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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】メディア保持装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/02 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B41J11/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020001095
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021109332
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】成島 裕一
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-056243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記メディアは、前記第1吸引力で吸引される前記テーブル上の位置から位置を変更することなく、前記第2吸引力により吸引された状態で加工手段により加工されることを特徴とするメディア保持装置。
【請求項2】
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを
記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力応じて実施することを特徴とするメディア保持装置。
【請求項3】
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引時間、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力、または
前記載置面に載置された前記メディアを加工する加工手段の加工モードに応じて実施するものであり、
前記制御手段は、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力を検出する吸引力検出部を、有しており、
前記切替部は、
前記吸引力検出部で検出した実際の吸引力の変化量が収束して、前記実際の吸引力が安定すると、前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを実施することを特徴とするメディア保持装置。
【請求項4】
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引時間、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力、または
前記載置面に載置された前記メディアを加工する加工手段の加工モードに応じて実施するものであり、
前記制御手段は、カウンタを有しており、
前記切替部は、
前記カウンタにより、前記第1吸引力での前記メディアの吸引の開始からの経過時間が、予め規定された規定時間に達すると、前記吸引力の前記第2吸引力への切替を実施し、
前記規定時間は、前記第1吸引力での前記メディアの吸引開始から、前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力の変化量が収束するまでの時間であることを特徴とするメディア保持装置。
【請求項5】
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引時間、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力、または
前記載置面に載置された前記メディアを加工する加工手段の加工モードに応じて実施するものであり、
前記制御手段は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを実施する際に、前記吸引力を段階的に弱めると共に、前記吸引力を弱める度に前記実際の吸引力を確認し、
確認した実際の吸引力が、目標吸引力を基準とした第1閾値範囲内であることが確認されると、前記吸引力をさらに弱めることを特徴とするメディア保持装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記確認した実際の吸引力が下限吸引力に達している場合には、前記確認した実際の吸引力が前記第1閾値範囲内であることが確認されても、前記吸引力を弱めないことを特徴とする請求項5に記載のメディア保持装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記確認した実際の吸引力が、前記第1閾値範囲を前記吸引力が弱くなる側に拡大した第2閾値範囲を外れていることが確認されると、前記吸引力を強めることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のメディア保持装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記吸引力を弱めたのち、前記確認した実際の吸引力が、前記第2閾値範囲内であって、前記第1閾値範囲外である間は、前記吸引力を変更せずに維持することを特徴とする請求項7に記載のメディア保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたインクジェットプリンタは、メディアが載置される吸引テーブル(印刷台)に、ファンを用いる吸着手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-175948号公報
【0004】
特許文献1のインクジェットプリンタでは、メディアへの印刷時に、吸着手段(吸引力発生手段)が発生する吸着力(吸引力)により、メディアが吸引テーブルの上面に固定される。
特許文献1のインクジェットプリンタでは、吸引力発生手段で発生される吸引力が、印刷するメディアの厚みに応じて変更される。吸引力の変更は、ファンの回転速度を変更することで実現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、必要とされる吸引力に応じて決まる一定速度でファンを回転させることで、吸引力を発生させる。
吸引力発生手段が発生させる吸引力は、メディアの厚みだけでなく、メディアの面積や、温度、湿度などの影響を受ける。
【0006】
そのため、ファンを一定速度で回転させるだけでは、吸引力を適切に発生させているとはいえない。
そこで、吸引力を最適化できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件、第1の発明は、
