に印刷層を形成する場合、通常、紫外線硬化型インクを用いて基材10に印刷し、基材10のインクが付与された面側から紫外線を照射してインクを硬化させる。ここで、前記紫外線に含まれる紫外線C波が粘着剤組成物層20’(粘着剤層20)に到達してしまうと、粘着剤組成物層20’(粘着剤層20)が意図せず硬化してしまうが、基材10が紫外線C波を実質的に透過しないものであるため、上記のような問題の発生を効果的に防止することできる。
【0103】
なお、基材10に印刷層を設ける場合、その形成タイミングは特に限定されず、例えば、後述する硬化工程の前であってもよいし、硬化工程の後であってもよい。また、基材10に粘着剤組成物層20’を形成する前に、基材10に印刷層を形成してもよい。
【0104】
(粘着剤組成物層形成工程)
粘着剤組成物層形成工程では、基材10の一方の面側に、紫外線C波硬化型粘着剤組成物を塗工して粘着剤組成物層20’を形成する。
【0105】
粘着剤組成物層20’の形成方法は、特に限定されないが、紫外線C波硬化型粘着剤組成物が紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物である場合、溶融押出し法を好適に採用することができる。より具体的には、粘着剤組成物層20’は、溶融した紫外線C波硬化型粘着剤組成物を、押出機を用いてTダイ等から基材10上に供給することにより好適に形成することができる。
【0106】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物が紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物である場合、粘着剤組成物層20’を形成する際(紫外線C波硬化型粘着剤組成物を基材上に供給する際)、紫外線C波硬化型粘着剤組成物は、溶融されるように加熱されていればよいが、紫外線C波硬化型粘着剤組成物の温度(塗工温度)は、120℃以上210℃以下であるのが好ましく、130℃以上190℃以下であるのがより好ましい。
【0107】
紫外線C波硬化型粘着剤組成物が紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物である場合、紫外線C波硬化型粘着剤組成物の軟化点は、90℃以上150℃以下であるのが好ましく、100℃以上150℃以下であるのがより好ましい。
【0108】
また、紫外線C波硬化型粘着剤組成物が紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物である場合、紫外線C波硬化型粘着剤組成物の160℃における溶融粘度は、2000mPa・s以上13000mPa・s以下であるのが好ましく、4000mPa・s以上12000mPa・s以下であるのがより好ましい。
【0109】
なお、紫外線C波硬化型粘着剤組成物の溶融粘度は、JIS K6862:1984に準じた測定により求めることができる。
【0110】
(貼り合わせ工程)
貼り合わせ工程では、基材10上に形成された粘着剤組成物層20’上に、紫外線C波を透過するライナー本体31を貼り合わせる。
【0111】
紫外線C波透過性を有するライナー本体31を用いることで、ライナー本体31を有する剥離ライナー30を介して粘着剤組成物層20’に紫外線C波を照射して粘着剤組成物層20’を硬化させることができる。このとき、酸素が遮断されるので、粘着剤の硬化速度が速くなるという利点がある。
【0112】
ライナー本体31についての紫外線C波の透過率は、30%以上であればよいが、50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。
【0113】
これにより、粘着剤組成物層20’の硬化反応(架橋反応)をより好適に進行させることができる。
【0114】
ライナー本体31の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0115】
(印刷工程)
印刷工程では、ライナー本体31の粘着剤組成物層20’に対向する面とは反対の面側に、紫外線C波を実質的に透過しない印刷層32を形成する。
【0116】
インクは、紫外線C波を実質的に透過しない印刷層32を形成することができるものであれば、特に限定されないが、通常、当該インク自体も紫外線C波を実質的に透過しないものである。
【0117】
インクとしては、例えば、油性インク、水性インク、ラテックスインク、紫外線硬化型インク等を用いることができる。例えば、紫外線硬化型インクを用いる場合、粘着剤組成物層20’を部分的に硬化させる硬化工程の前の段階において、印刷層32は、未硬化の状態であってもよい。
【0118】
印刷層32の形成方法(印刷方法)は、特に限定されないが、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、レーザビーム乾式電子写真印刷、溶融型または昇華型熱転写印刷等の各種印刷法が挙げられる。
【0119】
印刷層32の印刷内容(印刷パターン)は、特に限定されず、例えば、種々の文字、記号、符号、点、線、図形等が挙げられ、これらから選択される2種以上を組み合わせてもよい。また、例えば、複数個の粘着シート1となるべき部位について、同一のパターンの印刷層32を設けてもよいし、異なるパターンの印刷層32を設けてもよい。また、印刷層32の印刷内容(印刷パターン)は、例えば、一次元バーコード、QRコード(登録商標)のような二次元コード等であってもよい。
【0120】
印刷層32の厚さは、紫外線C波を実質的に透過しなければ特に限定されないが、0.5μm以上50μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上30μm以下であるのがより好ましく、1.0μm以上20μm以下であるのがさらに好ましい。
【0121】
<硬化工程>
硬化工程では、
図3に示すように、紫外線C波を含む光線を、剥離ライナー30側から粘着剤組成物層20’に照射することにより粘着剤組成物層20’を部分的に硬化させる。
【0122】
これにより、粘着剤組成物層20’を、硬化部分(架橋部分)21と非硬化部分(非架橋部分)22とを有する粘着剤層20にする。
【0123】
粘着剤組成物層20’の硬化は、紫外線C波光源(紫外線C波照射装置)200から紫外線C波を含む光線を照射することによって行われる。
【0124】
紫外線C波光源200としては、例えば、高圧水銀UVランプ、低圧水銀UVランプ、メタルハライドUVランプ、エキシマランプ、発光ダイオード(LED)等が挙げられる。中でも、高圧水銀UVランプ、メタルハライドUVランプが好ましい。
【0125】
剥離ライナー30側から、粘着剤組成物層20’に紫外線C波を含む光線を照射すると、紫外線C波のうち、印刷層32のパターン部分に照射された紫外線C波は、印刷層32がマスクとなり、すなわちインクにより反射または吸収されて粘着剤組成物層20’には到達しない。一方、印刷層32のパターンが形成されていない部分(空隙部分)に照射された紫外線C波は、紫外線C波透過性を有するライナー本体31を透過して粘着剤組成物層20’に到達する。
【0126】
粘着剤組成物層20’のうち、紫外線C波が照射された部分では架橋反応が引き起こされ粘着剤組成物が硬化するが、紫外線C波が照射されない分では架橋反応が引き起こされず粘着剤組成物は非硬化で柔らかいままである。このようにして印刷層32のパターンに対応して、硬化部分21(架橋部分)と非硬化部分22(非架橋部分)とを有する粘着剤層20が形成される(
図4参照)。
【0127】
粘着剤組成物層20’の硬化に紫外線C波を用いることで、硬化部分(架橋部分)21と非硬化部分(非架橋部分)22とによるパターンを好適に形成することができる。また、紫外線C波は、波長が短くエネルギーが高いため、粘着剤組成物層20’の硬化(硬化部分21の形成)をより効率よく短時間で行うことができる。
【0128】
また、紫外線C波は、地上での太陽光にはほとんど含まれていないため、積層体50や粘着シート1の保存時や粘着シート1の使用時等において、粘着剤層20の特に非硬化部分22(非架橋部分)が、意図せず硬化(架橋)反応してしまうことを効果的に防止することができる。
【0129】
《第2の方法》
次に、粘着シートの製造方法として、上記の第1の方法とは異なる第2の方法について説明する。
【0130】
図5~
図7は、粘着シートの製造方法の他の好適な実施形態(第2の方法)を示す模式的な縦断面図である。以下の説明では、前述した第1の方法との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
【0131】
第2の方法は、紫外線C波を透過する基材本体11および紫外線C波を実質的に透過しない印刷層12を有する基材10と、紫外線C波により硬化する粘着剤組成物層20’とを備える積層体50を準備する積層体準備工程と、積層体50に対し、紫外線C波を含む光線を基材10側から照射することにより粘着剤組成物層20’を部分的に硬化させる硬化工程とを有する(
図6参照)。
【0132】
特に、第2の方法では、紫外線C波を含む光線を、基材10側から粘着剤組成物層20’に照射することにより、粘着剤組成物層20’のうち、印刷層12が設けられていない部位に選択的に紫外線C波が入射し、粘着剤組成物層20’には、印刷層12が設けられていない部位に対応するパターン(印刷層12の反転パターン)で硬化部分(架橋部分)21が形成され、それ以外の部位が、非硬化部分(非架橋部分)22となる。これにより、粘着剤組成物層20’は、硬化部分(架橋部分)21と非硬化部分(非架橋部分)22を有する粘着剤層20となる(
図7参照)。
【0133】
以下、各工程について説明する。
<積層体準備工程>
積層体準備工程では、
図5に示すように、基材10と、基材10の一方の面側に設けられ、紫外線C波により硬化する粘着剤組成物層20’とを有する積層体50を準備する。基材10は、紫外線C波を透過する基材本体11と、紫外線C波を実質的に透過しない印刷層12とを有している。
【0134】
積層体準備工程で準備する積層体50は、基材10と粘着剤組成物層20’とを有するものであればよいが、図示の構成では、基材10および粘着剤組成物層20’に加えて、粘着剤組成物層20’に接触する剥離ライナー30を備えている。言い換えると、本実施形態で用いる積層体50は、基材10と粘着剤組成物層20’と剥離ライナー30とがこの順に積層された構造を有している。
【0135】
これにより、後の工程での積層体50の取り扱いのし易さ、後の工程での作業性を向上させることができ、粘着シート1の生産性を向上させる上で有利である。また、粘着シート1の製造過程等において、粘着剤組成物層20’に埃等の汚れが付着することをより効果的に防止することができ、粘着シート1の信頼性を高めることができる。
【0136】
また、積層体準備工程では、上記のような積層体50を準備すればよいが、例えば、基材本体11(印刷層12が設けられていない基材本体11)の一方の面側に、紫外線C波により硬化する紫外線C波硬化型粘着剤組成物を塗工して粘着剤組成物層20’を形成する粘着剤組成物層形成工程と、粘着剤組成物層20’上に、剥離ライナー30を貼り合わせる貼り合わせ工程と、基材本体11の粘着剤組成物層20’に対向する面とは反対の面側に、印刷層12を形成する印刷工程とを有していてもよい。
【0137】
これにより、積層体50をより効率よく得ることができ、粘着シート1の生産性をより優れたものとすることができる。特に、印刷層12が設けられていない状態の積層体を保管しておくことにより、粘着シート1の生産性をより優れたものとすることができる。また、印刷層12が設けられていない状態の積層体を保管しておくことにより、例えば、顧客のニーズに応じたパターンの印刷層12を好適に形成することができる。また、異なるパターンの印刷層12の形成にも好適に対応することができる。
【0138】