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア
保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面
に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第
2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記メディアは、前記第1吸引力で吸引される前記テーブル上の位置から位置を変更することなく、前記第2吸引力により吸引された状態で加工手段により加工される構成とした。
【0008】
本発明によれば、メディアをテーブル上に保持できる吸引力を維持しつつ、吸引力を最適化できる。
【0009】
本件、第2の発明は、
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを
記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力に応じて実施する構成とした。
【0010】
本発明によれば、メディアをテーブル上に保持できる吸引力を維持しつつ、適切なタイミングで吸引力を調整できる。
【0011】
本件、第3の発明は、
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引時間、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力、または
前記載置面に載置された前記メディアを加工する加工手段の加工モードに応じて実施するものであり、
前記制御手段は、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力を検出する吸引力検出部を、有しており、
前記切替部は、
前記吸引力出部で検出した実際の吸引力の変化量が収束して、前記実際の吸引力が安定すると、前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを実施する構成とした。
【0012】
本発明によれば、メディアをテーブル上に保持できる吸引力を維持しつつ、適切なタイミングで吸引力を調整できる。
【0013】
本件、第4の発明は、
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引時間、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力、または
前記載置面に載置された前記メディアを加工する加工手段の加工モードに応じて実施するものであり、
前記制御手段は、カウンタを有しており、
前記切替部は、
前記カウンタにより、前記第1吸引力での前記メディアの吸引の開始からの経過時間が、予め規定された規定時間に達すると、前記吸引力の前記第2吸引力への切替を実施し、
前記規定時間は、前記第1吸引力での前記メディアの吸引開始から、前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力の変化量が収束するまでの時間である構成とした。
【0014】
本発明によれば、メディアをテーブル上に保持できる吸引力を維持しつつ、適切なタイミングで吸引力を調整できる。
【0015】
本件、第5の発明は、
メディアの載置面を有するテーブルと、
前記載置面に形成した透孔を介して吸引力を発生させる吸引力発生手段と、
前記吸引力発生手段で発生させる前記吸引力を制御する制御手段と、を有するメディア保持装置であって、
前記制御手段は、
前記メディアが前記載置面に載置されると、前記吸引力発生手段によって、前記載置面に第1吸引力を発生させて前記メディアを吸引し、その後、前記第1吸引力よりも弱い第2吸引力に切り替えて前記メディアを吸引する切替部を有し、
前記切替部は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引時間、
前記第1吸引力での前記メディアの吸引により実現する実際の吸引力、または
前記載置面に載置された前記メディアを加工する加工手段の加工モードに応じて実施するものであり、
前記制御手段は、
前記第1吸引力から前記第2吸引力への切り替えを実施する際に、前記吸引力を段階的に弱めると共に、前記吸引力を弱める度に前記実際の吸引力を確認し、
確認した実際の吸引力が、目標吸引力を基準とした第1閾値範囲内であることが確認されると、前記吸引力をさらに弱める構成とした。
【0016】
本発明によれば、メディアをテーブル上に保持できる吸引力を維持しつつ、吸引力を段階的に低下させるので、吸引力低下させている途中で、吸引力が低下して、メディアをテーブル上で適切に保持できなくなる事態の発生を好適に防止できる。
【0017】
本件、第6の発明は、
前記制御手段は、前記確認した実際の吸引力が下限吸引力に達している場合には、前記確認した実際の吸引力が前記第1閾値範囲内であることが確認されても、前記吸引力を弱めない構成とした。
【0018】
本発明によれば、吸引力を第2吸引力よりも低下させると、メディアのテーブル上での保持が困難になる可能性がある。そのため、吸引力を段階的に低減させる際に、第2吸引力を限度として吸引力を低減させることで、吸引力が低下して、メディアを吸引テーブル上で適切に保持できなくなる事態の発生を好適に防止できる。
【0019】
本件、第7の発明は、
前記制御手段は、
前記確認した実際の吸引力が、前記第1閾値範囲を前記吸引力が悪くなる側に拡大した第2閾値範囲を外れていることが確認されると、前記吸引力発生手段の出力レベルを増加させる構成とした。
【0020】
本発明によれば、吸引テーブル上に発生させる吸引力が低下した場合に、低下した吸引力を速やかに元の吸引力まで復帰させることができる。
【0021】
本件、第8の発明は、
前記制御手段は、
前記吸引力を低減させたのち、前記確認した実際の吸引力が、前記第2閾値範囲内であって、前記第1閾値範囲外である間は、前記吸引力を変更せずに維持する構成とした。
【0022】
本発明によれば、吸引力の低下がメディアの支持を損なわない間は、吸引力を変更せずに維持することで、メディアを適切に保持できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、吸引力を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】インクジェット印刷装置の斜視図である。
図2】インクジェット印刷装置の平面図である。
図3】吸引テーブルと吸引力発生機構との接続関係を模式的に示した図である。
図4】制御装置で実施する吸引力調整処理のフローチャートである。
図5】制御装置で実施する吸引力調整処理のフローチャートである。