なお、印刷層12は、粘着剤組成物層20’への貼り合わせ前に、基材本体11に形成してもよい。また、粘着剤組成物層20’は、剥離ライナー30上に形成し、その後、基材本体11と接合してもよい。また、図示の構成では、印刷層12は、積層体50において基材本体11の外表面(粘着剤組成物層20’に対向する面とは反対側の面)に設けられているが、その少なくとも一部が基材本体11の内部に設けられたもの(例えば、基材本体11の内部に含浸したもの等)であってもよいし、積層体50において基材本体11の粘着剤組成物層20’に対向する面側に設けられていてもよい。
【0139】
(粘着剤組成物層形成工程)
粘着剤組成物層形成工程では、基材本体11の一方の面側に、紫外線C波硬化型粘着剤組成物を塗工して粘着剤組成物層20’を形成する。
【0140】
基材本体11は、基材10の大部分をなすものであり、粘着剤層20(粘着剤組成物層20’)、印刷層12を支持する支持体となる。
【0141】
基材本体11は、紫外線C波透過性を有するものである。
紫外線C波透過性を有する基材本体11を用いることで、基材本体11を有する基材10を介して粘着剤組成物層20’に紫外線C波を照射して粘着剤組成物層20’を硬化させることができる。このとき、粘着剤組成物層20’の表面、すなわち、粘着剤組成物層20’の基材本体11に対向する面とは反対側の面が、剥離ライナー30で覆われていると、酸素が遮断されるので、粘着剤の硬化速度が速くなるという利点がある。
【0142】
基材本体11についての紫外線C波の透過率は、30%以上であればよいが、50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。
【0143】
これにより、粘着剤組成物層20’の硬化反応(架橋反応)をより好適に進行させることができる。
【0144】
基材本体11の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを好適に用いることができる。
【0145】
これにより、基材本体11や粘着シート1の強度を十分に優れたものとしつつ、基材本体11の紫外線C波透過性をより好適なものとすることができる。その結果、後に詳述する硬化工程において、硬化部分(架橋部分)21と非硬化部分(非架橋部分)22とを有する粘着剤層20を好適に形成することができ、信頼性のより高い粘着シート1を提供することができる。
【0146】
基材本体11における前記材料の含有率は、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましく、99質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0147】
粘着シート1の保存時または使用時において、通常、基材10側が表面に露出した状態となるが、太陽光等の通常の環境光には、紫外線C波がほとんど含まれていないため、粘着シート1の保存時や使用時において、基材10を透過して粘着剤組成物層20’に達した光により、粘着剤層20の特に非硬化部分22(非架橋部分)が意図せず硬化(架橋)してしまうことは効果的に防止されている。
【0148】
(貼り合わせ工程)
貼り合わせ工程では、基材本体11上に形成された粘着剤組成物層20’上に、剥離ライナー30を貼り合わせる。
【0149】
剥離ライナー30の構成材料としては、例えば、紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等の各種プラスチック、金属等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
特に、剥離ライナー30は、紫外線C波を実質的に透過しないものであるのが好ましい。
【0151】
これにより、粘着シート1の製造過程等において、剥離ライナー30が設けられた面側から紫外線C波が照射されることにより、粘着剤組成物層20’において、不本意な硬化反応が進行することをより確実に防止することができる。
【0152】
紫外線C波を実質的に透過しない剥離ライナー30の構成材料としては、例えば、紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、金属等が挙げられる。
【0153】
(印刷工程)
印刷工程では、基材本体11の粘着剤組成物層20’に対向する面とは反対の面側に、紫外線C波を実質的に透過しない印刷層12を形成する。
【0154】
インクは、紫外線C波を実質的に透過しない印刷層12を形成することができるものであれば、特に限定されないが、通常、当該インク自体も紫外線C波を実質的に透過しないものである。
【0155】
インクとしては、上述した印刷層32の場合と同様のインクを用いることができ、特に、紫外線硬化型インクが好ましい。
【0156】
紫外線硬化型インクを用いる場合、例えば、粘着剤組成物層20’を部分的に硬化させる硬化工程の前の段階において、印刷層12は、未硬化の状態であってもよい。
【0157】
印刷層12の形成方法(印刷方法)は、特に限定されず、上述した印刷層32の場合と同様にして形成することができる。
【0158】
印刷層12の印刷内容(印刷パターン)は、特に限定されず、上述した印刷層32の場合と同様にすることができる。
【0159】
<硬化工程>
硬化工程では、
図6に示すように、紫外線C波を含む光線を、基材10側から粘着剤組成物層20’に照射することにより粘着剤組成物層20’を部分的に硬化させる。
【0160】
これにより、粘着剤組成物層20’を、硬化部分(架橋部分)21と非硬化部分(非架橋部分)22とを有する粘着剤層20にする。
【0161】
基材10側から、粘着剤組成物層20’に紫外線C波を含む光線を照射すると、紫外線C波のうち、印刷層12のパターン部分に照射された紫外線C波は、印刷層12がマスクとなり、すなわちインクにより反射または吸収されて粘着剤組成物層20’には到達しない。一方、印刷層12のパターンが形成されていない部分(空隙部分)に照射された紫外線C波は、紫外線C波透過性を有する基材本体11を透過して粘着剤組成物層20’に到達する。
【0162】
粘着剤組成物層20’のうち、紫外線C波が照射された部分では架橋反応が引き起こされ粘着剤組成物が硬化するが、紫外線C波が照射されない部分では架橋反応が引き起こされず粘着剤組成物は非硬化で柔らかいままである。このようにして印刷層12のパターンに対応して、硬化部分21(架橋部分)と非硬化部分22(非架橋部分)とを有する粘着剤層20が形成される(
図7参照)。
【0163】
以上のようにして製造された粘着シート1は、基材10と、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成された粘着剤層20とを備え、粘着剤層20は、粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有するものとなる。
【0164】
例えば、第1の方法で製造された粘着シートは、剥離ライナー30を剥離して、例えば、粘着剤層20を、他の剥離ライナー(硬化部分21(架橋部分)と非硬化部分22(非架橋部分)とによるパターンに対応する印刷層が設けられていない剥離ライナー)で保護してもよい。
【0165】
また、例えば、粘着シート1が長尺状をなす場合、剥離ライナー30が粘着剤層20から剥離された後、粘着シート1は、例えば、露出した粘着剤層20側を内側にして渦巻き状に巻回され、テープ体として、保管、輸送してもよい。この場合、基材10の粘着剤層20に対向する面とは反対側の表面は、剥離性を有している。
【0166】
[粘着シート1の利用方法]
次に、本発明の粘着シートの利用方法について説明する。
【0167】
図8は、粘着シートを被着体に貼着した状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
図9は、
図8に示す粘着シートを被着体から剥離しようとしている状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
図10は、
図8に示す粘着シートを被着体から剥離した状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
【0168】
本発明の粘着シート1の利用方法は、基材10と、粘着剤を含む粘着剤組成物で構成され、粘着剤の硬化度が互いに異なる部位を有する粘着剤層20とを備える粘着シート1を被着体100に貼着する貼着工程と、被着体100から粘着シート1を剥離し、粘着剤組成物のうち粘着剤の硬化度が低い部分を被着体100上に選択的に残存させること、すなわち、糊残り23を生じさせることにより、被着体100上に第1の情報を担持させるとともに、被着体100から剥離された粘着シート1に第1の情報に対応する第2の情報を担持させる剥離工程とを有することを特徴とする。
【0169】
このように、粘着剤組成物のうち粘着剤の硬化度が比較的低い部分が選択的に被着体100上に残存すること(言い換えると、糊残り23を生じること)により、被着体100に所定のパターン(第1のパターン)が形成される。その一方で、被着体100上に粘着剤組成物が残存すること、言い換えると、粘着シート1から粘着剤組成物の一部が被着体100に移行することで、被着体100から剥離した粘着シート1には、被着体100に形成されたパターン(第1のパターン)に対応するパターン(第2のパターン)が形成される。
【0170】
そして、第1のパターンが形成された被着体100は、当該第1のパターンにより、第1の情報が担持されたものとなり、第2のパターンが形成された粘着シート1は、当該第2のパターンにより、第2の情報が担持されたものとなる。
【0171】
これにより、簡易な構成で、複数の部材(すなわち、粘着シート1および被着体100)に、対応するパターンを容易に形成することができ、これらの部材に形成された前記パターンを情報として用いることが可能な粘着シートの利用方法を提供することができる。
【0172】
その結果、例えば、対応する情報である第1の情報および第2の情報を用いて、前記複数の部材の管理、被着体100の工程管理、物流管理等を好適に行うことができる。
以下、各工程について説明する。
【0173】
<貼着工程>
貼着工程では、粘着シート1を被着体100に貼着する。このとき、
図8に示すように、粘着シート1は、粘着剤層20を対向させて被着体100に貼着して用いられる。
【0174】
本工程では、前述した粘着シート1を好適に用いることができる。また、本工程では、粘着シート1として、例えば、テープ状のものを用いてもよい。当該テープ状の粘着シート1は、例えば、適宜、所望の長さに切断して用いることができる。
【0175】
このとき、粘着剤層20には、硬化部分21(架橋部分)および非硬化部分22(非架橋部分)が所定のパターンで配置されており、これにより、所定のパターンが形成されている。
【0176】
粘着シート1の保存時や粘着シート1を被着体100に貼着した状態においては、通常、硬化部分21と非硬化部分22との区別は困難である。
【0177】
<剥離工程>
剥離工程では、被着体100から粘着シート1を剥離する。このとき、粘着剤組成物のうち粘着剤の硬化度が低い部分を被着体100上に選択的に残存させることにより、被着体100上に第1の情報を担持させるとともに、被着体100から剥離された粘着シート1に第1の情報に対応する第2の情報を担持させる。
【0178】
より具体的には、
図9および
図10に示すように、一旦被着体100に貼着された粘着シート1を剥離すると、粘着剤層20のうち、硬化部分21(架橋部分)は、被着体100からきれいに剥がれ、その表面はほぼ平坦である。また、被着体100側にも実質的に残留物(糊残り)がない。
【0179】
その一方で、非硬化部分22(非架橋部分)は、柔らかく、剥離の際の応力により糸引きや粘着剤層20内での凝集破壊を生じ、粘着剤の一部が被着体100側に残る、いわゆる糊残り23を生じる(
図9、
図10参照)。このような場合、通常、単に被着体100側に非硬化部分22(非架橋部分)の一部が残るだけでなく、被着体100側に残った糊残り23(非架橋部分)はその表面が荒れた状態になっている。
【0180】