図6】変形例にかかる吸引力調整処理のフローチャートである。
図7】変形例にかかる吸引力調整処理を実施している際のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、インクジェット印刷装置1の吸引テーブル2に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、インクジェット印刷装置1の斜視図である。
図2は、インクジェット印刷装置1を上方から見た平面図である。
図3は、吸引テーブル2と吸引力発生機構5との接続関係を模式的に示した図である。
図3では、吸引テーブル2における吸引力の発生に関与する部分を模式的に断面で示しており、この断面は、図2におけるA-A線に沿う断面に相当する。
【0026】
以下の説明においては、インクジェット印刷装置1の各構成要素の配置を、必要に応じて、X方向、Y方向、Z方向を基準として説明する。
ここで、インクジェット印刷装置1の設置状態を基準とした鉛直線方向が、Z方向である。キャリッジ4(インクジェットヘッド41)の主走査方向がY方向である。キャリッジ4(インクジェットヘッド41)の副走査方向が、X方向である。
【0027】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、印刷対象物であるメディアMが載置される吸引テーブル2(テーブル)を有している。
吸引テーブル2の上方には、Y方向に沿う向きで配置されたガイドレール3(Yバー)が設けられている。
ガイドレール3の長手方向の一端と他端は、吸引テーブル2の幅方向(Y方向)の両側に配置された支持部材31、32で支持されている。
【0028】
支持部材31、32は、図示しない駆動機構により、吸引テーブル2の長手方向(X方向)に移動可能に設けられている。
インクジェット印刷装置1では、支持部材31、32が、吸引テーブル2の長手方向(X方向)に移動すると、支持部材31、32で支持されたガイドレール3もまた、吸引テーブル2の長手方向(X方向)に移動する。
【0029】
ガイドレール3は、吸引テーブル2を幅方向(Y方向)に横断する向きで設けられていると共に、吸引テーブル2の上方で水平に設けられている。
ガイドレール3では、インクジェットヘッド41(図2における隠れ線参照)を保持するキャリッジ4が支持されている。キャリッジ4は、ガイドレール3の長手方向(Y方向)に進退移動可能に設けられている。
【0030】
インクジェット印刷装置1では、吸引テーブル2上のメディアMに対して印刷を行う際に、支持部材31、32が、図示しない駆動機構により副走査方向(X方向)に移動すると共に、キャリッジ4が、図示しない駆動機構により主走査方向(Y方向)に移動する。
【0031】
この際に、メディアMの上方に位置するインクジェットヘッド41から、メディアMの上面に向けてインク滴が吐出されて、メディアM上に、文字や画像などの情報が印刷される。メディアM上に吐出されたインク滴は、インクジェットヘッド41の両側のUV照射装置42から照射される紫外線により固化して、メディアM上に定着する。UV照射装置42は、Y方向におけるインクジェットヘッド41の両側に位置している。
【0032】
図3に示すように、インクジェット印刷装置1の吸引テーブル2は、上面に開口部20aを有するテーブルベース20と、テーブルベース20の開口部20aに内嵌するテーブルトップ21と、を有している。
テーブルベース20は、底壁部201と、底壁部201の外周を囲む周壁部202と、を有している。鉛直線方向(Z方向)の上側から見た平面視においてテーブルベース20は、長方形形状を成している。
【0033】
吸引テーブル2を上方から見た平面視において、テーブルベース20の開口部20aは、長方形形状を成している。テーブルトップ21もまた、平面視において長方形形状を成している。テーブルトップ21を開口部20aに内嵌すると、テーブルベース20とテーブルトップ21との間に、内部空間23が形成される。
【0034】
テーブルトップ21の上面は、メディアMの載置面21aとなっており、載置面21aには、略全面に亘って複数の吸引孔22(透孔)が設けられている。
吸引テーブル2の内部空間23は、テーブルトップ21に設けた吸引孔22を介して、外部と連通している。
【0035】
吸引テーブル2のテーブルベース20には、吸引力発生機構5の配管51が接続されている。配管51は、吸引テーブル2の内部空間23に連通している。
配管51には、吸引力発生機構5の送風機52が設けられている。送風機52は制御装置55が制御するインバータ53により駆動される。
【0036】
送風機52の出力レベルは、インバータ53の出力レベルに応じて変化する。インバータ53が最大出力レベルで駆動されると、送風機52は、最大出力レベルで稼動して、送風機52の送風量が最大となる。インバータ53の出力レベルの増減に連動して、送風機52の出力レベルが増減する。
【0037】
送風機52は、図示しない羽根車の回転により、当該送風機52の一方側から他方側に向かう空気の流れを形成する。送風機52の稼動/停止は、制御装置55が制御する。
本実施形態では、送風機52は、吸引テーブル2の内部空間23から送風機52に向かう空気の流れを配管51の内部に形成し、内部空間23内に、大気圧よりも低い圧力状態(負圧状態)を発生させる。
【0038】
配管51では、内部空間23との連通口の近傍に、圧力センサ54が設けられている。圧力センサ54の出力信号は、制御装置55に入力される。
【0039】
制御装置55は、圧力算出部551と、吸引力制御部552と、切替部553と、カウンタ554と、を機能ブロックとして有している。
圧力算出部551は、圧力センサ54の出力信号から、内部空間23の内部の圧力値Pinを算出する。本実施形態では、内部空間23の圧力値Pinを、吸引テーブル2の載置面21aに生ずる吸引力を示す指標として取り扱っている。
そのため、算出した内部空間23の内部の圧力値Pinの大小は、吸引テーブル2に生じる吸引力の大小を意味している。
【0040】
吸引力制御部552は、インバータ53の出力レベルを制御して、送風機52の稼動/停止と、送風機52の送風量を制御する。
切替部553は、インバータ53の出力レベルを切り替えて、吸引テーブル2に発生する吸引力を変更する。具体的には、圧力算出部551が算出した内部空間23の圧力値Pinに基づいて、インバータ53の出力レベルを切り替える。
カウンタ554は、送風機52の稼動開始からの経過時間をカウントする。
【0041】
ここで、送風機52は、配管51内に空気の流れを形成できるものであれば、特に限定されない。圧縮比が、1.1以下となるファンや、圧縮比が1.1-2.0程度のブロワなど適宜選択可能である。
【0042】
送風機52が駆動されると、内部空間23の空気が送風機52側に吸引されて、配管51の出口から外部に排出される。
そうすると、吸引テーブル2の内部空間23に負圧が発生し、吸引テーブル2の載置面21aに開口する吸引孔22から、内部空間23に空気が引き込まれる。
この空気の流れにより、吸引テーブル2の載置面21aでは、吸引孔22に吸引力(負圧)が発生する。
【0043】
吸引テーブル2に載置されたメディアMは、送風機52の稼動により発生する吸引力で、吸引テーブル2の載置面21aに吸い付けられて、水平方向(X方向、Y方向)の移動が規制された状態で保持される。
インクジェット印刷装置1では、水平方向の移動が規制されたメディアMに対して、画像や文字なのどの情報の印刷が行われる。
【0044】
ここで、吸引テーブル2の大きさは、インクジェット印刷装置1で印刷する最も大きいサイズのメディアに合わせて設定されている。
そのため、載置面21aよりも小さい面積のメディアMの場合には、載置面21aに開口する吸引孔22の一部が、メディアMで覆われずに解放状態となる。
【0045】
送風機52を駆動して吸引力を発生させる際には、メディアMで覆われていない吸引孔22の領域から、より多くの空気が内部空間23に流入する。
そうすると、内部空間23に発生する負圧が、メディアMで覆われていない吸引孔22の領域から内部空間23に流入する空気により低下する。かかる場合、メディアMで覆われている吸引孔22の領域に発生する吸引力が低下して、載置面21a上でのメディアMの保持に影響が及ぶことがある。
【0046】
そのため、メディアMを載置面21a上で保持するために、内部空間23に発生させる負圧を大きくして、メディアMで覆われていない吸引孔22の領域に発生させる吸引力を大きくする必要がある。
【0047】
しかしながら、内部空間23に発生させる負圧を大きくすると、メディアMで覆われていない吸引孔22の領域では、吸引孔22を通って内部空間23に流入する空気の流速が増大する。そうすると、空気が吸引孔22を通過する際に生じる音が、負圧の増大に伴って大きくなり、インクジェット印刷装置1の騒音レベルが高くなる。
また、内部空間23に発生する負圧が大きくなると、吸引孔22の領域に発生する吸引力が大きくなるので、メディアMの厚みによっては、メディアMに吸引孔22の形に倣う模様が生じてしまう。
【0048】
本実施形態では、内部空間23の圧力値Pinを、吸引テーブル2で発生させる吸引力の指標と見なして、制御装置55による送風機52の制御に利用している。
具体的には、制御装置55が、内部空間23の負圧(吸引力)を損なわない範囲で、送風機52の送風量を調整して、送風機52の送風量を最適化している。
【0049】
送風機52の送風量が最適化されて低下すると、内部空間23に流入する空気の勢いが抑制されるので、吸引孔22を空気が通過する際に生じる音が抑制されると共に、メディアMに吸引孔22の形に倣う模様が生じることが抑制される。
【0050】
以下、インクジェット印刷装置1の制御装置55で実施する処理の一例を説明する。
図4図5は、制御装置55で実施する吸引力調整処理のフローチャートである。
インクジェット印刷装置1では、吸引テーブル2に発生させる吸引力の指標として、圧力センサ54で測定した内部空間23の圧力値Pinを用いる。
そのため、インクジェット印刷装置1では、メディアMに対する印刷を実施するに当たり、内部空間23内の圧力の目標値が設定される。
【0051】
目標圧力値Ptは、吸引テーブル2に目標吸引力(第1吸引力)を発生させる内部空間23の圧力の目標値である。
目標圧力値Ptは、ユーザが手動で任意に設定しても良く、メディアMの大きさに応じて決まる所定値に、一律に設定されるようにしても良い。
【0052】
制御装置55(吸引力制御部552)は、目標圧力値Ptが設定されると(ステップS101、Yes)、インバータ53の出力レベルを最大出力レベルに設定する。
なお、インバータ53の出力レベルは、必ずしも、最大出力レベルに設定する必要はなく、内部空間23の圧力を目標圧力値Ptに向けて低下させることができる出力レベルであれば良い。
【0053】
ここで、目標圧力値Ptの設定可能範囲が、-4kPa~-13kPaである場合には、この範囲内で、目標圧力値Ptが設定される。
また、本実施形態では、インバータの出力レベルは、一例として「0」から「20」までの21段階に分かれている。例えば、出力レベルが「20」に設定されると、送風機52の送風量が最大となり、出力レベルが「0」に設定すると、送風機52による送風が停止する。
よって、インバータの出力レベルが大きくなるほど、送風機52の出力レベルもまた大きくなって、内部空間23から送風機52側に引き込まれる風量が増えるので、吸引テーブル2の内部空間23の圧力値Pinを低くできる。すなわち、発生させる吸引力を高めることができる。
【0054】
制御装置55(吸引力制御部552)は、インバータ53を設定した出力レベルで制御して、送風機52を稼動させる(ステップS103)。
制御装置55(圧力算出部551)は、カウンタ554により予め設定されたウェイト時間(例えば、1秒)の経過が確認されると(ステップS104、Yes)、圧力センサ54の出力値から、内部空間23の圧力値Pin(現時点の吸引力)を取得する(ステップS105)。
【0055】
制御装置55(切替部553)は、内部空間23の圧力値Pinが、第1閾値範囲内に到達して、内部空間23の減圧が完了したか否かを確認する(ステップS106)。
具体的には、下記式(1)の条件が満たされた場合に、内部空間23の減圧が完了したと判断する。
Pin-Pt<1 (1)
ここで、Pinは、現時点の内部空間23の圧力値であり、Ptは、ステップS101で設定した内部空間の目標圧力値である。
【0056】
停止していた送風機52を稼動すると、内部空間23の圧力値Pinが大気圧から目標圧力値Ptに向けて低下する。
例えば、目標圧力値Ptが-5kPaである場合、内部空間23の圧力値Pinが、-4kPa~-5kPaの範囲内になると、上記式(1)の条件が満たされて、内部空間23の減圧が完了したと判定される(ステップS106、Yes)。
【0057】
第1閾値範囲は、目標圧力値Ptを基準とした吸引力が弱く(圧力値Pinが低く)なる側の所定範囲である。本実施形態では、目標圧力値Ptが-5kPaである場合、-4kPa~-5kPaの範囲が、第1閾値範囲として設定されている。
【0058】
よって、内部空間23の圧力値Pinが、第1閾値範囲内に入るまでの間は、ステップS106の判定が否定されるので、ステップS104~S106までの処理が繰り返される。
【0059】
そして、目標圧力値Ptに向けて低下した内部空間23の圧力値Pinが、第1閾値範囲内に入ると(ステップS106、Yes)、内部空間23の減圧が完了したと判定されて、ステップS107(図5参照)の処理に移行する。
【0060】