したがって、被着体100に粘着剤層20の一部が残存していること(特に、非硬化部分22(非架橋部分)に対応するパターンで粘着剤組成物が残存していること)を比較的容易に視認することができる。
【0181】
上記のように、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)によって第1の情報が担持される。
【0182】
また、被着体100側だけでなく、被着体100から剥離した粘着シート1側の観察によっても、被着体100から剥離した痕跡を容易に確認することができる。より具体的には、被着体100から剥離した粘着シート1において、硬化部分21(架橋部分)は、表面が平滑な状態を保持しているのに対して、非硬化部分22(非架橋部分)は、粘着剤組成物の一部が除去され、少なくとも表面が荒れた状態となっている。したがって、粘着シート1を被着体100から剥離した後においては、被着体100から剥離した粘着シート1を観察することによって、硬化部分21(架橋部分)と非硬化部分22(非架橋部分)とによるパターンを容易に認識することができる。
【0183】
これにより、被着体100から剥離された粘着シート1に、第1の情報に対応する第2の情報が担持される。第1の情報と第2の情報とは、それぞれ粘着剤組成物側から見た場合に、互いに反転したパターン(鏡像パターン)となる。
【0184】
<着色材料付着工程>
本実施形態では、剥離工程の後に、さらに、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)、および、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち当該粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位のうちの少なくとも一方に、選択的に着色材料を付着させる着色材料付着工程を有している。
【0185】
これにより、被着体100上に担持された第1の情報、粘着シート1に担持された第2の情報の視認性・識別性を、より向上させることができる。
【0186】
ここで、
図11は、被着体に残存した粘着剤組成物を着色する状態を示す模式的な縦断面図であり、
図12は、被着体から剥離された粘着シートを着色する状態を示す模式的な縦断面図である。
【0187】
着色材料付着工程は、いかなる方法を用いて行ってもよく、例えば、粘着シート1を剥離した被着体100、および、被着体100から剥離された粘着シート1のうちの少なくとも一方に対して、粉末状の着色材料を振り掛ける方法等を用いて行うこともできるが、着色剤を含む材料で構成された着色層62を有する着色シート60を、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)、および、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位のうちの少なくとも一方に接触させた後、剥離することにより行うのが好ましい。
【0188】
これにより、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)、および、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位のうちの少なくとも一方に、簡便な方法で、選択的に着色材料を付着させることができる。
【0189】
なお、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位は、硬化部分21に相当する。
【0190】
着色シート60は、少なくとも着色層62を有していればよいが、通常、着色層62を支持する着色シート基材61も備えている。
【0191】
着色シート基材61、着色層62の条件は、着色シート60の種類等に応じて、適宜選択される。
【0192】
着色剤を含む材料で構成された着色層62を有する着色シート60としては、着色剤を粘着剤組成物または粘着剤層20の表面に付着(転写)させることができるものであれば、特に限定されない。また、着色剤を転写させる方法としても特に限定されず、例えば、圧力によるもの、熱によるものが挙げられる。
【0193】
このような着色シート60としては、例えば、カーボン紙、熱転写型のインクリボンが挙げられる。
【0194】
(カーボン紙)
カーボン紙は、顔料、染料等の有色物(着色剤)を蝋や油等に混ぜてカーボン原紙に塗工して製造した感圧複写用薄葉紙であり、一般的に、複写用紙の間にはさみ、筆圧等の加圧により複写するために用いられる。
【0195】
有色物(着色剤)としては、黒色の場合、カーボンブラックおよび各種の有機顔料のほか染料が用いられる。
【0196】
カーボン原紙としては、薄くて均一でピンホールがなく強いことが要求されるので、例えば、木材の化学パルプを主原料とし、綿または麻のパルプを多く配合して製造した紙が用いられる。
【0197】
(インクリボン)
インクリボンは、例えば、熱転写型インクリボンであり、帯状の基材フィルムと、基材フィルムの一方の面(片面)に設けられた熱転写インク層とを有するものを好適に用いることができる。
【0198】
基材フィルムの材料としては、例えば、各種プラスチック、各種紙等が挙げられる。基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、熱伝導を良好にする観点等から、1μm以上10μm以下であるのが好ましく、2μm以上7μm以下であるのがより好ましい。
【0199】
熱転写インク層は、一般に、ワックス類、樹脂類、着色剤等で構成されている。
ワックス類としては、例えば、ポリエチレン系ワックス(ポリエチレンワックスや酸化ポリエチレンワックス等)等を好適に用いることができる。
【0200】
熱転写インク層を構成する樹脂類としては、例えば、熱溶融性樹脂が好適に用いられる。
【0201】
当該熱溶融性樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等のエラストマー類、ポリイソブチレン、ポリブテン等が挙げられる。