ステップS107以降の処理は、インバータ53の出力レベルを調整して、送風機52の稼動を最適化するための処理である。
具体的には、内部空間23の圧力値PinをメディアMの移動を規制できる圧力範囲で保持しつつ、送風機52の送風量を抑えることで、送風機52の稼動を最適化する処理である。
【0061】
ステップS107において制御装置55(切替部553)は、インバータ53の出力レベルが、下限出力レベルよりも大きいか否かを確認する。
一例として、インバータの出力レベルが「0」から「20」までの21段階に分かれている場合には、インバータの下限出力ベルは、出力レベル「2」である。
この出力レベルでは、送風機52の送風量が、内部空間23内を負圧状態で維持できる最低風量となる。
そして、出力レベル「2」であるときの内部空間23の負圧状態は、吸引テーブル2上でメディアMの移動を規制して、メディアMを吸引テーブル2上に保持できる最小の圧力を意味する。
メディアMを吸引テーブル2上に保持できる最小の圧力のときに吸引テーブル2に発生する吸引力が、下限吸引力に相当する。
【0062】
ステップS106の処理を経て移行した最初のステップS107では、インバータ53の出力レベルが、ステップS102で設定した最大出力レベルのままである。そのため、ステップS107の判定が肯定されて(ステップS107、Yes)、ステップS108の処理に移行する。
ステップS107は、後記する処理によりインバータの出力レベルを低減させた際に、出力レベルが下限まで達しているのかを確認するために設けられる。
【0063】
ステップS108において制御装置55(切替部553)は、インバータの出力レベルを1段階低下させる。これにより、インバータの出力レベルが「20」であった場合には、インバータの出力レベルが「19」に変更される。
【0064】
制御装置55(圧力算出部551)は、カウンタ554により予め設定されたウェイト時間(例えば、1秒)の経過が確認されると(ステップS110、Yes)、圧力センサ54の出力信号から、内部空間23の圧力値Pinを取得する(ステップS111)。
【0065】
制御装置55(切替部553)は、内部空間23の圧力値Pinが、第2閾値範囲内に留まっており、内部空間23の減圧レベルが許容範囲内であるか否かを確認する(ステップS112)。
具体的には、下記式(2)の条件が満たされた場合に、内部空間23の減圧レベルが許容範囲内であると判断する。
Pin-Pt<3 (2)
ここで、Pinは、現時点の内部空間23の圧力値であり、Ptは、ステップS101で設定した目標圧力値である。
【0066】
インバータの出力レベルを1段階下げると、送風機52の送風量が低下する結果、内部空間23の圧力値Pinが、目標圧力値Ptから吸引力が悪くなる側に低下する可能性がある。
例えば、目標圧力値Ptが-5kPaである場合、内部空間23の圧力値Pinが、-2kPa~-5kPaの範囲内であれば、上記式(2)の条件が満たされて、内部空間23の減圧レベルが、許容範囲内であると判定される(ステップS112、Yes)。
【0067】
第2閾値範囲は、目標圧力値Ptを基準として、第1閾値範囲を圧力値が低くなる側(吸引力が低下する側)に拡大した所定範囲である。例えば、目標圧力値Ptが-5kPaである場合、-4kPa~-5kPaの範囲が、第2閾値範囲として設定されている。
【0068】
内部空間23の圧力値Pinが、第2閾値範囲内である場合(ステップS112、Yes)、送風機52の送風量の低下による内部空間23の減圧レベルへの影響が、メディアMの保持に影響しない許容範囲であることになる。
かかる場合、ステップS113において制御装置55(切替部553)は、内部空間23の圧力値Pinが、第1閾値範囲内にあって、インバータの出力レベルの更なる低減が可能であるか否かを確認する(ステップS113)。
具体的には、下記式(3)の条件が満たされている場合に、インバータの出力レベルの更なる低減が可能であると判定される。
Pin-Pt<1 (3)
ここで、Pinは、現時点の内部空間23の圧力値であり、Ptは、ステップS101で設定した目標圧力値である。
【0069】
ステップS108でインバータの出力レベルを1段階下げたことにより、送風機52の送風量が低下して、吸引テーブル2の内部空間23の圧力値Pinが、目標圧力値Ptから離れる方向(吸引力が悪くなる方向)に低下する可能性がある。
しかしながら、インバータの出力レベルを1段階下げても、上記式(1)の要件が満たされている場合には、インバータの出力レベルをさらに1段階下げる余地があることになる。
かかる場合、インバータの出力レベルの更なる低減が可能であると判定されて(ステップS113、Yes)、ステップS107の処理に移行する。
これにより、新たに実施されるステップS108において、インバータの出力レベルがさらに1段階下げられることになる。例えば、インバータの出力レベルが「19」から「18」に変更される。
【0070】
なお、内部空間23の圧力値Pinが第2閾値範囲内である(ステップS112、Yes)ものの、第1閾値範囲外である(ステップS113、No)場合、送風機52の送風量の低下が、メディアMの保持に影響しない許容範囲内であるものの、インバータの出力レベルをさらに1段階下げることができないことになる。
この場合には、ステップS110からステップS113までの処理が繰り返されて、インバータの出力レベルが維持されたままとなる。
【0071】
このステップS110からステップS113までの処理が繰り返される間に、内部空間23の圧力値Pinが第1閾値範囲内に到達すると(ステップS113、Yes)、ステップS107の処理に移行する。
かかる場合、内部空間23の圧力値Pinが、インバータの出力レベルの更なる低減が可能な圧力値に到達していることになるので、ステップS107に続く新たなステップS108において、インバータの出力レベルがさらに1段階下げられることになる。
【0072】
そして、上記式(2)、(3)の条件が満たされて、インバータの出力レベルの更なる低減が可能である間は、ステップS107からステップS113の処理が繰り返されて、インバータの出力レベルが1段階ずつ、段階的に低減される。
そして、インバータの出力ベレルが、下限出力レベルに到達すると(ステップS107、No)、以降、インバータの出力レベルが下限出力レベルで維持されることになる(ステップS109)。これにより、送風機52の送風量が、内部空間23の圧力値Pinが、内部空間23を負圧状態で維持できる送風量で保持される。
【0073】
一方、インバータの出力レベルを1段階下げたのち、内部空間23の圧力値Pinが第2閾値範囲を外れると(ステップS112、No)、制御装置55(切替部553)は、現時点のインバータの出力レベルが最大出力レベル未満であるか否かを確認する(ステップS114)。
インバータの出力レベルが最大出力レベルである場合には、インバータの出力レベルを増加させて、送風機52の送風量を増加させることによって、内部空間23の圧力値Pinを下げることができないからである。
【0074】
現時点のインバータの出力レベルが最大出力レベル未満である場合には(ステップS114、Yes)、制御装置55(切替部553)は、インバータの出力レベルを1段階増加する(ステップS115)。
【0075】
そして、制御装置55(切替部553)は、インバータの出力レベルを1段階増加させた後の内部空間23の圧力値Pinが、第2閾値範囲内であるか否かを確認する(ステップS112)。
そして、インバータの出力レベルを1段階上げた後も、内部空間23の圧力値Pinが、第2閾値範囲外である場合(ステップS112、No)には、ステップS110、S111、S112、S114が繰り返される。
【0076】
これにより、内部空間23の圧力値Pinが、第2閾値範囲内外である間、インバータの出力レベルが1段階ずつ引き上げられる(ステップS112、S114)。
そして、インバータの出力レベルが最大出力レベルまで引き上げられると(ステップS114、No)、これ以上出力レベルを上げることができないので、前記したステップS104の処理(図4、参照)に移行する。
【0077】
また、インバータの出力レベルを1段階ずつ引き上げている途中で、内部空間23の圧力値Pinが第2閾値範囲内になると(ステップS112、Yes)、内部空間23の圧力値Pinが第1閾値範囲内に到達するまでの間(ステップS113、No)、ステップS110、S111、S112、S113が繰り返される。
【0078】
例えば、目標圧力値Ptが-5kPaである場合、内部空間23の圧力値Pinが、-2kPa~-5kPaの範囲内(第2閾値範囲内)であれば、インバータの出力レベルが変更されることなく保持される。
【0079】
そして、ステップS110、S111、S112、S113を繰り返している途中で、内部空間23の圧力値Pinが第1閾値範囲内になると(ステップS113、Yes)、ステップS107の処理に移行する。
【0080】
かかる場合、内部空間23の圧力値Pinが、インバータの出力レベルの更なる低減が可能な圧力値に到達していることになるので、ステップS107に続く新たなステップS108において、インバータの出力レベルがさらに1段階下げられることになる。
【0081】
そして、上記式(2)、(3)の条件が満たされて、インバータの出力レベルの更なる低減が可能である間は、ステップS107からステップS113の処理が繰り返されて、インバータの出力レベルが1段階ずつ、段階的に低減される。
【0082】
このように、制御装置55(切替部553)は、内部空間23の圧力値Pinを少なくとも第2閾値範囲内に保持しつつ、インバータ53の出力レベルを増減させて、送風機52の送風量の最適化を行う。
すなわち、制御装置55(切替部553)が、吸引力を維持しつつ、送風機52の出力レベルを段階的に低下させるので、送風機52の出力レベルを低下させている途中で、吸引力が低下して、メディアMを吸引テーブル上で適切に保持できなくなる事態の発生を好適に防止できる。
【0083】
ここで、発明における第2吸引力は、第1吸引力よりも弱い吸引力であって、第1吸引力と下限吸引力との間の吸引力(第1吸引力>第2吸引力≧下限吸引力)である。
送風機52の出力レベルを段階的に低下させる場合には、第2吸引力は、吸引テーブル2に載置されるメディアMの種類や大きさ、インクジェット印刷装置1や送風機52の機体差、使用環境などに応じて変化する。
【0084】
なお、実施形態では、第1吸引力から第2吸引力への切り替えを、制御装置55(切替部553)が、内部空間23の圧力値Pinに基づいて実施する場合を例示した。
第1吸引力から第2吸引力への切り替えのタイミングを、以下のようにしても良い。
(a)載置面21a上へのメディアMの載置による送風機52の駆動開始から、所定時間が経過した時点。この場合、制御装置55が備えるカウンタ554で、送風機52の駆動開始からの経過時間がカウントされる。
(b)インクジェット印刷装置1の動作モードが、載置面21a上へのメディアMの載置モードから、載置されたメディアMに対する印刷を行う印刷モードに切り替えられた時点。すなわち、メディアMに対する印刷操作が開始されるまでの間でも良い
【0085】
以上の通り、本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(1)インクジェット印刷装置1(メディア保持装置)は、
メディアMの載置面21aを有する吸引テーブル2(テーブル)と、
載置面21aに吸引力を発生させる送風機52(吸引力発生手段)と、
送風機52で発生させる吸引力を制御する制御装置55(制御手段)と、を有する。
制御装置55は、発生させる吸引力を切り替える切替部553を有しており、
切替部553は、メディアMが載置面21aに載置されると、送風機52を第1の出力レベルで駆動して第1吸引力を発生させて、載置面21aに載置されたメディアMを吸引する。その後、送風機52を第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルで駆動して、第1吸引力よりも弱い第2吸引力を発生させて、載置面21aに載置されたメディアMを吸引する構成とした。
【0086】
このように構成すると、メディアMを吸引テーブル2上に保持できる吸引力を維持しつつ、吸引力を最適化できる。
【0087】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(2)制御装置55(切替部553)は、
第1吸引力から第2吸引力への切り替えを、(a)第1吸引力でのメディアMの吸引時間、(b)第1吸引力でのメディアMの吸引により実現する実際の吸引力(吸引テーブル2の内部空間23の圧力値Pin)、または(c)載置面21aに載置されたメディアMを加工する加工手段の加工モード(インクジェット印刷装置1の動作モード)に応じて実施する。
【0088】
このように構成すると、メディアMを吸引テーブル2上に保持できる吸引力を維持しつつ、適切なタイミングで、吸引力を最適化できる。
【0089】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(3)制御装置55は、
第1吸引力でのメディアMの吸引により実現する実際の吸引力を検出する圧力センサ54(吸引力検出部)を、有している。
切替部553は、
圧力センサ54で検出した実際の吸引力の変化量が収束して、実際の吸引力が安定すると、第1吸引力から第2吸引力への切り替えを実施する。
【0090】
このように構成すると、メディアMを吸引テーブル2上に保持できる吸引力を維持しつつ、適切なタイミングで、吸引力を最適化できる。