【0202】
また、熱転写インク層を構成する着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができる。
【0203】
着色シート60が感圧タイプのものである場合、
図11(a)に示すように、着色層62が被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)に対向するように、着色シート60を被着体100に積層する。
【0204】
これにより、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)と、着色シート60の着色層62とが接触した状態となる。
【0205】
着色シート60側から圧力をかけることにより、凸となっている部分、すなわち、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)の部位では、それ以外の部位と比べてより高い圧力が加わる。そして、その部位では、着色シート60の着色層62に含まれる着色剤が、粘着剤組成物側に転写される。
【0206】
その後、
図11(b)に示すように、着色シート60を被着体100から剥離することにより、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)に、選択的に着色材料が付着する。着色材料が転写される対象部位が粘着剤組成物であるため、着色材料をより効率よく付着させることができる。
【0207】
被着体100から剥離された粘着シート1の粘着剤層20を着色する場合も同様に、まず、
図12(a)に示すように、粘着シート1の粘着剤層20に対向するように、着色シート60を粘着シート1に積層する。
【0208】
着色シート60側から圧力をかけることにより、凸となっている部分、すなわち、粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位では、それ以外の部位と比べてより高い圧力が加わる。そして、その部位では、着色シート60の着色層62に含まれる着色剤が、粘着剤組成物側に転写される。
【0209】
その後、
図12(b)に示すように、着色シート60を粘着シート1から剥離することにより、粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位に、選択的に着色材料が付着する。着色材料が転写される対象部位が粘着剤組成物であるため、着色材料をより効率よく付着させることができる。
【0210】
着色シート60が熱転写タイプのものである場合も同様に、着色層62が被着体100上に残存する粘着剤組成物(
図11(a)参照)、または、粘着シート1の粘着剤層20(
図12(a)参照)に対向するように、着色シート60を被着体100または粘着シート1に積層する。
【0211】
着色シート60の基材側から押圧することにより、凸となっている部分、すなわち、被着体100上に残存する粘着剤組成物(糊残り23)、または、粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位では、着色シート60の着色層62に含まれる着色剤が、粘着剤組成物側に転写される。
【0212】
その後、着色シート60を、被着体100または粘着シート1から剥離することにより、糊残り23(
図11(b)参照)、または、被着体100から剥離された粘着シート1が有する粘着剤層20のうち粘着シート1の面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位(
図12(b)参照)に、選択的に着色材料が付着する。着色材料が転写される対象部位が粘着剤組成物であるため、着色材料をより効率よく付着させることができる。
【0213】
なお、着色シート60の着色層62は、蛍光剤を含むものであってもよい。蛍光剤を含む着色材料を付着させることで、着色材料が転写された部位は、一見、着色されていなくても、ブラックライト(波長315nm以上400nm以下の紫外線A線)を照射することにより発光し、容易に視認可能となる。
【0214】
このようにして、第1の情報、第2の情報の視認性・識別性をより向上させることができる。
【0215】
第1の情報および第2の情報は、1次元コードまたは2次元コードであるのが好ましい。
【0216】
これにより、第1の情報および第2の情報の、面積あたりの情報密度を高くすることができる。
【0217】
第1の情報、第2の情報は、様々な管理、例えば、(a)生産現場での部品管理や工程管理、(b)物流管理、(c)流通段階での管理(検品や棚卸等)、(d)販売段階での管理(レジ精算、複数の商品の一括精算等)、(e)廃棄・リサイクル段階での管理、(f)精算/貸出管理(食堂での自動精算、図書館での書籍管理等)、(g)商品・製品情報の提供(トレーサビリティ情報の提供、作品情報の提供、ポスターの電子化等)、(h)安全管理/犯罪防止(賞味期限管理、盗難防止/万引き防止等)、(i)真贋判定/ブランド識別、(j)医療事故防止、(k)動物管理等に適用することができる。
【0218】
特に、第1の情報および第2の情報は、工程管理および物流管理のうちの少なくとも一方に用いるものであるのが好ましい。
【0219】
これにより、工程管理および物流管理をより効率よく行うことができる。特に、工程管理、物流管理では、付された情報が確実に担持されることが求められるとともに、情報が付されることにより対象物が大型化したり取り扱いが困難になったりしないようにすることが強く求められるが、本発明では、このような要求を高いレベルで満たすことができる。すなわち、第1の情報および第2の情報が工程管理および物流管理のうちの少なくとも一方に用いるものである場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0220】