【0091】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(4)制御装置55は、カウンタ554を有している。
切替部553は、カウンタ554により、第1吸引力でのメディアMの吸引の開始からの経過時間が、予め規定された規定時間に達すると、吸引力の第2吸引力への切替を実施する。
規定時間は、第1吸引力でのメディアMの吸引開始から、第1吸引力でのメディアMの吸引により実現する実際の吸引力の変化量が収束するまでの時間である。
【0092】
このように構成すると、メディアMを吸引テーブル2上に保持できる吸引力を維持しつつ、適切なタイミングで、吸引力を最適化できる。
【0093】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(5)制御装置55(切替部553)は、
送風機52の出力レベルを、吸引力を第1吸引力から第2吸引力に切り替える際に、吸引力を段階的に低減させて、吸引力を段階的に低減させる。
制御装置55(切替部553)は、
送風機52の出力レベルを低減させる度に、吸引力の指標である内部空間23の圧力値Pin(実際の吸引力)を確認し、
確認した圧力値Pinが、目標圧力値Pt(目標吸引力)を基準とした第1閾値範囲内であることが確認されると、送風機52の出力レベルをさらに低減させて、吸引力を低減させる。
【0094】
本発明によれば、吸引力を維持しつつ、送風機52の出力レベルを段階的に低下させるので、送風機52の出力レベルを低下させている途中で、吸引力が低下して、メディアMを吸引テーブル2上で適切に保持できなくなる事態の発生を好適に防止できる。
【0095】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(6)制御装置55(切替部553)は、吸引力の指標である内部空間23の圧力値Pin(実際の吸引力)を確認し、確認した実際の吸引力が下限吸引力に達している場合には、確認した圧力値Pinが第1閾値範囲内であることが確認されても、送風機52の出力レベルを変更しない。
【0096】
送風機52の出力レベルを下限出力レベルよりも低下させると、吸引力の維持が困難になる可能性がある。そのため、送風機52の出力レベルを段階的に低減させる際に、下限吸引力を限度として出力レベルを低減させることで、吸引力が低下して、メディアMを吸引テーブル2上で適切に保持できなくなる事態の発生を好適に防止できる。
【0097】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(7)制御装置55(切替部553)は、
確認した圧力値Pinが、第1閾値範囲を吸引力が弱くなる側に拡大した第2閾値範囲を外れていることが確認されると、送風機52の出力レベルを増加させて、吸引力を高める。
【0098】
このように構成すると、吸引テーブル2上に発生させる吸引力が低下して、圧力値Pinが第2閾値範囲よりも吸引力が悪くなる側に外れた場合に、低下した吸引力を速やかに元の吸引力まで復帰させることができる。
【0099】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(8)制御装置55(切替部553)は、送風機52の出力レベルを低減させて吸引力を弱めたのち、確認した圧力値Pinが、第2閾値範囲内であって、第1閾値範囲外である間は、送風機52の出力レベルを変更せずに維持することで、吸引力を変更せずに維持する。
【0100】
吸引力の低下がメディアMの支持を損なわない間は、送風機52の出力レベルを変更せずに維持することで、メディアMを適切に保持できる。
【0101】
本実施形態にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(9)制御装置55(切替部553)は、載置面21aに載置されたメディアMに対する印刷操作が開始されるまでの間に、
送風機52の出力レベルを、圧力値Pinを第1閾値範囲内で保持できる最小の出力レベルまで低減させる。
【0102】
このように構成すると、載置面21a上にメディアMを確実に保持した状態で、メディアMに対する印刷操作を行える。メディアMの保持が不十分であると、メディアMの表面にシワや浮きが生じることがあり、かかる場合には、シワや浮きが生じた部分での印刷に支障が生じる場合があるが、かかる事態の発生を好適に防止できる。
【0103】
[変形例]
前記した実施形態では、送風機52を最大出力レベルで駆動して、吸引力の指標である内部空間23の圧力値Pinを、目標圧力値Ptを基準とした第1閾値範囲内の圧力値Pinまで到達させたのち、送風機52を駆動するインバータ53の出力レベルを、内部空間23内の圧力値Pinを維持しつつ、段階的に低下させる場合を例示した。
送風機52の出力レベルの調整はこの態様にのみ限定されない。
例えば、送風機52を最大出力レベルで駆動して、吸引力を増加させている過程で、圧力値Pinの単位時間当たりの変化率が、閾値の変化率未満になったのち、送風機52の出力レベルを、内部空間23内の圧力値Pinを第1閾値範囲内で保持できる最小の出力レベルまで低減させるように構成しても良い。
【0104】
図6は、変形例にかかる吸引力調整処理のフローチャートである。
図7の(a)は、変形例にかかる吸引力調整処理を実施している際の内部空間23内の圧力値Pin(吸引力)の変化を説明するタイムチャートである。
図7の(a)は、変形例にかかる吸引力調整処理を実施している際の送風機52の風量の変化を説明するタイムチャートである。
【0105】
変形例にかかる吸引力調整処理では、制御装置55(吸引力制御部552)は、吸引テーブル2に目標の吸引力を実現するための目標値、すなわち、内部空間23の圧力値Piの目標値(目標圧力値Pt)が設定されると(ステップS201、Yes)、インバータ53の出力レベルの初期出力レベルを決定する(ステップS202)。
初期出力レベルは、目標圧力値PtやメディアMのサイズ等に応じて決まる固定値である。実験やシミュレーションを通して決定された値である。なお、初期出力レベルを、最大出力レベルとしても良い。
【0106】
制御装置55(吸引力制御部552)は、インバータ53を設定した出力レベルで制御して、送風機52を稼動させる(ステップS203)。
制御装置55(圧力算出部551)は、カウンタ554により予め設定されたウェイト時間(例えば、1秒)の経過が確認されると(ステップS204、Yes)、圧力センサ54の出力値から、内部空間23の圧力値Pin(現時点の吸引力)を取得する(ステップS205)。
【0107】
制御装置55(切替部553)は、既に測定された内部空間23の圧力値Pinのデータ(過去データ)の有無を確認する(ステップS206)。