「工程管理」とは、所定の製品を所定の数量だけ、所定の品質、原価で、所定の納期に納品できるように生産するための管理であり、資材はもちろんのこと、工場内の製造設備や従業員の労働力等を効率的に活用するための管理活動である。工程管理を適切に行うことにより、作業の効率アップやコスト削減、納期遅れを防ぐことができる。また、品質と生産性が一定になることで、顧客の満足度アップも期待できる。
【0221】
工程管理においては、粘着シート1を、例えば、複数の工程を経る工場製造ラインにおいて、工程毎に、その工程が終了したことをチェックするためのラベルとして用いることができる。例えば、ラベル(粘着シート1)に工程終了を表す情報パターンを形成しておき、製造品(被着体100)にラベルを貼付しておく。所定の工程が終了した後にラベルが剥離されることにより、製造品側に工程終了の情報が第1の情報として担持されるとともに、ラベル側にも第1の情報に対応する第2の情報が担持される。剥離されたラベルは管理票として保管される。
【0222】
また、「物流」は、商品が生産されてから、顧客に納品されるまでの一連の活動(物理的移動)であり、輸配送をはじめ、保管、包装、荷役、流通加工、情報支援等で構成されている。「物流管理」とは、顧客から依頼された商品を、適切な品質で、適切な量を、適切な時期(納期)に、適切な場所に、適切な価格で、届けるための管理活動である。
【0223】
物流管理においては、粘着シート1を、例えば、中間加工業者や中間卸業者等における搬出搬入の記録や取引管理のためのラベル、配送業者における配送管理のためのラベルとして用いることができる。
【0224】
上記物流管理の一例として、粘着シート1を配送ラベルとして用いる場合について説明する。
【0225】
例えば、配送物を配送する場合、配送業者が、段ボール、紙箱またはプラスチック箱等の梱包材により配送物(商品)を梱包し、配送物の配送元および配送先の住所や氏名あるいは名称等の配送情報が印字された配送ラベルを梱包材の表面に貼付し、この情報を基に配送物をその購入者に配送する。
【0226】
このような配送ラベルは、例えば、配達票と貼付票とを有し、これら配達票と貼付票のそれぞれに上述したような配送情報が印字され、裏面に塗布された粘着剤によって配送物に貼付されて使用される。そして、配送物が配送先に配送された後、配送物に貼付された配送ラベルのうち配達票が配送ラベルから分離される。分離した配達票は、配送業者が持ち帰り配達完了の証明として保管する。
【0227】
例えば、配送ラベル(粘着シート1)に配送管理(配送状況追跡等)のためのコード(数字、バーコード、QRコード(登録商標)等)を表すパターンを形成しておき、梱包材(被着体100)に配送ラベル(粘着シート1)を貼付した後、配送ラベルを梱包材から剥離することにより、梱包材側に第1の情報として上記コードが担持されるとともに、配送ラベル側にも第1の情報に対応する第2の情報が担持されることになる。
【0228】
配送完了後に配達員が配達票を分離し持ち帰った後や、配送途中で何らかの理由により配送ラベルが梱包材から剥がれてしまったような場合であっても、梱包材と配達ラベルには互いに対応する情報が担持されているので、これらの情報を元に管理や追跡を行うことが可能となる。
これにより、誤配や配達遅延等のリスクをより低減することができる。
【0229】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0230】
例えば、本発明に係る粘着シートは、前述した以外の構成をさらに備えるものであってもよい。例えば、本発明に係る粘着シートは、コート層(例えば、印刷用コート層等)や中間層を備えていてもよい。
【実施例】
【0231】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例中の処理、測定で、温度条件を示していないものについては、室温(23℃)で行った。
【0232】
[粘着シートの製造]
(実施例1)
まず、基材として、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ50μmのフィルム(東洋紡社製、商品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」)を用意した。当該基材についての紫外線C波の透過率は、0.5%以下であった。
【0233】
この基材の一方の面側に、ホットメルト塗工機により紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物を塗工し、厚さ25μmの粘着剤組成物層を形成し、粘着剤組成物層付き基材を得た。また、紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物としては、ベンゾフェノン基含有アクリル系ホットメルト粘着剤組成物であるBASF社製、商品名「acResin(登録商標)」を用いた。
【0234】
次に、粘着剤組成物層付き基材の粘着剤組成物層上にライナー本体を貼り合わせた。ライナー本体としては、粘着剤組成物層と接触する面に剥離処理を施したポリプロピレンフィルム(厚さ38μm)を用いた。当該ライナー本体についての紫外線C波の透過率は、70%以上であった。
【0235】
次に、ライナー本体の外面(粘着剤層に対向する面とは反対の面)側に、所定のパターンで印刷層を形成し、ライナー本体に印刷層が設けられた剥離ライナーが得られ、当該剥離ライナー、粘着剤組成物層および基材がこの順に積層された積層体を得た。印刷層の形成は、RKプリントコートインスツルメンツ社製、フレキシプルーフ100を使用し、インクとしてT&K TOKA社製のUV161墨を使用して行った。
【0236】
次に、紫外線照射装置としての高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、アイグランテージECS-4011GX)を用いて、積層体の剥離ライナー側から、照射強度48mW/cm2、積算光量60mJ/cm2の条件下にて紫外線C波を含む光線を照射することにより、印刷層を硬化させるとともに、粘着剤組成物層を部分的に硬化させることにより粘着シートを得た。このとき、粘着剤層には、印刷層のパターンに対応して、非硬化部分が形成され、それ以外の部分が硬化部分となった。なお、印刷層についての紫外線C波の透過率は、0.5%以下であった。また、印刷層の厚さは2μmであった。
【0237】
(実施例2)
まず、基材本体として、ポリプロピレンからなる厚さ50μmのフィルムを用意した。当該基材本体についての紫外線C波の透過率は、70%以上であった。
【0238】
この基材本体の一方の面側に、ホットメルト塗工機により紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物を塗工し、厚さ25μmの粘着剤組成物層を形成し、さらに、当該粘着剤組成物層の表面に剥離ライナーを貼り合わせた。紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物としては、ベンゾフェノン基含有アクリル系ホットメルト粘着剤組成物であるBASF社製、商品名「acResin(登録商標)」を用いた。また、剥離ライナーとしては、粘着剤組成物層と接触する面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を用いた。
【0239】
次に、基材本体の外面(粘着剤組成物層に対向する面とは反対の面)側に、所定のパターンで印刷層を形成し、基材本体に印刷層が設けられた基材が得られ、当該基材、粘着剤組成物層および剥離ライナーがこの順に積層された積層体を得た。印刷層の形成は、RKプリントコートインスツルメンツ社製、フレキシプルーフ100を使用し、インクとしてT&K TOKA社製のUV161墨を使用して行った。
【0240】
次に、紫外線照射装置としての高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製、アイグランテージECS-4011GX)を用いて、積層体の基材側から、照射強度48mW/cm2、積算光量60mJ/cm2の条件下にて紫外線C波を含む光線を照射することにより、印刷層を硬化させるとともに、粘着剤組成物層を部分的に硬化させることにより粘着シートを得た。このとき、粘着剤層には、印刷層のパターンに対応して、非硬化部分が形成され、それ以外の部分が硬化部分となった。なお、印刷層についての紫外線C波の透過率は、0.5%以下であった。また、印刷層の厚さは2μmであった。
【0241】
[評価]
まず、前記各実施例で製造した粘着シートから剥離ライナーを剥離した。粘着剤層は、硬化部分も非硬化部分も実質的に透明であり、目視による区別はできなかった。
【0242】
次に、露出した粘着剤層を、被着体としてのガラス板に対向させ、2kgロールで1往復させて荷重を加えることにより前記被着体に貼着し、23℃の環境下で1時間静置した。
その後、慎重に粘着シートを被着体から剥離した。
【0243】
粘着シートが剥離された後の被着体を観察すると、粘着剤層の非硬化部分に対応するパターンで粘着剤組成物が残存し、糊残りを生じていた。言い換えると、粘着シートが剥離された被着体には、第1の情報が付与されていた。
【0244】
また、剥離した粘着シートの粘着剤層を観察したところ、粘着剤層のうち、硬化部分では、糊残りなく、被着体からきれいに剥離することができ、当該硬化部分の表面は、ほぼ平坦であったのに対し、非硬化部分では、被着体への糊残りが発生しており、当該非硬化部分の表面が大きく荒れていた。そして、硬化部分では透明性を維持していたが、非硬化部分では、表面で光が乱反射することにより不透明に(白濁して)見えた。言い換えると、被着体から剥離した後の粘着シートには、第2の情報が付与されていた。
【0245】
[着色評価]
さらに、以下のようにして、被着体上に残存した粘着剤組成物(糊残り)を着色した。
【0246】
糊残りが生じた被着体に、着色シート材として溶融型熱転写インクリボン(大日本印刷社製、R300)を、着色層側を粘着剤組成物に対向させて積層し、質量2kgロールで1往復させて全体に荷重を加えた。
【0247】
被着体から溶融型熱転写インクリボンを剥離したところ、被着体に残存した粘着剤組成物の表面に着色剤が転写され黒色に着色されていた。これにより、被着体に残存した粘着剤組成物のパターン(第1の情報)をより容易に認識することができた。
【0248】
また、被着体から剥離した粘着シートの粘着剤層も同様にして着色した。その結果、粘着剤層のうち粘着シートの面内方向で粘着剤組成物が除去されていない部位の表面に着色剤が転写され黒色に着色されていた。これにより、粘着剤層のうち粘着剤組成物の一部が除去されたパターン(第2の情報)をより容易に認識することができた。
【0249】
また、積層体として、ライナー本体の一方の面側に紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物を塗工して粘着剤組成物層を形成した後、当該粘着剤組成物層上に基材を貼り合わせ、さらにその後、ライナー本体の外面側に印刷層を形成することにより製造したものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造し、前記と同様にして評価を行ったところ前記と同様の結果が得られた。
【0250】
また、積層体として、剥離ライナーの一方の面側に紫外線C波硬化型ホットメルト粘着剤組成物を塗工して粘着剤組成物層を形成した後、当該粘着剤組成物層上に基材本体を貼り合わせ、さらにその後、基材本体の外面側に印刷層を形成することにより製造したものを用いた以外は、前記実施例2と同様にして粘着シートを製造し、前記と同様にして評価を行ったところ前記と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0251】
1…粘着シート
10…基材
11…基材本体
12…印刷層
20…粘着剤層
20’…粘着剤組成物層
21…硬化部分(架橋部分)
22…非硬化部分(非架橋部分)
23…糊残り
30…剥離ライナー
31…ライナー本体
32…印刷層
50…積層体
60…着色シート
61…着色シート基材
62…着色層
100…被着体
200…光源