停止していた送風機52の稼動直後は、過去データが存在しないことになる(ステップS206、No)ので、かかる場合はステップS204の処理に移行する。
【0108】
圧力値Pinの過去データが存在する場合、制御装置55(切替部553)は、前回測定した内部空間23の圧力値Pinと、今回測定した内部空間23の圧力値Pinとの差分から、単位時間あたりの変化率ΔP/minを算出する(ステップS207)。
【0109】
そして、算出した差分ΔPが、第3閾値Th3よりも小さいか否かを確認する(ステップS208)
停止していた送風機52を稼動すると、内部空間23内の圧力値Pinは、大気圧から目標圧力値Ptに向けて減少する(図7の(a)参照)。そして、圧力値Pinは、送風機52の稼動開始(時刻t0)直後では変化率が大きいものの、稼動開始からの経過時間が長くなると、変化率が小さくなって、圧力値Pinが下がり難くなる。
すなわち、内部空間23内の圧力値Pin変化量が収束して圧力値が安定する結果、吸引テーブル2上の吸引力が安定する。
【0110】
変形例では、内部空間23内の圧力値Pinの変化率が第3閾値Th3未満になった時点で、内部空間23の減圧が完了したと判断する(ステップS208、Yes)。
そして、制御装置55(切替部553)は、送風機52の段階的制御を行わない場合には(ステップS209、No)、インバータの出力レベルを、調整済出力レベルに変更する。
ここで、調整済出力レベルは、内部空間23の圧力値PinをメディアMの移動を規制できる圧力範囲で保持しつつ、送風機52の送風量を抑えることができる出力レベルである。調整済出力レベルは、実験やシミュレーションを通じて予め決定された値である。
【0111】
例えば、図7の(b)に示すように、時刻t0に送風機52が駆動されると、送風機52の送風量は、図中実線aで示すように、初期出力レベルに応じて決まる送風量まで増加したのち、一定の送風量で保持される。
そして、時刻t1において、内部空間23の減圧が完了したと判断されると、図中実線bで示すように、送風機52の送風量が調整済み出力レベルに応じて決まる送風量まで低下した後、低下後の送風量で保持される。
【0112】
調整済出力レベルに応じて決まる送風量は、内部空間23の圧力値PinをメディアMの移動を規制できる圧力範囲で保持できる送風量であるので、吸引テーブル2に載置されたメディアMの移動を確実に規制できる。
【0113】
なお、送風機52の段階的制御を行う場合には(ステップS209、Yes)、前記した実施形態のステップS107の処理に移行する(図5参照)。
これにより、図中実線cで示すように、内部空間23の圧力値PinをメディアMの移動を規制できる圧力範囲に保持した状態で、送風機52の送風量が段階的に低減される。
【0114】
送風機の段階的制御を行う場合と、行わない場合の何れにおいても、吸引テーブル2に載置されたメディアMの移動を確実に規制できる。
これにより、インクジェット印刷装置1において、吸引テーブル2に載置されたメディアMに対して印刷を行う際に、メディアMのシワや浮きを確実に防止できるので、印刷精度の向上が期待できる。
【0115】
このように、変形例にかかるインクジェット印刷装置1は、以下の構成を有している。
(10)制御装置55(切替部553)は、
送風機52(吸引力発生手段)を設定された初期出力レベルで駆動して、吸引力を増加させている過程で、吸引力の単位時間当たりの変化加率が、第3閾値(閾値の変化率)未満になったのち、
送風機52の出力レベルを、メディアMを吸引テーブル2上で保持できる吸引力を保持できる最小の出力レベル(調整済出力レベル)まで低減させる。
【0116】
このように構成すると、吸引テーブル上に発生させる吸引力を維持しつつ、送風機52の送風量を調整できるので、送風機52の出力レベルを適切に調整できる。
なお、送風機52の出力レベルの調整済出力レベルへの低減は、吸引力の単位時間当たりの変化加率が第3閾値(閾値の変化率)未満になった時点で、調整済出力レベルまで低減させる構成としても良いが、調整済出力レベルまで段階的に低減させても良い。
【0117】
(8)制御装置55(切替部553)は、載置面21aに載置されたメディアMに対する印刷操作が開始されるまでの間に、
送風機52の出力レベルを、吸引力を保持できる最小の出力レベルまで低減させる。
【0118】
このように構成すると、載置面21a上にメディアMを確実に保持した状態で、メディアMに対する印刷操作を行える。メディアMの保持が不十分であると、メディアMの表面にシワや浮きが生じることがあり、かかる場合には、シワや浮きが生じた部分での印刷に支障が生じる場合があるが、かかる事態の発生を好適に防止できる。
【0119】
前記した実施形態および変形例では、吸引力発生手段が、送風機52である場合を例示した。本件発明にかかる吸引力発生手段は、吸引テーブル2の載置面21aに吸引力を発生できるものであれば、送風機52のみに限定されない。
例えば、送風機52の代わりにコンプレッサを採用しても良い。
【0120】
前記した実施形態および変形例では、インバータ53により、送風機52の羽根車の回転数を制御して、送風機52の風量を制御する場合を例示した。インバータ53に代えて、羽根車の回転数を制御可能な交流モータ、一例としてステッピングモータを採用して、ステッピングモータのパルス制御により、送風機52の風量を制御するようにしても良い。
【0121】
前記した実施形態および変形例では、本件発明にかかるメディア保持装置が、インクジェット印刷装置1の吸引テーブル2である場合を例示した。本件発明にかかるメディア保持装置は、この態様にのみ限定されない。
本発明にかかるメディア保持装置は、例えば、ロール状に巻かれたメディアを所定長さで裁断する裁断装置で用いられる吸引テーブルであっても良い。
【0122】
この場合には、載置面21aに載置されたメディアMに対する裁断操作が開始されるまでの間に、送風機52の出力レベルを、吸引力を保持できる最小の出力レベルまで低減させる。
これにより、載置面21a上にメディアMを確実に保持した状態で、メディアMを裁断できるので、メディアMの裁断制度が向上する。
【0123】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 インクジェット印刷装置
2 吸引テーブル
3 ガイドレール
4 キャリッジ
5 吸引力発生機構
20 テーブルベース
21 テーブルトップ
21a 載置面
22 吸引孔
23 内部空間
41 インクジェットヘッド
42 UV照射装置
51 配管
52 送風機
53 インバータ
54 圧力センサ
55 制御装置
551 圧力算出部
552 吸引力制御部
553 切替部
554 カウンタ
M メディア
Pin 圧力値
Pt 目標圧力値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7